第1回産業労働事情懇談会に係るヒアリング 議事概要 日 時 平成21年12月24日(金) 13:00〜15:00 場 所 中央合同庁舎5号館5階 厚生労働省専用第12会議室 内 容 雇用機会の創造に向けた取組と今後の課題について 参加企業(業種):自動車メーカー ○企業の現状、会社概況について  私どもの会社の現状でございますが、従業員数は、2009年3月時点ではグローバル連結 で約32万人、夏に海外で人員減等を行った影響等もあり、現時点で連結では約30万人、 単独では約6万5,000人です。  それから事業内容ですが、車に関連する事業、あるいは独自の事業を多々やらせてい ただいています。その中に金融事業と住宅事業がございますが、金融事業は来年には譲渡 させていただき、住宅事業は車づくりのノウハウを生かした鉄を躯体に使った住宅を 30年以上しておりましたが、販売は既に分社していまして、製造部門も含めて完全分社 を来年中ということで進めております。  グローバルの生産・開発拠点ですが、北米、南米、中国、アジア、それからヨーロッパ、 南アフリカ、オーストラリアにも生産拠点等を持たせていただいています。  2008年実績の生産台数は、日本401万台、海外420万台、合計821万台ですが、これま での概ね7年間では、年間約50万台の勢いで台数が伸びておりました。  為替に強い生産体制をつくろうと思いますと、現地でつくり現地で売っていくことが 中心になり、かつ、海外での経済や雇用に役立たせるという意味でも、より現地化という ことで進めておりましたが、これだけ急激な台数の伸びに対して、どうしても海外の生産 というのは歴史的にも浅く、急激なこの立ち上がりまでは追随できなかったということが ありまして、日本での生産の構えを大変増やしております。  2009年は生産台数、販売台数が落ちましたので、結果として約400万台を日本でつ くっていたものが、2009年度の見通しでは275万台、歴年の見通しではグローバル生産台 数で640万台、国内はうち275万台となっております。正規の稼動日数が244日ですので、 275万を244で割ると日当たり大体1万1,300、1万1,400台レベルだったことになります。  とりわけ、今年の2、3、4月は台数も落ち込みましたので、会社休業や労使協定に 基づく計画的年休付与等、相当の生産調整をやらなければなりませんでした。  来年については、市場活性化策等がありますので、今年を上回るレベルを確保したい と考えております。  減税措置を受けられる車を中心に大変好調でしたが、それは、政府の市場活性化策と いうカンフル剤を受けた上での伸びであり、足元からの回復ではないため、まだ中期的に 慎重な線を持たせています。 ○環境・エネルギー技術について  環境・エネルギー問題への対応を、簡単にご説明いたします。石油から精製されまし たガソリン、ディーゼルは、現時点では自動車というモビリティーにとって一番使いやす いエネルギーであります。オイルピークという話がありますが、これまでの車づくりは当 面主流となります。ただ、燃費の向上、すなわちエンジンの改良とか、車体の軽量化が当 面の技術面での非常に重要な内容になると思います。  次に、将来的なパワートレインのためのエネルギーについてです。「究極は電気/水素」 と考えています。最も二酸化炭素を出さない、排気ガスがクリーンになるという意味では、 電気と水素が将来主流になるということで、ここをカバーする車といいますか、パワート レインになりますが、引き続きガソリン、軽油等については内燃機関で見ていく、電気は EV、水素はフューエルセル、燃料電池。この全般に関わる技術がハイブリッドというこ とであります。  ハイブリッドの技術というのは、これから車の技術が変わっていき、電気自動車(EV)、 燃料電池車(FCHV)、プラグインハイブリッド車(PHV)という、将来の車に応用できると いうことでございます。  例えば、ハイブリッドの技術では、エンジンとモーターとバッテリーの3つを使いな がら車を動かしていくわけですけれども、電気自動車を単純に言いますと、プラグインハ イブリッドからエンジンと燃料タンクを取ってしまうものがEV、フューエルセルのとこ ろで言いますとエンジンを燃料電池のスタックに置き替えることになります。