総合福祉部会 第17回 H23.8.9 資料4 障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案 (平成23年7月26日提案)修正版  ○はじめに   I 総合福祉法(仮称)の骨格提言     ○1.法の理念、目的、範囲    ●2.障害(者)の範囲    ●3.選択と決定(支給決定)    ●4.相談支援    ●5.権利擁護    ●6.支援(サービス)体系    ●7.利用者負担    ●8.報酬と人材確保    ●9.地域生活の資源整備    ●10.地域移行  ○II 新法制定までの道程       III 関連する他の法律との関係    ○1.医療    ○2.障害児    ○3.労働と雇用    ○4.その他  ○おわりに  ○その他(委員名簿等) ●は、今回(第16回総合福祉部会にて)、提案している項目。 ○は、現在、準備中の項目。 I−2 障害(者)の範囲 素案  【表題】法の対象規定 【結論】 ○障害者(障害児を含む 以下、同じ)の定義を次のように定める。 この法律において障害者(障害児を含む)とは、身体的又は精神的な機能障害 を有する者であって、その機能障害と環境に起因する障壁との間の相互作用に より、日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいう。 【要検討】「本法の支援を必要とする者」を定義に含めるべきという提案 があるが、第一に相談支援等は障害が確定されない段階から支援の対象と されるべきであり、第二に本来総合福祉法で規定されるべき支援が規定さ れない場合又は不足している場合、それらについてはそれを求めることが できなくなることはないのか。 ○上記機能障害には、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。) その他の心身の機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)を含む。 【説明】 (1)「谷間」を生まない包括的規定について  これまでの国際的、国内的確認を踏まえれば、支援を必要としている全ての障害 者をもれなく対象とする規定を設ける方向性は、全ての関係者で共有されている。 また、年齢の規定を設けることによって支援の対象から排除されることのないよう に、障害者の定義に障害児を含むものとして規定した。 (2)「身体的または精神的な機能障害」について  障害者権利条約1条の「身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害」や障害者 基本法改正案(2011年4月22日閣議決定)の「身体障害、知的障害、精神障害その 他の心身の機能の障害」という規定があることから、例示列挙的な規定も考えられ たが、例示以外が実際的には除外される危険性が高まり、新たな障害が発見・認知 される度に法改正作業が必要となるなど、多くの問題がある。そこで、法律上の障 害者の定義は包括的なものを基本として掲げ機能障害については、「身体障害、知 的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能障害(慢性疾患に伴う 機能障害を含む)」を含むという形で、例示した。  なお、「機能障害」の概念については、世界保健機構(WHO)により、ICIDH(国 際障害分類,1980年)において、「機能障害(impairments)」は「心理的、生理的 又は解剖的な構造又は機能のなんらかの喪失又は異常である」と規定され、ICF(国 際生活機能分類,2001年)においても、「著しい変異や喪失などといった、心身機 能または身体構造上の問題」とし、その網羅的な分類項目も示されている。  また、障害者権利条約においても、障害(disability)や障害者の概念を整理す る要素として「機能障害」が使われている。ICFは、「障害の理解や適切な施策推 進等の観点からその活用方策を検討する。」(2002年障害者基本計画)とあり、世 界的にも公知のものとなっている。 (3)「慢性疾患に伴う機能障害を含む」について  難病等の慢性疾患に罹患した者は、疾患に対する医療的サービスとともに、生活 の支障に対する福祉的サービスの両方が必要となる場合が多い。しかし難病などで 症状が変動する場合には「障害」と認定されず生活支援から除外されるのが一般的 である。この現状に照らせば、慢性疾患による機能障害の存在を明らかにする必要 があるため、この文言を注意的に規定した。 (4)「環境に起因する障壁との間の相互作用」について  障害者権利条約の前文(E)項を参考に、「障害」を、障害者が他の者と平等な 立場で社会に参加することが制限されていることとして捉え、そうした参加の制限 が環境の障壁との相互作用で生じていることを示すものである。なおこれは参加の 制限を解決するために障壁除去が重要であることを一般的に示すための説明であ って、本法の支援の対象者であるか否かを確認する際に、個々の障害者について具 体的に障壁や相互作用を特定する必要はない。 (5)「日常生活または社会生活に制限」について  前述のように、「障害」を障害者が社会に参加することの制限として捉える以上、 「生活」とは主要な活動であるか否かを問わず、また「制限」とは多大な支障であ るか否かを問わず、広く解される必要がある。本法の支援の対象者とすべきかどう かの主要な基準は、「制限」の有無よりもその「制限」を解決するための支援の必 要性の有無にあることを想起すべきである。 I−3 支給決定(選択と決定)素案 【表題】支給決定の在り方 【結論】 ○新たな支給決定にあたっての基本的な在り方は、以下のとおりとする。 [1]支援を必要とする障害のある本人(及び家族)の意向やその人が望む暮ら し方を最大限尊重することを基本とすること。 [2]他の者との平等を基礎として、当該個人の個別事情に即した必要十分な支 給量が保障されること。  [3]支援ガイドラインは一定程度の標準化が諮られ、透明性があること。  [4]申請から決定までわかりやすく、スムーズなものであること 【説明】  支給決定は、他の者との平等を基礎とし、障害者の意向や望む暮らしが実現 できるよう必要な支援の種類と量を確保するためのものであり、上記事項を基 本として行われなければならない。  特に、申請から決定まで分かりやすくスムーズなものにするためには、支給 決定プロセス全体についても一定の共通事項をルール化し、公平性や透明性を 担保することが大切である。また、必要書類や分かりやすい解説書を市町村役 所等、誰もが手にしやすい場所に置き、求めに応じて十分な説明をするなど、 新しい支給決定の仕組みについての周知を図ることが求められる。  さらに、支給決定のプロセスにおいても、障害者の希望に応じてコミュニケ ーション支援を提供することが求められる。 【表題】支給決定のしくみ 【結論】 ○支給決定のプロセスは、原則以下のとおりとする。 [1] 総合福祉法上の支援を求める者(法定代理人も含む)は、本人が求める支援 に関するサービス利用計画を策定し、市町村に申請を行う。 [2] 市町村は、支援を求める者に「障害」があることを確認する。 [3]市町村は、本人が策定したサービス利用計画について、市町村の支援ガイド ラインに基づき、ニーズアセスメントを行う。 [4]申請の内容が、支援ガイドラインの水準に適合しないと本人又は市町村が判 断した場合は、本人(支援者を含む)と協議調整を行い、その内容に従って、 支給決定をする。 [5][4]の協議調整が整わない場合、市町村(または圏域)に設置された第三者機 関としての合議機関において検討し、市町村は、その結果を受けて支給決定 を行う。 [6]市町村の支給決定に不服がある場合、申請をした者は都道府県等に不服申し 立てできるものとする。 【説明】  新たな仕組みにおいては、障害程度区分は使わずに支給決定をする。障害者 自立支援法の一次審査で用いられる障害程度区分認定調査項目の106項目は、 特に知的障害、精神障害については一次判定から二次判定の変更率が4割から5 割以上であり、かつ地域による格差も大きいことから、障害種別を超えた支給 決定の客観的指標とするのは問題が大きい。  新たな支給決定の仕組みが機能するための前提としては、当事者によるエン パワメント支援事業の充実や相談支援事業の充実、さらには市町村におけるニ ーズアセスメント能力の向上が図られなければならない。特に、支援ニーズを 的確に伝えることが難しい人のニーズをくみ取るためには、日常的にかかわり のある支援者等がコミュニケーション支援するなどし、本人の意思や希望が確 認されなければならない。  市町村においては、支給決定にかかわる職員等のニーズアセスメント能力の 向上が諮られなければならない。仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT) の充実も必要である。 【表題】サービス利用計画について 【結論】 ○サービス利用計画とは、総合福祉法上の支援を希望する者が、その求める支 援の内容と量を計画として作成し、市町村に提出されるものをいう。なお、 そのサービス利用計画の作成にあたり、障害者が希望する場合には、相談支 援専門員の支援を受けることができる。 【説明】  サービス利用計画は、総合福祉法による支援等を利用するにあたって、市町 村に提出する必要な支援の内容と量を示すものである。障害者がどの支援をど の程度利用したいのか、本人のニーズに基づいて利用希望を明らかにするもの である。サービス利用計画は、本人自身が策定する(セルフマネジメント)こ ともできるが、本人が希望する場合には相談支援専門員とともに策定すること もできる。サービス利用計画は、総合福祉法による支援の利用を申請する際に 提出する。 【表題】「障害」の確認について 【結論】 ○市町村は、「身体的または精神的な機能障害」があることを示す証明書によ って法律の対象となる障害者であるか否かの確認を行う。証明書は、障害者 手帳、医師の診断書、もしくは意見書、その他、障害特性に関して専門的な 知識を有する専門職の意見書を含むものとする。 【説明】  総合福祉法に基づく支援は、障害者手帳の有無にかかわらず、支援を必要と する障害者に対して提供される。機能障害を示す具体的資料としては、障害者 手帳があればそれで足りるが、まず、医師の診断書の利用が考えられる。医師 の診断書は、機能障害の存在を示す資料として、公正性が担保される点で優れ ているが、他方で、発達障害、高次脳機能障害、難病など、医師の診断書が得 にくい場合も考えられる。  医師の診断書が得られにくい場合に対処する方策としては、以下の2つがあ る。 [1]医師の診断書に限定せず、意見書でもよいものとする。 [2]「機能障害」の存在を判断する者を医師のみとせず、その他障害特性に関 して専門的な知識を有する専門職の意見書でもよいとする。  なお、精神疾患を含む難治性疾患については、生活上の制限を生み出すこと から、その診断書等の文書をもって上記診断書に代えることができる。また、 市町村によって格差が生じないように、ICF(国際生活機能分類)の「心身機能・ 身体構造」を参考にしつつ機能障害の例示列記するなど、市町村・利用者(障 害者)・医師その他の専門職に対して包括規定の内容を明らかにすることも検 討すべきである。 【表題】支援ガイドラインについて 【結論】 ○国及び市町村は、障害者の地域生活の権利の実現をはかるため、以下の基本 的視点に基づいて、支援ガイドラインを策定するものとする。 [1]国は、障害者等の参画の下に「地域で暮らす他の者との平等を基礎として生 活することを可能とする支援の水準」を支給決定のガイドラインとして策定 すること。 [2]国及び市町村のガイドラインでは、障害の種類や程度に偏ることなく、本人 の意思や社会参加する上での困難等がもれなく考慮されること。 [3]市町村は、国が示すガイドラインを最低ラインとして、策定すること。 [4]市町村のガイドラインは、障害者等が参画して策定するものとし、公開とす ること。また、適切な時期で見直すものとすること。 【説明】  ガイドラインで示す支給水準は、権利条約に規定されている障害者の「他の ものとの平等」「地域生活の実現」を基本原則にするべきである。この基本原則 に基づき、障害のある人の支援の必要度を類型化し、類型ごとの標準ケアプラ ンに基づく支給水準を示す。類型化については、長時間介護、見守り支援、複 数介護、移動支援などの必要性を含めて検討するべきである。  ガイドラインは、障害のある人が住み慣れた地域で生活していくために必要 な支援の必要度を明らかにし、その人の生活を支援する支援計画の作成過程に おいて、公費により利用できる福祉サービスを明らかにすることを目的に作ら れるものである。市町村は国のガイドラインを最低基準として、ガイドライン を策定する。策定にあたっては、当事者(障害者、家族及びその関係団体等) と行政、相談支援事業者、サービス提供事業者等の関係者が参画し、地域のそ の時点での地域生活の水準を協議しなければならない。この策定過程を通して、 当事者、行政、事業者の協働が生まれることが期待される。  