第3回産業労働事情懇談会議事概要 日時:平成24年3月8日(木) 16:00〜18:00 場所:中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室 内容:今後の企業経営と雇用のあり方について 参加企業(業種):百貨店 ○議事  <会社概要>  ○2つの百貨店が2000年代後半に統合  ○百貨店事業、スーパーマーケット事業、海外事業などを展開  <雇用形態・人材育成等>  ○多様な雇用形態 (社員、フルタイム無期雇用で事業所間異動の無いM社員、短時間有期雇用のF社員、 Eスタッフ、Sスタッフ、アルバイト等)  ○有期雇用から社員への登用  ○女性の活用、育児制度の効率的な運用  ○教育メニューが掲載されている本の活用など雇用・人材の強化の試み  ○Eスタッフなど定年後再雇用の取り組み  <主な意見交換> ○社員、M社員、F社員などの形とその間の転換といった現在の形に変えたのはいつ頃  で、どのようなきっかけで現在の雇用形態の形にしたのか。 →M社員については、2000年位から月給制契約社員を採用していこうという時に、領域  別スペシャリストを作っていこうと考えたが、領域をまたぐ異動もあまりなく、店舗  の限定に変え、4年目以降無期雇用に変えている。企業としてのDNAを伝えていこう  という時に、入社数年で他企業に転職してしまうなどのケースもあり、そうしたこと  も含めて無期雇用にしていった。 ○2000年以前に採用されていた短大卒、高卒社員の方々は、現在どのような処遇になっ  ているか。 →2000年以前の採用者の処遇等は一切変えておらず、現在、社員としての格付け位置に  就いている。 ○2000年以前の短大卒、高卒社員がM社員を希望して移るケースはあり得るのか。 →ライフスタイルにより希望がある場合もあるかもしれないが、自己申告等で十分配慮  し、異動させないなどしているので希望受け付けは現在のところしていない。 ○外国人客の増加に対応して、外国人籍の採用は増えているか。  また、統合前の出身会社に関わらず、現在の教育体系、教育内容は同じか。企業のDNA  の伝承という話に関連し、それぞれのお店のカラーという点でお伺いしたい。 →外国人客の対応として、雇用形態としてはSスタッフなどで主に対応しているケース  が多い。教育体系について、現在は1つの会社として全く同じキャリア形成、同じ教  育を行っている。 ○統合前の雇用形態はどのように転換していたのか。  統合後、従業員全員にブランド別の基礎教育などを教えていくのか。また、統合後ど  の程度の人事交流をやっているか。 →旧A社の統合前の制度は、旧B社とほぼ同様で、呼び名が異なっていたり、4年目か  らの無期雇用という形態がない以外は、賃金の範囲などに若干の違いはあるもののほ  ぼ同じであった。同じ教育体系の中で、お互いに良いものを取り合いましょうという  ことで進めている。人事交流は、活発に行っている。 ○社員とM社員については、仕事の内容や責任の範囲が同ランクレベルでは、殆ど同じ  ような仕事や責任の範囲なのか。M社員の給与体系等は社員とどう違うのか。それを  踏まえ、M社員の間では、社員との給料の違いについてどのような考えを持っている  のか。  労働力調査等では、自己申告でパートや契約社員等にマルを付けることになっている  が、M社員は、契約社員や正社員など、どの雇用形態にマルを付けそうか伺いたい。 →入社後、最初は同じように教育して、店頭で販売をしてもらうところは変わらない。  大卒社員の方はキャリアパスに沿って早いタイミングで異動をさせ、店舗をまたいで  領域を変えたりしながら上げていく。一方、M社員は基本的に就いた所をベースに、  販売として能力を上げていくということで違いを設けている。その中でM社員は、担  当リーダーまでは上がる事が可能で、リーダーになると一定の手当がある。M社員の  優秀な人材は、社員の転換試験を受けるなどの制度もある。M社員については「社員」  という名前も付き、本人達の意識は自分達が店頭の販売を支えている、この会社はま  さに店頭の販売だという意識があり、自分達は社員に属しているとイメージしている。  