第3回産業労働事情懇談会に係るヒアリング 議事概要 日時 平成21年1月20日(火) 10:00〜12:00 場所 中央合同庁舎5号館2階 厚生労働省共用第6会議室 内容 今後の望ましい賃金制度の在り方について 参加企業(業種):電気・ガス業 ○企業の概要について  当社は1都7県を基盤とし、エネルギー事業と関連する付帯事業を手がけています。 4月1日現在の社員数は8,642名、11月末現在で1,018万6,000件ものお客様に支えられて いる企業です。  社員を年代別に見ると、50歳以上が全社員の41%を占め、年代が非常に偏り、歪なピ ラミッドを描いています。また、男女別では、およそ9対1の割合で男性が圧倒的に多 くなっています。平均年齢は45.0歳です。   ○経営計画と人事処遇制度の変遷について  処遇制度は経営計画、経営方針と一体となっていますので、まず始めに経営計画の変 遷をご紹介申し上げたいと思います。エネルギー事業は、今では規制緩和、自由化が進 められていますが、20年ほど前までは良くも悪くも法で守られていました。また、当社 では90年代は経営の多角化を推進している時代でした。  95年辺りから大幅に当社を取り巻く環境は変わり、ガス事業法の改正により段階的に 自由化が進められてきました。これにより、94年からの「リストラ2010」、2000年からの 「中期経営計画」、2003年からの「フロンティア2007」といった中計経営計画にも自由化 に対する経営方針が打ち出されてきました。経営計画と連動し、2000年からの中期経営 計画では、「業績評価に基づく活力あふれる組織の実現」と、具体的に経営計画の1つと して謳われるように、人事制度に対しても自由化による制度の変換が迫られたといえま す。  では、次に弊社の人事処遇制度の変遷についてお話いたします。まず、「90年代の人事 処遇制度」ですが、こちらは91年4月から展開しております人事処遇制度を中心にご紹 介申し上げます。弊社では、職能資格制度を採用しておりますが、それまで携わってい る仕事により事務系、技術系、技士系という3つに分けていた職能系統を90年代に廃止 し、一本化いたしました。また同時に、より一層の能力主義の実現および柔軟な昇格管 理を可能とするため、職能等級数を21等級から15等級に削減し、簡素化いたしました。 さらに、業績を処遇に反映していくという考えから、社員の最高クラスに位置する幹部 職1級に対し、年俸制を導入しました。  続いて2002年に導入いたしました、「新たな人事処遇制度」についてご説明申し上げま す。先ほどの経営計画の変遷でお話したように、自由化が進み、競争が激化していくこ とを受け、「新たな人事処遇制度」では「業績主義の徹底」「時代変化に対応できる人材 マネジメント」を柱といたしました。業績主義はその前から打ち出していましたが、今 まで以上に色濃く打ち出しました。具体的には、管理職以上に対して、賞与成績(業績) に応じ処遇が決定する範囲給(業績給)を、幹部職2級に対しては年俸制を導入いたし ました。さらに、処遇における業績の割合を強めるために、属人給の割合の縮小や、全 社員を対象に会社業績連動一時金を、幹部職以上を対象に部門業績連動一時金の制度を 導入しました。  そしてその後、「新たな人事処遇制度」を強化・拡充するために、2005年に「新たな処 遇体系」に移行いたしました。これは想定以上に自由化、規制緩和が進展したため、さ らなる業績主義の徹底が必要になったためです。ここでは、賞与成績(業績)により賃 金を決定する月俸制を担当職1級以上に導入し、さらに属人給は廃止もしくは縮小をい たしました。この制度は現在も続いており、制度の詳細については、次の人事処遇制度 にてお話申し上げたいと思います。   ○人事処遇制度について  弊社は職能資格制度に業績主義の要素をプラスした制度となっております。等級は、 現在は課題構築力、協働の能力、課題遂行力の3つの能力に応じ、9等級に区分してい ます。  職能資格ごとに処遇体系は若干異なっており、幹部職の1級、2級に対しては年俸制 を、主幹職から担当職1級までは月俸制を、それ以下の等級に対しては職能給をベース に属人給(家族手当、本人給)を設定しています。よって、高資格になるほど業績が反 映される仕組みになっています。  主幹職から担当職1級に対して支給している月俸は、1年に一度、業績(賞与成績) により決定します。月俸は単年度の業績で決まるのではなく、直近7年間分(担当職の 場合は10年間分)を見ています。月俸が決まる仕組みをもう少し詳しくお話しますと、 賞与成績はSからGまでの8ランクになっていますが、まずこちらをポイント化し、そ れを月俸の持ち点とします。この持ち点を7年間分(または10年間分)累積し、この累計 ポイントにより月俸が決まります。また、8年目になると一番古い年度のポイントが消 え、8年目のポイントに洗い替えされる(置き換えられる)というようになっています。  続いて賞与の仕組みについてですが、賞与は賞与Aと賞与Bというものから成ってお り、賞与Aは1年ごとの賞与成績に基づき決定し、賞与Bは月例賃金に比例して支給さ れるもので、比較的固定で決まって支給されるものです。  次に、幹部職の年俸制についてご紹介させていただきます。幹部職1級は完全な年俸 制で、前年単年度の業績により翌年の年俸が決まる体系になっています。一方、幹部職 2級は、同じ年俸制でも賞与に対応した年俸と月例賃金に対応している年俸の2つから 構成されています。