総合福祉部会 第9回 H22.11.19 参考資料1−2 氏田委員提出資料 自閉症児者の求める合理的配慮と障害者制度改革の方向性 第一版(コンセプト研究)報告 <  目    次  > 1.背景・目的、検討の経緯と本報告の位置付け 2.自閉症とは、自閉症と発達障害 3.自閉症の困難さの軽減と地域で暮らす為の施策の3本柱 4.自閉症児者が求める合理的配慮 5.自閉症児者が求める障害者制度改革の方向性 (自閉症児者を支える援助・医療・支援制度) 6.個別分野の合理的配慮の詳細研究例   第一版報告 ◆労働及び雇用 7.検討会の経過と今後の進め方 8.参考文献 APPENDEX.参考資料抜粋 2010年10月28日 神奈川県自閉症協会 神奈川県自閉症児・者親の会連合会 合理的配慮研究会 1.背景・目的、検討の経緯と本報告の位置付け 1)背景・目的 ・障がい者制度改革推進会議、総合福祉部会による制度改革の検討は、障害福祉の方向を 大きく変え、新たに作っていくものと考え、大きな期待を持って注目しています。 ・ベースとなる障害者権利条約には様々な新しい考え方がありますが、その各々が自閉症 児者にとっても有効なものとなる様にしていかなければなりません。 ・なかでも合理的配慮の考え方に着目し、解りにくい障害である自閉症児者が求める合理 的配慮を明確にし、各方面に働きかけ、社会の理解を得る必要があります。 ・障がい者制度改革推進会議は自閉症・発達障害者の立場からみると、メンバーに立場を 代弁する人も少なく、議論も少ないと感じています。 ・よってまず障がい者制度改革推進会議のみなさんに自閉症の理解を得ると共に、求める 合理的配慮と制度改革の基本的な方向(一次意見)」を踏まえての課題をインプットしたい と考えています。 ・ 又、上記について会員の理解を得る為の資料としても有効なものとしたいと考えていま す。 2)検討の経緯と本報告の位置づけ ・親が自閉症児者本人を代弁するもの  障がい者制度改革推進会議の基本的精神の一つに”Nothing about us without us” (私たち抜きに私たちのことを決めるな)がありますが、残念ながら自閉症の人に参加 機会が得られていません。また、参加のためには大きな配慮が必要となります。 よって本書は親が本人を代弁するものとして作成しています。 ・合理的配慮の定義  合理的配慮と求める支援制度の違いに悩み、両者を区分し合理的配慮とは社会に理解を 得て、期待する(すぐにできる、過度の負担のかからない)配慮とし、支援制度はそれを 支えるものと定義しました。  これについては各方面に議論頂きたい。 ・第一版(コンセプト研究)報告  本報告は左記の目的に対する第一版であり、コンセプトとしてまとめた。今後、色々な 方と議論・検討し、専門家の方々も巻き込んで、配慮のシーン毎の具体化等に取組みます。 <以下、挿入図> 【タイトル】差別の考え方の発展 縦軸の下から上に「差別の排除」、横軸の左から右に「時代」 左下から右上に、「直接差別」、「間接差別」、「合理的配慮をしない差別」と記載。 <挿入図、終わり> 合理的配慮(Reasonable Accommodation)とは 障害者が他の者との平等を基礎として、すべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使 することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必 要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。(公定 訳版) 2.自閉症とは、自閉症と発達障害 1)【自閉症とは】  『自閉症』は、脳の情報処理の機能が混乱している、生まれながらの脳障害です。   自閉症は、知的障害やその他の発達障害、てんかんなどを伴って生じる場合が多いです が、単独で生じる場合もあります。 今日まで自閉症の原因は解明されていません。 脳のどの部分にどんな障害があるのか解っていません。  ●生後2歳半くらいまでにあきらかになる一種の「発達障害」です。外見からは一目で は解りにくい障害です。  ●人とコミュニケーションすることに障害があります。言葉については、実際に話すこ との可能な人でも、その言い回しやイントネーションに特有なパターンがある人や、実用 的に使えない人が多くいます。また、言葉をまったく話せない人達もいます。  ●また、社会的な関係を理解することが難しく、仲間と協調して遊べなかったり、友達 関係を築く能力が損なわれたり、相手の気持ちや感情を理解できなかったりします。 