このハイブ リッドシステムという長い期間にわたって開発をした技術が、将来の環境対応車にも幅広 く応用できるということは強みであり、大事にしていきたいところと考えております。  次の、ハイブリッドシステムの変遷ですが、最初は約40年前の1965年に、小さいスポー ツタイプの車にガスタービンエンジンを積んでハイブリッドにすることを開発していた 時代があり、これがハイブリッドのルーツになります。その後、このような研究を長く続 けている中で1997年に初の市販のハイブリッド車を出しました。それから非常に長い時 間をかけて蓄積された技術が、現在の新型ハイブリッド車に使われております。  ハイブリッド車にはいろいろありますが、エコランといわれるものは、車が止まって いる間はエンジンを止めてしまうもので、ブレーキをかけて回収された電力を使ってモー ターを回していくものもあります。次に、マイルドハイブリッドとは、車が止まっている 間はモーターで電装系を動かすもので、モーターとエンジンの能力が小さく、電気だけで の走行はできないものです。ストロングハイブリッドと言っております、私どものハイブ リッドシステムは電気だけで走行、EV走行が可能なレベルになっております。  冒頭にご紹介させていただいたような、モーターだけで走る車、あるいは燃料電池車 という形に市販の車として応用できるのは、EV走行ができるレベルのハイブリッドでな くてはならないことがありますので、このストロングハイブリッドという技術はしっかり 守っていく、強みとして残したいということであります。  このように、いろいろと内容を磨き上げてきましたハイブリッド、それから世の中の 環境、低炭素社会への動きに対して、お客様がどのように見ていただけているかというこ とで、これまでのハイブリッド車の販売台数をみますと、現時点ではフルラインアップ メーカーということで、セダンやワンボックスなどの14車種のハイブリッドタイプを出 し、1997年の初代のハイブリット車から比べて、2008年までの10年間でほぼ4倍の販売 台数となりました。  もちろん、いわゆる電子デバイスのようなムーアの法則と違って、10年で4倍という 数値をどのように見るかということはありますが、ここまでの出力密度を上げるまでに完 全な実用レベルを持ってきたというのが現在の状況であるかと思います。  また、一方で出力は上がりましたけれども、値段も上がったということではお客様に 受け入れていただけないということで、併せてコストも引き下げなければいけないため、 初代のハイブリッド車に比べて、コストでは3分の1まで圧縮して、これからの収益の柱 の一つになるレベルまで原価は下げることができております。  それから、電気自動車についてですが、電気というのはガソリンエンジンと違いまし て、どのような一次エネルギーからでもつくれるという強みがございます。原子力からで もできますし、それから火力発電、水力発電、様々な形でできるということです。した がって、マクロとしては供給量が確保しやすく、それから排ガスもCO2も出ないという ことで、大変いいエネルギーであります。  ただ、一方で弱みが2つございます。1つは、電池はエネルギーの密度といいますか、 単位当たり出力が小さいということで、車としては航続距離が短く、積める電池で走れる 距離が限られている問題。もう一つは、全世界、日本全国どこにでもガソリンスタンドは あるわけですけれども、それに代わる充電設備というインフラ側の問題があります。  できれば、次世代EVをアメリカで導入したいと考えておりますが、まずEVの1つ 市場として、2人乗りで近距離を移動する、充電時間も短くコストもかからないものがあ ると考えております。  その中間として、プラグインハイブリッド車があります。現在のハイブリッド車は、 車の中でエンジンを回し、回生ブレーキ、もしくはジェネレーターでそれをバッテリーに 戻すというものですが、プラグインハイブリッドは、外から充電できるようにしたという 違いがございます。  特に、現在のハイブリッド車ではニッケル水素の電池を使っておりますが、それをリ チウムイオンに変えることで、非常に高出力、電池容量も拡大できる、家庭用の電源で充 電できるようになりますので、今後の燃料電池自動車へのもう一つの橋渡しの存在として しばらく主力として出していきたいと考えております。  