平成16年11月24日 |
中央労働委員会事務局審査第一課
特定独立行政法人等審査官
黒田 正彦
電話 03-5403-2166
FAX 03-5403-2250 |
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郵政省京橋郵便局等事件(配転)不当労働行為事件(平成10年(不)第2号の1)
命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成16年11月24日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I | 当事者
申立人 | 郵政産業労働組合(組合員約2,400名 平成16年9月) |
同 | 郵政産業労働組合東京地方本部(組合員780名 平成16年9月) |
同 | 郵政産業労働組合板橋支部(組合員21名 平成15年5月) |
同 | 郵政産業労働組合京橋支部(組合員56名 平成16年8月) |
同 | 個人N |
被申立人 | 日本郵政公社(東京都千代田区)(職員数約27万名 平成16年4月) |
同 | 日本郵政公社東京支社長(東京都千代田区) |
同 | 板橋郵便局長ら12郵便局長 |
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II | 事案の概要
本件は、郵政事業を郵政省が所管当時に、郵政産業労働組合(郵産労)の組合員に対する配置転換(配転)が不当労働行為に当たるかが争われた事件である。すなわち、当局が、
ア | 郵産労板橋支部長Nを平成9年9月1日付けで板橋郵便局から他局に配転したこと(板橋郵便局関係)、 |
イ | 平成9年9月1日付け及び同10年3月2日付けで郵産労京橋支部組合員Kら7名を京橋郵便局から他局に配転したこと(京橋郵便局関係)、 |
ウ | 平成9年9月1日付け及び同10年3月2日付けで郵産労京橋支部組合員Gら2名を京橋通郵便局から他局に配転したこと(京橋通郵便局関係)、 |
が、救済対象者に対する不利益取扱いであるとともに、支部長を狙い打ちにしたものである(ア)、支部の教宣活動等を制限するためのものである(イ及びウ)、36協定の締結権を剥奪することを目的としたものである(ウ)等の支配介入行為に当たるとして、救済対象者の原職復帰及び謝罪文の掲示を求めて、平成10年6月9日、当委員会に申し立てられたものである。 |
III | 命令の概要
1 | 主文
本件申立てのうち、被申立人日本郵政公社東京支社長及び同板橋郵便局長、同京橋郵便局長、同京橋通郵便局長、同東京中央郵便局長、同本郷郵便局長、同小石川郵便局長、同葛飾新宿郵便局長、同足立郵便局長、同足立西郵便局長、同杉並郵便局長、同新東京郵便局長及び同東京国際郵便局長に対する申立ては却下し、被申立人日本郵政公社総裁に対する申立ては棄却する。 |
2 | 判断の要旨
(1) | 板橋郵便局関係
ア | 人事交流の必要性と人選基準について
(1) | 東京郵政局では、人事交流を積極的に進めるため、平成8年9月、人事異動通達を発出して、職員との対話等を進めながらも最終的には職員本人が同意しない場合でも、人事異動を行うこととした。このような経緯からすると、東京郵政局管下の各郵便局長にとっては、異動に同意しない職員であっても、必要があれば異動を積極的に進めなければならない状況になっていたことが認められる。 |
(2) | 東京郵政局が留意事項通達(平成9年9月期の人事異動に当たって、留意すべき点を示した通達)において、平成9年9月期の異動候補者の2割を職場活性化の観点から人選するという方針を示した。当局は郵政事業活性化計画等によって、民間企業との競争力の強化を図ろうとしていたのであるから、その一環として、在職期間の長い職員を異動させることにより、本人の意欲の向上を期待し、職場の活性化を図ろうとしたことには、業務上の必要性が認められ、それなりに合理的な理由があるといわざるを得ない。 |
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イ | 板橋郵便局の基本方針について
板橋郵便局は留意事項通達に基づいて人事異動の基本方針を策定し、同期の異動候補者を選定した。同通達は上記判断のとおり合理的な理由があって策定されたものであるから、基本方針も業務上の必要性が認められ、特段不合理なものとはいえない。 |
ウ | 人選理由について
Nが異動候補者に選定されたのは、上司の課長が、在職期間が長く、営業等新しい施策に取り組む姿勢が消極的であるので、職場がかわることによって意欲の向上等が期待できる等の判断をし、最終的に局長が決裁したことによるものである。こうしたNの選定は、留意事項通達等に沿って行われたものであり、特段不合理であるとはいえない。 |
