平成17年12月5日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長   西野  幸雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


シーケンス不当労働行為再審査事件
(中労委平成17年(不再)第1号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年12月4日までに、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 1 再審査申立人株式会社シーケンス(東京都新宿区)
 2 再審査被申立人労働組合東京ユニオン
 組合員 約900名(平成15年6月10日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、a 組合が申し入れた組合員Yの未払賃金の支払等に関する団体交渉を拒否したこと、b 団体交渉申入れのために会社に赴いた組合執行委員を有形力の行使により排除したこと、c 事実に反する被害届を提出して組合員を被疑者扱いしたことが不当労働行為であるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
 2 初審東京都労委は、会社に対し、a Yの未払賃金の支払等に関する誠実団体交渉応諾、b 上記1のa及びbに関する文書交付及び文書掲示等を命じ、組合からの上記1のcの申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消しを求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文要旨
(1) 初審命令主文のうち文書交付及び文書掲示を文書交付のみに変更。
(2) その余の本件再審査申立てを棄却。

 2 判断の要旨
(1) 団体交渉拒否について
 会社は、団体交渉拒否の理由として、不法侵入を繰り返したり、違法に付加金を要求したり、暴力行為を行うような団体とは団体交渉はできないと主張するが、a 組合が事前連絡することなく会社を訪れたのは、団体交渉開催を求める要求書に対し一切回答がなかったためであって、会社の態度にこそ問題があったこと、b 会社は、付加金の支払に問題があるとするのであれば、団体交渉の場においてその旨主張すればよいのであって、このことは団体交渉を拒否する理由たり得ないこと、c 組合が暴力行為を行ったとは認められず、かえって、会社を訪問した組合執行委員がA部長から有形力の行使を受けていることからすれば、会社の主張は採用できない。
 また、会社は、Yが訴えていた労働基準法違反事件については東京地方検察庁より不起訴の判断が下っているので、団体交渉に応じるべき理由も存在しないと主張するが、Yの給与が支払われなかったことは事実であり、また、たとえYの賃金未払が労働基準法違反として不起訴となったとしても、それは不当労働行為救済制度とは趣旨・目的を異にするものであって、会社は、組合との団体交渉に応じ、Yの賃金未払の理由等について誠意をもって説明すべきであったと言うべきである。したがって、会社の主張は団体交渉拒否の正当な理由には当たらないものである。
 以上からすれば、会社が、組合の申し入れたYの未払賃金の支払等に関する団体交渉に応じなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
(2) 組合執行委員の排除について
 第2回団体交渉申入れの際に、A部長は会社を訪問して話合いを求めた組合執行委員のネクタイや襟首をつかむなどして出口に連れ出し、第3回団体交渉申入れの際には、A部長は会社を訪問して団体交渉を申し入れようとした組合執行委員を事務所に入れず、この際、組合執行委員はA部長の有形力の行使により鼻骨を骨折し、全治1か月間の負傷をしている。
 このような会社の行為に、本件における会社の主張も併せ考えると、会社は、強い組合否認の意図に基づいて、会社から組合の影響力を排除すべく、組合執行委員を有形力の行使により排除したものと判断される。よって、会社の行為は組合に対する支配介入に該当する。
(3) 救済方法について
 会社は、既に会社の事務所は存在しておらず、会社も業務を完全に停止しており、今後業務を再開する見込みは全く立っていないと主張する。この点については、本件再審査の全趣旨からみて、会社は業務を停止しているものと認められるが、会社が完全に消滅したわけではない。よって、未払賃金支払等の未解決の問題について、なお団体交渉応諾を命じることが相当である。ただし、上記の状況に鑑み、初審命令主文第2項が命ずる文書交付及び文書掲示を文書交付のみに変更する。

〔参考〕
 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成15年6月10日(東京都労委平成15年(不)第67号)
  初審命令交付日 平成17年1月10日
  再審査申立日 平成17年1月25日(使)
 初審命令主文要旨
  上記IIの2のとおり


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