第1回産業労働事情懇談会議事概要 日時:平成24年2月8日(水) 14:00〜16:00 場所:中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室 内容:今後の企業経営と雇用のあり方について 参加企業:未来工業株式会社 ○議事  <会社概要、企業の現状>  ○電設資材メーカー。製品数は約2万点。  ○創設当時の背景(劇団がルーツ)  ○創設時の理念「常に考える」。他が作っていないものを作る(商品の差別化)。  ○派遣社員やパートはおらず、全員が正社員。  ○社員の要望で勤務時間が短縮された。残業なし。  ○社員をやる気にさせる取組みの実施。創立記念旅行や地域活動を通じて。  ○育児休業や介護休業、70歳まで定年延長などの先駆的な導入。  <主な意見交換> ○労働組合の有無。賃金決定やその他労働条件を決めるプロセスはどうなっているのか。 →労働組合は無く、一歩先んじて経営側から提案するスタンス。昇給額は、新聞等で世間  一般の労働側、使用者側の意見を参考にし、初任給などは統計等を参考にしている。  昇級は他社より先にということで2月から。賞与は業績連動ではなく、年間で5.5か月分  支給している。 ○価格競争に巻き込まれない最大の勝因は何か。また、創業45年それを維持する秘訣は  何か。 →高くても売れる付加価値のある商品を作り差別化するとともに、品揃えを良くして、全  体が揃うようにしている。維持する秘訣は社員を大切にすることである。 ○企業の目標や目的は何か。企業とは誰のものか。 →所有という観点でいけば株主のものだが、価値を生み出すのは、働いている社員という  ことに尽き、社員が幸せにならないことには、何のために会社が存在しているのかとい  うことであり、とりわけ中小企業はそうだと考えている。 ○景気変動についてどのように対応しているのか。 →忙しい時には協力会社にも注文を出し、売上が芳しくない時には自社内だけで製造する  ことで調整している。協力会社には当社と100%の関係にはならず、いろいろな所にリ  スク分散しながら商売するべきと話している。 ○70歳まで働けるような環境や仕組みをどのように運用しているのか。 →70歳まで実際に高齢者がどのような環境を求めるかは未知数。当社には提案制度があり、  その中で高齢者からの提案が出てきた時に対応することで、長く働ける職場ができてい  くと考えている。 ○年齢構成はどのようになっているか。 →67歳の人が最年長者。平均年齢は43歳。日本の人口分布と同様に若年者は少ない。 ○70歳までに退職する人はいるか。従業員からの申し出は全て認め差別なしに運用してい  るのか。 →健康上の理由でリタイヤするなど退職者はいる。退職時期については、社員が自分の能  力や健康などを理解して、自ら悟ってリタイヤされるものと考えている。これは若い人  も同じで評価の問題。当社は年功序列体系で運用し、極端な評価はないが、社内の評価 (評判)はある。   また、能力開発の面では自助努力が大事。能力開発促進規程に基づき、通信教育、検  定費、資格手当等の費用は会社より支給しているが、本制度を使ってどこでも通用する  ような能力を自分で磨くことを奨励している。 ○市場開拓という意味で海外をどの程度位置づけているか。 →現在、国内だけで販売をし、まだまだ需要の開拓の余地はあるので、今後もその方向で  行く。海外へ進出の予定はない。 ○公的機関のものづくり訓練への考えを伺いたい。 →意識してポリテクカレッジ出身者を採用するということはしていない。結果として職能  訓練学校から入っている人もいる。あとは入社してからの育て方の問題の方がむしろ大  きい。 ○創業者の理念の伝承はどのように行っているか。 →創業者の話を社内報に載せる、QC大会での講話、新聞・雑誌の記事を社内で流す等、  会社からメッセージを出している。会社内の扉、蛍光灯なども具体的に考えさせるため  の材料になるように工夫をしており、「重箱の隅を突っついて人の教育」と言っている。 ○労働時間の短縮を推進するにあたり、企業へ説得力のある伝え方に苦慮している。関連  するお考えを伺いたい。 →経営者同士で話す事があり、少しずつ実践するように話をしている。実際に実践されて  いる会社もあるが、成功している会社の事例を具体的に示すと説得力が違うのではない  か。 ○週休3日制にトライして導入されなかった経緯は何か。 →具体的には4日働いて2日休みを繰り返すと平均して週休3日になるということであるが、  その場合、交代で日曜が休みにならない場合があり、社員からは日曜日は休みにして欲  しいと言われたので断念した。 ○経営が厳しくなった時の対応方法を伺いたい。工場を売ったり従業員の解雇等、現在の  考えを転換することがあり得るのか。 →今までそうした状況になく、今後は何があるか分からないが、そうならないために良い  商品を作る方に頭を使うよう日頃から努力すること、マイナス思考よりプラスの思考で  頭を使うことが重要。 ○若い人の採用状況はどうか。退職者に見合った採用となっているのか。 →バブル期は新卒、中途も多く採用したが、現在は売上げが落ち着いているので、人を増  やす状況にない。ただ、製品の設計、開発をしている開発部は付加価値の高い商品を作  る上で一番重要な部署と考えているので、毎年のように採用している。退職者に見合っ  た補充はしている。 ○人の育て方について、採用してから一人前だと思われるまで、大体何年位かけているか。 →概ね10年位。その位経たないと、会社全体の仕組みがひと通り分からない。 ○同じ正社員でも部門毎に俸給が違うなど区別はあるのか。 →給与は高卒で入れば高卒スタート、大卒で入れば大卒でスタートとなるが、開発部や製  造部門など、どの部署でも同じである。 ○若い世代への技能の継承でどのような工夫があるのか。 →先輩の姿を見て勉強するということが一番大きい。教科書はカタログ。また、成形加工  では技能検定等を目指して技術を習得するということが必要で、そういうことをきちん  とやっている先輩を見習い勉強していくことが重要と考えている。 ○賃金のピークはいつか。 →給料は60歳がピークで、60歳以降は横這い。 ○タイムレコーダ−がないということであるが、労働時間を管理しないとごまかそうとす  る人はいないのか。性善説で考えているということか。 →性善説とコストの両面のバランスで考えている。タイムカードの管理にもコストがかか  り、少しアバウトにしても、社員が自分で考えて管理すれば良いと考えている。また、  人は信用されることがモチベーションになるので、その姿勢を会社が見せることで、一  生懸命働こうという方向に持っていけると考えている。 <照会先> 政策統括官付労働政策担当参事官室産業動向係 03-5253-1111(内線7724)