さらに月例賃金に対応分は、5年間分の業績を基に決まり、幹部職 1級よりは緩やかに年俸に反映されるようになっています。  業績連動一時金は、月例賃金、賞与とは別の原資で運用しており、「会社業績連動一時 金」と「部門業績連動一時金」の2種類あります。会社業績連動一時金は、全社員に対 して会社の営業利益目標の達成度合いに応じて支給しています。また、部門業績連動一 時金は、幹部職のみに支給しており、所属している部門の業績に応じて支給をしていま す。  最後に退職手当についてですが、弊社では確定拠出年金、確定給付企業年金、退職一 時金の3本立てで構成しております。この退職一時金に関しましても、それぞれの業績 がより反映されるように、02年から退職時の基礎給を基に計算するように変更していま す。   ○人事考課制度について  弊社では、人事考課制度の目的に、「育成」、「異動配置」、「賞与・昇格査定」の3つを 掲げています。そのベースになるものは、本人と上長の日頃のコミュニケーションであ り、面接、自己申告を通じ、上長から評価のフィードバックを行う機会を設けた上で、 最終的な人事考課を行っています。  では、具体的にどのように行っているかをご説明させていただきます。まず、異動配 置に関しましては、年に一度、キャリア面接というものを行っています。キャリア面接 では、本人の異動希望、仕事の適性等を申告する、「キャリアシート」という用紙を設け ており、それを基に今後のキャリア開発、異動計画について上長と話し合いを行ってい ます。これに対し、上長も部下の育成計画、異動配置等を記載することができるように なっています。  続いて、チャレンジシート面接、業績考課に関してです。チャレンジシート面接では、 「チャレンジシート」を基に、年度初めには、今年度どのようなことを目標に業務を進 めていくのか、自分の能力をどこまで高めていくのか等を上長と面接をしながら決定、 上期末と年度末には、上長との面接時に進捗を確認、業績・能力の伸長を促しています。 弊社の業績考課は、まずチャレンジシートを基に個々人の業績を絶対評価で行った上で、 その後、部門内で相対評価を行い、賞与成績(業績)を決定する仕組みとなっています。  また、弊社は職能資格制度をとっておりますので、個々人の能力を判定するために、 能力育成考課を年に一度行っています。能力の判断基準は先ほど申し上げた、課題遂行 力、課題構築力、協働の能力ですが、これを等級ごとに設定した基準に応じ能力の判定 を行っています。そして、結果を部下にフィードバックすることにより、部下育成にも つなげています。  昇格は職能資格の期待要件を満たした者、上位の職能資格の期待要件に応えられるか どうかの判定を、業績考課をベースにその他に公平性を担保するためにヒューマンアセ スメントや、多面評価や行動診断を利用することにより最終的に決定しています。また、 主幹職2級以上の管理職以上のクラスには、一度上がった職能の資格を降格するという 降格制度、再評価制度を取り入れています。(実際に該当する方はほとんどいらっしゃい ません。)  また、弊社では360度評価を導入していますが、弊社の360度評価は上位者から下位者 を評価する「多面評価」と、同位者と下位者から上位者を評価する「行動診断」の2本 立てになっております。 ○人材育成制度について  弊社の人材育成制度は、職場の上長による仕事を通じた指導育成ということでOJT をベースとしていますが、その他に補完するために教育・研修(Off−JT)と自己 啓発を組み合わせて行っています。  弊社では複線型人事制度をとっており、担当職から主幹職までには、「専門コース制度」、 幹部職に対しては、「スペシャリストとビジネスリーダー」というコースを設けています。 専門コース制度とは、仕事の分野別にコースを9つに分け、採用から配置、異動、教育 等を行っているものです。  また、適性な配置を行うため、大きな人事異動を1年に一度定期的に行っています。 先ほど申し上げたキャリア面接により、上長と1年に一度、本人の異動希望を話し合い ます。これに基づき上長は異動計画を立て異動配置を行います。定期異動の他に、社員 が自発的に異動できる機会を設けるため、「人材公募制度」と、「FA制度」を設けてい ます。  弊社の教育・研修体系の特徴としては、最近は業績主義、業績考課に力を入れている 関係でマネジメント研修の拡充を図っているがあげられます。マネジメント研修では、 部下を持っている方に対して、定期的にマネジメント力をブラッシュアップする機会を 設けています。 ○課題認識について  最後に、弊社が抱えている課題について、簡単に触れさせていただいきたいと思いま す。現時点では、制度自体に関しましては大きな問題は発生していないと認識しており、 当面は処遇制度を始めとした制度の大幅な改定は行わず、運用面での改善等制度のマイ ナーチェンジを図っていきたいと考えています。  大きな課題はないと申しましても、小さな課題としては三点ほど認識しています。  一点目は、人事考課に対する納得感の向上です。業績主義をとるようになってから、 当然のことながら、業績により賃金が決定されるため、自分の業績に対する社員の関心 が高まるとともに、社員は人事考課に対する納得感、公平性を求めるようになってきて おります。