なお、地域生活をする重度障害の人が少なく、当事者の声が出にくい地域な どでは、格差が広がるリスクも懸念される。そのため、当分の間は国がガイド ラインの設定指針を示し、自治体ごとにその指針内容を最低ラインとして、独 自のガイドラインを策定することとする。市町村のガイドラインは、現在の支 給決定の際に自治体で用いられている「要綱」等とは異なることから、適正に 作成されるように国が指導すべきである。さらに、財政面から国基準をそのま ま引用することがないようにするため、国のガイドライン指針を超えて、市町 村が必要に応じた支給決定ができる財源的な保障が必要となる。  さらに、国と都道府県は、各地域のガイドラインとそれに適合しない事例に かかわる情報を集約して、国の指針の見直しに反映させるとともに、その情報 を自治体やその合議機関等に提供し、各地域におけるガイドライン作成・見直 しや支給決定事務の参考に資するように努めなければならない。   【表題】協議調整 【結論】 ○サービス利用計画が、ガイドラインに示された水準やサービス内容に適合し ないと障害者本人又は市町村が判断した場合に、障害者(及び支援者)と市 町村による協議調整によりサービス内容を決定する。 【説明】  協議調整による支給決定は、障害者本人が希望する場合とガイドラインで示 される水準やサービス内容に当てはまらない事例(類型を超える時間数などが 申請された場合)について、個別の生活実態に基づいて本人と市町村間で行わ れるものをいう。  本人(支援者)と市町村の協議で調整がつかない場合には、第三者で構成さ れた合議機関での検討の結果を受けて、市町村が支給決定を行う。 【表題】合議機関の設置と機能について 【結論】 ○ 市町村は、前記の協議が整わない場合に備え、第三者機関として、当事者相 談員、相談支援専門員、地域の社会資源や障害のある人の状況をよく知る者 等を構成員とする合議機関を設置する。 ○ 合議機関は、本人のサービス利用計画に基づき、その支援の必要性を調査す るとともに、支援の内容、支給量等について判断するものとする。 ? 市町村は、合議機関での判断を尊重しなければならない。 【説明】  本人と市町村の協議で調整がつかない場合は、市町村に設置された合議機関 において検討し、その結果を受けて、市町村が支給決定を行うことができるこ ととする。  合議機関では、障害特性や障害福祉サービス等の必要性をより適切に支給決 定に反映するため、本人の状況について必要な情報をもとに個別事例について の検討を行う。合議機関は、市町村(または圏域)に複数設置され、合議機関 の構成員は第三者として公平中立な役割を担うことができる人物とすべきであ る。不服申し立てにおいて、市町村への差し戻し(再調整)請求がなされた場 合に、その市町村(または圏域)が有する他の合議機関で再調整する方法を検 討する必要がある。 【表題】不服申立について 【結論】 ○市町村は、支給決定に関する異議申し立ての仕組みを整備し、都道府県は、 市町村の支給決定に関する不服審査機関を設置する。 ○不服申立は、手続き及び内容判断の是非について審議されるものとし、本人 の出席、意見陳述及び反論の機会が与えられるものとする。 【説明】  支給決定は、一連のプロセスに基づいた行政処分であるが、本人がその決定 に不服がある場合には、極めて簡便に不服申し立てができる仕組みが求められ る。市町村や都道府県レベルの不服審査機関への手続きのハードルを低くする ため、相談支援機関に不服審査の支援等を求めることができるようにすべきで ある。 I−4 相談支援 素案 【表題】相談支援について 【結論】 ○ 相談支援の対象は、総合福祉法の対象となる者、およびその可能性が ある者とその家族を対象とする。 ○ 相談支援は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病 などの理由があって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医 療サービス利用の如何にかかわらず幅広く対応するものとする。また当事者 の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。 さらに障害のある人のニーズを明確にするとともに、その個別ニーズから新 たな地域での支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行うものとする。 【説明】 (1)相談支援事業の現状の課題 【市町村格差】  現行の自立支援法では地域生活支援事業(市町村の裁量)に位置付けられ ていること等により、実施については市町村による格差が大きい現状にある。 【基本的な相談支援体制の不備】  本来の相談支援事業のあり方が、本人および家族の相談の内容に応じて適 切な支援を行うということついて十分な理解が定着していないために、問い 合わせや情報提供といった「一般相談」をイメージした体制整備にとどまり、 具体的な生活を支援するための踏み込んだ訪問相談や同行支援、継続的な支 援を行うことが難しい状況にある。 【限定的な支援】  現状の相談支援の限界として、主に次の2点が挙げられる。 [1] 各相談事業が個別制度ごとに位置づけられて実施されているため に相談事業ごとの守備範囲によって、その対象や制度に合わせた個別的な 対応や年齢によっても分断されている現状にとどまり、その結果、限定的 な支援となってしまうか、または他の相談機関に「たらいまわし」になり がちである。 [2] 難病(難治性慢性疾患)、高次脳障害、発達障害などの手帳を所 持していない谷間の障害について十分に対応できていない。  とくに、これまで手帳を所持することなく谷間におかれてきた障害の特 性に応じた専門的な相談支援が必要な場合に、身近な地域での相談支援が 整備されていない。 【他職種・他機関との連携調整を含む横断的な相談支援体制の不備】  社会的障壁による障害の多様化を背景に、個別制度の枠を超える横断的な 課題をもった相談内容が増加している中で、障害の多様化に応じた複雑なニ ーズをもつ人の相談支援に十分にこたえきれない現状にある。こうした横断 的な相談支援体制の不備の主な要因として、他職種・他機関の連携・調整を 行う場合の制度的な枠組みがないこと、そして、これらの相談支援体制にか かわる専門職を含めた人材が大幅に不足していることなどが挙げられる。   (2)新たな相談支援の枠組み  相談支援は、障害に関するあらゆる生活のしづらさや困難に、幅広く対応す るための入口となり、その後の展開にも責任を持つことが重要であり、ワンス トップ相談を心がける。そのためには、現在分断されている発達相談、教育相 談、就労支援相談、医療相談等が統合された相談体制を作ることをめざす。実 現のためには、関係する法令、機関との調整を図りつつ、人材育成をする必要 があり、段階的に実施する。  また人口規模に見合った、身近な地域での相談支援の体制整備が必要であり、 その整備計画については、実態調査の結果に基づき、具体的に検討されるべき である。  相談支援は、地域による格差なく全国共通の仕組みで提供されるべき支援で ある。公共的立場から積極的にアウトリーチしていくことが求められることか ら、必要な相談支援の人材を確保する補助の仕組みが構築されるべきである。  また相談支援を通じて、相談支援専門員は、障害のある人や家族の意向、ニ ーズを聴き取り、それを包括的な支援に結び付けていくために、本人中心支援 計画を立案する。さらに必要に応じて、総合福祉法のサービスを利用するため のサービス利用計画を策定する。  なお、現行法の「個別支援計画」「サービス利用計画」を本人中心支援計画に 用いてはならない。 【表題】相談支援機関の設置と果たすべき機能について 【結論】 ○人口規模による一定の圏域ごとに、地域相談支援センター、総合相談支援セ ンターの配置を基本とし、エンパワメント支援事業を含む複合的な相談支援 体制を整備する。 ○身近な地域での障害種別や課題別、年齢別によらないワンストップの相談支 援体制の整備充実、一定の地域における総合的な相談支援体制の拡充を行い、 さらに広域の障害特性に応じた専門相談支援や他領域の相談支援(総称して 以下、特定専門相談センター)との連携やサポート体制の整備を行う。 ○身近な地域での障害当事者(その家族を含む)のエンパワメントを目的とす るピアサポートや家族自身による相談支援を充実する。(エンパワメント支援 事業) ○ 地域相談支援センター、総合相談支援センター(総称して、以下「相 談支援事業所」とする)は、障害当事者の側に立って支援することから、給付 の決定を行う市町村行政やサービス提供を行う事業所からの独立性が担保され る必要がある。 【説明】 ・地域相談支援センターの規模と役割  もっとも住民の生活に身近な圏域(人口3〜5万人に1ヶ所を基準とする) を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業 を委託して設置する。本人に寄り添った相談支援(アウトリーチを含む)、継 続的な相談支援を行う。  具体的には、以下の本人および家族等への対応を想定する。 [1] 支援を受ければ、ある程度の希望の実現やニーズの解決が想定できる人。 [2] 生活の質の維持や社会参加に継続してサービスを利用する必要があり、ま た希望の表明や制度手続き、サービス調整などに一貫した支援を希望する 人。 [3] 社会資源の活用をしておらず、生活が困難な状態にあり社会参加が果たせ ていない人(手帳をもたない人も含む)。 [4] 部分的にサービス等を利用しているものの、生活の立て直しを必要として いる人。 [5] 既存のサービス等では解決困難な生活課題を抱えている人。 [6] 家族等の身近な関係のなかで問題を主体的に相談できる人がおらず、踏み 込んだ支援を必要としている人(虐待を含む)。 [7]その他、相談支援を希望する人。  また、迅速にニーズに応えるため、シンプルかつネットワークする相談支 援体制をめざし、「地域相談支援センター」の人材と機能を強化していく。  なお、地域相談支援センターのみの支援では困難な場合は、総合相談セン ターおよび特定専門相談機関に協力や助言、直接の対応を要請する。   地域相談支援センターに所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に 本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できる。 ・総合相談支援センターの規模と役割  15万〜30万人の圏域を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を 満たした事業者に事業を委託して設置する。  総合相談支援センターの職員の配置基準に手話通訳士有資格者やろうあ者 相談員等を入れる。  相談支援のなかでは、特に複雑な相談事例について対応する。具体的には 地域相談支援センターからの要請に応じて[3][4][5][6]の相談者の 対応にあたる他、長期に入院・入所をしている人の地域生活への移行の相談 、刑務所等から出所してくる人の相談等に対応する。また地域相談支援セン ターへの巡回を含めた相談支援専門員のスーパービジョン、および人材育成 (研修)を行う。  総合相談支援センターに所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に 本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できる。   ・特定専門相談支援センターの規模と役割  都道府県を単位として設置され、障害特性に応じた専門相談を担う。  具体的には、身体障害者総合相談センター、知的障害者総合センター、精 神保健福祉センター、発達障害者支援センター、視覚障害者支援センター、 聴覚障害者支援センター、難病相談支援センター、地域定着支援センターな どを含み、障害種別、特性に応じた専門的な相談を実施する。  地域相談支援センター及び総合相談支援センター等への専門的助言や専門 的人材の養成支援を行う。また、本人中心支援計画・サービス利用計画策定 にあたっての助言を行う。   とくに、障害特性に応じた専門相談(重度障害でなおかつ医療と連携が必 要な場合や難病などの難治性慢性疾患に伴う機能障害など)については、「I ‐6支援(サービス)体系」の「9.医療的ケアの拡充」の内容に基づいて、 地域相談支援センター、総合相談支援センター、特定専門相談支援センター 相互の緊密な連携協力を行い、地域で暮らせる相談支援が必要となる。 ・相談支援事業所  市町村、サービス事業所からの独立性を担保するために、都道府県が指定す ることを基本とし、地域の実情に合わせて障害保健福祉圏域単位や市町村域の 単位で障害当事者や障害福祉関係者、行政関係者が参画する運営委員会の設置 などを通じて、必ず運営のチェックが実施されることを担保する。 【表題】本人(及び家族)をエンパワメントするシステムについて 【結論】 ○地域におけるエンパワメント支援については、身近な地域での相談支援体制 (市町村、広域圏、人口5万〜30万人)に最低1ケ所以上、障害のある当 事者等によるピアサポート体制(エンパワメント支援事業)を位置づける。 ○エンパワメント支援事業の目的は、障害のある人たちのグループ活動、交流 の場の提供、障害当事者による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験 室、ピアカウンセリングなどを提供することで、地域の障害者のエンパワメ ントを促進することを目的とする。 ○エンパワメント支援事業の実施主体は、当事者やその家族が過半数を占める 協議体によって運営される団体とする。 ○エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。 ○ 本人(及び家族)をエンパワメントするシステムの整備については、当事者 リーダーや、真に障害者をエンパワメントできる当事者組織の養成を図りつ つ、段階的に実施する。 【説明】  実際に地域で生活する障害者の自己決定・自己選択を支援し、エンパワメ ントを支援しているのは、本人のことをよく理解する家族や支援者であると ともに、各地の自立生活センター(CIL)や知的障害の本人活動、各種の難病 や精神障害等の仲間によるさまざまな当事者相互支援活動(セルフヘルプグ ループ)である。  問題は、一定の当事者リーダーとその活動をサポートする仕組みが存在す る地域と、存在しない地域の大きな格差である。  制度改革にあたっては、当事者リーダー養成や、真に障害者をエンパワメ ントできる当事者組織とその活動を公的にサポートする仕組みを創出してい くべきである。なお、アメリカにおいては、リハビリテーション法第7章に おいて、自立生活センターのピアカウンセリングと権利擁護活動等が補助金 化されており、また2001年度のメディケイドの改正で、精神障害者のピ アサポートが予算可能プログラム化されている。  その方法については、各地の取り組みが参考となるが、今後は、当事者活 動を先進的に取り組む地域をモデル指定し、その成果を検証しながら、全国 的に格差を解消していくことが望まれる。  また、ディアクティビティセンター【名称はP】の主なサービスのなかに、 交流の場の提供やグループ活動を位置づけて、エンパワメント支援を行うこ とも必要である。 【表題】相談支援専門員の理念と役割 【結論】  相談支援専門員(仮称)に関する理念と役割を示すことが重要である。 ○相談支援専門員(仮称)の基本理念は、すべての人間の尊厳を認め、いかなる 状況においても自己決定を尊重し、当事者(本人および家族)との信頼関係 を築き、人権と社会正義を実践の根底に置くことである。 ○上記の理念に基づき、相談支援専門員は、本人の意向、ニーズを聴き取り、 必要に応じて本人中心支援計画およびサービス利用計画の策定にかかる支援 を行う。具体的には、本人のニーズを満たすために制度に基づく支援に結び つけるだけでなく、制度に基づかない支援を含む福祉に限らない教育、医療、 労働、経済保障、住宅制度等々あらゆる資源の動員を図る努力をする。また 資源の不足などについて、その解決に向けて活動することも重要である。 【説明】  (1)相談支援専門員の役割 ・ 相談支援専門員は、相談する当事者(本人・家族など)の利益のために存 在することを一義とする。そのためには福祉サービス等を決定し提供する 役割から独立することを原則とする。但し、行政において相談に応じ、支 給決定にかかわる職員は相談支援専門員の研修を受けた者であることが望 ましい。 ・ 相談支援専門員のなかにはソーシャルワークに関する理念・知識・技術 をもって業務を遂行する者が必要である。加えてスーパーバイザーとして の役割や、障害者の地域生活支援システムのコーディネーターとしての役 割を担う者が必要である。 ・ 相談支援専門員は当事者に寄り添い、信頼関係のもと当事者の生活を成 立させ、継続でき、夢・希望などを叶えることを含む個々の人生を支援す る専門職である。本人によって選択される立場にあることから、相談支援 専門員を選択できる体制整備も必要である。 聴覚障害者、知的障害者等、 コミュニケーション支援を必要とする障害者のニーズを把握し、本人の意 思を理解するために、それぞれの障害の知識、コミュニケーション技能を 身に付けた専門性のある相談支援員の配置等も必要である。 ・当事者が相談支援専門員となり、地域の相談支援体制全般において、協 働することが望ましい。尚、当事者が相談支援専門員になる際には、当事 者としての生活経験などを実務経験として勘案するなどを検討すべきであ る。 (2)本人中心支援計画について ・ 本人中心支援計画とは、本人の希望に基づいて、相談支援事業所(地域 相談支援センター、総合相談支援センター)の相談支援専門員が本人(及 び支援者)とともに立案する生活設計の総合的なプランとする。本人の希 望を聴き取り、その実現にむけた本人のニーズとその支援のあり方(イン フォーマルな支援も含めたもの)の総合的な計画策定となる。 ・ 本人中心計画の策定の目的は、本人の思いや希望を明確化していくこと であり、それを本人並びに本人とかかわりのある人(支援者を含む)と共 有し、実現に向けてコーディネートしていくことである。 ・ 本人中心支援計画立案の対象となるのは、セルフマネジメントが難しい 支援付き自己決定が必要な人である。なお、本人中心の支援計画の作成に 参加するのは、本人と本人のことをよく理解する家族や支援者、相談支援 専門員である。 (3)相談支援専門員の業務 ・相談支援専門員は、具体的には以下のような業務内容を担う。 [1]利用者の包括的なニーズを把握する。とくに、聴覚、視覚障害、知的障害 のある人などの意思疎通や情報を知ることに難しさを抱える人向けに、相 談支援事業者の所在地や相談方法(誰に、どのようなことを、どのように 相談できるか)などについて、情報提供を十分に行う。 [2]依頼を受けた場合には、ニーズ中心の支援計画(本人中心支援計画/サービ ス利用計画)を本人とともに立案する。 [3]本人の地域生活のニーズを満たすために、総合的なフォーマル・インフォ ーマルサービスの利用、支給決定のために行政等関係機関との協議を行い 調整する。 [4]本人と必要に応じてサービスを提供する者が参加するケア会議を開催 し、必要に応じて複数のサービスを提供する者等との個別調整はもちろん、 調整のための会議などを開き運営する。 [5]サービス資源が不足しているときは必要なサービス(社会資源)の開発 につなげる。 [6]相談プロセスを通じて、利用者の権利擁護を行う。 [7]サービスの質の評価を行う、等。 【表題】相談支援専門員の研修 【結論】 ○国は研修要綱を定め、都道府県において研修の企画から実施までの実務を担 う者に対する指導者研修を行う。 ○都道府県が実施する研修には基礎研修、フォローアップ研修、専門研修、更 新研修、その他などがある。都道府県は地域生活支援協議会に人材育成の部 会を設け、指導者研修修了者とともに企画し実施するが、研修運営などにつ いて委託することもできる。 ○研修の実施にあたっては、当事者が研修企画や講師となって研修を提供する 側になること、または研修を受ける側にもなるなど、研修への当事者の参画 を支援することが重要である。 【説明】  現在行われている相談支援従事者研修は、一部サービス管理者研修と一体的 に行われるなど、相談支援専門員固有の役割、機能を習得する研修としては内 容が不十分と言わざるを得ない。新法で求められる内容を整理し、相談支援専 門員の研修体制については、研修カリキュラム内容の充実とその体制の確立が 諮られる必要がある。  すべての相談支援専門員は実務経験に基づき、一定の年限ごとに実践的な研 修を義務づけられる。  将来的には相談支援専門員の質を担保するうえでソーシャルワーク専門職を 基礎資格とすることを目指すべきである。そのためには、現行の専門職養成課 程では、その内容が不十分であり、今般の障害者制度改革の趣旨に照らし、必 要な見直しが諮られるべきである。 当事者(本人および家族)との連携は、本人中心の支援を行うにあたり、重 要な課題である。当事者が相談支援専門員となり、地域の相談支援体制全般に おいて、協働することが望ましい。なお、当事者が相談支援専門員になる際に は、当事者としての生活経験などを実務経験として勘案するなどを検討すべき である。 I−5 権利擁護 素案 【表題】サービス利用者の権利擁護制度 【結論】 ○総合福祉法における権利擁護は、サービスを利用する障害者のそれぞれの生 活領域(居宅、グループホーム、入所施設などにおける生活、就労現場など) や場面(精神病院からの退院促進を含む地域移行)において、本人が孤立し てかかえる苦情や差別的な取扱い、虐待その他の人権侵害から、総合福祉法 の目的と理念にかかげる権利を擁護し、侵害された権利の救済を図ることに よって、本人がエンパワメントしていく過程をいう。 ○国は、上記の総合福祉法における権利擁護を実現するための体制整備を行う とともに、差別的取り扱いや虐待などの関係する法制度との柔軟で効果的な 連携協力が必要である。 【説明】  現在、権利擁護と相談支援に関しては、支援を提供する主体や支援の内容に おいて、必ずしも、それらの違いや相互関係又は役割分担など深まった議論が なされているとは言い難い面もある。 しかしながら、相談支援の内容の一部として、もしくは別個の問題として「権 利擁護」が独自の分野として、その必要性が強く語られてきたこともまた明白 である。  そこで、本骨格提言においても、障害者総合福祉法における権利擁護の意義 を盛り込み、かつまた、他の法律における権利擁護との関係等について、触れ ることにしたものである。 【表題】第三者の訪問による権利擁護制度 【結論】 ○国は、入院・入所者、グループホーム等の居宅者などの求めに応じ、当事者 を含む権利擁護サポーター等の第三者が訪問面会を行う権利擁護のための体 制整備を行うことが必要である。 ※「入院中の精神障害者の権利擁護」については、IIIを参照。 ※「障害児の施設入所と権利擁護」については、IIIを参照。 【説明】  入院・入所者、グループホーム等の居宅者への権利擁護制度の創設は、地域 移行のプログラムにとっても重要である。地域移行プログラムは、障害者の意 思とその決定を確認し、それを実現するためのものであり、入所者・入院者、 グループホーム等の居宅者が自ら選ぶことを基本としたものである。従って、 入院・入所者、グループホーム等の居宅者への訪問活動を中心とする権利擁護 制度が同時に整備されるべきである。  地域移行と定着の過程で、本人の意思を無視したり、支援側のプランを押し 付けたりしないよう、入院・入所者、グループホーム等の居宅者に対しては権 利擁護サポーターなどが配置されるのも有効で、そのサポーターを当事者が担 うこともあり得る。この場合、権利擁護サポーターの独立性が重要となる。  都道府県ないし政令指定都市単位で、在宅での生活または就労している障害 者、入院・入所者、グループホーム等居宅者に対して個別に権利擁護の支援を 行う、権利擁護サポーターを位置づけた独立の権利擁護機関やオンブズパーソ ン制度の創設などが都道府県ないし政令指定都市単位で求められる。  なお、このオンブズパーソン制度とは、元々スウェーデンで始まった、行政 に対する苦情処理と監察を行う第三者機関制度のことであり、福祉領域でも施 設での権利侵害等に対する独自の調査と改善を求める機関として機能してい る。 【表題】権利擁護と虐待防止 【結論】 ○総合福祉法においては、サービスを提供する事業者の責務として、虐待や人 権侵害をしてはならないことを明記するべきである。 ○虐待が発生した場合には、サービスを提供する事業者やその関係者などは早 期の発見と通報を行い、都道府県の権利擁護センターや市町村の虐待防止セ ンターなどと連携協力しなければならない。また、虐待を未然に防ぐための 恒常的な「オンブズパースン制度」の活用が必要である。 ※オンブズパーソン制度と虐待防止法については、IIIを参照。 【説明】  現行の障害者自立支援法の「市町村の責務」では、障害者等に対する虐待の 防止と早期発見、そのための関係機関と連絡調整を行うことなどが明記されて いる。総合福祉法においては、市町村と都道府県の責務として、虐待の防止と 早期発見、権利擁護のための必要な援助を行う効果的な仕組みをつくることを より明確にする必要がある 【表題】サービスに関する苦情解決のためのサポート 【結論】 ○総合福祉法で提供されるサービスに関して苦情を解決するためには、[1]寄り 添い型の相談支援、[2]サポート機関、の二つが必要である。 ○寄り添い型の相談支援とは、苦情という形で問題化する以前の段階での相談 であり、障害当事者とその関係者からの話を丁寧に聞きとる事前相談を基本 とする支援をいう。相談支援機関には、とくに本人の意向に沿った支援をす る役割が求められる。 ○サポート機関については、サービスに対する苦情をかかえた本人の側に立っ て、権利擁護の観点から苦情解決に向けて対応する相談機関も含むサポート 機関が必要である。 ※苦情解決機関(社会福祉法)については、IIIを参照。 【説明】  地域生活の資源整備や重点的な基盤整備があり、選べるだけの選択肢が地域 に存在し、その上で苦情解決や第三者評価の仕組み作りが重要になる。