第1回産業労働事情懇談会議事概要  日  時:平成23年1月18日(火)10:00〜12:00  場  所:中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室  内  容:若手人材の育成と世代ごとにみた働き方  参加企業(業種):銀行 ○会社概要、企業の現状  設立が昭和27年1月18日、営業開始が3月3日です。戦後伸びゆく県下にあって、当時、 1県1行の中で、他の銀行が既にもう地方銀行としてはあったわけですが、かなり産業が 開けていく中、もう1行やはり地元のために役に立つ銀行が必要ということで昭和27年に 設立をしております。A銀行の前身のB銀行から、当時約半数ぐらい役員が就任して設立 したという経緯もあり、A銀行、今はC銀行になりましたが、今も、私どもC銀行フィナ ンシャルグループの持ち分適用関連会社に位置付けられておりまして、経営方針、戦略決 定、意思決定に関しては独自性を保ちながら、ただ、商品開発や事務機能などに関しては かなりノウハウ、アドバイスをいただきながら銀行経営を展開しているというところです。  資本金につきましては579億円、自己資本比率が9.55%、預貸金残高が、預金の方が2兆 119億円ということで、2兆になるのが念願だったのですが、ようやく一昨年、2兆円銀行 になることができました。貸出金残高が1兆5,300億ということで、これはメガバンクから 信金・信組等、全ての金融機関の資金量で並べてみると、大体真ん中ぐらいにいつも位置 付けられている、まさに中堅の金融機関というところではなかろうかと思います。  店舗数につきましては72店舗ということで、県内に71店舗、東京都内に1店舗となって おります。  行員数が1,295人です。ご参考までに、我々スタッフという呼び方をしていますが、3月 末現在で、パートタイマーが886人です。このいわゆるパートタイマーが非常に比率的に多 いというのもまた当行の特色なのかなというところでもあります。  平均年齢が37歳、平均の勤続年数が14年、これは地方銀行でみると、昨今そんなに大き く変わりがないと思います。  当行の設立と企業理念ですが、設立趣意書というのが残っていまして、昭和27年に当行 が起こるに当たり、「県内の実業は主として中小企業者の経営するところであるから、真 の中小企業者相手の庶民金融をその特色としたい」とあります。  創業の精神としまして、「県内中小企業の親切な相談相手たらんことを期する」という ことで、この設立趣意書の中に、何度も何度も親切な銀行になるんだということがうたわ れておりまして、県内でも親切な相談相手になるような銀行になろうということで起こっ たというふうに聞いております。  今は企業理念ということで、「地域とともに」「お客さまのために」「親切の心で」と 3つを掲げていますが、これが創業の精神、いわゆる親切な対応たる銀行になろうという ことが、今の企業理念に脈々と受け継がれてきているというところです。 ○人材育成  人材育成ですが、再生への挑戦と人材重視経営というところです。  ご存じの方はご存じですが、私どももバブルが崩壊して、銀行業界全体に暗い時代を迎 えましたが、そのとき県内もかなり不動産が活況を呈した土地柄でございましたので、大 きな赤字をこうむりました。平成12年には、かつてない多額の赤字を計上し、本当に当時 いろいろな銀行が倒れてしまう中で、我々も自己資本が大きく毀損しまして、地元のお客 様ですとか株主の皆様からご支援をいただいて、何とか平成12年、土俵際で銀行が生き残 ったというところであります。  そこから再生を期してということでいろいろな取組が行われてきました。人材を強くし ようという話も、その前から脈々とやってはおりましたが、新たな意味で新たな取組が始 まったというふうに我々人事の人間も考えております。  当然のことながら、いろいろなご支援を受けて銀行が生き残ったわけですから、かなり 収益力を上げていかなくてはいけない。経営ビジョン「少数精鋭・高収益で地域に信頼さ れるコアバンク」この経営ビジョンを掲げました。少数の中で高収益を上げていく銀行に 生まれ変わっていくんだというのが合言葉でありました。その過程におきましては、当然、 処遇の見直しということで、ボーナスについてはそれ以前よりも削減されるとか、福利厚 生などもそぎ落としながら、どこまで筋肉質になれるかという取組を行う一方で、あわせ て、当然そうした大きな赤字を計上して、公的資金が入ってということになりますと、退 職者、辞めていく人もかなり多くいました。銀行としても早期退職優遇制度もやって、当 時45歳、50歳以上の人が多かったのですが、当時2,000人弱ぐらいいた銀行でしたが、100 人ぐらいの方がその早期退職に応じて辞められ、若手・中堅層も将来に対する不安という ことで、銀行を離れていく人がかなり多くおりました。同期にしても先輩にしても後輩に しても、この銀行で働き続けるのは不安だということで辞めていった人が非常に多くて、 私も当時は本当に寂しく悲しい思いをしたのを記憶しております。  一方で、今度は高収益の銀行に変わっていかなくてはいけないということで、仕事はど んどん増えていきますし、高度化した仕事をしなくてはいけないというふうな状況に当然 なってきます。そうなりますとおのずと頭数、人の数も足りないし、人材も不足している というところからして、人材不足の状態から再スタートと、「『人材重視経営』の必然 性」というのがここで起こってきたというところです。  少数精鋭、たくさん人も辞めていきましたし、少数には必然的になっていきましたが、 少数が精鋭になるにはどうすればいいかというのが非常に難しくて、「少数精鋭の体制作 り」ということで、これまで当行も本当に銀行特有の男社会、縦割り社会でしたけれども、 女性ですとか若手を登用しようと考え方を変えました。優秀な人もこの時期辞めてしまい ましたので、とにかく今残っている人間、男性だろうが、女性だろうが、若手だろうが、 とにかくみんなで頑張ろうよと。あわせて補助戦力としてスタッフ、パートをかなり多く 入れまして、スタッフ、パートにもいろいろな仕事を担ってもらうというようなことをや り始めました。やれと言うだけだとなかなか難しいので、研修体系を強化し若手も女性も、 今の仕事ですぐに使えるような研修をどんどん仕掛けていくというようなことをやってい きました。一方で、銀行の中での専門性の高い人材が抜け落ちてしまいましたので、ここ も育てていかなくてはいけないということで、人材育成の新たに取組を始めました。  人材重視経営における人事部門の取組ということで、当然、人事部門の使命は、「良い 人材を採用し」「動機付けし」「保ち続けること」ということで、まず採用では、少しで も良い人材を採用し、折角当行に入ってきてくれた人たちに動機付けし、しっかりキャリ アを持ち、やる気を保持してもらい、まさに退職することなく高い生産性を持って働き続 けてもらうと、この流れが重要ということで取り組んでまいりました。  しかしながら、採用も公的資金が入っていたりしますと、私どもの県は地方銀行が3つ ありまして、当然、金融機関を目指す学生は、この3行とも就職活動で受験しに来ます。 複数行内定をいただければ、当行は公的資金も入っているし、厳しそうだぞというような ことにやはりなりがちです。そうはいってもいい人材に集まってもらわなくてはいけない ということで、採用も当時から工夫しまして、隠してやっていてもしょうがないだろうと。 当行は公的資金が入っているけれども、こういう取組をしてこういう方向でという銀行の 内情を全て学生にさらす中で、一緒にやっていっていただく学生を、共感してもらえる学 生に何とか一人でも多く入ってもらい、一緒に再生の道を歩んでもらうような学生を採用 するためにも、胸襟開いて、当行はこういう状況ですということを知っていただく中で採 用をやってきたことで、最近は非常にいい学生に集まってきていただいています。  女性で優秀な方も非常に多くて、私ども入り口のところで総合職とか一般職という区分 はしていなくて、全て総合職で採用していますので、入り口のところから男性だから、女 性だからということで行く道はそれぞれ一つですよということがないようになっています。 優秀な女性にも入っていただき、普通に銀行の仕事、以前では考えられなかった中小企業 の貸出を担当してもらっています。中小企業貸出をやりたい仕事とする、女子学生も割と 多いです。大きな銀行に入ってしまうと、例えば、今はやりの投資信託など運用商品の販 売窓口しかやらせてもらえないですとか、住宅ローンとかローンの担当者しかやらせても らえないとういうケースも多いので、女性でも中小貸出を担当できるということを採用時 の売りにしています。  当行に入ると、中小企業貸出しもチャレンジさせてもらえるのですかという話などもあ り、うちはもうなんでもやってもらうよと。逆に言うと、男性だろうが女性だろうが、職 種を絞っていないから、何でもやってもらうよということで広げていきますと、割と優秀 な女性、まさにやる気のあるいろんなことをやってみたい女性というのが集まるようにな ってきました。非常にアゲインストの風が吹く中で、工夫していきながらいい人材を採用 していくというのは、かなり今苦労しているところでです。  