第1回産業労働事情懇談会に係るヒアリング 議事概要 日 時 平成19年12月14日(金) 16:00〜18:00 場 所 中央合同庁舎5号館11階 社会保障担当参事官室内会議室 出席者 非鉄金属メーカー(A社)、電子部品メーカー(B社)、自動車メーカー(C社)     厚生労働省側 政策統括官(労働担当) 他 内 容 働きがいのある職場をつくるための取組 −その成果と今後の課題− ○非鉄金属メーカー(A社) ・企業の概要について  当社グループには3つの事業があります。世界70か国及び地域119社の拠点があり、 国内22社、海外97社で展開しています。従業員の数は41,000名ですが、国内18,000 名、海外23,000名という構成になっています。 ・人事理念について  2007年4月に導入した新人事制度の内容について説明をさせていただきます。  まず、当社の企業精神は「善の巡環」、経営理念は「更なるCORPORATE VALUEを 求めて」で、この2つに基づいて事業活動を行っています。  人事理念は、この2つをベースに「自律と共生」と定められています。これに基づき、 さらに人材ビジョン「風土を育てる人材」「価値を創り出す人材」を定め、どのような人 材を目指してもらうのかを明確にするとともに、企業風土をきっちり醸成できる人事制 度を目指して、制度改革を進めてきました。「善の巡環」「更なるCORPORATE VALUE を求めて」には共通して「公正」という考えが入っており、公正が全ての判断基準にな っているため、人事制度の中にもその「公正」という概念を入れるようにして、つくり 上げてきました。 ・社員満足度調査について  人事制度改革に先駆けて、2005年8月に社員満足度調査を実施いたしました。  「この会社で働くことに対し誇りを感じていますか」という設問に対して、「そう思う」 「まあそう思う」約60%、「どちらともいえない」約30%、「あまりそう思わない」「そ う思わない」約10%という結果になりました。誇りを感じている社員が60%おります が、これを70%、80%位まで増やしたいと思い、人事制度を考えてきました。  階層別には、執行役員レベルの管理職の「そう思う」「まあそう思う」の100%を始め、 高い階層ほど高い割合になっています。しかし、若い層が少し低いので、ここをケアし なければいけないだろうと思っています。また、製造職掌の「そう思う」「まあそう思う」 の割合がやや少ないので、ここも対応をしなければいけないと考えています。なお、男 女別にそれほど差はありませんでした。  次に、「日々の仕事に対する“やる気”の源泉は何ですか」という設問についてご説明 します。これは複数回答ですが、一番多いのが「給料」「賞与」です。「給料」約60%、 「賞与」約50%となっていますが、これは当然と言えば当然です。注目したいのは、「達 成感」という項目についても、約50%の方がやる気の源泉ですといってくれていること です。半分の人がそう答えてくれて、良かったと思っています。その他、20%以上の人 が選択した項目には、「お客様に喜ばれること」、「社内で認められること」、「自分の能力 が向上すること」、「自分の能力が発揮できること」、「家族、家族との生活」など、特に、 「家族、家族との生活」は約50%と高い数字になっています。このようなところにも配 慮できるように、人事制度改革を進めてきました。 ・人事制度改革について  会社の経営目標の実現、事業価値の更なる向上やブランド価値の確立のためには社員 一人ひとりが自らの意識を改革し、意識の向上を図ってもらうことが必要不可欠です。  また、一点の曇りなき信用を得ること、強固な事業基盤で数値目標を達成すると共に 顧客の信頼と満足を得ること、社会の一員としての品格ある行動と社会による認知を受 けること、社員一人ひとりが成功に向けて活き活き働く姿、が組み合わさって実現でき るものだと考えています。それを支援するために人事制度の改革が必要と考えました。  人事制度改革の目指すところは、年齢・性別・学歴等にとらわれない、真に公正な人 事制度です。本当はここに民族や国籍という言葉を入れたいのですが、なかなかそこま ではいかないだろうということで、まずは、年齢・性別・学歴としました。また、先ほ どお話しました、人材ビジョン「風土を育てる人材」「価値を創り出す人材」に価値を置 く人事制度を目指しています。  人事制度改革の着眼点は、多様な価値観に対応できる制度、専門性・熟練に基づく価 値の再認識、役割と実力の整合性の確保、役割を軸とした評価・処遇の実施です。社員 一人ひとりが自分の得意な分野できっちり役割を果たせることが理想です。全ての人が 実際にできるかというと、なかなか難しいですが、できる限りそこを目指したいと考え ています。 ・制度の変遷について  弊社の人事制度の変遷ですが、1989年に能力主義の職能資格制度を導入、2000年に 成果・実力主義の人事制度を導入、そして今回の人事制度改革に至っています。  2000年の人事制度を振り返ってみたところ、考えていることは今回の人事制度改革と 全く一緒でした。ただ、それを実現するための手法が少し違っていました。2000年の制 度は、どうしても職能資格制度に引っぱられて、「実力」というものに重きを置いていた のです。  では、「実力」にかわるものとして何がいいか、それを今回検討した結果、本当に公正 で、かつ、グローバルに展開できる制度にするためには、「実力」というよりは「役割」 に着眼しなければならないのではという考えに至り、新人事制度は「役割」を軸にした 成果・実力主義としました。  また、旧制度の課題として認識していた、多様な役割に一律の制度を適用するには限 界があるということ、専門性や専任といったところが適正に評価されるようにしなけれ ばいけないこと、短期・短絡的な1年だけの成果を追求するのではなく、ある程度のス パンで評価できる制度にしていかなければいけないことなどを盛り込んで、「役割」を軸 にした成果・実力主義の人事制度を導入いたしました。 ・「役割」を軸にした人事制度について  役割を基準にした評価と処遇を行うために、役割等級を設定して、その役割等級に連 動する役割給を設定しました。本当は役割の1本でいきたいのですが、旧制度からの実 力というものがまだ残っているため、実力等級も入れて、役割等級と実力等級の2本立 てで運用をしています。3年後なのか5年後なのかわかりませんが、役割等級1本にで きればと考えています。  多様な役割を適正に評価するためには、評価の視点がその役割に適合したものでなけ ればなりません。そこで、複線型の制度として、4つの職群に区分し、職群ごとに最適 な評価の視点を設定しました。  役割の特性に応じて、管理職層をマネジメント職群と専門専任職群に、一般職層を業 務職群と担当職群に分け、それぞれの役割の特性に合った等級の仕組み、評価の仕組み、 給与の仕組みを設定しました。  管理職層では、これまでどうしてもマネジメント偏重で、ポストに就けないと処遇も よくならないと考え、専門性が高くマネジメントが不向きな人でもポストに就ける傾向 がありました。そして、結果としてマネジメントができていないということが起こって いました。会社として、専門分野でより高い力を発揮できる人は、その専門性をきっち り評価し、処遇すべきではないかということで、マネジメント職群と専門専任職群を区 分しました。  また、一般社員層を、熟練度を評価する定常業務の業務職群と、より高い付加価値を 期待する非定常業務の担当職群に区分しました。  弊社は、これまで総合職・一般職という切り分けがなく、すべて1つの評価・処遇体 系を適用していましたが、4つの職群に区分することにより、処遇のレベルを変えるこ とも可能になりました。  等級制度ですが、マネジメント職群・専門専任職群は、役割等級と実力等級の2本立 てにして、1〜9段階に分けています。業務職群・担当職群は、実力等級のみです。業務 職群は、熟練度の高まりを実感できるよう6段階にしています。担当職群は3段階です。 先ほども申し上げましたが、今は、マネジメント職群・専門専任職群では役割等級と実 力等級の2本立てですが、将来は役割等級1本にしていきたいと考えております。  