総合福祉部会 第6回 H22.8.31 資料2 「障害者総合福祉法」(仮称)の論点に関する現在の制度の状況等について −No.2− 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 平成22年8月31日 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 1)これまで支援の狭間にいた人たち(例えば発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知 的障害など)に必要な福祉サービスとはどのようなものであるか? 【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法第4条第1項において、「障害者」は、  @ 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者  A 知的障害者福祉法にいう知的障害者  B 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神障害者 と規定されている。 ○ 発達障害や高次能機能障害については、精神障害の概念に含まれており、障害者自立 支援法に基づく障害福祉サービス等を利用することが可能となっている。   なお、発達障害については、発達障害者支援法に定義が置かれている。 ○ 難病の者については、法令上定義はなく、症例数が少なく、原因不明で治療方法も未 確立であり、かつ、生活面で長期にわたる支障がある疾患(130疾患)について、予算上、 「難治性疾患克服研究事業」として、研究班を設置し、原因の究明、治療方法の確立に向 けた研究が行われている。また、これらのうち、治療が極めて困難で、かつ医療費が高額 な疾患(56疾患)について、医療の確立、普及を図るとともに、「特定疾患治療研究事業」 として、患者の医療費負担の軽減を図っている。  難病の者については、難治性疾患克服研究事業の対象となっている疾患の患者等につい ては、「難病患者等居宅生活支援事業」として、ホームヘルプサービス事業、短期入所事業、 日常生活用具給付事業が利用できる。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害者自立支援法においては、同法の施行前まで身体障害、知的障害、精神障害と障 害種別ごとに分かれていた制度を一元化し、支援費制度の対象外となっていた精神障害者 についても対象としてサービスの充実を図り、障害者等が必要なサービスを安定的に利用 できるように見直しを行ったものである。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 2) 現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分についてどう考えるか? 総合福祉法での支援体系のあり方についてどう考えるか?障害者の生活構造やニードに基 づいた支援体系はどうあるべきと考えるか? 【現在の制度の状況】 (介護給付費等について) ○ 障害者が、主として介護を提供する以下の障害福祉サービスを利用した際に、市町村 は介護給付費を支給することとされている。  @ 居宅介護  A 重度訪問介護  B 行動援護  C 療養介護(医療に係るものを除く。)  D 生活介護  E 児童デイサービス  F 短期入所  G 重度障害者等包括支援  H 共同生活介護  I 施設入所支援  なお、障害者が介護給付費の支給決定を受ける場合には、障害程度区分の認定が必要と なる。 ○ 障害者が、主として訓練等を提供する以下の障害福祉サービスを利用した際に、市町 村は訓練等給付費を支給することとしている。  @ 自立訓練  A 就労移行支援  B 就労継続支援  C 共同生活援助  なお、障害のある方が訓練等給付費の支給決定を受ける場合には、障害程度区分の認定 は必要ない。 ○ 介護給付費や訓練等給付費に係る障害福祉サービスについては、事業の人員、設備及 び運営に関する基準や、サービスに要する費用の額の算定に関する基準(報酬基準)を設 けている。 ○ 介護給付費や訓練等給付費の支給に要する費用は、市町村が支弁するとともに、その 費用のの1/2を国(訪問系サービスについては、国庫負担基準により算定した額)が、 1/4を都道府県がそれぞれ負担している(義務的経費)。 (地域生活支援事業について) ○ 市町村は、地域生活支援事業として以下の事業を実施している。  @ 相談支援事業  A コミュニケーション支援事業  B 日常生活用具給付等事業  C 移動支援事業  D 地域活動支援センター事業  E その他の事業 ○ 都道府県は、地域生活支援事業として以下の事業を実施している。  @ 専門性の高い相談支援事業  A 広域的な支援事業  B サービス提供者、相談支援者、指導者育成事業  C その他の事業 ○ 地域生活支援事業については、原則として、人員、設備及び運営に関する基準等を設 けず、地域の実情等に応じて、地方自治体の裁量により柔軟に実施できるようにしている。 ○ 市町村の地域生活支援事業に要する費用は、市町村が支弁するとともに、その支弁す る費用の1/2以内を国が、1/4以内を都道府県が、それぞれ補助している(裁量的経 費)。  また、都道府県の地域生活支援事業に要する費用は、都道府県が支弁するとともに、そ の支弁する費用の1/2以内を国が補助している(裁量的経費)。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (介護給付費にかかる障害程度区分の認定について) ○ 介護給付費の支給決定に当たっては、障害者の介護の必要度を明らかにするため、障 害程度区分を認定することとしている。  一方、訓練等給付に係るサービスについては、障害者の介護の必要度と、サービスの必 要性が直接は関係しないことから、障害程度区分の認定は必要としないこととしている。 (介護給付費等の対象となるサービスと地域生活支援事業について) ○ 介護給付費等の対象となるサービスの主なメリット  ・ 人員、設備及び運営に関する全国一律の基準等を設けることから、全国のどこで提 供されるサービスであっても一定の質が確保される。 ・ サービス内容が均一となり、サービスにかかる費用が一定となることから、国等がそ の費用の一部を義務的経費として負担することが可能となる。(義務的経費化が可能)   ○ 地域生活支援事業の対象となるサービスの主なメリット ・ 人員、設備及び運営に関する全国一律の基準等を設けないことから、地方自治体が地 域の実情等に応じて柔軟にサービスを提供しやすくなる。(地域でサービスの内容や提供方 法などの工夫が可能) ・ 複数の利用者に対応する事業や利用者個人に着目しない事業など、個人に給付を行う 仕組み(個別給付)に馴染まない事業を実施することができる。   ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 3) 現行の訓練等給付についてどう考えるか?労働分野での見直しとの関係で、就労移行 支援、就労継続支援等のあり方をどう考えるか?また、自立訓練(機能訓練・生活訓練) のあり方についてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 (訓練等給付費について) ○ 訓練等給付の支給の対象となるサービスは、D−1−2)に記載。 (就労移行支援及び就労継続支援について) 【就労移行支援】 (1)対象者  就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見 込まれるもの (2)サービス内容  生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向 上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後に おける職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援の供与 (3)標準利用期間  2年間(専らあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師の資格を取得させることを 目的とする場合にあっては、3年又は5年)  ただし、この標準利用期間を超えて、さらにサービスの利用が必要な場合については、 市町村審査会の個別審査を経て、必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新が可 能 (4)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)    事業所数:1,756箇所、利用者数:20,045人   【就労継続支援】 (1)対象者  @ 就労継続支援A型  通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者  A 就労継続支援B型  通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者 (2)サービス内容  @ 就労継続支援A型  雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必 要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援の供与  A 就労継続支援B型  就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上 のために必要な訓練その他の必要な支援の供与 (3)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)  @ 就労継続支援A型    事業所数:553箇所、利用者数:9,814人  A 就労継続支援B型    事業所数:4,315箇所、利用者数:89,900人 (自立訓練について) 【自立訓練】 (1)対象者  @ 自立訓練(機能訓練)    身体障害者  A 自立訓練(生活訓練)    知的障害者又は精神障害者 (2)サービス内容  @ 自立訓練(機能訓練)  障害者支援施設、サービス事業所又は居宅において行う理学療法、作業療法その他必要 なリハビリテーション、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援の供与  A 自立訓練(生活訓練)  障害者支援施設、サービス事業所又は居宅において行う入浴、排せつ及び食事等に関す る自立した日常生活を営むために必要な訓練、生活等に関する相談及び助言その他の必要 な支援の供与 (3)標準利用期間  @ 自立訓練(機能訓練)  1年6月間(頸髄損傷による四肢の麻痺その他これに類する状態にある障害者にあって は、3年間)  A 自立訓練(生活訓練)  2年間(長期間入院していたその他これに類する事由のある障害者にあっては、3年間)  ただし、これらの標準利用期間を超えて、さらにサービスの利用が必要な場合について は、市町村審査会の個別審査を経て、必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新 が可能 (4)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)  @ 自立訓練(機能訓練)    事業所数:167箇所、利用者数:2,365人  A 自立訓練(生活訓練)    事業所数:898箇所、利用者数:9,242人 (共同生活援助について) 【共同生活援助】 (1)対象者  地域において共同生活を営むのに支障のない障害者 (2)サービス内容  主として夜間において、共同生活を営むべき住居において行う相談その他の日 常生活上の援助 (3)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)  事業所数:2,993箇所、利用者数:20,822人 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 4) 生活介護、療養介護も含めた日中活動系支援体系の在り方をどうするか? 【現在の制度の状況】 (障害者自立支援法のサービス体系について) ○ 現在の制度においては日中活動系サービスとして、  @ 療養介護  A 生活介護  B 自立訓練  C 就労移行支援  D 就労継続支援  E 地域活動支援センター を提供している。 (日中活動系サービスについて)  【療養介護】 (1)対象者  機能訓練、療養上の管理、看護及び医学的管理の下における介護その他必要な医療並び に日常生活上の世話を要する障害者方であって、常時介護を要するもの (2)サービス内容  主として昼間において、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的 管理の下における介護及び日常生活上の世話の供与 (3)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)    事業所数:36箇所、利用者数:2,086人  【生活介護】 (1)対象者  入浴、排せつ及び食事等の介護、創作的活動及び生産活動の機会の提供その他の支援を 要する障害者であって、常時介護を要するもの (2)サービス内容 主として昼間において、障害者支援施設等において行われる入浴、排せつ及び食事等の介 護、調理、洗濯及び掃除等の家事、生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活 上の支援並びに創作的活動及び生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向 上のために必要な支援の供与 (3)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)    事業所数:4,497箇所、利用者数:129,386人 【自立訓練】 ※ D−1−3)に記載。   【就労移行支援】  ※ D−1−3)に記載。   【就労継続支援】  ※ D−1−3)に記載。    【地域活動支援センター】(市町村が地域生活支援事業として実施) (1)対象者  障害のある者又は障害のある児童 (2)サービス内容  創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進その他障害のある方等が自 立した日常生活及び社会生活を営むために必要な支援の供与 (3)施設数(平成20年社会福祉施設等調査報告)    施設数:2,267箇所(平成20年10月1日現在) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (障害者自立支援法のサービス体系について) ○ 障害者自立支援法においては、障害者の地域生活への移行を進めるため、入所施設や 病院で24時間暮らすそれまでのサービス提供のあり方を見直し、障害のある方が自分の希 望に応じて複数のサービスを選択し、それらのサービスを組み合わせて利用できるよう、 サービスを日中活動系サービスと居住系サービスに区分した昼夜分離のサービス体系に再 編したところである。    ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 5)地域生活支援事業の意義と問題点についてどう考えるか?地域生活支援事業の仕組み になじむものと、なじまないものについてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 市町村及び都道府県は、障害者自立支援法第77条及び第78条に基づき、地域生活支 援事業として、それぞれ以下の事業を実施している。 1.市町村の地域生活支援事業  @必須事業          (平成20年度の実施状況)   ・相談支援事業       (全市町村で実施)    ・コミュニケーション支援事業(1,351市町村(75.1%)で実施)     手話通訳派遣事業    (1,333市町村(74.1%)で実施)     手話通訳設置事業    ( 498市町村(27.6%)で実施)     要約筆記派遣事業    ( 818市町村(45.4%)で実施)   ・日常生活用具給付等事業  (1,782市町村(99.0%)で実施)   ・移動支援事業       (1,549市町村(86.1%)で実施)   ・地域活動支援センター   (1,289市町村(71.6%)で実施)    ※実施率は全市町村数(1,800市町村)に占める実施市町村の割合    Aその他の事業  福祉ホーム事業や日中一時支援事業など、障害者等がその有する能力及び適性応じ、自 立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業 2.都道府県の地域生活支援事業  @必須事業  (専門性の高い相談支援事業)     (平成20年度の実施状況)   ・発達障害者支援センター運営事業 (全都道府県で実施)   ・障害者就業・生活支援センター事業 (全都道府県で実施)   ・高次脳機能障害支援普及事業   (46都道府県(97.9%)で実施)   ・障害児等療育支援事業 (46都道府県(97.9%で実施))  (広域的な支援事業)   ・都道府県相談支援体制整備事業   (32都道府県(68.1%)で実施)    ※実施率は全都道府県(47都道府県)に占める実施都道府県の割合  Aその他の事業  サービス・相談支援者、指導者育成事業の他、障害者等がその有する能力及び適性に応 じ、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業   3.財源    補助金(一部交付税措置あり)       (都道府県事業) 国1/2以内で補助       (市町村事業)  国1/2以内、都道府県1/4以内で補助 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (現在の制度の考え方) ○ 地域生活支援事業は、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態による事業を効 果的・効率的に実施し、障害者及び障害児の福祉の増進を図ることを目的としている。 ○ この地域生活支援事業の国の補助については、実施主体である市町村等が創意工夫に 基づいて主体的に事業の実施方法を組み立て、弾力的に補助金を使用できる「統合補助金」 として交付している。 (対象事業の見直しに関する報告) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 移動支援について、地域生活支援事業で行われているもののほか、重度の肢体不自 由者については「重度訪問介護」として、重度の知的障害者及び精神障害者については「行 動援護」として、自立支援給付とされていることを踏まえ、重度の視覚障害者の同行支援 について自立支援給付とするなど、自立支援給付の対象を拡大することを検討すべき、  ・ 日中一時支援事業は、障害者や学齢期における障害児の支援策として行われている が、このうち、学齢期の放課後や夏休み等における障害児への支援策として、単なる居場 所としてだけではなく、子どもの発達に必要な訓練や指導など療育的な事業を実施するも のについては、自立支援給付とすることを検討すべき、  ・ 相談支援事業について、現行の「居住サポート事業」の実施市町村数は約1 割で あり、地域生活への支援の充実の観点から、こうした入居支援や緊急時のサポートについ て、自立支援給付とすることを検討すべき とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 6)現行のコミュニケーション支援事業についてどう考えるか?推進会議・第一次意見書 では、「手話や要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択、コミュニケーションの手段 の保障の重要性・必要性」が指摘された。これらを踏まえて、聴覚障害者や盲ろう者、視 覚障害者、さらに、知的障害者、重度肢体不自由者を含めた今後のあり方をどう考えるか? 【現在の制度の状況】 (コミュニケーション支援事業について) ○ 市町村は、障害者自立支援法第77条に基づき、地域の実情や障害者等の状況に応じて 柔軟に実施できる地域生活支援事業として、コミュニケーション支援事業(必須事業)を 実施している。 【実施状況】(平成20年度) ・コミュニケーション支援事業:1,351市町村(75.1%)で実施   手話通訳派遣事業:1,333市町村(74.1%)で実施   手話通訳設置事業: 498市町村(27.6%)で実施   要約筆記派遣事業: 818市町村(45.4%)で実施  (注1)実施率は、全市町村数(1,800市町村)に占める実施市町村の割合  (注2)手話通訳と要約筆記派遣事業の両方を実施 813市町村(45.2%) ○ また、都道府県は、障害者自立支援法第78条に基づき、手話通訳を行う者を公的機 関に設置する「手話通訳設置事業」や、盲ろう者のコミュニケーションや移動等の支援を 行う「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」を実施している。 【実施状況】(平成20年度) ・手話通訳設置事業:34都道府県(72.3%)で実施 ・盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業:31都道府県(66.0%)で実施  (注)実施率は、全都道府県(47都道府県)に占める実施都道府県の割合 (手話通訳者等の養成について) ○ 都道府県及び市町村では、手話奉仕員、要約筆記奉仕員、点訳奉仕員、朗読奉仕員を 養成する「奉仕員養成研修事業」を実施しており、更に都道府県では、手話通訳者を養成 する「手話通訳者養成研修事業」を実施している。 【登録者数の状況】(平成20年3月末現在)   ・ 手話通訳者: 5,036人(都道府県)   ・ 手話奉仕員:5,734人(都道府県)、8,728人(市町村)   ・ 要約筆記奉仕員:6,464人(都道府県)、5,000人(市町村) ※ 手話通訳者とは、都道府県が実施する手話通訳者養成研修を修了して手話通訳者とし て都道府県に登録された者であって、広汎にわたる手話通訳に必要な手話語彙、手話表現 技術を習得している。  手話奉仕員以上に聴覚障害者の理解力に応じた手話通訳が可能なレベルにある者。 ※ 手話奉仕員とは、都道府県又は市町村で実施する奉仕員養成研修を修了して手話奉仕 員として都道府県又は市町村に登録された者であって、基礎的な手話表現技術を習得して いる。  相手の手話が理解でき、普段から接している特定の聴覚障害者とならば、手話で日常会 話が可能なレベルにある者。 ※ 要約筆記奉仕員とは、都道府県又は市町村で実施する奉仕員養成研修を修了して要約 筆記奉仕員として都道府県又は市町村に登録された者であって、手書きあるいはパソコン を活用した要約筆記によりコミュニケーション支援を行うことが可能な者。 (その他) ○ 国は、都道府県等が設置する聴覚障害者情報提供施設が行う「字幕・手話入ビデオカ セットの製作貸出、手話通訳者等の養成・派遣、情報機器の貸出等」に対し運営費を助成 している。 ○ 国は、都道府県等が設置する点字図書館が行う「点字刊行物や視覚障害者用の録音物 の製作や貸出等」に対し運営費を助成している。 ○ 障害者自立支援法第76条に基づき、補装具費として、聴覚障害者に対し補聴器の購入 又は修理に要した費用を支給している。また、意思の伝達が困難な者には重度障害者用意 思伝達装置の購入又は修理に要した費用を支給している。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 7)現行の補装具・日常生活用具についてどう考えるか?今後のあり方についてどう考え るか? 【現在の制度の状況】 (補装具費について) ○ 市町村は、障害者方等に対し、義肢、装具、座位保持装置、盲人安全つえ、補聴器、 車いす等の補装具を給付した場合、その補装具の購入又は修理に要した費用の100分の90 に相当する額を支給している。(障害者自立支援法第76条) 【主な実施状況】(平成20年度) ・義肢:購入件数 7,605件、金額 2,482,086千円 ・装具:購入件数44,946件、金額3,624,470千円 ・座位保持装置:購入件数 9,703、金額 2,859,925千円 (注)金額については公費負担額と自己負担額の合計 【負担割合】 ・国 1/2、都道府県1/4 (日常生活用具給付等事業について) ○ 市町村は、地域の実情や障害者等の状況に応じて柔軟に実施できる地域生活支援事業 として、日常生活の便宜を図るため、特殊寝台、入浴補助用具、盲人用体温計、点字器、 ストーマ装具などの日常生活用具を給付又は貸与する事業を実施している。(障害者自立支 援法第77条第1項第2号) 【実施状況】(平成20年度) ・1,782市町村(99.0%)で実施 (注)実施率は、全市町村数(1,800市町村)に占める実施市町村の割合 【補助割合】 ・国1/2以内、都道府県1/4以内 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (補装具について) ○ 補装具とは、障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ長期間にわたり継続し て使用されるものであり、告示において種目、購入又は修理に要する基準価格が規定され ており、次の3つの要件を満たすものと整理されている。  ・ 身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、代替するもので、障害個別に対応して 設計・加工されたもの  ・ 身体に装着(装用)して日常生活又は就学・就労に用いるもので、同一製品を継続して 使用するもの  ・ 給付に際して専門的な知見(医師の判定書又は意見書)を要するもの ○ また、補装具費の支給は、自立支援給付(個別給付)であり、利用者負担は、原則と して定率(1割)となっている。ただし、利用者等の所得に応じた上限が定められている。 ※ 平成22年4月から低所得(市町村民税非課税)の利用者負担は無料としたところ。 ○ 平成20年2月に取りまとめられた生活支援技術革新ビジョン勉強会報告(支援機器が 開く新たな可能性〜我が国の支援機器の現状と課題〜)においては、補装具について、  ・ 「適合」や「メンテナンス」に要する技術やサービスを適切に評価することも検討 すべき、  ・ レンタル制度の導入についても検討課題 とされている。 (日常生活用具について) ○ 市町村は、次の3つの要件を満たす6種の用具(介護・訓練支援用具、自立生活支援 用具、在宅療養等支援用具、情報・意思疎通支援用具、排泄管理支援用具、居宅生活動作 補助用具)を日常生活用具として給付又は貸与できることとされている。  ・ 安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの  ・ 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し社会参加を促進するもの  ・ 製作や改良、開発にあたって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日 常生活品として一般的に普及していないもの ○ 日常生活用具給付等事業は、地域生活支援事業であり、給付品目や対象者等について は、市町村において地域の実情に合わせて柔軟な取扱いができるとともに、利用料につい ても、地域の実情に合わせて柔軟な取扱いが可能となっている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−1 支援(サービス)体系のあり方について 8)現行の自立支援医療についてどう考えるか?基本合意において、「当面の重点な課題」 とされている利用者負担の措置に加えて、どのような課題があると考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法に基づく自立支援医療には、更生医療、育成医療、精神通院医療の 3種類あり、いずれも、障害者(児)が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要 な心身の障害を除去・軽減するための医療費について、医療保険制度による医療費の利用 者負担額を軽減する制度であり、その利用者負担は、次のとおり。  @ 医療保険の利用者負担(一般の者:3割)を1割の定率負担に軽減。  A 定率負担が過大なものとならないよう、所得に応じて1月当たりの負担限 度額を設 定。  B 医療費が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない者、育成医療の中間所 得層については、更に軽減措置を実施。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害の定義が変更され、障害者の範囲が拡大された場合における医療費助成の対象者、 対象範囲等について、医療保険制度、他の公費負担医療制度、財源との関係を踏まえなが ら、どのように整理をするのかが課題となる。 【参考】 ○ 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会や厚生労働省内に設置した「新たな難治 性疾患対策の在り方検討チーム」(検討チーム)において、今後の難病対策全体の在り方に ついて検討することとしており、特定疾患治療研究事業における医療費助成の在り方につ いても、検討チームにおいて検討を開始したところである。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−2 生活実態に即した介助支援(サービス)等 1)推進会議では、シームレスなサービスの確保の必要性が指摘された。