平成27年度第3回産業労働事情懇談会議事概要 日時: 平成28年2月16日(火)14:00〜16:00 テーマ: 生産性の向上と人材の有効活用の取組と課題 招聘企業(業種): 製造業 <企業概要、生産性の向上、人材の有効活用の取組> ○ 創業1889年の製造業(売上高1,037億円、従業員約5,800名)で、繊維の染色加工 として事業を始め、現在は、繊維製品の企画製造販売まで事業を拡大するとともに、 経営を多角化した。弊社の売上の約半分を車両の内装材(カーシートの生地など)が 占めており、約4分の1をファッション、残りはエレクトニクス、環境・生活資材、 化粧品という状況となっている。カーシートについては世界的のシェア、15%となっ ておりシェアがナンバー1となっている。 ○ 創業時は染色加工、委託賃加工をやっていたが、ビジネスモデルを変えるため下請 け、賃加工から、1990年代には織・編、縫製を、その後企画、販売を、自ら行うよう 取り組んだ。さらには、繊維だけではなく、医療分野に進出し、さらにIT化、グロ ーバル化と展開しているところ。 ○ 事業展開に当たっては、あくまで創業の事業である繊維の技術から派生するものを 目指している。現在は、エレクトロニクス分野、環境、生活・環境資材、化粧品や人 工血管など健康食品・医療分野に進出している。さらには、ITを活用して、他品種、 小ロット、短納期といったことに対応した商品も提供しはじめた。 ○ 現場を大事にするということで取り組んでおり、現場の問題は常に現場目線で当事 者意識を持つことを重視し、とにかく現場に行って物をしっかりと見て、現場で考え ることを大事にしている。 ○ 海外にも拠点があり、国内と同程度の従業員が働いている。海外への設備投資も積 極的に行っている。 ○ 研究センターでは実用的な研究を行っている。売上の5%を研究開発費用に充てて いる。 ○ 人員構成は偏っていて、40歳代が全体の4割となっている。平均勤続年数は、男性 が15年、女性が22年となっており、女性の平均勤続の方が長くなっている。平均年齢 は39.9歳である。 ○ 新卒採用は、62名。今回は、販売力、企画力、ファッション関係を強化するため、 女性や文系を多く採用した。中途採用も行っているが、当社ニーズとのマッチングが 難しく少数に留まっているのが現状である。 また、3年以内の離職率は8%と低い。 ○ 教育としては、「現場力」、「グローバル力」、「マネジメント力」を主眼に置い た研修に取り組んでいる。新人研修(海外研修1か月含む)を始め、若手社員研修、 部長研修、海外研修等がある。また、Eラーニング・通信講座は全管理職の必須とし、 TOEICを必須受験としている。 ○ 介護・出産休暇制度などを整えており、育児休職者は直近5年間で51名となってい る。 ○ 女性の活躍(昇進)については、直近2年連続で課長に昇進させるなど取り組んで きた。この方は子育てを終え、親の面倒も問題ないという状態の方であった。女性に 課長にどうかと打診をしても従業員の方から辞退されるケースがあることから、会社 としては本人の意思を尊重しつつ対応していくことにしている。 <主な意見交換> 【Q】様々な分野に展開していくにあたり、それを担う人材確保が課題だと思うが、外 部人材を採用する、内部育成をする、あるいは事業部門ごとM&Aをしていく等、ど のような方策を考えているか。    また、人手不足と言われる中、人材確保の課題はなにか。 【A】中途採用も行っているが、研究開発部門は現場に近い分野での研究を行っている ことから、中途採用やM&Aというよりは、新卒を採用して育成する方法が適当と考 えている。 また、高校を卒業して県外に進学した若者にいかに地元に戻ってきてもらうかとい うことが課題。福井県では県外に進学した学生のUターンを積極的に支援しており、 当社も協力したいと考えている。 【Q】IoTとか言われているなかで、更にITを活用した事業展開を考えているのか。 【A】現在はPCを活用し、ネットワークを介して企画・製造し、販売するという事業 を行っており、それをしっかりと軌道にのせていきたい。さらには、スマートフォン を利用した衣服の注文というのが考えられるのではないかと思っている。 【Q】女性の勤続年数が、男性より高い理由は何か。 【A】福井県全体として共働き率が高いことが挙げられる。