平成24年度第1回産業労働事情懇談会議事概要 日時 平成25年3月8日(金)15:00〜 場所 厚生労働省省議室 テーマ:構造変化の中での企業経営と人材の在り方について 参加企業(業種):製造業 <会社概要、企業経営や人材育成の考え方> ○経営の方針は、品質と信頼性を追求し企業価値を最大化すること。 ○「選択と集中」の考えにより、関係会社の統合やM&Aなど経営構造改革を実施。 ○先進国以外の市場での販売・サービス体制の拡充が重要。日本に軸足を置いたグローバ ル化を展開。 ○日本国内のグループ会社やサプライヤーに開発や生産技術力をトランスファーし、全て  が成長するというバランス経営を実施。 ○従業員は全国採用と事業所採用。求める人材は、ものづくりが好きなこと、チームワー  ク、ガッツがあること、タフであること。企業の価値観を植え付け、機能のプロフェッ  ショナルを育成。 <主な意見交換> Q 円安傾向が御社の業績及び雇用に与える影響はどのようなものか。 A 為替に一喜一憂せず為替変動に負けない体質を作ってきている。海外の需要のある所  に生産拠点を作り、そこで物を組み立て、現地の需要のある所へ供給する。日本から  ノウハウを供給、指導していく。 Q 専門性のある社員は、特定の事業所、部門などに配置するのか。それとも、事業所や  部門間をグローバルに横断的に動くのか。 A グローバルに横断する。人事を司っている各機能が様々なところに横断的に移動させて  いる。それを本社の人事部が更に統括し、最適な人員配置をしている。 Q 4月1日施行の高齢者雇用安定法への対応はどうするのか。 A 一般の組合員は希望があれば全員再雇用する。管理職は一部段階的に再雇用していく。 Q 再雇用を見直す際に、60歳前と65歳の後の賃金水準変更などの対応はしているか。 A 賃金水準は、現役のときから役割も変わるので、仕事に合った形で変えている。賞与  は、今回改正に当たり正社員と同じ業績連動を導入する。60歳前の賃金カーブ是正は  行っていない。 Q 海外での人材の育成について、定着率や他社への引き抜きなど、能力開発でどういう  苦労があり、工夫しているか。 A 雇用慣行が全然違うことにより定着率は日本に比べれば劣る。経営の現地化を図るた  めトップを現地の人にして、将来的に、現地人でもトップになれるのだと目標を持って  もらう。  労働条件の整備として、同業の競合をベンチマークして競争力のある報酬水準の設定、  非正規社員の登用、製造現場における技能者の専門性の評価を行っている。福利厚生面  では、昼食面の工夫や、日本のように年金や団体保険の制度を導入している国もある。  海外で労働紛争やストなどはコミュニケーションに起因すると考え、定期的なコミュニ  ケーションを図り、工場の開放デー、ファミリーデーを実施し社員の家族も当社グルー  プで働いているという気持ちになってもらう工夫をしている。  海外現地法人から代表選手が、グローバル技能競技大会や、グローバルQC大会へも参加  している。 Q 一方で、キャリア開発は社員自らの手でという哲学であり、スキルの獲得は自立・自  走が基本とのことだが、これはどういう考え方か。研修体制は非常に充実をしている  一方で、また、研修を断る社員はいないのか。 A 自立・自走の意味は姿勢を問うているもので、積極的に行くという姿勢を持った社員  を育てる。普段の上司と部下とのコミュニケーションで、教育体系を示しつつ、キャリ  アアップのためには、こういう知識や経験が必要との話をしている。 Q 世界の中で、更に日本国内も含め、立地の競争力はどういうお考えの下に展開を進め  ていらっしゃるのか。今後の方向はいかがか。 A 全ての機能を移すのではなく、移せるものは移す。教育の機能は、工場を取り壊し研  修所をつくった。地域活性化もしながら全世界の教育もそこで行う。  組立工場は海外、需要のある所につくる。他社と差別化を図れる部分は日本一極集中生  産を行っている。災害時の危険性をはらむが技術をそこで蓄積できる。世界へ分散して  しまうと肝のところができない。また、日本のサプライヤーは非常に力のある企業がそ  ろっておりそれが一極集中生産を可能にし、優位性を維持・向上できる1つの源泉にな  っている。 