基本的特性 a.社会性の発達のつまづき b.コミュニケーションの発達のつまづき c.想像力につまづき(興味が限られる) d.感覚過敏がある人が多い e.知的な遅れのある人も無い人もいる 2) 【自閉症と発達障害】 自閉症と発達障害(発達障害者支援法第2条定義より) 発達障害とは自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥 多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現 するものとして政令(せいれい)でさだめるものをいう。 <以下、挿入図> 【タイトル】発達障害の中のそれぞれの障害の特性と関係性 「広汎性発達障害」、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、「学習障害(LD)」の3つの領域が、 それぞれ一部重なるように図示。 「広汎性発達障害」と「注意欠陥多動性障害(ADHD)」にまたがるように、「知的な遅れを 伴うこともあります」と記載。 「広汎性発達障害」の中に、「自閉症」と「アスペルゲンガー症候群」と記載。 「自閉症」の説明として、「上記 基本的特性」と記載。 「アスペルゲンガー症候群」の説明として、以下の5点を記載。   ・基本的に言葉の発達の遅れはない   ・コミュニケーションの障害   ・対人関係・社会性の障害   ・パターン化した行動、興味関心のかたより   ・不器用(言語発達に比べて) 「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の説明として、以下の3点を記載。   ・不注意(集中できない)   ・多動・多弁(じっとしていられない)   ・衝動的に行動する(考えるよりも先に動く) 「学習障害(LD)」の説明として、「『読む』、『書く』、『計算する』等の能力が、全体的な知 的発達に比べて極端に苦手」と記載。 図の最下段に、「参考:『発達障害の理解のために』厚生労働省 社会・援護局 障害保健 福祉部 発行」と記載。 <挿入図、終わり> 私達がこの資料で述べる自閉症とは、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、その 他の広汎性発達障害を含めたものと定義します。 注意欠陥多動性障害(ADHD)学習障害(LD)の方にはその特性に対応した合理的配慮や制度 が求められると考え、この資料(自閉症)の対象から除かせて頂きました。 3.自閉症の困難さの軽減と地域で暮らす為の施策の3本柱 1)【自閉症の困難さ】 自閉症児者は以下の種々様々な困難さを持ち、解ってもらえない、意思が通じない事によ る混乱とストレスが問題行動に結びつきます。  ・様々な刺激や情報の中から必要な情報と不必要な情報を識別したりまとめたりするこ とが困難  ・言葉や表情、身振りなどの意味を理解することが難しい  ・時や場所など状況によって変化するような相対的・抽象的なルールや物事の因果関係 をとらえることが困難  ・ある状況で学習した事を、他の状況に応用することが困難  ・失敗体験はトラウマになる    ・ 感情や要求をうまく表現できない  ・困った時や分からない時に、人に助けを求めたり聞いたりすることができない  -人と適切な距離がとれない -身体をゆらす -こだわりが強い -視線が合いにくい  -独り言-オウム返し(エコラリア)、一方的に話す <以下、挿入図> 「解ってもらえない、意思が通じない事での激しい混乱・強いストレス・大きな不安」と の記載から、大きな矢印の先に、「問題行動・自傷・他害・破壊・かんしゃく・常同行動・ 固執行動・異食等」と記載。 <挿入図、終わり> 2)【自閉症の困難さの軽減のために】 自閉症の困難さの軽減、地域で暮らしていく為には大きく分けて3つの施策が必要です。 @早期発見、発達支援  早期からの、自分の意思の表し方、環境理解やコミュニケーション方法、自己決定・選 択等への発達支援が必須です。  →専門家、教育者、支援者の育成体制と 自閉症児者の療育の場を求めていく。 A社会の理解と合理的配慮  自閉症の困難さを理解し、本人に解る様に情報を伝える等、配慮を加える事により、問 題行動を防止・抑制する事ができ、自己決定 や自立活動が可能となります。  →自閉症児者の求める合理的配慮をより具体化する事により、社会に理解を求めていく。 