また、弊社では以前から育 児休業制度を設けており、お互いに助け合うこととして、制度を利用しやすい雰囲気 が出来上がっている。 【Q】従業員の年齢構成をみると40歳代から50歳代の社員が多いが、何か採用方針や 業態の変化があったのか。 【A】経営状況が非常に厳しい状況があり、工員の雇用確保を最優先とし、それ以外の 社員に早期退職を募った時期もあったと聞く。また、現場を担う人材の確保を優先し た結果、男性を多数採用したということがあったのではないかと考えられる。 【Q】事業の変化に伴い、人材面で工夫したことはあるのか。 【A】事業の変化スピードに人がついて行っていないというのが課題。管理職の考え方 を変えることが重要であり、他社の経営者など外部有識者による講演を行い意識の改 革を図るよう取組を行っている。 また、外部の教育機関を利用することを検討している。 【Q】新たに展開しているITを活用したオーダーメード型の衣料に関して、1着が高 額で、高い付加価値を生み出していると思うが、今の価格のままでは買い手がいない 場合には、コストを削減して、価格を下げる工夫を行うのか。 【A】価格が高いか低いかはお客様の価値観であり、かえって高い価格の方が売れるこ ともあるのではという考えもある。価格を下げるということではなく、しっかりした 製品を、それに見合った価格で売っていくということが重要であると考えている。 【Q】事業展開に際し、企業統合を進める中で、企業間の労働条件や労使関係などにつ いて、どのように配慮されたのか。 【A】労働条件については、当社よりも条件が低い企業が多かったが、当社よりも労働 条件が良い企業もあり、労使交渉を行い、労働条件や処遇を見直した。現在の労働条 件は、ほぼイコールとなっている。 【Q】新たに展開しているITを活用したオーダーメード型の衣料に関して、デザイン、 色など組み合わせの自由度がかなり高いが、何十万もの色や素材などの組み合わせを 選ぶのは難しいと思う。「お客様にはこれが一番似合う」というようにサポートする人 材はいるのか。 【A】当社には30名のデザイナーがおり、販売ではコンシェルジュ的な人材が3名いる。 今後、コンシェルジュのような人材を養成したいと考えている。そのためにも女性の 方の力が必要と考えている。 【Q】事業の思わしくない繊維会社が、御社のグループとなった後、付加価値を伸ばす ことが出来たとのことであるが、それはなぜか。 【A】不採算事業を洗い出し、それを辞め、強いところだけを伸ばした。社員の意欲と、 継続した取組によるものと考える。承継を受けて3年目から黒字に転換し、現在では、 単体を超える利益を上げている。 【Q】月の平均残業時間が10時間は少ない方であると思う。単純に労働時間のみを減ら すとアウトプットの質・量も下がるのではないかと思うが、どのような業務効率化や 労働生産性向上策を行っているのか。 【A】例えば、機械から機械までの動くリードタイムの短縮に取り組み、目視検査も当 社独自で自動検査装置を作成し、省人化した。省人化した分、忙しい他のラインに人 材をつけた。その結果、時間外労働時間が過去に比べると少なくなってきた。 【Q】女性の活用をどう考えているか。 【A】女性の活用は、当社でも大きな課題と感じている。まず、今年は意図的に女性を 多く採用した。能力のある女性に課長の話をして、断られたことがある。再度依頼し たところ、子育ても落ち着いたので、課長を引受けてくれることになった。女性が本 当に幸せで働ける会社をまず目指したいと考えている。   また、女性にしか出来ないような目線の仕事を作りたいと考えている。個人的には 女性チームによる企画開発などを行いたいと考えている。    年に1度、社員全員にアンケートを行っており、今回、女性社員に「管理職になり たいか」という質問項目を入れた。その結果を踏まえて女性管理職の目標数値を決め たいと考えている。    【Q】今後、高齢者が増えていくが、高齢者の活用についてどのように考えているのか。 【A】高齢者の雇用については、前回、8割の継続率であった。引き続き現場で活躍し てもらいたいと思っており、若手の育成を期待したいと考えている。 【Q】海外展開を担う人材をどのように確保していくか。 【A】海外には57名の社員が出ているが海外の交替要員の育成を養成しなければならな い状況であり、会社の課題と考えている。