第2回産業労働事情懇談会議事概要  日  時:平成23年1月25日(火)14:00〜16:00  場  所:中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室  内  容:若手人材の育成と世代ごとにみた働き方  参加企業(業種):ハウスメーカー ○会社概要、業界の状況  会社概要ということで、当社の事業内容と業界の現状、今後の展望といった点をお話し ます。まず当社については数あるハウスメーカーの中の一社という説明もありますし、も う一方では多角化企業グループの中の一員という位置づけでの説明もあると思っています。  グループ会社は、9つの事業会社と持株会社から成り立っていまして、我々はその中で 住宅部門を担う会社ということになります。特徴としましては、住宅オンリーでやってい る企業との違いとして、いろんな分野の事業で開発された技術とかノウハウなどを住宅に 応用したり、素材づくりからこだわった家ができるというような点が当社の強みであると 思っています。グループ9社の中で、当社は1つ特徴がございます。当社以外の事業とい うのは、基本的には企業間取引を中心とした事業形態(BtoB)になっています。これに対 して、当社のみは個人のお客様、1軒1軒のご家族をお相手に仕事をさせていただくとい うような事業形態(BtoC)、これが大きな特徴となっています。  具体的な事業領域ですが、中心は何といっても戸建て住宅事業です。その他にも都市開 発、宅地開発、集合住宅、不動産流通、ファイナンシャル、リフォームといったような住 宅関連の事業にも取り組んでおります。人員構成は、先ほど主力事業が戸建てと申し上げ たとおりで、全社員のうちの約6割はこの戸建て住宅事業に携わっているという現状がご ざいます。  次に、簡単に当社の扱っている商品の鉄骨住宅をご紹介させていただきます。骨組みが 鉄骨で、床、壁、屋根の6面に特殊なコンクリート、これは当社独自につくっているALCコ ンクリートを使用したつくりになっています。どんな特徴があるかといいますと木材です とか鉄筋コンクリートですとか、そういった建築素材ですと、なかなか実現しにくいよう な性能の両立が、かなり高いレベルで実現できている素材というのが大きな特徴です。  このように戸建て住宅を中心に事業展開している会社ですが、業界の中ではいくつかの キーワードで弊社の特徴はご紹介できるかなと思います。建売住宅は余りやっておりませ ん。1軒1軒のお客様の家族構成や生活スタイルに合わせた「オーダーメードの注文住 宅」、販売エリアを「大都市圏」に集中した事業展開、あと「3階建て」「2世帯」という、 これは今では一般的な言葉になっていますけれども、歴史を遡ると実は当社が初めて市場 をつくった商品でございます。このあたりの強みを生かした事業展開ということにこだわ っております。自分たちの強みのある市場でオンリーワン企業を目指そうというのが会社 の経営方針でもあります。  簡単ですけれども、会社概要、事業内容ということでご説明させていただきました。  次に、私どもの事業を取り巻く環境ということで、住宅産業について少しご説明させて いただきます。当社を取り巻く事業環境ということで2点挙げさせてもらいます。まず、 少子高齢化の影響で市場縮小の流れがあります。2つ目は、これも世の中の流れですけれ ども、環境対応が求められてくるだろうというような認識をしております。  こうした流れの中で、今後の発展の課題ということでは3点挙げますが、1つ目が高付 加価値商品、環境型対応商品など、2つ目が住宅周辺事業の拡大、3点目に将来的には住 宅だけにとらわれない新規事業の創出、こうしたところにも目を向けていく必要があるの かなと考えております。  参考までですが、学生からも住宅産業の将来性はどうですかとよく聞かれます。市場縮 小ということで不安な人も多いみたいですが、別の見方もあるのかなと思っています。ど ういうことかといいますと、住宅市場もかなり大きいのですが、その中で支配的なシェア を持っている会社は1社もないのです。これはビールとか自動車産業とは対照的なところ です。大手ハウスメーカー8社の合計でもたったの15%、残りは中小の工務店、大工とい う現状です。  皆さんも数字を聞かれたことがあるかと思いますが、年間で住宅の着工戸数100万戸を切 ったというのが一時話題になりました。バブルのときには160万とか170万、これが今や80 万戸になったと言われています。ただ極端に言いますと、私たちの一企業から見ますと年 間で8,000棟とか1万棟の着工ですと、かなり好業績といえる状況ですから、80万戸が仮に 60万戸とか50万戸になったとしても、目の前のお客様に対してしっかりした対応をしてい くことで、中期的にはまだまだ成長の余地があるのかなという考え方もあろうかと思って います。ただ長期的には、本当に周辺事業、新規事業の拡大などもキーになってくるのか なというそのような認識というふうにご理解いただければと思います。 ○経営方針、人材理念  グループ全体にしましても、当社にしましても会社の経営方針に基づいた人財理念とい うものを既に策定していますので、ご紹介したいと思います。まず、グループの人財理念 ですが、グループの人財が働きがいを感じ、生き生きと活躍できる場を提供し、グループ の成長と発展を目指す。その中で社員一人ひとりに求めることということで3点。挑戦し 変化し続ける。誠実に責任感を持って行動する。多様性を尊重するということです。  さらに職責者、人の上に立つリーダーに求めることとして3点。活力ある組織をつくり、 成果を上げる。既成の枠組みを超えて発想し行動する。メンバーの成長に責任を持つ。こ んな人財理念がございます。  次にご紹介するのは、当社の経営方針の抜粋になりますが、この中にも当社の社員に求 める人財像のキーワードが散りばめられていまして、私たちは一人ひとりが主体性とチャ レンジ精神を持って、全員経営・ロングライフ住宅・I&Rを実行し、お客様と社員にと っての新たな価値を創造し続ける会社を創りますということです。主体性とチャレンジ精 神というのは、グループ全体の理念にも共通するキーワードと思います。  当社のリーダー心得というものですが、これは当社の中で課長職、特にラインと言われ る受注部隊、営業課長、設計課長、工事課長、そうした課長任命時に社長自ら一人ひとり に手渡しをする非常に大切なものです。  チーム目標を全員で完遂すること。ルールを守り正々堂々と業務を遂行すること。現場第 一線に立つプレイニングマネジャーに徹すること。自己研鑽に努め職業的成長を図ること。 部下への愛情を持つこと。この5つです。これをリーダーには要求するという立場をとって おります。以上が現時点で当社での人財理念ということでご紹介させていただきました。    ここからは、初期のキャリア形成というテーマで、新規学卒者の採用方針、採用後のフ ォローの取組等についてご説明させていただきます。  先ほどグループの人財理念というお話をしましたけれども、実は新卒採用の場面では、 私たちはあまり求める人財像というのを学生にあえて明らかにしておりません。理由は、 求める人財像をかちっと決めてしまうと、画一的な人財に偏ってしまうという懸念がある のと、最近の学生は求める人財像に自分を合わせて面接にやってくるというところもあっ て、本来多様性のある様々な人財を確保したいという観点からいきますと、あまり求める 人財像の明確化のし過ぎもどうかなということで、あえて聞かれたときには、本当に住ま いづくりという仕事に共感して仲間として一緒に働きたいと思える人財というような範囲 に表現はとどめております。  