総合福祉部会 第15回 H23.6.23 資料11 部会作業チーム(地域生活の資源整備)議事要旨(5月) 1.日時:平成23年5月31日(火)13:30〜16:40 2.場所:厚生労働省2階共用第6会議室 3.出席者   森座長、竹端副座長、荒井委員(代理)、石橋委員、大濱委員、尾上委員、坂本委員、   西滝委員、東川委員、渡井委員 4.議事要旨 (論点整理の前に) ・盲ろう者の特異性や多様性を考えると、自立支援給付の重度視覚障害者の同行援護を 利用することは難しい ・盲ろう者の人数は少ないので、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業は市町村単位では なく都道府県単位での実施を求める。 ・地域生活支援事業の通訳・介助員派遣事業を充実させるとともに、盲ろう者も個別の ニーズに対応できるパーソナルアシスタント制度の利用ができるようにしてほしい。 ・また、盲ろう者も個別のニーズに対応できるサービスが必要になると思われるので、 盲ろう者も利用できる自立支援給付の法制度にしてほしい。 ・自立支援給付の枠組みでは、盲ろう者は使えなので、都道府県レベルで考えて欲しい。 ・マイノリティーの話は障害全般に関わる話、2月のパーソナルアシスタントの記述を 確認した上で、どう報告書に入れるのか検討したい。 ・総合福祉法については、鳥取県でも期待が大きい。 ・ここでの議論は、市町村の実態からかけ離れていると思う。期待はずれとなれば、障 害者の期待を裏切ることとなるので心配である。だから、国民的な合意を得なければ ならない。 ・部会のことを宣伝したり、内閣が真剣に取り組んでいると広報しないと、国民の理解 が進まない。 ・出来る手助けをする「あいサポート運動」というのを鳥取で始めて、島根県にも広が った。 ・成果はなかなか分からないが、やっていかなければ国民的な合意は得られない。 ・総合福祉法において、義務を課し義務違反があったら、担当者や市町村長に科料を科 すと言っているのには腹が立つ。市町村をパートナーとして一緒にやっていくなら良 いが、被告人とするのであればうまく進まない。 ・全国市長会や全国町村会、全国知事会など、地方6団体の協力を得ないとうまく法律 も成立しない。 ・理念は理念として対応し、現実を見ないといけない。 ・7月の部会にむけ正副座長会議を行っている。 ・第1期、第2期の作業チームの議論を、しっかり踏まえつつまとめている。 ・広報やタウンミーティングも含めて素案に入れていく。 (1.D―6の論点) ((1)D―6―2 権利擁護を推進していくためにはどのような体制が必要か? また相 談支援やエンパワメントの事業化についてどう考えるか?) ・権利擁護に係る相談窓口は、機能が十分に果たされていないのが現状。 ・人生をトータルにサポートする体制を整えることが必要であり、障害者に恒常的に寄 り添うキーパーソンが必要である。 ・エンパワメントの視点を持ちながらケアマネジメントを行う専門職(障害者ケアマネ ージャー)を確立し、障害者を総合的に支援できるような仕組みを創設する必要があ る。 ・老人の分野については、介護保険ができて良くなった。障害者については、権利擁護 が実効的なものとなっていない。 ・相談と支援が一体化していない。 ・行政と事業者との連帯感を懸念している。 ・相談支援やエンパワメントの事業に当事者やその関係者を含めて参画する必要がある。 ・「権利擁護推進員」の専門員を配置し、実績に見合う報酬を査定する。 ・相談窓口は、当事者のできるだけ身近に設置し、相談者のニーズに一元的に応えられ る体制を作る。 ・障害者自立支援法改正法では、平成24年4月から相談支援が大幅に見直されること となっているが、団体が入っていけない仕組みとなっている。今やっている団体が入 れるスキーム作りにすべきである。 ・障害のある人に寄り添うキーパーソンが必要であり、そのための人材確保と人材育成 が必要である。 ・身近に相談できる場所として福祉事務所などが窓口となるように行政に求めたい。同時に、 障害者相談支援センターなどに権利侵害、虐待などの相談に対応できるシステムをつくる べきである。 ・相談支援やエンパワメントについては、市町村は公的役割を果たすべきである。 ・ワンストップで対応できる専門家が必要。 ・人材の確保が困難であるが、事業者、行政、関係なく第三者機関が必要である。 ・多くの施設では、権利擁護といっても、形式的なものとなっている。 ・エンパワメントについては権利行使が重要である。 ・地域移行に携わってきたが、施設からの地域移行については、自立生活体験室のよう に地域移行したいと思うようなプロセスが必要である。 ・本人に寄り添うようなキーパーソンが大事であり、脊損の人には脊損でないと分から ない。 ・当事者団体のレベルアップが必要であり、相談支援やエンパワメントができるなど団 体がしっかりすべきであり、当事者団体を育てる必要がある。 ・「あいサポート運動」のように意識を変え、さらに啓発が必要であり、それが大きな 力となる。 ・当事者だからこそ分かる寄り添い。 ・エンパワメントは身近な市町村レベルで。 ・マイノリティーの方については、県で広域的な支援が必要。 ・施設においては第三者評価が適切。 ・在宅は相談体制が弱い。 まとめ:  相談支援には、具体的なサービスにつなげるものと、障害当事者のエンパワメント(障 害当事者のあきらめさせられた、我慢させられた想いや願いを大切にし、生きる力、自らが コントロールする力を獲得すること)や権利擁護につながるものの、二種類がある。この二 つを満たすためには、相談支援の拠点として、寄り添う当事者が中心となったものと、専門 的知識を有する支援者によるもの、そして実施責任を持つ行政の3つの主体による相談支援 体制が、それぞれに必要である。  また身近な市町村レベル、だけでなく、専門的相談やマイノリティ(絶対数が少ない)障 害者への対応などは都道府県内で広域的、かつ、関連当事者団体が蓄積しているノウハウ等 の活用に配慮する。  さらに、権利の形成や獲得支援に関しては、鳥取県・島根県で進められている「あいサポ ート運動」(※)のような、地域社会への普及啓発の活動も不可欠である。 (※)あいサポート運動とは、地域の理解が不可欠という考えをもとに、障害のある人が、 地域の一員としていきいきと暮らしていくため、国民に広く、障害の特性や障害のある人へ の配慮の仕方などを知っていいただき実践していただく運動。一般市民、さまざまな障害者 団体や県内外の民間企業等が“あいサポーター”として参加協力し、暮らしやすい地域社会 作りのために運動を繰り広げている。平成21年より実施。 ((2)D−6−3 サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについ てどう考えるか?) ・障害者の身近に独立した苦情解決機関がない。 ・第三者評価については、自立支援法に基づく指定事業所についての第三者評価の仕組 みがなく、サービス事業所の質を担保する仕組みが不十分。 ・施設の苦情窓口は言い出しにくく、区や県に上がっていない。どこかでふたがされて いる。 ・ある市では苦情窓口を施設の外に設置しており、外に置くのも一つの方法である。 ・訪問サービス系事業所はまだ少ない。第三者機関を入れる前にサービス形態の仕組み で淘汰されるべきであり、競争原理が必要である。 ・大都市の介護保険の事業所は、競争原理が働き、そのような段階に入っている。 ・被災地に行くと、避難所は理路整然と運営され、老人や障害者は特別な配慮と支援が しっかり行われており感心した。 ・国民は、自分の権利を理解しており、苦情処理などは日本にあったやり方が必要。 ・障害施策全体の基盤整備が必要である。サービスを使うとき本人への説明と契約があ り、コミュニケーションが必要であるが、コミュニケーションを保障する資源が少な く苦情も言えない。 ・苦情もしっかり対応すれば苦情でなくなる。 ・高齢者と障害者の接触事故があり、障害者側が入院費用を負担したが、県は家族の相 談にも十分な対応ができず、情報公開もない。障害から起きたトラブルへの救済が足 りない。 まとめ:  地域生活の資源整備や重点的な基盤整備があり、選べるだけの選択肢が地域に存在し、 その上で苦情解決や第三者評価の仕組み作りが重要になる。基盤整備(量的な確保)が進ま ない中での質の確保はあり得ない。また苦情という形で問題化する以前の段階での、障害当 事者とその関係者からの話をじっくり聞く、事前相談や寄り添い型の相談支援の仕組みが必 要である。  上記を満たした上で、それでも改善されない、あるいは実際に起こってしまった苦情に ついては、実態として権利保障する為の苦情解決に向けた対応機関が必要である。 (2.I−3の論点) ((1)I−3−3 この法の実施に関するモニタリング機関の必要性をどう見るか?) ・障害者基本法改正法案においても監視のための機関を設ける旨の規定がなされており、 障害者基本法改正法案に基づくモニタリング機関の役割等の整理が必要。 ・障害者の権利擁護の観点からモニタリング機関の設置は必要。 ・モニタリング機関は必要。しかし、その機関の位置づけとそれを担う構成員に課題が ある。 ・仕組み・組織を広く国民に知らせることが大切であり、あるべき姿は行政から独立し た形が必要であり、障害当事者や保護者等の参加ではなく参画である。 ・モニタリング機関は、障害者基本法改正法案に基づく都道府県の「合議制の機関」で あり、  包括的なモニタリングの仕組みが不可欠である。 ・国レベル、地方レベルにおいてモニタリング機関を設け、障害者権利条約・障害者基 本法が守られているのか適正に実施されているのか確認する機関が国レベル、県レベ ル、市町村レベルで必要である。 ・モニタリング機関は障害者の代表が十分参画できることが条件である。 ・専門性、公平性、中立性の高い機関であることが必要。 ・東京都内に盲ろう者が2,000人いると推計されているが、身体障害者手帳で目と 耳の両方の障害が認定されている人は820人ぐらい。そして、盲ろう者向けの派遣 事業を利用できているのは約90人。いくらモニタリングをしても、利用者が少ない ので間に合っている言われて、後回しにされる恐れがある。 ・盲ろう者自身が自分の使える福祉サービスを知らない人が多いので、モニタリングの 前に、まずは盲ろう者に対して福祉サービスの情報提供が必要である。 ・障害者政策委員会でのモニタリングがどのような議論をされて、障害者基本法の改正 法案の中に盛り込まれたかということも踏まえて説明してほしい。 ・障害者権利条約の第33条にモニタリングの項目がある。この条項を受けて、委員会 は、障害者政策や基本計画を含め調査、審議できる、施策の実施状況について勧告が できる。勧告された担当大臣は、応答義務が生じる。 ・モニタリングの仕組みを各法ごとに作るのは効率的ではない。 ・当事者の参加ではなく参画するには、客観的な事実の情報があってから参画できる。 一方的な要望、要求ではなく、実際に知恵を絞って政策の立案に参画できる。 ・サービス水準や状況を評価・公表され、障害者施策マップができ、良い意味で自治体 間競争がおこるモニタリングの仕組みが必要。 ・モニタリングの範囲をどうするかが、大きなポイントである。 ・モニタリングの範囲を広げることが、障害福祉分野の範囲ではなく生活全体の範囲で モニタリングできるシステムが必要である。 ・モニタリングの範囲、あるいは差別禁止法部会との連携も含めて考えていかないとい けない所だと思う。 ・障害者基本法でのモニタリングは、福祉サービスだけを対象にしているのではない。 障害者施策等の全般的なモニタリングとなる。 ・都道府県や市町村の障害者施策推進協議会と障害者政策委員会の関係はどうなってい るのか。 ・中央レベルでは、中央障害者施策推進協議会や障がい者制度改革推進会議を発展、改 組し、新たな障害者政策委員会とし、国・都道府県は必置、市町村はできるという書 きぶりになっている。 ・各法においてモニタリングをやるのは屋上屋になるのではないかという意見があった。 ・基盤整備のためにも支援やサービス情報についての客観的な評価、公表をすべきでは ないかという意見があった。 ・モニタリングそもそも福祉サービスの範囲だけではいけないのではないかという意見 があった。 ・I−3−4と一緒に議論したい。 ((2)I−3−4 相談、「選択と決定」(支給決定)、支援の利用、利用者負担等、こ の法に関わる全般的な不服審査・苦情解決・権利擁護機関の必要性をどう見るか?) ・モニタリングの対象を明確にしないといけない。例えば、施設の整備水準なのかサー ビス提供の是非なのか。 ・介護保険においては、施設の整備水準は介護計画の中で検証し整備を重ねていくとい うプロセスであり、各市町村でサービスの提供のための整備計画を作り、できなけれ ばリニューアルするというP(計画)D(実行)C(チェック)A(改善)サイクル の中でモニタリングをやっていく。 ・モニタリングは社会基盤整備の達成度のモニタリングと理解している。 ・相談支援センターが4月導入されるわけであり、基幹相談支援センターの中でいろい ろなものが完結してくる。 ・モニタリングは基本的に総合福祉法の理念がどこまで守られているか、個別の不服審 査はモニタリングには入ってこなくて相談支援センターで処理されるものと考えてい る。 ・モニタリングそのものは必要であると考えている。 ・施設内での相談や苦情は、現場で解決できる。 ・今の都道府県審査会は、支給決定のプロセスに問題がなかったかを見るという形にな っている。問題はその支給決定が1人1人の実情にあっているのか、新法の理念に沿 った形の生活が成り立つのか審査する。その人の生活状況を審査会が把握をして審査 ができる仕組みが必要である。 ・ある自治体では、事業所の報酬の不正請求に対して、指定取り消しを行い公表してい る一方で、障害者本人がサービスの量が足りないとか24時間介護が認められないと かいろいろな不満を言える仕組みがないない。障害者にとっては不服をいう場がない 一方で行政は事業所を締め付けている状況である。 ・都道府県内で市町村格差がないかというモニタリングとか、市町村内で同じような障 害の方が公平に支給されているのかみるべき。 ・モニタリングと不服申立てを一緒にせずに、ミクロとメゾとマクロの3段階に分ける 必要があるかと思う。審査会で内容をチェックするというミクロの部分での不服審査 は市町村レベルでできる。メゾレベルは、市町村格差があったり、マイノリティー問 題についての指摘などについては都道府県レベルでチェックする必要がある。マクロ レベルは都道府県における福祉計画のチェック機能というものである。 ・スウェーデンでは、権利としてサービスを保証するだけでなく、支給決定できない場 合は行政裁判所に訴えてくださいと行政側が言う。 ・情報が行き渡っていないから不服を言う以前で終わってしまう現状があるので、行政 のケースワーカーなどの窓口の人が不服だったら手続きが取れますよという情報を提 供すべきであり、不服申請する以前の事前相談になると思う。 ・地域生活支援事業での手話通訳の派遣の範囲が狭くて使いづらく、昨日フィンランド から帰ってきたが、手話通訳は例えば麻薬の取引も手話通訳者が入る。通訳の依頼に ついては可能であると聞いてびっくりした。日本では断られたケースについて不満を 言う場がなく仕方なく全日本ろうあ連盟に意見を出して連盟から国に意見をいうが、 国は地方に意見を言うことはできない。大事なのは、行政に対しての苦情解決の場の 保障である。 ・総合福祉法のためだけのモニタリング機関を求めるのではなく、障害者基本法に基づ いて置かれる障害者政策委員会に対して、総合福祉法の観点から意見を求めるという ことが前提である。 ・自立支援協議会との整合性はまとめの中に入るのか。 I−3−3及びI−3−4 まとめ:  この法の実施に関して、この法律に基づく形ではなく、障害者基本法の改正案で示され た障害者政策委員会に、総合福祉法のモニタリングも求める事とする。一方、この法の支給 決定やサービス内容に関しての不服申立機関は必要である。 個に起因する、ミクロレベル(個人)の不服審査や権利擁護に関しては、結論10でも示し たように、相談支援との連携に基づく対応が必要である。また、市町村や都道府県レベルの 不服申立機関への手続きのハードルを低くする為、相談支援に不服申立の支援等が出来る事 も求められる。  メゾ−マクロレベル(市町村や圏域など)における、障害者総合福祉法の実施状況や障 害福祉計画に関しては、市町村や都道府県に設置される審議会その他の合議制の機関でモニ タリングを行う。その際、個別ケースではない地域課題の問題について、障害当事者や相談 支援機関が上記モニタリング機関に課題提起をすることが出来る事とする。  モニタリングされた内容は、都道府県および地域の自立支援協議会に向けて伝えられる。 都道府県および地域自立支援協議会では、障害福祉計画の進行管理や次期計画の作成などに おいて、モニタリング内容も踏まえた内容を検討し、整備水準を高める事とする。 (3.第二期で具体的に検討すべき論点) ((1)権利擁護の仕組みそのものに加え、障害者差別禁止法(仮称)や障害者虐待防止法   (仮称)でカバーすべき部分と自治体が自主的に担う役割について、どう考えるか? ) ・人権関係は法律で規定して疑義のない形としていただき、これは最終的に司法救済の 対象となると思うので、ここに自治体の裁量の余地は残さない方がよい。一方で相談 支援サービスは自治体の裁量を認めることが考えられる。 ・通報窓口、相談等を受ける機関を担当する職員の資質の向上に関する研修が、通り一 遍なものとならないこと。 ・施設や精神病院は閉鎖的で既存の既得権を守る動きがあるので、自治体でチェックし てくれる機関が必要。 ・人権の救済法が閣議決定された位の段階にきており、民主党、自民党も人権問題につ いてはシビアになっている。人権については、自治体の裁量はなく、その中に障害者 や外国人などさまざまな人権救済についての用意がなされている。 ・自治体が自主的に担うためには、障害者差別禁止法や障害者虐待防止法をもとにした 条例制定が必要。千葉県やさいたま市の取り組みのように、差別事例の検証や多くの 市民を巻き込んだ取り組みが大切。 ・家族と一緒に住んでいる盲ろう者が、家族からの理解が得られないため精神病院に入 院させられたケースがあり、本人の意向は家族と暮らしたいが、やむを得ない場合は アパート借りて自立するしかない。しかし、本人はそれを相談できる相談窓口がない ので、第三者が本人の意向を汲んで対応できる仕組みが必要。 ・国レベルでの障害者差別禁止法の一方で、相談支援や権利擁護であったり市民啓発で あったり、自治体だからこそできる障害者への支援、役割分担が必要。 ・自らの意志が通らないような状態にある人について、第三者が本人の意向を汲める仕 組みが必要。 ・施設や精神病院の中では問題について声をあげられない。今回私が危惧しているのは、 障害者虐待防止法案の与党案も野党案も精神病院や学校機関を外している。 ・権力の非対称性は、入所施設や精神病院では実は大きい。盲ろうの方とその家族の葛 藤も権力の非対称性が最も大きいところであるので、そういうところでは第三者が本 人の意向を汲める仕組みが必要である。これを総合福祉法で求めるのか、障害者差別 禁止法とか障がい者制度改革推進会議で求めるのか、というと総合福祉法を超えてい る部分もあるので、もちろん相談支援で考えるべき部分と障がい者制度改革推進会議 でも引き続き議論いただきたいと投げ返した方がいいかと思う。 ・障害児支援合同作業チームでの検討資料の一部に人工内耳に係る人権侵害と思われる 事例について問題の記述があったことを報告したい。 ・権利擁護のところで二つの側面がある。 ・事後救済に関しては、自治体の裁量がないのできちんと法律で定める必要がある。 ・事前予防に関しては、自治体の裁量がある。 ・精神病院や入所施設あるいは本人がなかなか意見が言えない状況にある人に対しては、 第三者が本人の意見を汲める仕組みを相談支援やオンブズマン等を絡めながら考える。 ・障害者差別禁止法や障害者虐待防止法が有効に使われるための又はそこに至る以前に 防ぐための自治体レベルでの条例を作ることも大事ではないか。総合福祉法で求める 部分もあるが、障がい者制度改革推進会議にも提起していくということとした。 まとめ:  司法救済などの事後救済に関しては、自治体に裁量を付与せず、全国一律の規準での救 済が望ましい。一方、日常的な権利擁護課題(権利形成・獲得側面)については、市町村の 裁量が担保される方がよい。  入所施設や精神科病院の入所・入院者、また在宅生活においても自身の意向を伝えにく い(エンパワメントされていない)障害者に関しては、第三者が本人の意向をくみ取る支援 の仕組みが必要である。相談支援機関の訪問等による関わりだけでなく、第三者による施 設・病院訪問であるオンブズパーソン制度(※)の創設なども求められる。  国レベルでの障害者差別禁止法や虐待防止法の制定は必要不可欠である。だが、自治体 レベルでも、差別禁止の意識啓発や斡旋・調整など、上記法律を実体的に機能させる為の、 また差別として現れる前に問題を解決するため、今後、市町村や都道府県単位の条例(例: 千葉県やさいたま市)が車の両輪として、設置されることが求められる。 (※)オンブズパーソン制度とは、元々スウェーデンで始まった、行政に対する苦情処理と 監察を行う第三者機関制度のこと。福祉領域でも施設での権利侵害等に対する独自の調査と 改善を求める機関として機能している。我が国の福祉分野においても、障害者・高齢者の入 所施設を第三者の市民が訪問し、利用者の声を聞く中で施設処遇の改善を目的とした施設オ ンブズマンが各地に作られている。また、精神科病院に市民が訪問し、利用者の声をもとに 処遇や療養環境の向上を目指す精神医療オンブズマンは、大阪府の制度として位置づけられ た(現在の療養環境サポーター活動)。