評価制度ですが、2000年の成果・実力主義の人事制度では、管理職層においては、プ ロセスも見ると言ってはいましたが、どうしても数値を重視する傾向になり、成果1本 の評価になっていました。そこで、新人事制度では役割を遂行する際の行動がしっかり できていない人は登用しないという考えの下、役割行動評価を導入しました。また、前 述した企業精神や経営理念の考えを落とし込むために価値行動評価を導入しました。価 値行動基準として5項目、フェアネス(公正)、カスタマー(顧客)志向、企業目標の 共有、チャレンジ志向、チームワークを設定しています。  給与制度では、マネジメント職群と専門専任職群の基本給は、役割給と実力給の合算 額としています。役割給は、役割等級ごとにシングルレートで設定されており、異動に よって役割が変わり役割等級が変われば、役割給が変わるという仕組みになっています。 実力給はレンジ給で、実力等級ごとに上限額と下限額が定められておりそのレンジの幅 の中で評価に応じて給料が変動するしくみです。昇降格によって実力等級が変動したと きに適用されるレンジが変わります。  業務職群と担当職群は、レンジ給のみです。担当職群は評価によるメリハリのある昇 給テーブルを設定しています。業務職群は評価による昇給額に担当職群ほど差はありま せんが、熟練度が増していけば、レンジの上限を超えてでも昇給していく考え方を入れ 込んでいます。 ・今後の取り組み  当社では、2009年度から始まる新たな中期計画に向けて、2008年度までを基盤づく りの年と位置づけています。 社員の意識をしっかり変えることも基盤づくりであるとい う考えから、新人事制度は2007年度にスタートしています。  社員の意見を反映して制度の改善を推進し、社員がよくなっていると実感できること が大事だと思いますので、新制度での評価、給料改定、昇降格といったものが一回りし た段階で、改めて、社員満足度調査を実施し、調査結果を分析し改善に取り組み、制度 の完成度を高めていきたいと考えています。  また、人事制度改革と並行して、社長等が全国を回って社員に思いを伝える意識改革 キャンペーンという取り組みも進めてきましたが、社員の意識を変えていくためには、 教育の仕組みも構築をしていかなければいけないと考えています。人事制度が入ったか ら終わりではなくて、これからが正念場だと考え、引続き取り組んでいきます。 ○電子部品メーカー(B社) ・企業の概要について  当社は社是を持っており、特に「科学的管理」と「独自の製品を供給」は、社内の風 土に影響を与えてきたところと思っております。  当社の概要ですが、2007年3月における状況で、連結の売上高が約5,670億円、連 結の営業利益が約1,130億円で、国内、海外で事業所を展開しております。従業員とし ましては、国内は約20,000名、海外は約10,000名の規模となっております。売り上げ については、約5,670億円ありますが、海外での売り上げが約75%になっており、国内 での売り上げは25%。ただし、生産で見ていきますと8割近くが国内での生産というこ とで、ものづくりにおきましてはまだ国内に軸足を置いた会社です。  次にどのようなものを事業として扱っているかということですが、セラミックスとい うものをベースにした電子部品の応用開発をしております。セラミックスといいますの は、簡単に言いますと焼き物ですが、分子レベルで材料をコントロールしていきますと、 電気的な機能を持ったセラミックスというものが幾つかあります。例えばあるセラミッ クスですと、電気を蓄える性質を持ったりするものもありますので、それを使って当社 の主力商品でありますコンデンサという電子部品にしたり、あるいは圧電性によりフィ ルタやブザーといったものに応用して電子部品としているというようなものがあります。 その他にもいろいろセラミックスが持っています電気的な特性を利用して、電子部品に するというのが当社の事業となっております。世界トップシェアの商品も多く、主に携 帯電話やエレクトロニクス関係のところでよく使われる製品を扱っていると、御理解い ただければと思います。 ・社内風土改革を始めた経緯  電気業界では2000年にITバブルがはじけまして、当社の場合もITバブルの前と 後では売り上げで約3割、利益で7割ぐらいの落ち込みをしております。ITバブル後、 一担赤字になりながらもV字回復される企業がある中で、当社は赤字にはならなかった のですが、その後数年横ばいが続くというような状況がありました。そういう状況の中 で、例えば、当社のトップを中心にお客さまから当社は評価されているのだろうかとい う思いを感じるところであり、あるいは従業員の様子を見ましても、やりがいや働きが いが感じられなくて閉塞感の中で仕事をしているようなところが見てとれるなどを感じ るようになりました。これは外部の環境だけでなく、会社の内部にも問題があるのでは ないかということを当時のトップが気づきまして、2003年に当時のトップ層全員が集ま り、会社の現状をについてとりまとめました。  当社の現状として、最初にご紹介したように、社是の中で「独自の製品を供給」とう たっており、当社の社員は意識して独自性を出そうという仕事をしてきたところがあり ます。独自性というのは、そもそも他社から見て当社には独自性があると言われるべき ものなのですが、自分たちでこれは独自なものだ、良いものだ、これがわからない市場 やお客さまの方がおかしいのではないかという傲慢さがあったのではないかということ があげられました。当社の場合、収益管理をきっちりしている会社で科学的管理を実践 しているところではあるのですが、その管理がコントロールというところにウェイトが 置かれていくと社員の動機づけすることができず、また内部に目がいくことで、お客さ まから求められるスピードに対応できていないのではないかということが見えてきまし た。秘密主義というところでは、情報はとるけれども外には出さないことがあるのでは ないかということ。結果として、お客さまのことを意識しないで仕事をしている会社に なっていたのではないだろうかということ。そしてPDCAについては、プラン、ドゥ のところはきっちりやるけれども、チェック、アクションのところがないので、PDP Dで結構忙しい思いをしてもうまくいかないという実態が見えてきた。このようなこと が当時の経営トップの中の議論で出てきました。 ・目指すべき組織風土への活動  当時の議論の中で目指すべき風土ということで4つを挙げました。1つ目は、もっと お客さまのことを考えた会社にしたいということで、顧客本位の会社にしていこう、そ んな風土を持った会社にしていきたい。2つ目は、お客さまのことを考えた会社にしよ うと思えば、やはりスタッフ重視ではなくて、現場が重視される風土でないとおかしい ということで、現場を重視した組織風土にしていきたい。3つ目は、仕事が従来内部志 向であった部分もあるのですが、お客さまに応えていこうと思うと、やはりスピードが 求められているし、世の中の変化に対してもスピーディーに対応していける風土を持っ た会社にしていきたい。4つ目としては、お客さまのことを考えた会社にしていくため には、お客さまのニーズにこたえていくことが必要ですが、お客さま自身がそのニーズ がわかっていないケースがある。そうであれば、お客さまがどんなことを今求めている のかということを、社内で仮説を立てて検証していくということがなされなければいけ ない。そのため、自由に社内で議論ができないと、例えば「部長が言ったからそうしよ うか」では、お客さまですらわからないニーズを社内の中でつかんでいくということは 難しいということで、やはり自由に職場の中で議論ができて、仮説を立てて検証して、 それにチャレンジしていく、そんな風土にしていきたいということ。この4つの風土と いうものを掲げて取り組みを始めました。 ・組織風土改革の中での従業員満足度調査  風土というのはなかなか目に見えないものなので、どうやってやろうかということを 考えていました。当時、日本経営品質賞というのがありまして、いわゆる顧客起点で事 業を改善・改革していくというものですが、その日本経営品質賞で使っている経営品質 向上プログラムというものを使って、風土改革をしていこうということでスタートしま した。