ただそうはいっても、こんな人がこの仕事に合うのではないかというのはあります。家 づくりの仕事というのは、こんな特徴があるのでこういう人に向くと思うよというような ものの1つ目が、「Super BtoC」ということで、究極の個人営業ということを学生には 伝えております。お客様との深い信頼関係というのが前提になる仕事だということです。 家づくりは、かなりお客様のプライベート、プライバシーの中にも入り込んでいく必要が ありますので、スキル、ノウハウも大切ですが、やはり人としてお客様から信頼されるの というのが非常に大切な仕事ということです。付き合いも長くなりますし、ドライな人間 関係の中で割り切って仕事をしたいというタイプの人よりは、ウエットな人間関係大好き というような学生の方に向いた仕事なのかなということをメッセージとしては発信してい ます。  2点目がコンサルティングというキーワードです。出来合いのものを売るというイメー ジを持たれている学生が多い中で、実は建て売りはそうかもしれないですが、注文住宅と いうのは難しいと思っています。お客様はかなりわがままをおっしゃります。あちらを立 てればこちらが立たずのようないろんな要望があったり、一方で、お客様の要望を制約す る条件、最大のものは予算ですけれども、予算や法律といった条件の中でいかに満足度の 高いものをつくるかということで、なぜこのプランなのか、なぜこの資金なのかというこ とを自分なりに論理立ててきちっとお客様に伝えられる力というものが求められます。こ ういったコンサルティングのような側面に興味を持った人には向いている仕事なのかなと いうことです。  3点目がものづくりです。注文住宅が車とかパソコンという工場で完成品ができてくる 仕事と違うのは、本当に平面での設計図から建物完成まで一貫してその一人の社員がかか わっていくというのが、非常に大きな特徴だと思っています。ですから、そうしたものづ くりの側面にやりがいを持てる人、興味を持てる人にぜひ来てほしいということです。そ ういったメッセージも発信しております。  年間大体100人から150人ぐらいの総合職の採用を続けてきているわけですが、新規採用 者の配置方針ということでいきますと、基本的には全員が現場に配属になります。このあ たりについては、学生にも入社前から伝えてありますので、入社直後に自分の希望とは違 う配属部署に配属されたということでのトラブルとか早期退職などは、当社ではそんなに はありません。参考までに、よく世の中で話題になっている入社3年以内の新卒者の離職 率という見方がありますが、ならしますと当社の場合には総合職で大体20%ぐらいで推移 しているという現状がございます。年によって若干ばらつきがあるのと、これも傾向とし て聞いていただきたいのですが、退職者の中でも若干女性総合職の退職の方が少し早いの かなというところはあります。ただいずれにしても、会社として残念な退職といいますか、 残念な若手退職というのは避けたいと思っていますので、それを防ぐという目的ではフォ ロー活動の方にも取り組んでおりまして、私ども採用グループを中心に入社3年目以内の 社員対象に、毎年夏から秋にかけて、一人一人ヒアリングで各支店を回って元気でやって いるのかというアフターケアをしたり、また、そういった定期フォローとは別に人事部の 相談窓口に相談があったときには速やかに対応するというようなことで、バックアップ体 制を敷いております。 ○若手人材の育成   まず育成方針ですが、新育成体系というものと営業成長ナビゲーションという2つがあ ります。私どもでは若手の社員に入社何年目、いつ頃までにどんなスキル、どんな能力を 身につければいいかというガイドライン的を提示をさせていただいています。もちろん、 個人によって成長の差というのはありますが、これを目安に自分の成長度のチェックもし くは直属の上司との成長ぐあいの振り返りとかに活用してもらうという趣旨のものになり ます。  この取組をより効果的なものにしようということで、インストラクター制度というもの がありまして、入社1年目社員全員及び入社3年目まで必要と判断された社員に対して、 同じ課内の先輩社員をインストラクターとして任命しています。背景、ねらいは、若手社 員の育成がメインの目的です。ただ一方で、教える側の中堅社員の勉強にもなるだろうと いうことで、そういった効果をねらった制度になります。2008年度から導入しております。  続いて、育成上の課題ということで2点ございます。インストラクター制度などをやっ ていますが、全てが理想的に機能しているかというとそうではなく、課長層、先輩社員の マネジメント力、育成力の強化というのは社内で議論されております。若手社員に柔軟に 対応して、長所・短所、正しく評価して、厳しいときは厳しく、褒めるところは褒めてと いうことで、そのあたりをあわせ持ったマネジャーの育成というのが大きな課題の一つと いうこと。もう一つは、個人からチームへの回帰ということを挙げさせていただいていま す。ここ10年来、成果主義への傾向を受けて、社内の評価制度、給与制度を成果主義に少 しシフトしてきましたが、自分の成果ということに目が行きがちな風潮になりましたの で、チームでの成果、全体での成長ということにもう一回目を向け直そうではないかとい うことで、このあたりの見直しも今後の課題ということになっています。ですから、同じ チーム内で若手社員を寄ってたかってみんなで育てようという当社の昔の伝統にまた戻ろ うというようなイメージです。  次に、世代論と若者への期待、社会全体としての取組ということでご説明させていただ きます。最近の若者に対する印象ということで、これはどちらかというと一般論かもしれ ませんが、またいい悪いは別として、幾つか具体例を申し上げますと、例えば競争よりも 共生なんてありますが、最近入ってくる新入社員、同期の中でトップになりたいとか、ぎ らついた学生は昔に比べますと余りいないという実感があったり、また、叱責や批判を受 ける機会が少ないなんてありますけれども、ちょっとお客様とか上司からクレームとか叱 られたりすると、必要以上にふさぎ込んでしまうような傾向もたまに感じる場面はありま す。ただ一方で、ネガティブに評価し過ぎるのもかわいそうかなと思うところもありまし て、非常に頑張っているという部分もあるかと思っています。例えば今の新入社員がやる 仕事は、私が入社した20年ほど前と比べると格段に仕事の難易度は上がっていると思いま す。私が会社に入っておそらく4年から5年目ぐらいで身につけたこととか成果を、今の 1年目、2年目の社員は求められているぐらいの感覚ではないかと思っています。そうい った中で、非常によく頑張っているという評価をしたいという思いもあります。  一方で、会社の生産性の向上とか業務の効率化ということで、採用を絞り込んだような 時期もあります。そういう中でそれぞれの職場を見ていきますと、入ってきた新入社員が その職場に1人とか、身近にちょっと相談できる先輩社員がいないとかいう中で、先輩社 員も本当にマネジャー自身もプレイニングマネジャーというか、自分の仕事に集中せざる を得ないという中で、なかなか育成まで手が回っていないような状況が散見される中で、 本当に自分で頑張ろうという思いで頑張っている若手社員もいっぱいいますので、そうい うところはぜひ評価してあげたいという印象も持っております。  最後なりますが、社会全体としての取組というところですが、2点、競争心の再醸成と グローバル人財の育成・支援ということです。  