第2回産業労働事情懇談会に係るヒアリング 議事概要 日 時 平成22年1月12日(火) 15:00〜17:00 場 所 中央合同庁舎5号館9階 厚生労働省議室 内 容 雇用機会の創造に向けた取組と今後の課題について 参加団体:NPO法人 コミュニティビジネスサポートセンター、 館山市経済観光部、渚のまちづくり会議、NPO法人 たてやま海辺の鑑定団 ○コミュニティビジネスサポートセンター ・コミュニティビジネスについて  まず、コミュニティビジネスについて、ご紹介をさせていただきたいと思います。  コミュニティビジネスという言葉自体は造語でございまして、その概念は1994年のバ ブル崩壊後に日本の地域経済をどう立て直そうかということで、大学の教授が中心と なって、シンクタンクと一緒にコミュニティビジネスという造語をつくり、地域は地域ご との良さを反映しながらまちづくりやまちおこし、雇用対策等を行っていこうということ で、一つの概念としてつくられたのがきっかけでございます。  その後、平成の15年辺りから、各地方自治体や国の各省庁で、コミュニティビジネス のような概念は、施策上で重要になってきているのではないかということで、私の記憶し ている限りでは、平成14年に千葉県の我孫子市で予算を投じて政策を始めたのが地方自 治体では初めてでございます。国の省庁の中でも本格的な議論の一つとしては、厚生労働 省の平成15年の雇用創出企画会議のときに議論された前後で、経済産業省ですとか、あ とは総務省のほうでも議論がされてきたということでございます。  この抽象概念を一言で日本語訳したものが、「市民により地域の課題を解決する事業活 動」ということでございます。このような抽象概念でしか定められていないけれども、地 域活動を行っている方、NPOの方、地域密着でベンチャー企業を起こすような方々が、 コミュニティビジネスということで一つの言葉に呼応するように初めて起業する、創業す るという方が非常に増えております。  私が実感しておりますのが、一時期のベンチャー企業とは異なり、シニア層や主婦層、 それから学生といった方たちも、このコミュニティビジネスという、地域ということに フォーカスをした事業活動に対して非常に関心を高めていて、多くの方たちが相談や講座 に参加していただきだしていることでございます。  通常のビジネスというのは、自分で何かを売りたいとか、こんな金もうけをしたいと いう個人から帰属するケースが多いのに比べますと、コミュニティビジネスは、1つ目に 来るのが地域の課題や生活課題ということになっております。  現在の多様化した社会の中で、失業の問題、環境の問題、子育ての問題、介護の問題 などの地域ごとで異なる課題に対して、ただ単にボランティア活動で解決をしていくと、 そこに責任を持ったサービス提供をするまでに至らず、一方で、それにお金もうけを目的 として参入してしまうと、地域のため社会のためということより企業利益のためのサービ スが提供されてしまいます。そのため、コミュニティビジネスは、地域の課題解決のため に適正な事業活動を行いながら、そこで余剰利益が上がれば地域社会に還元するという意 識を持ちながら、さらに事業という意識を持ってしっかり継続して行っていかなければな りません。それには、プレーヤーという起業家が求められる部分と、サポーターという応 援協力する人たち、コーディネーターという行政や企業などの地域の連携をするリーダー シップのある方たち、こうした人たちが関連することにより、コミュニティビジネスがう まく実施されます。最近は、サポーターという意識が住民に増えておりまして、従来のよ うな町会・自治会活動が崩壊している中で、地域住民の人たちが、自らコミュニティビジ ネスを始めて自分の地域の保育園の運営をするとか、たまり場活動をしながらそこに対し て人・物・金・情報で多くの方々が参画することも多く見られるようになってきておりま す。  次に、コミュニティビジネスについて概念的に説明したいと思います。まず地域の課 題に対してどのように地域の人・物・金・情報、または地域外の人・物・金・情報を導入 しながら地域の課題を解決していこうかということが、一つのコミュニティビジネスのス キームになっているということになります。例えば東京という地域ですと、食料自給率が カロリーベースで1%という非常に危機的な状況の中で、東北のような資源が豊かな地域 から農産品を東京に入れながら、安心・安全な食生活を東京でどう実現するかを考えるこ とは、その地域だけで課題解決するのではなく、ほかの地域からもいろいろなものを導入 しながら課題解決に向かうケースも含めた取組の中で、コミュニティビジネスは実施され ております。  コミュニティビジネスの分野でございますけれども、本当に多種多様になってきてお ります。ただ、1点だけ申し上げたいのが、地方と都会側、都市部ではコミュニティビジ ネスで盛んになっている分野が異なってきておりまして、都会側になりますと子育てや介 護のような福祉分野が非常に増えてきております。また、食に関すること、コミュニティー カフェ、コミュニティーレストラン、配食サービスのような食に関するものが増えており ます。一方、地方では2大分野と言われるように観光と食・農に関すること、この分野の 中でコミュニティビジネスの取組が、地域が一体となって実施されているケースが増えて きております。  次にデータも含め、経済産業省の施策を簡単にご紹介していきたいと思います。経済 産業省でコミュニティビジネスとソーシャルビジネスという2つを組み合わせて政策と して立てておりますけれども、日本ソーシャルビジネス宣言ということで、ソーシャルビ ジネス推進イニシアティブという組織で発信している、ソーシャルビジネスでこれから目 指すべき一つのキーワードとして出している宣言でございます。  SB(ソーシャルビジネス)、CB(コミュニティビジネス)の目指す目標についてで すが、経済産業省で推計として出している数字がございます。現在、この分野の中で事業 者数が約8,000事業所、市場規模が2,400億円、雇用者数が3.2万人で、平成24年度が終了 した段階で雇用者数が30万人、市場規模が2.2兆円という推計を出しているというところ でございます。  ちなみに、厚生労働省の雇用創出企画会議の中で議論させていただいたときの推計で すと、その当時は、2003年から起算して10年間ということでの数字で出した中では約 88万人程度の雇用が見込めるということで、雇用創出企画会議の第1次報告書で記載さ れている数字であったかと思いますけれども、いずれにしても雇用の分野としては期待さ れるという数字は各省庁でも挙がっているものでございます。  ただし、このような数字には出てこないのですが、ここで働く方の平均給与がどれぐ らいかということを統計で見ますと、平均の常勤有給労働者で250万円程度、無給者が有 給常勤労働者とほぼ同数ぐらい存在しているということが言われておりますので、無給の 方も労働者として平均給与の中に入れますと、単純に250万円の半分の数字、125万円が 平均給与になります。このような雇用対策が推進した場合には、俗に言う低賃金労働者が 増えることにもつながりかねないことがありますので、そこが課題となる部分というとこ ろでございます。  また、これも経済産業省で出している数字ですが、ソーシャルビジネスの現状として、 組織形態としては、NPO法人が約半数という数字になっております。株式会社や個人事 業、組合等で、どこからどこまでがコミュニティビジネスかということの基準が明確につ くられていないため、定款から読み取れるNPO法人は非常に分かりやすいということが、 母数自体がもともと多いということも補足させていただきたいと思っております。  実態でいきますと、今はNPO法人よりも株式会社であるとか新しい公益法人、例え ば一般社団法人など、LLC、LLPといったものも含めて、かなり法人格自体は多様化 を始めているということでございます。  