平成28年度第1回産業労働事情懇談会議事概要 日時: 平成29年1月19日(木)14:30〜16:30 テーマ: ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組と課題 招聘企業(業種): サービス業(他に分類されないもの)    <企業概要、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組> ○ 2014年設立。日本初の託児スペース併設型オフィスを開設し、現在、全国に11のオフィスを展 開している。事業のきっかけは、それまで行っていた親子カフェ(子供とともに気兼ねなく飲食  できるよう工夫された施設)を運営しているときに、働く意欲や能力はあるものの、就業に結び  ついていない主婦が多くいることを知り、良好な職場を提供できないかと考えたことが始まりで  ある。 ○ 「お母さんが子供のそばで働ける世の中に」をコンセプトに「仕事場」と「託児スペース」が  隣接されている。   働く時間帯など就労条件を自分の希望に合わせることができること、母親を対象としているの  で同じ境遇の仲間と気兼ねなく働くことができること、教育や研修を実施しているためブランク  を気にせずスタートできることなど、育児と就労を両立しやすい環境を提供している。 ○ 親子カフェの運営を通じて培ったノウハウを提供し、「仕事」を提供する企業と「場所」を提 供する企業等とコンソーシアムを組んでいる形だが、それぞれにメリットがあるビジネスモデル となっている。   「仕事」を提供する企業のメリットは、人手不足のため時給を高くしてもなかなか人が集まら  ない中、新たに学生等を採用するよりも時間・費用を節約することができ、子育て支援・母親支  援という社会貢献活動ともなっている。   集客効果を期待され、鉄道沿線や商業施設に開設することが多いが、事業形態を活かし、地域  での雇用創出・活性化を目指し、地方自治体と連携した地域展開も行っている。    <主な意見交換> 【Q】このような子供が近くにいる環境で働く場合、託児所から職場の移動時間が省略できる以外に   働く者としてのメリットにどういったものがあるか。現在、かなり多くの店舗を展開されており、   急に拡大しているような印象を受けているが今後も続くのか、課題等はあるのか。    また、自ら事業を興していくのに必要な能力はあるのか。 【A】働く者としてのメリットは、1日3〜4時間で週3日など短時間に働くことができること、託   児スペースが利用でき、子供のそばで働けること、子育て期間のブランクを埋められるというこ   とだと思う。また、店舗の展開数は想定外だったが、マスコミに取り上げられたことが大きい。    「独立」については、再チャレンジできる仕組みが必要ではと思う。    【Q】週3日、1日4時間が基本のような話があったがバリエーションとしてはもっとあるのか。フ   ルタイムのような形で働く人はいないのか。形態としては1年契約等の有期の雇用契約となって   いるのか。また、将来こちらで自信をつけてステップアップし、更に能力の生かせる職場に行く   ことができればという話があったが、これまでの間においてそういうケースは実例として出てい   るのか。    受注業務に関して、拠点がどんどん増えている中で、拠点ごと様々な能力のある方が100人   単位でおられると思うが、拠点ごとに業務の種類が決まっているのか。それとも全国で受けてい   る業務を、場所を問わない仕事であれば、その100人の方が色々な業務をやることになっている   のか。 【A】103万円以内で働きたいという方が非常に多かったのでそうであれば月間8万円ぐらい・週3   日で1日4時間のようなモデルが多いが、それ以外でも希望のシフトを出してもらい、組み合わ   せている。週に12時間勤務の中で調整が可能である。雇用形態としては、基本はパート・アルバ   イトである。社内でステップアップし、スーパーバイザーや社員になる方も出ている。また、こ   こで慣れて、次、能力の生かせる職場へというケースは、1号店を出してから日が浅く、子供が   1〜4歳の母親が多いのでまだ出ていない。    受注業務については、現在は「1拠点に1業務」のような状態。だが、すごく優秀な方も   多いので、将来的には例えば翻訳の仕事などを受注し、各店舗の英語の得意な人達に割り振って   いくようなことも考えている。    【Q】現在都市圏にある託児スペース付サテライトオフィスではその建物に入っているところの何社   かの方が利用されているが、こちらに対する「問い合わせ」とか「ニーズの強さ」といったもの   にはどのようなものがあるのか。例えば違う意味での行政連携モデルとして、ここで待機児童の   あぶれた分を吸収できたり、学童保育の受け入れができたりすれば、都市圏だけでなく、特に子   供・待機児童が多い都市だったらドーナツ圏や地方でもこのようなオフィスはニーズがあるので   はないか。やはり大都市まで子供を連れて通勤というのも大変だということもあるのでドーナツ   圏でも可能なのかどうか。 【A】現在は、ダイバーシティや働き方改革を考えている企業が多いので、このサテライトオフィス   の引き合いは非常に多い。育休で戻れていないのは1社あたり4,5人なのでそれぞれの企業で   やろうとすると採算が合うのかどうかで止まってしまっている企業が多い。現在は、何社か集ま   って大家的な企業に場所を提供してもらい、利用する企業で家賃を分担するような仕組みをとっ   ている。   通勤時間はフレックスタイムの企業が多いので、通勤が困難な時間帯は想定していない。ほとん   ど11時〜4時までのような勤務時間となっている。    また、複数の企業から、上記のようなサテライトではなく、現在出店している託児付オフィス   の中の一部のブースを間借りしたいという話もきているのでドーナツ圏などに時間貸しでやれる   ようなものを今やろうとしている。柔軟な働き方を提案しているような企業の受け皿になれば、   企業も制度を作りやすくなると思う。     【Q】子供が小学校に入ったぐらいが結構1つの何かハードルになるのかと思う。