平成16年11月15日 |
中央労働委員会事務局審査第二課
審査官 笹川 康二
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250 |
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西日本旅客鉄道(福知山脱退勧奨)不当労働行為再審査事件
(平成8年(不再)第22号)命令書交付について |
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成16年11月15日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I |
当事者
再審査申立人 |
ジェーアール西日本労働組合(「JR西労」)(大阪市此花区)
組合員 約2,200名(平成10年8月現在)
ジェーアール西日本労働組合福知山地方本部(「福知山地本」)
組合員 84名(平成10年8月現在)(京都府福知山市) |
再審査被申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社(「会社」)(大阪市北区)
従業員 32,850名(平成16年4月現在) |
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1 |
本件は、会社が、(1)会社の管理職や福知山支社福知山運転所a助役をして、JR西労福知山地本福知山支部執行委員長Aら所属組合員に脱退慫慂したこと、(2)会社の管理職やa助役をして、福知山支部執行委員Bに対し、組合役員を辞するよう慫慂したことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。 |
2 |
初審大阪府地方労働委員会は、a助役らの行為は会社の不当労働行為に当たらないとして、本件救済申立てを棄却したところ、JR西労及び福知山地本は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 |
1 |
主文の要旨
本件初審命令主文を次のとおり変更する。
(1) |
組合員に対して、組合からの脱退を慫慂することにより、組合の運営に支配介入してはならない。 |
(2) |
組合役員に対して、役員の辞任を慫慂することにより、組合の運営に支配介入してはならない。 |
(3) |
上記に係る文書手交。 |
(4) |
その余の本件救済申立て及び本件再審査申立ては棄却する。 |
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2 |
判断の要旨
(1) |
JR西労組合員に対する脱退慫慂について
ア |
12.21会談におけるa助役の発言について
a助役が、A支部委員長に対し、「新しい組合へ行って、委員長をやれ。西労にいたのでは仕事がとれない」旨の発言を行ったことは、JR西労からの脱退を慫慂する行為に当たるものであり、この脱退慫慂の発言は、検修職場の業務量減と人員削減に歯止めをかけるためには、検修職場におけるJR西労組合員の占める比率を低くすることが不可欠であるとの思いから行ったものと考えられる。a助役の発言は、西労組の組合員としての活動とみなすことはできず、検修職場の業務を確保するため4項目要望の実現を図ろうとしていた助役としての職制の立場で行ったものと認めるのが相当である。 |
イ |
12.24署名について
a助役は、A支部委員長が多数の組合員を伴ってJR西労を脱退し、西労組へ加入することは難しいと考え、検修職場の十数名の主任に対して、検修職場のJR西労の組合員から組合を脱退する旨の署名(12.24署名)を集めるよう提案していることが認められる。
12.24署名にかかるa助役の行為は、署名の提案を受けた十数名の主任全員がJR西労に所属していたことからすると、検修助役という職制上の地位を利用して主任に署名活動を行わせたとみるのが相当であって、署名に応じなかった者に対し、a助役自らが説得して署名を求めたことと併せ、24日の料理屋での会談においてb支社長に検修職場における行動を認めてもらうため職制の立場に立って行った行為であるとみるのが自然である。 |
ウ |
12月24日の料理屋での会談について
12月24日の料理屋での会談は、増収活動等の実績を上げている職場を激励するための会合の一環としての位置づけで開催されたものではあるが、A支部委員長は、企画増収グループのメンバーではなかったにもかかわらず、この会合の出席者として人選され、また会合においてa助役が12.24署名をb支社長に手渡したことなどが認められる。これらのことから同会談は、会社と緊張関係にあったJR西労の組合員が、検修職場では高い比率を占めることについての会社の考え方を、支社長から直接A支部委員長に伝える場として、c運転所長の了解の下、a助役が利用したものとみるのが相当である。 |
エ |
1.23脱退届等について
a助役が、1月23日午後6時過ぎから開催された企画増収グループの会議において、JR西労所属の組合員に対して、脱退届等に署名、捺印させたことは、西鉄労の組合員であると宣言した上行われたものであったとしても、それがJR西労組合員である主任を立ち会わせて行ったこと、「わしはお前らを出向に向かうホームで見送りたくない。」と述べて、JR西労を脱退しない場合、人事異動における不利益扱いを示唆したことからすれば、a助役のかかる行為は、助役としての職制上の地位を利用してなされたものとみることが相当である。 |
オ |
不当労働行為の成否
a助役は、昇給等の調書作成により、所長に意見を具申するなど人事にも関与する立場にあった。当時、会社とJR西労の関係は、スト権論議をめぐり対立があり、a助役としては、会社は、JR西労に対し厳しい姿勢で臨んでいると理解したものと考えられる。また、料理屋での会談等の経緯から、12.21会談等におけるa助役の行為は、c運転所長または支社の黙認の下行われたものと判断される。
以上のことから、a助役が行った脱退慫慂は、職制上の地位を利用し、JR西労の組
織率が高いことを嫌って、厳しい姿勢で臨んでいる会社の意を体して行ったものとみる
ことができ、組合の運営に支配介入する不当労働行為であると認めるのが相当である。 |
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(2) |
B執行委員に対する辞任要求等について
a助役は、快速電車を運転中に事故を起こしたことから検修預かりとなっていたB執行委員を呼び出して執行委員を辞めるように求めた上、所長室にA支部委員長等を呼び出し、B執行委員、d首席助役等同席の上、B執行委員は職場の空気を乱すので預かれない旨述べてc運転所長の同意を求めたことが認められる。その直後に行われた休憩室における話し合いの席上、a助役は、B執行委員が執行委員を辞任することなどの検修で預かるための条件を提示した。a助役と、B執行委員は所長室に戻り、「B執行委員は検修で預かることにした」と述べたところ、c運転所長は、「頑張ってくれ」という趣旨の発言をした。
以上のことから、c運転所長は、B執行委員の人事配置に関するa助役の行為を暗黙のうちに了解していたとみるべきであり、a助役がB執行委員に対し、組合役員の辞任を迫ったことは、職制上の地位を利用し、会社の意を体して行った組合の運営に支配介入する不当労働行為であると認めるのが相当である。 |
(3) |
結論
以上のことからみて、a助役が、福知山支部組合員に対し、JR西労からの脱退を慫慂したこと、及びB執行委員に対し、役員辞任を慫慂したことが認められ、これらは組合に対する会社の支配介入であり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。 |
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【参考】
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本件審査の概要
初審救済申立日 |
平成4年2月21日(大阪地労委平成4年(不)第4号) |
初審命令交付日 |
平成8年5月31日 |
再審査申立日 |
平成8年6月12日(労)(中労委平成8年(不再)第22号) |
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2 |
初審命令主文要旨
本件申立てを棄却する。 |