それから、もとは経済産業省も新経済成長戦略の報告書の中ではコミュニティビジネ スという言葉しか使っておりませんでしたが、平成19年以降に、これから地方分権、地 方自治体が課題解決や地域経済活性化を自ら図っていくことから、地域の活性化を図る、 地域の課題を解決するコミュニティビジネスに対して、国が政策をつくることや、予算化 をすることは適切でないということで、コミュニティビジネスという表現が、全国または 社会的課題の解決をビジネスの手法で解決を図るソーシャルビジネスという政策の表現 の仕方を使うようにもなってきております。  つまり政策としてはコミュニティビジネス、プラス国際的、全国的なフィールドを 行っているような社会貢献事業を含めた、ソーシャルビジネスという表現に変わっている ということでございます。  次に、NPO法人で行っている活動事例ということでご紹介しておりますけれども、 徳島県上勝町で行っている葉っぱビジネスは非常に有名なものでございますし、あとは都 会型で有名なものですと、病児保育のフローレンスですとか、いろいろな地域ごとでの課 題解決を行っていくということで、経済産業省ではこのようなものをソーシャルビジネス 55選としてとりまとめております。  ソーシャルビジネスの活動分野ですが、経済産業省の統計データによりますと、まち づくりや観光系が非常に多くなっております。  次に、経済産業省で行っている支援策でございます。広報・事業環境整備では、先ほ どご紹介した55選のような事例の選定や、社会貢献のビジネスをどう評価していくかと いう評価委員会の策定、資金調達ということでは融資の制度を策定するなどを行っている ということでございます。  現在、経済産業省で平成19年から、北海道から沖縄までの9ブロックにコミュニティ ビジネス、ソーシャルビジネスの支援をするための推進協議会というものをつくっており まして、私も1都10県となります関東ブロックの代表をさせていただいております。こ ういった推進のための協議会もつくっているというところでございます。  最後に、経済産業省で行っている社会貢献型事業用の融資制度のスキームでございま すが、金利自体はそんなに安くはないのですが、融資だけではなくそのビジネスが成立す るような第三者評価及び支援機能をつけた融資制度を、政策金融公庫とともに一昨年から 始めております。  国の政策だけ簡単にご紹介しましたが、今、コミュニティビジネスは地方自治体レベ ルで活発に始まっておりますが、始めてまだ間もない段階ですので、そこが本当に雇用に 至るかというターニングポイントの時期に至っている状況かと思います。 ○館山市経済観光部  それでは、南房総の全体の状況をまずご説明させていただいた後、観光を中心にした 地域の課題を次に説明し、これまでに観光を起爆剤とした地域活性化どのような取組をし ているか、また最後に今後の課題について、4点説明させていただきます。  まず、南房総の概要でございますが、千葉県の南房総の先端に当市は位置しています。 テレビ等で報道されているとおり非常に気候が温暖だと言われておりまして、また、房総 半島の先に暖流と寒流がクロスする場所があり、非常に魚が豊富だと、歴史的な神社、仏 閣、南総里見八犬伝も含めた歴史的な物語など、いろいろ豊富であると、リゾート開発か ら免れたエリアでして自然もまだ非常に残っている。温泉もございます。ただ、どれも世 界遺産とかそういうものではなく、全く普通のどこにでもあるようなものが多数そろって いるという、そういう地域でございます。  交通のアクセスですが、高速道路が全線開通したおかげで非常に都心から近くなりま した。数年前ですと、都心から夏の一番ピークの時期には5時間、6時間かかるというよ うなお話もありましたが、今では車で東京からですと約100分、横浜からも大体100分、 今日も高速バスで参りましたが、1時間50分程度で館山から来てしまう。ところが、ま だここは余りよく知られていない。我々、館山の西口で観光案内も含めて事務をとってお りますが、意外と「こんなに近かったんだね」というご意見をいただくのが非常に多い、 こういう地域でございます。  これまでの観光客の歴年の推移でございますが、何となく微増という感じで、アクア ラインが開通したときには急激に増えましたが、その後だんだん伸び悩んでいると。特徴 的なのは、車の利用がほぼ9割に達しているということ、それと、これも高速道路が開通 した結果、日帰りが8割に迫っているということです。宿泊者については大体横ばいです が、全体の割合では日帰りの割合が非常に多くなっている、そんな課題を抱えております。  次に、2番目のテーマの館山を中心とした安房地域の雇用の情勢でございますが、こ れは大企業という大企業が余りございません。自衛隊ですとかいわゆる公務員系、先生と か市役所の職員とか県庁の職員とか、そういうところがかなり大口の雇用先になっていま す。中小企業もこの不景気で特に建設業界はかなりダメージを大きくしていまして、そこ の雇用は現段階ではなかなか見込めない。強いて挙げれば介護系とか福祉系のところが若 干頑張っているなと。その中で人口もそういう状況で、ピーク時には5万7,000人あった 人口がだんだん微減、直前のセンサスでは5万人ぎりぎりキープしましたが、現状は今 5万人を割り込んでいる状態です。高齢化も進んでおりまして、地域経営という点で、何 とか若い人の雇用の場を創出しないと、限界集落まではまだまだ大丈夫だとは思いますが、 かなり厳しい状況になっているというところです。  館山市は、今の市長、前の市長からも観光というものが一つのキーワード、観光立市 ということでまちづくりを進めております。市内の観光系の事業に携わる人の割合もほか の地域と比べれば多いと思われますし、2次波及効果、3次波及効果も含めますと経済波 及効果という点で観光の及ぼしている影響は非常に大きいのですが、大きなホテルはなく、 中小企業と言われているホテル、旅館、観光施設などが集積しています。  そこで、館山市の場合には、6年ほど前から着地型観光というところに着目をいたし まして、小さいビジネスを立ち上げるということで、地域のNPOの方たちと活動を始め ているという状況でございます。  また、現状の観光への取組がどのような方向かといいますと、南房総地域は3つの市 と1つの町がございまして、その3市1町が連携をして外からお客様を呼ぼうという取組 をしております。  一昨年の10月に国土交通省のほうから3市1町が観光圏という認定をいただきまして、 その中で南房総地域観光圏という名前で3市1町が共同して目標像を持って進んでいる ところです。6本の柱の大きな1つに、コミュニティビジネス創出と観光まちづくりとい うことで、3市1町連携した大きな柱になっております。  次に、広域の連携をして観光を進めた結果どうなったかという、数値的な効果と構造 的な効果でございますが、観光入り込み客については、3市1町で連携を図るというよう なところで、ほかのエリアと比べて落ち込みは少ないかと思います。修学旅行については、 前年と比べて校数が非常に増えているというところでございます。これは後でもう一度説 明させていただきます。  ここから本題に入りますが、これまで館山市周辺の南房総地域も含めて観光という切 り口でどういう活性化策をとってきたかということについて紹介いたします。1つ目が先 ほど申し上げたとおり着地型観光ということです。これは地域の素材を徹底的に磨き上げ て地域の側の視点での旅行をつくっていくというところでございますが、特にこの点では NPOの皆さんの頑張りで、地元の自然を素材にした体験ツアーとか、そういうものが修 学旅行、教育旅行の誘致の一つの起爆剤になっております。これを6年ほど前から館山市 は進めているところでございます。  2つ目は、それらを支えているNPO、これが幾つかありますが、どれもそんなに大 きな規模のものではなく、非常に小さい規模でやっております。そこを連携させることに よってさらに大きな波及効果が出るのではないかということで現在取り組んでいるのが、 いわゆる中間支援という機能を南房総地域全体で築き上げると。