申し上げたいポイントは、企業は時代、時代によって変わっていきますし、求められる 人財、もしくは新入社員に期待するものも変わってきていると思いますが、なかなかそう いった企業側の動きと学生というか、大学の教育内容というか、大学時代での彼らが身に つけてくるものというのがちょっとマッチしてないというか、ちょっと離れてきているの かなということは感じております。  やはり企業社会は正直競争です。他社との競争もありますし、社内ではいい意味でのラ イバルとしての同期の競争もありますし、そういったところへの適応ですとか、内にこも らないで外に目を向けるということでのたくましさとかいうところが、若い人に期待した いところではあります。なかなかそういった学生と出会う機会が少しずつ減ってきている のかなというのは、採用の現場にいて思うところでもありますので、このあたりはぜひ、 この後の情報交換の中で少し議論できればと思っております。  これは学生に向けてですが、住宅の仕事、当社の仕事は全ては人です。機械化できる仕 事も増えてきましたし、それこそ定型業務というのはどんどんアウトソースするとか、い ろいろな時代の流れはありますが、工場で作られた完成品を売るという仕事はないので、 家づくりってどんなプロセスをとっても機械任せにできるということがないです。そうい う中で、お客様と直に向き合う社員の本当にちょっと青臭いかもしれないですが、お客様 に向う情熱とか熱意とか、お客様のためにお役に立ちたいという、そういった気持ちが伝 わるかどうかとかいうところが、今後成長していけるかどうかの分かれ道になっていくの かなという認識をしています。  よく一頃、企業の経営資源は「人、もの、金」と言われましたけれども、実はそれは同 列で語れるものではないのかなと。やはり「人、人、人」というか、人が全てという、そ れがますますこれからは大事になっていくだろうということで、学生にはそんなメッセー ジを発信しております。 ○意見交換 Q01 総合職だと営業、設計、工事が主な職種のようですが、実際問題、例えば現場 に行って家を建てる方、いわゆる普通の家だったら大工がやるような仕事というのは、 大体どのような人がやるのでしょうか。 A01 当社の協力業者、いわゆる工務店が各地にあり、実際に家を建てる作業はそこ の職方さんにやっていただいております。お客様と当社との関係は、責任施工で、お 客様と当社で契約をして、施工は工務店がやるのですけれども、お客様は我々に発注 していただいていますから、全ての責任は当社がとるという仕組みになっております。  最近は、工務店も非常に後継者がいないですとか、そういった形でどんどん廃業し ていくということもありますものですから、当社で工務店をつくって、そこで少し工 務店を吸収していくという方向もありますが、基本的には実際に作業するのは地元、 地元にある工事店、我々工務店を工事店と言っていますが、工事店がやるという形に なります。 Q02 社員の方が現場に行かれるときは、基本的には管理的なことをされるという理 解でよろしいですか。 A02 営業、設計、工事、ホームサービス(HS)の役割ですが、営業というのは、 住宅展示場という集客装置の場で商談が進んで、うまくいけば受注をしていただいて、 設計がその受注の過程で家の平面図をつくる。それを工事担当に引き継ぎます。図面 という形で引き継いで、工事担当が先ほど申し上げた地元の工務店と協力して、作業 は工務店がやるのですけれども、工事担当が現場をたくさん持つことになります。 例えば1人の工事担当が同時並行で5件、6件の現場を持ちながら、実際の作業は工 務店に任せながらチェックをしていくという、そんな形になります。  ホームサービス(HS)は、家ができた後の点検をやります。1年点検ですとか2 年点検、そういった点検を自ら行ったり、それから不具合があったときの対応窓口に なるとか、そんな仕事になります。ですから、実際に建築現場に一番行くのは工事担 当、もちろん営業もお客様対応、お客様の安心を得るために現場に行って報告をした りしますけれども、建築現場の意味で責任あるのは工事担当になります。 Q03 リーダー心得というのがございましたが、チームというのは大体何人ぐらいで 1チームでしょうか。 A03 営業チームが大体、一番最小チームで3人、例外的に8人とかもありますが、 4人か5人が8割です。課長を入れて4人から5人が一番一般的なチームになります。 Q04 2008年度からインストラクター制度を導入されていますが、どのように評価さ れていますか。 A04 チームが大体300ありまして、インストラクターがいるチームが新人の数プラ スアルファで120人のインストラクターがいるものですから、正直言って120通りのマ ネジメントがありまして、人事部の期待からするとちょっとまだ不足です。非常に親 身になっていい仕事をしてくれているインストラクターもたくさんいますが、結局、 自分の目の前の仕事を一番に持ってきて、ちょっと面倒見悪いという人も残念ながら おりまして、やって3年目ですが、まだちょっと反省すべきところが多いかなという 感覚は持っております。 Q05 インストラクター制度の話がありましたが、例えば世情言われるところとして、 メンター制度、キャリア相談室、社内公募制などが個性豊かにやっていく上では決め 手であるという話があります。これら制度は、まず御社にあるのかないのか、取り組 むということで入れようとしているのか。あるいは、人事機能を総体的に考える中で、 距離を持つような検討されているのか。現状とコメントも含めてお伺いしたい。 A05 現状ですが、メンター制度は今現在ございません。ただ、インストラクター制 度を制度化する際に、そのインストラクターの位置づけの中で兄貴分というような位 置づけにして、メンター的な意味合いも少しあわせ持つような形で運用できればいい なというような議論はちょっとあったのですが、先ほど話がありましたように、イン ストラクター制度もまだ定着しているとは言い切れません。中にはインストラクター という業務の中身そのものよりも、むしろ兄貴分というような形でメンター的な役割 を果たす人もいたり、そんなような現状が今あるという形です。人事的には、メンタ ーみたいな存在というのは、昨今の入ってくる若手社員等を見ておりますと必要かな とは感じていますが、その中でどういうふうに現場の中で落とし込んでいけるかとい うところは、ちょっとまだ具体的なところまで至っていないというのが現状です。  キャリアアドバイザー的なものにつきましては、これもまだ現状は正式な制度とし てはございません。人事部の中でそういった資格を持つ者が今現在2名、今、資格取 得中の者が1名ということで、そういう準備は始めているという形なのですが、これ も近々制度化をしようというところまでは至っておりません。キャリアアドバイザー 的なところは、実は当社の場合には若手というよりも、少し中堅からベテラン層の方 に必要度は高いかなという認識でおります。  公募制は、当社としてもありますがほとんど機能しておりません。グループ全体で の公募制がありまして、年に4回、各事業会社が公募の掲示をイントラに載せて、こ んな仕事でこんな人財を求めるという告知をし、上司にも相談なしに自由に応募がで きるというような仕組みを持っております。7〜8年になると思いますが、残念なが ら公募制で他の事業会社から当社に来たという実績はありませんが、当社から他の事 業会社に行った事例というのは何件か成立をしております。ただ、当社の仕事はかな り特徴がありますので、こうした社内公募、グループの中での公募制という人財流動 の仕組みでは十分活性化していないというのが現状です。  