総合福祉部会 第17回 H23.8.9 参考資料3 広田委員提出資料 精神障害者の人権  精神医療サバイバー  広田和子 1.精神障害者とは   ひとつは、精神の病気を持っている人という捉え方で、関係省庁である厚 生労働省も人数を把握していません。もうひとつは、精神の病気で医療機関 に入通院している患者という捉えかたで、一般的には後者が用いられていま す。 2.精神の病気とは   現在多発中のうつ病。100人に一人発病する可能性のあるポピュラーな統合 失調症。双極性障害(躁うつ病)。てんかん。今日的課題でもある依存症。等 オーソドックスな病気があります。また。解離性障害。人格障害。パニック 障害。強迫性障害。適応障害。心的外傷後ストレス障害(PTSD)。離人症 性障害。身体表現性障害。等多くの精神の病気があります。精神の病気は、 科学的根拠が乏しかったり医師によって診断名が異なることもありますが、 こころの病気として“家庭用医学事典”にわかりやすく紹介されています。   ここでは、精神の病気、こころの病気、両方を書いていますが、これにつ いては、患者間でも意見が分かれています。行政も、精神保健福祉法という 法律の“精神保健福祉センター設置”の条文を受けて、各都道府県及び政令 指定都市の多くは、精神保健福祉センターという名称にしていますが、横浜 市のように“こころの健康相談センター”という名称のところもあります。 3.健康保持のため“予防”を   1999年厚生労働省調査の精神障害者数は、204万人でした。この調査は、 3年ごとに行われていますが、2002年以降258万人、303万人と増加して、 最新の2008年には、323万人となりました。患者増加の原因は、心療内科、 精神科クリニック・心療所の増加等による面もあります。また受診して治る ことが難しい場合もあれば、「家族、友人、近所の人等、誰にでも気軽に話せ ればすむものを、わざわざ診察室に来て、話している」と言われることも多々 あります。そして精神科医の中には、「患者増加の原因は、製薬会社の影響だ」 と指摘している人も数多くいます。   精神の病も、他の病気と同じように、“予防”が重要です。1に安眠、2に バランスの良い食生活、3に日頃から本音を話せる信頼関係のある人を作り ましょう。安眠のために頭をリラックスさせたり、自律神経を刺激させるた め、お風呂に入ったり、水シャワーを浴びることを繰り返したり、自分に合 い無理なく続けられる方法をみつけて実行することが大事です。 4.精神科医療の実態   精神科医療によって、辛い経験をしたり、被害を受けた人達のことを言う “精神医療サバイバー”(生還者)という呼称は、世界の公式用語です。日本 国内にも精神医療サバイバーは、数多く存在しています。また、入院治療が 必要ないのに退院先のないため入院が続いている“社会的入院者”と言う入 院患者が、長年に渡って、日本中の精神科病床に存在しています。   一方で、精神科救急医療が未整備のため、受診を必要としている人が、医 療的保護を受けられず、長時間救急車の中にいたり、警察署で一晩保護され ているという現実もあります。そして、総合病院の精神科設置数が少なくて、 国を挙げて取り組んでいる重大な問題にも影響を及ぼしてもいます。 5.精神科医療の抜本的改革を早急に   まず社会的入院者の解放を。社会問題化している認知症等、新たなる社会 的入院者を作らないためにも世界の先進国で一番多い、精神科ベットを現在 の35万床から20万床ぐらいに削減すべきです。精神科は、他科に比べて医 師は3分の1、看護師は3分の2でいいと定めている差別的な精神科特例を 廃止して、普通の医療にすべきです。また、精神科は他科に比べて安い診療 報酬に抑えてありますが、これも当たり前の診療報酬にすべきです。   そして、救急車で、いつでも、誰もが、何処でも、必要に応じて利用でき る安心な精神科救急医療整備。他の病気と精神の病気を合わせ持つ(合併症) の人のためにも総合病院の精神科設置も急務です。 6.多様性を認め合う社会、良い環境づくりを。   国及び地方自治体は、借金財政です。私たち住民が「こんにちは!」と気 軽に会話をしたり、ボランティア精神を身につけ、できることを社会貢献す れば、税金を使わない“優しく豊かな地域福祉”が実現可能な面も多々あり ます。   多くの患者は、「安心して暮らせる住宅、安心して24時間利用できる精神 科医療、安心して話せるピアサポート(対等な仲間同士の支え合い)、働ける 人は、自分に合う仕事・・・・等」と望んでいます。筆者は精神科医療の被害 者として昨年、精神医療ではめずらしく被害を受けてから22年8カ月目に謝 罪されました。人間“眠れて、食べられて、生活が成り立っていれば、医療 を利用しないでいい場合も多々あります。   映画「ビューティフルマインド」の主人公、ジョンナッシュは、統合失調 症のように思えるけれど「ノーベル賞受賞できたのは、アメリカ人だったか ら」と言った福祉関係者がいます。アメリカでは、1960年代の公民権運動、 女性解放運動、消費者運動の流れの中からの障害者運動が、生まれ1989年に は、「障害を持つアメリカ人法(ADA法)」が誕生しました。