また、障害者権 利条約では「パーソナル・アシスタンス・サービス」を含む支援サービスも提起されてい る。これらを踏まえ、地域支援サービスのあり方についてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 (シームレスなサービス) ○ 障害のある方に対する介護等は、提供される場面により利用可能な制度が異なってい る。  ・ 居宅及び外出(移動支援事業除く) → 障害者福祉施策(自立支援給付)  ・ 外出(移動支援事業) → 障害者福祉施策(地域生活支援事業)  ・ 病院(入院時) → 医療保険制度(病院スタッフによる対応(治療に対する理解 が困難な小児患者又は知的障害を有する患者等の障害者等については、医師の許可の下で、 家族等患者の負担によらない者が付き添うことは可能。))  ・ 職場・通勤 → 労働施策(障害者雇用納付金制度における「重度障害者等通 勤等対策助成金」「障害者介助等助成金」)                                    等  【参考】重度障害者等通勤対策助成金  ・ 支給対象:支給対象となる障害者を雇い入れるか継続して雇用する事業主  ・ 支給対象障害者:重度身体障害者、知的障害者、精神障害者、3級の視覚障害者等 通勤が特に困難と認められる障害者  ・ 事業内容:雇用する障害者の通勤を容易にするため、特別な構造を備えた住宅の賃 借や通勤用バスの購入、通勤援助者の委嘱を行った際にその費用の一部について助成を行 う。  ・ 予算額(平成22年度):9.6億円       【参考】障害者介助等助成金  ・ 支給対象:支給対象となる障害者を雇い入れるか継続して雇用する事業主  ・ 支給対象障害者:重度身体障害者、知的障害者、精神障害者、2級以上の視覚障害 者等就職が特に困難と認められる障害者  ・ 事業内容:雇用する障害者の職場での適切な雇用管理のために職場介助者の配置・ 委嘱を行う等する際にその費用の一部について助成を行う。  ・ 予算額(平成22年度):29.9億円 (パーソナル・アシスタンス・サービス) ○ 現行の障害者自立支援法に基づく居宅介護等については、障害のある方が都道府県よ り指定を受けた事業者とサービス提供に係る契約を結び、資格を有するヘルパーから必要 なサービスを受ける仕組みとなっており、障害のある方が資格を必ずしも有しないヘルパ ー個人と直接契約を結び、必要なサービスを受ける仕組みとはなっていない。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (シームレスなサービス) ○ 障害者に対する介護等については、  ・ 医療保険制度や労働施策、教育施策等の他施策で行われているものと実施主体、費 用負担等を区分する必要があること、  ・ 国の厳しい財政事情を考慮すれば、サービスを効果的・効率的に提供する必要があ ること、 から、障害福祉サービスとしての居宅介護等が利用できる範囲について一定の制限を設け ているものである。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−2 生活実態に即した介助支援(サービス)等 2)現在のホームヘルプ、ガイドヘルプの仕組みについては、何らかの変更は必要か?ま た、ガイドヘルプに関しての個別給付化は必要か? 【現在の制度の状況】 (ホームヘルプとガイドヘルプの仕組み) ○ 障害者の居宅における身体介護や家事援助等については、「居宅介護」及び「重度訪問 介護」により行われている。 ○ また、外出時の介護等については、市町村が地域生活支援事業として行う移動支援事 業の他、  ・ 重度の肢体不自由者に関しては「重度訪問介護」、  ・ 重度の知的障害者及び精神障害者に関しては「行動援護」、  ・ 障害種別を問わず、通院や官公署における公的手続き等のための外出時における介 護等に関しては「居宅介護」における「通院等介助」及び「通院等乗降介助」 により行われている。 (移動支援事業の個別給付化) ○ 居宅介護、重度訪問介護、行動援護については国が義務的経費として負担を行う「自 立支援給付」において、移動支援事業については市町村が裁量的経費として負担を行う「地 域生活支援事業」において行われている。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 移動支援については、地域の特性や利用者の状況などに応じて効果的かつ効率的に提 供することができるよう、国が裁量的経費として補助を行う地域生活支援事業として実施 している。  ただし、移動支援と介護を一体的に提供する必要がある重度障害者の移動支援について は、国が義務的経費として負担する自立支援給付(重度訪問介護及び行動援護)として実 施している。   ○ 平成20年12月にとりまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 移動支援について、地域生活支援事業で行われているもののほか、重度の肢体不自 由者については「重度訪問介護」として、重度の知的障害者及び精神障害者については「行 動援護」として、自立支援給付とされていることを踏まえ、重度の視覚障害者の同行支援 について自立支援給付とするなど、自立支援給付の対象を拡大することを検討すべきであ る。 とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−2 生活実態に即した介助支援(サービス)等 3)障害特性ゆえに必要とされる見守りや安心確保の相談といった身体介護・家事援助で はない人的サポートの位置付けをどうするべきか?    【現在の制度の状況】 ○ 重度の肢体不自由者を対象とする重度訪問介護については、障害者に対する見守り等 もサービスに含まれている。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 重度の肢体不自由者については、日常生活全般にわたって常時の支援が必要であるこ とから、そのような様々な介護の事態に対応するための見守りについても重度訪問介護の 対象としている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−2 生活実態に即した介助支援(サービス)等 4)医療的ケアが必要な障害者の地域でのサポート体制を確立するためにはどういう課題 があるか? また、地域生活を継続しながら必要に応じて利用できるショートステイ等の機 能を望む声があるが、確保していくためにどのような課題があるか? 【現在の制度の状況】 (医療的ケアが必要な障害者の地域でのサポート) ○ 重度障害者をはじめとする医療的ケアが必要な障害のある方に対する医療的ケアにつ いては、医療制度において訪問看護を提供しているところである。 ○ たんの吸引等の一定の医療行為については、当面のやむを得ず必要な措置(実質的違 法性阻却)として、ホームヘルパー等が行うことを認めている。しかし、ホームヘルパー 等の本来業務として、たんの吸引等を認めるべきではないかとの指摘もあり、制度や研修 の在り方等について、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関す る検討会」において議論されており、年度内を目途に制度の在り方についてのとりまとめ を行うこととしている。 ○ 障害者自立支援法に基づく日中活動サービスのうち、「生活介護」については医師及び 看護職員の配置を、「自立訓練(機能訓練)」については看護職員の配置を必須としている。  医師及び看護職員の配置が必須ではない他の日中活動サービス(就労移行支援、就労継 続支援、自立訓練(生活訓練)、児童デイサービス等)については、看護職員を事業所に訪 問させ当該看護職員が利用者に対して看護の提供を行った場合に報酬上の評価を行うこと (医療連携体制加算)により、医療的ケアのニーズに応える仕組みとしている。 (ショートステイ) ○ ショートステイ(短期入所)は、居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由 により、障害者支援施設、児童福祉施設等への入所を必要とする障害者を対象に、障害者 支援施設、児童福祉施設等に短期間の入所をさせて行われる、入浴、排せつ及び食事の介 護その他の必要な支援の供与する障害福祉サービスである。  【参考】事業所数及び利用者数(平成22年3月国保連データ)   ・ 事業所数:3,083箇所、利用者数:26,495人 ○ 平成21年4月の報酬改定において、病院及び有床診療所における短期入所(医療型短 期入所)について、従来の宿泊して利用することに加え、宿泊せず日帰りでの短期入所の 利用を可能とするなど支援の拡大を図っている。また、短期入所を実施する事業所の整備 費については、社会福祉施設等施設整備費補助金により国庫補助を行い、その整備の促進 を行っている。  【参考】整備の補助について(社会福祉施設等施設整備費補助金)  ・ 対象法人  社会福祉法人、医療法人、公益法人 等  ・ 整備区分  新築、改修(自己所有物件)  ・ 補助単価(事業費ベース)  858万円  ・ 負担割合  国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、事業者1/4  ・ 平成22年度予算額  100億円 ○ ショートステイ(短期入所)の整備については、市町村及び都道府県が策定する障害 福祉計画において、地域の実情に応じて必要なサービスの見込みを踏まえた数値目標を定 め、計画的に進めている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−3 社会参加サービス 1)障害者の社会参加の点から就労・就学に際しての介護、通勤・通学の介護が大きな課 題との指摘があるが、総合福祉法のサービスでどこまでカバーすると考えるか、その際、 労働行政や教育行政との役割分担や財源をどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 現行では、就労、通勤の際の介護について、障害者雇用納付金制度における「重度障 害者等通勤等対策助成金」や「障害者介助等助成金」により実施されている。 (詳細はD−2―2)に記載) ○ また、就学、通学の際の介護については、学習活動や教室間移動等における児童の介 助等を行うため、公立の特別支援学校における介助員や公立の小学校及び中学校における 特別支援教育支援員が配置されているほか、通学時の支援として通学時の付添人の交通費 に対して「特別支援教育就学奨励費」による助成が行われている。  【参考】特別支援教育支援員  ・ 公立の小学校及び中学校において、   @ 食事や衣服の着脱等の基本的生活習慣確率のための日常生活上の介助   A 発達障害の児童生徒に対する学習支援   B 学習活動、教室間移動等における介助  などの業務を行う職員。  ・ 財源:市町村の一般財源 【参考】特別支援教育就学奨励費  ・ 負担(補助)対象:都道府県  ・ 内容:以下の経費について都道府県が助成した費用の一部又は全部の1/2について 助成を行う。     @ 学校給食費     A 生徒本人及び付き添い人の通学・帰省に要する経費     B 学用品購入費 等  ・ 予算額(22年度):74.7億円   ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−3 社会参加支援(サービス) 2)居場所機能など広く仲間との交流や文化芸術活動などについてどう考え、確保してい くための体系はどう考えるか? 【現在の制度の状況】 (地域活動支援センターについて) ○ 市町村は、障害者自立支援法第77条に基づき地域生活支援事業の必須事業として、障 害者等の日中活動の場を提供する「地域活動支援センター」を実施することとしている。 ○ 地域活動支援センターは、「障害者等を通わせ、創作的活動又は生産活動の機会の提供、 社会との交流の促進等の便宜を供与する施設」とされている。(障害者自立支援法第5条第 21項)   ○ 地域活動支援センターの運営に係る費用については、基礎的事業については、一般財 源により行うこととされている。また、基礎的事業のほか、専門職の配置等の機能強化を 図る場合には、地域生活支援事業の「地域活動支援センター機能強化事業」として補助対 象となっている。(国1/2以内、都道府県1/4以内)   ※ 基礎的事業とは、地域活動支援センターの基本的事業として、利用者に対し創作 的活動、   生産活動の機会の提供等地域の実情に応じた支援を行うことをいう。 ○ か所数    2,267か所(平成20年10月1日現在 社会福祉施設等調査報告) (芸術・文化講座開催等事業について) ○ 市町村又は都道府県は、障害者自立支援法第77条又は第78条に基づき地域生活支援 事業として、障害者等の芸術・文化活動を振興するため、作品展や音楽会など芸術・文化 活動の発表の場を設けるとともに、創作意欲を助長するための環境の整備や必要な支援を 行う「芸術・文化講座開催等事業」を実施することができる。 【実施状況】(平成20年度)  ・都道府県では31都道府県(66%)で実施  ・市町村では175市町村(9.7%)で実施  ※平成20年度の全市町村数は、1,800市町村 (全国障害者芸術・文化際について) ○ 平成13年度から厚生労働省及び開催地都道府県等の主催により「全国障害者芸術・文 化際」を実施している。 ○ 全国障害者芸術・文化祭は、全ての障害のある方の芸術及び文化活動への参加を通じ て、障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自 立と社会参加の促進に寄与することを目的としている。 【開催状況】(平成21年度)  ・静岡県で平成21年11月13日から15日までの3日間開催  ・集客数:20,295人 (その他) ○ 障害者自立支援対策臨時特例交付金による特別対策事業(基金事業)として平成21 年度から「障害者アート特別啓発事業」を創設したところ。 ○ 国は、都道府県又は市町村が、国民の障害者アート作品への理解を促進するため、一 般の美術作品とともに障害者の作品を鑑賞する機会が確保できるよう、美術館等における 障害者アート作品を含めた展覧会等の開催をした場合にその経費を助成している。 【補助単価】 ・都道府県:4,000千円以内、市町村:2,000千円以内(定額10/10)   ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−4 就労 1)「福祉から雇用へ」の移行はどこまで進んだのか?これまでの就労政策の問題点をどう 考えるのか? 2)福祉的就労のとらえ直しを含む、これからの就労の制度設計をどう考えるのか? 3)既存の労働行政における取り組みとあわせて、福祉と労働にまたがるような法制度に ついては、どこで議論していくべきか? 