その経営品質向上プログラムの中には、従業員の状況を問われる部分があり、「従 業員のやりがいや働きがいはどうですか」ということを問われるカテゴリーがあります。 当時の判断としましては、当社の社員は結構満足度が高いはずだということを、それぞ れの事業所のトップ層は思っていました。「なぜそう思いますか」という問いかけに対し ては、当社の関係会社は、それぞれの地域で5本の指に入る事業所も多く、処遇の上で その地域ではトップクラスにあり、途中退職率もほぼゼロに近い状況で、有休の取得率 も高い。だから社員が満足していないはずがないという判断をしていました。「それは社 員に聞いていますか」と言われると、聞いておらず、思い込んでいたところがありまし た。では、今回風土改革の中でそういったところも調べたらどうかということで、2005 年にサーベイを実施することにしました。ただ、当初の目的は、従業員がどれだけお客 さまのことを考えて仕事をしているのかどうかを知りたい、お客さまのことを考えた会 社にしたいということがありました。結果として、従業員の満足度もわかればいいかと いうことで、2005年に1回目のサーベイを行い、2回目は今年(2007年)行っており ます。  このサーベイで何を調査したかといいますと、3つ調査しているのですが、1つ目は 組織の状態を見たいということで、職場の風通しの良し悪しと、職場が成果を上げやす い職場になっているのかどうか。2つ目は上司のリーダーシップということで、上司自 身が認識するリーダーシップの状態と、それを見た部下の上司のリーダーシップに対す る評価のギャップを見ること。3つ目が、どちらかというと従業員満足度調査と言われ るものですが、社員のやりがい、働きがいを見ていく調査を行いました。 ・従業員満足度調査の結果  調査の結果は、世の中の平均から比べても極端に低いものが多々あり、思った以上に ひどい数値となりました。出てきた結果として、組織の風通しが良くないこと、会社が 成長しているのに個人の成長が感じられないということ、目の前のことを一生懸命やっ ているのだけれども将来が見えていないということを従業員が感じていることなどがわ かりました。職位別で見ていきますと、一般職では個人は組織の中で埋没しているとい うか、できるだけ目立たない形で仕事をしている実態が浮かび上がってきていました。 ところが、管理職の結果というのは、当社は非常にいい会社であり、やりたいこともで きるし、失敗も許されるし、いろいろチャレンジできるというように見ておりました。 また、マネジメントの状況においては、上司は部下の育成も考えている、目標も提示し ている、かといってそれほどプレッシャーをかけているわけでもなく、いいマネジメン トをしていると認識しておりました。しかし部下は逆の見方をしており、全く勘違いの 状態のマネジメントが行われているというところが、調査の結果から見えてきました。 同じ組織にいながら、上司と部下の間でこれだけギャップがあるというのは、組織が階 級社会のような形になっているのではないだろうかということがが、調査の結果から見 てとれました。  この調査の結果を受けて、当時のトップの気づいた点を整理すると、もともと、お客 さまのことを考えた会社にしていくために風土改革をスタートしたのですが、新しい価 値やお客さまへの価値の提供をしていく、その従業員がこんなに疲弊していたのでは、 CS(顧客満足)どころではない。CSも大事だけれども、まず従業員、ES(従業員 のやりがい・成長)のところに手を入れなければいけないということでした。お客さま にしても、やはり仕事のプロとして輝いている会社の社員とつき合いたいはずだ。とこ ろが今の当社の社員の実態はどうなんだろうか。トップはサーベイの結果を重く受けと め、当初CSを第一に掲げていたのですが、サーベイ調査以降、ESのところに軸足を 置いた風土改革にウェイトを変えてきています。  当社の場合は、風土に影響を及ぼしているというのは、間違いなく管理職層で、マネ ジメントスタイルやマネジメントのスタンスによって職場がガラッと変わっていくとい うところがあります。社内の風土を変えていこうと思うと、やはり管理職が変わらなけ ればいけない。管理職の意識、行動を変えていかないと風土は変わらないということで、 それ以降、社内の風土改革は管理職層をターゲットにした活動をしてきております。 ・風土改革活動について  今まで具体的には、CS、ESを2つの軸としてやってきているのですが、CSのと ころでいいますと、先程お話ししたように、まず経営品質向上プログラムを使いながら、 マーケティング的な切り口から、一体自分たちのお客さまはだれで、お客さまにどんな 価値を提供している事業ととらえるのかということを、それぞれの事業体、組織で考え ていくということからスタートしております。  その結果どんな行動・変化が起こってきたかといいますと、まだ途中段階ですが、今 まで仕事を作業として捉えていたのかもしれないとか、自分の仕事がお客さまにどのよ うに繋がっていくのかということを、もう少し考えていこうとする動きが職場の中で起 こってきました。あるいは、営業と工場それぞれがお客さまのためにと言いながら、違 った行動をしていたり、時にはぶつかったりしていることもありましたが、顧客本位と いうことを考えて、もう少し上位の概念で仕事を見ていかなければいけないということ で、営業と工場が交流をして、お客さまの価値の具体化のために、自分たちはお互い何 を期待してどうするのかということを考えていこうという動きが出てきました。また、 工場のところでいいますと、どんな機能を持った商品を作っているのかよくわからない 中で日々の仕事をしている人も結構いたのですが、自分たちの商品がどんなところに使 われてどんな機能を果たしているのか、これがあることによって、お客さまのところに どんな価値が提供できているのかということを、もう少しマネジメント層からしっかり 伝えていって、仕事に対するモチベーション、誇りを上げていこうというような取り組 みが職場で起こってきております。  それから、ESの切り口からいいますと、それまで会社の中でESという言葉が余り 出てきていなかったのですが、今回のサーベイ以降、初めてESという考えが出てきま したが、このESという意味については社員の中で認識のギャップがありました。従業 員に迎合することがESと思っている人もいるので、そもそもESとはどういうことな のかということをしっかり伝えていくようにしたり、いわゆるチームビルディングとい うことで、チームをつくり、チームで何かをするためのツールを入れたりということを しております。その中で、いわゆる風土との関係でいいますと、管理職の影響力が大き いものですから、管理職の役割とは一体何なのだろうか、自分の組織をどうしていきた いと管理職は考えているのかということをしっかり考えてもらって、目的や目標の共有 化をするということをやっています。考えるだけではなく、それを社員にも伝えて、宣 言して、管理職としてできること、皆さんにやってもらいたいこと、そんなことをお互 い宣言しながらいろいろやっていこう、目的・目標を共有化しながらやっていこうとい う動きが幾つかの職場で出てきたりしております。  こういった意識や行動の変化に対するアプローチの他に、一方で仕事のプロセスその ものもかえていかなければならないところがありまして、管理職の評価制度を最初にか えて、一般職の評価制度もかえています。そもそもCS、ESを大事にすると言いなが ら、評価は違うところ、業績1本で評価していたのでは、やはりダブルスタンダードに なりますし、会社としてどういう人を評価するのかということを明確に出して、例えば CS、ESを軸にしているのであれば、CS、ESについてしっかりやった人を評価す ることで、行動もそういった方向に向けていきたいということの意図を持って、こうい った既定制度をかえてきております。  