一方で新人行員につきまして、平成12年から数年はかなり採用人数が少なくなっていま したので、早く戦力化してもらわなくてはいけないということで、この世代は1年とか2 年とか、おそらく他行よりも早いスパンで一人前になって、中小企業の社長のところへ行 って営業してもらうというふうになるにはどうすればいいかといったところでやってきた というところです。  「保持」ということで、長く一つの企業で働いてもらうということでは、仕事と生活の 両立支援ですとか労働条件の整備というところも非常に重要だということで、この辺もか なり力を入れてやってきました。  平成12年、当行が非常に危機的な状況の時期は、本当に夜を昼に変えてというか、不夜 城と言われる程ずっと電気がつきっ放しの銀行で、当然、生き残りをかけた戦いをやって いたもので、仕方なかった部分はありますが、ある程度落ち着いてきてからは、このまま ではいけないということで、時短の取組、ワークライフバランスなど、先ほどもお話しし たとおり優秀な女性が大分集まってくるようになりましたので、彼女たちが、例えば、出 産とか育児という、どうしても超えなければいけないライフステージの中で、それを機に 退職されることを極力避けようということで、その辺の取組も進めてまいりました。  名刺にくるみんマークを刷ってありますが、このくるみんは、県内では第1号で当行が 取得しました。くるみんマークは、他社においては人事担当者の名刺にしか刷っていない ということも多いのですが、当行は名刺を持っている人間全員の名刺に刷り込んでありま す。中には、このマークは何だっけと分からない人も結構おりまして、それはそれで聞い てきてくれればいいのかなというのもありますし、お客様に名刺を配って、「何だい、こ のマーク」と聞かれれば、こうした取組をやっておりますと行員も説明するわけです。そ こで振り返って、本当に当行はそういう企業なのかと思った時に、できていないというの もやはり格好悪いので、お客様にもうちは第1号で取得し、こうした取組をやっています というのが胸張って言えるような銀行になればいいなということで各種取組をやっており ます。  育児休業も、今、当行は3年取得できるようにしています。お子さんが生まれて向こう 3年の年度末ですので、4月生まれのお子さんだと、ほぼ4年程休めるような形になって います。年度末に保育園とか保育所があく機会が多いということなので、いわゆる生まれ 月までの3年で切るのではなくて、その次の年度末までの方が取りやすいだろうというこ とで、そうした制度づくりをします。ですからお子さんができたほとんどの方は産休・育 休に突入して復職してもらっています。  去年辺りから、今度は育児休業期間を3年にしましたので、今までは短ければ半年から 1年で復帰する方が多かったのですが、3年となると、相当の期間なので、その間銀行も どんどん目まぐるしくいろいろな事が変わるので、出てくるとき不安ですというのが非常 に多くあり、今その辺の復職支援のプログラムも、休業中にこちらから育休の方にお便り を出したり、今度復職してくる時は、最近の事務規定がこう変わっていますというのを、 基本的には現職復帰で、お休みに入られた営業店支店に戻ってもらうのですが、その前に 一回本部で研修をかけて、最近銀行の中で変わったことはこういうことですというのを一 回整理していただいてもう一回戻っていただく等、そうしたことで長い休みに入る人達の 不安を払拭するということも併せて昨今の取組ではやっているというところです。  早く帰ろうというのも、まさに世代ごとにみた働き方なのでしょうが、昨今の若い人達 は、ワークライフバランスの考え方も浸透し、昔の人達の仕事一辺倒、入ってきたら会社 色に染めて、がんがんやってやるぞというのはなかなか馴染まなくて、自分の生活との調 和を図りながら仕事は仕事で一生懸命やるという考え方の方が多いので、ある程度メリハ リをつけた仕事、当行では水曜日をリフレッシュデーとして、6時までに全員が退行する こととしています。銀行は便利なもので、営業店一つが金庫みたいになっていますので、 警備会社が時間をセットすると、人事の方に、何時にこの店はロックアウトしましたとい うのがデータで出てきますので、そのロックアウトタイムで必ず6時までに出てくれと。 6時に帰れないところは、理由を申し述べて振替をしてくれということで、週に1日は徹 底的に早く帰ることにしています。当然、月、火、木、金にしわ寄せがきてしまう部分も ないと言えば嘘になりますが、週の真ん中を早く帰ろうよというような取組をするように なり、雇用情勢もあるのでしょうが、かなり退職率というのは減ってきていると思います。  多くの人が辞めてしまった時代があり、その後も新しい人が入行してきますが、一時は 3年で3割辞めていくという話を大きく上回り、やはり入ってみると当行は大変な銀行だ と改めて分かって辞めていく人も、悲しいことにあり、多いときは3年で4割を超えてい た時期も正直ありました。ただ昨今この辺で落ち着きを取り戻してきて、両立支援ですと か、時間短縮への取組をすることにより、今は本当に3年で1割弱ぐらいになってきまし た。もちろんこの取組だけじゃなくて、市況、労働環境、雇用情勢もあるでしょうが、や はりこうしたところで落ち着いて長く働いてもらえる環境も一面整ってきているのかなと いうふうに考えております。  平成12年に危機的状況を迎えて、さあ人だ、人材育成だというふうになった後、平成14 年に人材開発室というのを設立しました。元々どこの会社にもあるように、人事部の中に 研修担当、研修チームがありまして、そこを個別に一回人事部の外出しに人材開発室とい うのを独立した部署で設けました。それから9年やってきましたが、昨年、改めて人事部 内にもう一回人材開発室を戻しました。いずれにしても人材開発室が育成研修を専門的に やっていくという部署として独立しました。ここで各部の教育とか研修機能を集約しまし て、銀行の中でも融資の審査をする部署、投資信託を売る部署、いろいろな部署がありま すので、そうした部署でこういう人を育ててくれとか、次の時代に向けてこういう人づく りをしてくれというオーダーが、今まで人事部にきていたのですが、それを人材開発室と いう一つの窓口で受けて、研修カリキュラムを組んでいくというようなことにしていきま した。人材開発室につきましては、春先の採用活動には、人事部の我々企画担当の方と一 緒になって採用活動も一緒にやってもらう。昨今の入ってくる若い人、学生の動向等考え 方なども一緒に肌感覚で味わっていただいて、その後、新入行員の研修に生かすというこ とで、採用は人事部総出でやっているというところです。  参考までに、スタッフサービス部の設置についてですが、1,300人ぐらいの会社に対して 800人のパートがいる銀行ですので、スタッフ、パートの管理が非常に重要になってきてお ります。元々は人事で全部一体化していましたが、今、パートタイマー専門の人事管理、 教育・研修部署としましてスタッフサービス部というのをつくりました。業務委託会社で 関連会社に当行のビジネスサービスというのがあるのですが、この中に設置し、以前銀行 で働いていた人たちがパートタイマーのケアをしている。また、事務規定、販売商品とか 変わったときは、ここでパートに向けて研修をやってもらう。併せて、各営業店に臨店で 廻りまして、スタッフの悩みや普段の仕事の中での困ったことなどのヒアリング等をやっ てもらい、問題あることについては銀行本体の方へ知らせてもらって改善していくという ような専門部署を設置しているところです。  続いて、人材重視の経営としての新入行員の早期戦力化についてですが、平成12年、当 然、非常に厳しい時代から12年、13年、14年、15年ぐらいまで非常に採用を抑えていた時 期がありました。ちなみに平成12年というのが男性は3人しか採用しなかったという非常 に厳しい時代もあり、13年、14年も数人しか採っていない。平成12年の新入行員は、今平 成23年になろうとしていますから、本年10年選手になろうとしている、この辺の中堅層が 非常に層として薄いというところが、これから管理職に上がっていく手前の人間が少ない というのが非常に人員構成上課題となっています。そうした時代もありまして、新入行員 がその後入ってきても、いわゆる職場にお兄さん的な存在とか、お姉さん的な存在がいな く、すぐ上が役席者だったりという時代が平成16年以降続き、そこもまた離職が出てくる 原因だったのかもしれませんが、そうしたこともあり、本部が主導、いわゆる人材開発室 が主導になり新入行員育成プログラムというのを強化しました。  プログラムの中に「融資渉外コース育成プログラム」「店頭営業コース育成プログラ ム」というのがあり、これが新入行員の育成プログラムになっております。  当行の場合、入り口で総合職とか一般職の分けをしないものですから全員総合職で入っ てこられます。ただ、入るときに、コースだけ選んでもらうような形になっています。融 資渉外コースというのと店頭営業コースというのがあり、融資渉外コースは、まさにロー ンでも中小企業貸出しでも何でもやっていくというような形です。店頭営業コースという のは、銀行でいうと、まさに店頭の窓口、テラーと言われていますが、窓口から後方の通 帳の作成や送金・為替業務、今は預かり資産販売などもこのコースでやっていますが、2 コースに分かれて、その段階でそれぞれ独自のプログラムをかけていくというところです。  かなり足早にコースを組んでいまして、1年目、2年目、銀行の中でも係とか色々な担 当がありますので、一つには、2年間の間にやる係をこのプログラムにのってくるくる変 わってもらう。