【現在の制度の状況】 (一般就労への移行率について) ○ 就労移行支援及び就労継続支援の利用者の一般就労への移行率(平成20年度)  ・ 就労移行支援   14.7%  ・ 就労継続支援A型  2.0%  ・ 就労継続支援B型  1.4% ○ 就労移行支援事業所における一般就労移行率の分布(平成20年度)  ・ 50%以上      9.3%  ・ 40%〜50%未満   2.5%  ・ 30%〜40%未満   6.0%  ・ 20%〜30%未満  11.5%  ・ 10%〜20%未満  18.3%  ・  0%超〜10%未満 13.1%  ・  0% 39.3% ※ いずれも平成20年4月1日以前から事業実施の事業所に限る。 ※ 厚生労働省障害福祉課調べ (就労移行支援及び就労継続支援について) ○ 事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)  ・ 就労移行支援   1,756事業所 20,045人  ・ 就労継続支援A型  553事業所  9,814人  ・ 就労継続支援B型 4,315事業所 89,900人 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (就労支援について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、就 労支援の基本的考え方について、  ・ 障害者自立支援法では、それまでの授産施設等を、目的・機能によって、一般就労 を希望する障害のある方を対象とする「就労移行支援」と、一般就労が困難な障害のある 方を対象とする「就労継続支援(A型・B型)」に再編するなど、就労支援の強化を図って いる。 ・ 障害のある方がその能力を十分に発揮し、地域で自立して生活することができるよう、 以下の観点から、就労支援の充実を図るべきである。  ・ 一般就労への移行支援の強化  ・ 障害者雇用施策等との連携強化等 とされており、これを受けて、 ・ 就労支援関係の給付の支給決定に当たっては、本人の能力・適性について短期間のア セスメントを経ることが必要と考えられる。 ・ 特別支援学校や高等学校等の在学中から、企業での体験実習等により、働くことの意 識を育てる取組が有効であることから、卒業後の就労に向けた訓練等も視野に入れ、体験 的に就労移行支援事業等の福祉サービス等を利用できるようにしていくことが重要である。  ・ 就職後一定期間経過後のフォローアップについて、本人の意向、支援の継続性や生 活面の支援を併せて必要とすること等にも配慮した支援体制の充実を検討すべきである。  ・ 障害者雇用施策等との連携強化については、関係機関の役割分担を明確にした上で、 会議等の一体的な運営や合同開催など、具体的な取組の中で、より一層の連携につながる ような体制の構築を進めるべきである。  とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−5 地域での住まいの確保・居住サポートについて 1)これまで地域移行の障壁になってきた住宅問題を解決するために、具体的にどのよう な方策が考えられるか? 2)地域での住まいの確保の方策として公営住宅への優先枠を広げる方向で考えるべき か? 3)また、公営住宅が質量共に不足する現実がある中で、障害がある人のアパートなどの 一般住宅の確保の為にどのような対応が必要か?(家賃等の軽減策や借り上げ型賃貸住宅 等) 【現在の制度の状況】 ○ 厚生労働省においては、障害者の地域移行を進めるため、グループホーム・ケアホー ムの整備を進めているところであり、各都道府県及び市町村が定める障害福祉計画におい ては、平成23年度までに8.3万人分を整備することとしている。(平成22年4月現在で5.8 万人分) ○ また、障害者自立支援法に基づく地域生活支援事業における相談支援事業の一つとし て、住宅への入居支援等を行う居住サポート事業を実施している。(D−5−4)参照) ○ グループホーム・ケアホーム以外の住宅確保については、国土交通省において各種施 策を実施しているところであり、厚生労働省としても国土交通省と連携し、平成21年11 月に「障害者の住まいの確保のための福祉部局と住宅部局の連携について」(平成21年11 月12日厚生労働省社会・援護局地域福祉課長、社会・援護局障害保健福祉部企画課長、社 会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長、国土交通省住宅局住宅総合整備課長連名通知) を発出したところ。 【参考】国土交通省における障害者の住宅確保に関する施策 (公営賃貸住宅の入居促進) ○ 住宅に困窮する定額所得者に低廉な家賃で賃貸又は転貸される公営住宅において、障 害者の単身入居を可能とする入居者資格要件の緩和及び優先枠設定等による優先入居や障 害者方向けの公営住宅の供給が実施されている。 ○ また、高齢者・障害者の生活特性に配慮しバリアフリー化された公営住宅と生活援助 員による生活相談・緊急時対応とのサービスを併せて提供するシルバーハウジングプロジ ェクト、障害者の優先入居を想定した施設等に近接する既存民間住宅を活用した公営住宅 の供給等が行われている。 ○ さらに立替事業等の実施を計画している公営住宅など公的賃貸住宅団地や福祉施設等 が不足している地区に存する公的賃貸住宅団地については、余剰地や余剰スペースに福祉 施設を積極的に誘致・導入するとともに、バリアフリー化の促進を図り、多様な世帯が安 心して暮らすことができる住空間の整備が進められている。なお、公的賃貸住宅と合わせ て福祉施設を整備する場合には、国土交通省の補助金の活用が可能となっている。 (公営住宅のグループホーム等の事業への活用) ○ 公営住宅の入居者資格を満たす者を入居者とするグループホーム等の事業については、 実際に入居する者が公営住宅の本来の入居対象者となるため、当該公営住宅の応募倍率に 関わらず、地域の実情を踏まえ、当該事業のために公営住宅を活用することができること とされている。 (民間賃貸住宅への入居円滑化) ○ 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づき、障害者等の 民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関し必要な措置について協議するため、地方公共団 体の住宅部局及び福祉部局、宅地建物取引業者や賃貸住宅を管理する事業を営む者の団体、 居住に係る支援を行う営利を目的としない法人等からなる居住支援協議会を組織すること ができることとされている。 ○ また、障害者等が入居可能な民間賃貸住宅の確保を進めるため、地方公共団体、支援 団体(NPO・社会福祉法人等)及び仲介事業者等が連携して入居可能な民間賃貸住宅の 登録情報の提供及び居住支援を行う「あんしん賃貸支援事業」が平成18年度から実施され ている。 ○ さらに、障害者等の入居を受け入れることとしている賃貸住宅に対し、未払い家賃の 債務保証を財団法人高齢者住宅財団が実施している。 (住宅のバリアフリー化支援) ○ 障害者等が一定の家屋について一定のバリアフリー改修工事を行ったうえで。居住の 用に供した場合に、所得税や固定資産税の減税措置がとられている。(時限措置) ○ また、地方公共団体が民間住宅のバリアフリー改修に対して助成を行う場合、地域住 宅交付金の提案事業として、事業費の概ね45%について、助成を受けることが可能となっ ている。 (高齢者等居住安定化推進事業) ○ 平成22年度より、高齢者や障害者の居住の安定を図るため、住宅に関する先導的な技 術・システム等の導入や生活支援・介護サービス等が効率的・効果的に提供される住まい づくり・まちづくりに関する取り組みを支援するため、住居及び交流施設等の整備費に補 助を行う高齢者等居住安定化推進事業を実施している。(4年間の限定事業) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 住宅確保の方策については、国土交通省が主管であり、同省と連携しつつ、検討する ことが必要である。 ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告において、「住ま い」の場の確保について、  ・ 公営住宅について、優先枠設定等による優先入居のほか、民間住宅を公営住宅とし て借り上げる制度を活用して、必要な住宅を確保するなど、更なる入居促進を図るべき  ・ 厚生労働省と国土交通省が協力して、障害者世帯の入居が進んでいる先進事例につ いてのノウハウを収集し、その普及に努めるべき  ・ 障害者等が入居可能な民間賃貸住宅についての情報を提供する「あんしん賃貸支援 事業」の普及や、障害者等が民間賃貸住宅を借りる際の公的な「家賃債務保証制度」につ いての拡充(対象者の拡大)、普及を図るべき 等とされている。 ○ また、同報告において、「住宅費など地域移行推進のための新たな課題への対応」につ いて、  ・ 民間住宅の借上げによる公営住宅を整備し、障害者の入居促進を図るなど、まずは 低廉な家賃で暮らせる「住まいの場」の確保を積極的に進めるべき  ・ 恒常的に生じる住宅費に対する直接的な現金給付については、様々な施策との整理 が必要と考えられることから、その在り方について十分検討が必要  ・ 障害者施設や精神科病院に長期間入所・入院していた者が退所・退院し地域移行す るに当たって必要となる費用の助成や、グループホーム・ケアホームを利用する際の助成 等について検討すべきとの意見があった とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−5 地域での住まいの確保・居住サポートについて 4)居住サポート事業の評価とさらに必要とされる機能・役割にどのようなことがあるか? 【現在の制度の状況】 (居住サポート事業の現状について) ○ 居住サポート事業については、市町村が地域の実情に応じて柔軟に事業を実施できる 地域生活支援事業における相談支援事業の一つとして、  @ 入居支援(物件あっせん依頼、入居手続き支援)  A 24時間支援(緊急時等の対応) 等を実施するものであり、厚生労働省は、この事業に係る費用に対する補助を行っている。  ※ 居住サポート事業の実施市町村数(平成21年4月現在) 221市町村/1,798市町村(12%)  ※ 補助割合   国1/2以内、都道府県1/4以内 ○ また、厚生労働省としては、居住サポート事業の実施を促進するため、平成21年度か ら基金事業の「居住サポート事業立ち上げ支援事業」において、立ち上げに当たって必要 な設備整備、不動産業者等に対する説明会、先進地の視察に係る費用に対する財政支援を 行っているところである。  ※ 補助単価   1障害福祉圏域あたり3年間で1,000千円  ※ 補助割合   定額(10/10) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (居住サポート事業の充実について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 相談支援の充実について、入居支援や緊急時のサポートについて自立支援給付 の対象とすることを検討すべきである とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−5 地域での住まいの確保・居住サポートについて 5)グループホームとケアホームについて、現状の問題点は何か?また今後のあり方をど う考えるか? 【現在の制度の状況】  (グループホームについて) (1)対象者   主として障害程度区分1又は障害程度区分に該当しない障害者 (2)サービス内容   主として夜間において、共同生活住居において相談その他の日常生活上の援助を行う。 (ケアホームについて) (1)対象者   障害程度区分2以上に該当する障害者 (2)サービス内容   主として夜間において、共同生活住居において入浴、排せつまたは食事の介護等を行 う。  (整備目標について) ○ グループホーム・ケアホームについては、平成22年4月現在で約5.8万人が利用して おり、各都道府県及び市町村が定める障害福祉計画においては、平成23年度までに8.3万 人分を整備することとしている。  ※ 利用者数(平成22年4月国保連データ)   ・ グループホーム 20,822人   ・ ケアホーム   37,363人 【参考】整備費の助成について ・ 平成20年度より、グループホーム・ケアホームの施設整備費の国庫補助を行っている。     ○補助金名   社会福祉施設等施設整備費補助金 ○対象法人   社会福祉法人、医療法人、公益法人 等 ○整備区分   新築   改修(自己所有物件) ○補助単価(事業費ベース)   創設 2,540万円以内   改修 600万円以内  ※エレベーター等設置整備の場合は200万円を加算 ○負担割合   国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、事業者1/4 ○平成22年度予算   100億円の内数 ○補助金名   障害者就労訓練設備等整備費 ○対象法人   社会福祉法人、医療法人、公益法人、NPO法人 等 ○整備区分   改修(賃貸物件)  ※NPO法人は自己所有物件も対象 ○補助単価(事業費ベース)   改修 600万円以内  ※エレベーター等設置整備の場合は200万円を加算 ○負担割合   国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、事業者1/4 ○平成22年度予算   24億円の内数 【参考】福祉部局と住宅部局の連携について ・ 平成21年11月、厚生労働省と国土交通省が連名により、公営住宅のグループホーム・ ケアホームとしての活用等をさらに促進するため、「障害者の住まいの場の確保のための福 祉部局と住宅部局の連携について」(平成21年11月12日厚生労働省社会・援護局地域福 祉課長、社会・援護局障害保健福祉部企画課長、社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 長、国土交通省住宅局住宅総合整備課長連名通知)を発出した。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (利用料の助成について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ グループホーム・ケアホームを利用する際の助成等について検討すべき とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−6 権利擁護支援等 1)「本人が必要とする支援を受けた自己選択、自己決定、地域生活」を実現していくため には、どのようなサービス体系が必要と考えるか? 2)権利擁護を推進していくためにはどのような体制が必要か?