一昨年前、全社員を対象に社員意識調査を行ったところ、人事考課の公平性、 透明性、人事考課者のレベルアップを望む声が非常に多く挙げられておりました。人事 部ではこの点を問題意識しており、人事考課に対する納得感を上げていくために、運用 面で改善を図っていきたいと考えております。人事処遇制度がどんなに良くても、人事 考課で納得感が得られなければモチベーションダウンに繋がりますので、人事考課の改 善を図ることが非常に重要だと認識しています。  二点目は組織貢献や部下・後輩育成の意識低下です。こちらは業績主義を導入するよ うになってから、これだけが全ての原因ではないと思っておりますが、個人の業務目標 を達成することに関心が集まりやすくなり、幅広い組織貢献や部下・後輩育成に対する 意識が少し薄れてきたように感じています。どこの組織や担当にも当てはまらないよう な業務が発生したときに、誰もやらないという状態になってしまわないように、人事考 課において組織貢献や部下・後輩育成の位置づけを強化していきながら意識づけを 行っていきたいと考えています。  三点目としては、30代半ばの中堅社員を中心に、業務遂行能力、マネジメント能力が 低下しつつあることです。この原因は主に二点あると考えております。一つは、ここ10年 で人員のスリム化や専門コース制度の導入等を進めてきましたが、この結果、ローテー ションが滞り、1つの業務を長く行うようになったため、多様な業務経験が乏しく、専 門性の狭い社員が増え、全体最適の判断力等の業務遂行能力の低下に繋がったと思わ れます。また、もう一つの理由として、業務遂行体制の変更があると考えております。 これは人員のスリム化に伴い、現場と呼んでいる、いわゆるお客様と接する業務に関し、 アウトソーシングを進めることにより、若いうちに責任ある立場で業務経験をさせる機 会が減りました。このことから、意思決定力や新たな状況への適応力が欠けてきている と感じています。このような点を改善し、自らが考え、人を巻き込んで行動できる人材 を育成していきたいと考えています。  短期的な課題は以上の三点ですが、今後ますます事業競争は激化し、それに応じて業 務や業務遂行体制も変化していくということが考えられます。また、弊社だけではあり ませんが、少子化、高齢化、高学歴化が更に進むことも考えられるため、取り巻く環境 をみながら、現在は職能体系で一本化しております職能資格制度も、職群ごと、職務ご とに変えるというように、柔軟に人事制度に対応していかなければと思っています。 ○意見交換 Q 賃金制度とは関係ありませんけれども、人員構成で50歳以上が41%と極めて高齢化 した構造ということでしたが、何か特別の事情があったのでしょうか。また、この人 員構成が賃金制度に与えた影響について、その関連を教えていただけますでしょうか。 A 人員構成が偏っている最大の理由は、全世帯を訪問する熱量変更作業のため、昭和 46、47年位に、私どもでは技士系と呼んでおりました現場の高卒、いわゆる現業系 を大量に採っているためになります。そこから学卒もそれなりに増やしていますが、 技士系の方が圧倒的に多いです。その大きな山がこの50歳のところにございます。  また、30代から40代も25%、26%と多くなっていますが、先ほどの経営計画でいい ますと事業を多角化するということで、90年代の前半から半ば位までに大量に採用し た人たちの大きな団子があり、弊社もバブルの時代に社員を採り過ぎた問題と似たよ うな現象になっています。  制度の運用ということでは、総額人件費を常に圧縮し続けなければならないという 命題を持っていますので、人事制度の表向きではきれいに謳っていますが、大きな団 子の人たちがある資格を超えようとするときには、人件費の急激な増加を防ぐため、 あるいはモチベーションダウンを防ぐために資格を少し刻んでスピードを変えてみる ようなことをしております。  やはり、大きな山が通過するときには、昇格のボトルネックというような処遇上の 問題が起きますので、職能資格で大きな段階を経て大量に昇格しますと人件費が高騰 してしまいますので、スピードを少しコントロールするという本音も混ぜ合わせなが ら処遇制度を変えてきていると思います。 Q 職能系統を廃止したのは、人員構成の問題と関係あるのでしょうか。 A そうですね、関係もございます。先ほど申し上げました、大量に採用した高卒の現 業系が現場で行っていた業務をアウトソーシングし、外出ししたため、高卒の現業系 の人たちを営業に転用しました。これにより、大卒の営業マンと高卒の現業上がりの 営業マンが一緒に仕事をしたときに職群の差による問題が生じ始めていたことと、当 社は本社、工場のようにホワイトカラー、ブルーカラーというはっきりした区分に なっていないため、社員を一本化すべきという声が強くあったことから、職能系統の 廃止、一本化に繋がりました。 Q 相対的に高卒、大卒による給与格差が大きくならなくなったわけですね。 A そうですね。表向きには出さないですけれども、運用では級という名前の下に、技 士系の昇格スピードは、やはり大卒のスピードより遅くなります。 Q 現業の方との給与格差をあまりなくしてしまいますと、技術者といいますか研究職 の人たちのインセンティブは大丈夫なのでしょうか。 A 以前の格差よりは圧縮されましたが、給与格差は正直あります。技術系の研究職の 人と現業の人では資格的にも処遇の差はありますが、例えば、以前は現場の現業の人 が幹部職になることはありませんでしたが、今では現業の方でも幹部職になる方が出 ましたので、そのような意味では労働組合が中心にやってきた職能系統の一本化は、 働く側から見れば成功した施策と思います。