ある程度これ位の到達レベルまで達しましょうという到達レベルを示す。 本部でやる研修はこうですよということで、その時期、その時期になるとこういう研修に 来てくださいという研修の時系列的なプログラムを組む。あわせて、行内試験があり、行 内のこの種類の試験を受けてくださいですとか、外部の業者が行う試験がありますので、 外部の試験、通信講座についてはこうしたのをこの期間に受講してくださいということで、 現場のOJTと本部のOFF−JTと言われている研修、自己啓発、自分でやるところの 3本立てをこう流してくださいというのを融資渉外コースと店頭営業コースでそれぞれ示 しているところです。3年目の春ぐらいになったら、もう一人前になって接客ができ、営 業ができてというふうになっていこうということでプログラムを組んでおります。  プログラムに基づく計画とジョブローテーション管理表というのがありまして、この頃 になると担当代わってくださいとか、この頃にこうした研修に行っていますか、こうした 試験を受けていますか、OJTとしてこうしたことを教えていますかというのを管理して いってもらう表があります。新入行員A君、B君、C君に1枚ずつ起こして、職場の、例 えば課長、副支店長、支店長の方で管理してもらうとことになっており、時々人材開発室 の方へ提出してもらい、進捗をこちらの方でも管理しながら、例えば進捗スピードで何か 問題があったり、何か壁にぶつかったり、職場でいろいろと何か問題があったりしてジョ ブのローテーションができないなど育成がうまくかけられないというところについては、 人材開発室の方からアドバイスをかけていくというような形で行っております。また専門 性のある若手の人材育成、新入行員一律の育成体制ということで、この2年目までは、徹 底的に基礎的な教育をかけていくというところで行っております。  ポジティブ・アクションの取組としては、人がかなりいなくなった中で、女性の能力を 活用しようというのをやってきまして、かなり成功しているのかなというところもありま す。採用にあたりとにかく男女の区別なく人物・能力本位の採用を徹底し、女性行員の職 域の拡大等をやってきました。従来、本来ここは男性がやるべき仕事と、イメージがくっ ついているところがあると思いますが、そうしたところにも女性を積極的に配置していっ たということで、営業店の融資・渉外業務、融資などお客様を廻って渉外していくような 業務も、女性比率というのが23%になりました。私が入行した当時、20年以上前ですが、 女性で渉外する人などというのは全くいませんでしたので、それに比べれば本当に驚くべ き比率になってきたなというところです。  本部業務ですが、銀行の本部というとある程度年齢を重ねた男性の偉い方々が集まって くる部署というイメージが当行にもありましたが、今は女性が71名本部の企画部門にいま す。どういうふうに推進を回していくか、どういう新商品をつくるか、どういうキャンペ ーンを仕掛けていくかなど企画部門に女性が入っています。中には経営企画部、リスク統 括部など本来いかにも男性がやりそうな職場でも女性が活躍していうのが実情です。  女性行員の管理職登用ということで、やる気と能力のある、中堅からベテラン行員を管 理職に積極的に登用する。今、全管理職に占める女性比率は14.5%。全営業店72か店のう ち、今、女性の支店長というのは4か店配置しているというところです。  こうした取組の中で、採用と女性の活用ということで積極的にやってきたところもあり、 「学生に聞く企業の採用活動満足度」調査で、平成16年、17年頃にはかなり金融部門で上位 の評価を頂きました。就活中の学生も当行に行くといろんなことを教えてくれるという事 で、中には、まるっきり当行に入ってくれる人だけを引きつけるような採用セミナーだけ ではなく、例えばフレフレ就活セミナーというのは今もやっていますが、まだ就職活動初 期の学生たちをとにかく集めて、エントリーシートの書き方、グループディスカッション のやり方、当行に興味ある、興味ない関係なく、昨今の我々人事が知っているいろんな採 用の方式等を体験させてあげるから、みんな集まってみない、というのをやってみたり、 今年から始めたのですが、行員の家族にも割と息子さん、娘さんの就職を心配している人 たちがかなりいます。そうした方々も人事のイベントに呼んできて、当然どこか別のとこ ろ、親御さんのいる会社なんか嫌でしょうから別のところに就職されるのでしょうが、そ うした方々も集めて、昨今のグループディスカッションのやり方、面接のやり方、エント リーシートの書き方などを教えてあげる。お取引先のご子息、社長の方がお孫さんの就職 を心配しているわけです。うちの孫、入れるだろうかと、そうした方々に是非来てくださ いと。来ていただいて、こうだよと、いろいろ就職活動厳しいと言われていて心配してい るけど、今、我々が知りうるノウハウ、こういう感じでやるとイメージいいよなど、そう したフレフレ就活セミナーのようなのものを行った関係もあり、非常に満足度のところで 上位を占めさせていただきました。女性のポジティブ・アクションの取組も、最初、本県 の労働局長賞というのをいただいきましたが、平成16年には、まさに厚生労働大臣賞、時 の坂口大臣から表彰状をいだたくことができたというような取組も行ってきたということ で、ここはご紹介までというところです。  キャリア開発支援をやってきますと、人材重視経営の副作用ということで、女性にどん どん活躍してもらいます、活躍の場を与えますとやってきました。若手も、場合によって は、他行ではまだ支店の中で業務を覚えている時期から、当行においてはもう顧客折衝や れますよと、早い時期にやりたい仕事、どんどん高レベルの仕事ができますよ、格好よく 言えばそうですが、これを一生懸命推進していくと、やはりひずみというものも多少出て きます。  例えば、女性で言えば、新たな職域、今自分がやっている仕事以外のもっと広いところ へ踏み出していきたくないという女性も中には出てくるとか、無理して管理職、役職には 就きたくないという方も出てきます。若手もどんどんやってきますので、ピッチについて いけない人も出てきたり、責任の大きさに耐えきれない若手というのも出てきます。これ を放置すると、士気の低下、退職者の発生というのにつながってくるということで、「人 を大切にする施策」というのをもっと打っていかなくてはいけないということで、2004年 にキャリア開発支援体制というのを確立してまいりました。まさに「行員の「本気」に対 し「本気」で応える人事体制を目指す!」キャリア開発支援体制というのを構築したとい うところです。  キャリア開発支援窓口というのを設置しておりますが、行員が主体的にキャリアを考え た上で起こる、不安とか悩みについて相談・支援するということで、銀行業界では当時初 だと言われていましたが、キャリア相談窓口というのを設置しました。人事企画の方は、 ある程度いろいろと人事評価ですとか人事異動ですとかを司るところですので、関係のな い人材開発室の中に設置窓口を置くので、そこで相談したことは人事企画の方には回さな いから何でも相談してきてくれというような形にしました。未だに人材開発室の方にきた 相談がどんなことだったかというのは、人事企画の方は知りません。  キャリア相談窓口と銘打っておりますが、あながちキャリアというか、自分のこれから どういった職務・職位を通じて、銀行の中でこういったことをやっていきたいというキャ リアに関する相談だけではなく、割と職場の人間関係のことであったり、やってみるとよ ろず相談所みたいなところにはなってしまったのですが、それはそれでいいのかというと ころもありまして、そうした窓口を置いて運用しているということで、キャリア・アドバ イザーについては、それ専門というよりも、人材開発室の者が兼務したというところです。  あわせて、もう少しキャリアについてきちんと考えてもらおうということで、同年10月 にキャリア開発研修というのを開始しました。まさに「銀行の再生への挑戦が続く中で、 今後更に必要となる、行員一人ひとりの意識・意欲の向上を、自身のキャリア開発を通じ た、前向きな変革姿勢をもって実現させる。」ということで、各種キャリア開発研修とい うのを開始しました。これは新卒採用時・採用内定者時からベテラン行員までの一貫した キャリア教育を行っていくということで、ある程度キャリアの節目ごとに研修機会を設定 したというところです。  「22年度行員研修体系」は、「フレッシュマン」「ヤング」「リーダー」「マネージャ ー」「トップマネジメント」「階層別研修、キャリア研修」ということで、それぞれの年 代、ステージにおいて「ヤングキャリア研修」、「キャリアメイキング研修」、「キャリ アプランニング研修」、こうした階層別にキャリア研修を置いていこうと、入行何年目と いったところでお呼びして、キャリアについてある程度立ち止まって考える研修をやって みようということでやっております。  個々にみていきますと、まず新卒学生向けキャリアガイダンスで「就職活動応援セミナ ー」、フレフレ就活というものですが、これで当行でのキャリアの考え方とか、これは学 生向けです。次は内定式が終わった後、採用内定者向けキャリアガイダンスということで、 採用までは人事企画の方で担当しますが、内定式終了後は人材開発室の方で内定者教育、 今度銀行に入ってみたらどういうことがやりたいのかというようなことの気づきのところ を行う内定者向けキャリアガイダンスというのをやっております。  