また、次のDR(設計審査)制度の見直しというのも、そもそもお客さまが安心して 使える新製品を、要求期日どおり提供していこうという目的で入れられている制度です が、内部の基準、内部の論理でやっていて、なかなかお客さまの要求に応えられないと いうところがでてきている。もう一度原点に立ち返って制度を見直していこうと、改定 を行ったりしております。マネジメントの変革では、先程言いましたように、管理職が 自らどんな役割を持って、どういったことをやっていくのかということを行動宣言して やっていくということ、もう1つは、バランス・スコアー・カードというものを入れて、 中期・長期、あるいは外部・内部、結果・プロセス、そういったところのバランスをと りながら業務にかかわっていくようにかえていくこと。それから、今までなかなか夢が 語られないということが言われている中で、長期ビジョンというものを出して、望まし い方向に向けて従業員のベクトルを合わせていくということを、意図してやってきてお ります。  最後に、当社がCS、ESをどう考えるのかということを、明確に整理して社員に伝 えています。図を見ていただくとわかりますが、これはお客さまから当社への期待を受 けることによって、従業員はやりがいや意欲を持って成長していけるだろう。従業員が 成長することによって、高い価値を創造するための業務改革だとか革新だとか、そうい ったものが進んでいく。業務革新、改革、新しい技術を開発していくということで、新 しい価値のある製品をつくって、お客さまの満足を高めていくことができる。お客さま の満足が高まることによって、また当社への期待も高まっていく。こういったCSとE Sの部分をスパイラルのように回しながら経営をしていこう、これを最上位の価値観に 置いて経営をしていこうということを、社長の方から打ち出していただいて、これをベ ースに現在風土改革に取り組んでいるというのが実態でございます。 ○自動車メーカー(C社) ・企業の概要について  当社の概要ですが、創立1933年で74年目を迎えた自動車メーカーです。グローバル な販売台数は、348万台。連結の売上高は、グローバルで104,686億円。連結営業利益 が7,769億円。従業員数ですが、単体では約3万3千人で、それ以外のグループ会社を 含めて連結ベースでは、約18万人となっております。  生産・販売拠点になりますが、グローバルの体制で11か国・地域の研究開発拠点と 16か国・地域の車両生産工場、世界160か国以上、約10,000か所のディーラーネット ワークで販売をしています。本社は東京ですが、当社が神奈川県の横浜で設立されたと いうこともあり、日本国内の生産・販売拠点のほとんどが神奈川県に集中しており、工 場が横浜や追浜にあり、開発の拠点としましては厚木地区にテクニカルセンターがあり ます。また、その他テストコースや工場が北海道や九州にありますが、ほとんど関東地 域、神奈川エリア集中に集中しています。 ・コンピテンシーを軸とした人事制度について  コンピテンシーをベースとした一般層の人事制度の紹介をさせていただきます。制度 改定を始めたのは、当社でリバイバルプランという中期計画が始まったころで、管理職 に関しては、2000年度から現行の仕組みを導入しています。  一般層の人事制度は2004年度に入れましたが、導入から4年近く経ってきて、当時 は、当社の経営状況が、少し良くなっていく時期で、成果主義的な制度を導入したので すが、やや成果主義に振り過ぎたという感覚があり、管理職も一般層についても、振り 過ぎたものを戻しているというのが現状です。当然、組合と労使交渉等を重ねながら、 制度を少しずつ修繕してきているというのが実態です。  制度の全体像ですが、コンピテンシーを軸に、キャリアコース別の役割等級制度、評 価を反映させる報酬制度、さらにキャリア開発という4つの制度を柱とした制度にして おり、それが全てコンピテンシーを軸に成り立っているという全体像になっております。  次に、コンピテンシーとは何かということですが、コンピテンシーの解釈はいろいろ ありますが、当社では「成果につながる行動特性、スキル、知識」と定義づけ、そこに スキルや知識というものを入れて、いわゆるコンピテンシーよりも広い範囲のものを包 含しているというのが、当社のコンピテンシーという考え方になります。 ・評価制度について  評価制度についてですが、評価は2つありまして、1つは業績評価です。これは年度 の業務課題目標を設定して、1年間経ったときの達成度合を評価するものです。その評 価結果は全て賞与に反映させ、賃金には反映させません。それと、もう1つはコンピテ ンシーの評価というものです。3種類のコンピテンシーの評価定義に基づいた評価をし て、その評価結果を賃金に反映させるという仕組みにしています。加えて評価の基準を 全てオープンにすることで評価のブレがなくなること、評価と人材育成・能力開発との リンクが明確になるものとなっています。  2004年以前の評価制度は、いわゆる目標管理制度で、ここでいう業績評価に近いもの で、それを賃金と賞与に反映させていました。これについては、評価のブレというか、 基準がなかったことに対する不平・不満が非常に大きかったものですから、今回このコ ンピテンシーの定義を全てつくったということで基準が明らかになり、それに基づいた 絶対評価をしていますので、従業員の評価という点では高めになっています。以前は、 評価満足度についてのサーベイでもスコアは低かったのですが、現在の仕組みを入れた ことによっての評価満足度は非常に高くなってきています。  次に具体的な話ですが、コンピテンシーというのは3つの領域からなっています。1 つは共通コンピテンシーで、これは全社全一般層従業員が同じように設定されているも のです。管理職層の貢献価値項目というものをベースに5段階に設定しています。「利 益志向」「顧客重視」「ビジョンの共有&グローバル思考」等です。次に、役割等級別の コンピテンシーで、これが世間的によく使われるコンピテンシーです。「分析力」「課題 設定力」「判断力」等24項目を設けて、その部門として必要だと思われる優先度の高い ものを選択して設定しています。最後に、専門スキルコンピテンシーですが、これは部 門や職群や職種ごとに必要とされる「成果に結びつく専門スキルの基準」を設定してい ます。例えば人事であれば労働関係法の知識であるとか、具体的な項目を設けたものと しています。  定義された各等級ごとに求められる標準レベルのイメージとしては、事務・技術員の 役割等級というのは3段階になっています。PXクラスは、入社間もないエントリーク ラスで担当職になります。PE2・PG2は、いわゆる総括クラスです。一番右側のP E1・PG1は、管理職一歩手前のクラスです。また、生産技能員のための役割等級は 5段階になっていて、PT1は係長、PT2は工長、現場の監督者層がPT1・2にな っています。役割等級別コンピテンシーは、各々の役割等級ごとに求められるレベルと いうのを設定しながら、評価に結び付けていくものとしています。  事務・技術員の中堅クラスのPE2レベルを例として具体的に説明しますと、利益志 向の求められる定義はコスト意識・プロフィット意識とありますが、ここでは「担当業 務において収益拡大やコスト削減につながる取り組みを計画し、関係者と共有しながら 実行している」というのが求められるレベルです。その中で△の目安、○の目安、◎の 目安というものを設定して評価をさせていくということになります。これが共通、役割 等級別、専門スキルコンピテンシーの中に、ディクショナリーとして並んでいるという ことになりますので、多い部門になりますと20項目になることもあります。評価者は 評価結果に対しての説明責任があるので、毎年々の面談などに対しての負荷という点で は、評価者から不満があるのですが、被評価者からはかなり歓迎されているというのが 実態です。  評価の最終的な出し方ですが、ここまでは絶対評価で精緻になっているので、ここか らは定性的になっています。まず、ステップ1では、各々のコンピテンシーに対して、 先ほどの、◎、○、△の3段階評価を行った後、ステップ2で各領域別に、「評価の目 安」ということで、A、B、C、D、Eと5段階評価をします。最後はトータルで5段 階評価というような形で、結果賃金改訂に結びつく仕組みにしています。  