基盤整 備(量的な確保)が進まない中での質の確保はあり得ない。また苦情という形 で問題化する以前の段階での、障害当事者とその関係者からの話をじっくり聞 く、事前相談や寄り添い型の相談支援の仕組みが必要である。  上記を満たした上で、それでも改善されない、あるいは実際に起こってしま った苦情については、実態として権利を保障するための苦情解決に向けた相談 を含むサポート機関が必要である。このサポート機関においては、在宅生活に おいて自身の意向を伝えにくい(エンパワメントされていない)障害者に関し ては、第三者が本人の意向をくみ取る支援の仕組みが必要である。 【表題】モニタリング機関 ※モニタリング機関については、IIIを参照。 【表題】権利擁護と差別禁止の普及啓発 ※権利擁護と差別禁止の普及啓発については、IIIを参照。 I−6 支援体系 素案 【表題】支援体系について 【結論】 ○障害者の支援体系を以下の通り提案する。 A.全国共通の仕組みで提供される支援 1.就労支援 2.日中活動等支援 3.居住支援 4.個別生活支援 5.コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援 6.補装具・日常生活用具 7.相談支援 B.地域の実情に応じて提供される支援 8.市町村独自支援 ・福祉ホーム ・居住サポート ・その他 C.支援体系を機能させるために必要な事項9.医療的ケアの拡充について 10.日中活動の場等における定員の緩和等について 11.日中活動の場への通所保障について 12.グループホームでの生活を支える仕組みについて 13.グループホーム等、暮らしの場の設置促進について 14.一般住宅やグループホームへの家賃補助について 15.他分野との役割分担・財源調整 *現行の施設入所支援については「地域移行」の項を参照。 *自立支援医療については「利用者負担」の項を参照。 【説明】  今後の支援体系について、障害者権利条約をふまえ障害当事者主体(自律・自己 決定)のもと、地域生活が可能(施設・病院から地域自立生活への移行を含む)と なるような支援体系として構築する必要がある。  また、現行の「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」といった体系は、「介 護保険との整合性」を意識した制度構築の結果である。さらには、「介護給付」とい う名称も、そのニードと支援実態を適切に表しているとは言い難い上に、介護保険 の「介護保険給付」との混同も生みかねない。また、障害程度区分は介護給付の利 用に対してのみ適用しているが、障害程度区分の廃止に伴い、介護給付と訓練等給 付に分ける必要性がなくなる。  「全国共通の仕組みで提供される支援」(A)については国庫負担基準を廃止し、 市町村がサービス提供に要した実際の費用に対して国・都道府県が負担することと する。さらに、長時間(一日8時間を超える)介護サービスに関しては、国庫負担 基準額を超えて負担している市町村の負担を軽減する等の仕組みを設け、全国どこ でも必要な支援が得られるようにする。  ただ、自立支援法に基づく地域生活支援事業のような市町村の創意工夫、裁量で 可能となる支援の仕組みは、メニュー事業を中心に残しておく必要はある。しかし、 大きな地域格差が出ている現状から、全ての自治体で一定水準の事業ができるよう な財政面を含めた新たな仕組みが必要であり、名称も地域生活支援事業ではなく「市 町村独自支援」(B)とする。 A.全国共通の仕組みで提供される支援 1.就労支援について 【表題】就労支援の仕組みの総合福祉法における位置づけ 【結論】 ○障害のある人への就労支援の仕組みとして、「障害者就労センター」と「デイアク ティビティセンター(呼称はP、以下同様)」(作業活動支援部門)を創設する。 ○社会的雇用等多様な働き方についての試行事業(パイロットスタディ)を実施し、 その検証結果を踏まえて、施行後3年をめどに障害者の就労支援の仕組みを見直 す。 【説明】  現行の障害者自立支援法などにより制度化されている、就労移行支援事業・就労 継続支援A型及びB型事業・生産活動に取組む生活介護事業・地域活動支援センタ ー・小規模作業所などを、新法では「障害者就労センター」と「デイアクティビテ ィセンター(作業活動支援部門)」として再編成する。新法の支援体系への移行には、 十分な経過措置期間を設ける。これらの対象者については、障害者本人のニーズを 基本に、本人にとって最も適切なサービスを選択・決定できるよう、必要な支援を 行う。なお、現行の就労移行支援事業は、障害者就業・生活支援センターなど、労 働施策に統合する。  「障害者就労センター」は障害者が必要な支援を受けながら働く場であり、そこ で就労する障害者には、一人ひとりの労働実態等に応じて労働法を全面適用または 部分適用する。官公需や民需の安定確保の仕組みの構築や同センターの経営基盤の 強化、ならびに賃金補填の制度化などにより、そこで就労する障害者に最低賃金以 上を確保する。また、同センターで就労する障害者のうち、一般就労・自営を希望 する者については、ハローワークなど労働関係機関などと密接に協力・連携し、一 般就労・自営への移行支援および移行後のフォローアップ支援を積極的に行う。利 用期間には、期限を設けない。また、利用料の徴収はしない。  「デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)」では、作業活動による収入 から必要経費を控除した額に相当する金額を利用者に配分する。作業活動による収 入を高めるため、「障害者就労センター」と同様の事業振興策の構築を行うこととし、 労働者災害補償保険法にかわる保障制度の確立を検討する。就労を主目的とした場 ではないため、労働法の適用はない。利用者の生活費は、基本的には障害基礎年金 や障害者手当などの所得保障制度でカバーする。また、同センター(作業活動支援 部門)を利用する障害者のうち、一般就労・自営、あるいは、「障害者就労センター」 への移行を希望する者については、その移行支援および移行後のフォローアップ支 援を積極的に行う。「障害者就労センター」同様、利用期間の期限はなく、利用料も 徴収しない。  なお、当面は障害者就労センターへの官公需や民需の安定確保の仕組みの構築や 同センターの経営基盤の強化等により、工賃の増額を図る。あわせて、就労合同作 業チーム報告書で提案している「試行事業(パイロット・スタディ)」を実施し、そ の検証結果を踏まえ、障害者の就労支援の仕組みを施行後3年をめどに見直しつつ、 賃金補填の制度化についても検討する。見直しにあたっては、障害者雇用促進法あ るいはそれにかわる新法(労働法)で規定することも含め、検討する。 2.日中活動等支援について([1]デイアクティビティセンターの創設、[2]ショ ートステイ・日中一時支援等) 【表題】[1]デイアクティビティセンターについて 【結論】 ○デイアクティビティセンターを創設する。 ○デイアクティビティセンターでは、作業活動支援、文化・創作活動支援、自立支 援(生活訓練・機能訓練)、社会参加支援、居場所機能等、多様な社会活動を展開す る。 ○医療的ケアを必要とする人等が利用できるような濃厚な支援体制を整備する等、 利用者との信頼関係に基づく支援の質を確保するために必要な措置を講じる。 【説明】  自立支援法に基づく生活介護や自立訓練、地域活動支援センター等の機能を果た す場としてデイアクティビティセンターを創設し、よりシンプルな支援体系とする。 個別給付の利点を活かして、個々人の必要に応じた支援に対する支給決定に基づく 個別支援計画で、多様な要望に応えられるよう、日中活動プログラムを提供する。  デイアクティビティセンターの作業活動支援部門は労働法規が適用されない働く 場だが、障害者就労センターや一般就労との行き来を可能とし、障害者の就労を支 える仕組みの一環にも位置付けられる。一方、障害者の社会参加のありかたの多様 性を認める必要がある。就労せずとも地域の中で自尊心をもって自らの役割を果た していける環境を確保することが重要であり、文化・創作活動、社会参加や居場所 機能などについても、しっかりと日中活動等支援に位置付けることが重要である。  また、支援の質を確保するため、プログラムの標準化・職員配置及び建物設備等 の基準の設定を行う。なおその際、医療的ケアが必要な人や移動・コミュニケーシ ョンへの支援が必要な人の利用を想定した基準を設けることとする。また、自治体 はこれらの基準等を踏まえて、同センターを計画的に整備する。   【表題】[2]日中一時支援、ショートステイについて 【結論】 ○日中一時支援は、全国どこでも使えるようにするため、個別給付にする。 ○ショートステイは、医療的ケアを必要とする人も安心して利用できるよう条件整 備をする。 【説明】  現行の日中一時支援事業は地域生活支援事業の選択事業であり、助成金や報酬が 少ないため受託する事業所が少なく、事業を停止する事業者がみられる。事業者が ないとの理由で実施していない市町村も多いようである。全国どこでも使えるよう にするために、新法の日中一時支援は従来のショートステイの日中利用のように個 別給付とする。  ショートステイは、家族を含む介護者のレスパイトを保障し、社会的入院・入所 を生み出さないための重要な事業である。また、ショートステイについても医療的 ケアを必要とする人に配慮した条件整備をする。   3.居住支援サービスについて 【表題】グループホーム・ケアホームの制度について 【結論】 ○グループホームとケアホームをグルーホームに一本化する。グループホームの定 員規模は家庭的な環境として4〜5人を上限規模とすることを原則とし、提供す る支援は、住まいと基本的な日常生活上の支援とする。 【説明】  地域社会で自立生活をすすめるための共同住居(家)という原点に立った制度構築 をする。グループホーム等での支援は、居住空間確保及び基本的な生活支援、家事 支援、夜間支援とし、一人ひとりに必要なパーソナルな支援については個別生活支 援を利用できるようにする。一人ひとりがよりその人らしさを発揮できる状況を生 み出し、住民として暮らしていくことが大切である。一方、グループホーム等は「特 定の生活様式を義務づけられない」ためにも、自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢 の一つだと考える必要がある。  グルーホーム、ケアホームは実態からしてもグループホームで統一すべきである。 また、定員規模は、生活の場なので家庭に近い規模にすべきであり、また、仲間と 関係性のなかで視野に入る人数の限界からも、4人から5人とする。  なお、市町村独自事業の福祉ホームがグループホームへの移行を希望する場合に は、移行できるようにする。     4.個別生活支援について([1]パーソナルアシスタンスの創設、[2]居宅介護【身体 介護・家事援助】、[3]移動介護【移動支援・行動援護・同行援護】) 【表題】[1]重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設 【結論】 ○パーソナルアシスタンスとは、1)利用者の主導(支援を受けての主導を含む) による、2)個別の関係性の下での、3)包括性と継続性を備えた生活支援であ る。 ○パーソナルアシスタンス制度の創設に向けて、現行の重度訪問介護を充実発展さ せる。 ○対象者は重度の肢体不自由者に限定せず、日常生活全般に常時の支援を要するす べての障害者が利用できるようにする。また、障害児が必要に応じてパーソナル アシスタンス制度を使えるようにする。 ○重度訪問介護の利用に関する利用範囲の制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・ 通学・入院時・1日の範囲を越える外出・運転介助にも利用できるようにすべきで ある。また、金銭管理やサービス利用の支援、見守りも含めた利用者の精神的安 定のための配慮等もパーソナルアシスタンスによる支援に加える。 ○パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、 OJTを基本にした研修プログラムとし、実際に障害者の介護に入った実経験時 間等を評価するものとする。 【説明】  重度訪問介護を発展させ、パーソナルアシスタンス制度を創設するにあたっては、 1)利用者の主導(ヘルパーや事業所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)、 2)個別の関係性(事業所が派遣する不特定の者が行う介護ではなく利用者の信任 を得た特定の者が行う支援)、3)包括性と継続性(援助の体系によって分割・断続 的に提供される介護ではなく利用者の生活と一体になって継続的に提供される支 援)が確保される必要がある。  現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由者 であって常時介護を要する障害者」(第5条2)、に限定されているが、障害の社会 モデルを前提とする障害者権利条約及び谷間のない制度をめざす総合福祉法(仮称) の趣旨を踏まえれば、このようなインペアメントの種別と医学モデルに基づく利用 制限は見直しが必要である。