第4回ILO懇談会議事要旨


1.日時:平成17年4月18日(月) 15:00〜17:00

2.場所:経済産業省別館1014会議室

.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会総合国際局長  中嶋 滋
日本労働組合総連合会雇用法制対策局長  長谷川 裕子
日本労働組合総連合会国際局部長  大久保 暁子

(2)使用者側
日本経団連国際協力センター参与  鈴木 俊男
日本経済団体連合会労働法制本部長  讃井 暢子
日本経済団体連合会労働法制本部国際関係グループ長  高澤 滝夫(川本裕康労働政策本部長の代理)

(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)  恒川 謙司
厚生労働省大臣官房国際課長  村木 太郎
厚生労働省大臣官房国際課海外情報室長  野地 祐二
厚生労働省大臣官房国際課課長補佐  堀井 奈津子
外務省大臣官房国際社会協力部専門機関課長  山田 洋一郎
.議題
(1)第292回ILO理事会の報告等
(2)未批准条約について
第155号条約について
第111号条約について
第173号条約について
第105号条約について

5.議事要旨

(司会)
 それではILO144号条約に基づく第4回ILO懇談会を開催いたします。私、厚生労働省大臣官房国際課長の村木が、本日の司会を務めさせていただきます。はじめに、開催に当たりまして、主催者であります厚生労働省の厚生労働省総括審議官の恒川から一言御挨拶をさせていただきます。

(恒川総括審議官)
 本日はお忙しいところお集まりいただき、心より感謝申し上げます。
 本懇談会は、ILO144号条約が平成15年6月に発効したことを受け、この条約に定める、政労使の代表者の間での効果的な協議を行うことを目的として開催するものであり、平成15年8月、平成16年4月及び平成16年9月に続き、今回が第4回目の会合となります。
 今回の会合におきましては、条約第5条第1項(c)の規定に基づき、未批准条約について議論するということになっております。なお、昨年4月にご議論いただいたILO第162号条約(石綿条約)に関しましては、現在批准登録に向けて、国会でご審議いただいているところであり、先週12日に参議院外交防衛委員会で審議がなされ、全会一致で採決されましたのでご報告させていただきます。
 ご参集いただいた労使のメンバーにおかれましては、国際労働行政の発展のためにも、建設的な議論が行われるよう、また、これを通じて、政労使の間の意思の疎通がより一層深められるよう、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 また、政労使の間の協議を円滑に行っていく上では、関係する他府省庁及び省内他部局の協力が不可欠です。ご出席の関係省庁等の方々には、これまでのご協力に心より感謝申し上げるとともに、引き続きよろしくお願いいたします。

(司会)
 つづきまして出席者の皆様の紹介をさせていただきます。
 労働側、中嶋連合総合国際局長、長谷川雇用法制対策局長、大久保国際局部長、続きまして使用者側、鈴木日本経団連国際協力センター参与、讃井日本経団連労働法制本部長、川本労働政策本部長の代理で高澤日本経団連労働法制本部国際関係グループ長、最後に政府側は、ただいま御挨拶申し上げました恒川総括審議官、私が国際課長の村木、国際課海外情報室長の野地がメンバーとなっております。そして今日は外務省から国際社会協力部の山田専門機関課長にお越し頂いています。
 それでは、議題1「ILO理事会の報告等」ということで、政府側より、資料に基づいてご説明させていただきます。

(資料1に基づき政府側説明)


(司会)
 ただいまの件について、ご質問等ございましたらお願いします。

(労働側)
 資料1の(1)予算額について、数字の説明を希望します。前回予算と比較して何%増というときの数字は何と比較しているのですか。当方で把握している数字と異なっています。
 (3)ミャンマー案件に関しては、政府、ILOの適切な対応を評価しています。
 (6)SR(social responsibility)については、ISOは「C」を取って「SR」という呼び方をしているが、、ILOの中では「企業の社会的責任」ということで「C」は取られていないので、CSR(corporate social responsibility)とするべきではないでしょうか。
 また、MNE小委員会の構成が6人から8人に変わっているので、その案について報告しておくべきです。