B自閉症児者を支える援助・医療・支援制度  発達障害者支援法の施行により、ようやく障害と認められる事となりましたが、支援つ き自己決定等を中心とした変革と強化 が必要です。  →現在進められている障がい者制度改革推進会議に自閉症児者の求める改革の方向性を インプットする。 <以下、挿入図> 【タイトル】自閉症者の求める施策3本柱 「自閉症児者」という記載の、上に「早期発見、発達支援」と、左下に「社会の理解と合 理的配慮」と、右下に「援助・医療、支援制度」と、それぞれ記載。 <挿入図、終わり> 4.自閉症児者の求める合理的配慮  4-1.基本的合理的配慮 自閉症児者の困難性の現れ方は人によって様々で、困難性のレベルも違っています。これ が自閉症という障害を解りにくくしている一つの要因(よういん)でもあります。合理的配 慮は障害のある個々人の状況に即した形で個別に調整し、提供されるものですが、社会に 理解を求める為、大胆に大きく共通するものとして、基本的合理的配慮としてまとめまし た。 自閉症児者の求める基本的合理的配慮 -コミュニケーション支援、情報のバリアフリー化 -本人がわかる環境を整える:環境の構造化が基本となります。  ◇視覚的に伝える(「聞く」よりは「見る」)  ◇順序付け、見通しを立てて伝える  ◇一度に多くの情報を提供しない、伝えない  ◇本人に直接、具体的に伝える  ◇失敗は成功の母にならない、成功体験を重視  ◇予定の変更、変化等は事前に説明  ◇本当に理解できたか確認、フォローが必要  ◇本人の意思表示、ヘルプ要請の方法作り  ◇独り言、身体をゆらす等問題なければ許容  ◇奇異な目で見ない(理解を持った無関心) 知的な遅れのある自閉症の人だけでなく、知的な遅れの無い自閉症の人にも同じ配慮が必 要です 自己決定、自立活動への「支援つき意思決定制度」 自閉症児者の発達支援と合理的配慮により、自己責任を持つ事も理解した自己決定、自立 活動に結び付けて行きたいと考えていますが、一方 自閉症に理解を持った支援者、相談者 による支援も必要です。情報をかみくだいて渡してくれる、相談しながら自己決定してい く事に対応して頂く支援者です。 これは障害者権利条約にある「支援つき意思決定」につながるものと考えています。もち ろん誤った自己決定により、恣意的に財産等を奪われない事や身上的な不利を是正する法 的社会制度の確立等も前提として必要です。障がい者制度改革推進会議の方向に、この強 化を要望します。 前記は基本的な合理的配慮を上げたものです。より具体化する為、生活シーン別の合理的 配慮を次頁に概要を示します。詳細は検討途上にあります。 より詳細化を行う計画で、検討途上にあり、その例として、6項「個別分野の合理的配慮 の詳細研究例」に労働及び雇用の現場での求める合理的配慮研究例を示します。 (「4-2.生活シーン別の合理的配慮」と記載された、下向きの大きな矢印) 4-2.生活シーン別の合理的配慮 (1/2)  社会の人に、より理解を深め、合理的配慮を頂くため、生活シーン毎の求める合理的配 慮を抽出しました。 【生活シーン】1)労働及び雇用 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・手順その他、視覚的に理解できるものを使って教育や指示を行う ・持てる能力が発揮できるよう環境を整え、機会を与える ・思いや考えを伝える事が難しい人が多い為、理解し代弁してくれる人が必要 ・あいまいな指示・態度ではなく、具体的で明確な指示・態度で対応する ・一人での通勤が困難な者にはガイドヘルパーがサポート ・集中力を長時間持続するのが困難な者には適宜休憩時間を設ける ・働いて賃金を得るという概念を育て、支援を受けながらの自立した生活を提示 採用・応募条件は不可欠なスキルを特定し、明確に示すよくある配慮のない付帯条件    ・明るく活発な人    ・コミュニケーションの良い人 【生活シーン】2)教育 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・感覚過敏がある人が多いので、体に触らない、嫌いな音から遠ざける配慮 ・行動を促す際、強制はせず、穏やかな声や態度で本人が理解できる方法で個別に指示す る ・集団が苦痛な場面も多いので、本人の逃げ場を確保する ・視覚的な指示を使い、理解を図る ・出来る事を褒め、自信を持たせるなど、自己肯定感が育つような教育が必要 ・一人での通学が困難な者にはガイドヘルパーがサポート ・集団行動が苦手な者には強制的な参加を求めない 【生活シーン】3)障害児支援 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・発達障害は、成人するまで保護者が気が付かない事が多い  気付いた人、機関の保護者への支援が必要 【生活シーン】4)医療 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・人が多いのは苦手で過敏な人達なので、別室待機など待ち時間の対応が必要 ・不安軽減のため、診察内容などを視覚的に知らせ、予告しながら診察 ・「痛くないよ」など真実ではない事を言わない 【生活シーン】5)司法手続 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・答えを選択出来る等、特性を踏まえた質問の仕方をする ・特性を踏まえた、落ち着ける環境を提供する ・自閉症者が事件の当事者となった場合、当人を良く理解する支援者を取り調べに同伴さ せる ・手続きの流れを視覚的に提示し、理解のために支援者を配置する 4.自閉症児者の求める合理的配慮  4-2.生活シーン別の合理的配慮 (2/2) 【生活シーン】6)生活 支援 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・混乱なく活動できるよう、スケジュールや手順などを分かりやすく提示する ・ここで何をすべきかが理解されるよう、活動内容に合わせた場所を確保する ・混乱なく活動できるよう、変更には本人に分かる方法で事前に知らせる ・「皆と一緒が一番」との既存の概念に捉われることなく、本人の望む場所の確保 ・困った時の対処法や対人関係のトラブルを本人に寄り添い一緒に解決していける人を身 近におく ・公共交通機関などは視覚的な案内を積極的に採用する 【生活シーン】6)生活 支援 建物利用・交通アクセス 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・公共機関(役所、交通機関)など、視覚的な案内を使い、シンボルマークなどの統一 【生活シーン】6)生活 支援 情報アクセスコミュニケーション保障 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・オウム返し、一方的に話すなど、特異な会話法への理解 ・比喩的表現、皮肉や冗談が通じず、言葉通り理解する事への理解 ・コミュニケーションボードや、絵、写真などを多用した視覚的な対応 【生活シーン】7)住まい 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・睡眠障害やパニックを想定して、まわりに迷惑をかけない対策、環境が必要 ・体温調節が困難な人もいるので、適切な温度調整が必要 ・他人から刺激を受けて不安定になる方もいるので、個室の確保や刺激から遠ざける環境 を用意 【生活シーン】8)災害 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・地域支援者による、災害時避難及び避難生活での共助 ・集団生活が苦手な者は速やかに、一次避難所から二次避難所への移動を進める ・障害のため避難所へ行くことができない人達もいることを想定して支援 ・防災訓練はじめ地域で集まる時に、奇異な目で見ない ・災害時に何が起きたのか、どうすれば良いか解らない人への支援 ・災害復興時、家の片付け等の時に障がい者が居られる場所が必要 【生活シーン】9)政治参加 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・投票所のわかりやすい表示、配置に加え、係員の障害理解と支援 ・投票方法の選択(代筆、インターネット等の支援付き投票) ・選挙権を行使できるよう、候補者の公約など、本人に分かるように提示 ・選挙公報に写真や短い見出し、簡単な図を取り入れる -選挙時には、事前に写真を使い、 投票時の流れを明示 【生活シーン】10)社会参加 【ライフステージ・生活シーン毎の求める合理的配慮】 ・就労などだけではなく、本人の能力に合わせた社会参加の機会、手段を用意 5.自閉症児者の求める障害者制度改革の方向性 (自閉症児者を支える援助・医療・支援制度) 5-1)障害者制度改革の推進の為の基本的な方向(一次意見)(障がい者制度改革推進会議) 【概要】 基本的考え方 1.「権利の主体」である社会の一員 2.「差別」のない社会づくり 3.