また、プラグインハイブリッド、家庭用電源ということでは、例えば、家のソーラー パネル、あるいはバイオ燃料、家庭での燃料電池ユニット等と併せて完全なWell to Wheel でCO2が出ないという世界も見据えてやっていきたいということであります。  燃料電池については大変に難しい状況にあり、メリットとしては電気と同じように水 素もいろいろな1次エネルギーから派生、あるいは作成することができますので、供給量 の問題は確保しやすく、水素と酸素を燃やして出るエネルギーを使いますからCO2はゼ ロで、純粋な水しか出ないという大変にいいものであります。  一方で、これも電気は電池がためられないと、水素は水素がためられないということ で、航続距離の問題があります。高圧水素タンクですと安全面の問題がありますし、水素 吸着金属ということですとコストの問題等があります。もう一点は、燃料電池車はまだ原 価が高く、デバイス等も非常に高価であるということで、まだ市販に耐え得る原価構成、 価格構成になっていないということです。  それから水素の取り扱い上、例えば、寒冷地とか酷暑の段階などの状況できちんと性 能が維持できるかという見極め、改善がまだ必要になるということです。  我々のロードマップとしては2015年ぐらいに燃料電池を出していきたいと考えており ますが、そのためには電気と同様に水素を供給するインフラがどれくらい整備されるか、 あるいは市販に耐え得る原価をどこまで積めるかということがございます。  今まで申し上げたようなことを将来の車の棲み分け、いわゆる市場のセグメントのイ メージでまとめますと、縦軸に車のサイズ、それから横軸に車の可能な移動距離という形 でとると、いわゆる電気自動車の領域はコミューターあるいは小型の宅配車両、それから、 一般の乗用車という意味では、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、それから燃料電 池というところまでいきますと、大型トラックや路線バス等、通行路線がある程度固定さ れているところになります。先ほどもありましたように、インフラはどこでもつくれるよ うなものではありませんので、既定の交通ラインを一定ルートで常に巡回するようなもの に燃料電池を導入することが、ユーザーとの絡みでも使いやすいのではないかと見ていま す。  これを大きくまとめますと、オイルピークに至る前までにハイブリッド、プラグイン ハイブリッドをできるだけ市場に投入し、石油の消費量はできるだけ抑えていただき、そ の間に着実な代替エネルギーである燃料電池車、電気自動車というものに切り替えていく、 併せてインフラ整備という都市づくりも含めて、メーカーとして協力をさせていただき、 連携をとることが必要になってくるかということでございます。  特にEV化という意味で、非常に危惧もしているポイントとなる点が幾つかございま す。1つは、これまでの自動車は、擦り合わせ型と言われますが、エンジン、変速機等の パワートレイン、内装や外形のスタイル等の技術を1つの車という商品にインテグレート していくための仕入れ先も含めた巨大なピラミッドの中でつくっていて、それが当社の強 みということで、学会などで学者の先生方は分析されます。それを電池とモーターという 世界、内燃機関とは全く違う新しい動力という意味でいいますと、産業構造や参入障壁で これまで有利に立っていたことが全てなくなる可能性もあります。場合によっては、パソ コンに近い水平分業みたいな形で、ある優れたモーターユニットを持っているメガサプラ イヤーのようなところで全部供給を受ける世界になったとき、グループの中で縦からのつ ながりで車をつくってきた、当社のやり方がビジネスモデルとして成り立つかというとこ ろは、大変危惧もされますし、次の世代の車をつくっていく課題であります。  もう1つは、インフラあるいは交通の考え方も含めて、車会社が単体で取り組むこと よりも、会社として都市づくりそのものとセットで考えていかなければいけないという意 味では、いい商品をつくればそれだけでやっていけるということではなく、それが社会や 経済や世の中にフィットすることも含め、商売能力、行政との連携能力を高めなければな らない辺りが、非常に課題にもなっていますし悩んでいるところです。  