当社では、先ほどから出ていますように営業、設計、工事というところに最初から 配置するという考え方でやっていますが、若いうちに少し違ったスタッフ的な仕事を 経験させたり、いろんな仕事につかせるということも必要かなということで、もう少 し当社の中で公募制のような人財の流動を促すような仕組みとを設けたいという話は、 人事の中では議論はしているのですが、まだ具体的な施策として展開をしていくとい うところには至っていない、そのような現状です。  少し補足しますと、例えば、我々グループのメインの事業会社の一つが、中国向け の営業の仕事を公募するというようなことがありますと、実は我々にも教えてくれま せん。公募人事制度というのは、全く極秘でやるという社員との約束になっておりま すから、誰が応募したとか、誰が落ちたとか、受かったのは分かってしまいますが、 誰が落ちたということも含めて何にも教えてくれないのです。公募人事制度は、グル ープ全体としては活性化していると思います。必ず毎年5人から10人の応募がありま して、7割ぐらいは充足している、決まっているというふうに聞いています。  我々の人事で今大きな問題としては、採用問題もありますが、60歳から65歳の再雇 用です。当社も再雇用制度がありまして、1年契約の契約社員として4回更新、つま り65歳までという制度ができます。当社は非常に若い会社ですので、現在5,000人の 規模の会社で定年が10人とか1桁というのは非常にレアな会社だと思いますが、実は これから10年間にわたり加速度的に定年退職者が増えていく。10年後には100人単位 で毎年定年が出るということが予想されていまして、再雇用の仕事をキャリア開発す るのが、今我々の大きいテーマになっていまして、そのキャリアの資格を取って、40 代ぐらい、50代ぐらいから研修をするとか、そういったことを別途企画している現状 です。 Q06 キャリア相談、社内公募を機能させるための取組状況、また、キャリア相談室 や社内公募制について取り組みを行っているなどの検討状況をお伺いしたい。一方で 御社として取り組もうとした場合の問題点などあればお伺いしたい。 A06 当社は戸建て事業を中心でこれまでずっと来ていまして、営業、設計、工事と いう役割分担も非常に明確で、新規で入社してきた者も、まず事務系の社員はほぼ全 員が戸建ての営業につくという形で来ています。戸建ての営業の中でスキルアップを していき、そこでチームリーダーになって所長になってというステップアップをして いくというほぼ全員がそこを目指すような、そうした単一的な流れで来ていました。 ですから、そうした意味ではこれまではキャリア相談、あるいは違った仕事をすると かというような必要性は余りありませんでした。創立から30年ぐらいはずっと一本足 で、立派な住宅営業マンとして成長していく、それから外れると、逆にどちらかとい うと、ちょっとはみ出し者といいますか、オミットされてしまったみたいなそんなよ うなものがありました。  ところが10年以上前ですか、バブルがはじけてというころから、いろんな周辺事業 をやり出して新規事業のような形になってきたときに、単一的な人財育成のような形 だとなかなか行き詰まる。特に、昨今、ここ数年来、様々な動きが激しくなってきた 中で、いろんな人財が必要だといったときに、金太郎あめ的な社員であり、マネジャ ーでありという形になっているのかなというふうに、今、社内が見えております。そ ういう意味で、いろんな仕掛けを設けて、いろんな人財が幅広く活躍できる舞台にし ていかなければいけないかなという点で、当社は非常に遅れているのかなという感じ がしております。そういう必要性の部分についてようやく今、緒についたのかなとい う認識でおるというふうな段階でしょうか。 Q07 御社の商品を選ばれるお客様には何か特徴がありますか。鉄骨3階建ては少し 値が張るような気もしますが、比較的高所得の方が多いなど、お客様の特徴にあわせ て若い社員の教育も工夫しているのかお伺いしたい。 A07 お客様の傾向というのは非常に難しい質問ですが、多分、所得でいうとある程 度安定的な収入があるお客様が多く、そうした意味では顧客層はしっかりした人が多 いと思っております。大企業の部長の方、課長の方、学校の先生、公務員の方もいら っしゃいますし、自営の方でも社長の方が結構いらっしゃり、やはりそうした方々は 営業の姿勢とかをよく見られます。先ほどの話にありましたような、知識やスキルだ けではなくて、他のハウスメーカーの営業担当よりもそのお客様のことを真剣に考え て動くとか提案するという、そこが最後は勝負になってくることが多いです。他のハ ウスメーカーも、実は今非常にいい商品をどんどん出されているので、単純に住宅の 性能面だけで当社の商品が断トツにいいかというと、そのお客様に説明するのは結構 大変です。他のハウスメーカーも、絶対うちの会社の商品もいいですよと、大手ハウ スメーカーだったらみんな一緒ですよみたいな説明をしてくると、お客様はどちらの 性能がいいか分からないですよね。それを理解していただくためのイベントや企画な どもやりますが、最後は何で当社の商品にお客様が決めてくれるかというと、意外と、 何々さんが一番一生懸命やってくれたからとか、いつも連絡が一番早いからとか。  うちの新入社員の事例でありましたけれども、お客様の家に行って家具の寸法を測 ったりするのですが、仏壇の寸法を測るときに、うちの営業担当だけはちゃんと線香 あげて拝んでからメジャーを当てたと。他の会社の人は、本当に仏壇でさえも普通の 家具と同じように測っていったとそれを見ていたおばあちゃんが、もう当社にしなさ いという。本当に何が決め手になるか分からないですが、そういう人としてのお客様 に向う姿勢とか常識とか、そんなものが決定的な要因になることもありますし、世の 中で社会的な地位というか、しっかりした人こそそうしたところを注目されている方 も多いので、求める人財像とか育成方針に結びつくのかどうかは別にしても、やはり この仕事の神髄というか、大切なところは、人としての魅力とか、誠実さとか、情熱 とか。そこを忘れてしまうと、幾ら専門知識があっても鼻につくような説明の仕方を するとか、知識をひけらかすようなプレゼンテーションをしたら絶対お客様は契約し てくれないので、そのあたりは非常にポイントになってきます。そんな話を会社の説 明会とかで学生にします。   教育面で今のようなことはということですが、今年の4月入社の新人から、新入社 員の導入研修を変えようと思っていまして、今の仏壇入れは拝んでから測れよと、そ んなノウハウを教えるということではなくてもっと一般的なマナーですとか、競争心 みたいなものをあおるために研修をやるわけではないのですが競争心をもっと持って もらうとか、そういったことを組み込んで、昨年までは5月ぐらいに配属していまし たが、それを今回1か月ぐらい延ばします。  さらに勉強する習慣をつけるという意味も含めて、ファイナンシャルプランナーの 試験を9月にやりますが、それを受けるために7月ぐらいにまた2〜3回集めたり、 要するに長く集めて、先ほど申し上げたように少し層の高いお客様も多いですし、社 会人基礎力という言葉が当たっているかどうか分かりませんが、マナーですとか、例 えば私も現場でいろんな、こんなことも知らないのとか、びっくりすることがたくさ んありましたけれども、そうしたところを少しは身につけて配置できるように、少し 研修のやり方も今年の4月に変える予定にしております。   Q08 御社ではどのように若手に接せられているのか、若手の方が実際に伸びた事例 や、その辺りの実感、感想などをお伺いしたい。 