総合福祉部会 第14回 H23.5.31 参考資料2 伊澤委員提出資料 東京都退院促進支援事業のまとめ          〜この国に生まれたることの不幸を繰り返さないために〜  東京都退院促進コーディネート事業 担当者作成 ■ 事業目的  精神科病院に原則1年以上入院している精神障害者のうち、病状が安定し、 地域の受け入れ条件が整えば退院可能で、本人が退院を希望する者を対象に、 地域生活への円滑な移行を支援するとともに、精神障害者の地域生活に必要な 体制の整備、精神科医療機関と地域との相互理解及び連携強化を図る。 ■ 事業目的の整理(事業の役割) [1] 個別の地域移行・定着支援を行う。   <個別支援の対象者>    前提:都民及び都内での生活を希望する方、または都内協力病院に入院中の 方 ・ 原則1年以上入院している方 ⇒入院期間だけに囚われず、社会的入院に陥る危険性も認識して支援す る姿勢が必要。 ・ 病状が安定し、地域の受け入れ条件が整えば退院可能な方 ⇒対象者個別の「病状が安定した状態」を、歴史を踏まえ定性化するこ とこそが重要。 ⇒対象者の希望や不安、共有した「病状が安定した状態」に基づき、条 件は整える。 ・ 本人が退院を希望している。 ⇒始めから明確に希望している方ばかりでない。それは対象者本人の責 任ではなく、「退院したい」という気持ちを育む支援が必要。 [2] 個別の支援を通して地域づくりを行う。 ・ 精神障害者の地域生活に必要な体制の整備をする。 ⇒個別の支援を通して開発された地域のネットワークや資源、共有された 課題を地域の財産にし、地域の体制を改良する。 ・ 精神科医療機関と地域との相互理解及び連携を強化する。 ⇒個別の支援を通して、支援者が顔の見える関係をつくる。 ⇒個別の支援を通して、それぞれの支援者が地域の各関係機関の特長を理 解する。 ⇒対象者の希望実現がどんなに困難でも前向きに支援を行うチームづくり を行う。 ■ 事業の実績 <実績の概要>  平成18年度、19年度は、協力病院への普及啓発活動を柱に展開してきた。そ れは現在も続いているが、平成20年度以降は普及啓発活動の成果と事業者数が 増えたことにより、対象者数及び退院者数の増につながった。  当初掲げられていた(500名)という退院者数値目標には現時点では達成して いないが、平成22年12月末現在で退院者267名であり、協力病院から積極的 に対象者候補を挙げられるようになってきた現状を考えると、一定の成果を挙 げているといえる。(表1参照) <都事業の特長が見える主な実績> [1] 事業による支援の対象となる前のアプローチ ・入院患者、病院職員向けの事業の説明会、意見交換会を行った。  (表3−(1)参照) ・個別支援に至る前の入院患者や病院職員の相談を積極的に受けてきた。そ の回数は個別支援の総支援回数の1割以上を占める。  (表3−(2)参照) [2] 広域支援  平成18年度から21年度の全退院者の183名のうち、地元の病院に入院し地元 に退院した方は35名(19.1%)であった。  それ以外の136名(74.3%、なんと4人中3人!)は地元から離れた病院へ の入院を余儀なくされた方々である。  また、その136名のうち95名(51.9%、なんと半数以上!)の方は病院近辺 に住まいを構えるなど、地元とは離れた地域での生活を選択せざるを得なかっ た方々である。  上記の一番の原因は、精神科病床が偏在していて、生活圏と医療との乖離が あることである。よって都内全域を活動域とする広域支援が欠かせない。(表4 参照) [3] 対象者像からみる実態(年齢・障害・疾病) ・対象者のうち約10%を占める42名の方が高齢者である。(表5参照) ・対象者のうち約25%の方が統合失調症以外の診断もしくは統合失調症に加 え、他の障害や疾病を重複している。(表6参照)  知的障害65歳以上の方、身体障害、知的障害身体合併と重複されている方が 多い。障害が重複していることや高齢の方への支援だけをとっても退院の受け 皿確保は非常に難しい。 [4] その他 ・ 病院、地域への普及啓発活動  啓発活動の一環で、都民や医療機関等への研修を行なったり、地域関係機 関職員が病院に入り実習をしたり、病院職員が地域に入り関係機関での実習 を行なう企画もしてきた。その分会議が多く、事務量も多くなっていること も事実であり、整理することは必要だが市区、事業所の自己采配になりはし ないか。懸念は大きい。 ・ 事業全体での情報、意見交換  定期的な会議を都全体(地域生活移行支援会議、CO事業所会議)、圏域(圏 域別会議)、市・区(地域生活ケア会議)それぞれの会議をおこない情報共有 及び事業者地域でのばらつきを減らし、支援の均等化を図ってきた。(表7参 照) 【資料】 表1 個別支援実績 コ―ディネート 事業所 対象者 支援結果 体験宿泊等 利用日数 協力病 院 退院 援助継続 中断 平成16、17年 度 (モデル事業) 2 56 23 32 1 ― 11 平成18年度 3 65 30 25 10 32 19 平成19年度 6 81 26 51 4 243 29 平成20年度 12 169 51 92 7 522 51 平成21年度 12 187 76 104 7 853 61 平成22年度 (12月末現在) 12 182 61 117 4 876 63 表2 対象者の総入院期間 表3 事業による支援の対象となる前のアプローチ(※平成21年度実績)  (1)病院内での啓発活動 病院数 35 実施回数 237 地域生活サポーター 数 142  (2)対象となる前の事前相談等 対象者と会うまでの関係者との調 整・相談 279回 対象となる前の事前面接 348回 計 627回 表4 広域支援の状況(※平成18年度〜21年度実績) 表4 主な地域移行のパターン 退院者 割合 入院前住所 地 入院先病院住所地 退院後住所 地 A ◎ ◎ ◎ 35 19.1% B ◎ △ ◎ 41 22.4% C ◎ △ △ 57 31.1% D ◎ △ ■ 38 20.8% E 入院前住所地が不明 12 6.6% 合計 183 表5 対象者のうちの高齢者の割合(平成18〜22年度実績) 65歳以上の人 42 65歳未満の人 351 不明 6 合計 399 表6 対象者の疾病別分布 表7 ケア会議の開催実績 表8