しかし人件費的には相当な向上になりま したので、会社側から見ますと本当に良かったのかという部分も正直あります。 Q 現場の仕事をアウトソーシングされたときに、子会社をつくって現業と分けたわけ ではなく、現業の方はそのまま内部に取り入れたということですが、採用した当時に 想定した仕事はアウトソーソングされましたので、OJTなどで別の業務に転用され た方についての処遇ということでは、ポストはどのような形でつくられたのでしょう か。 A ポストという意味では、出向がメインで、別会社へ出向させて配置しております。 配転もいたしました。 Q 成績を考えたときに、先ほど部門ということがございましたが、部門というのは何 部門位に分かれているのでしょうか。 A 部門ということでは、営業部門、工場の生産部門、パイプラインを持つ導管部門、 人事部も1つの部門ですが、経理部、資材部という小さいものも、いわゆる本社ス タッフの場合は部、現場を抱えるところでは本部と呼んでおります。その本部は9つ、 部を合わせると約40位あります。また、工場については工場単位ではなく、工場を管 理する本社スタッフを含めて1つの生産部門、エネルギー生産本部という部門を形成 しています。 Q 工場の場合には、正社員以外の、請負とか派遣、パート、期間雇用という非正規労 働者の方は何割位いらっしゃいますか。 A 工場の中には、いろいろな種類の方が働いています。例えば、事務所の中にも派遣 の方もいれば契約社員、嘱託社員、そして関係会社の方もいらっしゃいますので、正 社員と同じ位の規模か、場合によっては多い位かもしれません。一工場での操業社員 数を減らしてきていますので、大工場でも40〜50人位の交代勤務で回しており、1対 1以上になるかもしれません。 Q 一時的に高卒の方を相当多く採られたようですけれども、現在の採用状況を教え ていただけますでしょうか。 A 当社は、大卒と高専と高卒、系統とすると文系、理系、いわゆる現場のフィールド 系を採用しています。理系、文系の中にも営業志向する人、スタッフを志望する人が おります。  ちなみに、去年の4月に入社したのが113名ですが、その約半分がいわゆる現業に配 置するフィールド系です。残りの約60名が文系と理系、高専になります。文系が約20名 で、残りが理系になります。理系は大卒の理系、院卒の理系、高専卒の理系です。  今は世の中が採用減の方向ですけれども、弊社は少し絞り過ぎた反動が来ています ので、今年の4月には少し採用を増やし、採用数は約200人になります。特に高卒の現 場へ投入する人を50名から倍増させます。また、高卒の現業への投入がこれからの課 題でございまして、いわゆる高卒がもう採れなくなってきています。全国的な採用活 動をして何とか100名を採用するというのが現状なのですが、いずれ高卒採用が行き詰 まるとしたときに大卒の現業を採用しますと、大卒のスタッフで入った人と大卒で現 業の人の処遇についての話が出るため、高卒、大卒という分け方ではなく、現場の仕 事をする系統と営業をする系統、スタッフの系統など、どのように区分していくかが、 当社の一番の課題と思っています。 Q 経営方針で多角化というのがありましたけれども、具体的にどういう方向を目指し ていたのでしょうか。 A かつては何でもやろうということで広げたときもありましたが、ほとんど撤退して きています。今の多角化の方向としましては、周辺事業で多角化、重点集中するとい う方向へ絞っています。 Q 一般的に、評価制度をつくりましても、実際の運用の部分ではあまり差をつけてい ない企業が多いと思いますが、例えば、評価を明確に点数化した場合に、10年間では 結構差がつく可能性もあると思いますので、最も高い評価を受けた人と中間位置の人 を比べますとどのくらいの違いがでるのでしょうか。 A 同じ資格における号俸で満点をとった人は、号俸のレンジの幅がある中で最高を とりますが、平均値との差ということでは、資格によるということはありますので、 例えば、指導職ですと10万強になります。いい成績を10年間とり続けた人とでは、 格差はもっと広がると思います。  考え方によれば、ローリング制は非常に厳しい制度で、悪い成績の人が頑張れば号 俸が上がりますが、頑張っていて停滞ぎみの人は資格の昇格がなければどんどん落ち ますので、成績を維持したとしても給料は増えない、定期昇給の横定昇を廃止する制 度になります。 Q 担当職2級までは本人給、職能給、家族手当だけで、そこから月俸制ということで すが、旧体系の本人給の支給額は決まっていて、それに昇格と業績評価を積み上げて いくというものだったのでしょうか。 A 本人給というのは年齢給のことで、年齢によって決まってきます。 Q 昇格をどのように絞り込むかという昇格基準が問題になってくると思いますが、現 在の運用での第1選抜と最後との差は、大卒でどの位になりますでしょうか。 A 第1選抜が課長になったとき、同資格者が指導職にいる場合もあります。概ね、幹 部職に第1選抜が就いたときに、第2選抜以降がまだ主幹職クラス、つまりだれかが 課長になったときに、副課長か係長、その下の主任がいるということも、これからバ ブルの大量入社がそのような状況を迎えますので、昇格についてのモチベーションは 大きな問題です。 