A08 一般的な話をしますと、特に、営業の仕事を考えたときに、結構ハードな、お 客様に断られることの方が多い仕事です。そういう仕事をしている中で、甘く接する 上司がどちらかというと多いです。楽ですから。甘くというのは、例えば要求すると きに、4月とか10月の期初に今期の目標とかを立てますけれども、そのときに例えば 生々しいことを言いますが、前の半期で3件受注しましたと。本当は、その社員の能 力から言えば6件とか受注する力があるのに、次は4件という目標を立てましたとい うときに、君は6件受注する力があるなら6件やれと要求するのがちょっと言いにく いとか、余り厳しくしたくないということで、4件でいいよと優しくする上司が多い のです。その方が楽ですから。ところがそれでは伸びないです。6件やる力があると 思えば、6件やるために本当に頑張ってとことん工夫してやりなさいと、君ならでき るから、これを要求すると厳しく言って。  愛情と厳しさの軸で、よく社内では説明しますが、甘く・厳しく、それから愛情が ある・愛情がない、軸で4つに分けますと、要するに厳しく要求し、かつ愛情がある 人、これをやると人は伸びると思います。厳しく要求するけど愛情が少ない、これは パワハラという方向に行きます。それから甘くて愛情が多い、これはぬるま湯。これ は楽ですが、人は育たないというのが一般論で我々はよく支店のマネジャーとかと話 しています。伸びるというのは、厳しく要求できる人。そういうことをできて、かつ それを部下が受け止めて工夫して励ましてやると伸びると思います。  経験談というか、現場の話でいきますと、以前私が在籍していた支店に全国でも常 にトップクラスの成績を上げるチームがあって、若手社員がそこに行くと、ほとんど なぜか成果を上げられるという、これは市場のせいでもなく展示場の集客力でもなく、 やはり営業課長の指導力というのが非常に大きいんだろうというふうに見ていたチー ムがあります。何をやっているかというと、1つは今話があったように、メンバーに 対するリーダーの要求というのが非常に厳しいです。それができていなかったときに は、思いっ切り叱るというか、その辺の徹底力というのですか、決めたことを最後ま でやり抜くような。それを繰り返していく中で、成果がちょっと上がってくると、人 ってちょっとしたことでもって成功体験あると嬉しいですよね。それが自信につなが ってという、その好循環をうまく生み出せていたのかなと。  営業の仕事は、最後はやはりお客様の背中を押すことだと思うのです。車でも数百 万の買い物だと思いますが、個人の買い物で数千万、場合によっては億の買い物をす るというのは、お客様がどんなに当社の商品がいいと分かっていても、当社がしっか りした会社だというふうにご理解いただいたとしても、最後は怖いと思います。住宅 ローンを30年も組んで、毎月10万も15万も払って、これで本当に将来やっていけるの だろうかというときに、最後は営業がお客様の立場になって、この計画だったら絶対 とは言わないですけれども、これだったらいけますよと。何かあったらずっと相談に 乗りますから任せてくださいというふうに、表面ではなくて、本当に心から言い切れ るかどうかです。そうした状態になるためには、ある程度本当に厳しい中でやるべき ことをちゃんとやり抜く。他のメーカーも一生懸命やっていますから、いろいろな中 でこのお客様のために自分としてはやれるだけのことは全部やったというようなとこ ろまでいかないと、なかなか最後にお客様の背中を押すのは心理的にかえって怖いと いうところもあるので、具体的ではないかもしれないのですが、日々の業務の中で自 分が決めたこと、上司と決めたことなどを最後までやり切って、成功体験があってと いう中で、人って成長して強くなっていくのかなという気がします。特にこの仕事の 場合には、80点とか90点というのはない仕事です。どんなに頑張っても最後に契約し てもらえなかったら、それまでに割いた時間って経験にはなりますが、成果としては ゼロです。99%頑張ったとしても残りの1%何かが足りなくて、他のメーカーに受注 を持っていかれたら、努力は全部パーになるという、そこを本当に100までやり切る ということの繰り返しはつらいですが、やった人が成長していく、それをリーダーが きちんと要求していくということです。 Q09 業績が全国で一番いいチームの話では、リーダーの要求が厳しいということを 特徴とされていましたが、厳しい上司だと部下がメンタルで潰れてしまうという例が ままあります。ただ単に厳しいだけだと多分ついていかないという気もしますが、そ の厳しいプラスアルファに何があるから、そのような好業績になるというふうにお考 えでしょうか。 A09 愛情です。自分のために言ってもらっていると感じなかったら、多分若手はつ いていかないです。この人の言うことを信じてついていけば、仕事を通じて成長でき るとか結果が出るという何らかがないと、多分厳しさだけではなかなか続かないのか なという気がします。 Q10 会社のミッションや会社の気質は、若い人にどうしたら伝わっていくのだろう と、それがきちんと伝わっているのだろうか、あるいは伝えるための工夫をどうした らいいのか、そのため御社としてどのような事をやっておられるだろうかということ をお伺いしたい。もう一つは、受け手の方の学生や若い人が変わってきて、そうした ものが受けてもらえなくなってきているのではないかという仮説を持っていまして、 最近の若い方が、例えば10年前20年前とかと比べて、気質の変化を感じるか、そこに どういう課題があるのか、その上でどんな方向で対処したらいいのか、愛情と厳しさ を受け取る若手の方をどう思っているのかということをお伺いしたい。 A10 ここ4〜5年現場の方でやっていましたが、受け手、新入社員から見てそうい うのが受け入れられにくくなっているのではということですが、そうはいっても話せ ば分かってくれる若い人も多いのかなという、たまたま当社がそういう視点でそうい うのに合う人を採用しているのかもしれないですけれども。  ただ、昔の時代との変化で言えば、仕事が終わった後に、ちょっとみんなで一杯行 くかというようなところの積極的な参加の姿勢というのは、昔から比べると随分全体 的にうちの会社の中でも減ってきているのかなと思います。  実は、仕事中って結構みんなどたばたしていますし、なかなか育成のこととか自分 がどういうつもりで若手を育てようとしているのかとか、その人が将来どうなりたい と思っているのかを逆に聞いたりという話は、昼間なかなかできないです。それが実 は夜の飲み会が機能していたりして、先輩がそこで、新人が聞きたくもない昔の武勇 伝を語ってという中で、意外と結果的には伝わるものが伝わっていくような文化って 昔はあったと思いますが、もしかしたら、若干そういうのは希薄になっているのかな という感じはします。飲み会というのは一つの例ですけれども。  社員旅行なんかもそうかもしれないです。未だに当社はこってりした温泉1泊旅行 の社員旅行をやっていますが、そんなのも昔と比べると、昔は行くのが当然みたいな 感じで行っていましたし、それが楽しかったのですけれども、もしかしたらそういう のも冷静に見ているような若い人たちも、話を聞いていると少し増えてきたのかなと。 そうした会社の文化に溶け込もうとか、価値観みたいなところは、世代とかという言 葉で整理してしまうのがいいのかどうか分からないですが、やはり多少ギャップはあ るのかと。