「社会モデル」的観点から新たな位置付け 4.「地域生活」を可能とするための支援 5.「共生社会」の実現 基礎的な課題における改革の方向 1)地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築   地域移行や地域生活支援の充実を柱に据えた施策の展開 2)障害の捉え方・・・国民全体の意識改革(医学モデル→社会モデル) 3)障害の定義・・・サービスを必要とするすべての障害者を支援 4)差別の定義・・・法律における定義の明確化(合理的配慮を含む) 5)言語・コミュニケーションの保障・・・法律における定義の明確化 6)虐待のない社会作り・・・虐待防止、被虐の救済等の制度構築 7)「障害」の標記・・・国民各層の議論動向を踏まえた考え方の整理 8)実態調査・・・障害者及び家族の実態把握 横断的課題における改革の基本的方向性 1)-1 「障害者基本法」の抜本改正 1)-2 改革集中期間における推進体制 2) 「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)等の制定 3) 「障害者総合福祉法」(仮称)の制定 上記の障がい者制度改革推進会議の基本的な方向(一次意見)を踏まえ、自閉症児者の立 場からの意見として以下を提出します。 5-2)上記の基本的な方向(一次意見)に対する自閉症児者の求める障害者制度改革の方向 性 1.基本的な方向を支持し、今後の具体化に期待 します。 2.全体に自閉症児者の困難性にも理解を頂いて検討に含める事を要望します。  基本的方向の「W.日本の障害施策」の最終部に書かれているように、自閉症は2004年の 「発達障害者支援法」の成立によりようやく法的に障害者の認定を得ましたが、それでも 自閉症というだけでは公的な福祉サービスは受けられません。この経緯により自閉症児者 の福祉実施法の中での法的な位置づけを強く求めます。自閉症を法的に明記する事を要望 します。 3.支援つき自己決定、選択の諸制度への反映 「権利の主体」たる社会の一員としてその責任を分担し、必要な支援を受けながら、自ら の決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加、参画する主体としてとらえる。」 とあります。自閉症児者にとって支援つき自己決定、選択が重要です。次頁の各個別分野 も含め、全体に反映、盛り込まれるよう要望します。 言語・コミュニケーションの保障においても、言語の選択に留めるのではなく、支援を得 ることでコミュニケーションが保証される障害者の事を入れて頂く様要望します。 4.自閉症の早期発見、発達支援の重要性 (医学モデル→社会モデル)とありますが、自閉症は社会モデルの支援を受ける前の、早 期発見と発達訓練・支援も重要で、その為の専門家、療育者、支援者の育成と療育・訓練 の場が重要となります。障害児支援に反映頂くよう要望します。 5-3)個別分野に対する自閉症児者の求める障害者制度改革の方向性    個別分野でも基本的方向を支持するものですが、全体に自閉症児者の困難性にも理解を 頂いて検討に含める事を要望します。 1)労働及び雇用 ・雇用義務の有無、雇用機会の格差の改善への自閉症者の反映 ・福祉就労のありかた、協同労働等の仕組みなどの検討への自閉症者の反映 ・解りにくい障害であることから、専門知識のある支援員の育成、配置 2)教育 ・インクルーシブ教育における自閉症の合理的配慮の確保 ・幼稚・保育園から高校を通した個別教育計画の継承 ・就労教育・就労支援の強化 ・教員、支援者の専門性の向上に係る方策への自閉症の組入れ      一般教員教育への障害研修の取り込み、教員免許制度の改革 3)所得保障等 ・就労できない自閉症者の無年金障害者の所得保障 ・労働賃金保障と併せ、一人でも生活できる障害者基礎年金の設定 ・寄宿舎、共同住宅仕様ではない、新しいグループホーム住宅としての法整備 4)医療 ・精神科医療には自閉症も関係するので早期発見、診断、療育体制作り,障害の困難さの軽 減医療 の強化策の反映 ・医療現場での合理的配慮、自己決定支援の確保、第三者の補助 5)障害児支援 ・自閉症児者の自立にむけての発達支援、ワンストップ相談支援体制の構築 6)虐待防止 ・自閉症児者は親の障害の無理解、無認知からくる虐待の防止が必要 7)建物利用 ・従事者、利用者の障害理解の推進など、心のバリアフリーの視点での方策 ・解りやすい、共通、統一の表示の普及の方策 