Q 昇格の納得性をどのように高めていくかということで、人事面接をして目標を決め るということでしたが、効果はありますでしょうか。 A 実際には、かなり難しい面を多く抱えていると思っております。例えば、先ほどご 紹介いたしましたチャレンジシートは、100点満点で点数がつく絶対評価ですので、目 標に達していれば100点がつくわけですが、最終的に相対評価になったときに、いくら 100点をとっていても賞与成績でいい成績がつかないということもあるわけです。同じ 目標を掲げていない他の人と、どう上なのか下なのかということを上長もなかなか説 明しづらく、さらに違う上長が持っている部下と比べられることもありますので、そ こで比較するというのは非常に難しいところではあるかと思います。  そのため、極力目標の設定の段階からレベル合わせをすることにより納得感高めて いこうとしています。その他に、実際に担務していただく仕事の中でやりがいを持って 働いていただいて、業績考課や昇格だけに目がいくのではなく、仕事で充実感を感じ ていただくようにしたいと考えています。  職能資格制度は能力基準自体が抽象的な言葉で書いていますので、どうしても納得 感を得にくい部分がつきまといます。昇格でも各部所の推薦だけではなく、職能資格 ランクに照らして多面評価とか行動診断を併用して納得感をできるだけ出すようにし ていますが、いろいろなものを入れれば入れるほどファジーになってきて、結論はな いですが、いかに上長と部下との時間をとらせるかということは大事だと思います。 また、私どもは、コミュニケーションナビと言って、全社員に上長に面接してもらった かというイントラネットアンケートを行っています。「面接してもらった」という答え は90何%も返ってきますけれども、「人事考課に対する説明が行き届き納得感がある か」と聞きますと、意識調査ではぐっと落ちますので、それを徹底し続けていくしか ありません。本当は形式的なものでなく、上長の意識があれば年に1回の面接でなく ても、日頃から仕事を見てくれていれば一番いいと思います。「いろいろあったけれど も自分のことをよく見てくれている、だから仕方がない」というように、相対評価の 最後はそれで納得してもらうようなところもございますので、部下の納得感は、その 時間をいかにとらせるかというところに尽きると思います。 Q 職能給では必ずしも職務とリンクしていないと思いますが、例えば、同じ幹部職1級 という資格の方でもラインの部長の方もいるし、スタッフの部長の方もいるし、部長 の職を持っていながら課長の仕事もしているということが場合によってはあると思う のですが、その場合に職務と賃金とのリンクはないのでしょうか。 A 特にポスト給を設けるということは行ってはおりません。ただ、実際にどのような 成績がついているかを見ていきますと、より高いポストにつかれている方に対しては、 年俸の査定のところで上の成績がついて、そこで差が出ているとように認識しており ます。  実態は同じになりますが、はっきりとポストにつけばいくらと明示した方がいいの か、それとも幹部職1級で何となく査定で差がついた方がいいのかは、難しいところ ではありますけれども、実質的には同じような見方をしています。例えば、幹部職1級 の査定で、部長級の幹部職1級に担当役員がつけてくるのは大体Cで、その下のマネー ジャーの幹部職1級には大体Dがつくというような査定をしてきています。 Q 公務員の賃金体系は、年功的に運用されているということはありますけれども、職 務が決まって、その中で号俸が決まっているような、ある意味では職務給に近いもの ですが、いわゆる職務給について、全面職務給にすれば賃金コストが上がらない、昇 格しなければ賃金は変わらないことについてはどのようにお考えでしょうか。 A 職務、すなわち仕事によって価値を決めていくわけですが、弊社は概して差をつけ ることを嫌う会社で、この仕事の方が高い処遇とか、そうでない仕事ということが難 しいです。また、今は人材育成の側面から、幅広くいろいろな業務について経験もし てもらいたいと考えていますので、職務が変わる、すなわちローテーションをするこ とによって給料が変わりますと、ローテーションの弊害にもなってくると考えており、 そのような職務制度は今のところ検討しておりません。  職務給は日本の賃金体系では少し難しいという認識があるようで、役割等級制のよ うな方向へ今流れつつあると思います。職能資格制度と役割等級制は、運用しますと 結果的に似たものになるような感じはあります。  職能資格制度は、その資格に上がってしまうと、降格させない限り給料は同じにな りますので、下から見て納得感がないことがネックになります。役割給ならば、ポス トを外したときに級を落とせますし、役割から外れたら給料が下がって当たり前とい うことが明確に本人も周りも認識できますが、実際の運用ではドラスティックに落と しているところはないようです。 Q 職務給を入れられた会社は、コンサルタントにより職務給を入れたというケースが 多いと思うのですが、この職務はこれだけの高さで、これだけの職務の低さというの は、会社の内在的なもので職務給をつくるというのは難しいのではないでしょうか。 A これは何ポイントかということを決めて、何ポイントならこういう賃金というよう に、ある程度テーブルがある社会ならあるのかもしれませんが、日本では難しい気が します。