平成25年度第1回産業労働事情懇談会議事概要 日時: 平成26年3月13日(木)15:30〜17:30 場所: 厚生労働省省議室 テーマ: 企業における人材育成・人材マネジメントの現状と課題 招聘企業(業種): コンサルティング業 <会社概要、人材育成・人材マネジメントの考え方> ○ 非常に限られた国以外にはどこへ行ってもオフィスがあるというグループ。日 本法人職員は1,300人程度(国内のグループ全体では4,000人程度)で、Manager (一般の企業の課長職に当たる職員)以上の職員とそれ以下の職員(staff)の比 率が46対54と、管理職に当たる職員が多い。Manager以上の職員はかなり高い 専門性を持っている。 ○ 行っている業務は、例えばM&Aの契約支援などの「ディール」と呼ばれるサー ビスとコンサルティングサービスである。コンサルティングの流れとしては、戦 略コンサル、ビジネスコンサル(プロセス改革などの設計、デザインなど)、IT コンサル、IT保守・アウトソーシングとなるが、当社の得意領域は、戦略コンサ ルからビジネスコンサル、ITコンサルの上流(システムデザイン)までである。 ○ 具体的なビジネスの例を挙げると、日本の企業はアジアを中心に海外に出てい るが、海外の企業を買った後、1+1を2以上にするためにどうやって統合してい くかが問題となる。そういうところに我々が入って、コンサルティング、会計、 税務などのハイスキルを持って、更に言葉の壁を埋めるという形でサポートして いくというのが我々のビジネスモデルである。 ○ このため、1,300人いる組織のうち、2割程度は海外のどこかで仕事をしている。 ○ 必要な人材スキルとしては、コンサルティングスキル、グローバルスキル(グ ローバルな人々と英語でビジネスができる)、コラボレーションスキル(税務、 会計などの他の専門家ともコラボして、どんなお客様でもハッピーにしていけ る)の3つと考えている。 ○ こうしたスキルを持った人は、どの業界でも引っ張りだこで、終身雇用の会社 に所属しているという感覚よりも、こういう業界に所属しているという感覚の方 が強いため、流動性が高い。こうした人材を会社に引きつけておくためには、適 切に評価し報酬を払うということは重要だが、自分がやりたいと思うことができ る、それを一緒にやってくれる人がいる、会社のカルチャーが好きだ、会社が持 つネットワークの中で自分がもっと成長できる、といったところに魅力を感じる 人が多い。彼らは、会社の上司ではなくお客様をみており、お客様が評価してく れればどこでも仕事ができると思っている人が多いため、会社としては、お客様 にサービスをするためのいかに良い環境が提供できるかが重要と考えている。 ○ OBは非常に大事で、定期的に連絡をとり、希望があれば2度でも3度でも 帰ってきてもらって良いという話をしている。 <主な意見交換> 【Q】 コンサルタントは、いわゆる正社員、期間の定めがない雇用か。 【A】 コンサルタントは全員正社員。特に期限の制限はない。 【Q】 新規学卒者(以下、「新卒」という)の採用はされておられるのか。また、中   途採用は、新卒に比べてどれぐらい採用しているのか。 【A】 今、新卒採用にかなり力を入れ始めているが、まだ少なく、数十人というレベル。   中途採用、経験者採用者の割合のほうが大きく今年は200人程採用する予定で、   新卒は30人ぐらいである。 【Q】 新卒採用に当たって、重視するポイントは何か。 【A】 英語による会話力、ロジカル・シンキング(物事を順序立て、仮説を作り、そ   れを検証する)などをみる。その上で、一緒に働いていける、お客さんのところに   連れて行ったとき活躍が目に浮かぶ、といった学生を採用している。 【Q】 人材の確保・育成方法について何か変化があるか。 【A】 新卒は非常に優秀なポテンシャルを持っている人間が多く、200〜300人採れれ   ば良いが、そこまでの規模の候補者がいないし、新卒は手取り足取り先輩が教える   必要があり、現在のところそれができるのは30人といったところ。試行錯誤しな   がら、できるだけ多くの優秀な学生を採用・育成していきたいと考えている。 【Q】 コンサルタントの専門性というのは、どのような区分になっているのか。 【A】 当社の組織はマトリックス型で、縦が金融業、製造業といった産業、横が会計、   IT・システム、戦略といった具合。例えば、金融業の会計、IT・システム、戦略   とやる人もいれば、戦略を金融業、製造業などいろいろな産業でやる人もいる。 