次に、新入行員向けキャリア開発研修。ここは、キャリアとは何か、節目とは何か、節 目をデザインするというのはどういうことなのか。良いキャリアの積み方、セルフストレ スマネジメント能力の習得など、時間帯的にはこんな帯でやっていますというところです。 まさに真っ白なフレッシュなところでですので、入り口のところでこういう説明をさせて いただくというところです。  3年経つと、大体銀行や一回入ったお店、部署から異動する時期です。初めての転勤。 入ったお店、部署では、新入行員から入ってきているので、周りの上司、先輩、パートも 新入生ということで甘えが許されましたが、3年目になって初めての転勤をするとそうも いかなくなる。これから自分どうやって働くんだろうとか、どういったところに強みを見 出していくべきなんだろうということで、この時期に一回ヤングキャリア研修というのを 行っています。まさに自らの「強み」の認識とキャリア意欲の向上を図り、チャレンジン グな20代の育成を図るというところです。行内のキャリアパスやキャリアゴールを認識し、 自分は将来どの方向に進むのか、今後のキャリアの方向性をデザインするということで研 修をやっております。  今度は7年目です。ここら辺になりますと、初任の役席が課長代理というのになります が、大体課長代理ちょっと手前ぐらいです。7年目行員向けキャリア開発研修会、キャリ アメイキング研修会ということで、目前に管理職昇任を控えた世代に対して、自己をモチ ベートする「コアスキル」を確認し、日々の仕事においてキャリアを開発していく方法を 習得させる。また、上司と後輩行員との間のパイプ役としての認識及び今後の自己の方向 性を探求する等の研修をやっております。  入って当初の頃は、同期が研修で集まることが多かったのですが、この頃になりますと、 ほとんどが自分の現場現場で割と役席一歩手前のそろそろどこの支店でもかなり頼りにさ れ中核として扱われるようになった人達が一堂に会すると、言い方は不適切かもしれませ んが、同窓会的な意味合いもかなり含まれてきます。資格昇格が早いの遅いのとか、いわ ゆる仕事ぶりの評価がどうのこうのではなくて、まさに同期が全部集まり、研修の終わっ た後の飲み会の方が実は重要なのかなと一方で思っているところもあり、ガス抜き的な要 素も含んでいるのかなというふうには考えています。  今度は17年目行員向けキャリア研修、キャリアプランニング研修ということで、銀行に 入って17年目といいますと、新卒23歳ぐらいで入ってくると40歳ぐらいです。これも17年 目を迎える同期が一堂に会します。かなり銀行の中でのキャリアは、それぞれの道、役職 も副支店長ぐらいの人からまだ課長代理ですよとか、いろいろな歩み方をしてきた人たち がここで集まります。ここでこれから40代を迎えるに当たり、この銀行というフィールド で何をするんだ、自分は何を頑張るんだというのを改めて考えてもらう研修にしています。 外部講師を入れてやるのですが、本当に振り返って次を展望するいい研修になっているの かなというふうに思っております。  最後に27年目行員向けのキャリアマネジメント研修、23歳で入って大体50歳です。銀行 での最後のステージということで、当行は一応60歳が定年退職で、今、継続制度で、希望 すれば役割をかえて65歳まで銀行もしくは関連会社で勤められるようになっていますが、 そうしたのも含めて、今後銀行の中でどういう仕事をしていくんだ、何歳まで勤めてどう いう仕事、また今まで自分が歩んできた職歴の中で更に何が生かせるのか、銀行に役立て ることができるのか等を最後のステージに向けてということで改めて考えてもらう。こう したキャリア研修を段階的に仕掛けているといったところです。 ○各種制度   制度を幾つか紹介します。「自己申告制度」ということで、これは毎年1回、年度始め に「自己申告書」というのを全行員に出してもらっています。割と短期的なキャリアの開 発計画というのを書いてもらうような形になっています。あくまで自分のキャリア・ビジ ョンとかキャリア・アンカーの展望も毎年春先に考えて出してもらっています。その他に もどうやって勉強していきますとか、健康状態とか家族の状況がどうだとか、いろいろな ことを書いてもらい、人事としてはその人の状況を見ながら人事異動などの参考資料とし ますが、ここにキャリア・ビジョンとかキャリア・アンカー、自分は例えば最終的にはF 支店長になりたい。F支店長というと、当行でも割と大きな法人を相手にする支店ですが、 そこの支店長になるにはどうすればいいか。今営業店でずっと営業活動をやっているけど、 ここはひとつ歩みを止めて、審査部で営業店から上がってくる融資の審査をする側の目を 養ってから支店長になった方がいいのだろうかとか、そういったところを考えて一回審査 部を経験してみたいです等があれば書いてくださいというような形になっています。逆に、 我々人事としては、年に4回、4月と7月と10月と1月に大きな異動をかけますが、その 前に、都度「自己申告書」を見て、中堅・若手層で本部の業務にチャレンジしてみたい、 もしくは経験してみたいという者はいないだろうかということで、この辺の希望も見る中 で人事異動を仕掛けていくときの参考資料にさせていただいているところです。  人事部門につきましては、我々は72か店しかありませんので、年に2回、全店を人事部 スタッフが臨店して、その都度、行員との面接を行います。その中でも、今後やりたい仕 事ですとか、目指すところの話などもしますが、キャリアの研修に呼ばれるような世代に つきましては、「キャリアシート」というのを作ってもらっています。先ほどの世代の節 目で、改めてキャリアについて考える。こういう部署とこういう部署とこういう部署を経 験して、こういう支店長になりたいですという、一つのラインを自分で考えてもらいます。 自分がこういう支店長になるためには、こういう部署とこういう部署を経験した方がきっ と強くなれると思います、いい支店長になれると思いますというのを自分で立ててもらっ て、それを人事の者とシートを見ながら、こういう歩み方も一つあるよとアドバイスをし、 また本人の目指すところを確認しながら次の異動、配置にも活用するといったところをや っております。  「自己申告書」は、どうしても支店長を通じ、支店長のコメントも入れて人事に出しま すが、世代ごとの「キャリアシート」は、一切課長、支店長等上司を通さなくていいこと になっています。課長、支店長の目に触れずに、直接人事に出してきなさいということで、 世代ごとの「キャリアシート」はまさにノーチェックで上がってくるということもあり、 割とみんな恥ずかしがらずに書きたいことを書いてくれるというところもあろうかという ところです。  「ポスト公募制度」は、経営環境が大きく変化する中で、銀行業務はかなり高度化して いるということで、これらに的確に対応する経営ニーズと、行員個々が主体的にキャリア ・ビジョンに基づくニーズの統合を図る目的で実施しております。  ポスト公募、例えば、審査部の審査役をやりたいですとか、営業統括部のナレッジセン ター、ソリューションチームといってお客様に高度な金融商品を提案する部署があったり、 経営企画部で銀行全体の施策を考えたり、そうした本部各部からオーダーのあったポスト について年に2回、こうしたポストにチャレンジしてみたい人はいませんかということで 応募しています。手を挙げて来てくれた人と面接をやり、双方のニーズがマッチすれば、 次の異動でそのポストに入ってもらうというようなことを制度的にやっております。  「トレーニー制度」、一方で自分のやっている今の業務のスキルを向上させるというこ とと、あとはキャリア開発の目的ということで、各種トレーニー制度というのをやってお ります。「トレーニー制度」というのは、短いと何日間というのから、1週間、1か月、半 年とかいろいろな期間のものがあるのですが、その間、例えば一つの営業店、F支店で勤 務しているものが、例えば、審査トレーニーをやりたい、長期の審査トレーニーをやりた いということになると、しばらくの間、F支店を離れて審査部に来て、案件審査をする審 査役の人の横で勉強しながらやってもらう。当然、彼が支店に帰ったときに、案件取り上 げの、いわゆる目利きの部分が鍛えられるというものが一つと、もう一つは、銀行の中で こういう審査する部署、もしかしたら自分、こういうところ向いているかもしれないとい う気づきの部分もありますので、そうした中で、今の自分の仕事を強くするということ。 これからのキャリアを開発していく意味で、双方で「トレーニー制度」というのをやって おります。異動で手を挙げるのはどうかもしれないけれども、練習の意味でトレーニーな らやってみようかというのは、非常に効果的なところでございまして、銀行も、例えば資 金証券部門、国際部門等ではかなり時間をかけて人を育てていかなくてはいけない部分も ありますので、なかなか我々も自己申告制度とかでやりたいという人間を探してくるので すが、やはりこういうのにチャレンジしていく人間というのは、ある程度興味もあって、 そうした仕事に一回チャレンジしてみたいなと思っている人間なので、ある程度トレーニ ーを受け入れた部署の方でも、今度トレーニーで来た人非常にいいよ、やる気もあって、 覚えも早くて資質があるよということになると、将来的に、例えばそうした資金証券部と かに配属していく、そうしたことにも使えていきますので、この「トレーニー制度」とい うのは非常に役に立っています。  