職務給にしたいというのは、無条件で上がっていくという運用をしたくない ということと思いますので、ある程度係長と課長には等級の差があり、係長は絶対課 長に追いつかないという賃金テーブルをつくればそうなりますけれども、日本の賃金 テーブルは重ならないようには必ずしもなっていません。  以前、他の会社で、職能給でも部長級の職務と課長級の職務の差が開いている、昇 格しないと絶対に上がらない運用といいますか、賃金体系にしていると聞いたことも ありますので、そういう意味では名前が違うだけのような気もします。やはり若くし てすぐ稼げるような仕事とか、中途でも即戦力として働くようなところは、当然職務 給ですけれども、弊社の現業の仕事というのは徒弟制度というと古いですけれども、 経験の積み重ねによって習熟するものですから、どうしてもそこは消せないです。 Q 2002年度からの賃金制度の大きな改正により、従来型の職能給に業績給を加味する 賃金制度になったということですが、その賃金制度の変更では、どのようなことを目 標、目的にしてつくり上げられたのかお聞きしたい。 A 2002年に改定したきっかけになったのは、2000年からの中期経営計画を実現させた いと掲げた目標を何とか実現させるために、人材の育成、モチベーションを上げてい くための人事処遇制度を展開していったため、1〜2年の準備期間がありました。  90年代に入り規制緩和が進み、2000年からは大競争時代の展開が見えていましたの で、そこに打ち克つための人材、そして経営の効率化を図るために業績主義を入れて いった背景があったと思います。そこで職能資格制度をベースにしながら業績主義を 加味していったところです。  ただ、全社員に対してこちらの業績主義を入れていくとかなり生活にも影響が大き いのではないかということを鑑み、主幹職2級以上に対し、業績が反映されるような 処遇に変更いたしました。これに伴い、月例賃金・賞与だけでなく、会社業績連動一 時金、部門業績連動一時金も導入いたしました。 Q 労働者側から見れば、仕事が多様化、高度化している中で、一人ひとりの成果を細 かく見てあげないとモチベーションアップできない状況が生まれてきたのか、あるい は会社側から見て、競争激化の中で総額コスト管理の問題意識が出てきたので、その 戦略的な配分という目的がでてきたことについて、賃金制度の変更は関係していたの でしょうか。 A バブルが崩壊した後は世の中もかなり業績主義がかなり徹底し始められた時代です が、私どもは、そのまま成果主義を取り入れることではありませんでしたが、世の中 がそのように向かっている中で、競合が厳しくなって自由化が進展するときに原価を どう下げるかということで、人件費は固定費ですから圧縮することが命題ということ が色濃く打ち出されていました。そのため、同じ原資を投入するのであれば、より効 果的に配分しなければならないということで、今まで以上に業績を上げた人に配分を するということでした。  また、その後の05年に月俸制を入れたのは定昇をなくすわけですから、かなりここ がきっかけをつくっていて、業績主義の徹底という言葉がはっきりと打ち出されたの が02年という意味では、会社としての背景があったのではないかと思います。  ただ、世の中でいう成果主義とその失敗と言われているような、数字だけで全ての 業績をとらえるものには変えていなくて、職能資格制度の中での運用の強化、配分の 明確化ということの範疇でありましたけれども、大量にいる人間が徐々に高資格化し ていますから、号俸の更改が行われて人件費が上がっていくことをどこかで抑えなけ ればならない意識が強く働き始めていることが、05年の月俸制の導入にもなりますし、 この辺の配分も見直し、年齢給と家族手当を切っていくような世の中と同じ動きをし ました。そのような意味では目新しいことはしていなくて、後追いをしているような 感じではあります。 Q 人件費にブレーキをかけたことで、現実の賃金構造がどのようになったのかを考え たいのですが、大枠で40代以上の高齢層の賃金カーブが寝てくるのか、同じ年齢層の 中で一部の人にだけ格差がつくようになったのか、賃金構造はどのようになったので しょうか。 A ある意味、両方なのかと思います。20代はいじっていないので、30代の後半位から です。平均値はあまり変わっていませんし、カーブ自体の形を大きく変えるほどでは ないと思います。人によりカーブが変わるバリエーションが増え、ラッパが広がった ということです。 Q 業績主義が入って分散を生み出したのは、月俸制のところと賞与のところとします と、賞与はまさに業績かと思うのですが、月俸制は職能給をベースにして、職能給の 中で昇給に業績を入れているような、能力主義の徹底のようにも見えるのですが、そ こは月俸制における業績給的色彩と賞与における業績給的なものとの違いはあるので しょうか。 A 能力となりますと、能力が下がることはあまりあり得ないといいますか、能力が伸 びなければ同じ賃金にとどまることはあると思いますが、業績の方が上がったり下 がったりするような変動が激しい形です。業績の概念は、月俸制を反映することに なったのも、基本的には賞与と同じで、職能資格の昇格の機会が少ない中で、同じ資 格の中でも頑張った分は少しでも号俸が高くなる。頑張らないと悪いけれども、号俸 は維持ないしは下がることで減り張りをつけて、同じ資格の中でも頑張らせるという 意味では、賞与における業績査定も賃金における業績査定も同じ目的を持っていると 思います。 