6年ほど前に館山市のN POの連携としてコミュニティビジネス研究会というものを立ち上げておりまして、現在 その活動も続いてはおりますが、やはり中間支援としても一つ継続的にビジネスとして成 り立たせることで、さらに強くなるのではないかというシナリオのもとに、今中間支援の 機能の強化に取り組んでいます。  また、その中で見えてきた課題が、中間支援というものをビジネスとして成り立たせ るという点で公的な役割というものをいかに整理するかと。要は、市のほうで、もしくは 公共側でやるとなると公共目的がメインになってくる。ところが、中間支援を成り立たせ るビジネスモデルとすればビジネスが中心になってくる。そこの公共目的とビジネス、い わゆる平等性と差別化という話になると思うのですが、そこをいかに両立させるか、これ は先ほどご説明いただいたコミュニティビジネスのお話でも、経産省のほうで社会性と事 業性の両立というところのノウハウが不足しているのではないかという説明があったと おり、まさに当地域でもそういう状況でございます。  もう一つは、小さな事業体の皆さんがいろいろな取組をされているのですが、それを 大きな経営に持っていくためには、どこかで人材、経営のプロフェッショナルの育成をす ると言ったらなんですが、公務員の我々には全く手の届かない能力というか、そういうと ころが一つ課題になってきております。  次ですが、行政としてしっかりまとめたものではなく、頭の中にあるものでございま すが、今後のコミュニティビジネスというものを起爆剤にして、少しでも若者もしくはい ろいろな人の雇用対策を進めるためにということで、1つ目の観光については3市1町の 連携が非常に進んでおります。観光はそういう方向ですが、観光を起点にした雇用という ことであれば、雇用対策についても広域的な連携というものがどこかで必要になってくる のではないかという気がいたします。  2つ目に、どうしてもビジネスを立ち上げる、ビジネスを継続させるためには資金を どのように手当てして、継続的に回すかという問題が出てくるのですが、我々が取り組ん でいる1つが、ふるさと納税というものを活用したコミュニティファンドの可能性を今 探っております。  また、今回ふるさと雇用再生特別基金事業でお世話になった2つの事業を館山市で雇 用につなげるために進めておりますが、こういうビジネス立ち上げのチャンスをいただく ことも地方の我々にとっては非常に有効なことだと思われます。  3つ目に、とにかく大企業とかそういうところが少ない中ではどうしても雇用対策イ コール個人起業、業を起こすという意味での個人起業というような側面が非常に強いとい うことになると、先ほどの中間支援の枠組みという中では、人的なネットワークでその仕 組みを支えるということに、どのように公的な役割を見出し、下支えをするかということ が一つの大きなテーマになっていると思われます。  また、南房総地域については移住定住、二地域居住、このような要望も非常に強いと ころでございますので、地域の起業を進めるという側面とはまた別の面で、都会で働き田 舎で暮らすというようなライフスタイルの提案も、ある意味雇用対策につながるのかなと いうことで、二地域居住、もしくはその先にある移住定住と、できれば仕事をそのまま 持ってきて館山、南房総で暮らしていただければ、大変地方の我々とするとありがたいと いうようなところでございます。  観光のデータでございますが、人口の動態を2009年と2055年を比較してみますと、今 は団塊の世代と言われている60歳を超えた方たちの山があり、その方たちが観光に非常 に大きな影響力を与えている。それが2055年になると当然いなくなるわけで、国内の観 光のパイも非常に少なくなると。これは外客誘致という側面もありますが、この中での競 争に打ち勝っていくというのも我々には必要なところかなというところでございます。 ○たてやま・海辺の鑑定団  南房総、館山というところで活動しておりますが、まず南房総、館山というのがどの ようなところかということですが、南房総は3方を海に囲まれた温暖な地域で、半島です から海に面したところです。しかも黒潮という潮の流れの影響が強く、海がすごく豊かな ところです。  東京からのアクセスもそれほど遠くなく、今では館山道がつながっていますので、 あっという間に着くようなところに、北限域のサンゴが生きる環境があり、ウミホタルも おりまして、海辺の自然がある場所です。  しかも、その海というのはいろいろな面を持っていまして、東京湾側から行った海と いうのは、すごくなだらかで波が静かなところです。館山の海というのは別名鏡ケ浦とい うふうに言われています。鏡ケ浦というのは鏡のように穏やかな海ということです。そう かというと外海に面した荒々しい海岸線もあるような場所です。  そのような背景の中で、「たてやま・海辺の鑑定団」という団体は、どのような経緯で 活動を始めたかというところから、簡単に説明させていただきます。  私は、もともと館山に住んでいたわけではなく、南房総の自然が好きで自然を楽しむ ために平成13年に移住をしました。そこで、地元のホテルに勤めたのですが、そのとき 不思議に感じていたのは、周りにたくさん自然があるのに、その自然を「ここがいいです よ」とか、目の前の海岸でこういう楽しみ方ができますという説明をする方があまりいな いことでした。  その頃、館山市の観光振興のために観光プロデューサーという方が旅行会社から呼ば れました。その方が打ち出したのは、新しく何かをつくるということではなくて、自然で あったり歴史であったり文化であったり、地域にあるものを生かして、そこから何か仕掛 けをつくれないかという取組で、そこから地域の海辺を生かしていきましょうということ になりました。もともと館山にはすばらしい自然がありますから、そういうことを意識せ ずに地域で活動していた方々がいらっしゃいましたので、地域の自然を皆さんに伝えたい という思いから、こういう活動を広げていこうということで、平成15年に海辺の鑑定団 を任意団体としてスタートしました。  そこからどんな活動をしているかということですが、自然の中で海辺の自然をガイド する、案内する、伝えるという活動をメインでしております。その主なフィールドとして は、沖ノ島という館山の南房総国定公園の中にある周囲1キロの無人島になります。ここ は自衛隊の基地の裏側になっているので、たまたま電気もガスも何も来ていないため、浅 瀬にサンゴが生きていたり生き物がいたりという、豊かな自然が残っている場所でしたの で、自然体験活動を始めました。  そのきっかけとして、先ほどの観光プロデューサーさんが手がけた修学旅行というの がありました。修学旅行で海辺の活動をしましょうということで、最初は平成15年が3校、 次の年が11校だったのですが、今は年間平均40校ぐらいで、大体5,000人来ている状況で す。海辺の鑑定団で沖の島に受け入れている人数は、年間で大体3,000人の体験活動者を 受け入れています。  それから、夏に関しては水中眼鏡とマスクをつけたスノーケリングをやっています。 これは夏の時期しかできないのですが、水深1.5メートルぐらいのところにサンゴが生き ているものですから、海面から素潜りじゃなくてスノーケリング、水面からサンゴが見ら れるという体験プログラムをしています。参加者数は、天候によって少なくなる時もあり ますが、一番多いときは800人で、毎年キャンセル待ちが出るぐらいの人気の体験プログ ラムになっています。そのほか、房総は海と山がつながっておりますので、里山での体験 活動などもさせていただいております。  このような活動を通じて何を実現しようかといいますと、やはり地域の自然を守って いきながら、いろいろな人に伝えていこうというエコツーリズムの実現を、一つ大きな柱 としてやってきております。  現在どのような体制で活動しているかということですが、この活動に参加している皆 さんは、この活動に興味がある方ですとか、無償ではないですが好意でやられているよう な地域の皆さんになります。この活動をしていて「お仕事は何をされているんですか」と よく聞かれるのですが、NPO法人として始めた時点で、片手間でできることではないと いうことで、私はこの活動を仕事としています。  