相談支援やエンパワメン トの事業化についてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 (虐待防止・権利擁護に関する市町村及び都道府県の責務等について) ○ 現行の障害者自立支援法においては、虐待防止・権利擁護に関して、  @ 市町村は、その責務として、「障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のため に関係機関と連絡調整を行うことその他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行 うこと」、  A 都道府県は、その責務として、「市町村と協力して障害者等の権利の擁護のために必 要な援助を行うとともに、市町村が行う障害者等の権利の擁護のために必要な援助が適正 かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行うこ と」が規定されている。(障害者自立支援法第2条第1項第3号及び第2項第4号) (相談支援事業について) ○ 地域の障害者やその保護者からの福祉サービスの利用援助に関する相談、必要な情報 の提供や助言等については、市町村が相談支援事業として実施しており、その中で、権利 擁護のための必要な援助も行うこととしている。(障害者自立支援法第77条第1項第1号) (成年後見制度利用支援事業について) ○ 障害者の権利を擁護するため、市町村が地域の実情に応じて柔軟に事業を実施できる 地域生活支援事業において、知的障害、精神障害の理由により判断能力の不十分な方々が 成年後見制度を利用する際に必要となる費用を助成する「成年後見制度利用支援事業」を 実施しており、厚生労働省は、この事業に係る費用に対する補助を行っている。 ※ 成年後見制度利用支援事業の実施市町村数(平成21年4月現在)    686市町村/1,798市町村(38%) (相談支援従事者に対する研修について) ○ 相談支援を実施するに当たっては、障害者自らの力で自立した生活を送っていけるよ う障害者自身の力を引き出していくエンパワメントの視点が重要であるとされている。 ※ 障害者ケアガイドライン(平成14年3月31日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉 部)(抜粋)  「障害者ケアマネジメントは、利用者が自己の課題を解決するにあたり、自分が主体者 であることを自覚し、自分自身に自信がもてるように、利用者の力を高めていくエンパワ メントの視点で支援していくことが必要である。」 ○ 国と都道府県において、権利擁護やエンパワメントの視点を踏まえ、相談支援従事者 の養成のための研修を実施している。 ※ 「相談支援従事者研修事業の実施について」(平成18年4月21日付け障発第0421001 号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)の別添の「相談支援従事者研修事業実 施要綱」の別表1「相談支援従事者初任者研修標準カリキュラム」における「相談支援に おける権利侵害と権利擁護(1.5時間)」の内容  「具体的なケアマネジメント事例を通して当事者のエンパワメント、アドボカシー等に ついて理解する。その上で、成年後見制度等の関連制度の重要性についても理解する。」 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (自己選択、自己決定について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 地域における相談支援体制の充実強化を図ることや、ケアマネジメントのあり方と して、サービス利用計画の作成について、支給決定後ではなく支給決定前に作成すること とし、対象者を原則としてサービスを利用するすべての障害者に拡大するべきである とされている。 (地域生活について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 退院・退所後の生活を見据えた地域生活の準備等のための外出の支援や、24時間の 相談支援等について自立支援給付の対象とすることを検討すべきである とされている。 (虐待防止・権利擁護について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、虐 待防止・権利擁護について  @ 高齢者、児童について虐待防止法制が整備されている中で、現行法に基づく取組を 行うとともに、障害者の虐待防止法制についても積極的に検討すべきである、  A 障害者の権利擁護を図るため、福祉サービスの利用に関する援助等を行う「日常生 活自立支援事業」や、市町村が成年後見制度を利用する場合の費用を助成する「成年後見 制度利用支援事業」の活用を進めるべきである、  B さらに、成年後見制度の利用支援の在り方について、個別給付とすることを含め、 今後更に検討していくことが必要である とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 D−6 権利擁護支援等 3)サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについてどう考える か? 【現在の制度の状況】 (苦情解決) ○ 障害福祉サービスに係る苦情解決については、「障害者自立支援法に基づく指定障害福 祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171 号)第39条等において、指定障害福祉サービス事業者等は、利用者又はその家族からの苦 情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付ける窓口を設置する等の必要な措置を 講ずることとされている。 ○ また、社会福祉法第83条等に基づき、事業者段階で解決できない苦情を適切に解決す るため、都道府県社会福祉協議会に公正・中立な第三者機関として、運営適正化委員会を 置くものとしている。 (第三者評価) ○ 第三者評価については、社会福祉法第78条第1項において、社会福祉事業の経営者は、 自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、 常に利用者の立場に立って、良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければな らないこととしている。  また、同法第78条第2項において、国は福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施 に資するための措置を講ずるよう、国の努力義務を定めている。 ○ これを受け、厚生労働省は、社会福祉事業の経営者が行う福祉サービスの質の向上の ための措置を援助するため、福祉サービス第三者評価事業を行っている。  この福祉サービス第三者評価事業は、各障害福祉サービス事業所が事業運営における問 題点を把握してサービスの質の向上に結びつけることとともに、第三者評価を受けた結果 を公表することにより、利用者の適切なサービス選択に資することを目的として実施して いる。 【参考】福祉サービス第三者評価事業  ・ 平成22年度予算額  8,290千円  ・ 実施主体  全国社会福祉協議会  ・ 補助率   10/10  ・ 福祉サービス第三者評価の受審件数(平成21年度実績)    2,869件(うち障害福祉サービスに係る受審件数257件) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供 体制の整備並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本 的な指針(平成18年厚生労働省告示第395号)においては、「国、都道府県、市町村及び 指定障害福祉サービス等の事業者は、指定障害福祉サービス等に係る人材の養成、提供さ れるサービスに対する第三者による評価、障害者等の権利擁護に向けた取組等を総合的に 推進することが重要である。」とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 1)条約では、「特定の生活様式を義務づけられないこと」とあるが、これを確保するため にはどのようなことが課題にあるか?また、地域移行の法定化についてどう考えるか。   【現在の制度の状況】 (居住サポート事業について) ○ 障害者の地域における自立した生活のための支援については、市町村が地域の実情に 応じて柔軟に事業を実施できる地域生活支援事業の一つとして、「居住サポート事業」にお いて、  @ 入居支援(物件あっせん依頼、入居手続き支援)、  A 24時間支援(緊急時等の対応) 等に対する補助を行っている。 【実施状況】(平成21年4月現在)  ・221市町村(12%)で実施 (注)実施率は、全市町村数(1,798市町村)に占める実施市町村の割合 【補助割合】  ・国1/2以内、都道府県1/4以内      (精神障害者に対する地域移行・地域定着支援策) ○ 精神障害者の地域における自立した生活のための支援については、「精神障害者地域移 行・地域定着支援事業」において、  @ 精神障害者に対する退院・退所に向けた相談支援や福祉サービスの体験利用等への 同行支援を行う地域移行推進員の配置、  A 地域生活に必要な支援体制の整備に係る総合調整や、地域移行推進員への助言・指 導を行う地域体制整備コーディネーターの配置 に対する補助を行っている。  ※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業の実施市町村数(平成21年6月現在) 47都道府県/47都道府県(100%)  ※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業補助金    平成22年度 16.7億円   (実施主体:都道府県、指定都市 補助率:国1/2)     【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (地域移行の法定化について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  @ 入所・入院者の地域移行に向けて、退所・退院後の生活を見据え、地域の福祉サー ビスの見学・体験や、地域生活の準備等のための外出の支援など必要な支援を行うこと  A 24時間の相談支援体制を整え、実際に支援を行うことや、地域生活への移行のため に入居に関する支援を行うこと について、自立支援給付の対象とすることを検討すべき である  とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 2)入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなどを 定めることは必要か?   【現在の制度の状況】 (障害者福祉計画に基づく施設入所者の地域生活移行について) ○ 障害者自立支援法第87条及び第88条において、市町村及び都道府県は障害福祉計画 を策定することとされており、当該障害福祉計画において、平成23年度末までに施設入所 から地域生活に移行する者の数値目標を定め、障害者の地域移行を計画的に進めている。 (1)数値目標   @ 地域移行者数 平成17年10月 → 平成23年度末 2.1万人   A 施設入所者数 平成17年10月 14.6万人  →  平成23年度末 13.4万人                         (減少数1.2万人) (2)実績   @ 地域移行者数    ・ 平成17年10月 → 平成19年10月 9,344人(調査回収率92%)    ・ 平成19年10月 → 平成20年10月 4,754人(調査回収率91%)    ・ 平成20年10月 → 平成21年10月 5,332人(調査回収率96%)                     合計19,430人 A 施設入所者数    ・ 平成21年10月 136,016人(調査回収率96%) ○ また、障害者の地域移行を支援するため、障害福祉計画において平成23年度までの障 害福祉サービス見込量を定め、計画的に必要とされるサービスが提供されるよう、整備を 進めている。 (1)障害福祉サービス見込量(平成23年度)   @ 訪問系サービス 15.1万人   A 日中活動系サービス 40.7万人   B 居住系サービス(グループホーム・ケアホーム) 8.3万人 (2)実績(平成22年4月)   @ 訪問系サービス 11.9万人   A 日中活動系サービス 30.8万人   B 居住系サービス(グループホーム・ケアホーム) 5.8万人 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害者の地域移行の計画的な推進は、都道府県及び市町村の障害福祉計画に基づく地 域生活を支える各種福祉サービスの計画的な整備と併せて進めているところである。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 3)地域移行を進めるために、ピアサポートや自立体験プログラムなどをどのように整備・ 展開していくべきか?   【現在の制度の状況】 (ピアカウンセリング、ピアサポートの現状について) ○ 障害者やその家族の方々が互いに相談支援を行うピアカウンセリングやピアサポート は、市町村が相談支援の一つとして実施している。 ※ ピアカウンセリングの実施市町村数(平成21年4月1現在) 707市町村/1,798市町村(39%)   ・ 身体:561市町村/707市町村(79%)   ・ 知的:342市町村/707市町村(48%)   ・ 精神:565市町村/707市町村(80%)  ※ 身体障害者相談員、知的障害者相談員の配置状況(平成21年4月1現在)   ・ 身体障害者相談員:9,562人   ・ 知的障害者相談員:4,107人 (原則として、身体障害者相談員は身体障害者、知的障害者相談員は知的障害者の保護者 とされている。) ○ 厚生労働省としては、障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金事業)において、「ピ アサポートセンター等設置推進事業」として、ピアサポート等の事業を実施するピアサポ ートセンターを設置する場合に必要なパソコンなどの設備整備や、実際にピアサポートを 行う障害者や家族に対する研修に係る費用に対する財政支援を行っている。 ※ 補助単価   1か所あたり1年間で1,900千円以内 ※ 補助割合   定額(10/10) (精神障害者地域移行・地域定着支援事業) ○ 精神障害者の地域生活への移行を促進するため、平成22年度においては、「精神のあ る方地域移行・地域定着支援事業」の新たなメニューの一つとして、ピアサポーターが入 院患者を訪問し、退院に向けて外出等に同行して退院準備などを支援する活動を補助の対 象としている。 ※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業費補助金の予算額 平成22年度 16.7億円  ※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業の事業内容  福祉・医療等の関係者による地域移行・地域定着推進協議会の設置、地域移行推進員の 配置、地域体制整備コーディネーターの配置、ピアサポーターによる同行支援(平成22 年度新規)など   (グループホーム・ケアホームの体験入居) ○ グループホーム・ケアホームの体験入居について、平成21年4月から、自立支援給付 の対象としたところである。  ※ 対象者   障害者支援施設等に入所中の方、精神科病院等に入院中の方又は居宅において家族と 同居している方等であって、グループホーム・ケアホームへの入居を希望する方  ※ 平成22年4月の利用者数 417人   【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (ピアサポート、自立体験プログラムについて) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  @ 障害者の地域生活の支援については、障害者同士によるピアサポートも大切であり、 都道府県や市町村において、その自主的な活動を支援することを促進していくべき  A 入所・入院者の地域移行に向けて、退所・退院後の生活を見据え、地域の福祉サー ビスの見学・体験や、地域生活の準備等のための外出の支援など必要な支援について自立 支援給付の対象とする とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 4)長期入院・入所の結果、保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応として、 どのような公的保証人制度が必要か? 【現在の制度の状況】 (家賃債務保証制度) ○ 家賃債務保証については、「財団法人高齢者住宅財団」が高齢者世帯、障害のある方の 世帯、子育て世帯および外国人世帯を対象として、実施しているところ。 ○ 対象となる世帯については、障害者手帳所持者がいる場合であり、保証の対象は、滞 納家賃(家賃の12ヶ月分)、原状回復費用及び訴訟費用(家賃の9ヶ月分)で、保証期間 は原則2年間、2年間の保証料は家賃(月額)の35%となっている。 ※ 「財団法人高齢者住宅財団」は、国土交通大臣から高齢者居住支援センターの指定を受 けて、家賃債務保証制度を運営している。 ※ 平成21年度より障害者の対象範囲を拡充     改正前:身体障害者手帳1〜4級、精神障害者保健福祉手帳1・2級、知的障害者 は精神障害に準じて対象     改正後:身体障害者手帳1〜6級、精神障害者保健福祉手帳1〜3級、知的障害 者は精神障害に準じて対象 ※平成21年度より滞納家賃に係る保証限度額の拡充     改正前:家賃6ヶ月分     改正後:家賃12ヶ月分 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (家賃債務保証制度の拡充) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 障害者が入居可能な民間住宅の確保を進めることも重要な課題となっており、障害 者等が民間賃貸住宅を借りる際の公的な「家賃債務保証制度」についての拡充(対象者の 拡大)、普及を図るべきである とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 5)地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みは必要か?また、どのよう なものであるべきか?   【現在の制度の状況】 (地域移行支度経費支援事業について) ○ 平成21年度から、障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金事業)において、 「地域移行支度経費支援事業」として、2年以上施設に入所している者や精神科病院に入 院している者が地域生活に移行するに当たり、地域生活で新たに必要となる寝具、照明器 具、食器類等の物品を購入するための費用の助成を行っている。  ※ 補助単価 1人あたり30,000円以内  ※ 補助割合 国1/2、都道府県1/4、市町村1/4   (精神科病院、精神障害者生活訓練施設、精神障害者入所授産施設及び精神障害者福 祉ホームB型からの退院・退所については、国1/2、都道府県(政令指定都市)1/2) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (地域移行者に対する財政支援について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 障害者施設や精神科病院に長期間入所・入院していた者が退所・退院し地域移行す るに当たって必要となる費用の助成や、グループホーム・ケアホームを利用する際の助成 等について検討すべき とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−1 地域移行の支援、並びにその法定化 6)地域移行における、入所施設や病院の役割、機能をどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法に基づく新たなサービス体系(新体系)は、地域生活への移行を進 めていくため、日中の活動の支援と居住の支援を自分で組み合わせて利用できる「昼夜分 離」等を進め、利用者本位のサービスを目指している。 ○ このため、障害者支援施設(入所施設)については、居住の支援である施設入所支援 を行うとともに、日中の活動の支援である障害福祉サービス(生活介護、自立訓練又は就 労移行支援)を行う施設であることとしている。  【参考】施設入所支援  (1)対象者   障害程度区分が区分4(50歳以上の者にあっては区分3)以上である者  (2)サービス内容   主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護、生活等に関する相談及び助言 その他の便宜を供与するとともに、入所施設以外の福祉サービス(生活介護、自立訓練及 び就労移行支援)を供与  (3)事業所数及び利用者数(平成22年4月国保連データ)   事業所数:1,163箇所、利用者数:63,598人 ○ また、障害者支援施設は、指定基準において、その機能を地域に開かれたものとして 運営されるよう、地域の住民やボランティア団体等の連携及び協力を行う等の地域との交 流に努めなければならないとされている。 ○ 医療保険の平成22年診療報酬改定においては、長期入院患者を減少させた実績のある 医療機関に対する評価の引上げ、30分以上の通院・在宅精神療法の評価の引上げ、認知行 動療法に対する評価の創設、複数名で訪問看護を行う訪問看護ステーションに対する評価 の創設など、地域生活を支えるための評価を行ったところである。  入院期間が5年を超える長期入院患者を1年間で5%以上減少させた場合 :1日あたり 5 点→10 点  30分以上の通院・在宅精神療法:360点→400点  認知行動療法に対する評価:1日あたり420点  複数名訪問看護加算:看護師等4300 円、准看護師3800円(週1回の算定) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、入 所施設については、今後、専門性を持つ地域の資源として、  @ 施設に入所している障害者について、地域との交流等、社会体験の機会を増や していくことを含め、入所者に対する地域移行の支援  A グループホームやケアホームの実施、日中活動系の事業、短期入所、訪問事業 の実施など、地域生活を支えるための支援の役割について、更に果たしていくべき とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 E−2 社会的入院等の解消 1)多くの社会的入院を抱える精神科病床からや、入所施設からの大規模な地域移行を進 める為に、何らかの特別なプロジェクトは必要か? 2)現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題にどのように取り組むべきか? 3)また、「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査と、何があればそうならないか のニーズ把握は、具体的にどのように行えばよいか? 4)上記の調査を具体的な施策に活かすためには、どのようなシステムを構築すべきか? 5)スウェーデンでは1990年代初頭の改革で一定期間以上の社会的入院・入所の費用は市 町村が持つような制度設計にした為、社会資源の開発が一挙に進んだ。我が国でもそのよ うな強力なインセンティブを持った政策が必要か? 必要とすればどのようなものにすべ きか? 【現在の制度の状況】 ○ 入院中の精神障害者の地域生活への移行を支援するため、都道府県及び指定都市にお いて精神障害者地域移行・地域定着支援事業(国1/2、都道府県等1/2)を実施して おり、地域移行推進員や地域体制整備コーディネーターの配置等を行っている。本年度か らは、受療中断している者や自らの意思では受診できない者を訪問して支援する(アウト リーチ支援)ための医師、看護師、精神保健福祉士等からなる他職種チームの配置を対象 に追加した。 ○ アウトリーチ支援の在り方に関しては、平成22年5月に設置した「新たな地域精神保 健医療体制の構築に向けた検討チーム」において、集中的に検討を行い、6月にアウトリ ーチ支援充実に向けた考え方をまとめ、現在、その具体化に向けて、平成23年度予算に おける対応も含め、検討を進めているところ。 【現状】  精神病床数は、平成20年で34.9万床。入院患者のうち、65歳以上の者の占める割合は、 48%(平成20年患者調査)で近年大きく上昇しており、年齢層が上がるほど入院が長期化 する傾向にある。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 平成21年9月に取りまとめられた今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討 会報告書(検討会報告書)において、「入院医療中心から地域生活中心へ」との基本理念に 基づく改革を推進するため、精神保健医療体系の再構築を中核とした施策の実現に向けた 進捗管理に資するよう、新たな目標値として、統合失調症による入院患者数を平成27年ま でに約15万人とすることが提言されている。(平成20年:18.5万人) ○ 一方、高齢化の進展に伴って精神病床に入院する認知症患者は増加しており(平成8 年2.8万人→平成20年5.2万人)、その中で、条件が整えば退院可能な方が6割程度存在 しているとの調査結果もある。検討会報告書で認知症に関する目標値を平成23年度までに 具体化するべきとされていること、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」 (平成22年6月29日閣議決定)において「社会的入院」を解消するための検討をするべ きとされていること等を踏まえ、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」 において、認知症患者の入院医療のあり方について議論を行う予定。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−1 地域生活資源整備のための措置 1)地域間格差を解消するために、社会資源の少ない地域に対してどのような重点的な施 策を盛り込むべきか?   【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法においては、事業者の参入規制の緩和、地域の事情等により同法に 基づく基準を満たすことが難しい場合の特例、中山間地等に対する報酬上の評価、地域の 実情に応じた取り組みを可能とする構造改革特区制度等において、社会資源の少ない地域 において、必要なサービスを確保するよう努めている。 (障害福祉サービス事業の提供主体) ○ 障害者自立支援法施行前(平成18年10月まで)については、障害者福祉の事業の実 施主体は原則として国、地方自治体、社会福祉法人に限定されていたが、同法施行後は、 障害福祉サービス(通所サービス等)を第2種社会福祉事業と位置付け特定非営利活動法 人(NPO)等も参入できることとし、多様な主体によりサービス提供体制の確保を図る ことを可能としている。(障害者自立支援法第36条第3項等) (障害者支援施設(入所施設)については、第1種社会福祉事業であり、国・地方自治体・ 社会福祉法人による経営が原則とされている。) (基準該当障害福祉サービス) ○ 障害者自立支援法においては、都道府県知事の指定を受けた事業者のサービスを利用 した場合に介護給付費等が支払われることとなっているが、従業者の確保等指定を受ける ための基準(指定基準)を満たすことが難しい地域においても、サービスの提供が可能と なるように、指定基準は満たさないものの、これに準ずる場合について、都道府県知事の 指定がなくても市町村において基準該当障害福祉サービスとして特例介護給付費等が支給 できることとなっており、地域の実情に応じてサービス提供体制の確保を図ることができ ることとしている。(障害者自立支援法第30条) (中山間地等に対する報酬上の評価) ○ 平成21年度の報酬改定において、小規模事業所により提供されるサービスへの配慮を 行うため、日中活動系サービス(生活介護、機能訓練、生活訓練、就労移行支援、就労継 続支援A型・B型)について、定員20人以下の場合の単価(同年3月までは40人以下は 同額)を設けるとともに、中山間地に居住している者に対する訪問系サービス(居宅介護、 重度訪問介護、行動援護)について、加算を設けることとした。 (構造改革特別区域) ○ 障害福祉サービスの提供基盤がない地域については、構造改革特別区域法に基づき特 区の認定を受けた地方自治体内であれば、一定の要件を満たす介護保険法に基づく小規模 多機能型居宅介護事業所において、自立訓練、児童デイサービス、短期入所を利用するこ とが可能となっており、既存資源を活用したサービス提供基盤の整備が可能となっている。   【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 上記の措置は、平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告 において、「中山間地等におけるサービス確保の在り方」について、  ・ 種々の規制緩和や特区制度について積極的な活用を図るべき  ・ 中山間地等における基盤整備の促進のための報酬上の加算措置、多機能型事業 所における各事業の最低定員の緩和について検討すべき  ・ 中山間地等を含め、小規模な施設への配慮について検討すべき とされたことを踏まえて行っているものである。