「女性渉外トレーニー」、融資渉外コースの女性行員は最初のうちは住宅ローン、消費 者ローン、マイカーローン等をやることが多いです。その後、いざ、今度中小企業貸出し、 社長のところに行って、中小企業貸出しについてご提案してきなさいと言っても、これを 現場で、さあ、ミニカに乗って行ってきなさいというのもなかなか厳しいものがあります。 融資渉外トレーニーということで、本部部署や特定の営業店でトレーニーをお願いして、 女性行員が融資渉外になるに当たって一定期間、誰かについて一緒に勉強させてもらうと いうという期間をとらえると、割と女性でもスムーズに渉外活動に入っていける。中小企 業の社長の方々は、海千山千の人が多くて、中には、うちの担当が女性になっちゃったよ、 うちって軽んじられているのかなと本当に口に出して言う人もいます。社長の方の中には、 いざつき合ってみると、かえって男性よりも思ったこととか言いたいことを率直に言われ て、かえってよかったよと、なかなかふだん男性言わないもんな、そういうこと、という こともあって、最近、女性渉外トレーニーが社長のところに行って相対しても、臆するこ となくやれているというのも、入り口のところでトレーニーを入れて、スキルの高い男性 行員と帯同訪問を行なうことで、こういうやり方なんだとか、しゃべり方はこうなんだと か、こういうのを学んでいただくと、非常に効果的なのかなというふうに最近感じており ます。  だんだん女性渉外も先輩行員が複数いるようになり、ロールモデルになるような女性が 出てきたので、ああいう人って格好いいよね、颯爽としているよねという人が出てくれば、 かなりしめたもので、次からまたああいう人になりたいということで、こういった渉外ト レーニーとかにチャレンジしてくる人も出てきたというところです。  次に「メンター制度」ですが、これは平成22年度、今年度から取組を始めてみました。 これは、若手行員同士のコミュニケーションを強化し、新入行員の自立支援並びに早期育 成・職場定着を図るということで、「メンターの役割」は、一つには、新入行員に対して、 職業人として模範となるモデルの役割を担う。社会人としての基本的な姿勢や行動を指導 し、人間関係の構築を図る。新入行員の各種相談に乗り、新入行員の自立を支援し、この ようなことでやっていきましょうということでなっております。  メンターってどういう人がなるのかというところですが、いわゆる相手方は新入行員を イメージしていますので、当該新入行員が所属する部店以外の中堅行員から、ロールモデ ルとなるような行員を人事部長のほうで指名するというやり方をとっております。  先ほどの新入行員育成プログラムの中で、自分の所属した営業店・部署には、指導員と いうのが従来からおりまして、仕事を教える役割の先輩行員です。例えば、業務課で預金 後方端末を打ったり、為替の事務をやったりということで、それを教えてくれる、業務の 方であれば少し年上のお姉さんみたいなのがついて、今度はこれをやってみようかとか、 これを教えてあげるから、今度これにチャレンジしてみなさいという、仕事を教える指導 員というのは、同じ職場で必ずひも付けした人がいるのですが、要は、メンターを取り入 れようという話の中では、やはりなかなか同じ職場の人にはできない悩みってあるでしょ うということからです。  当行に就職しても、毎日毎日通う例えばF支店だと、その人にとっては支店が会社の全 てなんです。支店長が社長で、課長がその上司でと、毎日毎日会うのは支店の30人ぐらい の人間で、なかなか銀行に入社したけれども、毎日は支店ということになっていますので、 支店の中でのことしか分からないというところもありますので、逆にメンターは同じ支店 の人じゃない人、近隣の店舗の、役席一歩手前ぐらいのお兄さん、お姉さんを指定して、 1人について5、6人の新入行員をひも付けして、もちろん銀行の方で、この人ならとい う人をメンターに選ぶのですが、いわゆる仕事以外のところで相談できる人をつくってみ ようということでやり始めました。彼ら、彼女ら、新入行員にとってみれば、毎日、支店 で言われていること、やっていることが絶対で、他は知らないわけです。たまに研修で同 期の話なんかも聞くでしょうけれども、そうでない部分もかなりある。7年、8年たって いる先輩だと、もう3か店目とかで、いろいろな人にも出会っているし、いろいろな支店 長にも仕えている。自分も辛いこともあったし、厳しい経験もしてきたという中で、話を してもらい、そこである程度、その人にとってはものすごく大きな悩みかもしれませんが、 話すことによって、いや、そういうことってあるよ、実は自分もそういうことあったよと いうことで、メンタル面のケアをしてもらうことで、また次の日からうまく働いてもらえ ればなということでメンター制度を今年からやっております。  定期的に、今は携帯メールの時代ですので、自分の兄貴分、姉貴分のところにメールし て、やりとりをしているようですが、ここもあまり人事は何しているのとか、どんな悩み があったのとか、誰それ支店長が嫌ですとか、あまりそうした話はメンターからも聞かな い。自分らで悩み相談に乗ってアドバイスをしてくれと。よほどメンターが聞いていて目 に余るようなことだけ人事の方に相談してくれ、後のことは告げ口みたいになっちゃうか らいらないし、それをやっていると、人事がそれで動いたということが分かってしまうと、 ますます相談しなくなるということで、割と今自由に初年度ということもありやらせてい ます。今年度が終わったところで総括してみて、次年度以降どういう仕掛けにしていくか というのは考えなければいけない部分もあると思いますが、今そんな感じでやっておりま す。  「行員転換制度」、いわゆるスタッフ、パートが行員転換できる制度というのをやって おります。スタッフのキャリアアップイメージということで、スタッフの中にも働き方が 幾通りかありまして、レギャラースタッフというのはショート1日5、6時間勤務から、 ロング1日7時間勤務という人がいて、いろいろとご都合にあわせた時間帯で働く人がい る。ここから手を挙げれば、またそれ相応の能力が認められればリーダースタッフになれ ます。リーダースタッフは1日7時間勤務して、かなり行員に近い補助的な役割をしても らいます。リーダースタッフとしてしばらく経験をし、ご本人が希望すれば、今度行員に ステップアップするという段階的なステップ感を持って「行員転換制度」というのをやっ ております。  これも始めてから5年ぐらい経ちましたが、今のところ7人が行員に転換しました。ス タッフから行員になってもう既に課長代理という役席になられた方も今1名出てきており ます。子育てがある程度落ち着いて、例えば落ち着いて45歳ぐらいで行員になりたいとい うのも、私どもとしてもウエルカムです。要は、せっかく銀行に入っも、やはり女性は辞 められる人もかなり多くいらっしゃいますので、45歳で行員になってもらっても、あと10 年、15年はある程度スキルを持った人が当行で働いてもらえるというのは非常に大きな戦 力だと思っています。ある程度子育ても終わって落ち着いて本腰を入れてもう一回働こう かと、銀行のスタッフは割と以前、独身でいらっしゃったころに銀行とか金融機関に勤め られている方が非常に多いです。いろいろ制度とか仕組みとか変わっているのだけれども、 子育ても落ち着いたし、もう一回どっしり働いてみようかなという人が出てくれば、ぜひ 行員転換を考えてみたらどうですかということで、こちらからも臨店の都度投げかけたり している中で、もう少し増えていくといいなと思っているのが今のところです。  次に、複線型人事制度、一般職、総合職という分け方がないので、複線型人事制度とい う言葉を使っていますが、他社とは少し意味合いが違いまして、基幹職という、いわゆる 本部の部長とか支店長になっていくゼネラリストのコースと、専門職を徹底的にやってい くスペシャリスト、エキスパートのコースで特定職、基幹職、特定職という分けにしてお ります。  この制度を入れた狙いとしては、支店長を目指す人、部長を目指す人は、段階的に処遇 していく、一つ職位が上がるとお給料が上がっていく仕組みづくりがあったのですが、一 つのこと、今、当行がやっている預かり資産、マネープランナーの仕事を突き詰めていっ た人というのは、銀行に貢献するような収益を上げてもらいますが、ある一定のところに なると見合う職位がなくなってしまうので、処遇も頭がつかえてしまうというような状態 になっていました。それ一辺倒でやっていく人にも、それ相応の処遇をつけていかなくて はいけないということで、特定職コースということで一本わきにラインを引いたというよ うなイメージです。預かり資産の販売というマネープランナーの仕事を突き詰めてやって いっても、支店長になる人たちと、同じようにその努力に応じて処遇もついてくるという ような形で複線型にしたといったところでです。  この辺もコース選択に当たっては、先ほどのキャリアメイキング研修という中で、どっ ちの道を歩むのという話をして、コース選択申請をしてもらう。人事の方で面接をして、 初任役席一歩手前ぐらいでどっちのコースで歩んでいくかというのを決めてもらう。簡単 に言うとそんな制度になっております。  