どちらかというと、厳しさとかという話になると少し違うのかもしれない ですが、そういう仕事以外の場というのですか、インフォーマルな場でのコミュニケ ーションがある中で、仕事場で見せる上司の顔とか、アフターで見せる上司の顔とか を両方知っていく中で、意外と仕事の中で厳しいこと言われてもお互い理解し合える みたいなところが、本当に仕事場だけでのコミュニケーションに偏ってしまったりす ると、ちょっと怖いのかなというか、本当に十分コミュニケーションをとらないと、 厳しいのは厳しいだけとして愛情は伝わらないということにもなりかねないと思いま すので、何か仕組みとしてどうしろという話ではないのかもしれないですけれども、 難しいですよね。  仕組みというよりは、風土みたいな話なのですが、厳しいけれども愛情の多い人と いうのは理由の説明が得意な人です。なぜ、今こういうふうに厳しく言っているんだ の「なぜ」をきちっと説明して、その相手の若い人に分かってもらえる課長は、人を 育てるのもうまいですし、結果としてそのチームの成績もよくなる。正直言って、ぐ ちゃぐちゃ言わないでとにかくやれと、おれの言うとおりやれと。おれは昔のチャン ピオンだからおれの言うとおりやれというようなタイプもまだいます。  人事部はそうした情報が早目に入ってくることもあるのです。ES相談窓口という ような社員の駆け込み寺のような窓口がありまして、そこに助けてくれみたいなのが あると私がその支店に行ったりして。何でそんな言い方するんだって言うと、自分が 15年前、20年前はそれで自分は育ったから、そのやり方をやっているんですなんてこ とを平気で、この21世紀でもそういうことを言う人がまだ残念ながらいます。スタッ フを除いてラインの課長だけでも全部で500人いますので、やはり古いタイプは、ま だまだ1割いるとしても50人いるわけですから。そういう人に会議とかではこういう のは駄目だよと言っても、本当にぎりぎり追い詰められた指導の現場では、どうして も本性が出るというか、そういう人はなるべく外れてもらったり、本当に直らなけれ ば駄目だよとかいってやっていますけれども、それが今の現実です。説明責任という か、なぜ君を叱っているんだの「なぜ」のところの理解のさせ方が一つのポイントか なというふうに思います。 Q11 コミュニケーションはIT(携帯・メール)主体、積極的コミュニケーション は苦手というコメントがありましたが、若い世代のコミュニケーションについての特 徴、あるいは今後について考えていくべきこと、何かその辺りのところについて思わ れるところはございますか。 A11 携帯、あと最近スマートフォンというのが中心で、いつ頃からか、例えば採用 活動なども平成9年か10年ぐらいからインターネットに変わってきて、コミュニケー ション手段というのがITになってきたあたりから、上司に報告をするとか相談をす るとか、目上のお客様に何かを説明するとか、もしかしたら頭を下げに行ってお詫び をするとかいったときに、極度に緊張するというか慣れていないというか、そうした ことは自分たちの世代から比べると、少しそうしたのが影響しているのかということ は感じたりします。  例で挙げますけれども、私の学生時代に彼女の家に電話するときには、必ず父親が 出たらどうしようって心配して、でもそこの壁をクリアしないと彼女と話せないので、 その時期から目上の人との話し方は、結果的にですが、ある程度トレーニングされて いるわけです。ところが今の人は、彼氏、彼女にしたって、友達にしたって、親を通 さなくてもずっと直のコミュニケーションができてきた世代なので、バイトでも厳し くやってなかったら、それこそ本当にいろんな世代の人とのコミュニケーションとい うのは、本人のせいではないと思いますが、トレーニングされていないです。そこで、 会社に入ってきて最初、多少苦労するというのは今の世代に現実的にはあるのかなど というのは、正直感じたりはしています。  昔は固定電話ですから、営業担当でも工事担当でもいいですが、お客様と話してい る話というのは、隣の社員が聞いているんです。先輩が謝っている姿を見て、あ、こ ういう上手な話し方があるんだということをそこで学べていましたが、今、どういう わけかそういう謝る電話なんか人に聞かれたくないみたいな感じで、携帯で会議室で かけているんです。そんな傾向もありまして、何かそういうところで技術の伝承も行 われませんし、ちょっとそれは会社として対応した方がいいかなという考え方を持っ ています。  携帯世代、中学から携帯世代というのは、かなり今企業で起こっているいろんな問 題に直結している部分があると私も感じます。先ほどの彼女との電話もそうですが、 私たちが友達と待ち合わせするときは、例えば新宿駅の南口のこの前でと、南口はこ っちの方で東口行ったら駄目だよとか、かなり相手のことを考えて、待ち合わせでき ないと大変ですから、相手のことを考えてもう細かなところまで指示して行っていま すが、今は新宿駅で後は携帯でということです。だからそこまで相手のことを考えな くても何とかなってしまう。やはりお客様のことを考えるという力がちょっと昔に比 べると落ちている。少しこじつけかもしれませんけれども。携帯の話というのは、結 構、現実いろんな起こっているおかしなこととかおもしろいことの中にあるのではな いかというふうに、最近我々も思い始めています。ですから、まだ答えがないのです が、教育とかにそういったものを入れていかなければいけないかなというふうには考 え始めております。 Q12 採用の中では中途採用はかなり数が少ないと思いますが、中途採用の状況をお 伺いしたい。もう一つ、今、特に新卒の時にたまたま採用が少ないので就職できなか った方もおられるということで、既卒者の方についても、例えば3年ぐらいは新卒同 様に採用していただけないだろうかというようなことを厚生労働省も文部科学省もお 願いをしているわけですが、この辺についての御社のお考えをお伺いしたい。 A12 中途はほとんど技術系の社員です。営業は、伝統的に新卒一本やりでずっとき ていまして、特にだれも疑問を挟まず新卒でというコンセンサスが社内でできていま す。 技術系に関しては、例えば受注が好調になりますと契約した後の仕事というのが技術 系の仕事になるわけですが、もうかなり不足するとか、新しい事業をやるというとと きに、社内ではその技術を持った者がいないというときは、中途でゼネコン出身の方 を採用するとか、基本は新卒というのは社内風土になっているということです。  既卒に関しては、今年の内定者も大学院を出てから1年の既卒の方1人、人物本位 でやっていますので、過去にも意識して既卒を採るとか採らないという意識はしてい ないので、結果として既卒の方が2〜3年に1人ぐらいずつ入っています。そこはあ んまり意識していません。要するに、駄目ともいいとも、応募してきてきちっと面接 で進んでいけば、大学卒業というのは条件ですが、たまにぽつぽつ入っているという ことです。ただ、今後積極的に増やそうとも思っていませんし、減らそうとも思って いないと。我々の採用方針に合った方であれば採用はしていくというつもりでござい ます。 Q13 既卒者の方というのは、新卒の時に比べるとエントリーがしにくいという話も 聞くのですが、その辺はいかがでしょうか。 A13 いわゆるリクナビとかマイナビとか、業者が管理しているところは、既卒だか らエントリーできないということではないと思います。弊社でも今、年間2万5,000人 とか7,000人ぐらいの学生のエントリーがありますが、その中で既卒者の方の数という のは分からないですが、感覚的には毎年毎年、既卒ですけれども応募できますかとい う電話問い合わせが直接採用グループの方に来ますので、その時は全然いいですよと、 ただ、本当に新卒扱いなので給料は大学4年生のスタートと同じところからのスター トですが、それさえよければ別に既卒は問いませんというご説明をしています。 