報酬制度ですが、今のコンピテンシーの評価というのが賃金、月次給に反映されます。 賃金の方は、基本的には月次給1本です。以前の制度では賃金項目が5つ程あり、年功 的な賃金項目で年齢給や本給積み上げ給を設定していたものを、2004年度から月次給1 本に変えています。業績評価を賞与の成績分に反映させ、賞与の構成としては、月次給 のうちの比率を持つ比例分が60%、成績分が40%程度になっています。  手当につきましては、工場のような現場の作業手当と生計費カーブに合わせるという ことで家族手当は残しています。月次給に関しては、先ほどの役割等級別に賃金のバン ドというものを持たせています。賃金改訂の考え方については、発揮した能力の高さに 応じて賃金を決定していくので、コンピテンシーのレベルが賃金水準よりも高ければ、 それにあわせて昇給させるという仕組みにしています。賃金水準とコンピテンシーレベ ルがイコールであれば、賃金は変わらない。逆に賃金水準がコンピテンシーレベルより も高いと賃金を下げるという仕組みとなります。ただし、育成段階にある若手層では、 基本的には一定の水準まで着実に昇給し、年齢による昇給のストップやダウンというこ とは発生させない形にしております。  賃金制度を改定して3年経っているのですが、幾つかの弊害が出てきています。1つ は賃金バンド制なのですが、バンドの上限の設定により、評価による頭打ちの者がでて きているため、サーベイにもデ・モチベーションしている結果がでてきています。もと もと賃金バンドというのは世間一般水準、メーカーの競争力を勘案してセットしている のですが、物価も昨今上がっておりませんので、賃金バンドを変えるということはなか なかできない状態になっています。そのため、組合との交渉により、賃金バンドの上限 を少し開放していく動きがでてきたところです。  もう1つは、賃金改訂テーブルなのですが、先ほど賃金水準がコンピテンシーレベル よりも高いと賃金を下げると説明いたしましたが、実際にやってみると、そんなにレベ ルが低くない人が下がっているという実態がありましたので、テーブル方式としてはつ くったけれども、マイナスは少しゼロにするとか、ゼロだった者は若干プラスにすると いうように、マイナスのテーブルを少し緩和した考え方にテーブルを変え始めておりま す。 ・若手層に対する人事施策について  トピックス的な内容になりますので、少し御紹介をさせていただきたいと思います。 実は、今若手層が当社の中で課題であるという認識があります。当社における近年の人 事施策というのは、2000年以降、幾つかやってきているのですが、ほとんどが管理職や 将来リーダーという者に対しての施策だったため、若年層に対する人事施策はほとんど 展開してこなかったという反省があります。特に、若年人材の雇用環境を取り巻く現状 というのが大変厳しくなってきているということで、若年人材の能力開発が促進される ような人事施策を展開していきたいと考えました。例えば上司による部下のキャリア開 発へのサポートであるとか、会社・人事による部下自身のキャリア開発へのサポート。 さらに若い優秀層を発掘して、将来リーダー層へつなげていくような、制度として入れ なければいけないのではないかという認識があります。  若年層に対して、今年の7月から8月にかけて行った、「仕事観やキャリア開発に関 するアンケート」の結果ですが、回答率が余りよくなくて50%を切っていますが、絶対 数としては6,500人位の結果です。職務満足度という点で非常に危機感があるのは、3 〜4年目でかなり低下していることです。入社して間もなくは非常に高い満足度を保っ ているのですが、急に3〜4年で落ちて、そこからまた徐々に回復をしていくというよ うな状況になっております。従業員のモチベーション、仕事の生産性という観点からす ると、満足度は高いことが望ましいのですが、入社3年目位の若手となりますと、これ からまさにバリバリやっていかなければいけない世代になってきますので、その人たち が気持ちに何かを抱えながら仕事をしているのはよくないということが認識されており ます。特に生産が非常によくないという状況になっています。会社の中のストレス度で すが、3〜5年のところが、非常に高い結果になっています。項目の中では、心理的な問 題とか仕事の満足感などが非常に高い位置にあるというのに危機感があります。新卒3 〜4年目に対する退職理由ですが、満足度が低いため退職率も高くなり、その退職の理 由をみると、将来的なキャリアが見えないがトップで、自分のやりがいや夢を実現でき ない、上司・同僚への不満などがあり、キャリア的、将来的に夢が余りない結果がでて いました。  このサーベイの結果を受けて、このような課題の背景は何かを検討して、1つ目は若 手キャリア意識の変化、2つ目は仕事そのものの変化、3つ目の外部環境の変化などが あると考えました。  また、その裏づけということで若手にインタビューを行いました。1つ目の若手社員 のキャリア意識に関しては、当社は職種別の採用をやっていることもあり、もともと仕 事への期待というのが高いため、開発に入ってきたら何かの車の設計をしたいとか、商 品企画をやりたいというように、非常に具体的なものを持ちながら入社しているようで す。そのため、やりたいことへのこだわりが非常に強く、今やりたいという意識が強い ようです。加えて、この世代については、転職への抵抗感があまりなく、3年目は1つ の仕事・キャリアの区切りとどうも考えている節があるようです。若手インタビューの 回答では、例えば、一生この会社で働くということは考えていない、状況が悪くなる前 に出ていく、会社に固執するわけではないなどがあり、3年目が区切りということでい きますと、3年で転職するというのは1つの選択肢、部を異動するのとほとんど変わら ない感覚、今3年目でこれから伸びる実感が持てない、自分の意思で異動できるオープ ンエントリー制度はよい、という回答もありました。オープンエントリー制度とは、い わゆる社内公募制のようなものがあるのですが、この制度で行く人はいいですけれども、 出ていかれた職場のデ・モチベーションという問題があります。  2つ目の、仕事そのものが変化しつつあるということは、アウトソース化により、標 準化・効率化活動を進めていることで、仕事の進め方が大分変わってきたことがありま す。例えば、給与計算を電卓でする、年末賞与の計算をする、年末調整の保険料の控除 のチェックをするなどいろいろなことを以前はやっていましたが、今はそういった仕事 は外の会社にやっていただいているので、いわゆる修業の場みたいなものがないという ところです。入社していきなり昔の総括クラスがやっていたような仕事を渡して終わっ たのでは、人材育成は図れないということがあります。  このような現状に対する方策案ですが、まだ途中ではあるのですが、現実の業務に即 した採用プロセスの実施であるとか、フレッシュマンリーダーを入れる、上司の部下育 成の意識を図らなければいけない、個人の育成計画書をつくらなければいけないとか、 基礎的スキルやキャリアデザインの研修を若手層にしっかり入れていかなければいけな いのではないかと考えています。特にフレッシュマンリーダーというような制度、メン ター制度については、いろいろな企業さんも入れているところもありますので、いろい ろとベンチマークをさせていただきながら、これから具体化をする予定です。 ・ダイバーシティについて  当社の中でダイバーシティに関する活動がかなり浸透してきていますので紹介をさせ ていただきます。ダイバーシティにはいろいろとありまして、女性活用という視点と、 もう1つはカルチャーダイバーシティということで、外国人であるとか、その他中途で 入られた方とか、いろいろな方が混在しているところもありますので、そこに焦点を当 てた施策を打ち始めたというのがこの紹介になります。  1つは女性活用ですが、女性のキャリア開発のサポートを強化して、特に部課長層へ の登用をより促進させます。こういうことを意識しないのがもちろんベストですが、当 然まだそこまでいっておりませんので、最初は少し包括をしながらやっています。