このような重要課題について、例えば、電池については製造技術開発部での開発と製 造も含めたタスク、社会との連携という意味での専門のタスクフォース、特に米国のス マートグリッドに対して、車は1台1台にとてつもないバッテリー積んでいるわけですか ら、それだけの電力網の中の非常に重要な要素といいますか、モジュールとして車がとら えられるのであれば、それについての研究、それから商売していこうという取組みを始め ている段階でございます。 ○意見交換 Q01 電気自動車の場合、現在の部品より点数が減ると言われており、これまで強 みと思っていたことが失われる場合には、そこで働いている人たちが必要なくなり ますが、そもそも仕組みが変わったことが主力になれば、今度は人が必要になるよ うに、これから環境対応車へ移行していくことの雇用の面への影響をお伺いしたい。 A01 現在のターゲットとして存在している、普通車、小型車という市場のセグメ ントがあると思いますので、今、走っている車が直ちに全てEVに変わってしまう かというと、商品として成熟するまでにはしばらく期間があると思います。CPU とかメモリーのようにドッグイヤーで変わることではなくて、これは希望的観測も 少しあるかもしれませんが、早くても10年ぐらいのスパン、だからこそ今やらなけ ればいけないという焦りもありますが、車の今の大きな原価比率は、価値比率では ないですが、車に占める原価でいうと3割がパワートレインで、残り7割がいわゆ るボディとか外装、内装という部分です。  要するに、車の動力の部分は実は3割であって、残り7割は車体部、ボディ部分 であると見ますと、動力部分が変わったとしても、いわゆる車づくりの部分、乗り 味とか、あるいは乗り心地、入ったときに革張りがいいとか、ファブリックがいい という部分はまだしばらく残ると思います。  したがって、本当に今乗っておられるセダンとかスポーツユーティリティーの ユーザーが、新規参入した車にすぐ替えるわけではありませんので、我々が車づく りでこだわってきた部分について、イニシアティブをとれる期間はまだ続くのでは ないかと思います。  怖いのは、コミューターとか近隣の配送系のような商用車といいますか、乗り心 地より燃費がよく、物が積めて、壊れなければいいというような市場に対して、E V化、ショートコミューターのようなものが爆発的に出てきますと、市場はどんど ん出ますので、雇用の拡大にはなりますけれども、一企業としては全く強みのない 領域になりますので、ゼロから取り合いを始め、モーターや電気のメーカーが市場 を席巻するということがあり得るかもしれません。ただ、国内では、安全規制とか 厳しい規制による参入障壁がありますので、国内においてそういうコミューターが 爆発的に変わるということはないと思います。もしこれが、一定の安全基準でよい とか、最高速度は30キロで、それに応じた衝突安全性能はこれぐらいでいいという ことになりますと、今までの車づくりのイニシアティブはなく、ファブレスのよう なメーカーでも入ってこられますので、こういうモビリティーみたいなものが、グ ローバルで、もしアジアに爆発すると、これは置いていかれる感じになると思いま す。  今、海外のメーカーで、そのようなイメージを持った車を出している所もあるか と思いますけれども、たとえ日本の安全基準に見合わなくても、もしその国と市場 が受け入れれば、それはあり得ると思います。ですから、我が国自動車産業の雇用 に与える影響も小さくないと思います。 Q02 水素の燃料電池自動車の現実化はまだ難しいのでしょうか。 A02 問題は2つありまして、とにかくコストがかかるために市販に耐えられない ということです。水素という極めて難しい燃料でありますので、それを安全、安定 的に使えるようにするため、整備をするためのものがまだ試作車両段階であること です。それから、高圧の水素スタンドをどれくらいの拠点で建てられるのかという、 電気以上にインフラの整備が難しいことです。  我々が見ていますのは、長距離トラックや路線バスのようなものであれば、一定 ルートをダイヤに従って動くわけですから、そういうところに重点的にインフラを つくることから始めれば効果もあると思います。その次に、水素スタンドの問題に なると思います。やはり、お客様のことを考えますと、水素を補充するために、家 から10キロも離れたスタンドまで水素を入れに行くのでは、お買い求めいただけな いと思うので、私自身がユーザーとして欲しい車になるまでには時間がかかると思 います。 Q03 中長期的に見て、今の日本の生産体制は維持されると考えていらっしゃるの でしょうか。 