支援としてこれまでどのようなことを受けているかをご説明します。設立のときには 経産省さんの支援をいただいておりますし、公的な助成金という形で金銭的な支援をいた だきながら活動しております。  現在の大きな一つの助成をいただいている活動の柱としては、やはり人材育成が一つ の柱になっています。人材育成と一言に言いますけれども、皆さんが同じように活動でき るわけでもないですし、僕のようになれと言われでもなかなかなれるものでもないですし、 いろいろな形でお手伝いいただいている中で、常に活動に参加する人は求められている状 況だと思います。  今後さらにこういう活動を拡充していくためには、年間3,000人から4,000人の方を総 トータルで受け入れているのですが、それが5,000人、1万人という人数になれば、これ を職業として中核となって活動してく人は確実に出てくると思います。逆に言いますと、 今後そういう人が出てくるということが活動継続の一つのキーポイントになっていくの かと思います。  このような活動にまだまだ需要が結構あるのではないか、というのが感覚的ですがあ ります。需要というのは、要は仕組みと人材とフィールドがしっかりつくり上げられれば、 まだまだこの活動の輪は広がるのではないかと感じております。  今後の課題としても全く同じことが言えまして、これまで続いてきていますけれども、 本当に解決に向かう地域の課題というのは、自然を生かした活動がきちんとしたベースに 乗っていくことはもとより、続けていくためには、やはりこの活動で生活ができるくらい の仕組みができてくることだと思います。 ○コミュニティビジネスサポートセンター  私どもの団体のスタッフは、全員有給の職員という形で15名おります。そのスタッフ が中心となりながら何をやっているかといいますと、全国でコミュニティビジネスを やっている方、やってみようという方に対して人材育成のプログラムを提供すること、い ろいろな事業を一緒に立ち上げ、実際にうまくいくまでお手伝いをすること、また、我々 の事務所自体がインキュベーションということで、場所は大手町からすぐの場所になりま すが、240社ほど入居している起業支援施設も運営などをしております。大型のインキュ ベーションの運営などの場所の提供や運営のノウハウなどいろいろなお手伝い、支援をし ている団体でございます。活動範囲は広いですが、中間支援団体というものでございます。  館山とのご縁で少しお話しさせていただくと、南房総の活性化という平成15年に国土 交通省から委託を受けたまちづくりの事業がございました。それを民間のシンクタンクが 受託をしたのですが、モデルをある程度併用しながら地域の活性化の形をどのように整え ていくかという点の協力のため、一緒に地域の調査研究に現場に入ったことがきっかけで ございました。  そこでどのような形をとったかですが、地域の中でやりたいことをやりたい人がばら ばらに始めてしまうと一体感がなくなってしまうので、コンテンツをどのように明確にし ていくかということから入ることを一般的なやり方にしています。  コンテンツを明確にしたということでは、先ほどの事例の葉っぱビジネスも同じにな りますが、もともと地域の方たちが観光というキーワードで一体感を持っていましたので、 行政の担当者の方を含め、当時NPO法人で活動していた4つの団体の代表者と、商工会 や観光協会、地元の商店街の婦人部会の方など、25名から30名ぐらいを構成員として、 「観光」というキーワードで、ある程度共通意識を持っていただく場をつくり、コミュニ ティビジネスを行って地域の活性化を図るために10回近くそういった委員会を開催いた しました。  コミュニティビジネスをやる上で実際に必要なこととして、品質の高いサービスの提 供でお金をもらうためのプログラム、これから法人化をしてやりたいという方たちには、 起業の仕方のようなプログラムをつくっていただくという取組みを半年ぐらいかけて 行っていきました。  例えば、1つのNPO団体が単独でPRをして集客をしても、多分年間で3,000人、 4,000人の集客を集めるのはかなり難しいと思いますが、質の高い魅力的なプログラムが いくつもあれば、A団体とB団体が行っているプログラムを2時間ずつ合わせれば4時間 になりますし、1泊ずつのプログラムを合わせれば2泊3日の観光プログラムができます ので、団体同士が連携をしてPRしていこうという話になりました。その際には事業者の レベルアップに加えて、横の連携ということが重要になります。そこで初めて観光協会で あるとか市役所の方には情報発信でいろいろと協力していただいております。  ですから、お金の支援ということではなくて、地域にそういったプログラムができ上 がった上で、修学旅行向けに体験学習で子供たちに来てもらうために全国の学校とか自治 体にPRする部分では、観光協会とか市役所の方にも協力していただきながら発信をして いくことで、単純にその事業を行っている団体だけではなかなか信用力が弱いところが、 市役所や観光協会を含めてPRすることによって、学校側のほうも安心して観光のプログ ラムを受けようということにつながり、相乗効果的に多くの修学旅行とか宿泊観光客の流 入につながってきたと思っております。  地域の中の構成員を連携させること、一つのコンテンツで分かりやすい環境をつくり ながら一体感をつくっていくことがキーワードになるということで、それを館山のケース では、構成員が観光というキーワードで連携しながら役割分担することで、進めてきたと いうところでございます。  簡単に申し上げると、そういうものをお手伝いするのが仕事というか業務でございま して、北海道から沖縄まであちこちの現場に入りながら、地域の構成員と連携しながら時 代の変化に対応していく中間支援機能として、地域に必要とされていることを考えてアク ションを起こしていくことをしております。最終的に現場にいられるわけではないので、 我々が引き揚げてからそれが落としどころになるような形をとっております。  館山は、まだ途中経過といいますか、新しい中間支援の形を模索しながら、今後どう いう形が館山ないしは3市1町連携した一つの観光というコミュニティビジネスの中で の地域の連携と活性化が図れるかということを協議して、進めている段階でございます。 ○意見交換 Q01 館山で活動されているNPO法人には具体的にどのような活動の種類のもの があるのかお伺いしたい。 A01(コミュニティビジネスサポートセンター)  まず、観光に一体化した一つの理由としては、担い手になる人たちが観光という キーワードを出しても、福祉しかやっていなければ、いくら観光でPRをしても受 け皿ができないわけです。当時、「海辺の鑑定団」はまだNPO法人化されていな かったですが、文化フォーラムという地域の戦争遺跡を観光案内するようなNPO 法人、自然体験学校という自然体験を子供たちに案内するプログラムをしている団 体ですとか、あとは、南房総のIT推進協議会というITを通じて地域の観光案内 などの情報発信をする、広い意味でITを使った観光PRをしている団体ですとか、 海辺のまちづくり塾という、海という観光資源の中でウミホタルなどを案内するプ ログラムをしている団体しかいらっしゃいませんでした。  ですから、そこで一緒にPRすることによって、担い手としては観光を本人たち もやりたいし、町としても観光の活性化をしたいということで、観光がキーワード として一番合っていましたし、当時は観光の団体がほとんどでしたので、そういう 組立てをしたという背景もございます。 A01(館山市経済観光部)  最近では移住定住を積極的にNPO活動としている「おせっかい」というNPO とか、もうすぐ申請がおりるフィルムコミッションをNPOでやられる方とか、少 し幅は広がってきています。 Q02 修学旅行生に来てもらうときの売り込みとして、観光プログラムと組み合わ せるようなものとしてはどんなものがあるのかお伺いしたい。 A02(館山市経済観光部)  大体30ほどメニューを持っておりまして、それをどういうふうに営業するかと いうと、ほぼターゲットはエージェントでございます。