総合福祉部会 第14回 H23.5.31 資料6 合同作業チーム(就労(労働及び雇用))議事要旨(4月) 1.日時:平成23年4月26日(火)14:00〜17:00 2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂 3.出席者   松井座長、駒村副座長、伊東委員、勝又委員、倉田委員(栗原代理)、近藤委員、  斎藤委員、新谷委員、竹下委員、増田委員 4.議事要旨 (1)社会支援雇用について チューターから、資料により社会支援雇用制度について説明。 ○障害者就労支援調整センターの職員はどのような人を想定しているのか。わざわざセンタ ーを新設しなくとも、ハローワークに担当職員を配置すればよいのではないか。 (チューター)総合的なアセスメントは、相談だけではない。訓練や実習、グループワーク 等も含む職業リハビリテーションの場である。 ○職業リハビリテーションを行う機関は今もある。これらをやめるということか。 (チューター)現在の機関は身近な地域にない。また、就労移行支援事業所がB型事業所と 同じことをやっているところが多く、職業リハビリテーションの機能を果たしていない。 職業カウンセラーや精神保健福祉士、社会福祉士等の専門家と、企業の人材がチームを作 るべき。 ○営利企業で働いても社会雇用支援制度は適用されるのか。社会支援雇用事業所とデイアク ティビティセンターでは、最低賃金が保障される社会支援雇用事業所を選ぶのではないか。 ○社会支援雇用事業所の対象者の基準は何か。 (チューター)本制度は賃金補填も含んでおり、民間企業、官公庁にも適用。環境によって 力を発揮できないこともあり、センターで力を最大限引き出すための調整を行うことが重要。 障害者に限って何%という形で労働能力が問題になるのはおかしい。 ○賃金補填すると企業がその分賃金をカットするのではないか。これでは、誰に対する補助 なのか分からなくなり、企業が工賃を高めようとするインセンティブも失われる。企業のイ ンセンティブを高めるとともに、生産性が上がると手取りも増えるといった仕組みが必要だ。 (チューター)モラルハザードがあるからやらないのではなく、まずは仕組みをつくること。 そこでアセスメントが重要になり、第三者機関による本人中心のモニタリングが必要だ。 ○箕面市では賃金補填について2年前まで定額補助だったが、インセンティブに問題があり 3/4の定率補助に変えた。稼ぐ力が向上すると、補填額は下がるが手取りは増えるような仕 組みが必要だ。対象については、環境との関係を踏まえた障害認定は難しい。年金との関係 については、賃金補填をするなら現在350万円となっている所得制限の見直しが問われる。 ○労働施策と福祉施策を一体的に考える必要がある。 ○デンマークでは労働能力が50%以上の者は一般就労、30〜50%はフレックスジョブで年金 がなく賃金補填で対応。職業能力30%未満はワークショップで雇用関係がないため年金で対 応。知的障害者・精神障害者は大半がワークショップで働き、その人数割合は日本の福祉的 就労とほぼ同じ。日本での導入は慎重に考えなければいけない。日本でも企業がA型事業所 を利用しようとする動きもあるので、注意が必要。 (2)論点1(障害者雇用率制度のあり方について) ○現行の納付金制度の充実は重要。就業・生活支援センターの指定においては実績が問わ れるのに、就労移行支援事業は問われない。実績で評価すべき。 ○法定雇用率はフランス6%、ドイツ5%、韓国3%と日本の1.8%よりはるかに高いが、 障害の範囲の違いも影響している。今後障害の範囲が広がると法定雇用率の見直しも必要。 雇用率は上がっているため納付金の財源が減っており、納付金額の見直しを検討すべき。雇 用保険の雇用施策と納付金の施策を一体的に見直すべきだ。 ○3月末の労政審障害者雇用分科会で、特例子会社、重度障害者多数雇用事業所の助成金の 財源を納付金から雇用勘定に移すことが報告された。雇用保険も財源は厳しいが、これの 活用も踏まえて検討するべきだ。賃金補填は納付金だけでは無理。 ○労働施策で行われている支援が雇用につながっているのか実績を確認するべき。また、福 祉施策で行われている就労移行支援事業は就職率が15%以下で、こちらも検証が必要だ。 ○障害の範囲を広げると雇用率は上がり、納付金の収入は増える。納付金を一律5万円では なく大企業は法定雇用率を上げ、納付金を充実させる必要がある。 ○厚生労働省の就業実態調査の中では、作業所で働く人も「就業」に含まれている。