第2回産業労働事情懇談会議事概要

日時:平成24年2月22日(水) 15:00~17:00
場所:中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室
内容:今後の企業経営と雇用のあり方について
参加企業(業種):総合商社

○議事
 <会社概要>
 ○事業グループが8つに分かれており、金属グループ、エネルギー事業グループが収益
    の柱
 ○「継続的企業価値の創出」を目指しており、経済価値、社会価値、環境価値の向上が
    ポイント
 <人材育成・各種制度等>
 ○多岐に亘る研修、特に力を入れているのが幹部人材の経営力強化の研修
 ○若手社員のグローバル競争力強化として、海外研修にも積極的
 ○ダイバーシティの推進の中で、海外人材の活力向上にも力を入れる
 ○母性保護・育児関連制度の充実
 
<主な意見交換>
○卒業後3年以内の新卒扱いの採用状況はどうか。
→企業に就職したことのない人については、新卒同様の扱い。数は多くないが門戸は開け
 ている。

○事務職採用の復活に関し、それ以前は派遣で対応されていたのか。
→17年前に事務職の採用を停止した後、分社への移管、アウトシーシング、派遣等で対応。
 現在事務職は約1,000人となり、派遣社員は約750人の状況。正社員として事務業務を継
 承する人材の確保・育成のため、今後、継続して一定数の新卒の事務職を採用していく
 方針。

○日本人・日本人以外の「一体のマネジメント」というのはどのような意味か。また、留
 学生の数の減少など日本人の若い人を捉えた場合の問題点など具体的な例などあるか。
→今まで本社で採用された社員の情報しか本社のデータベースに載っておらず、海外の拠
 点や事業投資先の社員は全く別管理だったが、一定のポジション以上の人材については、
 本社でも把握し、日本人も日本人以外も一体感を持った人材マネジメントをしていく方
 針。日本人の内定者あるいは新入社員は、短期留学も含めると約8割が海外経験があり、
 昔に比べて海外への憧れ等はそれほどないという印象。また、目標達成を是が非でもし
 たいという外国人のハングリーさは、日本の学生に比べると強いとの印象。

○外国人社員の採用、活用、定着という3段階について、特に最後の人材の定着の段階と
 いうのは、かなり難しいとも言われるが御社ではどうか。
 また、外国人社員の方々はどのような活用目的で採用しているか。
→定着の問題が一番の課題。活用に関しては、外国人だからといって特に扱いは変えず、
 その人の得意、不得意や、希望等を総合的に考えて実行。

○日本人社員はどのような地域への赴任を希望するのか。また、どのような仕事を希望
 する特徴があるか。
→一律ではないが、ハードシップが大変高い国というよりは、ある程度のcomfortable
 な環境にある国への赴任を希望している社員が多いという印象。仕事の種類では、よ
 り大きなプロジェクトに従事したいという社員が多い。

○ハングリーでガッツのある外国人採用の人と、日本人とではどちらの方が成長するか。
→国籍は関係なく、本人の素直さによる。いろいろな経験、就いた上司、与えられた仕
 事の環境で伸び方が決まる。必ずしも、このタイプだからこう伸びるというほど、簡
 単には言えない。

○経営マネジメント力を付けていけそうな人材というのはどういう人材か。
→若い時に小さいながらも会社の実質的な経営のナンバー2、あるいは社長の右腕になる
 などの経験をした人間は、視野が広がり、目線も含めてガラッと変わる。

○新入社員の入社時にグループのアサインはどのようにされているのか。また、一旦配
 属されたグループから別グループへの異動というのはあるのか。
→内定者時代に各グループの事業の説明等を聞いてもらい、配属希望のグループを個別
 の面談で聴取し、可能な限り、志望度の高いグループに配属となるように人事部が決
 定する。グループ間の異動は、チャレンジポストと称する社内公募制度等がある。

○グループ毎に利益の違いに伴い報酬比例のボーナスも変動があると考えるが、新入社
 員時、収益の高いグループへ行きたいなどという話はあるのか。
→報酬を業績に連動させて事業グループ毎に大きく差を付けるようなことはしていない。
 収益の高い事業グループの人気が高くなる傾向があるが、やってみたい仕事があるか
 どうかの方が重要視されている。

○従業員の最も働き甲斐のある報酬体系というものをどのように考えているか。
→やる気・やり甲斐に繋がるのは、組織における認知、将来こうありたいといった比較
 的長めのキャリアプラン等であり、こういう観点での上司との対話によるコミュニケ
 ーションが重要。成績に基づく報酬の変動はそれほど大きくない。 

○コミュニケーションのコストを考えると、比較的決まった形で昇級していくようなシ
 ステムの方が効率的なのではないか。
→重要なのは対話を定期的に繰り返すこと。そのきっかけとして目標設定し、それをレ
 ビューし、見直し、パフォーマンスを見て、ボーナスを決め、もう1回対話をする。
 ここに時間と手間をかけるが、これはダイバーシティの世の中になっていけばいくほ
 ど、大事になってくる。

○ダイバーシティという多様な人材、連結・グローバルベースでの共通の人材マネジメ
 ントいう中で、報酬体系がどこまで共通化されているものなのか。
→報酬体系は当社単体と連結先とでは全く別のもの。共通のジョブグレードのようなも
 のを導入し、連結先の職務グレードをこれに緩やかに対応させることで、一定層以上
 の幹部や候補の人材の管理をしていく。ジョブグレードに対応した給与、ボーナスの
 設計は国毎、或いは、会社毎にその国の労働事情等もふまえながら行っていく。