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−1 地域生活資源整備のための措置 2)どの地域であっても安心して暮らせるためのサービス、支援を確保するための財源の 仕組みをどう考えるのか?   【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法においては、  @ 介護給付費等、自立支援医療費、補装具費等に係る費用については、その1/2を 国が、1/4ずつを都道府県と市町村がそれぞれ負担、  A 市町村が実施する地域生活支援事業に係る費用については、その1/2以内を国が、 1/4以内を都道府県が補助、残りを市町村が負担、  B 都道府県が実施する地域生活支援事業に係る費用については、その1/2以内を国 が補助、残りを都道府県が負担 することとしている。(障害者自立支援法第92条から第95条まで) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害者自立支援法第2条から第4条まで等に基づき、市町村は自治事務として自立支 援給付や地域生活支援事業等を行うという主体的な立場を担い、国及び都道府県は市町村 に対して必要な助言、情報提供などの支援を行うという補助的な立場を担うといった役割 分担となっており、この役割分担を前提に、介護給付費等、自立支援医療費、補装具費に 係る費用の分担についても、国が1/2、都道府県・市町村がそれぞれ1/4を負担する こととしている。 ○ 地域生活支援事業は、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態による事業を効 果的・効率的に実施し、障害者及び障害児の福祉の増進を図ることを目的としており、実 施主体である市町村等が創意工夫に基づいて主体的に事業を実施しているものであること から、国(市町村が実施するものは国及び都道府県)が事業に係る費用の一定の額を補助 することにより、その取組を支援することとしている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−1 地域生活資源整備のための措置 3)地域移行や地域間格差の解消を図るため、地域生活支援整備に向けた、かつての「ゴ ールドプラン」「障害者プラン:ノーマライゼーション7カ年戦略」のような国レベルのプ ランが必要か?あるいは何らかの時限立法を制定する必要があるか? 【現在の制度の状況】 (障害者基本計画) ○ 障害者基本法第9条において、「政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に 関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な 計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない」と規定されている。 (基本方針) ○ 障害者自立支援法第87条において、「厚生労働大臣は、障害福祉サービス及び相談支 援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制を整備し、自立支援給付及び 地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(以下「基本指針」という。) を定めるものとする」と規定されている。 ○ 基本指針においては、  @ 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本的事項  A 市町村障害福祉計画及び都道府県障害福祉計画の作成に関する事項  B その他自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するために必要な事 項 を定めることとされている。(障害者自立支援法第87条第2項) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (障害者基本計画) ○ 障害者基本法に基づく現行の障害者基本計画については、平成15年度から平成24年 度までの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めている。(平成14年12 月24日閣議決定) ○ また、障害者基本計画に併せて、同計画に基づく諸施策の着実な推進を図るため、前 期(平成15年度から平成19年度まで)と後期(平成20年度から平成24年度まで)にそ れぞれ「重点施策実施5か年計画」を策定し、具体的な数値目標及び達成期間等を定め、 諸施策を推進している。(後期計画は平成19年12月25日障害者施策推進本部決定) (基本方針) ○ 障害者自立支援法に基づく基本方針については、障害者自立支援法施行と併せて平成 18年に策定しているが、原則として3年を1期として、地方自治体が障害福祉計画を作成 するに当たって即すべき事項等を定めており、平成21年度から平成23年度までの第2期 に移る際に見直しを行っている。(障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府 県の地域生活支援事業の提供体制の整備並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑 な実施を確保するための基本的な指針(平成18年厚生労働省告示第395号)) 【参考】「ゴールドプラン」「障害者プラン」について (ゴールドプラン) ○ 「ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)」については、平成2年度から 平成11年度までの10か年を期間として、在宅福祉、施設福祉等の事業について実現を図 るべき目標を掲げたものである。(平成元年12月大蔵・厚生・自治大臣合意)その後、「ゴ ールドプラン」を大幅に上回るサービス量の整備の必要性が明らかになるとともに、新た な施策の展開等新たに対応していく課題も生じてきたことから、「ゴールドプラン」を全面 的に見直し、平成7年度から平成 11年度までの5か年を期間として、平成6年12月に「新 ゴールドプラン(新・高齢者保健福祉推進10か年戦略)」を策定した。 ○ 「新ゴールドプラン」の計画期間後、高齢者保健福祉施策の一層の充実を図るため、 平成12年度からの5か年を期間として、今後取り組むべき具体的施策や平成16年度にお ける介護サービスの提供の見込量等を定めた「ゴールドプラン21(今後の5か年間の高齢 者保健福祉施策の方向)」を策定した。(平成11年12月19日大蔵・厚生・自治大臣合意) (障害者プラン) ○ 「障害者プラン(ノーマライゼーション7か年戦略)」については、平成8年度からの 7か年計画を期間として、リハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念を踏 まえつつ、施策の重点的な推進を図ることを目的として、当面緊急に整備すべき目標等関 係省庁の施策を横断的に盛り込んだものである。(平成7年12月18日障害者対策推進本部 決定(後の障害者施策推進本部)) ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−1 地域生活資源整備のための措置 4)現行の都道府県障害福祉計画及び市町村障害福祉計画についてどう評価するか?また、 今後のあり方についてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 障害者自立支援法に基づき市町村は、障害者等の数、障害の状況その他の事情を勘案 し、「市町村障害福祉計画」を定めることとされている。(障害者自立支援法第88条) ○ 市町村障害福祉計画においては、  @ 各年度における指定障害福祉サービス又は指定相談支援の種類ごとの必要な量の見 込み  A @の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策  B 地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項  C その他障害福祉サービス、相談支援及び市町村の地域生活支援事業の提供体制の確 保に関し必要な事項 を定めることとされている。(障害者自立支援法第88条第2項) ○ 障害者自立支援法に基づき都道府県は、「都道府県障害福祉計画」を定めることとされ ている。(障害者自立支援法第89条) ○ 都道府県障害福祉計画においては、  @ 都道府県が定める区域ごとに当該区域における各年度の指定障害福祉サービス又は 指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込み  A @の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策  B @の指定障害福祉サービス又は指定相談支援に従事する者の確保又は資質の向上の ために講ずる措置に関する事項  C 各年度の指定障害者支援施設の必要入所定員総数  D 指定障害者支援施設の施設障害福祉サービスの質の向上のために講ずる措置に関す る事項  E 地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項  F その他障害福祉サービス、相談支援及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制の 確保に関し必要な事項 を定めることとされている。(障害者自立支援法第89条第2項) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 障害福祉計画については、障害者自立支援法施行前に居宅介護事業(ホームヘルプサ ービス等)等について未実施の市町村がみられたこと、精神障害者に対するサービスの立 ち後れが指摘されていたこと、相談支援体制についてその整備状況に大きな地域格差がみ られたこと等から、都道府県及び市町村に障害福祉計画の作成を義務付け、当該計画に沿 って、提供体制の確保が計画的に図られるよう障害者自立支援法に規定することとしたも のである。 ○ なお、都道府県は都道府県障害福祉計画に定める障害福祉サービス(生活介護及び就 労継続支援B型)の必要な量又は指定障害者支援施設の必要入所定員総数に既に達してい るか、又は指定することによりこれを超える場合は、事業者から指定の申請があった場合 でも、指定をしないことができることとしている。(障害者自立支援法第36条第4項及び 第38条第2項) ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−2 自立支援協議会 1)自立支援協議会の法定化についてどう考えるか?また、その地域における解決が困難 な問題を具体的に解決する機関として、どのように位置づけるべきか? 【現在の制度の状況】  (自立支援協議会の法律上の位置付けについて) ○ 市町村の設置又は複数の市町村の共同設置による自立支援協議会(以下「地域自立支 援協議会」という。)は、市町村の地域生活支援事業として、「地域における障害福祉に関 する関係者による連携及び支援の体制に関する協議を行うため」に設置し、運営すること とされている。(障害者自立支援法施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第65条の 10)  【地域自立支援協議会の主な機能】  ・ 地域の関係機関によるネットワーク構築等に向けた協議  ・ 困難事例への対応のあり方に関する協議、調整  ・ 地域の社会資源の開発、改善 ○ 都道府県の設置による自立支援協議会(以下「都道府県自立支援協議会」という。)は、 都道府県の地域生活支援事業として、「都道府県の区域内における相談支援の体制に関する 協議を行うため」に設置し、運営することとされている。(障害者自立支援法施行規則第 65条の15)  【都道府県自立支援協議会の主な機能】 ・ 都道府県内の地域自立支援協議会単位(市町村)ごとの相談支援体制の状況を把握、 評価し、整備方策を助言  ・ 専門的分野における支援方策について情報や知見を共有、普及  ・ 都道府県全域における社会資源の開発、改善  ※ 自立支援協議会の設置状況(平成21年4月現在)   ・ 地域自立支援協議会の設置市町村数     1,426市町村/1,798市町村(79%)   ・ 都道府県自立支援協議会の設置都道府県数     47都道府県/47都道府県(100%) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 (自立支援協議会の法定化等について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、  ・ 自立支援協議会の充実について、設置の促進や運営の活性化を図るため、市町村の 実情に応じた設置・運営方法が可能になるように配慮しつつ、法律上の位置付けを明確に するべきである とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−2 自立支援協議会 2)自立支援協議会の議論から社会資源の創出につなげるために、どのような財源的な裏 打ちが必要か? 【現在の制度の状況】  (地域自立支援協議会について) ○ 市町村は、地域生活支援事業として、「地域における障害福祉に関する関係者による連 携及び支援の体制に関する協議を行うため」に、障害者、事業者、雇用、教育、医療等の 関連する分野の関係者からなる「自立支援協議会」(以下「地域自立支援協議会」という。) 設置し、運営することとされている。  市町村は、相談支援等を通じて把握された地域の課題について、地域自立支援協議会に おいてその対応につき協議した上で、この協議結果を踏まえつつ、地域の社会資源を開発・ 改善することとしている。  (都道府県自立支援協議会について) ○ 都道府県は、地域生活支援事業として、「都道府県の区域内における相談支援の体制に 関する協議を行うため」に、障害者、事業者、雇用、教育、医療等の関連する分野の関係 者からなる「自立支援協議会」(以下「都道府県自立支援協議会」という。)を設置し、運 営することとされている。  都道府県は、各市町村や地域自立支援協議会における課題について、地域自立支援協議 会においてその対応につき協議し、この協議結果を踏まえつつ、都道府県や障害保健福祉 圏域における社会資源を開発・改善することとしている。  (障害福祉計画について) ○ 市町村及び都道府県は、地域の社会資源を開発・改善するため、障害福祉計画におい て、地域における障害者等の実情やニーズを的確に把握した上で、必要となる障害福祉サ ービス見込量等を定め、計画的に必要なサービスを整備することとしている。 【参考】障害福祉サービス事業所等の整備に係る補助(社会福祉施設等施設整備費補助金)  ・ 負担割合 国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、社会福祉法人等1/4  ・ 予算額(国) 平成22年度 100億円 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−2 自立支援協議会 3)障害者福祉の推進には、一般市民の理解と参加が重要であるが、それを促す仕組みを 自立支援協議会の取り組み、あるいはその他の方法で、法律に組み込めるか? 