A03 現時点では、どこかの工場を閉鎖するとか、あるいは今おられる方たちを解 雇しようということはありません。 Q04 ハイブリッド車や電気自動車の場合、1台つくるのに必要な生産工程という のは、従来型の自動車に比べると増えるのかお伺いしたい。 A04 初期段階では、工程ないし工数、開発の費用、時間ともにかかると思います。 その後の技術が成熟してくると、安く簡単にたくさんの量をつくれるということに なると思いますが、1つの類推としては、電池産業なり、あるいはハードディスク メモリー、CPUのように、初期のころは処理能力のあるCPUは歩留まりが悪く て値段も高かったのですが、どこかで量産の技術なり歩留まりが変わると、二次関 数的にその生産量とか、あるいは価格が下がりますので、最初からいきなり車づく りの工程が減ることはございません。  先ほどの擦り合わせ部分は手間がかかると思いますが、それが突然自由になって 組合せになると、あらゆるところで簡単に車ができる、プラモデルのようになると 思います。専用のラインも熟練工も要らない、決められた作業要領と、大して重た くもない車でしょうから重工設備も要らなくなりますので、必要な生産工程は少な くなると思います。 Q05 現在でも期間工は本工で登用されているのかお伺いしたい。 A05 2008年度は、基本はいわゆる技能系といいますか、製造系と理解していいの ですが、その製造系では750人をいわゆる期間従業員から正社員に登用いたしました。 本年の計画としては、この年度で150人登用する予定です。 Q06 正社員の技能職は、毎年何人ぐらい採用されているのかお伺いしたい。 A06 2008年度は、1,000人ぐらいは採っていましたが、2009年度は500人で計画し ました。来年については今詰めています。 Q07 学卒で入ってくる離職率はどのぐらいなのかお伺いしたい。 A07 かつては、最初の1年で2割ぐらいでした。今は、手元に数字はないですけ れども、年間で1年目の方でやめる方は数%となりました。  昔はいろいろな理由でやめられました。仕事がきついということもありましたし、 寮などの施設も、歴史のあるものでしたので、それを業績がよかったこの10年ぐら いで、1人部屋で、メゾネットタイプで、食事等も大変よくするなど、福利厚生投 資をした関係で、まだ不満はありますけれども、寮などの施設が直接のきっかけで やめる方は少なくなりました。それから作業自体も作業補助設備が入りましたので、 以前はタイヤを持ち上げてとりつけていた作業が、女性の技能員の方でも作業でき るぐらいの、筋肉を使うような作業も減らしておりますので、定着率も相当よくな りました。 Q08 技術系の場合、中途採用をされているということでしたが、どのくらいの人 数を採用されているのかお伺いしたい。また、それは公募されるのでしょうか。 A08 今年はゼロに近い状況です。探していて採れないのは、電池関係とか、最先 端のところです。  採用については、公募して、エントリーシートを出していただく中で数度にわた る面接と、それからある程度の専門性を確認させていただいた上で、採用させてい ただいています。   Q09 例えば、中国市場向けで採用された方が、そこから全く違う職種に行くとい うことはあるのかお伺いしたい。 A09 今のところはその実績はございません。海外営業の舞台でそういう方たちを 採用した場合に、中国担当の人が北米担当に行ったとか、経理に行ったということ はありません。そのスペシャリストということで採用していますので、職種、ある いは地域限定採用という条件は付いていませんが、わざわざ異動させる人事上のメ リットもありませんので、ご本人の希望があれば別ですけれども、基本的には仕事 とご本人がマッチしている状況で働いていただいていると思います。 Q10 技能職種は期間工から登用されているということですが、事務系、技術系で すと数%台になるのは、仕事の性格に違いがあるのかお伺いしたい。 A10 現時点での理由としては、私どもの車づくりは、擦り合わせでやっていたり、 あるいは開発から生産、準備、製造に至るところもそうですし、我々のような経理、 総務、人事のところの管轄もそうですけれども、特定のスペシャリストがある領域 だけをしているということではなく、経理の人間が技術部まで行って部品を見たり もしますし、そういう意味では学生さんを採って、少し時間をかけて育成して戦力 になっていただくということがメインになります。  