最後まとめになりますが、そうはいってもまだ再生途上の経営環境にありますので、経 営資源は有限かつそれぞれがライバルに劣後しています。経営資源のうち拡大・飛躍可能 性があるのは人材のみと考えて、人材についても、我々、量では勝負できないので、質で 勝負する。本当の意味での少数精鋭になるにはというところを課題に人事戦略を立ててい るというところです。県内はメガバンクも支店網をかなり張りめぐらせていますし、地方 銀行にしては珍しく3行あり、信金・信組もかなり数あります、やはり大きな店舗網など には太刀打ちできない部分もあろうかと思いますが、「小規模組織の人事戦略」というこ とで「局地戦」、例えば同じ街でライバルの営業マンに会ったら、その人には負けないと か、「局地戦」とか「一騎討ち」で勝利できる、「質」の高い行員の育成と活用をしていこうと いう思いで今、人事として各種施策戦略を立てているところです。 ○意見交換 Q01 年間の採用人数と男女比をお伺いしたい。また、60歳定年ということでしたが、 金融機関の場合、特に都銀などは50代前半ぐらいで銀行を離れるという例が多いと聞 いていますが、御行の場合はどのようになっているのかお伺いしたい。 A01 採用については、公的資金が入っている関係で経営健全化計画の履行が求めら れているもので、ある程度行員の数というのが決められている関係もあり、行員の退 職動向などをみながら毎年の採用人数を決めているのが実情です。平成23年4月、今 度の春に入ってくる人間は57人です。男性が40人、女性が17人というところで、その 前は88人ぐらいでした。ある程度人数をみながら、枠分けをみながらというような採 用になっています。  50歳超のところでですが、私ども制度としましては、60歳が就業規則上の定年。そ の前に、55歳に役職定年というポストオフする制度があり、例えば、支店長であれば 55歳になるともう支店長はできません。それ以降は、60歳までスタッフ的な仕事をや ってもらいますということで、役職定年の制度が55歳にあります。出向ということで は、どうしても銀行ですと、地元のいろいろな企業から人材要請というのがかなりき まして、例えば、人事とか経理とかみられる人間がほしいとか、あと関連会社の方も、 人材要請が結構きますので、それに応じていくと。ただ、私どもも55歳がそうしたポ ストオフの年齢なので、53歳、54歳、割と他行よりももしかしたら遅いかもしれない のですが、それぐらいの年齢になると、外部に出向してもう一活躍してみようかなと いう人もかなりいますので、そうした人のニーズをとらまえながら、大体53、54にな って外部を希望する人は外部の取引先へ人材として入っていくというような流れです。 Q02 育児休業の取得可能期間が3年間ということでしたが、実際にどのくらい取得 されているのか。メンター制度について、全新入社員に誰か1人メンターがつくとい う理解でよろしいか。また、どういった方をメンターに選んでいるのかについてもお 伺いしたい。 A02 育休ですが、今、常時取得しているのが大体10人から15人ぐらい、当然明けて くる人もいますし、新しく入る人もいます。1,300人の組織で、その中で女性ですか ら、10人から15人は割合的にはかなりの人数がいるのですが、入り口のところでど れぐらいお休みしますかということでお聞きしますと、初めから3年フルに休ませて くださいという人は多分その中の半数ぐらいです。それ以外は1年、1年ぐらいの人 が多いです。次年度末で保育所が決まれば1年で戻りますと。ただ、不幸なことに保 育所が空かなくてやむを得ず延長というケースは多々あります。よく電話がかかって きて、結局決まらなかったので、もう半年、次また9月とか人が動きそうなところま で延長させてくださいという人はいますが、大体、半数が3年フルの希望で、半数が 1年ぐらい。あと、見ていて思うのが、お一人目よりもお二人目の方が経験があるの で短い期間で出てこられそうですということで、あまり最初から長い期間にしないで、 短い期間で申請されてくるという方が多いかなというところです。  メンターの制度につきましては、どういう人というと、年次からすると、入行7年 目から8年目ぐらいの人を指定しています。新入行員に男性、女性もいますので、男 性のメンターは男性、女性のメンターは女性ということで、一応いろいろな相談があ るので、そこは男性、女性で分けて、自分の支店の人ではない人です。あと人物のイ メージ像としましては、我々人事の方からみていて、職場で非常に頑張っている人、 ある意味、同世代ではリーダーシップをとっているような男性、女性ということで選 んでいます。  私ども1,300人ぐらいの組織ですから、人事異動をかけるときでも、人事部がある 程度人の顔がぎりぎり見えるぐらいの組織です。これがおそらく1万人、2万人にな ってしまうと、なかなか分からないと思うのですが、ある程度その世代で引っ張って くれている人たちを選んでメンターに指名しているというところです。 Q03 メンター制度の効果はいかがですか。 A03 あまり告げ口みたいなことは人事に上げてこないことにしているので、断片的 にしか分かりませんが、人材開発室から聞いておりますと、やはりいろんな相談はし ているみたいです。「うちの支店長は」とか愚痴みたいなことも多いと思います。た だ、今の若い人ってかなりこちらから歩み寄っていかないと、なかなかしゃべってく れないというか、こういう制度があるから、何か困ったことがあったら相談してねと、 多分その投げかけだけだと全然来ない。ある程度メンターに決められた彼ら、彼女ら に、割と最初の頃はアプローチしてもらって、一回集まってもらって、僕が君たちの メンターだから、何かあったら何でもおいでと、そこまでしてあげないと、なかなか 向こうからは積極的に歩み寄って来てくれないというのがあるので、入り口のところ できちんとひも付けで、僕のメンターはこの人なんだというのをしっかりやって一回 会わせておかないと、名ばかりになってしまうのかなというところは感じました。  多少補足しますと、メンター制度は今年1年目ですが、その運用開始した中で、こ ちらから今投げかけという話がありましたが、まず新入行員の研修の中で、メンター とメンティーの顔合わせを第一段階として行いました。その後、人材開発室の方が主 導で、メンターに対して、持っているメンティー全員と面談してくれということで、 メンターがいる支店にメンティーを呼んで、それは支店で面談しているか、あるいは どこか喫茶店でも行って面談しているか、その辺は任せていますが、ある程度人材開 発室の方が主導で、意図的に面談できる場を設けております。第1回目が7月から8 月にかけて実施、第2回目も今セッティングしているぐらいのイメージであります。  メンター同士の情報交換という位置付けで、メンターミーティングというのも定期 的に8月に開催しました。また、今回の面談の結果を踏まえて2月に設定をする予定 です。メンター制度の別の側面として、メンターにアンケート等も行っていますが、 こちらについては、メンター自身が非常にモチベーションが上がるという、そちらの 方の相乗効果といいますか、効果の声が非常に高いというのが実情です。 Q04 「小規模組織の人事戦略」ということで「局地戦」、「一騎討ち」というお話 がでていましたが、人材開発の目標をどういうところに置いているのか、あるいは別 の言葉で言いますと、銀行員の質を何ではかられているのかお伺いしたい。 A04 「局地戦」とか「一騎討ち」のところですが、例えば、各営業現場において、 そこにある会社、ある程度中小企業でも規模が大きくなり、それなりの業容です、間 違いなく取引銀行が1行ということはないわけです。逆に言うと、地元に地方銀行が 3つもありますので、3行とも付き合っているというところが大概だと思います。そ こへまた更にメガバンクの取引があったのと、一つの会社に何人もの銀行の渉外担当 が足しげく通ってきます。  例えば、その会社が新しく工場に設備ラインをもう1個増設しようかという話が持 ち上がったときに、我々よく言っているのが、一番最初に相談を持ちかけてもらえる ような銀行員になってもらいたいと。多分、社長もどうしようかなと、この話誰に一 番最初に相談しようかなとか、場合によっては、こことここでコラボさせて3行でや らせようかなとか、いろいろなことを考えると思うのです。社長も踏み出そうかな、 踏み出すまいかなと決断に迷ったりしたりするときもありますので、やはり一番最初 に相談を持ちかけられるような銀行員にどうしたらなれるのかが課題です。  ご融資の提案をする際に、ただ単に安い金利レートを提示すれば、じゃ一番安いか ら、君のところでやるよということだけではないケースというのが非常に多く、その 前のプロジェクト段階からのアドバイスですとか、また、そこから附帯する、例えば 業者選びのときに、こういう業者を紹介します、その設備をやるのでしたら、こうい った業者入れると、もしかしたら社長がやられているところよりも安くいい仕事をし てもらえるかもしれませんという紹介をしたり、いろいろな形で絡めることによって、 君のところから借りようよということで社長に決断してもらえるわけです。複数行の 戦いの中で選んでもらえる銀行になるためには、普段の社長との接し方、社長にとっ て役立つ情報、話を常に発信し続けることが重要です。社長は多分いろいろな質問を、 他行の営業マンにも社長は投げかけていると思います。