○グローバルに展開する中で、国によって報酬体系が違うという時に、それぞれの相手
 国の中での標準など研究しなければいけないのではないかと思うが如何か。
→人事コンサルティング会社がグローバルにサラリーサーベイを行っているのでそれを
 活用しながら、ジョブサイズ毎に国別水準を確認しながら、設定していく。

○嘱託社員(一般・出向)はどういう方で、どのような仕事を行っているのか。また、
 シニア層の再雇用の仕組みとどのような仕事を行っているのか。
→一般嘱託は契約社員のイメージであり、期間限定である分野の専門家を雇う場合はこ
 のステイタス。出向嘱託は、別の会社に原籍を持ちながら当社に出向で来る方々で、
 子会社、一部取引先から等様々。
 シニア層については、事業投資先の経営幹部、監査役というポジションで活用する人
 達と、ベテランとしての知見・経験を現場で大いに活かすといった、例えば、巡回経
 理や内部統制、監査といった分野の仕事がある。

○労使のコミュニケーションで、日本と海外でどう異なるのか。
→国により組合が強いところもあり、昔ながらの賃金交渉で、半年かけて交渉するとい
 う国もあれば、従業員組合そのものがなく、従業員代表とコミュニケーションするな
 ど様々。誠心誠意対応し、そこで解決策を見出だしていくということが基本線。

○キャリア採用者のキャリアパスはどのようになっているか。また、キャリア採用の今
 後の見込みを伺いたい。
→キャリアパスは、大きく2つあり、ある業界における専門家人材のようなタイプであれ
 ば、その畑の中ですっとやっていくイメージ。30歳前後の若手・中堅人材であれば、
 オールラウンドに活躍できるような素地をもった人材を採用しており、生え抜きの社
 員と同じように、多様な経験を積んで貰っている。
 キャリア採用の今後の見込みについては、向こう5年位は、年齢構成の歪さの解消のた
 めに毎年50名程度を採用する方針。

○非正規社員を正社員に転換するルートがあるのかどうか。また、制度としてあらかじ
 めアナウンスしているのか、それとも実態に応じてなのか。
→会社ニーズと本人の希望・能力を踏まえて、嘱託から正社員になった例があるが、プ
 ロセスとしては、原局から申し出に基づき、個別に進めており、本人意向も確認して、
 面接試験等を実施し、合否を決定している。特に人数枠を設けているわけではない。
 尚、バックオフィス系のケースだと、5年有期雇用の事務契約社員に対して、毎年社
 内試験を実施し、クリアした社員については、60歳定年を前提とした正社員に切り替
 わった例もある。

○日本の中小企業が例えば海外進出をする、海外に現地法人を立ち上げる、現地に工場
 を作る、現地の合弁会社を探すといったことに対する経営支援、コンサルティングサ
 ービスはしているか。あるいは金融支援、資金の融通、投資などをしているのか。
→以前は事業として手掛けていたこともあるが、現在は行っていない。

○両立支援制度は整備され、女性の従業員の方はそれについてあまり不満はないが、そ
 の他のキャリアパス面で、なかなか自己実現ができないところがあるとのことで、会
 社側としてそこをブレイクスルーすることなどあれば伺いたい。
→子供がいると長期の海外出張等は厳しいので、本人の希望に基づき、同じグループの
 中で管理部的な仕事に異動させるといった対応をしているケースはある。ただ、会社
 としてはそういう部署に全員移すわけにもいかないという面あり。本人としては入社
 時の希望とマッチしないキャリアになる点を、もどかしく思っている人もいると思わ
 れる。

○標準的には課長、部長、GCEO(営業グループのトップ)など、大体何歳位でなるのか。
 セレクションなどは、基本的には誰がやっているのか。また、上までいけない方はど
 うなるのか。
→チームリーダー(課長)が一番若くて30代後半、BU長(部長)が40代半ば。
 昇格については、基本的にはBU長になる手前までは所属する各グループが主導して決
 定し、部長レベル以上は全社で管理している。
 全員が部長になるわけではないので、部長に就かない人は、主には海外の拠点や事業
 投資先でのポジションに就くケースが多い。

○アセットマネジメント、バイアウト、ビジネスサービスのITなど業務はかなり専門家
 がいるのではないか。この方々の人事管理はキャリア採用で管理しているのか、新卒
 採用で別の特殊な管理か。
→基本的には事業自体はその子会社で行っているケースが多く、その子会社で専門性の
 高い人材を採用している。新入社員で総合商社を志望してくる人で、ITの仕事をやり
 たいという人はまずいないので、本体でそういう分野を担当する社員は、ITやコンサ
 ルティングといった業界からのキャリア採用者が多い。

○総人員が増加している中で、単体としては人が減っている。具体的にどのようなとこ
 ろが減ってきたのか。将来の見通しで見ると、全体は大きくなるけれども、更に単体
 はまだ絞り込むというイメージなのか。
→単体の人員数が減った大きな原因は、1994年を最後に新人の事務職の採用を17年間実
 施しなかったことと、2000年前後に、特別加算金を上乗せした早期退職プログラムを
 実施し、1,000人程の団塊世代の方々が辞めたというのが挙げられる。
 今後の単体の人員数の見通しとしては、現在の規模を維持するイメージを持っており、
 スリム化を図るといったことは考えていない。

<照会先>
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