ただ、極めて重点的な領域、例えば、中国市場での事業展開には、中国語が堪能 で、中国に精通して、場合によっては、現地に人脈があるような人という要素にな ると、これを社内で育成していたら間に合いません。あるいは、学生のころの中国 語の勉強でどこまで通用するのか、言葉は話せても仕事が分かってないということ では、ただの通訳になってしまいます。そのため、そのような領域は専門の方に来 ていただいて、できるだけ早く当社の仕事のやり方や、物の考え方を早く吸収して いただくような形になります。その関係で、私ども人事にも電気産業から来た方が おりまして、その方は最初の半年間は、用語一つ分からなくて苦労されたと言って いました。製造現場では一般的に使われている、社内の我々が何の気なしに使って いる用語、それから判断基準、あるいは仕事を進める上でのプロセス、そのような ことからはじめるということは、下手するとストレスを感じられることがあるかも しれません。 Q11 短期の雇用づくりという問題意識で今年1年を考えた場合、年の前半の落ち 込みから、後半の生産回復と雇用の増加ということについてお伺いしたい。また、 生産回復の要因と、その中で雇用での増加が純増分としてどのくらいあったのかお 伺いしたい。 A11 2009年の3月が国内の自動車市場がボトムだったと思います。その要因はい ろいろありまして、在庫調整の局面もありましたし、世の中が車を買うモードにな かったということもありますが、そのときの市場の年率は総市場で225万台ですから、 一番売れていたときの半分以下のレベルに冷え込みました。  実際に、日当たり台数も半分程度になりましたから、単純にピーク時の半分の人 で済んでいるという状況だったというのがマクロな感覚です。  この余力となった半分の人をどうしようかということで、期間従業員の契約非更 新ということをやらせていただきました。去年の暮れぐらいから、寮の延長や、 フォークリフトの免許を取れる等、次の就職にせめて役立てるような資格を取って いただくとか、あるいは満期まで勤めていただければ、最終慰労金と実家までの旅 費を出しましょうとか、できるだけ当社としては誠意を尽くして、契約時の説明で も、次回の更新がないことを前もって説明しながら年前半は過ごしました。  大体7、8月に、新型ハイブリッド車の販売増により、生産量も増えてきました が、それは新型ハイブリッド車をつくっている工場だけで、ほかの工場では依然と して要員余力の状況でした。そういう人たちに応援という形で忙しいところに行って いただいて、人を内部で再配置して回していたのが今年1年間の大きな状態 です。いよいよそれでも足りなくなってきたのが9月、10月以降の状況で、9月か らダイレクトメールによる期間従業員の募集を開始して、その時点では3月末でエ コカー補助金は終わる予定でしたので、必要にして最小限の期間従業員を採用した のが、この後半期です。  今年1〜3月の減産期は、正直私も職場を回りましたけれども、全くラインが動 かなくて、電気も全部止めて詰所でみんな座学をしておりました。安全教育とかテ キストを開いて、本当なら一生懸命車をつくって目の前に流れていく人たちが、教 室の中でずっと勉強しておりました。掃除もやり尽くしました。会社に来ても座って 勉強している状況でした。この実感から、後半期に人を採るという気持ちには少し なりにくかったのは事実でございます。できるだけ、現有の人で何とか回せないか と、これが仕事1年間の振り返りです。 Q12 今後、どのようなユニット工場の事業所で雇用が増えていくと展望されるの かが、中長期で考えた場合の雇用の課題のような感じがいたしますが、どのように お考えかお伺いしたい。 A12 2年ほど前に、ハイブリッド100万体制という方向性を打ち出して、いよいよ サイトを決めるとか、増強するラインの仕様を決めようかというときに、去年のリー マンショックが起きまして、全部出鼻をくじかれたというのが実態です。  今は、増強投資をできる環境に早くしなければならないことが当社の単体での実 情です。少なくとも赤字の状態でハイブリッドのラインに投資することは、厳しい かと思います。 Q13 中長期的な戦略課題となりますと、もう少し状況を見なければならないとい うことなのでしょうか。 