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乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン

乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン

1.事業目的

すべての乳児のいる家庭を訪問し、子育ての孤立化を防ぐために、その居宅において様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する必要な情報提供を行うとともに、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供に結びつけることにより、地域の中で子どもが健やかに育成できる環境整備を図ることを目的とした、広く一般を対象とした子育て支援事業である。

2.対象者

原則として生後4か月を迎えるまでの、すべての乳児のいる家庭を事業の対象とする。ただし、生後4か月を迎えるまでの間に、健康診査等により乳児及びその保護者の状況が確認できており、対象家庭の都合等により生後4か月を経過して訪問せざるを得ない場合は対象として差し支えない。

なお、次の家庭については訪問の対象としないことで差し支えないが、[2][3]に掲げる場合については、訪問の同意が得られないことや長期の里帰り出産等の状況自体が支援が必要となる可能性を示すものとして、支援が特に必要と認められる家庭に準ずる家庭と位置づけることとし、その後の対応については、「10.ケース対応会議における支援の必要性についての判断等」に基づき適切な対応を図ること。

[1] 養育支援訪問事業の実施などにより、既に情報提供や養育環境の把握ができている場合

[2] 訪問の同意が得られず、改めて訪問の趣旨を説明し本事業の実施の働きかけを行ったにもかかわらず同意が得られない場合

[3] 子の入院や長期の里帰り出産等により生後4か月を迎えるまでには当該市町村の住居に子がいないと見込まれる場合

3.訪問時期等

対象乳児が生後4か月を迎えるまでの間に1回訪問することを原則とする。ただし、生後4か月を迎えるまでの間に、健康診査等により乳児及びその保護者の状況が確認できており、対象家庭の都合等により生後4か月を経過して訪問せざるを得ない場合は、少なくとも経過後1か月以内に訪問することが望ましい。

なお、できる限り早期に訪問し支援を行うことが望ましいことから、市町村において独自に早期の訪問時期を定めることが適当である。

4.母子保健法に基づく訪問指導との関係

本事業はすべての乳児のいる家庭が対象であり、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行い、必要なサービスにつなげる事業である。一方、母子保健法に基づく訪問指導は、母子保健の観点から乳幼児のいる家庭を対象として、必要な保健指導等を行う事業である。

このように、両事業は法的な位置づけや、第一義的な目的は異なるものの、いずれも新生児や乳児がいる家庭へのサポートを行うものであり、密接な関係にある。このため、効果的かつ効率的な事業実施の観点からも、母子保健法に基づく新生児訪問等の乳児に対する訪問指導を実施している市町村の判断により、これらの訪問指導等と併せて本事業を実施することとして差し支えない。

なお、支援の必要性が高いと見込まれる家庭に対しては可能な限り保健師等の専門職が訪問することとし、市町村と都道府県の母子保健担当部署との連携の下、母子保健法に基づく新生児訪問や乳児に対する訪問指導の必要性がある場合には、優先的にこれらを実施すべきである。その上で本事業を実施する場合は、事前の情報等を踏まえ、対象家庭の状況に配慮し、母子保健法に基づく訪問指導の際に本事業訪問者が同行する等の対応が望まれる。

5.地域の子育て支援事業等との連携

本事業の実施において、地域における他の子育て支援事業等との密接な連携を図ることは、子育て家庭に対する多様な支援が可能となり、地域の子育て支援活動のネットワークの強化につながることから、こうした連携に取り組むことが望まれる。

6.訪問者

(1) 訪問者については、保健師、助産師、看護師の他、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験者等から幅広く人材を発掘し、訪問者として登用して差し支えない。

なお、訪問者について市町村独自に専門職に限る等の資格要件を設けることは差し支えない。

(2) 訪問に先立って、訪問の目的や内容、留意事項等について必要な研修を受けるものとする。

7.実施内容

(1) 本事業は以下の内容を実施するものとする。

[1] 育児に関する不安や悩みの傾聴、相談
[2] 子育て支援に関する情報提供
[3] 乳児及びその保護者の心身の様子及び養育環境の把握
[4] 支援が必要な家庭に対する提供サービスの検討、関係機関との連絡調整

(2) 実施内容については、市町村の判断により訪問者の専門性に配慮したものとし、必要に応じて専門職と専門職以外の訪問者との役割分担を明確にするなどの対応をとることが望ましい。

8.事業の実施における留意事項

(1) 事業の周知

事業を効果的に進めるためには、対象者に事業の趣旨と内容及び訪問を受けることのメリット等が理解されることが必要不可欠であり、母子健康手帳交付や出生届受理等の機会を活用して本事業の積極的な周知を図るとともに、事前に訪問日時の同意を得るよう調整する等、対象家庭や地域の実情に応じて訪問を受けやすい環境づくりを進める。

(2) 支援の必要性と訪問者

市町村の児童福祉担当部署と母子保健担当部署との連携の下、事前の情報等を踏まえ、支援の必要性が高いと見込まれる家庭に対しては可能な限り保健師等の専門職ができるだけ早期に訪問する。

9.実施方法

(1) 訪問の連絡調整等

訪問にあたっては、事業周知の際におよその訪問時期をあらかじめ知らせておく、あるいは訪問者が対象家庭に個別に連絡をとるなど、親子の受け入れ状況に配慮した訪問を心がける。

