平成17年6月3日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長   西野  幸雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


中央自動車教習所不当労働行為再審査事件
(中労委平成14年(不再)第65号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年6月3日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 1 再審査申立人株式会社中央自動車教習所(石川県金沢市)
  従業員      69名(平成13年11月28日現在)
 2 再審査被申立人全国一般労働組合石川地方本部
  組合員 約2,000名(平成13年11月28日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、(1)平成13年春季賃金改定要求等に関する団体交渉に誠意をもって応じることなく、組合と妥結せずに一方的に賃金を改定した上、4月に遡及実施という従来の労使慣行に反し10月に実施したこと、(2)労働協約を破棄して新就業規則を実施したこと、(3)新就業規則による就業時間に就労しなかったことを理由に組合員の賃金をカットしたこと、(4)時間外労働の割増率を3割から2割5分に引き下げたこと、(5)ストライキに対する賃金カットの対象範囲を基本給から通勤手当を除く所定内賃金に拡大したこと、(6)組合のストライキ以降、組合集会のための会社施設の利用等を制限したり、朝礼において組合を誹謗中傷したこと等が不当労働行為であるとして、石川県労委に救済申立てがあった事件である。
 2 初審石川県労委は会社に、(1)平成13年春季賃金改定要求事項についての誠実団体交渉応諾、(2)労働協約一部破棄通告及び労働協約全部解約通告の撤回、(3)組合員の就業時間不就労に係る賃金カット分の支払(年5分加算)、(4)時間外労働の割増率を3割としての差額の支払(年5分加算)、(5)ストライキに対する賃金カット分の計算基礎を基本給としての差額の支払(年5分加算)、(6)朝礼等において組合活動を誹謗中傷したり、組合集会のための会社施設の使用等を禁止することによる支配介入の禁止、(7)上記(1)ないし(6)に関しての文書手交・文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消しを求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 平成13年春季賃金改定要求に関する労使交渉について
 会社は、形式的には15回の団体交渉に応じているものの、組合の要求にもかかわらず、関係資料の提示に一切応じていない。また、会社が提案した冬時間制に対する組合の対案についても会社は検討する姿勢もみられない。このような会社の態度は、冬時間制及び査定給の導入が有額回答の前提であるとしてこれに固執していたものである。
 また、有額回答以降の会社の対応についてみると、会社は、回答額が金沢地区の他の自動車学校より低い理由及び4月に遡って賃金改定を実施できない理由について、誠意をもって組合に説明したと言うことはできない。また、特段の事情もなく、組合と妥結もしていないのに一方的に賃金改定を実施したことは、団体交渉を形骸化させるものであって、誠意のある交渉態度とは言えない。
 以上を総合して判断すると、春季賃金改定要求に関する団体交渉における会社の態度と、一方的に賃金改定を行い、10月実施としてこれを強行した一連の対応は、誠意をもって交渉したと言うことはできず、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(2) 労働協約の解約と新就業規則等の実施について
 昭和60年の労使合意により実施されてきた就業時間を変更し、新就業規則等を実施した行為は、会社が、組合との団体交渉を経ることなく一方的に労働条件の変更を行ったものであるとともに、就業規則案の提示に抗議し団体交渉申入れを行っている組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図したものであると判断される。
 また、労働協約の全部を解約し、その上で新就業規則等を実施した行為は、上記判断と同様、会社が、組合との団体交渉を経ることなく一方的に行ったものであるとともに、新就業規則等の実施に反対する組合の存在を嫌悪し、かつ、組合のストライキを嫌悪しその報復措置として行ったものであって、組合の弱体化を企図したものであると判断される。
 したがって、これらは労組法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為である。

(3) 就業時間不就労を理由とする賃金カットについて
 新就業規則等の一方的な実施が不当労働行為であることは上記(2)において判断したところであり、就業時間不就労を理由とする賃金カットは、新就業規則等の実施に反対する組合に対する報復措置であって、その弱体化を企図したものであると判断されるから、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(4) 時間外労働手当の割増率の引下げについて
 新就業規則等の一方的な実施が不当労働行為であることは上記(2)において判断したところであり、時間外労働手当の割増率を2割5分としたことは、新就業規則等の実施に反対する組合に対する報復措置であり、その弱体化を企図したものであると判断されるから、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(5) ストライキに対する賃金カットの対象範囲の拡大について
 会社がストライキに対する賃金カットの対象範囲を拡大したことは、組合のストライキに対する報復措置として、ストライキに参加した組合員を不利益に取り扱う意図をもってストライキに対する賃金カットの対象範囲を一方的に拡大したものと判断されるから、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。

(6) 会社施設の使用禁止措置等について
 会社施設の使用禁止措置等は、組合のストライキを奇貨として、ことさら組合活動に制約を加えることを企図してなされたものとみるべきである。
 また、朝礼における社長及び校長の発言は、組合の対応が賃金改定実施の遅延を招いたとしてこれを嫌悪し、全指導員を前にして公然と組合を批判することによって組合を誹謗し、組合軽視の姿勢をあらわにしたものであり、組合の弱体化を企図してなされたものとみるべきである。
 したがって、これらは労組法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

〔参考〕
 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成13年11月28日(石川県労委平成13年(不)第3号)
  初審命令交付日 平成14年12月 7日
  再審査申立日 平成14年12月19日(使)
 初審命令主文要旨
  上記II・2のとおり


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