我々がそういうところに 行って、こういういいプログラムがあるので、是非エージェントのほうから学校に 売り込んでくださいという営業がほとんどです。最近では、学校に対して直接出向 いて事前学習という形で、授業の1コマとして館山の自然とか沖ノ島のことを説明 してもらい、それを実際に修学旅行で体験してもらうということが、少しですけれ ども増えてきている状況です。 Q03 海辺の鑑定団には年間3,000人来られるというご説明でしたが、その収入の他 に何らかの公的助成を受けられていて、法人としての収支が回っていると思うので すが、公的助成なしで回るためには、大体どれぐらいの集客が必要なのかお伺いし たい。 A03(海辺の鑑定団)  公的助成をいただいている部分は、人材育成と活動環境の備品ですといったもの に充てているのがほとんどです。現状の平均的な事業ベースは700、800万円ぐらい です。それも助成金も含んだ事業ベースといいますか、事業高になっています。  それを継続的に活動できる、もしくは若い人たちがここに入ってこられる状況を つくり出すには、単純に3,000人から4,000人のところを5,000人以上にできるとか、 そういう端的な数字の目標を立てていくことが望ましいと思います。事業高として は1,000万円という部分が具体的な数字になるかと思います。  さらに、南房総の地域的なポテンシャルを見た場合に、今は沖ノ島の周辺を基地 にしつつ活動していますけれども、それ以外にも同じようなポテンシャルを持った 部分、フィールド、資源はたくさんあるので、そこにどのように仕組みをつくって いくかで、数字的なものは現実的にでき得る内容になるかと思っています。  ですので、その部分に関して地域の課題でもあるし、そこにまた支援みたいなも のが入るということが一つの起爆にはなると感じています。 Q04 館山市にお伺いします。ご説明では中間支援機能の強化の方向とございまし たけれども、この中間支援機能とは具体的にどういったことを指されて中間支援機 能ということでしょうか。 A04(館山市経済観光部)  一言で言えばコーディネート機能とでも申しましょうか、営業ですとかマーケ ティングですとか、広く言えば総務機能を個々のNPOが持つよりも、地域全体で 一体になってそういう機能をこなしたほうが効率的であり効果的であるという点で、 いわゆるコーディネートの機能、会社で言えば広報の機能であり、マーケティング の機能であり、総務機能であり、実際のNPOの皆さんは現場というかプレーヤー というか、そんなイメージを持っています。これは我々も今悩んでいるところでも あります。 Q05 中間支援組織の機能は既存の観光協会がベースだとなかなかうまく回らない のでしょうか。 A05(館山市経済観光部)  端的に申しますと、伝統的な観光協会というところが、非常に組織の疲労を起こ しているというのが現状かと思います。要は、そこを起爆剤にしようとする労力よ りも、新たにそういう中間支援の機能をやる気のある人たちのネットワークでつ くったほうが、多分早いだろうという判断がございます。 Q06 2年前に国土交通省のほうで観光地域プロデューサー事業をやったと思いま すが、その効果についてお伺いしたい。 A06(館山市経済観光部)  それは、近隣の3市1町の中では鴨川と、富津市で導入をさせていただいている ところですが、成果は上がっていると聞いています。ただ、これも表現が難しいで すが、内部での闘いといいますか、外から入ってきた人が地元の観光協会とか既存 の組織とやりとりをしながら、何かの成果を上げているというのが全国の実態のよ うに聞いております。  たまたま富津市の場合は、公共団体が観光プロデューサーを受け入れたのではな くて、民間のザ・フィッシュという事業体が受け入れましたので、そこは比較的ス ピーディーに物事が動いているようですが、鴨川の場合には今までの伝統的なやり 方からの批判というか、そういうものが厳しいと聞いています。ただ、成果は上げ ているようです。 Q07 着地型観光の取組で観光商品をつくられたと思うのですが、それは基本的に エージェントがされたのか、それとも地場の旅行会社のどちらで旅行商品を開発さ れたのかお伺いしたい。 A07(館山市経済観光部)  旅行会社という意味では着地型旅行を創る地場の旅行会社は一つもないです。中 央のエージェントがほとんどつくっています。あとは、着地型旅行といいますと旅 行業法等にひっかかるのですが、旅行に近いものをNPOの皆さんとか地域のそう いう人たちがメニューをつくって、そのメニューがエージェントの目にとまれば、 それを取り入れてエージェントが着地型ツアーにするとか、これから大桟橋、観光 桟橋ができて東海汽船というところが臨時で2カ月ほど船を出してくるので、そこ に売り込んでタイアップしてつくってもらうとか、そんな手法をとっています。 Q08 ふるさと雇用再生特別基金などを利用した取組を今以上にしていただくため には、やはり人員の体制を増やす必要があるのでしょうか。 A08(館山市経済観光部)  現実問題としてはそれもあります。基金事業ですから、こちらがやりたいことを 県のほうで採択していただかないといけないところもありますので、県との調整と いうところも少しはあります。  去年のふるさと雇用の案を出させていただくときに、5つほど案を上げたのです が、同じ市の同じ観光プロモーションが5つというわけにいかないというバランス もあるような気がしますけれども、その中で2つ選んでいただいたのですが、やり たいことは本当に山ほどあります。 Q09 基金の窓口は県になりますが、そこで市のほうにある程度人口割りか何かで お金が回ってくれば、あとは自由に使えるというものでもないのですか。 A09(館山市経済観光部)  そうですね。事業を組み立ててこういうものということで県のほうに申請させて いただいて、それを採択していただいてから、実際にその事業の開始の前に予算を うちのほうで議会を通すという、そういう手続になります。  修正なども県のほうに相談に行くとかなり緩やかなものですので、助かっている ところではあります。 Q10 インターネットを通じた他の地域の事例などの情報は届いていますでしょうか。 A10(館山市経済観光部)  来ています。市のほうの担当窓口もございまして、必要があれば県に問い合わせ て資料をいただいております。 Q11 ふるさと雇用再生特別基金などをさらに活用していただくためには何が必要 なのかお伺いしたい。 A11(コミュニティビジネスサポートセンター)  コミュニティビジネスの事業者の方にお会いすることがあるのですが、そう いったふるさと交付金、緊急雇用自体の制度も知らないと、さらにどういう経路で 申請すればいいかという情報がなく、地方自治体の担当者が、これをやりたいとい うことで予算を取るというケースが非常に多く、その担当者が、地域のこの部分に ふるさと雇用を活用すればよくなるという観点ではなくて、意外と趣味・嗜好的な 部分でやっているケースをよく聞きます。現場と一体感というか一致感というもの が余りないというケースが、現場からの声としては多いかと思います。  そのため、うちの団体でも1人でも2人でも雇えればここまでできるのに知らな かったとか、担当者が予算を申請してくれなかったというケースと、担当者の自治 体の方からすると「いや、ちょっとほかに使う用途があるから」とか「書類を書く のが面倒くさいから」というケースも聞きます。  ある地域では、緊急雇用とふるさと雇用で予算を取ったけれども、その受け皿に なる事業者がなく、もともと4人ぐらいで堅実にやっていた一つのNPO法人に対 して、体制が整わないまま、県と市で両方合わせて11人を雇わせたため、団体内部 が崩壊状態になったケースもありました。旧来やっているメンバーの町のためとい う気持ちと、新しい人たちの働き場という感覚との意思疎通がはかれない部分があ るという声なんかもよく聞いたりするということもございます。  