8)情報アクセス・コミュニケーション保障 ・自閉症児者への通訳者、補助支援員の配置と困ったときの窓口表示マークの統一 ・災害時の情報の統一マーク化(何が起こるのか、どう行動すれば良いか) ・災害避難場所での障害者の居場所表示(自閉症は刺激を防げる場所が必要) 9)政治参加 ・自閉症・知的障害者にも解りやすい選挙公報、投票案内 ・障害特性に合わせた投票方法の選択制度(代筆、インターネット含) 10)司法手続 ・(知的障害と同様に)支援者の立会い、支援を自閉症児者にも認める ・刑事訴訟手続きや司法関係者への配慮義務に自閉症児者を含める 11)国際協力 ・障害者、専門家の交流、国際会議等による支援方法等の相互啓発 補)自閉症を支える援助・医療・支援制度   個別分野の改革の方向性への要望      検討会で上がった各分野の要望事項を下記に列挙します。前記の意見は障がい者制度 改革推進会議の一次意見の 範囲や方向に沿った形で、下記から抽出または追加したもので す。 1)労働及び雇用 ・就労定着、継続支援のための専門員の配置 ・協同労働などの新しい雇用形態の創出、仕組みづくり ・障害種別による雇用義務の格差是正にあたり、自閉症者が自閉症であることによって雇 用義務の対象になるように希望する。 現在は、就労のためにやむなく精神保健福祉手帳を 取得する自閉症者がいるが、3級になると障害基礎年金の受給資格はなく、十分に所得保 障がなされていない( 3)所得保障にも関係する ) ・ジョブコーチの研修に自閉症の特性についての講義を入れてほしい ・就労を見据えた教育との連携 ・所得保障と併せ、一人でも生活できる労働賃金の設定 2)教育 ・地域で共に学ぶ事を基本とし、SSTなど通級等による個別教育の確保 ・教員修士課程での障害研修義務化 ・(通常級においては特に)本人告知をする前の児童生徒に対する配慮をしつつ、特性から くる困難さへの支援を行ってほしい ・過敏な感覚をもつ自閉症児者への配慮や教育環境の整備 ・自閉症教育への専門性の確保。教員免許制度の改革 ・幼稚園/保育園から高校に亘る個別教育計画の継承 3)所得保障等 ・生活保護と年金の格差是正 ・寄宿舎、共同住宅ではない、新しいグループホーム住宅として法整備 ・労賃保障と併せ、一人でも生活できる障害者基礎年金額の設定 ・グループホーム、ケアホームの建築基準の緩和等による入居者の増加促進 4)医療 ・退院促進時の医療と福祉の連携 ・親族以外で医療的判断し得る者の明確化 ・障害者年金生活者の医療負担無料化 ・精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実とともに、(2次障害をもって いても)自閉症を見極めることができるよう、スタッフの質の向上を希望する(人員を増 やすことによって質の低下をまねかないように) 5)障害児支援 ・ネットワーク構築による新しい支援体制の構築、普及 ・家族・きょうだい児を含む支援体制 ・生涯に亘る、個別支援計画の継承 ・障害の早期発見・早期療育、発達支援体制の整備 ・ワンストップ相談支援体制、システムの構築 6)虐待防止 ・予防の観点での保護者支援策 ・支援する側が何もしない、出来ない事を防止する為の 法整備 7)建物利用・交通アクセス ・従事者の障害理解など、心のバリアフリーの視点での方策 ・わかりやすい共通、統一された表示の普及の方策 ・奇異な行動への理解を広める、自閉症啓発活動 8)情報アクセス・コミュニケーション保障 ・行政窓口専門員の配置 ・通訳者のような人的支援によるバリアフリー化の促進 ・わかりやすい共通、統一された表示の普及の方策 ・絵カードその他、視覚的な情報環境の整備 ・防災訓練への障害者の参画 ・防災時の地域支援者制度の導入 9)政治参加 ・新しい投票方法の創設 ・インターネットを活用した選挙をできるだけ早い時期に実験的にでも行い、そのモニタ ーに自閉症者も入れてほしい 10)司法手続 ・障害特性に精通した専門官の配置、派遣 ・本人の意思を汲み取れる者の同席の許可等の方策 ・住民協定など、法に基ずく差別助長阻止のための法改正 ・再犯防止のための地域での支援体制の構築 11)国際協力 ・専門家の交流などによる支援方法の普及 6.