「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の 事態に対応するための見守り等の支援及び外出介護などが、比較的長時間にわたり、 総合的かつ断続的に提供されるような支援」(2007年2月厚生労働省事務連絡)を 難病/高次脳機能障害/盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」 (同)すべての障害者に対して利用可能とする。  特に、重度自閉/知的障害者等で行動障害が激しい等の理由で、これまで入所施 設や病院からの地域移行が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するために は、常時の見守り支援を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度訪 問介護の対象となっていない児童についても対象とする。パーソナルアシスタンス は、利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるか をふまえることが求められる。そのため資格取得のための研修は、現在の重度訪問 介護研修よりも従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にしたものとする 必要がある。 【表題】[2]居宅介護(身体介護・家事援助)の改善 【結論】 ○現行の居宅介護を改善した上で、個別生活支援に位置付ける。 【説明】  居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズから来るキャ ンセルや待機などへの対応等、柔軟な利用ができ、評価される仕組みにすべきであ る。  居宅介護は、家族が同居する場合やグループホームで生活する場合、更に障害児 にも利用可能とする。   【表題】[3]移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)の個別給付化 【結論】 ○視覚障害者・児のみならず、すべての障害者・児の移動介護を個別給付として、 国の財政責任を明確にすべきである。 ○障害児の通学や通園のために移動介護を利用できるようにする。 【説明】  「歩く」「動く」は「話す」「聞く」「見る」と同様、基本的権利であるため、自治 体の裁量で行う支援には馴染まないため、移動介護(移動支援、行動援護、同行援 護)は個別給付とし、国1/2・都道府県1/4の補助金清算という仕組みにする等、国・ 都道府県の財政支援を強化する。また、車(障害者の自家用車や障害者が借用した 車を指す。)を移動の手段として認める。  移動介護の対象は視覚障害児者に限定するのではなく、支援を必要とするすべて の障害者が利用できるものとする。 5.コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援について 【表題】コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援について 【結論】 ○コミュニケーション支援は、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で行 政や事業者が対応すべき必要な基準を設け、その費用は求めない。 ○ガイドコミュニケート支援に関しては、盲ろう者の支援ニーズの特殊性・多様性、 さらにその存在の希少性等の事情から都道府県での実施とし、個別のニーズに応 じたコミュニケーションと情報入手に関わる支援、移動介助等を一体的に利用で きるようにする。 【説明】  ガイドコミュニケート支援とは、盲ろう者向けの通訳・介助を指す。コミュニケ ーション支援とガイドコミュニケート支援は、「話す」「聞く」「見る」「歩く」「動く」 という基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものでありながら、 現状では自治体が個別に判断している。そのことによる自治体間格差も深刻な問題 である。これらのサービスは、障害者の地域生活支援に不可欠であり、かつ今まで その権利性が十分に認められてこなかった支援類型である。 6.補装具・日常生活用具サービスについて 【表題】補装具・日常生活用具サービスについて 【結論】 ○日常生活用具は補装具と同様に、個別給付とする。 【説明】  日常生活用具給付等事業は、自立支援給付である補装具との明確な定義上の違い も不明瞭であり、障害者の地域生活には不可欠である。 7.相談支援について 「相談支援」の項参照 B.地域の実情に応じて提供される支援 8.市町村独自支援について 【表題】市町村独自支援について 【結論】 ○現在、地域生活支援事業の下で実施されているものは、できるだけ個別給付・負 担金とし、柔軟な形の障害者の社会参加を進めるもの等自治体の裁量として残す 方がよいものは、市町村独自支援として事業を残す。 ○現行の福祉ホームと居住サポート事業は市町村独自支援として継続し、前者はグ ループホームへの移行を可能にする。 【説明】 ・現在の地域活動支援センターでの活動は多岐に及び、支給決定プロセスを経ずに、 より柔軟な形で障害者の社会参加支援を進めているところもある。そうした活動に ついては全国共通の仕組みとは別に、市町村独自事業として実施できるようにする。 ・現行の福祉ホームについては当面は市町村独自支援に位置付けつつ、希望すれば グループホームへ移行できるようにする。 ・現行の居住サポート事業については必要な機能であるが、受託する事業者が少な く、住宅部門との連携も不十分であり、実施市町村も多くない。福祉分門だけでは なく、住宅部門と連携した形の実効性のある居住サポートの仕組みが必要である。 また、グループホーム等から単身生活に移行する場合も事業対象とする。同事業は、 相談支援事業の付帯事業的な位置づけとなっており、住居の確保や緊急時対応など 限定的な場面に限られているが、地域での安心できる暮らしを継続的にサポートす る訪問型の生活支援として機能強化し、独立して運営可能な支援とする必要がある。 C.支援(サービス)体系を機能させるために必要な事項 9.医療的ケアの拡充について 【表題】医療的ケアの拡充について 【結論】 ○日中活動支援の一つであるデイアクティビティセンターにおいて看護師を複数配 置する等、濃厚な医療的ケアが必要な人でも希望すれば同センターを利用できる ような支援体制を確保する。併せて重症心身障害者については、児童期から成人 期にわたり、医療を含む支援体制が継続的に一貫して提供される仕組みを創設す る。 ○地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼 吸器操作などを含む)が、本人や家族が行うのと同等の生活支援行為として、学 校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保される。 ○入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー等)によってサポートが得られ るようにして、必要な医療を得ながら地域生活が継続できるようにする。 【説明】  最近、特に濃厚な医療的ケアを必要とする超重症児といわれる人たちが増加の傾 向にあり、このため医療型の通所の場の整備が要請されている。デイアクティビテ ィセンターは重症心身障害児・者が利用することも想定されており、その際には看 護師の複数配置を必須要件とする。濃厚な医療的ケアを必要とする重症心身障害者 が、18歳に達したことを理由に別体系の事業への利用変更を求められ支援者も支援 の方法も変わることは、生命の危機にもつながる重大な環境の変化であることから、 仮に法律体系が変わるとしても人権が守られ年齢相応の生活を送ることができるよ う、一貫した支援体制が取れるようにする。  また、生活支援行為としての医療的ケアとは、個別性を重視して十分な信頼関係 のあるヘルパーが、本人や家族が行うのと同等な行為として特定の者に医療的ケア を行うということであり、よく知っている介助者が研修や訓練を無理なく受けた上 で、医療的ケアができる濃密な支援を可能とする仕組みが求められる。同様の仕組 みは、学校においても必要である。また、一方で入院が必要な場合には、慣れた介 護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、 地域生活が継続できるようにする。 10.日中活動等支援における定員の緩和等について 【表題】日中活動等支援の定員の緩和等について 【結論】 ○過疎地等の事業所が5名でも事業を展開できるようにする。 【説明】  地方に行けば行くほど人が集まらないため、5名でも事業を展開することができ るようにする。現在の重症心身障害児・者通園事業B型は平成24年4月からは生活 介護事業への移行も考えられるが、地方や利用者が少ない地域では、利用者が集ま らないために運営が困難になる可能性があり、十分な配慮が必要である。 11.日中活動等支援への通所保障について 【表題】日中活動等支援への通所保障について 【結論】 ○国は日中活動等支援への移動支援(送迎)を支援内容の一環に位置付け、これに 係る費用は報酬上で評価する仕組みとする。 ○報酬の算定にあたって声かけ等の移動支援(送迎)中の支援を踏まえることや、 公共交通機関等による通所者の扱いを併せて検討する。 【説明】  日中活動等支援を利用するには送迎は必要である。また、医療的ケアを必要とす る人の送迎には看護師の添乗も必要になる。現行の生活介護には送迎経費も含まれ ているとの解釈があるが、他の通所事業には送迎経費は含まれていない。新法にお いては、実績に応じて報酬に含まれるような制度にする必要がある。  報酬の算定に当たっては、送迎を声かけや見守りを含めた支援として位置づける のか、単なる移動の支援として位置づけるのかについて結論を得る必要がある。ま た、公共交通機関等を利用する通所者の交通費等移動に係る費用の支給についても、 その取扱いを検討する。 12.グループホームでの生活を支える仕組みについて 【表題】グループホームでの生活を支える仕組みについて 【結論】 ○グループホーム等で居宅介護等の個別生活支援を活用できるようにする。 ○高齢化等により日中活動サービスに通うことが困難又はそれを必要としない人が 日中をグループホームで過ごすことができるように、支援体制の確保等、必要な 措置を講じる。 【説明】  新法におけるグループホームは多様な住まい方支援の一つであることから、他の 在宅障害者と同様に、居宅介護等の個別支援を併給できるようにする。  今後、高齢、重度・重複障害、医療的ケアや行動障害など様々なニーズのある人 たちの利用が多くなることが想定され、介助等個別支援を必要とするそれらの人た ちに対して、居宅介護等を活用することで、地域での自立生活が可能となる。また、 それらの人たちも利用できるようハード面での整備を推進するとともに、職員の夜 間常駐、休日の日中支援、医療的ケアの実施が可能となるよう、報酬、運営基準、 人員配置の見直しを図る必要がある。したがって、グループホーム等での支援をグ ループホーム等の機能として全てを入れ込んでしまうのではなく、最低限のものは そこに備わっていて、それ以外のパーソナルなものはオプションで多様なサービス を利用できるようにすることの方が適切と考えられる。これらの関係を整理、検討 し、生活支援体制を確保することが必要である。 13.グループホーム等、暮らしの場の設置促進について 【表題】グループホーム等、暮らしの場の設置促進について 【結論】 ○国庫補助でのグループホームの整備費を積極的に確保する。また、重度の障害や 様々なニーズのある人への支援も想定し、安定的運営に係る報酬額が必要である。 一方、建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組 みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとすることが必要である。 *公営住宅や民間賃貸住宅の活用についてはIIIを参照のこと。 【説明】  地域生活移行を促進する上で、重度の障害者が利用できるグループホーム等の住 居を確保する国庫補助による整備促進が必要である。また、報酬単価が低く、人材 確保や事業運営に困難があり、グループホーム、ケアホーム単独では経営が成り立 たない現状があるため、積極的に整備を推進するための予算確保が必要である。ま た、グループホームを建設する場合、地域住民の理解を得るのに時間を要し、時に は建設を断念する場合もある。建設に当たって地域住民の理解を求めることについ ては、事業者に委ねるのではなく、地方自治体の責務として事業者と連携・協力し、 そして障害者団体等も協力をして住民の理解促進を図る必要がある。  公営住宅は低家賃であり、住まいとしての重要な社会資源といえる。バリアフリ ー化した公営住宅を拡充して、インクルージョンの視点を配慮しつつグループホー ムとしての活用を促進する。 14.