Q 賞与は短期業績で、月俸の方は累積している感じでしょうか。そうしますと、長期 業績と能力は似ている気がするのですが。 A このローリング方式では、あまり長期業績を意識は考えてはいないと思います。繰 り返しになりますが、本当の衣の下の鎧はやはり横定昇で、それまで1年で1号俸、 自動更改していたのを止める理屈づけで、長い期間業績が高い人は上の職能資格へ昇 格していきますので、そのような意味では職能資格制度の中の話ではあります。 Q 業績という場合に、具体的に業績を評価するポイントといいますか、項目はどのよ うなもので業績を計量化されるのでしょうか。 A それは就く仕事により違います。当社は仕事、職務の幅が広いため、工場の操業管 理でオペレーションをしている人は、工場の安定操業、年間ミスがゼロというのが業 績になりますので、販売量のように数字化される業績だけでなく、定量から定性まで、 仕事の幅も人により違います。これは部門に任せてあり、最終的には自分の業績目標 を先ほどのチャレンジシートに何と書くかに行き着きます。 Q 目標を定めることが業績の前提になりますと、目標は組織としてある程度固めてあ り、その目標のどの部分をだれがどのように分担するかが明確になっていないと自分 の目標もなかなか出てこないと思うのですが、組織としての目標が文書化されて分担 されているのか、それとも自分で目標を探し出して設定しなければならないので しょうか。 A 大きな目標は会社から部門、そして個人に目標がブレイクダウンしていく、それを 実際に使っているところもございますし、細かい運用に携わっている者に関しては、 そこまでブレイクダウンできない目標もありますので、上長との面接の中で目標を設 定していく場合もあります。 Q 部門との関係として、部門がどれだけ利益を上げたかということでは、その部門の 目標が必ずしもつくりきれない印象なのですが、この部門はいくら利益を上げたとい うことが明確になるような形で部門が構成されているのでしょうか。 A 部門業績連動一時金は幹部職のみの支給ですので、部門ごとに部門目標を決めて、 社長と部門長により達成したかしないかを査定されます。それが部門ごとにきれいな 連鎖ができているかといいますと、営業のように販売量であれば積み上げが明確なの ですが、ほとんどの仕事は積み上げの問題ではありません。 Q 中途退職者はあまりいらっしゃらないのでしょうか。 A おかげさまで定着率は非常にいい会社です。均等法以降、育児休業、育児勤務制度 も充実させてきたおかげで、女性社員も結婚、妊娠して休職しても、復職しておりま すので、退職者数はかなり少ないです。 Q 人員構成の山を超えた後は景色が変わるのでしょうか。40代位の上の方は、今まで とは全く違った年齢構成になりますので、また新たな業務が出てくるのでしょうか。 A それは中長期的に大きな問題になると思います。この山は確かに山で問題点もあり ますけれども、逆にその山が支えてくれているとも言えまして、その人たちが技術継 承、事業継承の問題、いわゆる団塊の少し下ですけれども、その世代がいなくなった ポスト団塊ということが来ると思います。そのとき仕事をアウトソーシングして企業 体にきちんと移管していれば、ホールディングスの会社のようになっても大丈夫なの ですが、それがうまくいくかどうかが将来的には鍵になると思います。 Q 最近の計画でビジネスモデルのコメントがありましたが、将来に向けて何かあるの でしょうか。 A ここで言うビジネスモデルは、いわゆる総括原価主義的な仕事の在り方を脱却する 意味での旗印として掲げたものです。つまり、コストを積み上げてそこに儲けを載せ て売るのではなく、お客さんとの間で先に料金が決まり、そこからコストを引いて利 益を生み出すという、世の中の企業でいえば当たり前の話ですが、そのような発想を 捨てるということです。 Q 団塊の世代が抜けていきますと総額人件費管理に余裕が出まして、企業全体ではか なり余裕ができることになるのですが、仮に余裕が出た際に、どこに配分されるのか に興味があります。例えば、人件費として全体にするのか、特定の層に厚めに配分す るのか、人件費そのものを圧縮して別の項目に持っていくのかなど、いろいろ考えら れると思いますが、印象論でかまいませんので、今後どのようになるのかお伺いした いのですが。 A 私どもでは、40%を占める50代がこれから卒業していくのですが、そこで確かに社 員としての人件費は減りますが、その人件費の行き先として、その人たちが専任・契 約社員、いわゆる嘱託として残ってくれないと、業務が回っていかない現状がありま すので、当面は再雇用などの形で人件費が使われていくと思います。  それと、もう一つは採用増です。世の中のこのような状況はありますが、弊社は採 用を年間70人まで減らしていたため、去年の4月に113名、今年の4月に200名、そし て今月末に発表する次の経営計画では250名に増やそうという計画を打ち出して、そこ の人件費に振り替えるところもあります。やはり少し減らし過ぎたことと、抜ける衝 撃が大きいことがあります。 Q 採用は新卒が中心なのでしょうか。 A 業界として中途採用は難しいです。仮に、私どもが現業的な現場の仕事をする高卒 の方たちが抜ける穴を中途採用で募集すると、その仕事をアウトソーシングしたロー コストの周辺にいる企業群が手を挙げますので、中途採用をかけにくいという実情は ございます。 