浸透 を図ればこういった施策は要らなくなると思いますが、まだその前の過渡期です。今の 管理職のうちの女性比率は、日本の単体では3%です。アメリカ、ヨーロッパなどの地 域は高く、約16%弱の女性管理職がいる関係会社もあります。将来的には、比率を5% 位まで上げていくこと、女性の海外出向者数を増やしていくこと、新卒採用に占める女 性比率を高めていくことを目標にしています。また、女性に関する施策としましては、 女性社員を対象としたキャリアアドバイザーを設置していまして、社内に2人いる女性 のキャリアアドバイザーによる面談の実施を女性従業員に対して随時行っています。ま た、女性管理職のこれまでのキャリアであるとか、今どういったことをやっているかを ホームページに載せるというロールモデルの紹介や、女性従業員向けのキャリアイベン トや層別教育も行っています。これは全体のワークライフバランスということにもなり ますが、託児所の設置、在宅勤務の利用、ウェブサイトへの両立支援制度の情報掲載、 また、在宅勤務の方とか育児休職や介護休職で休まれている方でも当社のウェブ情報が 自宅のパソコンから見られるようなこともしています。主な今の制度の利用状況は、育 児休職が約80名で、男性はまだ少なくて3名しかおりません。在宅勤務が15名、うち 男性2名。託児所利用、これは厚木の地区ですが22名で、うち男性が9名。あと育児 休職の前ということで設定しています母性保護休職が3名ということで、活用が徐々に されつつあるという状況でございます。  最後にグローバル人材交流ということで、カルチャーダイバーシティという言い方で 推進しております。外国人の在籍比率は、役員層が非常に多く、関係会社からの派遣や、 海外からの派遣される者が多いのですが、全体では1.4%です。その在籍の内訳は、出 向として当社が受け入れている者が90人、中途で採用した者、新卒で採用した者、嘱 託として採用している者が在籍しています。  最後に海外との交流ですが、ホームとホストということで、これは日本と他の地域だ けではなく、他の地域間の出向も含めて約7450人が異動しています。また、関係会社 との人材交流ということで、当社から関係会社に行っている者、関係会社から当社に来 ているというような交流が約120人です。このカルチャーダイバーシティというのは、 なかなか具体的に示すのは難しいですが、外国人を受け入れた中でのベストプラクティ スの紹介であるとか、体験プログラムの作成や、人事で主催している関係会社とのアラ イアンス研修の拡充などをしています。それと、スキルとしては当然語学が必要になっ てきますので、英語に関する語学促進や、サポートのシステムとして、社内のイントラ ネットは日英併記という形にさせているというようなところを図っています。 ○意見交換 Q1  評価の仕組みについて教えていただきたいのですが、だれがどのように評価して、ど のように積み重ねて最終評価になるのかについて、もう少し具体的に教えていただきた い。 A1(A社)  1人の労働者に対して、必ず1次評価者と2次評価者を設定しています。1次評価者 は直属の上司です。2次評価者は、組織の上の人です。基本的には1次評価者がその人 を評価基準に基づいて評価します。この段階では、多少のブレが生じますので、1次評 価を2次評価者が一回まとめます。さらに、2次評価者が集まって評価のブレを抑える ための調整を行います。成果評価も行動評価も全てそのようにやっています。 A1(B社)  当社もA社と同じようなスタイルです。人によって甘辛のばらつきが大きいというこ とで、人事ではそういう評価の甘辛度合いについて是正するような制度をつくっており ます。最終考課者に対して、「このグループは他のグループと比べると結構平均値が高い です」というような、そういう程度の牽制をかけるということをやっています。 A1(C社)  当社も1次評価、2次評価については同じです。1次評価は課長です。2次評価は部 長もしくは主管というクラスがやっております。例えば課長だけの見方でありますと、 当然基準がありますけれども、その基準の物の見方がやはり課長単位でも違いますので、 人事から、評価の結果のレベリングではなくて、見方のレベリングをしなさいというこ とを言っています。動きとしてはやはり課長がまず評価をつけますといったときに、近 くの課長が3人位、同じ課長が集まってそこでレベリングをやる。それを部長に報告し て、部長は部長で今度は他のところの部長とレベリングをするというようなことをやっ て、最終的に決定しているというのがプロセスです。 Q2  満足度をアップすると生産性が上がるとよく言うのですが、本当にそうなのかという 実感を教えていただきたい。 A2(A社)  満足度が上がらないと業績は上がらないだろうという意識で、満足度を一回上げてみ ようと思っています。  面談をしていると、15分以下の面談をやっている上司の場合、部下の80%は「面談 なんか必要ない」「面談なんかやめた方がいいです」と言うのです。ところが、30分以 上の面談をする上司の場合、部下の80%は「大変いい上司です。面談も続けるべきです」 と言います。やはりコミュニケーションをきっちりとるということが、一番大事なこと なのだと思います。人事制度がきっちり運用されると、社員の満足度・やりがいにつな がるようなコミュニケーションが行えるような状況になってくるのだと思います。  給料が上がれば満足度は上がるでしょうが、それだけでは業績にはつながらない、人 事制度とコミュニケーションや教育の仕組みなどが合せ技にならないと、業績にはつな がらないだろうと認識しています。 A2(B社)  当社は利益率を20%位維持しているのですが、利益率の高い事業だからといって決し て満足度は高くはありません。完全に反比例しているようなところがあって、効率マシ ン化したような、効率を徹底してやっているところは、ある意味人に対する配慮という ところでやはり弱いというところがあって、必ずしも相関というのは言えないかなと思 っています。ただ、環境が変わってきたというところで、そういう効率のいい事業が今 後も同じビジネススタイルでやっていけるかというと、そういう事業が大体頭打ちにな りつつあるというところです。やはり今までのビジネスモデルというか、勝ちのパター ンを自分たちで組みかえていかないといけない。そういうところに限って、自己変革機 能はどちらかというと弱い。今までの成功体験に裏打ちされて、自己変革する能力がだ んだんと弱まっているところがあります。それはなぜかといいますと、働きがいとかや りがいとか活き活きやっているというようなところで、従業員自らが自分たちを変えて いくとか、もっとチャレンジしていこうというような発想が生まれにくい。やはり効率 を追い求めるとどうしても満足度というのは低下傾向にあるのかもしれません。逆に業 績がいいと、そういう部分が犠牲になっているのかと思うのですが、でもそれではずっ とやっていけないよというのは、やはり環境の警告ではないかというように思っていま す。 A2(C社)  満足度との話でいきますと当社もA社やB社と同じですが、完全に満足度と業績とい うのがリンクしているかというと、わからないところです。ただ言えるのは、やはり会 社の業績がよくなければ、全体の満足度が上がらないのでというのは、経験としてはよ くわかります。特に、この5〜6年で弊社の業績が多少上がってきましたので、そのと きの満足度というのは、何のサーベイをとってもずっと右肩上がりできていました。と ころが、昨年は業績が悪く、初めて評価としてはコミットできなかったときに、サーベ イをとったら下がりました。経営層に対する信頼が急に下がり、やはり会社の業績や環 境もそうですし、将来的な展望といいますか、当社ですと将来どういった車が出ている のかというものが見えていないと、何となく夢を追えないというようなところがあるよ うで、2006年に関しては全体がよくない雰囲気になっていました。今年になってからは、 多少業績が回復傾向であることや、新たに新車を出したことも影響したようで、サーベ イの結果が少し上がるような感じです。 Q3  例えば派遣社員とか請負とか期間工とか契約社員とか、正社員以外の人数がわかれば 教えていただきたい。 