平成16年11月30日 |
中央労働委員会事務局審査第三課
審査官 藤森 和幸
電話 | 03-5403-2175(ダイヤルイン) |
Fax | 03-5403-2250 |
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東芝不当労働行為再審査事件
(平成13年(不再)第22号)命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成16年11月30日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。
I | 当事者
再審査申立人 | 株式会社東芝(港区芝浦)― | 電気機械器具等製造業等を営む会社。従業員数 57,561名(平成12年3月末現在) |
再審査被申立人 | Aら10名― | いずれも東芝労働組合員 *組合員数52,208名(平成12年10月末現在) |
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II | 事案の概要
1 | 本件は、会社が、Aら10名に対し、資格、職群・等級、役職、基準賃金及び賞与について不利益な取扱いをしたことが不当労働行為であるとして、初審神奈川地労委に救済申立てがなされた事件である。
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2 | 神奈川地労委は、本件会社の行為は不当労働行為であると判断した上、会社に対し、Aら10名を、(1)平成6年7月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する資格、(2)平成6年度以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する職群・等級、(3)平成6年8月30日以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する役職、(4)平成6年度以降の昇給及び賞与の査定の平均としてそれぞれあるものとして取り扱うこと、(5)(1)ないし(4)による是正後の賃金及び賞与の額に対するバックペイ(差額の支払。年5分加算)、(6)不当労働行為を行ったことの謝罪文の掲示を命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てたものである。 |
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III | 命令の概要
1 | 主文の要旨
初審命令主文を変更し、Aら10名に対し、(1)平成6年7月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中位者が就いている資格、(2)平成6年4月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中位者が就いている職群・等級、(3)平成6年8月30日以降、それぞれの同期同学歴者の中位者が就いている役職あるいはこれに相当する職にそれぞれあるものとして取り扱うこと、(4)平成6年4月1日以降、(1)ないし(3)で是正された資格、職群・等級、役職あるいはこれに相当する職にあるとして、それに相当する基準賃金及び賞与を支払うこと、(5)(1)ないし(4)による賃金及び賞与の額に対するバックペイ(差額の支払。年5分加算)、(6)不当労働行為を行ったことの文書手交を命じ、Aら10名のその余の救済申立てを棄却、その余の会社の再審査申立てを棄却する命令を発した。
※ | (1)ないし(3)に関しては、東芝労組員が就いている資格、職群・等級、役職を限度とする。 |
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2 | 判断の要旨
(1) | 却下の主張について
平成7年(不)第14号事件については、同年8月29日に申立てがあり、その是正対象である同6年度分給与は、同6年4月1日の昇給で決定され、昇給後の最初の支払いが同月25日であり、翌平成7年3月25日まで支給されていたのであるから、本件申立ては、最後の支払いの時から1年以内にあり、法定の申立期間内と認められ、賞与は、給与の一部である本給及び仕事給を算定の基礎としているため、昇給後の本給及び仕事給に格差があるとすれば、必然的に格差が発生するのであるから、給与が申立て前1年以内にあると認められる以上、賞与についても同様であり、却下事由には該当しない。 |
(2) | 労働組合の行為に当たるか否かについて
Aら10名の組合活動は、組合員の労働条件の維持改善その他の経済的地位の向上を目指し、かつ、所属組合の自主的・民主的運営を志向している行為と認められるので、活動の一部において政党支部名等を冠したものがあるとしても、全体として組合活動であると判断すべきである。 |
(3) | 処遇格差の存否について
Aら10名の処遇は、非組合員層を含む役職における格差では1名を除くと最低に格付けされており、昇給、資格、職群・等級が要素となる基準賃金は他の1名を除き、実在者の最低賃金に近くか賃金の最低額になっていることからすると、概ね中位以上であり、中位・平均から格段に低いとはいえないとする会社の主張は採用できない。 |
(4) | 本件格差の合理的理由の存否について
(1) | 成果主義的運用と人事権の行使
Aら10名の同期同学歴者それぞれの職群・等級及び役職への昇進時期には差異があり、成果主義的な面があるとしても、従業員の処遇は勤続年数が長くなるにつれ、少なくとも、一定の職群・等級及び役職までは大部分の者が昇格等をするという意味での年功的な運用が行われていたものと認められる。 |
(2) | Aら10名の業務遂行状況
Aら10名は、それぞれの業務遂行状況についてできる限りの立証を行った。これに対して会社は、各人のそれぞれごとに、上司の評価において、どのように評価されているか等を具体的な根拠を示すことにより本件格差には勤務成績・態度に基づく合理的理由が存するとの立証ができなかった。その結果、Aらの業務遂行状況には各人ごとにばらつきが見られるものの、各人とそれぞれの同期同学歴者とを比較してその業務遂行状況が顕著に劣るものとはいえず、資格、職群・等級等についてこれほどまでの差をつける理由は認められないと判断せざるを得ない。 |
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(5) | 不当労働行為の成否について
本件処遇格差は、会社が、特定の思想を持つ従業員の組合活動を労務管理上格別に注視し、これら従業員を排除していく中で、職場新聞等編集委員会名義の新聞の配布、労働基準監督署等に対する申告等の組合活動を行っていたAらについて、会社の施策に対立する独自の組合活動を行う者として嫌悪し、その活動を封じ込め、あるいは弱体化を意図し、その一環としてAらの資格等について不利益な取扱いをしたことによるものであると認められる。このような不利益取扱い及びこのことに伴う組合に対する支配介入の行為は、不当労働行為に該当するものと解するのが相当である。
したがって、本件会社の行為を労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとした初審判断は相当である。 |
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【参考】
初審救済申立日 | 平成 | 7年8月29日 | (神奈川地労委平 | 成7年 | (不)第14号) |
同 | 9年3月31日 | ( 同 | 9年 | (不)第10号) |
同 | 10年3月30日 | ( 同 | 10年 | (不)第 6号) |
同 | 11年3月25日 | ( 同 | 11年 | (不)第 9号) |
同 | 12年3月16日 | ( 同 | 12年 | (不)第 5号) |
初審命令交付日 | 同 | 13年4月26日 | |
再審査申立日 | 同 | 13年5月 9日 | (会社) |