法定雇 用率の算定の仕組みが不十分だ。これの見直しは失業率の見直しにもつながる。 ○失業率は働く意思があって、求職活動を行っている人が対象。EUでは就業率を指標とし ており、2020年に就業率75%との目標も掲げている。 ○EUでは就業率=社会参加率としてとらえている。納付金と雇用保険は、負担していない 人に使うのは難しい。福祉的就労を失業者とカウントしても雇用保険の金は使えない。 ○雇用率、失業率の前に障害者の範囲を明確にするべき。アメリカでは手帳制度がないので わからない。EUは広くとらえている。日本の手帳制度では範囲は狭い。 ○全国消費実態調査、国民生活基礎調査などの全国民を対象とした基幹統計調査に「6か月 以上、病気又は障害によって社会的活動を妨げられている者」という設問を入れれば、この 設問に合致した人数だけでなく、この設問に合致した状況にある人の家計状況や年齢、家族 構成等も分かる。そのような基礎データを使った議論を始めるべき。必要な支援についての アセスメントは別途対象者に対する調査が必要。 ○雇用率制度や納付金制度の施策の効果を労政審に検証していただこう。 ○助成金は単に支援をメニュー化したもの。合理的配慮とは質が違う。合理的配慮を助成金 の一部としてメニュー化するという小手先の対応ではこの会議の意味がない。 ○納付金制度は障害者を雇用した事業主の負担を軽くするための制度だ。企業では、可能な 職場改善の配慮は既に行われており、そのために助成金制度がある。今の助成金制度によっ て充足されない部分を埋めるよう提案していけばいい。 (3)論点2(障害者雇用率制度のあり方について) ○精神障害者の雇用義務化は重要だが、適切な支援の提供と精神障害への正しい理解を広げ ることが必要。難病の方も含め、働くことに障壁のある人を義務の対象とする転換が必要。 ○精神障害者で手帳所持者は17%なので、手帳所持者を義務化の対象とすると狭くなる。 ○手帳要件はなくすべきで、医師の診断書などで判断してはどうか。 ○就労支援コーディネーターを置く等精神障害者が一般企業で働きやすい環境づくりが大 切。 ○精神障害であることを開示しないとアセスメントも合理的配慮もできない。 ○精神障害を開示しないのは配慮を求めないという選択だ。ただ企業という競争的市場では、 開示することで採用されなかったという体験があり、そのため開示しないことが多い。回復 して働けるようになっても契約等不安定な就労が増えており、解雇されやすい実態がある。 ○精神障害者も就職を望んでおり、企業にも受け入れる気運が広がっている。 ○精神障害者の雇用を義務化すると企業は雇用している人の中で患者探しを始め、新規雇用 につながらない可能性がある。手帳所持者が少ないため、雇用率設定の基準を何にするか要 検討。 ○あらゆる障害を義務の対象とすべきというのが多数意見だが、実態把握が大きな問題だ。 手帳所持者でなく就職困難な人を対象にすべきだが、これを客観的にどう決めるかは大きな 課題。 ○納付金の額の目標は最低賃金で、段階的に引き上げるのが現実的だ。 ○納付金額を上げ負荷をかけるのでなく、企業が障害者雇用の社会的意義を考えるような仕 掛けを考えるべき。雇い方を考えずに、率だけを考えると本質が失われる。社会参加できな い人がいるのにそれを解決できないことが問題だ。 ○精神障害者が働きやすい環境づくりのためには、現行の企業だけではなく社会的事業所な どの新しい枠組みが必要だ。 (4)論点3(合理的配慮の確保について) ○障害者権利条約で、合理的配慮がないと差別とされるが、これを職場にストレートに適 用すると混乱する。まず企業に差別の事例を紹介する、次に行政が指示、最後に第三者機 関が指導といった丁寧な対応が必要。合理的配慮については、就職した当事者の意見を聞 くことも重要。また、社会的雇用は一般企業よりも合理的配慮の水準が高いので、一般就 労に役立つものを提示していく必要がある。 ○合理的配慮は一般企業にストレートに当てはめないと困る。企業は合理的配慮という言 葉は使わないが、配慮はしている。職場での雇用の安定を図るイメージを企業に持っても らえばよい。 ○精神障害者は発症時期によって支援のあり方が異なる。企業、障害者本人両面への支援を していくべき。若年発症者は働くイメージがなく、合理的配慮に至る前の支援が必要。 ○合理的配慮の提案をしても受入れられない場合もある。合理的配慮をしないことを差別と いう場合、どこが判断するのか。企業、就労支援者に都合よく合理的配慮を考えてはいけな い。 ○福祉施設には、苦情解決体制の整備の義務付けがある。合理的配慮は個別的であり、導入 当初は事例を示すことが大切であり、企業内に解決の仕組みを設けることも必要ではないか。 ○職場で何かしようとするとき、事例集や法律があると現場が上司に説明しやすい。 ○障害者が上司と対等に話合える仕組みが必要。障害者雇用促進法で合理的配慮を書くなど、 法的な縛りができることで、人が意識を変えることが大切だ。 ○合理的配慮については、差別禁止部会で検討中であり、労政審でも検討することとなって いる。要する費用負担はどのように賄うべきか。 ○合理的配慮の本当の狙いは企業で障害者が能力を発揮できるよう全員で目指すことだ。合 理的配慮の具体的な取組方法を示すことが必要。財源には納付金を充てるが、それだけでは 足りない。雇用が進めば福祉の需要が減り納税者が増えるので、税での対応もあり得る。 ○事例収集の際には、費用面からの類型化も必要。[1]費用が発生しないもの、[2]費用を通常 の経営活動で賄う場合、[3]納付金で賄う場合、[4]納付金でも賄えない場合の4種類。合理的 配慮は生産性向上につながるので、助成金のみで措置すべきではないのではないか。 ○合理的配慮のための費用は生産コストに反映されるべき。助成金は政策意図を持って使う べき。現状のような決められたメニューだけでは、メニューにないことは取組まなくなる。 ○合理的配慮に助成金を使えるよう、まずは仕組みを作るべき。 現行のように雇ったとき にしか使えないのでなく、雇った後でも使えるようにすればよい。 (5)チーム報告書骨子案について (座長より) ・骨子案について。5月31日の次回就労チームで最終版を議論したい。報告書を6月9 日までに提出しなければいけないので、5月10日目途で意見をいただきたい。また、 報告書はA4で10枚以内と制約がある。総合福祉法とそれ以外、特に障害者雇用促進 法、そして両法でカバーできないもの、の3つを整理しなければならない。ところが、 このチームでは、必ずしもコンセンサスをとる形で議論していない。しかし、多数決で 決める問題でもない。両論併記という形もあり得るが、大まかな方向性を書くことにな る。例えば、就労移行支援事業やA型事業所、B型事業所を総合福祉法に入れるのかは 大きな問題。また、障害者雇用促進法の課題は労政審での検討となるが、そちらで「こ れはうちの所掌ではない」となると宙に浮いてしまう。 ・優先順位としては、実現可能で実施するべきものから。今後の課題については何らかのチ ームを作り、引き続き議論するべきだ。その際、雇用の問題は労使が入らない限り正当化 できないので、メンバーが重要になる。労働法や労働経済の学者等も入れたい。 ・報告書の構成は、[1]はじめに、[2]結論、[3]その理由、[4]終わりに、である。 ・「多様な就業の場の創出および必要な仕事の確保」は、社会的企業等をどの法律に位置づ けるかが課題。「企業等での障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、コミュニケ ーション支援、ジョブコーチ等の福祉施策と労働施策の分担および財源」については、福 祉サイドと雇用サイドでどう整理するか。相談支援については他チームでも福祉サイドの ワンストップの話が出ており、これを就労まで広げるのか整理が必要だ。「障害者雇用促 進法にかかる課題」については、労働条件など、雇用の質についてはモニタリングできる ようにはなっていない。差別禁止条項をどう位置づけるかとも関係する。障害認定につい ては、第1次意見では「就労の困難さに視点をおく社会モデルの観点に立ち、その認定に 係る制度の仕組みを含め見直す方向で検討」としている。これに対し、事業主にとって分 かりやすいものに、といった意見があった。雇用率制度の対象や雇用率の水準、納付金の 額等も論点の一つ。助成金の対象や給付期間についても議論の余地がある。「職場におけ る合理的配慮提供の確保」については、差別禁止部会や労政審でも今後議論されるが、チ ームとしても提言したい。救済措置をどうするかも重要な論点。「労働年齢の障害者の就 業実態を踏まえた、適切な障害者雇用・就労施策をすすめるための試行事業の実施と(就 労・経済状況などを比較するための)国民基礎調査の整備」については、その必要性を報 告書の中で提案したい。「『新しい公共』と社会的企業などとの関連」について、経済産 業省でのコミュニティ・ビジネスの議論や、内閣府での「新しい公共」の議論との関係を どう整理するか。