ですから、私たちから直接既卒の人大歓迎みたいなメッセージを発信すればもっと来 るのかもしれないですが、今発信しないことによって既卒の人が実は本当は受けたい んだけど、敷居が高くて受けにくいということがあるのかないのかというのは、正直 分からないです。 Q14 社会として取り組むべきこととしてご提案が2つ挙げられていまして、1つは 競争心をもう少し醸成するような方向で、これは学校だけではなくて、家庭や地域全 体でということだと思います。もう一つ、海外留学をもう少し進めるべきではないか という話があるわけですが、これは具体的にどうしていくかというふうに考えた場合、 どうしていったらいいのか。例えば学校教育の場で何か盛り込んでいくということな のか、逆に海外留学した人にどういうものを求めるのかについてお伺いしたい。 A14 私も入社30数年ぐらいになるのですが、私が子供の頃は、偏差値世代とか言わ れていましたが、クラスで勉強ができる人は勉強で頑張ろうと。でも、おれは勉強で きないけど駆けっこは頑張れるとか、それから音楽は得意だとか、何か一人ひとりの 得意分野が結構明確にあって、その分野では尊敬されていたという時代、昭和30年代 から40年代です。  どうも最近入ってくる社員は、競争はみんなで仲よく、本当かどうか分かりません が、最近の小学校の運動会はみんなでゴールインするとかいう話も聞きますけれども、 競争はよくない、みんなで仲よくするほうがいい、何かそんなふうに思って入ってき ている可能性が高い。もちろん正面切って聞くと、同期で一番になりたいとか言いま すが、僕らのときは偏差値世代ということもあって、みんな給料の差はなくても同期 で一番になりたかったです、受注成績とか。でも最近は口では言うけど、どうも本音 は違うのではないかと思えるような。  ただ会社というのは、国内でも他のメーカーとの競争ですし、我々は国内産業です が、当社の本体は世界との競争そのものです。中国、韓国に負けてしまうかもしれな いという時代になっていますから。そういう意味で、本当に競争というものが悪いも のなのか、自分の得意分野を持てばいいのではないかというふうに私は思います。だ からこれは非常に難しいですよね。学校教育だけではないし、親がそんなふうに思わ ない、要するに日本の国はどういう国になるかという、話としてそこまで行くわけで すから。そこそこの国でいいとみんなが思ったら絶対そうならない、競争社会にいる 我々からすると、もう少しそこは競争するとお客様のためにもなりますから、いい商 品が出ますし、多分コストもどんどん安くなると思いますし、そうしたお客様のため とか社会のためにもなる競争はぜひ歓迎だというのが1つ。  それからグローバル人材というのは、正直言って我々の企業、当社は海外に全く進 出しておりません。ただ、他のメーカーが中国、オーストラリア、タイでビジネスを やっているなど、ハウスメーカーも日本のマーケットが縮小する中、海外市場をねら っています。  我々は、まだ積極的ではありませんが、調査はしていこうと思っています。そうす ると、年間で経費が多分800万とか、2年間だと2,000万近くかかると思います。我々 は経費を惜しんでというのはないのですが、もしかするともうちょっと中小の企業で あれば、コストというのは出しにくい会社もあると思います。  学校の海外留学ですとか、企業の海外への研修生ですとか、そういったところに補 助とかが出れば、それならやろうかという中堅企業などもあるのではないか、そんな ような気もします。海外に行きたくない学生とか社員が7割というふうに言われてい ますけれども、そういった中で半強制的にでも行かせないと、住宅メーカーですら30 年後はないというふうに思っている時代なので、海外に社員を出すことがやりやすく なるような何か政策があればいいかなと、そんな意味合いです。  海外留学した人にどういうものを求めるかですが、まずは語学ですけれども、語学 とあと例えば中国であれば、中国の住宅事情。文献では我々は分かるわけですが、実 際に現場に行ってどうなのか。我々、戸建て住宅は厳しいかもしれませんが、都市開 発だったらあるか等の可能性を探って来いということなのですが、中国だけではなく て、オーストラリアの専門家もつくりたいですし、カナダの専門家もつくりたい。グ ループ本体として考えれば、インドネシアの専門家10人のタイの専門家30人のとか、 多分そのぐらいの規模の人が必要だと思うのですが、なかなかそうはなっていないで すから、そうしたところで官民協力してやれればいいかなと、そんなイメージを持っ てございます。 Q15 採用のことでお聞きしたいですが、グループ内では公募などがあっても、採用 の時点では事業会社として採用されるということでよろしいでしょうか。 A15 グループの採用体系は、グループの持株会社の採用と事業会社の採用と2系統 あります。持ち株系が1つの採用グループで、そこは主に技術系の採用です。それと は全く別に、住宅会社としての当社が独自で採用をいたします。 Q16 採用の男女比といいますか、女性はどのぐらい採用をされていますか。 A16 採用区分が3つございまして、事務系総合職(営業)、技術系総合職(工事・ 設計・ホームサービス)、一般職があります。事務系で年によって違いますけど、大 体女性比2割から3割の間です。  技術系は大体20人ぐらいの規模ですが、去年が15人しか採らなかったのですが、6 人女性でした。それは4割とかなり多い年でしたが、大体技術系で25%ぐらいと女性 比は総合職でそのぐらいです。  一般職は、我々は決して男性を採らないと決めているわけではないですが、説明会 に200人来ると男性が数名混じっておられますが、結局2回目から来なくなります。 我々はウエルカムです。 Q17 採用の話で2万5,000人ほど応募があるという話でしたが、面接などは限られ た人数しかできないでしょうから、最終的に絞り込みの過程のプロセス、どのような ステップを踏んで内定者を決めていかれるかお伺いしたい。 A17 一つのプロセスをご説明しますと、基本的には面接中心で進めますが、前提と して2万5,000人から7,000人というのは、あくまでも当社に興味がありますよという ことでエントリーをしてくれた学生の数であって、今、学生はいろんな会社に気軽に ワンクリックでエントリーできてしまうので、全員が受けに来るかというと、実はそ んなことはないです。毎年2万7,000人のうち、実際会社説明会とかに来ていただけ る学生というのは、数で言うと半分以下の人、そうすると1万数千人、去年の実績で は、3職種全部合わせて多分1万4,000〜5,000人だと思います。  1次選考は能力適正検査というのを実施しています。基礎学力の部分での最低限の バーをクリアしていただくのと、あとは職務適性ということで会社の先輩社員のデー タなども全部ありますから、ある程度の職務適性、相関関係がありそうな指標のとこ ろはチェックして、適性検査でも一定の基準を設けて、そこでどうしても極端な乖離 の出ている人だけはちょっとご遠慮いただいて、基本的にはそこを通った人に面接に 進んでいただくということになります。  面接は、全体で3回です。課長面接、支店長面接、役員面接ということで、3回の 面接を経て内定ということです。1次面接は相当の学生を受け入れる必要があるので、 そこは毎年かなり採用の実務レベルではいろいろ苦労しているところです。本当に現 場の先輩社員をかき集めて、面接官の協力をお願いしているという、そんな状況の中 から徐々に候補者を絞っていくという流れです。 