【Q】 そのような区分の中で1人転職すると、そこを埋めるための中途採用というの   はどのように行っているのか。 【A】 採用の方法にはいくつかのパターンがあるが、懇意にしているエージェントに   欲しい人材を伝えておけば、適宜、紹介してくれる。やめた人とぴったり合う人   を採用するのは難しいので、それぞれの分野にそれなりの人数を配置し、優先順   位を付けながら採用している。 【Q】 若い人たちの人材育成の責任は、各部門長、人事担当のどちらが持っているの   か。 【A】 育成プログラムの提案は人事担当が行うが、人材育成は7対2対1、7割はオン・   ザ・ジョブの中での経験、2割はコーチングやメンタリング、最後の1割は研修   だと思っている。やはり、主体は現場であると考えている。 【Q】 新卒後、育成し、独り立ちして会社に貢献できるようになるポイントは、どんな   所にあるのか。 【A】 新卒については育てる責任があると思っているので、丁寧に教えていくが、実       力の世界なので、数年で年収に差が付いてしまう。そうすると自分は合わないのか   なと辞めていく者はいるが、基本的に新卒で入った者は見捨てないで教えていくよ   う努力している。    入社時から病院のコンサルティングをしたいというように決め打ちしてくる学生   の場合、希望以外のプロジェクトに配属しOJTをしても、全くモチベーションがな   く、なかなか伸びないこともある。どこでも良いという子はどんどん吸収していく   ので、あっという間に抜かれてしまう。    ただ、新卒は粒がそろっているので、あまりそういうことはない。中途採用者の   場合は専門性をお持ちなので、そこから広げていくというのはチャレンジが必要で、   当初はいいが、伸び代がどのぐらいあるかは当人の考え方によるかと思う。 【Q】 最近、新卒の人の採用に力を入れはじめているのは、中途採用よりも伸び代が   あると見ているためか。 【A】 そのとおり。高い評価を獲得している者は、新卒入社の者が統計的にも多いこ       とが言える。また、真っ白な状態で当社に入ってきて、当社で育っていく人が社内   に一定割合いることで、当社のカルチャーが決まるのではないかと思っており、組   織の強さを生む背景にもなると思っている。 【Q】 人事の方針は、何十年も先のことを考えて決めているということか。 【A】 我々自身、この会社が好きで、我々が出ていった後に、この会社のカルチャー   を大きくしていくことを託したいと思える人に入ってきてもらって、上がってきて   欲しい。そこも考えて採用している。   【Q】 コンサルタントの働き方、プロジェクトの進め方はどのようになっているのか。   また、料金(フィー)はどのように決まるのか。 【A】 コンサルタントの働き方は、基本的にはプロジェクトという単位で、現場を統   率するリーダーはマネージャー職、どれだけのスタッフをそこに投入するというよ   うなことを決めるプロジェクトの実行責任者のはパートナー(役員)である。人事   において、それぞれのコンサルタントのスキルセットを細かく分類したデータベー   スを作っており、それを用いて候補者を選び、プロジェクトのマネージャーがイン   タビューをして、プロジェクトのメンバーを決める。    フィーの考え方には幾つかのパターンがある。フィックス・プライスと呼ばれる、   最初に値段をお客様との間で決め、そこにその値段に見合った人員を配置するもの、   海外で多い契約は、どのぐらいの時間をそのお客様に対して使ったかというTime   and material(T&M)と呼ばれる方式、また、成功報酬型もある。根本にあるのは、   それぞれのメンバーが1時間当たりの単価を持っていて、それに時間数を掛けて   フィーが決まってくる。逆に言うと、自分の単価は1時間いくらだから、それに見合   うバリューを出したか、メンバーもそこを直接的に理解できるメリットもある。   【Q】 コンサルタントに対する報酬はどのように決まるのか。 【A】 プロジェクト終了後に担当パートナー、マネージャーがプロジェクトの評価を   して、その評価を積み上げて、期間評価がコンサルタントたちに与えられる。   スタッフレベルの評価をするときは、マネージャーが集まって、本当にその人がどう   いう結果を出したのか、どのレベルの行動をしたのかを話し合って決めるというプロ   セスを取っている。その評価の指標は、クライアントから評価されているかどうか   なので、上司が評価しているというよりは、クライアントが評価していることに近   く、非常に納得感が得やすいかと思う。