当行の担当者に聞くと一番ま ともな、自分が一番知りたかったことを返してくれる、多分そういう人間が一番最初 に選ばれる行員になると思うのです。  そうした意味でも、金融の知識だけではなくて、バイタリティもそうですが、いろ いろな意味で社長についていける、逆に言えば、社長が属している業界のことも自分 なりに勉強して話についていけるとか、そうした資質が銀行員に求められるのではな いかというふうに個人的にも思いますし、かなり自己啓発をやってもらわなくてはい けない部分も多かろうと思いますが、そうした人材をつくっていきたいというのが非 常に思いとしてあります。 Q05 御社のお客様でも、中国に進出したり、ベトナムに工場を建てたり等の活動を されている方がおられるのではないかと思うのですが、そうした経済環境の変化によ って、行員のキャリア開発とか教育の中身なども変えているのでしょうか。 A05 毎年、研修の育成プログラム自体は、都度情勢に応じて見直しております。  平成22年度研修体系を大幅に変更いたしまして、従来、集合研修、本部に人を呼ん で集めて、全員に同年代、同職種の人材に、同一の研修を行っていました。やはり各 人の能力にも差がある、行っている業務の中でも温度差、知識レベルの差がある、限 られた人材の中で営業店が忙しいのに本部研修ばかり呼んでいいのか、そうした矛盾 も踏まえて、本部の集合研修を大幅に3割削減して、OJT、いわゆる営業店で個別 指導する、業種に即して、実務に即してOJTをかける部分と、自分で例えば海外情 勢、あるいは業種の特性、そうしたところはもっと自分で自己啓発の部分で勉強して くださいというような形で、今まで集合研修に傾注していたところを、集合研修とO JTと自己啓発の3手段のリンクで、時間的な部分についても自分の成長というとこ ろについてもバランスよく運用していこうという研修体系に変えております。その都 度、銀行の置かれている情勢ですとか経済情勢等をみながら、毎年、研修体系は見直 すという形での運営としております。  今年の研修体系はそのような形で大幅に変更して、また来期以降も今期の検証を踏 まえて都度見直しを図っていくという形で考えております。  環境の変化というと、私どもが20年前に入ったときと、銀行は取扱商品なども、例 えば証券ができる、保険が売れる等相当変わってきていますので、そうしたいろいろ と経営環境、販売商品が変わるのが一番顕著なところだと思いますが、そうしたこと にあわせての次から次への研修といいますか、そこはやはり、例えば証券会社の力を 借りたりとか信託銀行の力を借りたりとか、そういった研修というのは都度仕掛けて いくというのはずっとやってきているというところではあります。 Q06 政府全体で取り組んでいることの一つの中に、学卒や若者の就職環境が厳しい ので、卒業後3年以内の方を新卒扱いで応募できる枠を広げてほしいなどいろいろな 省令措置等も行っているわけですが、卒業後3年以内の既卒者も新卒扱いとして採用 するということについて、どのように考えておられるか。もう1点、今の学卒採用の 仕組み、すなわち今のような大学3年生の時期からかなり力を入れて就活をしなくて はいけないという状況について、採用をされる立場としてどのように考えておられる のかと2点お伺いしたい。 A06 既卒者のところでですが、当行で既卒3年も新卒として採用するかどうかとい う議論は今行っていますが、最終的に次の採用の中から具体的に入れていくかという のは、まだ組織決定していないのではっきりしたことは申し上げられないです。3年 生の途中から就職活動を今見ていると、とにかくどこかの会社に入らなくてはいけな いというので、どこもかしこにも、全部インターネットでエントリーして、そこから 会社のセミナーに参加してという形になっていますので、自分はどういう業界とかど ういう仕事で働きたいんだというよりも、とにかくどこか引っかからないかなという ことでエントリーして、とにかく多くの面接を受けてというふうにされている方が多 くて、だから、その年不幸にしてどこからも内定がいただけなかった人は、それから 本当の意味で自分のやりたいこととか仕事って何だろうとか、これからずっとやって いくのって何だろうと立ち止まって考えるのかなということからすれば、既卒3年の 方に改めてエントリーしてもらって面接させてもらって、いい人がいれば採用してい くというのは、企業としては多分一つそこで勉強されてきた人なのでしょうから、や っていく意味合いはあると思いますし、場合によっては、改めてこういう理由で、銀 行で働きたいとしっかりした目的とか目標を面接で語ってくれる人も中にはいらっし ゃるのかなと思います。  3年生からの就職活動ですが、学生をみていると、大急ぎでエントリーして、あっ ちもこっちも、今日は銀行行って、明日は食品行って、そうした面接の受け方をして いるので、我々が面接をしていると、一体、当行に入って何がしたいんだとか明確に 言えない人も非常に多いので、もう少し学生時代にやることをやり、しっかり社会に 出て働くということは何かということと、自分が何をしたいのかというのをもう少し じっくり考えてから就職活動をやった方がいいだろうなというのは、人事に来て3回 面接をしていますが、ますます年を重ねるにつれて非常に強くなってきています。  我々が銀行に入ったころは夏からでしたから、あれくらいからでもいいのかなとい うのは個人的には思っています。あとは率直なところ、我々としても、やはり優秀な 人材をどうしたらとれるだろうというところもあるので、そこは非常に業界全体、日 本全体で旗振ってもらった方が、就職の開始時期などはきちんとできていくのかなと いうのは感じております。 Q07 エントリーシートのようなネットでも応募できるような形ですと、やはり応募 者はものすごい数になりますか。また、物理的に面接できる人数は限られていると思 いますが、選考方法はどのようにされていますか。 A07 57人採用のところを、去年のエントリー数だけで1万人ぐらいです。書類選考、 今はやりのウエブテストでまず一回仕切りをやり、我々もなるべく多くの人と会って いい人をとりたいというのがあるので、かなり面接回数をマンパワーがきく限り、土 日も全部含めて、3月、4月、5月とやり続けます。 Q08 最近の若い人の特徴といいますか印象みたいなものを、10年前、20年前、また それ以前と比べてお感じになることがあればお伺いしたい。 A08 銀行を代表してというよりも、私が人事部で感じていることとして思うところ は、まずは就労感の変化といいますか、何のために働くというところ、食べるために 働くなどはもちろんなのかもしれないですが、例えば、賃金にこだわる、給与にこだ わるかというところも希薄であったり、それでは会社のために働くかというと、自分 の生活とやりたいことも一方できちんと持っていて。当行は労働環境が厳しいときも ありましたが、そうでなくても、やはり今の人たちは、人がうらやむような会社に入 っても、ちょっと嫌だったり合わないと感じたら辞められてしまう。その割り切り方 ってすごいなと思ったり、辞められる仕事ってそもそも何なんだろうとか、そういっ たところは非常に感じます。  よく会社に入って、どんなことをしたいとか、いろいろな質問を学生に浴びせたり すると、例えば「自己実現をしていきたい」とよくみんな言います。でも、いざ入っ てみると、実はそれほどでもないなと感じたり、あとは、競争心といいますか、同期 が何人もいて、こいつには負けたくないとか、先に行きたいとか、ちょっとでもボー ナスを多くもらいたいとか、あまりそういうマインドが強くない。そうすると我々人 事としては、どういうことをした人に多く給料を払うのかという、そもそもの給与の 払い方などそういうところにまで立ち戻ってぶつかって悩んでしまいます。例えば給 与の張り方でも、どういう張り方をするとよりみんな活動的になってパフォーマンス が上がるのかと、今まさに人事企画でものすごく悩むところですが、そこは若い人を 見ていて、何か非常に感じるところです。  あと採用の面接を行っていて、「何で当行にしようと思ったの」とよく聞くと、い わゆるこの会社に入って、こういう仕事がしたいというのがあまり出てこないのです。 ちょっと前だと「地方銀行ですから、県経済の発展に銀行員という仕事を通じて役に 立ちたい」、せめてそれぐらいのことを言ってくれないかなと思いますが、何かこの 会社は自分を育ててくれそうだと、成長できそうだと、自分が何をしたいではなくて、 この会社に入ると自分が成長できそうだとか、あとはワークライフバランスとか、そ うした福利厚生の取組がいい会社なのでここにしましたとか、OB訪問とか支店見学 とか行くと非常に対応のいい行員が多くいらっしゃって、きっといい銀行だと思いま すと、何かそれだけでいいのかなという志望理由が並んだり、そういうところは非常 に感じていて、もっと俺が、俺が、そういったところが出てくるといいのになと。逆 に言うと、育成のところでも、もうちょっとたきつけるようなところでエンジン回し てというようなことをこちらから発信したりというのはするようにしているところで す。 Q09 昔と比べて、若者の性質やどういうことでモチベーションが上がっていくかと いうことはかなり変わってきていると思うのですが、おそらく育ってきた今までの社 会情勢、経済情勢、あるいは教育などからきている部分もあるのではないかと思うの ですが、実際に社会に出る直前の、例えば学校、大学、そうしたところでもう少しこ ういうところを勉強してきてほしいとか、こういう体験をしてきてほしいとか、学校 としてこのように人を育ててほしいとか、その辺についてお伺いしたい。 