個別分野の合理的配慮の詳細研究例 第一版報告 ◆労働及び雇用 1)労働・雇用の要素への合理的配慮  (労働・雇用や職業への参加は障害のある人の機会均等を保障する鍵となります)   ☆は英国の例(TEACCHプログラム研究会報:内山登紀夫より) ≪応募・採用≫ ・面談者とのコミュニケーションを助ける補助者の同席  ・実務テスト、試験雇用による実際の可否の判定 ≪職務内容≫ ☆勤務する場所を構造化する事(本人が見て分かる理解できるようにする) ・慣れない音や光などの刺激に弱い(仕切りを設ける等で調整する) ☆職務の一部を別の職員に割り当てる事 ・職務再設計(得意な業務を集めて分担できる様にする) ☆チェックリストと、1日単位あるいは1週間単位のスケジュールの作成 ・本人の適正を考慮した職務を与え、充分な訓練とフォローを行う事 ・独り言を言ったり、身体をゆらしたりします。仕事に影響なければ可とする ≪作業指示・指導・業務マニュアル≫ ・職場、勤務先への障害特性の理解 ☆マニュアルを図示や箇条書きなどを加えて解りやすく修正する事 ☆ジョブコーチなどの支援者を得る事  ☆職務内容の変更については事前に通知する事 ☆書面による指示や視覚化された指示を使う事 ・言葉による指示が通りにくいことがあります、図やカードで補助して下さい ・場面や状況、言葉の意味理解が不得意なので、キチンとした説明、指示が必要です ・指示者、フォロー者を明確にし、一定期間固定する事 ≪職場環境≫ ・休憩、昼食時の自分の居場所の明確化     ・調子の悪いときの避難場所 ・突然の予定や環境の変更には、非常に不安を感じます。事前の説明を! ☆明文化されていないルールを明文化すること(暗黙の了解は理解できません) ☆電話の代わりに電子メールの使用を雇用主が認める事 ・連絡帳等で複雑な事項のコミュニケーションを補う事   ・家庭とのコミュニケーション窓口を明確にする事 ・挨拶は自らできません、挨拶されてもオウム返しになります ・「なぜ?」、「どうしたの?」などの抽象的な質問には特に弱く、答えに困ります ≪勤怠・勤務時間≫ ・始業時間(例えば8:30)の3分前に職場に入る事の明確な指示 ・急なスケジュール変更には混乱します 勤務時間の変更(残業)、休日出勤は1週間前に 提示を ・有休が取りにくいので取りやすい配慮が欲しい  例)年間10日の有休をとって下さい ☆勤務時間の調整 例)ラッシュアワー通勤が困難な場合、出勤時間を調整する通勤 ☆より適切な地域や部門に配置転換すること    ・必要により通勤介助、補助 ≪賃金・手当て≫ ・趣味や好きなものの購入により、本人の労働の意味理解や意欲の向上に結びつきます ≪継続支援≫ ・問題発生時には就労支援機関が勤務先と連携を取り問題解決の為のフォローを行う 6.個別分野の合理的配慮の詳細研究例   第一版報告 ◆労働及び雇用 図解説1/3 2)図解説について  私たち、神奈川県自閉症児・者親の会連合会では2000年10月15日に自閉症の人たちの 就労援助のためのパンフレット「私たちも会社で働きたい」を発行しました。その中の職 場での理解と求める配慮をイラストでまとめたものを引用して補足します。 自閉症の人たちの就労援助パンフレット 私たちも会社で働きたい! 内 容 1.私たちは働きたいのです 2.今、私たちの仲間はこのような仕事をしています 3.自閉症とは 4.自閉症と知的障害はどう違うのでしょうか? 5.職場での自閉症の人の様子 6.事例1 製造業の会社に就労したA君 7.神奈川県自閉症児・者親の会連合会の紹介 編集・発行 神奈川県自閉症児・者親の会連合会 監修 藤村 出   イラスト 細井 啓子 1-1 一定のパターン化された仕事に長時間携わると熟練度が高くなります。 興味にぴったり合った仕事に対しては、高い能力を示す事があります。 1-2 目で見て、分かりやすい方法で示していただくと、その仕事を覚えることができます。 「ここまでやれば、おしまい。」ということがわかると最後までやりとげることができます。 1-3 職場の環境や仕事に慣れるまで、間仕切りをつけるなどの工夫や調整をしていただくと、 仕事に集中しやすくなり、混乱したり不安になることも少なくなります。 1-4 一つの仕事に慣れたからといって、すぐに新しいことはなじめません。 新しいことを始めるときは、仕事の内容を視覚的な手段(見てわかる方法)を使って事前 に伝達していただくと、理解しやすくなります。 1-5 突然の予定変更や、環境の変化には、ささいなことであっても非常に不安を感じます。 前もっての予告や、スケジュールを知らせていただくと、あまり混乱しなくてすみます。 1-6 とんとんと肩をたたくなど、身体に触れられたり、話しかけられたりすることが苦手なた め、過度な気配りやお世話を\していただくとかえって緊張してしまったり、混乱してしま ったりします。 