平成17年4月15日 |
中央労働委員会事務局第一部会担当
審査総括官 西野 幸雄
Tel: | 03-5403-2157 |
Fax: | 03-5403-2250 |
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小林運輸不当労働行為再審査事件〔平成15年(不再)第9号〕の
再審査命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年4月14日、標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I 当事者
・再審査申立人 | : | 株式会社小林運輸(以下「会社」)(兵庫県神戸市所在) 従業員数48名(初審結審時、以下同) |
・再審査被申立人 | : | 関西合同労働組合(以下「組合」)(大阪府吹田市所在) 組合員数140名 |
同 | : | 同 兵庫支部(以下「兵庫支部」)(神戸市長田区所在) 組合員数94名 |
II 事案の概要等
1 | 本件は、会社が、(1)組合及び兵庫支部(以下「組合ら」)から、NとSが申立外全日本港湾労働組合関西地方阪神支部(以下「全港湾」)小林運輸分会を脱退し組合らに加入したことを通告されて以降、両名を早出残業、中長距離の運送業務に就かせなかったこと(以下「運送業務差別」)、(2)全港湾組合員を含む従業員には仮払いした13年夏季一時金を、両名には仮払いしなかったこと、(3)組合らが申し入れた13年夏季一時金要求等に関する団交に、全港湾が両名の脱退を認めないなどとして応じなかったこと(以下「団交拒否」)が、不当労働行為にあたるとして、それぞれ、(1)運送業務差別の撤回及び運送業務差別がなければ得られたであろう時間外手当の支払い、(2)13年夏季一時金の仮払い、(3)団交応諾等を求めて、13年9月21日、兵庫地労委に救済が申し立てられたものである。 |
2 | 兵庫地労委は、15年2月18日、上記の申立てをほぼ認容し、その余の申立て(謝罪文の掲示)を棄却する一部救済命令を発した。 |
3 | 会社はこれを不服として、15年2月28日、再審査を申し立て、以下のとおり主張した。
(1) | 両名の早出を拒否したのは、両名の就労態様(教宣用プレートを掲げて運送業務に従事した。以下「プレート等就労」)に起因する荷主らからの早朝のクレームに、出勤時間が遅い事務部門が対処することができなかったからである。 |
(2) | 13年夏季一時金は、支給しようとしたところ、両名が受取を拒否したものである。 |
(3) | 団交に応じなかったのは、行動形態からして正常な労働組合とは思われなかったからである。 |
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III 当委員会命令の概要
1 | 主文
本件再審査申立てを棄却する。 |
2 | 判断の概要
(1) | 組合加入を通告した直後(8月25日)には既に運送業務差別が開始されていること、一方、プレート等就労が開始されたのは9月10日であること、また、プレート等就労は、会社の不誠実な対応への抗議として行われたものであるが、会社が団交に応じることなく一貫して運送業務差別を継続したことは、結局両名の組合加入に対する報復としか理解できず、プレート等就労を運送業務差別の理由とするのは口実に過ぎない。
また、運送業務差別、13年夏季一時金不払等が立て続けに行われたことからすれば、会社が、組合らに加入しその活動の中心となっていた両名を著しく嫌悪していたことは明白である。
以上からすれば、運送業務差別は、両名の組合らへの加入及び組合活動を嫌悪し、不利益に取り扱ったものである。 |
(2) | 会社は、初審においては、13年夏季一時金不払の事実を認め、組合らとの団交がないことをその理由としていたが、再審査において、両名が受取を拒否したものであると主張を変更している。H専務の証言は、その証言の流れからして、夏季ではなく13年冬季一時金についてのものである。さらに、受取を拒否されたとする8月29日の前後の団交拒否等の状況からすれば、組合らと13年夏季一時金について話し合いをする状況にあったとは認められない。以上を総合すれば、会社が両名に13年夏季一時金の支払いをしようとして拒否されたとは認められず、むしろ会社は、はじめから両名には支払を留保していたものと解するのが相当である。 |
(3) | 会社は、組合らが正常な労働組合でない等と縷々主張するが、組合らの抗議行動は、両名の組合加入通告以降における会社の対応が、組合らの存在を否定するに等しいものであったことを理由として行われたものであり、その抗議行動等の態様をもって会社が団交を拒否することができる正当な理由とすることは到底認められない。 |
(4) | 会社は、初審結審後、両名を出勤停止処分に付し、その後、解雇しているが、本件救済申立て事項ではなく、初審命令主文にこの点を追加して命じることはできない。
ところで、会社の団交拒否等の態様は、組合らの存在を否定するに等しいものであって、組合らが迅速な解決を求めて強い抗議行動を展開した心情も一概に批判することはできないが、抗議行動の手法や対応が穏当を欠き、会社の態度を硬化させる誘因になったことは否めず、結局両名の解雇にまで至っている。
当委員会も初審命令同様、今後、双方とも過度に攻撃的な行動を慎み、団交を通じて問題を解決する努力を行うよう要請するものである。 |
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【参考】
本件審査の概要
初審救済申立日 | 平成13年 9月21日 |
初審命令交付日 | 平成15年 2月24日 |
再審査申立日 | 平成15年 2月28日 |
再審査終結日 | 平成17年 4月14日 |