Q 業績連動一時金はボーナスに近いものと思うのですが、それ以外の給与に占める割 合はどのくらいあるのでしょうか。 A こちらは一般の業績賞与とは異なり、一時金という扱いで設定しており、原資自体 もそれぞれの社員から捻出して設定しているという背景がありますので、金額は10% にも満たない数%のわずかです。  世の中でいいますボーナスとしての一時金は、当社でいいますと賞与の方で、賞与 の中での一時金は業績が良ければ出して、悪ければ削るということですが、当社は、 良いときも伸ばさせない悪いときも落とさないという、安定的な賃金と同じような位 置づけにしておりますので、世の中でいう一時金に相当するものがあまりありません が、これは本当に意識づけのための微々たるものです。 Q このような一時金の決定は組合交渉事項になるのでしょうか。それとも予め算式を 決めていて自動的に当てはまるという感じになるのでしょうか。 A 制度をつくったときは組合と協議しましたけれども、利益が決まると係数を掛けて 自動的に支給するか、されないかが決まるものですので交渉事項ではありません。 Q 組合交渉は標準労働者のポイント賃金だと思いますが、基本的には定昇はないとい うことですのでベアはどのように交渉するのでしょうか。 A 近年、労働組合はベア要求をしてきていないです。組合からは、賃金と賞与の前年 実績の維持という要求で来ておりますし、それを維持するという回答を去年の4月は しております。ベア要求は7、8年前を最後に要求していません。そのときのベア要 求は平均賃金とポイント制併記の要求でした。 Q 昨年、エネルギー価格が急激に上がりまして、後半から急激に下がるということが ありましたが、このような場合に経営上はどのようになるのでしょうか。 A 特に上がった場面において厳しい状況です。去年の上期決算の年度見通しでは赤字 という見通しが出ました。その後、原油が下がり為替がいい方向に向かっていますの で、輸入産業としては一息つきますので、何とか株主への配当は維持できるかもしれ ない位までになり、赤字転落はもうないと思いますが極めて大きい影響です。 Q 原油価格が上がりますと消費者物価は上がってきますので、労働者としては生計費 的には厳しくなってくると思うのですが、会社で考えますと、原料が上がっても会社 の利益にはつながりませんので、そのような意識の違い、労使間のギャップが出てく る可能性があると思うのですが、実際のところはどうなのでしょうか。 A 一社員として考えればそのとおりになると思います。今年も春の取組が待っている と思いますので、そこでどう要求されるか。それに対してどう対応していくかという ことを改めて検討していくということになってくると思います。  当社のコストに占める原料費の割合が6割位になっていますので、原料費に振りま くられる収支です。一方、社員としてはガソリンが高くなり物価も上がる。仕事は人 が減ってきつくなる。でも、会社は原料費が上がったために赤字の見通しになります ので、給料を下げるという話になりますと、原料費の高騰だけで赤字転落して給与 カットをするのは、もちろん労働組合との交渉になりますし、我々としては、頑張り と業績がリンクするのが一番幸せですが、頑張っても赤字転落している会社は山ほど ありますので、世の中の企業がそうなので我慢してほしいという労使交渉にはなりま す。  ただ、昔と比べて頑張った業績と会社の最終経常利益がリンクしないケースが多い ので、納得感が難しくなっています。それから、先ほどの業績連動一時金も大した金 額ではないのですが、組合は注目していまして、原料費高騰のたびに利益が削られ、 一時金も昨年は出ていないのですが、やはり労働組合もそのようなことについての認 識は持っています。 Q 退職手当の考え方ですけれども、今の仕組みですと公的年金は65歳ですが、それ以 外の企業年金は60歳から支給されるのでしょうか。年金は人によりますので、一般的 な計算はできませんが、平均的に見たときに1人当たりに払う生涯の退職年金と一時 金との割合はどのような形なのでしょうか。 A 再雇用、再就職していれば支給時期は先送りにしますが、企業年金は60歳から支給 されます。一時金は60歳です。平均的なモデルでいいますと、1対1よりは年金の方 が多いのかと思います。人により、年金を全て一時金換算して支給する一時金選択も ございます。年金は幾つかの選択肢を持っていて、100%年金支給と、半分年金で残り は一時金に換算するとか、全部一時金でもらう選択肢を設けていますけれども、一時 金で換算しますと、ほぼイーブンかと思います。 Q 部門別の採用をまた始めるかもしれないということでしたが、現在の賃金体系の人 と、新しい賃金体系の人が併存することになった場合でも、実際の仕事自身は変わら ないことがあると思いますが、それはどのように解消できるとお考えでしょうか。 A それ自体が構想段階ですが、今の賃金を新しい処遇体系に移行させて、処遇自体は 落とすわけにいきませんので、本人の意向も確認するとは思いますが、現業系、フィー ルド系職群に配置するということで、高卒の現業系で入っても事務系スタッフでいき たいとか、営業部門でいきたい人もいるかもしれませんので、基本的には本人の選択 の中で、幾つかに分けた職群に処遇水準は落とさない形で移行させて、1回散らすと 思います。そこから先はその処遇の中で頑張っていただくという移行をすることにな ると思います。