【現在の制度の状況】  (国民の責務) ○ 障害者基本法第6条においては、国民の責務として、「国民は、社会連帯の理念に基づ き、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない」等とされている。 ○ また、障害者自立支援法第3条においては、国民の責務として、「すべての国民は、そ の障害の有無にかかわらず、障害者等がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生 活又は社会生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう努めなければならない」と されている。    (自立支援協議会の構成メンバーについて) ○ 自立支援協議会の構成メンバーについては、地域の課題への対応を協議し、この結果 を踏まえて、地域の社会資源を開発・改善するという自立支援協議会の役割を踏まえて、 地域の実情に応じ選定されるべきものであるが、想定される例としては、相談支援事業者、 障害福祉サービス事業者、保健・医療関係者、教育・雇用関係機関、企業、障害者関係団 体、当事者、学識経験者等を示している。(「地域生活支援事業の実施について」(平成18 年8月1日付け障発第0801002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 平成20年度12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、 制度の見直しに当たって、「広く国民の理解を得ながら進めていくという視点」が必要とさ れ、  ・ 障害者の自立を国民皆でどのように支えていくか、あるいは障害の有無にかかわら ず共に育ち、共に暮らし、共に働く共生社会をいかに実現していくかについては、障害の 当事者や直接的な関係者のみならず、広く国民皆で考え、取り組んでいくべき課題である。 本部会での議論を国民に分かりやすく説明するなど、広く国民の理解を得ながら進めてい くという視点が重要である とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−3 長時間介助等の保障 1)どんなに重い障害があっても地域生活が可能になるために、市町村や圏域単位での「満 たされていないニーズ」の把握や社会資源の創出方法はどうすればよいか? 【現在の制度の状況】  (相談支援事業について) ○ 現行の障害者自立支援法では、市町村は、「相談支援事業」として、障害者等の福祉に 関する各般の問題につき、障害者等からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他 の障害福祉サービスの利用支援等、必要な支援を行うとともに、虐待の防止及びその早期 発見のための関係機関との連絡調整その他の障害のある方等の権利擁護のために必要な援 助を行うこととされている。    (地域自立支援協議会について) ○ 市町村は、地域生活支援事業として、「地域における障害福祉に関する関係者による連 携及び支援の体制に関する協議を行うため」に、障害者事業者、雇用、教育、医療等の関 連する分野の関係者からなる「自立支援協議会」(以下「地域自立支援協議会」という。) 設置し、運営することとされている。  市町村は、相談支援における個々のケースを通じて把握された地域の「満たされないニ ーズ」について、地域自立支援協議会においてその対応につき協議した上で、この協議結 果を踏まえつつ、地域の社会資源を開発・改善することとされている。  (都道府県自立支援協議会について) ○ 都道府県は、地域生活支援事業として、「都道府県の区域内における相談支援の体制に 関する協議を行うため」に、障害者事業者、雇用、教育、医療等の関連する分野の関係者 からなる「自立支援協議会」(以下「都道府県自立支援協議会」という。)を設置し、運営 することとされている。  都道府県は、各市町村や地域自立支援協議会における課題について、地域自立支援協議 会においてその対応につき協議した上で、この協議結果を踏まえつつ、都道府県や障害保 健福祉圏域における社会資源を開発・改善することとされている。    (障害福祉計画について) ○ 市町村及び都道府県は、地域の社会資源を開発・改善するため、障害福祉計画におい て、地域における障害者等の実情やニーズを的確に把握した上で、必要となる障害福祉サ ービス見込量等を定め、計画的に必要なサービスを整備することとされている。 【参考】障害福祉サービス事業所等の整備に係る補助(社会福祉施設等施設整備費補助金)  ・ 負担割合国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、社会福祉法人等1/4  ・ 予算額(国)平成22年度 100億円     【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】  (相談支援事業について) ○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告において、ニー ズの把握に関連して、  ・ 障害者が地域で安心して自立生活を送っていくためには、障害者が日々の暮らしの 中で抱えているニーズや課題にきめ細かく対応し、必要に応じて適切な障害福祉サービス 等に結びつけていくための相談支援が重要、  ・ 障害者が、様々なサービスや地域資源等も活用しながら、地域で自立して安心して 暮らしていけるよう、以下の観点から障害者の相談支援の充実を図るべき、   @ 地域における相談支援体制の強化   A ケアマネジメントの充実   B 自立支援協議会の充実 とされている。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−3 長時間介助等の保障 2)24時間介護サービス等も含めた長時間介護が必要な人に必要量が供給されるために、 市町村や圏域単位での支援体制はどのように構築されるべきか? 【現在の制度の状況】 ○ 24時間介護サービス等を含めた長時間介護については、重度の肢体不自由者に対して 居宅における介護等や外出時における移動中の介護を行う重度訪問介護により行われてい る。  ※ 重度訪問介護の利用者数(平成22年4月国保連データ):7,618人 ○ 重度訪問介護を含む障害福祉サービスの提供体制の確保に関しては、現行の障害者自 立支援法においては、  ・ 国は、障害福祉サービス等の提供体制の確保に関する基本的理念などを定める「基 本方針」  ・ 都道府県は、国の定める基本方針に即して、市町村障害福祉計画の達成に資するた め、各市町村を通ずる広域的な見地から、障害福祉サービス等の提供体制の確保に関する 「都道府県障害福祉計画」  ・ 市町村は、国の定める基本方針に即して、障害者の数、障害の状態等を勘案し、市 町村内における障害福祉サービス等の提供体制の確保に関する「市町村障害福祉計画」 をそれぞれ定め、都道府県及び市町村は、これに基づき、必要なサービスを計画的に整備 することとしている。 【参考】障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の 提供体制の整備並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための 基本的な指針(平成18年厚生労働省告示第395号) 第一 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本的事項 二 障害尾福祉サービスの提供体制の確保に関する基本的考え方      障害福祉サービスの提供体制の確保に当たっては、1の障害福祉計画の基本的 理念を踏まえ、次に掲げる点に配慮して、数値目標を設定し、計画的な整備を行う。      1 全国どこでも必要な訪問系サービスを保障立ち後れている精神障害者等対 する訪問系サービス(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、重度障害者等包括支援をいう。 以下同じ。)の充実を図り、全国どこでも必要な訪問系サービスを保障する。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−4 義務的経費化と国庫負担基準 1)障害者自立支援法では、「在宅サービスも含めて義務的経費化」するとされたが、国庫 負担基準の範囲内にとどまっている。そのため、国庫負担基準が事実上のサービスの上限 となっている自治体が多いと指摘する声がある。このことに対する評価と問題解決につい てどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 障害福祉は地方自治体の自治事務であり、国庫負担基準は、居宅介護等の訪問系サー ビスにおいて、障害福祉に係る国と地方自治体の間の一定の役割分担を前提に、限りある 国費を公平に配分するため、市町村に対する国庫の精算基準として設定されているもので あり、サービスの種類ごとに障害程度区分別に定められている。また、障害程度区分が高 いほど国庫負担基準が高く設定されている。  国庫負担基準の水準については、平成18年度の創設時に、平成16年10月の実績をもと に、全国の9割程度の市町村において支給実績をカバーできるよう設定しところであるが、 なお多くの市町村においては支給実績が国庫負担基準を下回っている。  なお、国庫負担基準については、平成21年4月の報酬改定にあわせて、平成19年度の 実績をもとに全国の9割の市町村において支給実績をカバーできるように引き上げを行っ た。    ※1 居宅介護における国庫負担基準(月額)   区分1 2,370単位   区分2 3,050単位   区分3 4,500単位   区分4 8,440単位   区分5 13,500単位   区分6 19,450単位 ※2 国庫負担基準を超過してサービスの支給を行っている市町村 263市町村(14.6% (1,800市町村のうち超過している市町村の割合))(平成20年度実績) ○ 長時間の介護を必要とする方を多く抱えるなど、国庫負担基準を超過してサービスの 支給を行っている市町村に対して、その財政負担を軽減するため、  ・ 地域生活支援事業における「重度障害者に係る市町村特別支援事業」  ・ 障害者自立支援対策臨時特例交付金を活用した「重度訪問介護等の利用促進 に係 る市町村支援事業」 による財政支援を行っている。 【参考1】重度障害者に係る市町村特別支援事業  ・ 対象自治体:訪問系サービスの利用者に占める重度訪問介護対象者が10%を超え、 かつ訪問系サービスの支給額が国庫負担基準額を超過している市町村  ・ 内容:以下の@にAを乗じた金額の一定割合を助成する。   @ 該当する市町村の重度訪問介護の利用者数から、訪問系サービス全体の利用者数 に全国の重度訪問介護対象者の割合(10%程度)を乗じて得た額を控除した数   A 重度訪問介護の障害程度区分4,5,6の国庫負担基準額の差の平均程度(約8.5 万円)  ・ 3都道府県(6.4%)で実施(平成20年度実績)   【参考2】重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業  ・ 対象自治体:市町村(指定都市及び中核市除く)  ・ 内容:以下の金額の範囲内で都道府県知事が必要と認める額を助成する。   @ 「人口10万人未満の市町村」:国庫負担基準超過額   A 「人口10万人以上30万人未満の市」:「国庫負担基準額に100%を乗じた額」と 「国庫負担基準超過額」のいずれか低い方の額   B 「人口30万人以上の市」:「国庫負担基準に50%を乗じた額」と「国庫負担基準 超過額」のいずれか低い方の額  ・ 26都道府県(55.3%)で実施(平成20年度実績) 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 現行の国庫負担基準は、訪問系サービスについて、国の費用負担を義務化することで 財源の裏付けを強化する一方、障害福祉に係る国と地方自治体の間の一定の役割分担を前 提に、限りある国費を公平に配分するため、市町村に対する精算基準として定めているも のであり、介護の必要度の高い者が多い市町村にはその人数に応じて国庫負担を行える仕 組みとなっている。  したがって、仮に国庫負担基準を廃止する場合にあっては、国の厳しい財政事情を考慮 し、国費を公平に配分する機能をどのような形で担保するのか、検討が必要である。 ---------------------------------------------------------------------------- 【分野・項目・論点】 F−5 国と地方の役割 1)現在、障害者制度改革の中では、「施設・病院から地域生活への転換」「どの地域であ っても安心して暮らせる」方向が目指されている。一方、地域主権改革では「現金給付は 国、サービス給付は地方」との一括交付金化の考えが示されている。障害者福祉サービス に関して国と地方の役割をどう考えるか? 2)障害者権利条約の第19条を受けて、推進会議では「地域生活の権利の明文化」を求め る意見が多数であった。地域の実情や特色にあったサービス提供と、この「地域生活の権 利」を担保していくためのナショナルミニマムのあり方についてどう考えるか? 【現在の制度の状況】 ○ 平成22年6月22日に閣議決定された「地域主権戦略大綱」においては、「ひも付き補 助金の一括交付金化」が盛り込まれており、「国から地方への「ひも付き補助金」を廃止し、 基本的に地方が自由に使える一括交付金にするとの方針の下、現行の補助金、交付金等を 改革する」とされている。  ただし、大綱においては、「現金給付は国、サービス給付は地方」との考えは示されてお らず、「基本的に、全国画一的な保険・現金給付に対するものや地方の自由裁量拡大に寄与 しない義務的な負担金・補助金等は、一括交付金化の対象外とする」とされている。   ○ また、「地域主権戦略大綱」においては、「義務付け・枠付けの見直し」、「計画等の策 定及びその手続の見直し」、「基礎自治体への権限移譲」についても盛り込まれており、   @ 指定障害福祉サービス事業者の指定権限の中核市までの移譲   A 指定障害福祉サービス事業者の欠格要件(法人であること)の条例委任   B 障害福祉計画の住民の意見反映義務の廃止又は努力義務化 等が盛り込まれている。 【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】 ○ 地方自治体の事務の在り方等については、閣議決定された「地域主権戦略大綱」等も 踏まえ検討する必要がある。また、地域主権を担当する内閣府も含めて検討する必要があ る。