特に4年目以降の無期雇用では社員意識がより強くなり社員にマルを付けると思う。 ○基本的には異動やキャリアパスが違い、それにより労働条件が変わってくるというこ  とで、お互いに納得しながらやっているという感じですか。 →社員はメンバークラスが、ある程度現場のリーダー格を担う人という設定にしている。  M社員の中にも、同じリーダーに就ける人がいて、事実上ここが上限。本給ベースで  は同じ役割をすれば上限は同じ。ただし教育体系などそこに至るプロセスが若干違う。  まだ完全には揃っていないが、基本的に揃えていきたいという意思は会社側としても  出している。 ○新卒採用の学生の入社時に、店舗へのこだわりがある方が多いのか、あるいは、領域  のこだわりを持つ人が多いのか。また、実際に新採用者に配置希望を聞かれるのかど  うか。 →学生の最終面接に出ると、Bブランドで働いてバイヤーになりたい等を希望される方  が主流。面接段階や内定した学生が企業に来るまでの間、何度か交流の場を設けて、  その中で本人達に色々な希望を聞く。学生の希望、特に店舗と職種についてはできる  限り叶えるようにはしている。 ○採用した大卒社員の中で、どういう人が伸びていく、成長していくのか。あるいは、  何が評価基準となるのか。 →採用については、おもてなしの心がある人、創造力のある人を採ろうなど試行錯誤し  ている。 ○シニアの方、60歳以上の社員をどのように活用されるのか。また、現在、労働協約で  一定の条件を設定している人は再雇用に応じなくてもいいことになっており、本人が  引っかかりそうだと思う場合は自ら身を引くので、結果として希望者全員という形に  なっているという話だったが、仮に法律が通って変わった後、社員の意識がそこで変  わることは懸念されているか。 →60歳以降の雇用というのは全ての部署でできるかというと非常に難しく、職務創造を  続けている。高齢者が集まる職場などが人気で、高齢者コミュニティーの中で人気職  場と不人気職場のようなものが徐々に出ているのが実態。  また、病気などで休む方は労働協約などを勉強され、極端な例では休職期間ギリギリ  になると急に復職して、暫くすると又休職に入る例もあり、これを企業が防げるかと  いうと、現ルールだとなかなか防げない。 ○海外店舗も含めたグループの企業理念を共有するために、どのような取組をしている  か。日本から海外へ転勤出向されている人は、どういう役回りか。現地従業員から見  たその方たちの評判はどうか。 →企業理念を推進する活動を、グループ全従業員でやることが非常に重要と位置づけて  いる。  出向者の役割については、基本的に一定の経営層以上をベースに置き、日本で部長職  の者が現地に行って取締役クラスになるケース、課長職の者が現地に行って部長にな  るケースが殆ど。  従業員の評判については、日本国内の出向も含めてそれぞれであり、現地から慕われ  る人間を入れていくということが、本社として責任を持ってやるべきことと感じてい  る。 ○特に専門的な職種もある中、なぜ派遣の活用をしないのか。  また、多様な雇用形態の中で、労働組合としてどの程度までパートや有期の方々を組  織されて、交渉の中でその処遇等について事項として上がってきているのか。 →百貨店で「派遣店員」と言われているのは、取引先から来ている方を呼ぶケースが多  く、派遣会社から人を供給してもらい、当社が直接派遣会社にお金を払っているケー  スは多くない。また、人材子会社を持っており、各化粧品会社商品を販売するショッ  プ部署では、その子会社に請負でやってもらう場合もある。繁閑期に合わせて学生服  部署などでは派遣を活用する場合もある。  労働組合組織化されている雇用形態としては、社員、M社員、F社員、Eスタッフも  組織化されている。  社員賃金は物価連動の計算式でベースアップが行われるような仕組み。パートまで含  め、社員と同様な労働条件の改善が行われるように、透明な仕組みでやりたいという  ことで労働組合と進めている。 <照会先> 政策統括官付労働政策担当参事官室産業動向係 03-5253-1111(内線7724)