また、福祉の現場だったりまちづくりの現場になってくると、専門性が必要だっ たり経験が必要ですが、ふるさと雇用を活用してハローワーク経由で来る方には、 とりあえず仕事が欲しいという方も多くて、なかなかいい人材が集まらずに、結局 雇っても長続きしないという、現場にそぐわない人たちの応募が多いケースがあり ます。 S11 周知が足りないところは、ホームページに情報を出ししておりますが、併せ て緊急雇用はつなぎの雇用で、半年なり1年のうちに次の仕事を見つけていただく という趣旨でのものですので、そういう意味では、とりあえずの働き口をというの は、そちらの基金を使っていただきたいという感じはしております。逆に、ふるさ との場合は3年という期間が長いというのもありますので、できれば常勤につなげ るものということで、専門性が高いというところは出てきますが、新しい基金では 人材育成もできるようなメニューも用意していますので、活用いただければと思い ます。 A11(館山市経済観光部)  今のふるさと雇用の形態ですと、どうしても市からの委託という事業になります。 市のほうの委託事業は、要は公共事業になりますから、こういうふうにやったらビ ジネスになるのでNPOが使いたいけれども、委託側からすると委託の制約から外 れられないということもあるような気がします。 S11 委託という事業スキームもあるかと思いますが、どうしても緊急対策として 確実に雇用の実績を上げるところで、こういうスキームに落ちついたという経緯が ございます。先ほど、やりたい事業ができないというお話があったのですが、予め 自治体のほうで完全にその事業を企画して委託するというやり方はもちろんありま すけれども、できるだけ新しい事業も、割と広目にテーマを設定した中で手を挙げ ていただく企画提案も、分野を観光とか介護とか保育とか広く設定した上で、いろ いろなよりよい事業を提案してもらうやり方をしているところがありますので、そ ういう事例を紹介しながら、そういうやり方をぜひやってくださいというようなこ とを今後もお願いしていこうと思っています。 Q12 プログラムの内容から夏がどうしてもメインになってくると思いますが、観 光事業をしていく上で、冬場など通年的に収入とか事業費が得られるようなプログ ラムを教えていただきたいのですが。 A12(海辺の鑑定団)  房総の場合は夏と、花という時期がありますが、活動は夏がやはり多いです。ゴー ルデンウイークとか特別な機会を別とすると、5月の終わりから、7月の初めぐら いまでとか、あとは9月から12月位までというのは少なくなっていますが、館山 には通年で魅力がたくさんあります。そうでないと移り住みませんので。通年での 魅力をきちんと具現化して、情報として皆さんにお伝えするということが地域の課 題と思っています。  昨日、冬の海で地引き網をして魚三昧でお正月をしましょうというイベントをし たのですが、そういう既存のものに対して何か付加価値をつけてあげて、今まであ るものにプラスアルファの価値をつけてあげることで一つ魅力が増すのかなという のは感じています。たくさんの人がどっと来るような流れにはならないと思います が、それは本当に一ファン、南房総や自然の海辺のよさを知ってもらって楽しみ方 を知って、それであげくの果てにはこっちに住んでみたいという流れにするものに つながっていくように思うのですが、そういう魅力はまだまだ埋もれていて、機会 があったらぜひ一緒に活動に参加していただきたいぐらいです。  では、そういうものを地道にやっていこうという流れで、去年秋にキャンペーン をしようということで「ほっと・はなっと」といいまして、渚のまちづくり会議に 事務局をしていただいていますが、3市1町で余り忙しくない時期にそういうプロ グラム展開をしてみようということで、あとファンクラブをつくって、コアな楽し み方をどんどん伝えようということの動きも今取り組んだりしております。ですの で、ぜひもしよければこのファンクラブに入っていただいて楽しんでいただきたい と思います。 Q13 先ほどのお話にもありましたNPOの中核になっていらっしゃる方々という のは、やはり外から移住された方が多いのでしょうか、それとも地元でやってい らっしゃった方が多いのかお伺いしたい。 A13(海辺の鑑定団)  そのNPOにより少し違うかもしれませんが、外からの方が割と多いと思います。 この活動に関しては、実際に担い手となってくれるアクティブなメンバーはほとん どが移住した人です。地元の方もいないわけではないですが、やはり移住された方 が多いというのが現状です。 Q14 市の立場からすると、若い方が地元に定着してもらうことも、もちろん望ま れることだと思いますが、まずは地域自体の活性化により外から来た人も増えるこ とで、総合的に相乗的に雇用の場ができていくことを考えられているのでしょうか。 A14(館山市経済観光部)  お答えになるかどうか分からないですけれども、移住される方、定住される方、 職場があればいつでも来るという方がいらっしゃる。ですから、人が増えれば職場 が増えて、また人が増えるといういいサイクルに入ってくると回り出すでしょうけ れども、職場がないからまだ移住できないので、もし、そういう人がどんどん集 まってくると何とか回り出すのかと思います。  やはり若い人がいったん高校を卒業すると、ほとんど外に出てしまいます。その 中で、人口が微減状態ですので移住されて来ている方もかなりいらっしゃるので、 そこは分析不足ですけれども、若い人が戻ってこられるような職場があれば戻って こられるのか、戻ってくるから職場ができるのか、どちらが先か分からないですけ れども欲しいです。 Q15 ソーシャルビジネス、コミュニティビジネスの平均賃金が250万というご説明 でしたが、雇用の受け皿として考えたときに、将来的には増えていくという可能性が あるのかお伺いしたい。 A15(コミュニティビジネスサポートセンター)  まず、平均給与の内情を踏み込んでみますと、例えば定年退職でもう年金をもらっ ているとか、アパート経営をしているため収入で区切りをつけてもらわないという 方、主婦の方も特に扶養を外れない範囲の中でというケースもいらっしゃる。  一方では、本当にそれ以上もらえないといいますか、稼げないというケースと2 通りいる状況ではあります。これがいいか悪いか別ですけれども、自分がやりたい ことで働きたいとか、やっている行為で人に喜んでもらうことが一つの仕事への考 え方という人たちが増えてきています。それでいくと、単純に年収1,000万でやりた くない仕事をやるよりは、300万でも自分が喜ばれて楽しいほうがいいということを 選ぶ方が増えているのは間違いないと思っています。  ただ、そういう理想論と、それで生活ができる環境にいる人といない方がいて、 特に子育て世代で、子供が高校・大学に進学するという大黒柱の方であれば、年収 250万ですと子供を学校に行かせられない状況になってしまうので、その場合には、 奥さんも同じように働きながら合わせて年収で500万、600万という形をとるのか、 それでは生活が厳しいから普通に勤めてしまうという、働き盛りの世代を少し別に 置いても、少なくともある程度の年齢で退職した方とか、主婦であるとか学生とい うレベルであると、意外とこういう分野で働きたいというニーズが多かったりする。 その環境とか生活状況にもよって大分見方は変わってくるのかと思います。  ただ、実際にこの世界で食べていけたらいいという人たちが、年収で500万、600万 まで至るとなってくると、このまま自助努力の中でそこに至るというのはかなり厳 しいと思いますね。 Q16 コミュニティビジネスで年収を上げることが厳しい理由をお伺いしたい。 A16(コミュニティビジネスサポートセンター)  例えば、共働きが増えている中で、行政でやっている保育園は延長保育でも大体 夜の7時には閉まってしまいますから、共働きだとなかなか迎えに行けないので、 夜の10時まで延長保育をしてもらいたいというニーズがあったときに、行政で夜 10時までの営業はできなくても、民間ベースで多少高いお金でも払って利用したい というニーズがあれば、それをコミュニティビジネスでカバーする方法もあると思 います。