平成18年3月30日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
  審査総括官 神田義宝
Tel 03-5403-2162
Fax 03-5403-2250

西日本旅客鉄道(西労広島)不当労働行為再審査事件
〔平成10年(不再)第15・16号〕
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は,平成18年3月30日までに,標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので,お知らせします。
 命令の概要等は,次のとおりです。

I 当事者

 再審査申立人(10−15)・再審査被申立人(10−16)
     :西日本旅客鉄道株式会社(鉄道業;従業員約4万8,000名)
 再審査申立人(10−16)・再審査被申立人(10−15)
     :ジェーアール西日本労働組合(大阪市所在;組合員約3100名)
     :ジェーアール西日本労働組合広島地方本部(広島市所在;組合員約800名)
ほか9名

II 事案の概要等

 1 本件は,西日本旅客鉄道株式会社広島支社(以下「会社」)が行ったジェーアール西日本労働組合(以下「組合」)及び同組合広島地方本部(以下「地本」)並びに同地方本部の下部組織である広島,下関運転所分会等に所属の組合員らに対する配転命令,訓告処分,同訓告処分を前提とする平成5年年末手当の減額措置等がいずれも不当労働行為であるとして,平成5年8月4日から同6年12月15日にかけて,同組合及び地本ほか9名が,広島県労働委員会(以下「広労委」)に救済申立て,追加申立てを行った事案である。
 2 平成10年3月4日,広労委は,上記申立てのうち,組合員ら3名に対する配転命令はいずれも不当労働行為に当たらないとして棄却し,年末手当の減額措置は除斥期間経過後の申立てであるとして却下したが,組合員ら9名に対する訓告処分については不当労働行為に当たるとして申立てを認容し,処分の取消しを命じると共に,年末手当は同訓告処分がなかったものとして算定,支給されるべきものであることを判示した。
 3 会社,組合らは,いずれも上記初審命令を不服として,平成10年4月2日,再審査を申し立てた。

III 命令の概要等

 1 命令主文要旨
(1) 初審命令主文第1項,第2項(組合員9名に対する各訓告処分をいずれも取消し,同処分がなかったものとして取り扱う旨)を取消し,これにかかる本件救済申立てを棄却する。
(2) 組合,地本の再審査申立てをいずれも棄却する。

 2 判断要旨
(1) 組合員ら計3名に対する配転命令について
 会社は,平成5年7月,当時下関運転所所属の組合員3名について,いずれも広島運転所への配転命令を発令しているが,本件各配転命令は,いずれも業務上の必要性が認められ,かつ,多数の人材を抱え,広域かつ多数の営業拠点を有する大規模会社として,長期的,広域的視野に立ちつつ実施されたものであって人事施策として不合理とは言えず,会社の組合員らに対する差別意思,組合らに対する支配介入意図等も認められないから,いずれも不当労働行為に該当するとは認定できない。
(2) 組合員ら計9名に対する訓告処分について
 組合らは,平成5年3月18日から同年8月11日にかけていわゆるブルートレイン乗務員を対象とする指名ストライキを実施していたところ,本件各訓告処分は,同ストライキの過程で組合員らがブルートレインの代替運転士に対して行った説得監視活動と称する活動が懲戒事由に該当するとして課されたものである。
 上記説得監視活動は,当該争議行為を実効あらしめ,また争議行為の継続を確保することを目的として行われた団体行動と認められることから,その正当性の判断は当該活動が争議行為下に行われたものであることを勘案し,争議権保障の趣旨に照らして行われるべきものであるが,同活動に見られる具体的言動は,会社の業務運営に不相当な支障を生じさせて企業秩序に侵害を与えたほか,対象となった代替運転士の権利利益を侵害したものであり,態様において正当な活動として保護されるべき範疇を逸脱したものと評価せざるを得ない。
 従って,組合員らの活動は正当な団体行動の範囲を逸脱したものと言え,懲戒責任を免れるものではない。
 組合員らにはそれぞれ懲戒事由が認められ,各人に対する処分も各懲戒事由に照らして相当と言え,他に会社の組合員らに対する差別意思,組合らに対する支配介入意図等も認められないから,不当労働行為に該当するとは認定できない。

【参考】
 ●本件審査の概要
  ・初審救済申立日 平成 5年 8月 4日(広島県労委平成5年(不)第3号)
  ・初審命令交付日 平成10年 3月24日
  ・再審査申立日 平成10年 4月 2日
  ・再審査結審日 平成11年 5月17日

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