平成17年7月21日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室
    室長    神田 義宝
Tel 03−5403−2162
Fax 03−5403−2250

伏見織物加工(脱退強要等)不当労働行為再審査事件
(平成11年(不再)第37号) 命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成17年7月20日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 京都ー滋賀地域合同労働組合
 組合員4名(平成9年5月現在)
 再審査被申立人 伏見織物加工株式会社
 従業員約80名(平成9年5月現在)

II 事案の概要
 1 本件は、伏見織物加工株式会社(以下、「会社」)が、(1)京都ー滋賀地域合同労働組合(以下、「組合」)組合員Xに組合員かどうかを確認し、(2)Xを利益誘導により組合から脱退させたこと、(3)組合が従業員宛に送付した葉書の内容に反論する文書を社内で回覧したこと、(4)Xの脱退勧奨問題に関する団交を拒否したこと、(5)組合員Yを利益誘導により組合から脱退させた上、同人をして、京都府労委における別事件の命令の取消訴訟事件において虚偽の証言をさせたこと、(6)Yの脱退勧奨問題に関する団交を拒否したこと、及び(7)団交を求める組合の門前活動を妨害したことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。

 2 初審京都府労委は、11年9月8日、上記いずれも不当労働行為には当たらないとして、組合の本件各申立てのうち、(1)乃至(3)については棄却し、その余の申立てを却下したところ、組合は、これを不服として、11年9月21日再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 組合員か否かの確認発言について
 社長がXに話しかけたことに関して、前日に組合と伏見織物労組との間で小競り合いがあったが、社長の発言は組合の執行委員長Kの近況を問いかけたもので、また、この他に社長がXにKの組合活動に関して話しかけたという事実も見当たらないので、これを支配介入には当たらないとした初審判断は相当である。
(2) Xへの利益誘導による脱退勧奨について
 Xの嘱託再雇用に関して、会社はテンターの新しい機械の導入や開反担当者の退職を見込んで平成8年秋にはXの嘱託再雇用を決定し、平成9年4月上旬には再雇用の合意が成立していた。また、開反作業は熟練技術を必要とするため、同作業が行えるのであれば、Xが嘱託採用の労働条件について特段、破格の優遇を受けたとも言えないことから、再雇用による利益誘導であるとの組合の主張は採用することはできない。
 Xは社長から嘱託採用条件の話し合い後、翌日組合に脱退の申し入れを行っているが、@)会社は、平成8年秋頃にはXの嘱託再雇用を決定し、脱退申し入れ前の9年4月頃には部長とXの間で合意が成立していたこと、A)また、脱退を申し入れた当日、XはKに、Xが組合に加入していることを会社は知らないと伝えていること、そして、B)脱退申し入れ後に、本件救済申立ての副本の記載を会社部長が見てXに組合員かと尋ねていること、C)Xは組合に加入していたことを気兼ねし、部長に再雇用の辞退を伝えたところ、部長は慰留に務めたことなどから、Xが組合員であったことを会社は知らずに再雇用することを進めていたと認められ、会社がその時点において、Xが組合員であることを把握し、利益誘導により組合を脱退させたとの組合の主張を採用することはできない。 
 Xが電話で脱退を通告した後の5月8日に、Xの脱退届がKに送達されているが、部長が既に組合を脱退しているXに、さらに脱退届を書くように強制する理由は見当たらず、会社が脱会届を書かせたとする組合の主張は採用することができない。
(3) 回覧板の回付について
 組合が従業員宛に送付したXの再雇用についての経緯を記載した葉書に対して、会社が回覧板で反論したことに関し、回覧板の内容は虚偽であったとの組合の主張は元従業員からの伝聞のみで、それが真実であったと疎明するものが他に存在しないから、組合の信用を失わせ、組合の団結を破壊しようとするものであるとの組合の主張は採用することはできず、支配介入には当たらないとした初審判断は相当である。
(4) X問題に対する団交拒否について
 X問題に関する団交に会社が応じなかったことについて、上記2(2)より、Xは組合を脱退し組合員でないこと、また、当時会社に在籍していたSについても、S本人は組合員であるとの意識はなく組合との関わりを示す事実もないので、Sも組合員とは認められず、雇用する労働者に組合員は存在しないことから、X問題に対する団交について、会社は応じる義務はないとした初審判断は相当である。
(5) Yに対する利益誘導による支配介入、Y及びXの脱退勧奨問題等に係る団交拒否並びに   門前での組合活動に対する妨害について
 Yに対する退職金の支払いが受給権のない者への支払いであり利益誘導であるとのことに関して、別事件において、Yは会社を円満退職し、退職金の問題についても解決済みであることから、組合には団交拒否及びこれを理由とする支配介入のいずれの点においても被救済利益がないとの判断が確定している。また、Yに退職金の受給権がないとの主張も根拠がなく組合員であったとの事実もないので、組合には被救済利益はないと判断される。
 X及びYの脱退勧奨問題にかかる団交拒否並びに門前での組合活動に対する妨害に関して、@)前記アにより、Yは組合員であった事実はないこと、A)Xは組合員であった期間が二ヶ月程度あったが、会社の認知がないこと、B)Sも前記(4)のとおり、組合員と認められないことから、会社が雇用する労働者に組合員は存在していないので、会社は組合との団交に応ずる義務はなく、救済を求める適格がないとした初審判断は相当である。

 【参考】
 1 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成9年5月2日(京都9(不)5)、平成11年2月16日(京都10(不)1)
 初審命令交付日 平成11年9月8日
 再審査申立日 平成11年9月21日(労)

 2 初審命令主文要旨
(1) 申立人の申立てのうち、被申立人のXに対する平成9年4月14日及び26日の行為、5月9日の団体交渉拒否並びに回覧板の回付に係る救済申立てを棄却する。
(2) 申立人のその余の申立ては却下する。


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