Q18 学生は何十社、人によっては100社近く受けたり、最初にエントリーシートを 書くのが大変だという話もあります。まさにその1次選考のところでプレエントリー などをやり、その後エントリーシートを出してもらってという形になるのでしょうか。 A18 当社は今エントリーシートは使っておりません。他の会社も本当に読んでいる のかなというのも疑問なのですが、世間一般的にはかなりの量を書かせるものが多い です。それよりは客観的にみられるのは学力であったり、適性検査などはきれいごと 書いてくるエントリーシートよりは随分客観性が高いのかなと、学生にとっても納得 性が高いのかなということもありますし、実際には当社の内定者、学生に就職活動の インタビュー、振り返りなどで、うちのこういう選考プロセスどう思うなんていうこ との振り返り評価をしてもらった中で、エントリーシートで合否を決められるよりは、 そうした客観的な能力検査とか適性検査で1次の合否が決まった方が、より納得性は 高いというような声もあり、数年前からですが、エントリーシートというタイトルで のもの、要は書類選考のみで合否を決めるということは止やめまして、適性検査、能 力検査に変えています。ただ、1次面接のときには、一応志望動機とかいろいろ書い てもらった履歴書のような申込書を書いて持ってきてもらっています。ただ、エント リーシートのように、それのみで合格、不合格を判断するというプロセスは今の当社 ではありません。 Q19 採用開始時期についてもいろいろ議論ありますが、企業の立場として、採用開 始の時期についてはどう思われますか。どちらかというと個別の企業の問題というよ りも全体の問題かもしれませんが、現在は少し早過ぎるのではないかなという気も確 かにするのですけれども。 A19 個人的には少し早いかなと思っています。理由は幾つかありますが、1つには 4月に一斉スタートのような流れになっていますが、4月は新入社員の研修という大 切な時期でもあって、できれば採用プロセスから関与した社員が一連の流れの中で新 人の研修、配属まできっちりフォローするというのが理想的に近いのかなというふう に考えています。そう考えると、4月に採用担当がまさに翌年の採用にかかりっきり になってしまうと、新人研修が研修担当という別の単独の担当にやってもらっている というのが現状で、新人にしてみると4月に入ったら、今まで世話になった採用担当 だれもいないという現状です。これは好ましくないのかなと。もう少し遅らせるとい うのもあるのかなと。  もう一つは、やはり学業、学事日程との絡みがあると思います。私が学生の時は夏 休みでしたし、技術系の人なんかは春休みなのかもしれないですが、4月、5月、新 年度が始まって一番学業とかで忙しいときに集中してしまうというのは、いろんな面 でよくないのかなと。どうせだったら、夏休み、もしくは3年の春休みとかいうとこ ろの方が、かえっていいのかなという気もします。よくないのは、今、4月に一極集 中しているということです。昔は昔でよかったかというと、それはそれなりに課題は あったのでしょうが、少なくとも今よりはもう少し時期が分散化していたという意味 では、学生も企業側も双方にとってよかったのかなという気はします。個人的な考え ですけれども。 Q20 女性の方も2割ぐらい採用されているという話や、一般職の方も多いという話 もありましたが、退職の場合、女性の方の退職が少し懸念されるというその辺の工夫 の仕方、一般職から総合職への転換のようなコースの組み換えなどをお考えになって いるとか、あるいは努力されているとかいったことがあればお伺いしたい。 A20 一般職から総合職へのコース転換は、制度として設けており、今年度はなかっ たのですが、過去7〜8年の中では毎年平均で大体2人から3人ぐらいというような 形で転換をしている人が出てきております。  退職のところですが、今、結婚して退職するというケースはほとんどないと言って いいに等しいぐらいに変わってきていますが、出産とかを控えて育児休業を取得する 社員も非常に増えてきているのですが、育児休業から復帰した後で、なかなか厳しく てお辞めになってしまうというようなケースがあります。その中の一つの、特に当社 の特徴としてあるのは、私どもの休み、住宅メーカーは大概そうですが、火曜、水曜 日が休みという体系になっていまして、特に土曜日、日曜日は出社という形になって います。土曜日、日曜日にお子さんを預けようとすると、なかなか民間しかなくて非 常に金額も高いということで、コスト的にも厳しかったりというような部分がありま す。  その辺、今、当社に限らず、住宅メーカーに限らず、土日だけでなくて、平日に休 みをとるというところも非常に増えてきておりますので、これはお願いですが、ぜひ とも土日にも安心してお子さまを預けられるような体制、環境をお願いしたいなとい うことは、最後にちょっとお伝えしたいなと思っております。  当社の独自の工夫としては、土曜日、日曜日に休みとする部署などもあります。配 置転換を行ったり、あとは短時間勤務ですとか、そういった形のもので、かなり制度 としてはいろんなものを持ってはいると思うのですが、ただ、なかなか運用的なとこ ろで、これは社内の問題ですが、周りの人、上司ですとか同僚の認識がまだまだ足り ないとか、そんな部分でどうしても制約を受けている社員がいたときに、周りからの 違いというところを、一定期間なのである程度見てあげればという部分もあるのです が、ただそうはいっても先ほど出されておりますように、競争や業績などの部分の関 連もありますので、なかなかその辺は制度を設けるだけでは難しいなというふうにと らえています。いかにそれを定着させていくかと、周りも理解した上でみんなで協力 してできるかというのを、社内、社会、両面からやっていく必要があるのかなという ふうに思っております。  補足しますと、一般職の社員の場合は比較的問題が少なくて、辞める理由は本当の、 例えば当社の場合は北海道に営業拠点がございませんので、ご主人が北海道に転勤し たというときに別居しないで辞めるというのはあります。一般職ですから、ほとんど 問題はないのですが、総合職、特に営業が総合職の女性で、そういった出産育児休業 明けに辞めてしまうとか、そういう傾向が強くて、工夫としては特に展示場営業とい う営業スタイルがあります。住宅展示場で来ていただいたお客様を接客して、それは 最も住宅業界でも競争の激しいところです。かつ、昔ほどではありませんが、夜討ち 朝駆け的な傾向が強い仕事なので、そこからはその女性営業の人たちは外して、当社 の家を建てた方からの紹介、企業からの紹介等、そうした紹介ルートの営業というの がありますが、要するに時間の制約がやや厳しくないところ、平日に働けるところに 配属している傾向はありますが、なかなかそうしたところは逆にお客様が少なくて受 注が取れないなど、そちらの問題が出てくるものですから、今、営業という意味では 試行錯誤しているところです。あと工夫としては、我々の会社としての工夫よりは、 現場の協力体制などそうしたところを支店長にも個別レベルでお願いしてやっていく というようなことに今なっています。個別の工夫では、例えば、一時期営業から外し て支店の営業事務のまとめ役をするなどの形で定着しているケースもありますが、ち ょっとそれはレアケース。営業は営業を本当はやってほしいのですが、事務的な仕事 をやってもらっているケースも出てきています。 <照会先> 政策統括官付労働政策担当参事官室産業動向係 03-5253-1111(内線7724) −1−