出店から間もない   のでそういう人はまだ出ていないかもしれないが、その辺について何かしら考えや対応策がある   のであれば教えてほしい。また、この労働市場の状況で人材確保にあまり苦労していないようだ   がなぜか。潜在的にニーズはあるのはわかるが、例えば募集の仕方等で何か工夫をしていること   があれば教えてほしい。経営の視点からは、発注者から仕事の前倒しなどの話があった場合、残   業などは難しいと思うが、どういった折り合いをつけているのか。 【A】託児スペースにあるボールプールや立体遊具を稼働式にして、机や椅子を置けるロッカールー   ムを最初から作ってあるので、将来的には小学校のお子さんのいる方が働けるというモデルがで   きればいいと思っている。募集の仕方は特に何も工夫していない。それだけ母親達の「働きたい   けど働けない」が強いのではないかと思う。残業の件は、仕事を出す方も「母親の応援」的な思   いもあるので「残業してもらわないと困る、今日中に仕上げて」のようなことは今までに言われ   たことはない。    【Q】預かっている子供が外に出たいとなった時、セキュリティの問題もあると思うがどのように両   立しているのか。また、自治体からの要請で関西圏に行政連携モデルを新たにオープンされたが、   関東圏と関西圏で母親の属性や仕事のやり方に違いはあるのか。 【A】基本、外というのは前提にしていない。「外遊び」というところまではフォローできる設計を   していないのでかなり難易度が高いと思っている。逆に中にいる間を充実させるという意味で、   企業と組んで「英会話」的なものとか、「遊び」的なものを取り入れようとしている。とは言え、   母親からは、「外で」、「太陽の下で」遊ばせたいという要望は非常にあると思うので、そこは、   今日働いて、明日は公園に行って、また働いてと組み合わせたり等、母親の中である程度決めて   いくことが重要と思っている。    また、出店した関西圏の店舗は人口も3万人程度、待機児童もいないということだったの   で、初めて出ていく時には応募者がいなかったらという危惧は実はあったが、実際は母親の応募   が100人以上あり、働く意欲もあった。これを見たことが、大都市圏から地方までこの事業をやっ   ていくことができるのではないかという1つの試金石だったと思っている。    【Q】雇われている方からの評判や満足度は、子供に対する施設が充実しているので高いと思われる   が、仕事の内容についてはどうか。「このような仕事もやってみたい」とか「もっと難しい仕事   をしてみたい」等の声が出ているのか。出てきていたらどのような工夫をしているのか。また、   業務を委託する側からの仕事の成果に対する評判はどうような感じなのか。 【A】働いている方々に聞き取りを行ったところ、「諦めていたのに働けてうれしい」というお話を   何人からもいただいた。ただ今後は、「もっとこうしたい、ああしたい」との声はでてくると思   う。働けた喜びが大きいのでこれまで退職者はほとんどなく、よって習熟していくので今度は仕 事を出す側の評価につながっている。最初はパート・アルバイト系の会社からパート・アルバイ ト向けの仕事を請け負っていたが、成績がいいということで、その後同じ企業グループの今度は 社員系の会社から発注がきたということがある。業務を委託する側のグループ内からも非常に高 い評価を受けている。     【Q】採用基準はどうなっているのか。0歳児のいる方以外にあるのか。例えば職歴がないといけな   いとか、「真面目で継続」ということと何か必要な条件があれば教えてほしい。また、2、3年   ブランクがある方が多いと思われるがそれを乗り越えるための支援・サポートのような措置があ   るのか。 【A】絶対ダメという採用の基準は「0歳児」以外ない。面接に来られる方はみなさん真面目で一生   懸命の方ばかりで困ってしまうが、最終的には熱意、キャリア、協調性等総合的にみて判断して   いる。    受注した仕事についての支援は、発注業者の担当の方が直接業務のやり方の説明に来るが、   その前、仕事をスタートさせる時に、本人のスキルの確認や基本的な研修(パソコンや応対等)   を行っている。それが習熟していくと、次の会社にステップする時もかなり自信を付けていける   と思っている。    【Q】話を聞くと、「女性の活躍」、「人手不足対策」、「利益もあがる」という前途有望なすばら   しい事業のようだが、同様のことを真似しようとか動きがあるのか。仮にないとすると何が障壁   となっているのか。また、行政と連携することによるメリットはあるのか、ここはまずかった・   次はこうしたい等の話があれば教えてほしい。今後予定されている行政との連携の部分で、これ   までとは違うモデルでされているものがあれば、また全て大体同じような形で展開されようとし   ているのか差支えなければ教えてほしい。 【A】当社と同じモデルで展開したいという話は現在いくつかの会社からきている。今後たくさんく   るのではと思っている。行政と連携することのメリットは「場所の確保」が容易だったこと。   市民から「うちの家を」などと協力が得られるのは行政ならではないかと思っている。まずかっ   たことは、東京からいきなり関西圏への出店だったので、移動時間の部分でかなりロスがでてし   まったことだと思う。今後行政との連携を予定しているこれまでとは違うモデルは、シャッター 商店街での出店で、商店街の活性化も一緒にやろうというもの。    【Q】社員、正社員とよばれている方はそれぞれの拠点にいるのか。いないとすれば本社で一元的に   例えばIC的な技術を使ってソフトウエアを使ってやることも考えられるがどういう形でやって   いるのか。シフト管理は誰がやっているのか 【A】本部に集中的に社員、各拠点にはパートとパートからステップアップした準社員的なスーパー   バイザーを配置している。本部と各拠点とのミーティング等はテレビ電話会議で行っているので、   地域差があっても遠隔でコミュニケーションを取りながら運営している。シフト管理は各店舗の   エーススーパーバイザーが、各スタッフからシフトを集めてシフト案を作り、広報して、業務等   をどれくらいきちんとこなせているか本部の社員が確認し、コントロールしている。