ただ、それで雇用を生むとか事業として存続させるということで考えると、 行政と価格差を比べるとかなりな金額になってしまいます。また、人材育成でお金 をもらおうという事業者も、商工会議所や行政で無料の講座をやっているから、な かなかお金をもらえるプログラムが実施できないとか、コミュニティーカフェ・レ ストランをやろうと思っても大型店舗に比べるとどうしても価格差が出てしまうの で、品質では負けないけれども安さでかなわないとか、そういう意味でコミュニティ ビジネスをやろうと思っている分野に対して闘うべき相手というのが行政や大手企 業というケースが非常に多いため、価格競争的な部分でどうしても、それだけの利 益を得るだけの付加価値をそこに出しながら、高い費用でもお客さんを巻き込むだ けの状況にまでやっぱり至っていないケースが非常に多いですね。  これは社会の問題だけではなくて、やっている方たちがアマチュアリズムでやっ ているということも問題としてあります。ですから、本当に高い金額をもらうだけ のスペックを持って提供するよりは、このぐらいでいいという金額と内容でやって しまっているがゆえに、悪循環としてそれなりしか収入にも至っていないという状 況も含めて、ビジネスという部分では結構苦しんでいるケースが多いかなと思いま す。   Q17 何か付加価値を付けて年収が500万、600万になるような道筋は難しいのかお 伺いしたい。 A17(コミュニティビジネスサポートセンター)  まず先ほど申し上げたように、コミュニティビジネスというのは、主婦の方とか 学生の方とか定年退職後のシニアの方がすごく多いですが、いずれの層の方も創業 素人です。要するに、起業とか数字に対して本気でチャレンジした経験がない方、 要するにサラリーマンか専業主婦か学生のレベルという方が創業するということを 考えると、ビジネスということに対して本気にやるという意識より、何となくアマ チュアリズムで参入するケースが多いことは、どうにか改善しないといけない要素 の一つと思います。 Q18 立ち上げ段階で、行政の補助金、委託費とかが入ってきている団体も結構あ るのかもしれないですが、行政の支援も一時的な支援で終わってしまいますけれど も、立ち上げ段階での支援として行政がやったほうがいい支援というのは、どうい うものが考えられますか。 A18(コミュニティビジネスサポートセンター)  これはあくまで私見ですが、最初に補助金ありきでやってしまうと継続できない のではないか思っています。要するに、事業費であれ人件費であれ、お金を最初に 出してからスタートをすると、基盤として非常に弱くなってしまうので、ある程度 自助努力で行ったときに、初めて何かしらの支援策が受けられるというハードルを 設けたほうがいいかと思っています。これから創業する人にお金を出すのではなく、 成果報酬とか評価報酬が受けられるような支援策があればいいと思います。  例えば、民間の会議室を借りて講座をすれば、1人1万円もらってもいいのが、 行政の貸し会議室でやるとお金をもらってはいけない制約がある場合には、お金を もらいながら事業としてはできないところから始まってしまうような、行政から補 助金を受けることによって、無料で提供しないとならないという制約が生じるケー スもありますので、確かに会議室自体の高い安いだけ考えると公的な施設ほうが安 いですけれども、逆に投資が少ない分リターンも少ないというよりは、それなりに 投資をしてリターンを得るということで、メリットを明示しながら計画を立てて やっていただいて、あらゆる部分を自助努力でやっていただいた先に有効活用でき るものがあれば紹介するという形がいいと思います。  行政側に一番やっていただきたいのは、形骸化してしまっている行政関連組織、 商工団体などが増えている中で、何か権益を守るためにバラバラに地域の中で存続 するよりも、一つの連携・連帯をすることによって、地域が協力して初めて受け皿 として成立すると思うので、そういう連帯感、一体感をつくるという上では行政の 信用力というのは非常に効果的ですし、重要な役割になると思います。あとは先ほ どのような旅行会社とか学校に修学旅行向けの観光をPRするときにも、集客活動 というかPR活動を行政セクターがやってもらえると、すごく信用力があるので集 客につながりやすくて、これをNPOのような団体とかが単独でやると、信用力が ないのでなかなか集客につながらないという部分もあると思うので、地域活性化の 中の全体の役割分担という中で考えると、その地域の一体感、連帯感の部分と、集 客をするとか販売をするという部分での補助というところをしていただくとすごく ありがたいなと思います。  先ほどのお話にもありましたが、行政が商品を販売するということは、営業活動 とか支援活動にどこまで踏み込んでいけるかという部分はあると思いますが、ただ、 行政の信用力をうまく活用すれば、お金ということはプラスアルファにおいて、 もっとできることはあると思います。 Q19 これまでのお話で、それぞれの地域にコミュニティビジネスをやりたい、供 給したい思いを持っている人たちが間違いなく増えてきていて、潜在的な需要もあ るということでしたが、一般的にビジネスというと人・物・金・情報ということに なりますけれども、今はどの辺のところにネックがあって、コミュニティビジネス が拡大していくことができないのか、拡大させるための仕組みづくりには何が必要 なのかをお伺いしたい。 A19(渚のまちづくり会議)  私は渚のまちづくり会議ということで、市からの委託で中間的なことをしており ますが、ふるさと雇用再生基金事業で3年間の期間が終わった後、継続して食べて いけるモデルを作るということを考えると、なかなか難しいのが現状です。  先ほどの話の中で、中間支援組織として営業だったり広報だったりマーケティン グだったり総務の仕事があるという話がありましたが、普通の会社で言ったら何か の事業、収益事業があって、そのためにマーケティングをやるとか営業をやるとか ということで、単体でもうかる仕事ではないわけです。活動に大きな手数料をのせ て販売していくということも現実的に難しい。  私も雇用創出とか地域で働いていくためにはどうしたらいいかと、本当に日々悩 んでいますけれども、コミュニティビジネスにおいては、現実的に考えるとやはり 高収入は期待できない感覚があって、そんなに高い収入でなくてもやりたいことが できているからいい、という思いがついていかないと難しいと感じております。  セーフティーネットの話が政治問題でも話題になっていますけれども、私は以前、 会社員をやっていて、そこで非常に安い月給で働いていました。そこでちょっと健 康を害したものですから、そのときにこれはどうしたらいいかと考えたことがあり ます。会社に迷惑をかけるし、クライアントに迷惑をかけるしというときに、傷病 手当をもらうとか、やめて失業保険をもらうとかと考えたときに、そもそも月給が 低いのでもらえる給付も非常に少なくて生活できるレベルじゃないなというような 問題とかが私の実感としてありました。  コミュニティビジネスのように、なかなか高い給料が難しいところに飛び込んで いただくには、失業保険をもらえば1年間生活できるような高い給料の人ではなく、 仕事を今失ったら本当に困る人のセーフティーネットみたいなものがあるとありが たいと思いました。 A19(海辺の鑑定団)  今の活動上では、やはり価値を上げるのも人ですし、その人が自然とかそういう 間に立つことで本当に自然の価値が上がるという活動ですので、よくも悪くもどう いう人たちが僕らに関われるのかが一つの課題ではないかと思います。もちろん人 が重要で、人が関わってくるのですが、この活動をやることが本当に楽しいとか自 分が気概を持てるとかというところが一つのベースになっていくので、一概にお金 だけの問題ではない部分のウェイトがすごく大きい。今後それをまたクリアして いった段階の組織ができれば、本当に組織化していく仕組みができていくと思いま すが、その次の歯車となっていくようなステップがなかなか出せないのが今の課題 だと思います。  