平成18年3月23日
中央労働委員会事務局
審査総括官 熊谷正博
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250

天雲産業不当労働行為再審査事件(平成16年(不再)第19・20号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年3月23日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 平成16年(不再)第19号再審査申立人 天雲産業株式会社(大阪府大阪市西区)
 平成16年(不再)第20号再審査被申立人 従業員約40名(15年12月24日現在)

 平成16年(不再)第19号再審査被申立人 全大阪金属産業労働組合(大阪府大阪市大正区)
 平成16年(不再)第20号再審査申立人 組合員264名(会社在籍従業員2名)(18年1月27日現在)

II 事案の概要
 本件は、会社が、(1)組合員2名(以下「組合員ら」)を課長に昇格させないこと、(2)通勤手当の取扱いの変更、平成12年度賃上げ等及び同年夏季一時金を議題とする団体交渉(以下「団交」)に誠実に応じなかったこと、(3)業務中の組合員らに対し会社役員による監視をさせたこと、(4)組合員らの就業時間中のワッペン着用に対し文書注意を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件。
 平成16年2月19日、初審大阪府労委は、(1)通勤手当の取扱いの変更及び平成12年度賃上げに関する誠実団交応諾、(2)文書交付((1)及び平成12年夏季一時金の不誠実団交に関して)を命じ、その他の申立てを棄却したところ、会社及び組合がそれぞれ再審査を申立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てをいずれも棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 組合員の昇格について
 (@)年齢・勤続年数・職務遂行能力の点で比較対象しうる従業員が昇格していることをもって、組合員らを昇格させないことが不利益取扱いとは推認できないこと、(A)業務内容が異なっている別の部の昇格例との対比をもって、組合員らを昇格させる理由とはできないこと、(B)各昇格には一応の合理的理由が認められること、(C)課長職の設置・任命時期において、組合弱体化意図を示す特段の事実が認められないこと等から、組合員であることや組合活動を嫌悪していることを理由に課長に昇格させないという不利益取扱いを行っているとは認められない。また、課長職の設置と他の従業員の課長職への任命そのものが、組合の結成・運営を妨害する支配介入行為であるとみることもできない。
(2) 団交について
(@) 通勤手当について
 会社は、通勤手当の取扱いの変更に係る団交において、取扱規定を新設する理由、取扱規定の適用の仕方等について、「明確でなかった部分を明確にした」と回答するに留まり、回答にあたっても就業規則の該当条項を読み上げたのみで、取扱規定を社外秘であるとして提示していないことから、具体的かつ十分な説明を行ったとみることはできず、会社の対応は不誠実であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(A) 平成12年度賃上げについて
 会社は、従業員の考課査定について、経営上及び人事管理上、そのすべてを明らかにすることはできないとしても、少なくとも組合員の考課査定については、どのような査定を行って賃上げ額を決定したかに関し、可能な限り査定項目に即した具体的な説明をする必要があったというべきである。しかしながら、会社が考課査定に基づく賃上げ額の具体的な決定方法について、十分説明していたとみることはできない。
 また、会社が、組合が賃上げ額が納得できるかを判断するための重要な情報である経常利益の額等を開示しなかったことは、特段の事情の立証がなされていないことから正当な理由があるとは認められず、売上高が10%減少し、経常利益が横這いであるとの抽象的な会社回答では不十分と言わざるを得ない。
 以上のことから、会社の対応は不誠実であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(B) 平成12年夏季一時金について
 会社は、どのような査定を行って一時金額を決定したかを、可能な限り査定項目に即して具体的に説明する必要があったというべきである。しかしながら、本件夏季一時金交渉において、十分な説明を行ったとみることはできないから、会社の対応は不誠実であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(3) 専務の職場巡回行動について
 業務時間内の経営幹部の職場巡回は特段不自然な行動とはいえず、組合活動に具体的支障が生じたことの証拠がないことから、客観的に組合活動に対する威迫と評価できる態様のものであったと認めることはできない。
(4) ワッペン就労について
 ワッペン就労に対し会社は文書注意にとどめ懲戒処分をしていないこと、ワッペン就労後も平成12年度賃上げ団交に応じたことなどを考慮すると、会社の文書注意は不合理とはいえず、不当労働行為意思によるものとはいえない。
(5) 救済方法について
 夏季一時金については、裁判所での和解成立により労使双方で合意・解決したとみるべきであり、団交を命じる必要はなく、文書交付をもって足りる。
 その他の諸事情を総合勘案すれば、救済方法としては初審命令どおりの内容で足りる。


【参考】 本件審査の経過
 1 本件審査の概要
初審救済申立日 平成12年 9月22日 (大阪府労委12年(不)第60号) 
初審命令交付日 平成16年 2月19日
再審査申立て 平成16年 2月27日 (中労委16(不再)第19号)
再審査申立て 平成16年 3月 4日 (中労委16(不再)第20号)
 2 初審命令主文要旨
(1) 通勤手当変更及び平成12年度賃上げに関し、考課査定内容・配分方法の提示等による誠実団交応諾
(2) 文書手交(上記(1)及び平成12年夏季一時金に関する不誠実団交に関して)
(3) その余の申立ては棄却



トップへ