エ | 配転前後の労使関係について
異動を決める一連の日程からして、当局が本件異動をNの組合活動を嫌悪して決めたとは考えられない。 |
オ | 異動による不利益について
確かにNは、異動先で、新たな配達区域を覚えなければならない等の業務上の不利益を受けたことが認められるが、それは転任に伴って通常生じる勤務条件の変化であり、時間の経過により習熟とともに消滅ないし軽減する一時的なものと見られるうえに、一連の人事交流において異動した他の職員と比べて特段の不利益があるとの疎明もないことからすると、Nが本件異動によって救済を必要とするほどの不利益を受けたと見ることはできない。 |
カ | 不当労働行為の成否について
以上のことからすると、本件人事異動が労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為とはいえない。 |
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(2) | 京橋郵便局関係
ア | 人事交流の必要性、基本方針及び人選理由等について
Kら7名の異動は、上記2の(1)ア及びイと同様に、業務上の必要性とそれなりの合理性が認められる。Kら7名は、同一局での勤続経験が長く、営業施策に消極的であったことからすると、上記Nの場合と同じく、在職年数が長く、勤務態度がマンネリ化していると評価され、職場をかわることによって能力の向上が期待できるとして異動候補者とされたとしても、そのことは、他に、これを否定する特段の事情がない限り、当局が業務上の必要性に基づいて行った異動であると見ざるを得ない。 |
イ | 異動による不利益について
Kら7名については、上記Nの場合と同じく、救済を必要とするほどの不利益を受けたと見ることはできない。 |
ウ | 組合活動への影響について
本件異動が京橋支部の活動を弱体化するために行なわれたというためには、当局が組合の教宣活動を嫌悪し、特に教宣部員を京橋支部から排除する目的で人事異動を行ったということが必要であるが、その前提となる、当局が教宣部員を認識していたという事実についての疎明がない。 |
エ | 不当労働行為の成否について
以上のことからすると、本件人事異動が労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとはいえない。 |
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(3) | 京橋通郵便局関係
ア | 人事異動の必要性、基本方針及び人選理由等について
Gらの異動は、上記2の(1)ア及びイと同様に、業務上の必要性とそれなりの合理性が認められる。
Gらは同一局での勤続経験が長く、営業施策に消極的であったことからすると、上記Nや京橋郵便局から異動した京橋支部組合員の場合と同じく、在職年数が長く、勤務態度がマンネリ化していると評価され、職場をかわることによって能力の向上が期待できるとして異動候補者とされたとしても、そのことは他にこれを否定する特段の事情がない限り、当局が業務上の必要性に基づいて行った異動であると見ざるを得ない。 |
イ | 人事異動の状況等について
Gらの異動は、京橋支部が36協定の当事者でなくなった後に行われたもの等からすると、同支部から36協定の締結権を剥奪するために行われたものであるとはいえない。 |
ウ | 異動による不利益について
異動による不利益についてについては、上記Nや京橋郵便局から異動した京橋支部組合員の場合と同じく、救済を必要とするほどの不利益を受けたと見ることはできない。 |
エ | 不当労働行為の成否について
以上のことからすると、本件人事異動が労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとはいえない。 |
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(4) | 被申立人適格について
不当労働行為にかかる命令の名宛人とされる使用者は、法律上独立した権利義務の主体であることを要すると解されることから、本件の被申立人は法人である公社と判断する。同公社東京支社長らは、法人である同公社の一組織の長に過ぎない者であるから、これらの者にかかる申立ては、却下を免れない。 |
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〜以上〜