A13 ハイブリッドとプラグインハイブリッドが当面の主流になるということは変 わりないでしょうから、それに対してどこで能力をつくるか、増強するかという点 を考えております。  仕入先さんに、できるだけ部品の種類を減らして、ハイブリッドといえども、さ らに原価を下げているというようなことができれば、国内での拠点を拡大すること ができると思います。ただ、時間はもうしばらくかかる感じです。 Q14 コストカットの関係でいいますと、高く売れればコストをカットする必要が なくなると思うのですが、ハイブリッドがブラックボックスであれば、ある程度価 格競争力があることで、高く売って付加価値を上げるという戦略にしなかった理由 をお伺いしたい。 A14 私は国内営業と価格政策の専門家ではないので、ちょっと耳学問としてお聞 きいただきたいのですが、我々が商品企画をするときに販価というものを決めます が、まずお客様に買っていただける値段というものがありまして、それに対して製 造原価をどれだけ下げるかということがございます。その結果としての差分が目標 とする利益ということは、従来から変わっておりません。原価がこれだけかかるか ら、それに適正な利益を乗せて販価が決まるような価格設定は、過去からしてはい けないといわれているもので、あくまでお客様にお買いいただける販価マイナス原 価が利益ということが一応のルールになっています。  販価を決めるに当たっては、お客様の購買ゾーンのターゲットであるとか、商品 の仕様から決めていくのですが、むしろ値段を下げると怒るお客様が一部いるのも 間違いありません。ブランドによっては、安売りすると価値を壊すこともあります ので、投げ売りするつもりはありません。  ただ、新型ハイブリッド車を求めているお客様は、一般的にセダン、あるいはエ ココンシャスで普通に標準的な購買者層という人たちとしたときに、今の販価が著 しく安いかといいますと、現在の価格に上乗せするのは難しいかと思います。 Q15 初代のハイブリッド車の価格は上乗せしたぐらいの価格でしたでしょうか。 A15 初代のハイブリッド車は、その位の価格でないと、原価的にきつかったとい うもので、とにかくハイブリッド車という商品を世の中に先駆的に出すということ を第一義に考えたものでしたので、それでもぎりぎりの設定でした。  今回の新型ハイブリッド車は、やはり商品として成り立つというレベルの中で価 格を設定しました。それから、我々の内部的なお客様のターゲットの話と、他社の 意欲的な価格設定との価格合戦というものがあるのも事実だと思います。ですから、 デフレ経済ではないかという話では、職場の製造現場の人たちなどで、何で新型ハ イブリッド車を値下げしたのかという人もおりますが、そうではなく、あの経済環 境と冷え込みの中で、それから幸いにして国のほうからご支援もいただきましたの で、この価格ならお客様に新型ハイブリッド車を買おうと思っていただけると判断 して出した値段です。それが爆発的に出たので、後からしますともう少し値段設定 を高くしてもよかったのではないかという話もありますが、今、総じて車に対する 価格は厳しく、無駄な仕様は要らないというお客様も多いということはあります。  一方で、当社の高級ブランドの展示を見られるお客様ですと、高い値段でもハイ ブリッド車がいいといって買われる方もいらっしゃいますので、ハイブリッド車を できるだけ早めにフルラインアップできるようにしたいと考えております。そのた めには、供給能力を高めなければいけないと思います。  ハイブリッド車に関わる小さい部品を仕入れ先さんがつくっておられるので、仕 入れ先さんの供給能力もいろいろな意味で上限があり、この部品が止まると、ハイ ブリッド車がつくれないというクリティカルな部品もありますので、複社発注とか もしますが、そのようなバリューチェーンの長い工程の中にボトルネックがござい ます。ハイブリッドのユニット一つをとりましても、当社の内製だけでなく、外注 している部品ですとか、全部積み重なって最大生産能力というものの限界を持って いるのがつらい状態ですので、そこに人を配置することができるような状態には、 もう少し時間がかかると見ていただければと思います。  その先は、中長期の台数がもう少し上がってくると思いますので、会社も回復し て投資や能力拡張ができれば、もう少し復活したような人員計画、あるいは投資計 画も出せると思います。