A09 多分、本日のテーマである世代間ギャップみたいなところはずっとあって、我 々も入ってきた頃は、時の支店長たちに、「最近の若者は」と言われて、多分、皆さ んたちもきっと先輩たちには「最近の若者は」と言われ続けてずっときていると思う のですが、そうした意味では、完全に全部理解しようと思っても無理だと思うのです。 でも、最近の人たちは見ていると、意外に素直でピュアなんだなと思います。よくコ ミュニケーション能力が足らない、社会性が足りないなど言われますけれども、やは り経験してきていないからなので、一回教えると、割とそういうものなんだというこ とで分かってくれる人が多いのかなと思います。  例えば、ものすごく小さな話ですが、みんなで飲みに行きました。普通若い人間は 注文取り係とか、そこは支店長が座るだろうというところに座ったりするわけです。 こっちから物が来れば配るのが普通とかというところもあったりして、そういうのを 見ていると一々腹立つのですが、でも、一回きちんと教えれば、そういうものなんだ なと。だから怒るのでなくて、多分経験してきてないんだ、みんな世代を超えたコミ ュニケーションはとっていないんだろうな。みんな核家族ですし、おじいさん、おば あさんいないですし、学校に通って、ファーストフードでバイトしていれば、いつも 同じような世代の人たちで集まっているわけですから、世代を超えた人たちと接して いないから分からないだけで、教えれば分かるのだろうなと。  銀行に入るとそうはいかないわけです。おじいさん、おばあさん、年金のお客様か ら、社長さんから、おじさんから、おばさんからいろいろな人が来るわけですから、 この世代は苦手ですというわけにはいかないので、やはりそれは銀行の中も入ってみ れば、支店長は父親みたいな人からずっと世代ごとにいるわけですから、それは職場 でいろいろ教えてあげればできるようになるんだと、ちゃんと教えればできるように なるんだというのは非常に感じています。だから「何だ、今のやつらは」ということ で、いきなりさじ投げてあきらめるのではなくて、やはり教えるんだと思うのです。 そうしていくと社会性もいつの間にか身について普通になっていく。それから当行っ ぽくしていけばいいのかなというふうに思っています。 Q10 パートタイムの人材育成はどうされているか。また、定年後の出向や継続雇用 等どういう形で仕事をされて、若い人、現役の方との役割分担をどのようにされてい るかお伺いしたい。 A10 スタッフの研修体系については、スタッフサービス部というセクションの中に も専門の研修部隊がございまして、そちらの研修担当者が主体になってスタッフに対 する研修をかけております。  新入スタッフの基礎研修関係、導入研修がまずございまして、それから実務習得の ためのフォローアップ研修、さらにスキルアップ、実践力強化を高めるブラッシュア ップ研修、行員の方でもありましたけれどもトレーニー制度、こちらの体系もスタッ フの方です。あとは出前研修ということで、ちょっとスキルが苦手、スキル不足のス タッフ、営業店とかの要望に応じて、直接研修担当者が出向いて、実務をやりながら 実務の中で教え込んでいくというような形、主に導入研修、フォローアップ研修、ブ ラッシュアップ研修、あとはトレーニー・出前研修、このような形で段階を踏んで研 修体系がスタッフサービスの担当を中心に組まれております。中では、例えばブラッ シュアップ研修ですとかスキルアップのところは、逆に行員が手を挙げて参加できる ような、いわゆるカフェテリア方式の研修体系も含まれておりまして、逆に行員がス タッフサービス部の研修に自由に参加できるというような仕組みもつくられておりま す。  定年、出向といったところですが、継続雇用制度ができまして、一端、55歳で銀行 を退職してもらう。その後、関連会社に籍を移して働いてもらいます。スタッフサー ビス部があるところにビジネスサービスという業務委託する会社がありますが、多く はそこの会社に、当行を辞めて、ビジネスサービスの社員になってもらい、そこから の働きですが、業務委託の会社ですから、例えば事務部門は、手形の決済、為替のよ うな事務部門のところでそのままビジネスサービスの仕事として働いていただく場合 もありますし、逆に、ビジネスサービス社に籍を置きますが、銀行本体に逆出向みた いな形で銀行の方に来てもらって銀行のセクションで働いていただく。それは、その 人のいわゆるキャリアとか専門性を踏まえながら、例えば、審査管理とか訴訟をやる 部署などでは、長年そういったところを経験されてきた方に、もう一回その会社から 銀行の方に逆に出向してきてもらうというような形で仕事をしてもらうとか、あとは 関連会社ですとか各種リース会社とかに籍を移してもらって、65まで働いていただく というような制度になっております。  銀行ですので、外部の取引先から人材の要請がきまして、誰か出向して来てもらえ ないか、そのまま経理部門の部長として転籍してずっと働いてもらいたいのだけどと いう話も結構きます。そこは50歳のキャリアの最後の研修のときに、そういった志向 とかニーズを持っている人はアンケートして把握しておいて、そうした話があったと きに、その方に向けていって双方折り合いがつけば、取引先の方へ出向、転籍しても らうという形もとっています。  ただ、こうした継続雇用制度というのができると、一方でなかなか外部でまた全然 違う業種でもう一苦労しようかという人が逆に減ってきてしまう。やはり銀行のグル ープの中にいた方が、今まで知った顔でずっと仕事できるというのがあって、若干外 部を希望する人が減ってきているのですが、逆に言うと、我々は地方銀行ですから、 そうした優良な取引先から、例えば経理をみてくれ、管理をみてくれということで人 材の要請があれば、できる限り、今後のリレーションということも含めて人材を出し ていければなと思うのですが、なかなか継続雇用制度ができたので、やはり銀行周り にいた方がいいなという人が逆に増えているのかなというのは昨今感じるところであ ります。 Q11 中途採用についての御社のお考え、また、現在の取組状況ということで、行員 転換制度がありましたが、場合によっては、本当は最初から正社員になりたいのだけ れども、入り口の採用が少ないため、とりあえず初めはパート、スタッフをやり、そ の後行員になろうというお考えの人もいるのではないかと思いますが、そうした状況 についてお伺いしたい。 A11 平成12年の採用は3人しか採らなかったというときもありましたので、ものす ごく薄いゾーンがありましたので、中途採用についてはいつも門戸を開いているよう な状況です。銀行・金融機関は、いろいろなリストラとかで人が流動的になったとき もあり、当行に採用面接とか来てもらえるのですが、そういう方々、本来年齢的には 埋めてくれるいい人材かなと思いますが、逆に先方が、ちょっと地方銀行違うなと。 あとは、やはり処遇、給与の方が合わなかったりして、なかなか話が決まらず、我々 人事としては本当に欲しい人材層、世代とか専門性を持っている人間は、もう少しお 金を払わないと採れないよねという話がありますが、行員の他の人の処遇が改善でき ない中で、中途の人ばかりこんなに上げられないこともあり、いつも募集をして、随 時結構どうだろうかということで履歴書を送ってもらったり面接はしているのですが、 なかなか双方の、こちらの条件と、先方の思うところが合わないというのがあって、 もう少し来てもらいたいなというのが本当は正直なところです。そうはいっても、中 には信金、信組の方から当行でやりたいんだけどということで、何人か採用は今まで もしてきているところでもあります。 Q12 スタッフは経験者の人も多いと思いますが、そうした方というのは、フルタイ ムはなかなか難しいからというのでやられている方が中心になるという感じですか。 A12 スタッフ、パートも非常によくやっていただいている方などは、スタッフサー ビス部も行員になってみてはどうだろうか、処遇も大分こちらとしてもできるし、チ ャレンジしてみませんかという話はしますが、やはり逆にそこは自分としての時間で の働き方ですとか、いや、行員になると─逆にスタッフの方はきちんと分かっていま すね、スタッフでいる間と、行員になったときの重みの違いとかですね。ですから、 今までのままでスタッフでいいですという方もいらっしゃいますし、逆に、もっと頑 張ってみようかなということで行員になられる方もいる。  先ほども説明しましたが、最初ショートとかロングとか時間をある程度調節できる スタッフというのが1種類あって、その後リーダースタッフ、これは時給もかなり上 がるのですが、よくやってもらっていて、時間もフルに近い7時間ぐらい勤務できる 人は、銀行からもお願いして、そこにまずステップアップする。その中からさらに行 員になろうかなという人をもう一つさらにアップさせるということで、まずリーダー になろうかなという人をつくっていく。リーダーで活躍していただいて、行員にもう 一つ上がってもらうというので、その階段を踏むための声かけは随時行っているとこ ろで、実はもっと増えてもらいたいところではあります。 <照会先> 政策統括官付労働政策担当参事官室産業動向係 03-5253-1111(内線7724)