一般住宅やグループホームへの家賃補助について 【表題】グループホーム等への家賃補助等について 【結論】 ○グループホーム利用者への家賃補助、住宅手当などによる経済的支援策が重要で ある。 *一般住宅に住む障害者への家賃補助、住宅手当などについては、IIIを参照のこと。 【説明】  収入が低い障害者の地域移行を可能とするため、家賃補助や住宅手当の創設が望 ましい。生活保護と同様に、障害者の基礎年金に住宅手当が上積みされることが望 ましいが、住宅手当とした場合、広く国民を対象とした手当制度や生活保護制度に おける住宅扶助などとの関係を整理する必要もある。また、それぞれの住宅の状況 を踏まえると一律に手当とするのはどうか。一定の範囲内の家賃に応じて住宅手当 を支給するのが現実的であるし、社会の理解も得られやすい。 15.他分野との役割分担・財源調整 【表題】シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整 【結論】 ○どんなに障害が重度であっても、地域の中で他の者と平等に学び、働き、生活し、 余暇を過ごすことができるような制度とする。 【説明】  「他の者との平等」の視点からどんなに障害が重度であっても、地域の中で「他 の者」と同じ生活を営み、共に育ち、学び、「他の者」と同じ職場で仕事をこなし、 「他の者」と同様に余暇を過ごすことができるような制度が必要である。  その際、シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教 育など関連分野の財源との調整をする仕組みも必要である。 *(担当室からのコメント) 「グループホーム・ケアホーム施設入所支援を除き、居住地特例を廃止する。」との 文書意見があり、「I-6支援体系」において取り上げるのが妥当である。しかし、こ の点についてはこれまで作業チーム等で検討がなされていないので、部会において ご議論いただき方向性をお示しいただきたい。 I−7 利用者負担 素案 【表題】利用者負担について 【結論】 ○他の者との平等の観点から、食材費や光熱水費など誰もが支払う費用は負担を すべきであるが、障害に伴う必要な支援は、原則無償とすべきである。その際、障 害に伴う必要な支援とは、主に以下の6つの分野に整理することができる。  [1]相談や制度利用のための支援  [2]コミュニケーションのための支援  [3]日常生活を送るための支援や補装具の支給  [4]社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)  [5]労働・雇用の支援  [6]医療・リハビリテーションの支援 ○ただし、高額な収入のある者等には、収入に応じた負担を求める。その際、認定す る収入は、成人の場合は障害者本人の収入、未成年の障害者の場合は世帯主の 収入とする。 【説明】 (1)利用者負担の問題点  同年代の障害のない人は、食事・排泄・移動・コミュニケーションなど人と して生きるための基礎的な生活行為を自らの意思でおこなえるが、身体もしく は精神面での機能の障害のある人たちは、そうした生活行為が困難になる。特 に重度の障害者の場合、住宅、交通・移動、医療等、福祉支援以外の分野でも 障害に伴い必要とされる支出が多くなる。従って、こうした行為への支援に係 って障害のある人に負担を課すことは、障害のない人との間に新たな格差と差 別を生むことになる。  また、厚労省の作成した資料によると障害福祉サービス利用者のうち非課税 と生活保護の低所得世帯が86.3%と約9割に上り、こうした世帯にとって、生 きるために不可欠な支援への利用料は大きな負担になっている。  以上のことから、障害によって生じる社会生活上の困難を軽減する支援は、 社会が責任を担うべきである。  「ある程度の負担があった方が、遠慮せずに支援を求めやすい」という意見 もあるが、それはそもそも支援に対する報酬(公費)が抑えられたことが背景 にあり、必要十分な支給量や報酬が得られれば、「支援をお願いしている」とい う遠慮は解消される。 ただし、高額な収入のある者等には収入に応じた負担を求めることとし、その 際、認定する収入は、成人の場合は障害者本人の収入、未成年の障害者の場合 は世帯主の収入とする。「高額な収入」は負担が生じることによって必要な支援 を差し控えることにならないような水準とし、また負担する金額は現行の水準 を上回らないものとする。 (2)利用者負担に対する負担軽減策の効果と問題点  自立支援法実施の2006年度の段階では、福祉サービスを利用する在宅者のうち 52.2%の人が課税世帯とされ、生じた応益負担の全額の負担を課せられた。その要 因は、収入認定の対象に同居世帯の収入・資産が含まれたためであった。その後、 負担軽減策の効果は、収入認定ならびに資産要件の基準の見直し(同居家族の除 外)によってその対象が増えたが、その一方で、グループホーム・ケアホーム入居者 は、個別減免が優先され、負担軽減策の対象外とされたため、在宅者との間で負担 の格差が生じた。  2010年4月から自立支援給付については、非課税世帯の負担上限額はゼロ円と なったため、非課税世帯の負担は大幅に軽減された。しかし課税世帯でも、月額上限 37,200円の負担能力を有する人ばかりではなく、中でも障害児のいる世帯は、親が 若年であることから収入が相対的に低い等の現状がある。  また自立支援医療や補装具には適用されなかったため、応益負担の問題は改善 されなかった。さらに、地域生活支援事業には、非課税世帯でありながら利用料負担 が課せられる現状が残されている。 (3)障害に伴う必要な支援  以上のことを踏まえ、結論に記した障害に伴う必要な支援について、具体的に説明 する。 [1]相談や制度利用のための支援〜自らの希望と最適な選択を尊重するために障害 に配慮した相談支援は、公的な支援とし無償とすべきである。 [2]コミュニケーションのための支援〜手話、点字、指点字、要約筆記等のほか、自閉 症等の人の良好なコミュニケーションに必要なイヤーマフや会話補助用機器(パソ コンや携帯電話などの電子機器を利用したコミュニケーション機器)なども、日常生 活用具に含め、無償とすべきである。 [3]日常生活を送るための支援や補装具の支給〜食事や排泄、身体機能の障害を軽 減するための義肢・補装具や、障害に配慮した住宅改修工事等についても公的な 支援とし、無償とすべきである。 [4]社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)〜とくに移動支援に 係る支援者の交通費・入場料等を公的に支援すべきである。 [5]労働・雇用の支援〜労働・雇用に就くために必要な合理的配慮としての環境整備 や人的支援、また障害に伴う必要な移動支援は無償とすべきである。 [6]医療・リハビリテーションの支援〜障害認定・年金申請のための診断書作成や、障 害の軽減・改善のための必要な専門医療・リハビリテーションは、一般医療制度の もとで充実と地域化を図るとともに無償とすべきである。  なお障害児入所施設を利用する場合、学校卒業後グループホーム等を利用する 場合、障害基礎年金未受給(20歳未満)の場合などについても、利用者負担の 軽減、家賃助成の特例等の導入を検討する。また、障害に伴う支援は無償にす べきとの結論について、負担能力のある方にまで拡大することについては、他 の制度との整合性や公平性の観点からも議論を要するとの意見があった。 (4)実費負担の適切な水準の確保 [1]通所施設等の食材費や送迎利用料  自立支援法実施当時、給食の食材費だけでなく人件費を含めて大幅な削減が実 施されたため、通所施設等では多額の利用者負担が生じるという問題があった。食 材費は、障害のない人と同等の立場・権利の保障という観点から利用者負担とするこ とは妥当だが、併せて十分な所得保障が求められる。ただし、障害が重く、咀嚼・嚥 下能力等が著しく困難である場合、再調理に必要な人件費や特別な原料(とろみ剤な ど)に係る費用を必要とする場合があるが、これは、障害に伴う必要な支援として、利 用者負担とせず公的に支援すべきである。  実費負担では、欠席した場合のキャンセル料が問題となった。給食費のキャンセ ル料を課している事業所は多くあり、しかも食材費だけでなく人件費も含めたキャンセ ル料を徴収している事業者が存在した。またインスタントラーメンのお湯代を徴収して いる事業者もあった。  さらに送迎利用料の徴収については、合理的配慮の考え方から送迎は障害に伴う 支援であり、利用料を徴収すべきではなく、公的に支援すべきである。送迎利用料の キャンセル料を徴収している事業者がいるが、これは論外である。  こうした負担のあり方と水準が適切であるか否かを判断するための基準を設ける 必要がある。 [2]ガイドヘルパーの交通費  ガイドヘルパー利用の際、ヘルパーの入場料や交通費などの経費を利用者本 人が負担しているが、ガイドヘルパーの交通費はサービスにかかる経費として 報酬単価に位置づけ、障害に伴う必要な支援として公的に保障されるべきであ る。  [3]家賃負担の軽減について  家賃を含む「誰もが払う費用」の負担が困難な低所得障害者に対しては、グループ ホームへ入居、アパート等での支援付き自立生活の別にかかわらず、家賃補助が必 要である。また、相当額の家賃補助制度の実現を前提とし、入所施設利用者の家賃 相当額については、その生活実態を踏まえつつ実費負担とすることが検討されるべき である。 【表題】自立支援医療の利用者負担について 【結論】 ○自立支援医療制度の利用者負担は、市町村民税非課税世帯の場合は全額公費 負担とし、課税世帯の場合はその収入に応じた負担を求める。 ○障害者総合福祉法実施以前にも低所得者の全額公費負担を実現する。 *障害者の医療費公費負担制度の見直しについてはIIIを参照。 【説明】  自立支援医療の利用者負担については、医療合同作業チームでの意見は全額公 費負担と応能負担とに分かれたが、福祉サービスを含む全体的な利用者負担と同様 の提案とする。その理由は、現在の自立支援法の下でも軽減策によって福祉サービ スに係る低所得者の利用料がほとんど無償になっているのに対し自立支援医療は負 担が大きくなっていること、また自立支援医療のうち多くは精神障害者の通院公費で あることから精神障害と知的・身体障害の間の格差が残されていること等が挙げられ る。  なお、ここでは、障害者の医療費を全額公費負担に、というものではなく、障害に伴 う医療費の自己負担を全額公費負担にすることについて述べたものである。 I−8 報酬と人材確保 素案 【表題】報酬と人材確保の基本理念 【結論】 ○障害者の地域で自立した生活を営む基本的権利を保障するために必要なサ ービスを確保するため、適正な事業の報酬と必要な人材を確保すべきであ る。 【説明】  障害関連事業の現状として、報酬制度と人材確保の課題は深刻で、事業報酬 の劣悪さが人材の確保を困難にし、限界を超えている。事業所を支える中核と なる人材の人件費は昇級していかなければならないが、事業種別、障害程度区 分、利用定員、各種加算を組み合わせた現在の報酬基準では、ベテラン職員の 雇用の維持さえ難しくなり、経営的にも疲弊し、正職員の常勤雇用率が下がり、 雇用期間限定の臨時・契約・パート率が大幅に増加し支援の質の低下が著しい。  しかしながら、真に障害者の基本的人権保障を担う人権感覚溢れた人びとが 障害者と共にインクルーシブな社会を構築するために、活力ある良質な人材の 養成とその確保が障害福祉を成立させる不可欠な前提条件となる。  障害福祉の報酬水準とは障害者の人権の価値評価、尊厳の水準と連動してい る。障害福祉を実践する人材が枯渇し自らや家族の生活の維持さえ危ぶまれる ような状況であればこの国が障害者の人間としての基本的価値を蔑んでいるこ とを意味する。  したがって、以下の事項を旨として、障害者の地域で自立した生活を営む基 本的権利を保障するためにの必要なサービスを確保するため、適正な事業の報 酬と必要な人材を確保すべきである。 【表題】報酬における基本的方針と水準 【結論】 ○報酬における基本的方針は、以下のとおりである。  ・支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策を実施する。  ・わかりやすい報酬制度にする。  ・利用者に不利益をもたらさない。 ○報酬における水準は、採算線(レベル)を利用率80%程度で設定し、安定 的な障害サービスを提供するために、事業者が安定して事業経営し、従事者 が安心して業務に専念出来る事業の報酬水準とする。 ○なお、常勤換算方式を廃止する。 【説明】  措置から契約制度への移行に伴い、措置委託費の丸投げから、一人ひとりの 要支援者への個別支援のための社会保障費の支払いの集積が報酬となる転換が 図られた。その後、障害者自立支援法施行により給付抑制政策が導入され、報 酬基準が切り下げられ、障害福祉の質の低下がもたらされた。それらの弊害を 解消するために、一人ひとりへの支援を意識した障害福祉の基本的あり方を基 本としながら、支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策が実施されるこ とが、改革の方針である。  事業者にとっても複雑なシステムは不経済極まる。