平成24年度第2回産業労働事情懇談会議事概要 日時 平成25年3月12日(火)15:00〜 場所 厚生労働省省議室 テーマ:構造変化の中での企業経営と人材の在り方について 参加企業(業種):製造業 <会社概要、企業経営や人材育成の考え方> ○現在のコアは医療用医薬品事業。 ○競争力の源泉として、人が重要。新卒採用では、当社と価値観を共有している人を中心  に採用。今後の社員バランスを考え、継続的かつ安定的に採っていきたい。不定期採用  は即戦力を求める意味合いが強い。 ○入社初期の経験がキャリアにとって重要と考え、入社時研修と3年後の研修があるほか  、管理職研修も対象者は全員が受講。 ○従業員の約83%が正社員、約17%が契約社員。職域を限定した無期雇用型の嘱託社員の  活用も検討課題。従業員の高齢化の中で、生産に関しては、体に負担のかからないよう  な技術革新や技術の導入、技術要員の確保も課題。 <主な意見交換> Q 20年前、30年前と比べ、売上げにおける一般消費向け事業の比率とコア事業の比率はど  れぐらい変わったか。事業を売って、従業員の方はどのようにしたのか。 A もともとコア事業を始めてから伸びが順調にあり、分離する数年間は明らかにコア事  業のほうがボリュームがあった。従業員の方は、新しい展開の中でより発展的な分離と  なり前向きな形で御理解いただいたと思う。分離事業の従事者は新会社に移った。 Q 研修や教育訓練、それに対する課題があれば教えていただきたい。  A 人事部が主体の研修と、生産部門や営業部門などがそれぞれでやっている研修がある。  人事部では入社時の研修、3年目の研修、一般職から管理職になったときの研修を行っ  ている。管理職の中でも新しくラインマネジメントに就いた人には評定者研修を実施し  ている。32歳、52歳、57歳のときにキャリアに関する研修を実施している。  課題としては費用の問題もあるが、人材育成の研修、ハラスメントや労働時間問題の研  修は確実に実施している。次世代リーダーの育成研修は、選ばれなかった方のモチベー  ションの低下も考慮しながら、進めなければいけないため、これから検討して考えてい  きたい。 Q 高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの継続雇用が義務化されたが、継続雇用の  社員の方の技能の保持や若い方への技能伝承の問題についてどのように考えているか。 A 当社でも技術の伝承が問題になったことがあり、独自のノウハウがあることが分かっ  た。  技能と経験に基づいた判断、コツやノウハウ、人脈などがあり、役職定年後どうやって  技能を後輩に伝えていくか、役割の1つとして認識してもらっている。 Q 定年前後で働き方、勤務時間、賃金水準はどう変わるのか。高年齢者雇用安定法改正  への対応で、賃金カーブ全体を見直したことはあるか、新卒採用に何か影響があるか。 A 役職定年で55歳になると役職はオフされるルールであるが、現状は徐々にそれが崩れ  ている。若手に対する期待も含め、きちっとルールを決めてやっていかなければいけな  いのが今の課題。60歳で定年後は、本人の希望とマッチングできれば契約社員として受  け入れる。週3〜5日。賃金カーブは、誰がどの時期に定年になるか、再雇用の希望も  考慮にいれながらみている。新卒採用との兼合いは、高齢者がこうだから新卒はこうと  いうよりも、必要なところに必要な人材がいるかどうか、というのが中心的な考え方。   Q 定年で辞める場合と定年以降も働き続ける場合では、後者が生涯手取りは増えるのか。 A 当社の場合、例えば定年前のコース選択は、まだ導入していないので、後者の方が多  くなる。   Q 地域雇用の創出において、優秀な優良企業がどういった所に来てくれるかのヒントを  お聞かせいただきたい。 A 当社にとって効率的でありかつ事業が成り立つとすれば、そこに新しい会社を作り雇  用創出などで貢献できないか、と考える部分はあると思う。   Q 新卒者のうち女性を3分の1採用しているなど女性の活躍推進の御社の現状、あるいは  取組のスタンス、今後の課題を教えていただきたい。 