(政府側)
予算については、後ほど送付します。それ以外のご指摘に感謝します。

(使用者側)
 資料1の(1)使用者側の「更なる努力」のみならず、政府側も更なる削減を求めたものと認識しています。書きぶりの修正をお願いします。
 (2)については「ILO事務局内の」人的資源戦略を求めたものです。
 (3)ILO憲章第33条の適用については、長いサマリーのため、なかなかわかりにくい結論だったのですが、総会で再度検討するということになったものです。
 (4)記載されている3つの他、2つくらいあったと思います。
 (5)政府グループを代表して、という書きぶりを、「全」政府グループを代表して、と修正すべきです。前代未聞のことが起きたという意味で、きちんと書いた方が良いでしょう。
 (6)SRについては労働側が言うようにCSRとして問題ないでしょう。

(政府側)
 その他に何かあれば。

(労働側)
 10月のアジア太平洋地域会合については、長谷川地域総局長が労使双方に対し情報提供を行いました。また、開催日程が1日短くなったということを、番外編として、理事会に関連して報告します。
 また、ネパールの件は2月1日に起きたばかりのことでもあり、触れるべきではないでしょうか。
 結社の自由委員会も開催されました。日本案件は愛知の教職員の問題が取り上げられましたが、委員会が「更なる審議の要なし」という判断を示しましたので、取り上げる必要はないでしょう。また、結社の自由委に関して日本企業がターゲットにされている事例がフィリピン、インドネシアなどにあり、ウォッチする必要があります。

(使用者側)
 バランスということでは、ベネズエラが使用者団体の結社の自由侵害事案として提訴されているので、それをとりあげてはどうでしょうか。

(政府側)
 OECDとの関係も含め注視していきたいと思います。ご指摘の点は検討します。

(※:ホームページには上記指摘を踏まえて修正をした後の資料を掲載しております。)

(司会)
 では、議題2として、4つの条約について御議論いただきます。

(資料2−1〜2−4に基づき政府側説明)


(司会)
 以上が政府報告案の説明でございます。このあと、労使双方の御意見を伺ったあと、質疑応答に移りたいと思います。 それではまず、労働者側の御意見について御説明をお願い申し上げます。

(労働側)
 この懇談会の意義に鑑み、条約批准にあたって、どの法律のどの条項が抵触するのか、具体的な条文をお示しいただきたいと考えます。例えば、155号条約については、労働安全衛生法改正が控えているところですが、これが改正されたとして、他にネックになる法律があるのですか。どういう法律をどうすればいいのか。議論の材料を早めにお示しいただきたい。我々は我々なりに検討していきたいので。
 国際労働基準の促進を目的としてILO条約を批准するためには、具体的にはどの法律のどの条文が問題になっているのですか。他の国では、批准してから国内整備というところもあります。

(政府側)
 批准については、ILOの基本条約、優先条約を優先的に検討し、また、法改正などにより批准のハードルが低くなったりしたものなどから、具体的に検討に入ります。条約は数多くあり、それぞれの条項が担保されているかをひとつひとつ見ていく必要があるため、ある程度批准が視野に入らないと具体的な検討がしにくいこともあります。

(労働側)
 例えば、111号条約も受け皿となる法律が成立すれば即批准できるのでしょうか。三者で協議をしているのですから、情報をいただかないと。今回も政労使あわせて4つの条約について取り上げていただいているわけですが、どの国内法のどの条文担保されているか、内々であっても資料をいただきたいのです。

(政府側)
 手続的なものを申し上げると、条約の批准に際しては、関係省庁と協議の上で、担保状況について整理することとなります。条約が最終的に関係省庁と協議する段階に入るのはかなりあとの話になります。関係省庁と調整が済んでオーソライズされたものを出せるかどうかは非常に難しいのです。

(労働側)
 たとえば111号条約については、ILOから担当も呼んで見解を聞いたではないでしょうか。その上で担保についても検討したのではないでしょうか。基本8条約のうち、残された2つについて、批准を検討していくことは重要。少なくとも105号と111号については、問題点の整理等をした資料を出していただけませんか。