A3(A社)  3事業によって多少異なり、10%弱(250名)、17%程度(2200名)、1〜2%(20名) となっています。海外ですと中国が非常に多く、20〜30%位になります。 A3(B社)  当社は電子部品の事業の変動が大きく、今ほとんどグローバルな市場での供給になっ ております。75%が海外比率と申しました。そういう意味で、世界のマーケットの需要 変動がかなり激しいものですから、それに見合うような生産体制というのが、やはり正 社員だけでは構築しにくいというところで、従業員は国内で約2万人おりますけれども、 それに加えまして主に派遣の方ですが、時期によって異なりますが、大体4,000〜5,000 名になります。 A3(C社)  派遣、期間従業員数について、生産現場では10%の方が期間従業員の方ということに なります。自動車メーカーですので季節変動等があります。また、事務スタッフ、技術 スタッフでは、派遣社員の方がいらっしゃいまして、割合は10%位になると思います。 全体では2,000〜3,000人位が、そういうテンポラリーの方になっております。 Q4  例えば留学生を活用したとか、外国人を活用したとか、外国人労働者について教えて いただきたい。 A4(A社)  国内にいる外国人の数というと10数名だと思います。これは留学生をそのまま日本 人と同じように採用しているケースで、海外からの異動で日本に来ているという人は、 現時点ではいないと思います。外国人を含めた海外間異動の仕組みをつくっていきたい と、ポリシーづくりから取り組んでいるところです。 A4(B社)  外国人の活用につきましては、採用という面では年間1〜2名程度です。それから、 研修という面では、実は今年から各海外の拠点から11名の研修生を受け入れまして、2 〜3年程度、本社の実務を経験してもらうという制度を発足いたしました。 Q5  A社に伺います。役割給、実力給という2本立ての賃金体系だと思うのですが、この ウェイトはどれ位か。それから、実力給については大体定期昇給していって、それでそ のバンドの中で頭打ちするというイメージでいいのか教えていただきたい。 A5(A社)  役割給と実力給のウェイトですが、3〜4割が役割給、6〜7割が実力給というところ です。将来的に役割給1本にしていくつもりですが、その際にもシングルレートでいく ものと、ある程度レンジ給的な発想をするものの2本立てになると考えています。現行 の実力給が第2役割給に変わるイメージです。役割給に一本化した場合、やはり少し怖 いのは、ポジションが変わった瞬間に給料が全部変わるということです。本当にそれが できるかどうかというのは、これから少し検討していきたいと思っています。  実力給は、ある等級にずっといて、ある評価をとり続けたとすれば、その等級のその 評価に見合った金額に何年かかけて到達していく仕組みです。昇格して上の等級になら ない限り、その等級のレンジの中で収束すると考えていただければと思います。  ただし、業務職群にはレンジの上限を超えても上がっていく仕組みがあります。これ は、熟練度が増していけば上限を超えても、わずかですが昇給はできるような仕組みで す。  なお、年齢は見ない制度ですので、年齢で頭打ちになるような考え方は入れていませ ん。 Q6  B社に伺います。風土改革はある意味では人事制度も同時にかえていると思うのです が、人事制度をどのようにかえて風土改革をされたのでしょうか。 A6(B社)  風土改革とのかかわりでの人事制度ということで、いろいろと制度改革を実施してい るのですが、1つは先程申しました評価制度の見直しを行っています。目標による管理 というのを主体でやってきましたので、どちらかというとやはり業績に思いきり振られ ていたというところで、上長と個人との1対1の関係でいくと、ちぐはぐな部分が弱い 面として出てきたということで、やはり協業というところを評価していきたいというよ うなところとか、それから管理職の場合で申しますと、やはり育成、教育というところ をいかにやってきたかというところをしっかり見るというような制度に変えました。  実は、昇格試験なども入れまして、今までどちらかというと業務本位の試験内容だっ たのですが、もう少しリテラシーというか、一般常識、教養、それから行動やメンタリ ティーみたいな部分を問うようなところも増やして、面接等もしっかりやっていこうと いうような方向に変えています。あと、部門長や管理職の教育という面では、余り教育 という言葉は使いたくないのですが、重要視されていますので、この辺は徹底的にやり たいということで、昨日も部門長の3か月研修というのをスタートさせました。忙しい ときに負担が増えるということで不満の声もありましたが、なるべくeラーニングなど を使うなどして負担をかけないように、今後も部門長や課長職に対する刺激というとこ ろを意識した教育をやっていきたいと思っています。 Q7  C社に伺います。職務の難易度によってバンドを設定しているとのことでしたが、そ のバンドを設定した中での動かし方は毎年の能力評価によって決めていくことだと思う のですが、その場合、プラスマイナスをオンしていくと頭打ちになってしまうのか。ま た、頭打ちになった場合、どのような運用をされているのか教えていただきたい。 A7(C社)  賃金の改訂については、前年に対して加算もしくは減算という形をやっております。 それと役割等級がありまして、上に昇格させるか、させないかというのは、先程のコン ピテンシーだけではなく、業績評価であるとかその他の業績発表であるとか、多面評価 の結果により始めて上の等級に上がれるということにしております。バンド上限につい ては、従業員のモチベーションを勘案して、コンピテンシー評価が高い人については、 バンドを超えた昇給ができる仕組みと変えていく予定です。 Q8  A社に伺います。「実力」基準から「役割」を軸にした新制度では、中長期的な成果に つながる行動も評価するということですが、この中長期的な成果につながる行動という のはどのような軸で評価されているのでしょうか。 A8(A社)  基本的に単年度で目標管理をしていますので、1年間の内容で評価しています。とこ ろが商品開発などをする場合には、やはり5年とか3年というスパンになる人がいて、 この年はこの段階までというのがきっちり評価できないことになります。やはり本当の 目標を明確にするためには、役割というものを基準にして、この役割に期待するものは 何かということをまず明確化する必要があります。そのために役割記述書を書き、基本 的にはその記述書に書かれているものを評価するというのが、役割を軸としたという考 え方になっていきます。長期の考え方が入るような記述があれば、それがきっちりなさ れているかということを評価します。ですから、余り単年度主義に走らないような運用 をしたいという思いであるとご理解いただければと思います。 Q9  長期的な雇用システムというのがかなり高い評価を得ていた時期があったのですが、 ここ10年から20年位ですか、それがアメリカ型というのですか、アングロサクソン型 が良いという議論がありまして、各社で短期的な成果も相当評価軸にするという流れが ありましたが、前と全く同じというのではないと思うのですが、やはり評価の面でいろ いろな問題も出てきた流れがあったのでしょうか。 A9(B社)  当社は階層で評価するスパンが違ってくるというところで、上位層というか、本部長 や事業部長クラスになってくると、やはり中長期でターゲットを決めてもらって、その ワンステップ、ツーステップ目でどこまで持ってくるというところに対して評価すると いうところが強くなってきます。どちらかというと下位層になってくると、やはり単年 度の評価に重きを置かれています。研究開発や特定の職では、確かに単年度で評価しに くい部分がありまして、これはもう評価者の評価に依存しているようなところがあるの ですが、基本はやはり階層によって短期から長期というようなイメージですね。なるだ け長期スパンで考えられるのは、課長職以上の人にはそういう目線でやってもらいたい なと思っているのですが、評価としてはやはり事業部長、本部長位が中期、それから課 長で単年度のイメージとなります。 