利用者にとっても、一般 国民にとっても、わかりやすい簡潔な制度にしなければならない。  利用者負担、地域間格差等により、利用者に不合理な負担、不利益を被らせ ることは障害福祉の理念に反することであり、あってはならない。  現行報酬額の採算レベルは、入所施設系で利用率(実利用者/利用定員)が 90〜95%に設定されており、収支を黒字にするために定員超過などで凌い でいる。定員超過の恒常化による支援水準の低下を改善するため、採算ライン を80%程度と設定する。定員が一杯となれば職員の加配やベテラン職員の確 保が可能となり、事業者にも利用者にも余裕が生じ、利用者の地域移行につい ての取り組みも可能となる。経営者にインセンティブを与え、事業展開への財 源確保とモチベーションを高める。  国は経営実態調査に基づき報酬改定を行っている。しかし、多くは報酬のみ が収入であり、報酬が減額されればその範囲で収支を合わせて黒字にするため、 その黒字を根拠に改定されれば、報酬は際限なく引き下がる。福祉報酬は社会 保障費=ナショナルミニマムであり、自助努力の貯蓄を理由に水準を引き下げ てはならない。 【表題】報酬の支払い方式について 【結論】 ○報酬の支払い方式に関して、施設系支援にかかる場合と在宅系支援にかかる 場合に大別する。 ○施設系支援にかかる報酬については、「利用者個別給付報酬」(利用者への個 別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費) に大別する。前者を原則日払いとし、後者を原則月払いとする。 ○在宅系支援にかかる報酬については、時間割り報酬とする。 ○すべての報酬体系において基本報酬だけで安定経営ができる報酬体系とす る。 【説明】  報酬の日額払か月払いについて、統合した視点を持ち、建設的な議論に発展 させることが肝要である。  障害福祉を実践する担い手が事業を維持出来ない状況は、障害者の生活支援、 人権が安定的に保障されないことを意味する。障害者の幸福追求権が保障され るためには、障害のある人の支援(事業)を選択する自由(権利)と障害関連 事業における固定費(人件費を中心に)の安定的な確保を両立させることが必 要である。その際、次の三点に留意すべき。  一点目は、報酬の財政規模の増額が必要条件である。現行の支出水準を固定 費相当分とし、日額分が重ねられるイメージ。二点目は、契約制度は維持する としても、市町村が障害者の支援を保障する公的責任は明確化しておくこと。 三点目は、利用者負担の増加につながらないようにすること。「Aさんに就労支 援が保障される」との支給決定も「個別給付決定」であり、仮に本人負担があ るとしても、公から個人への費用徴収の問題とするべきで、利用者負担制度を 廃止するか、少なくとも利用者負担と事業所報酬が連動する、現行の「個別給 付→代理受領」の方式自体を見直し、利用と負担の連動性を断つべきである。    すなわち、個別給付制度を維持しながら、利用者負担請求業務の事業者負担 も無くし、支給決定障害者の事業利用に対する事業所に対する報酬支払方式に 変更するべきである。  施設系支援にかかる報酬については、「利用者個別給付報酬」(利用者への個 別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に 大別する。概ね、前者を2割、後者を8割程度とし、前者を原則日払いとする。  但し、利用率80%を上回れば全額支払い、それ以下の場合は、利用実績に 応じた日割り計算で事業所に支払われる。後者を原則月払いとする。すなわち、 施設利用定員による月額を定額で支払う。  但し、施設全体の6ヶ月の平均利用率を次の6ヶ月間は掛けて月額を算出す る。これにより、利用しなかった分は報酬減となるので、在宅給付との併給に も抵抗は少ない。個々の利用者の利用状況に日割り(利用率)を導入するので はなく、施設全体の 利用率で算定する。その適用は次の6ヶ月期に適用とする。  在宅系支援にかかる報酬については、時間割り報酬とする。  現在の報酬は報酬本体では経営維持が困難であり、加算により初めて維持出 来る。「報酬本体だけ」で求める事業水準(指定基準に定められる水準)を確保 すべき。加算はあくまで、その標準的水準のオプションと位置づける。 【表題】人材確保施策における基本的視点 【結論】 ○人材確保こそが障害者地域生活実現の鍵である。 ○障害福祉に対する公的責任を障害者本人やその家族に転嫁してはならない ○支援者の確保は、地域における雇用創出である。 ○重層的な人的支援のネットワーク化を重視し、人材を循環させる。 【説明】   障害のある人の安定した地域生活を展開し、医療機関等からの地域移行を実 質化するためには、[1]労働及び雇用・日中活動の場、[2]居住の場、[3]所得保障、 [4]人的な支え、[5]医療・保険の5つの分野が一定の水準で確保される必要があ り、人的な支援体制の確保は、その根幹である。人間と人間の触れ合い、パー ソナルな支援こそが改革を成功させるためのキーワードであり、そのため優良 な「人材」の確保が地域生活の成立条件である。  人と人の関係を基本とする人的支援策の遂行にあっては、根強い家族責任観 念から、親を中心とする家族に責任が転嫁されないよう、障害福祉の「公的責 任の原則」を明確にする必要がある。成人した障害者の生活まで家族が抱え込 まざるを得ない現実の中で、「家族支援」も重要な施策の柱である。  本格的な人的な支援策を成功させるためには、大幅な人員増が必要である。 労働政策の観点からは、社会福祉を志そうとする若者に未来を拓き、雇用創出・ 失業改善に役割を果たす。  地域相談支援センターやGH等、地域支援の組織は小規模であり人員にも限 りがあるため、他機関との連携を求めている。支援員、看護師、ケースワーカ ーなど必要に応じてネットワークで本人支援を行うが、受け皿を複数用意して おくことが必要である。当事者主体と当事者の権利保障を重視し、障害者の地 域生活構築のため、重層的なネットワークへの変革が必要である。   【表題】福祉従事者の賃金における基本的方針と水準 【結論】 ○ 障害者の安定した地域生活を支える人材を確保し、また、その人材が誇りと 展望をもって支援を継続できるようにするため、国家公務員の「福祉職俸給 表」と同等の年収水準が確保できるだけの報酬とする。 【説明】  報酬の体系と金額は、現に障害者福祉に従事する者が誇りを持って支援に取 り組み、その資質等の向上を図ることを促進するものであり、従事することを 希望する者が、労働条件等の雇用環境により、断念することがない水準である ことが必須である。休暇の保障、海外研修・留学等の国際交流や他事業所との 国内交流等、職員のモチベーションを高める仕組みが必要である。  障害福祉報酬の総額が低すぎて、優れた理念を持ったリーダーも極めて低賃 金という現状を改善し、優れた人材を高い賃金で待遇するという当たり前の姿 になるため、国家公務員レベルの給与体系で末永く雇用できる制度構築をする べきである。具体的には、従事者の給与レベルは国家公務員給料表の「福祉職 俸給表」による給与支給を確保出来る水準とすることを法定化する。これによ り、標準的給与水準が明確になり、異動の際にも、前歴換算や評価が容易にな る。共通の給料表に基づくことにより官民格差が是正できる。  福祉職給料表の導入と共に、「職員構成比想定」を設定するべきである。俸給 の適用級が低いままで積算されれば、経験年数の長い従事者は継続が困難とな り、若い従事者を回転させる人事となり、利用者にとって、看過しがたい。中 間層を手厚くした、「職員構成比想定」を導入し、支援の質の向上、働き続けら れる職場の実現、職員が将来像を描けるシステムとする。さらに、単純な経営 のバランスシートで報酬水準を設定するのではなく、それぞれの職員が求める 生活を維持できる賃金水準を考慮して設定することが必要である。 【表題】人材養成について 【結論】 ○人材養成は、現場体験をしながらの職業訓練を重視し、「資格」保有は支援の 質の最低基準の保障と支援者の社会的評価、モチベーション維持等のためと 位置づけた、研修システムとする。 ○相談支援や権利擁護に必要な障害当事者の人材確保として、国はピアカウン セラーの養成を積極的に支援するものとする。 【説明】  人材養成は、現場体験をしながらの職業訓練を重視した研修システムを基本 とするべき。可能な限り間口を広く取り、多くの人材の中から適した人材を探 り当てる作業が不可欠である。継続的な関係性の中での人間関係が基礎にあり、 支援が成り立つ。正規雇用関係の中で、長期にわたって関係性を持てることが 信頼関係を障害者と作り上げる基本である。  当事者の気持ちにもっとも寄り添えるのは同じ障害をもつ当事者である。そ こで、相談支援や権利擁護に必要な障害当事者の人材確保として、また共に生 きる社会の担い手としてもピアカウンセラーの養成とそのためのシステムづく りに対して資金を含めた公的支援が求められる。 I−9 地域生活の資源整備 素案   【表題】 「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)策定の法定化 【結論】 ○ 国は、障害者総合福祉法において、障害者が地域生活を営む上で必要な社会 資源を計画的に整備するため本法実施年を起点として、前半期計画と後半期 計画からなる「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定するものとする。 策定に当たっては、とくに下記の点に留意することが必要である。 ・ 長期に入院・入所している障害者の地域移行のための地域における住ま いの確保、日中活動、支援サービスの提供等の社会資源整備は、緊急かつ 重点的に行われなければならないこと。 ・ 重度の障害者が地域で生活するための長時間介護を提供する社会資源を 都市部のみならず農村部においても重点的に整備し、事業者がないために サービスが受けられないといった状況をなくすべきであること。 ・ 地域生活を支えるショートステイ・レスパイト支援、医療的ケアを提供 できる事業所や人材が不足している現状を改めること。 ○ 都道府県及び市町村は、国の定める「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)に 基づき、障害福祉計画等において、地域生活資源を整備する数値目標を設定 するものとする。 ○ 数値目標の設定は、入所者・入院者・グループホーム入居者等の実態調査に 基づかなければならない。この調査においては、入所・入院の理由や退所・ 退院する際の阻害要因、施設に求める機能について、障害者本人への聴き取 りを行わなければならない。  *地域移行を促進するための住宅確保の施策についてはVを参照のこと。 【説明】  福祉サービスは、それを提供するマンパワーなくして成立しない。福祉サー ビスには様々なものがあるが、地域社会で生活を営む上で必要な支援を行う事 業所と人材は、いまもって不足している。  とくに、重度障害者が地域で生活するうえで、現行の重度訪問介護などを担 う事業所と人材は、大都市部も含め全般的に不足しており、農村部にはほとん どないといった状況が存在することは、このたびの東日本大震災の被災地の状 況を見ても明らかである。しかしこれでは、どこで、だれと住むかといったき わめて基本的な権利さえ実現できない。  また、障害者の地域生活を支える上で、ショートステイやレスパイト支援、 医療的ケアの充実は欠かすことができない要素である。  例えば、グループホームや一般住宅で暮らす障害者が調子を崩したり、家族 との関係が一時的に悪化したときなどに、生活を立て直す支援としてのショー トステイがすぐ使えることは、地域生活の継続のうえで欠かすことができない。  同様に、障害児者が家族と同居する場合、家族ケアの観点からの障害児者家族 の精神的、物理的な休養を目的としたレスパイトケアの充実も求められる。  しかしながら、必要なときにいつでも使えるショートステイやレスパイト支 援を提供するサービス事業体は少なく、法的な制約もあり、医療的ケアを提供 できる介助者も非常に不足しているのが現状であり、これらにかかわる社会資 源の拡大が急務である。  そこで、国は、必要な財源を確保したうえで、上記にかかる社会資源を早急 に確保すべきである。  さらに、長期入所や入院を余儀なくされ、そのために住居を失うもしくは家 族と疎遠になり、住む場がない人に対する住宅確保のための施策は極めて重要 であり、大規模化、多棟化しないよう配慮しつつグループホームの整備を始め、 家賃補助等の整備は、緊急の改題である。  施設待機者は、全てが真に施設入所の必要な者とは言えない。障害福祉計画 等で、単純に施設待機者数を施設設置の根拠とすることは妥当ではない。待機 者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的な 地域基盤の整備を進めることが必要である。また再入所・再入院についても、 障害者本人の問題としてのみ捉えるのではなく、地域支援の不足・不備からく るものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要である。  