職位と評価でボーナスが確定する仕組みに   なっているので、特定のプロジェクトで多くの成功報酬を得たからといって、それ   をプロジェクトメンバーで分配するような直接的な報酬の結び付きはない。 【Q】 中途採用について、独自の採用選考の基準なり手法、例えばコンピテンシー面   接のような手法を用いているのか。 【A】 中途採用で、スキルセットを予測して採用するのが非常に難しい。新卒に比べ   ると当たり外れが多い。外れが一番少ないのは社員からの紹介による入社である。   しかし、エージェントからの紹介や公募の場合、面接、履歴書、職務経歴書では見   抜けないところがあるため、ある程度のリスクがあるのが現状。若手の中途採用は   コンピテンシー面接がある。シニア層ではやっていないが、前職の経験が正しいの   かどうか、リファレンスをとるということはやっている。 【Q】 中途採用において、ドメインはかなり特定しているのか。 【A】 基本的にはドメインを特定して募集をかけている。インダストリーを軸に募集   をかけることもあるし、戦略、会計、ITといった軸で募集をかけることもある。 【Q】 御社では、人材に関するコンサルティングサービスの機能を有しているのか。   有しているとすれば、どういうサービスのニーズが多いか。 【A】 当社にも、人材に関するコンサルティングというドメインがある。昨今は、グ   ローバル人材マネジメントの引き合いが増えている。買収した会社と、人事制度、   評価制度をどのように統合していくかというコンサルティングが増えている。また、   人を配置するに当たって、候補となる人材がどこにいるのか、どんな経験を積んで   きて、どのようなスキル・資格を持っているのかを一元管理するというニーズも多   い。 【Q】 海外には多くのローカルの職員がいる中、わざわざ海外へ日本人を送るのはな   ぜか。 【A】 英語でコミュニケーションができても、本当に細かい機微というか、例えば、   「もう少し何とかならないか」というようなことが、日本人が1人いるだけで成立   することがある。日本は日本の独特の、イギリスはイギリスの独特の何ともいえな   いものがある。その痒い所に手を出せる我々をお客様は選んでくれるケースがとて   も多い。 【Q】 流動性の高い業界ということで、人が移動することにより、社内のノウハウや   顧客が他社に取られるということはないのか。それを守る方策を講じているのか。 【A】 この業界では、10年前、20年前にスタンダードであったやり方は今ではほとん   ど通用しないというように非常に速くスキルが進化しているので、どんどん新しい   技術をつくって世に出していかないと難しい。ノウハウは一時的に流れてしまって   も、過去のノウハウにあまりこだわっていると、なかなか前に進めない。    顧客については、同業他社に行って当社の顧客を何年間取ってはいけないという   契約になっているので、モニタリングをして何かあったら対応する。根本には、   我々は業界の中で生きていくという感覚があるので、自分の評判を落としてまで、   それをやるというケースは少ないと思う。 【Q】 企業が期間限定プロジェクトを立ち上げたときに、会社の中にいない専門家を   期間限定で呼んできて働いてもらうということは実際にあるのか、ご存じであれば   教えて頂きたい。 【A】 自分で雇うより会社対会社で委託契約を結ぶ方が、やめられてしまうリスクと   か雇ってみたら期待通りではなかったというリスクを排除でき、リーズナブルだと   思う。日本の企業は、まず人を集めて、ここでできることをやろうということで   やってきたが、最近は、自分たちでやるべきところ、外にお願いするところの切り   分けが徐々にうまくなってきているように思う。 【Q】 時間外労働について、どのように処理をしているのか。 【A】 スタッフレベルはもちろん残業対象なので、年俸の中に、コンサルタントの場   合は50時間のみなし残業の金額を入れており、残業が50時間以下であっても支払っ   ている。残業が50時間を超えたら、その超えた分も付けている。我々は時間で   働いているという認識は余りなく、できる人間なら1時間でできることができない   人間は一生かかってもできない。みんな成果を目指して働いていくというメッセー   ジとして、みなし残業時間の制度をいれている。    今は正直、スタッフはたくさん時間を使った人の方がたくさん給与をもらえるこ   とになってしまう。その部分に対して、是非御配慮というか、裁量労働的な御配慮   を頂けると非常に有り難い。