A9(C社)  当社も中長期的なところは役員層に入っていまして、同時に短期の課題も入れていま す。部課長以下は単年度の評価のみです。コンピテンシー評価は賃金に反映させて、単 年度業績は賞与に反映させています。先程も言いましたが、一般層は6割が賃金から決 まるのですが、4割が単年度業績から決まります。管理職は全部単年度業績1本でやっ ていますので、個人業績の達成度が悪いと賞与がゼロになってしまう仕組みです。 Q10  今日ご説明いただいた評価を、教育訓練機会に反映している要素はあるのでしょうか。 また、評価システムの出口として、教育訓練プログラムコースといった部分に反映され ている部分があるとすれば、どのようなものなのか教えていただきたい。 A10(A社)  評価を育成に使うというのは、評価した結果から足りない部分を明確化し、できるだ け具体的に話をしなければいけないので、なかなか難しい面があります。今回ご説明し てきたように人事制度を導入しましたが、もう一方で新たな教育プログラムを導入して、 両輪にしたいと考えています。  入社して何年目にはこのレベルまで到達してください、等級に応じてこのレベルまで 到達してくださいというものを明確にすれば、それが昇格要件にも使え、CDPも明確 化されるはずです。人事制度だけでは単なるツールで何も生まないと考えておりますの で、両輪になる教育プログラムにつなげて、CDPもきっちりできる1つの体系を合わ せ技でつくっていきたいと考え、現在進めております。 A10(B社)  バランス・スコアー・カードというものを中長期計画で導入して、こういうツールを 使って、財務の視点、顧客の視点、プロセスの視点、それから成長と育成の視点という 4つの視点で見ているわけですが、成長と育成の視点という点について、管理職層に対 してはそこでの項目で評価をしています。それから、実際の教育と、その教育で得られ た能力アップに対する評価という意味では、やはり上手に連携させたものはありません。 なかなか難しいものだと私も思っています。 A10(C社)  私どもは、先程コンピテンシーを御紹介させていただきましたが、そのコンピテンシ ーに関連する教育というのは、ひもづけてはおりますが、元は教育があったものを逆に コンピテンシーにひもづけているというのも事実です。そのコンピテンシーの中で利益 志向を上げようといったら、マーケティングのこういう研修を受けろとか、全部ひもづ くようにはなっていますので、何か自分がといったときのチャンスみたいな基準を出し てはいます。 Q11  C社に伺います。こういう評価だったら必ずこういうプログラムを提供するという実 行の部分でのシステム化には必ずしも至っていないという理解でよいのでしょうか。 A11(C社)  マストにはしておりません。例えば評価に三角がついているようであれば、上司との 面談の中でこういった教育を受けた方がいいのではないかという、仕組み上プログラム が示されるようになっていますので、御推奨教育プログラムみたいなものを上司と話を して、例えばその1年間で受けさせるというようなところまではやっています。 Q12  女性の活躍や活用の推進についてのポジティブ・アクションに関して、例えば最近内 部の要請で始められた取り組みであるとか、内部で評判がよかった取り組み、特に経営 面、業績面で寄与が高かった取り組み、あるいは残念ながら期待したほどの効果はなか ったという取り組みなど、何か特徴的な事例などがありましたら、ぜひ御紹介を賜りた いと思います。 A12(A社)  1998年にポジティブ・アクションということで、女性活性化推進委員会を地域ごとに つくり、その中で女性リーダーの育成のプログラムを実施し、育成をしてきました。全 女性社員を対象にして5年間ほど続けました。  次のステップとして2008年までの管理職登用への目標数値を設定しましたが、なか なか数値が伸びないということがありましたので、リーダーシップ研修を導入しました。 これは、リーダー候補の女性社員を対象に5か月程度の研修を行い、最後に自分の直属 の執行役員に各自の取り組みテーマについてプレゼンするという研修です。現在、3期 目まで来ていまして、女性社員のモチベーションを上げる効果が出てきています。  この研修についてもですが、何においても女性に限定する必要はないのではないかと の意見もあるのですが、海外出向やルート営業などの女性比率が上がらない中、どうし ても女性の採用率が高くならない、大学の在籍比率と同じ割合で女性を採用しましょう という基本方針はあるのですが、なかなかそこに追いつかないというのが一番つらいと ころです。 A12(B社)  女性の採用ということでいいますと、やはり母数がいないと社内にも残っていかない というところがありまして、2000年位から、大卒でいうと文系では女性が半分とか半分 を超えるようになってきています。ただ、技術系のところは絶対数がいないので、なか なか数が採れていないというのが実態だと思います。一方で、社内に入ってからどうか というと、やはり30歳を超えたあたりから減ってしまいます。女性の働き方を見てい ると、やはりまだまだ男性社会なので、男性と同じように働けるような女性でないと、 というようなところがあります。社内の仕組みも、やはり男性社会なので男性中心にな っています。男性にとって働きやすい会社というのは、女性にとって働きやすいかとい うとそうではない。けれども、女性にとって働きやすい会社というのは、多分間違いな く男性にとっても働きやすい会社になるだろうということで、女性にとって働きやすい 会社とはどうなんだろうということで、人事部のいろいろな部門の女性を集めて、いろ いろ話をしてきているところです。  当社の場合、なかなか数値目標をつくれるほどの層まで人が残っていない現状があり、 働けない原因というのも幾つか見えてきていましたので、女性が30歳を超えても働け る状況をつくろうということを考えました。  まず、トップにその気がないのに、プロジェクトで活動することは難しいので、トッ プに女性の活用についての問題について問いかけをいたしました。それについて、女性 の活用の仕方についての取組をしようとおっしゃっていただいたことで、女性活用プロ ジェクトの活動についてポジティブに取り組んでいるところで、近々その報告させてい ただく予定です。女性が持っている能力の高さというのは、いろいろな場面でかいま見 て、適材適所でないですけれども、やはりそういう能力が生きるところをしっかり見つ けていくことだと思います。 A12(C社)  先程簡単に紹介をさせていただきましたが、このダイバーシティに関して、私どもは 2001年位から取り組んでいて、最初は小さい所帯の10人位のプロジェクトとしてやっ てきたのですが、2004年に、ダイバーシティ・ディベロップメント・オフィスという部 署をつくりました。人事のすぐ隣にあって、連携しながらやっています。  施策は先ほど紹介させていただいたものが主になっていますが、全社的な施策として は、管理職に対しては、ダイバーシティ研修というのを必須で受けさせるというのがあ ります。研修は2日間ほどですが、そこでは、今後どういう意識でやっていかなければ いけないのかという話をしておりまして、マネージャー層の満足度は高い研修になって います。  また、管理職についてですが、女性の管理職は100人ほどいますけれども、ほとんど が中途で採用させていただいている方です。ちょうど今、管理職になる層というのはバ ブル期というか、平成に入ってからの者が管理職になってくるのですが、そこで入社し た人間は多くいたのですが途中で辞めているため、管理職を登用しようとしてもいない という状況です。係長クラスや中堅クラスまでいろいろと見ていますが、なかなかすぐ 上げるというところまではいっていないというのが現状で、ここは苦慮しているところ ではあります。ただ、こういう活動はやはり草の根的にやっていかなければいけないも のだろうと思っているので、1つ象徴的に管理職の数といっていますけれども、それに 対する意識というのは、下の者を中心にだいぶ変わってきたと感じています。