ですから、単純にお金があればうまくいくかというと、そうではない部分がある ので、それは地域の仕組みとか、在り方自体に地域の皆さんと合意形成みたいなも のがある中で、そこに携わるということは価値があることだというような、そんな 流れができていくことも必要なのかなと感じます。本当に理想的な話ですけれども、 そういうステップに移ればだんだん数字的な部分、先ほど言った需要と供給がある 部分の歯車がしっかり回ってくるのではないかと思います。 A19(館山市経済観光部)  まず、システムとすると、伝統的な組織、観光協会とか商工会議所とか、確かに 見かけ上は形骸化していますが、中で活動している個々については非常に熱意を 持っている方もいらっしゃいます。今チャレンジしようとしているのが、個と個を つなぐ場を行政の下支えの部分として、懇談会でも協議会でもいいのですが、そう いう人たちが集まって一つの成果を出せるような仕組みをつくることです。  それがうまくいけば、構成員はみんなどこかの組織に所属しているわけですので、 どこかでまた組織の再活性化につながるのではないかという意味で、そういう個が 生かせる場というものを行政として何かの形でつくり上げることが必要かと思って います。  また、田舎のエリアのコミュニティビジネスでは、確かに250万とか300万ぐらい の収入というのは現実としてはありますが、300万の収入で自分の理想のライフスタ イルを過ごせる、普通に暮らせる何かができれば、年収300万でも皆さん来ていただ けますので、理想のライフスタイルで、子育てができ、安心して老後まで暮らせる という行政の役割がしっかりしていれば、250万だろうが皆さんに来ていただける。 そうすればまたビジネスで回ってくる。それが果たしてどんな仕組みなのかという と、これは観光プロモーションだけで考えていては解決がつかないので、次はぜひ 地域の代表格の方々をここに呼んでいただいて総合的にやるような方向で会議をお 願いできればと思います。福祉問題も含めて。  あと、田舎でビジネスを立ち上げるためには、大手の企業と競争してもかなわな いので、どうしてもターゲットを絞った、ある一定の需要を持っている方にたどり 着くための、こういう需要があると把握した上でそこに的確に物事を持っていける ような需要側の調査といいますか、こういうものを欲しているというものを行政と して把握して、NPOを起業される方に提供できれば、田舎の小さいビジネスでも 生きていけるのかなという意味で、そういう需要を把握してマーケティングにつな げられるような仕組みが必要と感じています。 A19(コミュニティビジネスサポートセンター)  コミュニティビジネスの拡大に必要なものとして、人・物・金・情報でいくと、 やはり人かなと思っています。コミュニティビジネスでうまくいっているケースは、 雇用創出企画会議での過去のアンケートにも出ていたと思いますけれども、創業時 にはほとんど自己資金の範囲で創業している方が圧倒的に多く、ほとんどの方が ノーリスクかローリスクで始められて、時間をかけながら3年、5年で少しずつ形 をつくっていくスタイルになります。俗に言う投資をして短期で成功するよりも、 売り上げ規模よりも、成功のスタイルが自分のペースでどれぐらい長く続けられる かという成功法則に基づいているところがあります。そういう人たちにとって、そ の人の意識であるとか、気概を持ってコミュニティビジネスをやるということで、 お金ありきということでなく、その人自身の人となりが地域に定着する上では絶対 条件の一つかなと思っています。  経済産業省でも、ノウハウ移転といって、ある地域で成功しているモデルをほか の地域に展開するということで、去年と今年で13事業者やったのですが、結論から いうとなかなかうまく移転は進みません。コミュニティビジネスは、だれがどこで 何をやっているかでようやく成立しますので、例えば、海辺の鑑定団ですと、竹内 さんというパーソナリティーの方が館山で観光のビーチコーミングというプログラ ムをやっているから成功していて、それ以外の人がやるとうまくいかないこともあ り、竹内さんが別の場所で同じことをやろうと思っても、もしかしたらうまくいか ないこともあるということでは、だれがどこで何をやっているかで成立している要 素が非常に大きいと思っています。  コミュニティビジネスをやっている人たちにとって、自分はこの町でこれをやり たいということで筋が通っているのですが、そのノウハウ移転というのは、そのス キームや人を変えたり、場所を変えたりしているがゆえに、何かが欠けるとうまく いかないということがあらゆる地域で起こっている現象の一つでした。そんな中で、 コミュニティビジネスというのは、本来は「地域課題をどう解決するか」という ミッションがあって初めて成立するのですが、これは担い手の方は、正直言うと多 分あまり考えていないことが多いと思います。地域の課題を解決するために自分が これをやろうと始めたよりも、多分ベースにあるのは、自分がこの町が好きだから とか自分がこれをやりたいからから始まっていて、結果としてそれが地域のある部 分の課題解決につながっているかもしれないけれども、スタートは多分地域課題解 決ではないケースが多いと思います。  ただ、地域課題解決を最初に示しておかないと、いろいろな人たちの協力やネッ トワーク、まさに地域の中の基盤ができないからこそ、一つの地域課題解決でこれ をしますという言い方をしているだけであって、主体者からするとその目的でして いるのではなく、その二重構造の中でコミュニティビジネスがうまくいくためには、 発信の仕方と本人の思いというものをどう分離しながらうまく両立して、一つのコ ミュニティビジネスをつくっていくことで、ある意味二面性を持っている中で事業 を推進していくことも含め、やりたいことを持っている人をどのように成功させる かに焦点を置きながらしていくことかと思います。  担い手の人がうまく地域で基盤をつくるためには、この人のやっていることはこ ういう地域課題解決をしていますという、発信とかプロモーションする方も今はす ごく重要な段階です。そういう方がいないと、一生懸命やりたい人たちが自分もプ ロモーションできないし、コミュニティビジネスとしての継続や自立もうまくでき ませんので、プレーヤーとコーディネーターの両方の人材が地域の中ですごく重要 だと思っています。  最後にコミュニティビジネスの推進の中で必要なものは、先ほどもありましたが、 社会保障とか福利厚生はすごく重要になっていると思います。コミュニティビジネ スをやっている方の多くが、給料が安くて社会保障も入れていない、入っていない という方もすごく多いので、もしコミュニティビジネスという世界が広まっていく と、低賃金で社会保障を受けられない労働者を増やしてしまうという部分も危惧し ていまして、そうしないためには社会保障の制度とか福利厚生をどうするかという ことも併用して考える必要があると思います。極端に言えば100万人のコミュニティ ビジネスの創業者が増えたとき、その人たちがある程度社会保障を受けられる環境 をどう整備していくかということで、そのためには社会保障とか福利厚生の在り方 というものが、大手企業、中小企業に勤める前提でないと出てこないということで は、この世界は広まらないし、きちんとした労働環境はつくれないと思います。  ふるさと雇用は非常にいい制度だなと思っていまして、ただし使い勝手の問題を マニュアルチェンジしていただきたいと思います。中でもやっていただきたいのが、 3年後に雇用継続するよりは、あくまでコミュニティビジネスの世界では、インキュ ベーション的に使っていただいたほうがいいかなと思っています。例えば、海辺の 鑑定団で3年間経験を積んだら、その経験を積んだ人が、4年後からは伊豆だとか 知床でビーチコーミングのプログラムを実施しながら、地域のやり方を踏襲しなが ら、その地域で新しい地域版をつくっていただく。コミュニティビジネスの世界で は、そこから先の10年、20年雇用を継続するのは、現状からすると考えにくい部分 がありますので、その経験、体験を3年間学びながらそこで経験を積んでもらう在 り方のほうが、ある意味の雇用者という考え方でいけば適していると思います。