平成18年4月28日
中央労働委員会事務局第一部会担当
審査官  西野 幸雄
電話  03−5403−2157
Fax  03−5403−2250


 南労会(懲戒解雇等)不当労働行為再審査事件〔平成10年(不再)第11号・第12号〕命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年4月27日、標記事件にかかる命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 使用者側   医療法人南労会(「南労会」)(大阪市港区)
 従業員数約250名(平成10年2月現在、以下同じ)
 労働者側 全国金属機械労働組合港合同(「組合」)(大阪市港区)
 組合員数約800名
全国金属機械労働組合港合同南労会支部(「支部」)(大阪市港区)
 組合員数約30名

II  事案の概要
 本件は、南労会が、(1)S執行委員を平成7年6月2日付けで懲戒解雇としたこと、(2)同年7月7日、I副委員長に対して、7日間の出勤停止処分を行ったこと、(3)同日、K分会長ら5名に対して減給処分を行ったこと、(4)上記各懲戒処分は、事前の団体交渉を誠実に行わないまま、公正さを欠いた手続で行われたことが不当労働行為であるとして、平成7年5月29日、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、平成10年2月27日、上記1のうち、(1)のS執行委員に対する懲戒解雇は労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとして、南労会に対し、同人の懲戒解雇がなかったものとしての取扱い及びこれに伴うバック・ペイを命じ、その余の救済申立てを棄却した。
 これを不服として、南労会は、平成10年3月12日、上記初審命令の救済部分の取消し及び救済申立ての棄却を求めて、また、組合らは同月16日、上記初審命令の棄却部分の取消し及び救済を求めて、それぞれ再審査を申し立てた。

III  命令の概要
 主文要旨
(1) 初審命令主文(S執行委員の懲戒解雇がなかったものとしての取扱い及びバック・ペイ命令)を取り消し、本件救済申立てを棄却する。
(2) 組合らの本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1) 当委員会の判断
 S執行委員に対する懲戒解雇は、医師であるMa理事長が患者に対して現に診療を行いその介助をしているMi婦長の背後を突然たたいた行為に対するものである。医療機関に勤務する者としてその非違性は大きく、職場規律に反するものであり、S執行委員の責任は重いといわざるを得ず、南労会が就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとしたことには、一応の合理性がある。また、上記行為は診療中の行為であり、他の分会の要請行動の際の行為に対する処分事案とは場面が異なることから、同一の範疇で処分の相当性如何を論ずることはできない。さらに本件発生当時、労使関係は極めて悪化しており厳しい対立関係にあったことからすると、南労会が組合らの方針に従って活発な抗議行動等を展開していたS執行委員を嫌悪していたであろうことは推認できるものの、上記行為は診療所の診療体制及び秩序の維持に多大な影響を及ぼしたといえることから、本件懲戒解雇は相当性の範囲を超えるとまでは言えない。以上の点を併せ考えると、S執行委員に対する懲戒解雇処分は、同人のこれまでの組合活動を嫌悪して行われた不利益取扱いということはできない。また、その他に組合らの弱体化を企図したと認めるに足る特段の疎明はない。したがって、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとした初審命令は、これを取り消す。
 I副委員長に対する出勤停止処分は、Mi婦長の右臀部周辺に手が当たったこと、S事務次長へ暴行したこと、支部組合員とともに「Ma出てこい」と大声で叫んだ粗暴な行為であること、K事務長らを突き飛ばしたり腕をひねるなど暴行したことなどに対するものであり、これらの行為を正当な組合活動ということはできないことから、南労会が、I副委員長を出勤停止処分としたことには、相当の理由があったというべきである。また、労使関係は極めて悪化していたところであるが、この点を考慮しても南労会がI副委員長に対して行った出勤停止処分を不当労働行為とはいえないとする初審命令は相当である。
 K分会長ら5名に対する減給処分は、S医師を取り囲むようにして大声で詰め寄ったこと、O組合員の配転撤回を求める署名簿の受取を求める際、ドアをたたいて「Ma出てこい」などと叫んだことなどに対するものであり、これらの行為は、前記イ判断と同様、いずれも診療所の職員として相応しくない粗暴な行為と言わざるを得ず、南労会が、K分会長を減給処分2回、K副委員長、I組合員、M組合員及びO組合員をそれぞれ減給処分1回としたことは相当の理由があったというべきである。
 本件懲戒処分の手続等について、組合らは、懲戒処分手続を定める診療所就業規則等が南労会により一方的に変更、新設された経過を全く考慮していない旨主張するが、これらが組合の弱体化を企図して、一方的に変更、新設されたとする疎明はない。
 本件審査の概要
 初審救済申立日  平成 7年5月29日
 初審命令交付日  平成10年2月27日
 再審査申立日  平成10年3月12日(使)、同月16日(労)
 再審査終結日  平成18年4月27日

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