(2) 訪問者の身分の提示

訪問の際は、身分証を提示するなどして市町村からの訪問者であることを明確にする。

(3) 訪問に際しての留意事項
[1] 育児に関する不安や悩みの傾聴、相談

訪問の際は、親子の状態を最優先に考慮しながら話を進めるとともに、受容的な対応を心がける。

[2] 子育て支援に関する情報提供

訪問の際は、地域子育て支援拠点事業等の実施場所一覧表・母子保健事業の一覧などにより、地域の様々な子育て支援に関する情報を提供する。

[3] 養育環境等の把握

訪問者は、訪問の際に養育環境等の把握を行う。養育環境の把握方法や報告内容については、訪問者の専門性に応じたものとし、研修等の実施により十分に理解した上で実際の訪問を行う。

特に、訪問者が専門職以外の場合には、保健師等の専門職が訪問結果の報告に 基づいて養育環境等をアセスメントする体制を整えること。

○ 養育環境等の把握のための項目の例示(訪問結果報告例)
訪問家庭・住所・連絡先(             )
保護者氏名・年齢(                )
赤ちゃんの名前・性別・生年月日(         )
訪問日時   年  月  日
訪問者(                     )
訪問時の赤ちゃんの様子
訪問時のお母さんの様子
同居家族の構成・育児家事の応援・相談相手
家の中の様子
育児で困っていること、心配なこと
家庭で困っていること、心配なこと
相談、支援の希望
 
□ 地域の子育て支援の情報提供
・子育て支援サービスの紹介
・母子保健等のお知らせ 等

10.ケース対応会議における支援の必要性についての判断等

訪問実施後、次の手順によりその後の支援の必要性を判断し、支援内容等を決定する。

[1] 訪問者は、訪問結果について、訪問結果報告書に基づき速やかに市町村の担当部署に報告する。

また、緊急に対応すべき場合は、報告形式にこだわらず即座に報告し、追って報告書に基づき報告する。

[2] 市町村担当部署においては、訪問者から報告された結果を参考に、支援の必要性を検討すべきと判断される家庭についてケース対応会議を開催する。

[3] ケース対応会議は、本事業担当者、市町村における母子保健担当者、児童福祉担当者等のほか、必要に応じて訪問者や養育支援訪問事業中核機関又は子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)調整機関(以下「調整機関」という。)の職員等が参加し開催する。

[4] ケース対応会議においては、支援の必要性とその後の支援内容等について、以下の点に留意し決定する。

ア 支援が必要な家庭については、養育支援訪問事業や母子保健事業等の具体的支援の必要性について検討し、その後の支援について担当部署に引き継ぐ。

イ 支援が特に必要と判断された家庭については、調整機関に連絡し必要な支援内容等について協議する。

ウ 訪問できなかった家庭については、引き続きその状況等の把握に努め、支援の必要性についての可能性を検討した上で、必要に応じてア又はイの対応を行う。

11.訪問者の研修プログラム

(1) 必要な研修プログラムについては、各地域の実情に応じて実施するものとし、実施に当たっては、家庭訪問に同行することや援助場面を想定した実技指導(ロールプレイング等)などを組み込み、訪問の内容及び質が一定に保てるよう努める。

なお、専門資格を有する者については、各自の専門領域に関する部分については省略しても差し支えないものとする。

(2) 訪問者の研修は、[1]訪問実施前に実施する基礎的研修、[2]実際の訪問における問題解決のための技術向上研修、[3]事例検討などの応用的研修など、訪問者の能力と必要性に応じて計画的に実施すること。

○こんにちは赤ちゃん事業 訪問者基礎的研修プログラム例
・事業の意義と目的
・個人情報の保護
・傾聴とコミュニケーション
・訪問の実際
・地域の子育て支援の情報

12.個人情報の保護と守秘義務

事業の実施を通じて訪問者が知り得た個人情報の適切な管理や秘密の保持のため、以下の対応等により万全を期す。

[1] 個人情報の適切な管理や守秘義務についての規程を定め、これを事業の従事者に周知する。

[2] 特に訪問者に対しては、個人情報の適切な管理や守秘義務について研修等を行い周知徹底する。

[3] 非常勤職員の委嘱手続等においては、誓約書を取り交わすことなどの具体的措置を講じる。

13.委託先について

(1) 事業の委託先としては、本事業を適切に行う観点から、少なくとも以下の要件を満たすことが必要である。

[1] 必要な研修を受講した訪問者を配置するなど、本事業を適正かつ円滑に遂行しうる体制を整えていること。

[2] 訪問者に対して、個人情報保護や守秘義務に関する研修を受講させ、本事業に係る個人情報の具体的な管理方法等についても一定の規程を設けるなど、委託に係る事務に関して知り得た個人情報を適切に管理し、秘密を保持するために必要な措置を講じること。

(2) 市町村は、事業主体としての責任を果たす観点から、委託先との関係について、以下のような点に留意する。

[1] 委託先に対して、本事業を適切に実施するために必要十分な情報提供を行うこと。

[2] 委託先の事業実施状況の把握や指導等により、適正な事業運営を確保すること。

(3) なお、既に子育て支援拠点事業を実施している法人が本事業を併せて実施することは、地域の子育て家庭に対して多様な支援が可能となり、地域の子育て支援活動のネットワークの強化につながるといった観点から、このような法人に委託を進めることも有効である。

ただし、この場合においては、事業の実施に当たり、訪問結果の報告や支援の必要性の検討について、市町村の母子保健担当部署及び児童福祉担当部署との十分な連携に努めるべきある。

14.第2種社会福祉事業の届出等

児童福祉法等の一部を改正する法律(平成20年法律第85号)により、第2種社会福祉事業として適切に事業開始の届出を行うとともに、都道府県の指導監督を受けること。

15.子育て支援における地域力の醸成

本事業は、すべての乳児のいる家庭を対象とするため、地域における子育て支援のニーズを広く把握することが可能であることから、こうした子育て支援のニーズに関する情報等を、必要な地域の子育て支援サービスの拡充のために活かすことが求められる。

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