総合福祉部会 第16回 H23.7.26 参考資料4 野原委員提出資料 総合福祉部会御中       2011年7月21日 意見提出者 野原正平  「難病」を総合福祉法(仮称)で扱うについては、多角的な検討を行ってき ましたし、私も発言してきました。今までの討論の骨格をまとめるにあたって、 一部に「難病」は「今回の総合福祉法からは除外して新たな審議会で検討する」 とする大きな誤解があるようなので、改めて、以下の意見書を提出します。こ れは、当然ながら、私の今まで発言してきた内容と一致するものです。   障害者総合福祉法(仮称)についてのJPAの意見 一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)代表理事 伊藤たてお  当面「障害者総合福祉法(仮称)」(以下、「新法」)の骨格の取りまとめに際 して、あらためて、次の事項について配慮されるよう、総合福祉部会に対して JPAとしての意見を提出します。 1.新法における対象者について  新法における対象者には、次の者も含めること。  難治性または希少性があり、かつ生涯にわたって治療を必要とする疾患に罹 患している患者であって、社会的な支援と介護支援を必要とする者。  小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患患者および、20歳以降も引き続き 社会的な支援と介護支援を必要とする者(キャリーオーバー該当者)。  「難病」には明確な定義はなく、「不治の病」に対する社会的通念として用い られてきた言葉である。したがって、ある疾患が難病であるか否かは、時代背 景や医療水準によって規定されてきた(厚生労働省「難病対策提要」)。ゆえに、 「難病」の定義を拙速に決めることは、法解釈に誤解を生じさせかねない。  しかしながら、それでは「難病」ゆえにこれまで制度の谷間で必要な施策を 受けられなかった人々は、今度の障害者制度改革からも取り残されてしまうこ とになる。必要な対象者には、法施行時から門戸を開かねばならないし、制度 の谷間を無くすことは民主党マニフェストに明記された新法の一丁目一番地で ある。  なお、「難病」に関する定義や概念の解明については、新法以外での法改正に よる新たな難病対策の構築も合わせて、「障害者制度改革」の枠を超えた総合的 な審議の場を設けて、当事者参加で新法の施行と並行して議論をすすめること。 その結論により、将来的に新法を改正し反映すること。 2.前項の対象は、新法における福祉サービスのすべてにおいて適用される。  現在の制度で言えば、「難病対策」として行われている「難病患者等居宅生活 支援事業」におけるホームヘルプサービス等の在宅介護サービス、短期入所サ ービス、日常生活用具給付事業は、従来の福祉サービスに統合される。小児慢 性特定疾患治療研究事業における「小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業」 も同様である。  統合するにあたっては、定着するまでの間、経過措置として、両事業を健康 局、雇用均等・児童家庭局の予算事業として残すこと。  なお、以下の事項についても、新法の施行までに当事者参画の下に検討し、 政省令等での手当てや、次期改正での手当てを行うことを要望いたします。 1.新法における認定においては、罹患している疾患の特性を考慮し、進行を 予測し、早めの認定を行うことや、症状の変化(短期、長期の変化や日内変動) を認め、「状態」に対する支援を目標とすること。また認定に当たっては、薬を 飲んでいない状態(これが平常の状態)を基準とすること。 2.就労支援については、患者のおかれている状態は同じではないため、「疾病 の特性」を理解し、「施設内及び就労状況における配慮を求める」ものとするこ と。(勤務時間、通勤、連続勤務日数・時間、勤務内容、受診やリハビリ通院の 保証、休憩時間など)。また多くの患者においては外見上は障害や疾病の有無が わからないための不利益、感染・遺伝などについての不用意な発言についても 十分な配慮を必要とする。(難病患者の雇用に関する研究報告等を参考にしてい ただきたい) 3.居宅介護、施設介護、教育の現場においても「2」と同様であるが、さら に吸引、酸素吸入、機械呼吸、排痰アシスト、コミュニケーション、家事援助、 移動支援、見守り支援などの個別・具体的支援を必要とする。特に意思表示の 困難な患者に対しては、通常行われる支援の上にさらに特別の配慮を必要とす ることを認めること。 4.重症・重度患者の介護支援については特定された疾患に限ることなく必要 な人員の導入を認めること。 5.若年性アルツハイマー病をはじめいわゆる「認知症」の患者に対する支援 については「精神福祉」の範囲では不適当、かつ全く不十分であり、総合福祉 法にあってはむしろ身体介護、コミュニケーション支援、家事援助、移動支援 を中心に組み立てるべきであること。(食事、入浴、排泄、就寝、整容、衣類着 脱、歩行、書字、感情表現、苦痛の訴え、記憶、家事、買い物、掃除、日常生 活におけるおよそ人としてのありとあらゆる行動が障害される) 6.自立支援医療制度について  自立支援医療については、低所得層の無料化、応能負担への制度転換をすみ やかに行うこと。  自立支援医療制度は拡充し、年齢制限や身体障害者手帳がなくとも障害ゆえ の治療費の負担軽減ができるよう、制度を改善すること。  現在、すべての自治体で行われている重度障害児(者)医療費助成制度につ いても、新法のなかに位置づけることを検討すること。