1-7 相手の立場になって考えることや、気を使うことが苦手です。 暗黙の了解事項や比喩的表現などは理解できません。 1-8 天候のことや家族のことなど日常的な挨拶に対する理解もよくありません。 その場にあった身振りや表現をすることができないので、愛想がない、失礼な人だなどと 誤解されがちです。 1-9 場面や状況、言葉の意味理解が不得意で、失礼になってしまうことがありますが、悪意は ありません。 1-10 「なぜ?」「どうしたの?」などの抽象的な質問には特に弱く何をきかれているのか、どう 答えたらいいのか分からず困ってしまいます。 親切で訊ねられる「君はどうしたいの?」などの質問にも苦しみます。 7.検討会の経過と今後の進め方 1)経緯 ・5/31  第1回(海老名) 障害者権利条約確認、進め方、基本配慮項目検討 ・6/11  第2回(海老名) 体系案出し検討 ・6/26  第3回(茅ヶ崎) 自閉症基本的特性、基本的配慮項目検討 ・7/13  第4回(海老名) 全体的構成検討   ・7/26  第5回(茅ヶ崎) JDDネット経由で総合福祉部会への意見の検討 ・8/25  第6回(茅ヶ崎) 今後の進め方の再確認 →B案 ストーリーの検討 ・9/10  第7回(茅ヶ崎) ストーリーに基づき資料整理、資料の修正点確認 ・10/1  第8回(茅ヶ崎) 生活シーン別配慮と推進会議への意見の検討 ・10/14 第9回(茅ヶ崎) 全体整理、今後の進め方検討 ・10/18 第10回(海老名)全体確認、支援つき意思決定の表現要検討 ・10/28 第11回(茅ヶ崎) 全体整理、自閉症と発達障害、推進会議への意見 2)今後の進め方 @県連役員へのメール配信、役員会は12月となる為そこでの詳細説明   12月の詳細説明前での外部への発信の了解を得る A障がい者制度改革推進会議、総合福祉部会への提示、関係者への配信   社団法人日本自閉症協会及び関東ブロック会議メンバー等への配付 当会主催の「自閉症療育者のためのトレーニングセミナー」の講師・専門家等へ配付 B各方面からの意見を得て、更に今後の進め方を検討 ◇合理的配慮研究会の目標(第1回確認) @ 10月を目標に合理的配慮の要望の一次まとめを行う  ・一次まとめのイメージの話し合い ・検討会でまず列挙 ・整理体系の検討   ・一次報告の作成 A 本格研究の進め方の検討を行う  ・研究助成等の申請(例.厚労省厚生科学研究・・・等)  ・共同研究者、体制→本格研究会の設置につなげる ◇合理的配慮検討会メンバー 9名  ・内田照雄(厚木市地区会員、県連代表、県協会会長) ・浅羽昭子(横須賀地区会長、県連相談役) ・雨宮恵子(平塚地区会長、県連副代表) ・上杉桂子(茅ヶ崎地区会長、県協会副会長) ・江崎康子(藤沢地区会員、県連相談役) ・鈴木秀美(相模原地区会長、父母連幹事担当) ・佐々木久美子(海老名市地区副会長、県連事務局長) ・高橋和江(茅ヶ崎地区会員、トレーニングセミナー事務局長) ・山口一美(秦野・伊勢原地区会長、県協会事務局長) 8.参考文献 (順不同、敬称略) ・障がい者権利条約 日本政府仮訳に対するコメント : 日本障害フォーラム(JDF) 2010年1月26日版 ・障害者制度改革の推進のための基本的な方向(一次意見)  :障がい者制度改革推進会議 ・ TEACCHプログラム研究会会報「ぷらう40号」 :研究会会長、福島大学大学院教授 内山登紀夫 ・私たちも会社で働きたい   :神奈川県自閉症児・者親の会連合会編 監修:藤村 出 イラスト:細井啓子 ・自閉症者を支えるもの(神奈川県自閉症児・者親の会連合会2010年6月総会記念講演)   :海老名市立わかば学園長 諏訪 利明 ・障害者権利条約と街づくり : 東洋英和女学院大学教授 石渡和美 ・支援つき意思決定制度の主要要素 : 国際育成会連盟総会採択のポジションペーパー  翻訳:全日本手をつなぐ育成会 袖山啓子 ・障害者雇用にかかわる「合理的配慮」に関する研究-EU諸国及び米国の動向-2008年3月   : 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター ・アスペルガー症候群の人を雇用するために : 英国自閉症協会作成  翻訳:独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター ・障害者の権利条約と日本(概要と展望) : 長瀬 修・東 俊裕・川島 聡   発行:(株)生活書院 以上 NO-101115