A 女性管理職の割合は、管理職級が約3%、ライン長は約2%では非常に少ないと認識。  就業環境の整備が当然まずあり、あとは女性がそれなりの意識を持ち、現在の男性管理  職の考え方を、女性の育成を促進する考え方にしていかなければいけない。  女性の環境整備に関しては出産後、離職する方がほとんどおらず、育児休業制度、短時  間制度がわりと充実している。育児では男性の育児休業を次世代育成の行動計画に盛り  込み、男性の育児休業の取得が若干増えてきている。 Q 契約社員はかなり増え派遣が減っているのは、高齢者の雇用延長による要因だけか。  片や派遣が減っている背景などを教えていただきたい。正社員と契約・派遣で業務内容  が似通っている部分があるのか、それとも完全に切り離して特化したもの、若しくは専  門的なものを契約社員などにしてもらっているのか。今後の非正社員比率の方向性につ  いてお聞かせいただきたい。 A 契約社員の増加は、製造の現場の生産量アップや定年後再雇用もあるが、数年前に派  遣社員の活用が社会的に問題になり、少しでも契約に疑念が持たれるような場合は直接  雇用に切り替えた。  契約社員(有期雇用)の次のステップとしては、無期雇用、正社員への登用制度をどこ  まで拡充するかが課題。正社員比率が、どの辺のバランスが一番良いのか、企業の経営  の中で探っていきながらの判断になると思う。 Q 外国人社員はどの程度いて、どういう仕事をしているか。採用ルートは国内留学生が  多いのか、海外から引っ張ってくるのか。優秀な外国人が日本で活躍するためにネック  になっているものがあるとすれば何か。国の制度、企業の中での取組、その両方からお  伺いしたい。 A 外国人社員は5名程度である。海外での通訳や技術を持った社員を雇っている。ほとん  ど不定期採用で、必要となったときに、そういう人材がいるところをあたる。当社は製  造販売のマーケットが現在は日本であり、かつ、国内工場を充実させているので、ほか  のメーカーとは目的がちょっと違ってくるのではないか。  優秀な外国の方がどのように働くかは、国の制度がどうかは我々の事業にほとんど関係  なく、就業環境ではないか。期待している仕事内容は何で、それがきちんと任せられ、  彼らが意見をはっきり言えて、職場の協力体制が揃っていれば、能力を発揮できるので  はないか。   Q 定着率や勤続年数が日本と中国とで違うと想像するが、現地の方の処遇、あるいは教  育訓練での御苦労や工夫を教えていただきたい。 A 管理職の登用は気を使うが、登用の理論をしっかり持っておけば大丈夫だと思う。  中国の方は自分の成長が第一で、教育は力を入れなければいけない部分。日本研修は  期待が高く、2年ぐらい前から中国のグループ会社合同の日本研修を始め、当社がどの  ような考え方をしているか、中国で製造している製品が日本でどういう形になり、どれ  だけ患者様に貢献しているかなど、理解するための教育をしている。  処遇は、基本的には日本と同じような考え方に基づいた処遇、給与の上げ方を考えてい  る。  定着率については、うまくモチベーションを持たせ、頑張ったらここに行けるというと  ころを見せながら、いく方法しかないと思われる。 Q 中国などの流動性の高い社会は負の側面もあると思うが、解雇しにくいのか、もっと  解雇しやすくしなければ企業経営は成り立っていかないのか。  契約社員は、基本的には5年経過後は無期に移行するという考え方なのか。無期になっ  たときに、今の正社員と違った賃金テーブルとか、処遇とか、違ったグループを形成す  るのか。 A 解雇については、解雇前提で考えることはない。できるだけ能力を発揮してもらい、  チームとして協力してやっていくことが前提。問題は、本人がそれに同調できない、そ  の考え方にそぐわない、能力を発揮しない、ルールを守らない場合は、解雇というか、  違う道を選んでいただくということはある。  5年後の無期移行に関しては、まだ会社の中で決まっておらず何とも申し上げられない  が、解雇前提ということは全くないのではないかと思っている。まず契約の初期の段階  で、当社の考え方と期待に合っているかの見極めを、もう少し厳しい目でしていく必要  はあるのではないかと思う。