Q 企業理念について、外国人の方に受け入れられやすい部分、受け入れてもらいにくく  アレンジする部分はどのような点があるか。またどのようにアレンジをするのか。 A 日本語の企業理念を直訳するとその中身が全く通じないので、海外の分かりやすい例  で置き換えている。海外の責任者、主管者が責任を持って、日本からの駐在員がその対  応をしている。 Q 日本に軸足を置いてグローバル化を進めているとのことだが、日本企業なり人材とし  ての日本人の強みは何か。 A 海外では開発が一番で生産技術者はステータスが低いが、日本では開発と両輪を成す  職種だと見ている。工場の中でノウハウを生産技術者が蓄積して、更に国内工場のノウ  ハウも高まり現場力も付く。それを生産技術者が海外へ行ってトランスファーしてくる  と更に海外もよくなるという循環をつくり出しているのが生産技術者で、多分取替えが  利かないところではないか。 Q 期間契約の方の割合はどのぐらいか。 A 間接で言うと約1割。基本的に大体上位10〜15%は優秀者を半期毎に登用しており入れ  替わりもあり、期間が来たらそこで満了の方もいる。弊社の場合、基本的に2年11か月  で正社員に転換できなければ契約は終わりという運用をしている。それまでに何とか頑  張って正社員になってほしいということで、全てに対して門戸は開けている。 Q 海外の方の働き方と必ずしも同じでない文化を入れようとしたときの摩擦は、どのよ  うな感じか。 A 日本型の雇用慣行を海外へ移植するつもりはなく、海外の現地人をトップに据えてい  る。人事部門も、人事部長、総務部長は海外の人間を配置している。  このため、当然、その土地、その国に合った雇用慣行、制度があり、海外に合った形で  賃金制度は構築し、コミュニケーションなどで少し補填をしている。 Q 現地の方が務めているというトップや総務部長などを含め現地の方の採用活動はどの  ように行っているのか。 A 基本は現地人の総務部長なり人事部長が現地の方法で採用している。どういう形でど  ういう採用をやっており、労務的な問題でどのような問題が存在しているかなどの結果  は日本人の駐在員が毎月レポートで本社の人事部に上げ、何らか問題があると判断すれ  ば、本社で対応している。 Q 団塊の世代の方も65歳になり再雇用も終了する中で、技能継承が本格的に問題になる  という見方もあるが、技能継承問題についてのお考えと取り組んでいる課題はあるか。 A 2006年、2007年ぐらいから問題になり、ベテラン層がいなくなって、団塊世代が退職  になってできるのか議論された。現状では、ベースを底上げする部分については、各工  場に技能トレーニングセンターを設置し、若手に定期的に訓練を施している。  2008年に高度熟練技能者を育成・認定する制度(マイスター制度)を作った。社内の全  ての技能分野に対して全て技能ランクをつくり、全て各技能の職種ごとに5ランクつく  り、最後の5ランクを到達すべき内容とした。どういう人をそこへ持っていき、何が足  りないのか、教育の内容も決めている。  現場の長並みの手当を付けている。高度熟練者の後継者づくりとともに、一般の底辺の  底上げの教育も担っている。 Q 再雇用の高齢者の方はどのような役割、仕事内容なのか。 A 基本的に、製造現場の方は元の仕事を、スタッフ系の管理職を含めた管理職スタッフ  の方は後進の指導をやってもらっている。若手を育成しなくてはイノベーションを起こ  せず、再雇用のベテランにその役割を担ってもらう。65歳以降の管理職の再雇用者は原  則ラインから外れ、前述の若手育成等の業務にあたってもらう。 Q 若年層採用の問題をどう考え、若い人と高齢者の仕事のマッチングをどのように図っ  ているか。 A 今回の再雇用制度構築に当たって高齢者と若年者の関係を一番考えた。若年層の雇用、  採用に影響を与えてはいけない。今回、一般社員は65歳まで希望すれば全て再雇用にな  るので、今後も多分、若年層の採用にいかに影響を与えないようにするには、会社の業  績を安定させいくかが、ポイント。業績が良くなければ、若年層採用と再雇用のバラン  スを保つということが困難になるので、ステークホルダーとのバランスも考慮しつつ  自社も成長し、雇用も確保していくという考え方である。