これらを行うためには、入所者・入院者実態調査が不可欠である。なぜ入所・ 入院に至ったのか、入所者・入院者の希望は何か、どのような退所・退院阻害 要因があるのかを、分析することを国主導で行うべきである。なお、定員が一 定数を超える大規模なグループホームについても、入所施設や病院同様に入居 者への聴き取り調査の対象に含めるべきである。全国的な把握、地域性の把握 が、地域支援のあり方に関わる貴重なデータであり、地域移行に向けた取り組 みの根拠となる。  以上に基づき、国は、地域における障害者向けの住宅、日中活動、訪問系サ ービス等を新たに大規模に提供することを目標にした「地域基盤整備10ヵ年戦 略」(仮称)を策定すべきである。この際、設定される数値目標は、今後行わ れる入院・入所者への調査の結果等に基づいて設定することとする。  また、都道府県、市町村の障害福祉計画はこの「10ヵ年戦略」に基づいた数 値目標の設定を行うべきである。地方公共団体の障害福祉計画等で掲げられた 地域移行者目標数値に関しては、地域支援サービス整備の目標数値とともに一 定の達成義務は必要だが、施設や病院から住まいを移行しただけで終るもので はないため、地域での生活実態の把握や支援状況の検証を移行後も行なうべき である。   【表題】障害福祉計画 【結論】 ○ 本法の支援資源を総合的・計画的に整備するため、市町村は市町村障害福 祉計画を、都道府県は都道府県障害福祉計画を策定し、国はその基本方針と 整備計画を示す。 ○ 国が定める障害福祉計画のための第1期の整備計画は、「地域基盤整備10 ヵ年戦略」の前半期の整備計画をもって充てる。 ○ 障害福祉計画は、その策定過程と評価・見直し過程で、障害当事者、障害 者の家族、事業者、その他の市民が参加する「地域生活支援協議会」の十分 な関与を確保する。とくに知的障害・精神障害やこれまで制度の谷間におか れてきた障害者・難病などの当事者の参加が求められる。 ○ 基本方針および障害福祉計画の策定・評価は、客観的な調査データを踏ま えて行なう。とりわけ地域社会での日常生活や社会参加の実態を障害のない 市民のそれとの比較したデータを重視する。 ○ 障害福祉計画は1期5年とする。 ○ 国、都道府県、市町村は障害福祉計画の実施に必要な予算措置を講じる。 【説明】  障害福祉計画は、支援資源の計画的整備、障害当事者・関係者・行政の協議 と相互理解の形成、一般市民や議会が障害者支援について理解する手段、実態 調査などデータ収集の契機、など多様なメリットがあり、新法でも継続発展さ せるべきである。  ただし十分な当事者参加がなく、参加する障害者の障害種別が限定されてい ること、国の目標を人口比で当てはめた計画が多いこと、策定後の実施状況評 価とその評価をふまえた改善・修正という面が弱いこと、などの課題が指摘さ れてきた。これらの克服が必要とされる。  また、障害者基本計画が10年計画であり、前半・後半に分けて数値目標を ふくめた「重点施策実施5カ年計画」を定め、進捗状況を毎年報告することが 定着してきた。その中心分野である「福祉」が障害者自立支援法の下では3年 計画(数値目標の基本設定は6年間)の障害福祉計画となっているのは、介護 保険との統合をめざした結果である。障害者施策の総合的・計画的推進の観点 から、障害福祉計画は1期5年とし、障害者基本計画の「重点施策実施5カ年 計画」と一致させるべきである。  なお、「障害福祉計画」の名称については、障害者基本法に基づく「障害者計 画」、地域福祉法に基づく「地域福祉計画」など類似計画があるので、「障害」 分野の「福祉」領域の計画であることを単純明快に示す名称としては現行のま まがよい。   【表題】地域生活支援協議会 【結論】 ○ 地域における既存の社会資源を有機的に連携させ、地域全体にかかる課題 を検討して地域社会の支援体制をより充実させる仕組みとして、市町村 (ないし圏域)および都道府県単位で、障害者及びその関係者の参画を前 提とした地域生活支援協議会を法定機関として設置する。 ○ 地域生活支援協議会は、その地域における障害者施策の現状と課題を検討 し、改善方策や必要な施策を講じるための具体的な協議の場とするほか、 市町村又は都道府県における障害者に関する福祉計画策定に意見を述べ るものとする。 ○ とくに、都道府県単位の地域生活支援協議会は、上記のほか、広域的・専 門的な情報提供と助言や市町村障害者福祉計画策定の支援機能を果たす ものとする。 ○ 地域生活支援協議会は、ライフステージにわたる途切れない支援体制が整 備されるよう、地域における様々な社会資源と連携するものとする。 【説明】  現行の自立支援協議会についての評価はさまざまであるが、その地域におけ る解決困難な課題に焦点化して関係者が議論をし、地域生活が実現可能となる ための各種社会資源の連携や支援の新たな開発の役割をはたすこと、障害福祉 計画へとつなげる役割を果たすことなどが新しい地域生活支援協議会に期待さ れる。  さらに地域生活支援協議会が地域の社会資源、例えば、要保護児童対策地域 協議会、高齢者虐待防止ネットワーク、特別支援教育連携協議会等を有機的に 連携し、より良い地域づくりの核として機能するようにするためには、以上の ような機能を有するものとして、法定化することが必要である。 I−10 地域移行 素案 【表題】「地域移行」の法定化 【結論】 ? 国は、社会的入院,社会的入所を早急に解消するために「地域移行」を促進 することを法に明記する。 ? 「地域移行」とは、単に住まいを施設や病院から元の家庭生活に移すことで はなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分ら しい暮らしを実現することを意味する。 ? すべての障害者は、地域で暮らす権利を有し、障害の程度や状況、支援の量 等に関わらず、地域移行の対象となる。 ? 国は、重点的な予算配分措置を伴った政策として、地域移行プログラムと地 域定着支援を法定施策として策定し、実施する。 【説明】  障害者自立支援法において、平成23年度末までに、身体・知的の施設入所者 の1割(13,000人)の地域移行と精神病院からの72,000人の退院促進が、地域 移行政策の目標として謳われた。だがその成果は十分であるとは言い難い。本 来は誰もが地域で暮らしを営む存在であり、障害者が一生を施設や病院で過ご すことは普通ではない。入所者・入院者が住みたいところを選ぶ、自分の暮ら しを展開するなど、障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組み と選択肢を作ることが早急に必要である。これは地域で生活する家族の状況や 支援不足から希望していない生活環境にある障害者についても、本来地域移行 の支援対象者に含まれるべきであり、大人数の住まいを解消し、地域生活を実 現できるようにすることも検討されるべきである。  地域移行の促進にあたって、地方における地域基盤整備や財政等の格差等、 国と地方の財政負担構造など課題があるなかで、単に、施設の入所定員や病院 の病床数の減を法定化することだけでは、家族の不安や負担を強いる危険性と 混乱を招きかねない。そこで地域移行は、地域移行プログラムと地域定着支援 を入所・入院している障害者に提供しつつ、誰もが暮らせるための地域資源と 支援システムを整備する必要がある。特に、長期入所者、入院者については、 緊急に人権が回復されるよう支援されるべきである。 【表題】  地域移行プログラムと地域定着支援 【結論】 ○地域移行プログラムと定着支援は、実際に地域生活を始められるように、一 人ひとりの状況に合わせて策定される。地域移行プログラムでは、入所者・ 入院者に選択肢が用意され、本人の希望と納得のもとで施設や病院からの外 出、地域生活を楽しむ体験、居住体験等のプログラムも提供される。また、 地域定着支援では、地域生活に必要な支援、その他福祉制度申込み手続等の 支援や必要とする社会資源に結び付けるなどの環境調整も行うものとする。 ○地域移行プログラムと地域定着支援の事業は、国の事業として行う。施設及 び病院は、これらの事業を受けるよう積極的に努めなければならない。施設 及び病院が、これらの事業を行う場合に、地域の相談支援事業者、権利擁護 事業者等の地域移行支援者と連携するための体制を整備しなければならな い。 ○ピアサポーター(地域移行の支援をする障害当事者)等は、入所者・入院者 の意思や希望を聴きとりつつ、支援するノウハウを活かし、重要な人的資源 として中心的な役割を担う。特に長期入所者や入院者は、不安軽減と意欲回 復のために、本人に寄り添った支援が必要である。 ○施設・病院の職員はそれぞれの専門性をより高め、地域生活支援の専門職と しての役割を果たせるよう移行支援プログラムを利用する。 *地域移行を促進するための住宅確保の施策についてはIIIを参照のこと。 【説明】  入所者・入院者が、どのようなニーズがあって入所・入院しているのか、定 期的にそのニーズを聞き取る必要があり、社会的入所・入院の軽減を目指さな ければならない。その際、施設・病院関係者だけでなく、地域移行支援者(相 談支援事業者、権利擁護事業者、障害者団体、地域自立支援協議会、市民等、 様々な立場の者)とチームを組むことができる仕組みを作ることが必要である。 このことは、安易な入所・入院を避けるためにも重要である。  地域移行のプログラムは、障害者の意志や決定を確認し、それを実現するた めのものであるので、入所者・入院者が自ら選ぶことを基本とすべきである。 地域移行プログラムは、地域移行ができる人を選別するものではないので、標 準的なプログラムに適応できるかどうかを判断するものであってはならない。 あくまでも本人支援という観点から本人に合わせた個別的なものとして準備さ れるものである。そのような地域移行プログラムを提供しつつ、移行先での定 着支援として様々なサービスを受けるため申請や社会資源の配置などが行われ るべきである。  地域移行プログラム及び地域定着支援の事業は、まず施設・病院から外出し たり、地域での生活を楽しむ体験をするなどしながら、自分の地域生活をイメ ージする期間も必要である。そのため移動支援等の福祉サービスを利用できる 仕組みが必要である。また経済的に困難な入所者・入院者にはその費用を助成 する仕組みが不可欠である。また、この事業を支える人材、特にピアサポータ ーを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づけ、ピアサポーターの育成 ならびに地域移行支援活動に対する正当な報酬等の財源を確保すべきである。  さらには現行の施設・病院の職員がその専門性を地域支援に活かしていくこ とが、地域移行を推進していく上で求められることになる。その際には、職員 にも一定の移行プログラムが必要である。支援のあり方について、視点の転換 が必要と思われるからである。   【表題】施設入所者に対する支援 【結論】 ○国は、地域移行の状態を踏まえつつ、施設における夜間の居住支援にかかる 給付を行うものとする。 ○施設は、小規模化を促進しつつ、短期入所、レスパイトを含むセーフティネ ットとしての機能を担うものとする。 ○国及び地方公共団体は、地域生活の社会資源の拡充をはかりつつ、施設入所 者の地域生活への移行をはかるものとする。 ○施設は入所者に対して、地域移行のための事業を実施し、原則として退所を 目標にした「個別支援計画」の策定をすること。その際、相談支援機関と連 携し、利用者の意向把握と自己決定(支援付き自己決定も含む)が尊重され るようにすること。 【説明】  障害福祉計画では、施設の定員削減目標、地域生活への移行目標が掲げられ ている。しかし、施設からの地域生活への移行が、進んでいるとは言い難い。 今まで以上に地域生活の支援体制、グループホーム等の社会資源の拡充、公営 住宅等の住宅施策の充実、必要な人へのホームヘルパー等の居住支援や個別生 活支援等を充実し、施設をセーフティネットとして機能できるよう、地域生活 に向けた支援を強化すべきである。継続した医療等の支援が必要となる重症心 身障害者の地域移行にあたっては、保護者や家族の不安や負担を十分に受け止 め、命と生活の質が保障されるよう合意を得ながら進めることが必要である。  並行して、施設の置かれている四人部屋から個室への居住環境の改善、高齢 者の支援、強度行動障害などより個別的な支援が必要な人、罪を償った人が地 域生活移行を前提に利用できるような支援機能の強化と地域との連携ができる 機能を持つ事ができる職員体制も確保する必要がある。  また、入所待機者や入所希望者に、家族以外の地域生活支援の道筋や可能性 を示し、特定の生活様式を強いられないように配慮することが肝要である。入 所の長期化を避けるために、退所や退院を目標にした「個別支援計画」を策定 するべきである。地域生活移行では、あくまでも利用者の意向を尊重し、支援 が必要な人には情報提供し、前に述べた地域移行プログラム等を体験しながら 意向確認ができる支援が必要である。  また、入所施設から地域生活移行をする際には、地域移行ホーム、退院支援 施設等のように、同一敷地内に移行のための施設を設置するべきではないため、 その在り方を検討すべきである。