平成18年3月23日 |
中央労働委員会事務局
第三部会担当審査総括室
審査総括官 熊谷正博
Tel | 03-5403-2172 |
Fax | 03-5403-2250 |
|
|
兵庫県(被災地しごと開発事業)不当労働行為再審査事件
〔平成17年(不再)第3号〕再審査命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年3月23日、標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
1 当事者
再審査申立人 | : | しごと開発就労者組合(神戸市所在 組合員約120名) |
再審査被申立人 | : | 兵庫県 |
2 事案の概要等
(1) | 本件は、阪神・淡路大震災の復興事業の一環として兵庫県が発案・企画し、財団法人阪神・淡路大震災復興基金(復興基金)を助成主体、財団法人兵庫県勤労者福祉協会(福祉協会)を実施主体とする「被災地しごと開発事業」(事業)就労者の結成した組合が、事業の延長を求めて兵庫県に対して申し入れた団体交渉を兵庫県は使用者に当たらないとして拒否したこと及び事業を打ち切ったことが不当労働行為に当たるとして、(A)事業打ち切りの禁止及び打ち切りがなかったものとして組合員を就労させること、(B)事業の延長、継続を議題とする団体交渉申し入れに対する拒否の禁止、(C)ポスト・ノーティスを求めて、平成14年3月26日、兵庫県労委に救済申立てのあった事件である。 |
(2) | 初審兵庫県労委は、兵庫県は労組法上の使用者に該当しないとして、平成17年1月18日付で救済申立てを却下した。 |
(3) | 組合は、この初審決定を不服として、初審決定の取消し及び上記(1)の組合の請求どおりの救済を求めて、平成17年2月4日、再審査を申し立てた。 |
(4) | 争点
(a) | 兵庫県は組合の組合員の労組法7条の使用者に当たるか。(争点(a)) |
(b) |
ア | (a)が肯定される場合に、事業を打ち切り、延長しなかったことが不当労働行為に当たるか。(争点(b)ーア) |
イ | また、組合の申し入れた事業の打ち切り及び延長に関する団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるか。(争点(b)ーイ) |
|
|
3 命令の概要等
(1) | 命令主文要旨
本件再審査申立てを棄却する。 |
(2) | 判断要旨
ア | 兵庫県の使用者性について
兵庫県は、阪神・淡路大震災からの復興を図る政策として事業を企画し、同企画に基づいて、福祉協会が復興基金からの補助金によって事業を実施したものであり、兵庫県は事業の趣旨・目的、事業概要、予算等の大枠を決定したが、就労者について、その具体的な作業内容や作業方法、就労場所、就労時間、就労の日などを決定していたとの事情は認められず、また、就労者について、その氏名、年齢、性別等について掌握はしておらず、就労者各人の就労の状況についても把握していなかった。そして、就労者に対する具体的な指揮監督は協力企業の監督者によって行われ、就労者に対する報酬は協力企業が計算して支払っていた。これらの事情からすれば、兵庫県が就労者の労働条件を現実的、具体的に支配していたということはできない。
また、組合は、組合員の雇用の継続という最も重要な労働条件を兵庫県が支配していた旨主張するが、事業は当初からの予定どおりその任務を終えて終了したものであり、加えて、兵庫県が事業の延長を行わなかったことにより直接に就労者が雇用を失ったものということはできず、この事情をもって兵庫県が雇用主と同視しうる程度に就労者の労働条件を現実的かつ具体的に支配していたとはいえない。
さらに、組合は兵庫県と福祉協会が一体である旨をいうが、同協会は独自の法人格を有しており、また、その法人格が形骸化していたり、濫用されているとの事情は認められず、さらに、両者が実質的の同一であるとみなければならない事情も存しないから、上記組合の主張は理由がない。 |
イ | 上記のとおり兵庫県は労組法7条の使用者に当たらないから、兵庫県が使用者に該当することを前提とする争点(b)について判断するまでもなく、組合の本件再審査申立は棄却を免れない。 |
|
【参考】
●本件審査の状況
・初審救済申立日 | 平成14年3月26日 |
・初審命令交付日 | 平成17年1月21日 |
・再審査申立日 | 平成17年2月4日 |
・再審査終結日 | 平成18年3月23日 |