(使用者側)
 このILO懇談会で取り上げる条約すべてがすんなり批准できるものではないだろうが、何が邪魔をしているのか、考えながらやっていくべきと考えます。
 未批准条約を批准するために、手続について議論するのなら、とにかく情報を提出していただきたい。
 ここで未批准条約について、可能なものは批准を、という流れになるなら、では可能とは何か、どの辺りがネックとなるのか、ある程度、リストで紹介いただいた上で皆で議論をしていくべきです。議論を始めるのであれば、粗々のものでも何か材料をいただかないと始まりません。

(政府側)
 我々が考えているもので、各省と調整したものではない、という条件付きならば出せるものがあるかもしれません。

(使用者側)
 議論の材料ということで資料があると良いわけです。

(労働側)
 例えば、今回、安全衛生法が改正されれば、一つ、批准に近づくことになります。では、残りの論点は、となると材料を前広に出していただいて、議論していきたいのです。

(政府側)
 国内法令上、担保状況については各省にもまたがるものであり、オーソライズされていないものは、この場で出せないのです。関係省庁としても、具体的な批准プロセスに乗らない限りは作業にとりかかるのは難しい。
 技術的な話を申し上げるならば、担保表を作り、それぞれの論点について通達のレベルまで見て検討するのです。包括的な条文だと、それが膨大な数に上ります。我が国の法体系と条約の体系では、形が違いますし、ILOに質問しても返事が来るとは限りません。
 何より、この場が144号条約に基づく公式な場であるだけに、いい加減なものを出せないのです。そして、この場で何がネックとなっているか細かく見るのは不可能です。
 決して反論ではありませんが、以上の事情があることをご理解下さい。私どもとしてもご指摘を踏まえ、努力したいと考えます。

(使用者側)
 方向性は確保しなければなりません。むろん、批准の数の問題もありますが、むしろ批准に向けて条約を選択していく基準が必要です。総会での議論などを踏まえて、「これは批准せねばならない」というものを外務省に御提言いただいてもいい。このままでは、日本は置いていかれます。

(使用者側)
 155号についていえば、どの条文が問題となるというような限定はされているのでしょうか。

(政府側)
 全て限定されているとは言えませんが、条項ごとに内容を調査し、用語の意味を確認した上で国内法制との整合性を見る必要があります。通常の法律・政策の立案より、もう一段階難しいのです。

(労働者側)
 155号条約について、安全衛生法が改正されれば、「2以上の企業が同一の作業場において同時に活動に従事する場合には、これらの企業はこの条約の要件を適用するに当たって協力する。」という点は担保されるのですか。
 3条(c)の間接雇用について、派遣はクリアできていますが、では請負はどうでしょうか。また、3条の(a)、(b)については、一般の公務員との関係ではどうでしょうか。

(政府側)
 国家公務員は労働安全衛生法から除外されていますが、人事院規則で同様の面が規定されています。個別に見ていく必要があります。具体的なデマケがどうなっているかは、整理しきれていません。
 なお、請負といえども、使用者はいます。重層的なもの、例えば建設業や造船業については統括的に管理をすることになっています。製造業は、今回法改正ができれば、これを義務づけられます。

(労働側)
 155号をクリアするために、何らかの形で問題が見えないと。今回の法律改正の中でクリアしていこうとしているのなら、審議会の段階から、155号条約の批准を視野に入れながら何が抜けているのか、何をフォローせねばならないかを検討していくために、この場で論点を明らかにしてもらう必要があります。
 日本国内だけの問題ではないのです。例えば中国で何かをする場合、ILO条約が一つの国際言語となる。批准というだけの議論だけではなく、批准を視野に入れていく、という姿勢が大事ではないでしょうか。

(使用者側)
 144号条約の批准の前にも、具体的な条約の批准に当たって、何がネックなのかを議論しましたことがありました。議論する以上は、各省とも協議した上で資料を出していただきたい。
 我々としては基本条約の未批准のものについては定点観測的に見る必要があると思っています。そのようなものは、先進国として批准に向けた具体的な議論をすべきであり、ある程度の批准のネックがわかっていたら、出して議論すべきではないですか。

(政府側)
 具体的な方法については検討させていただきたいと考えます。オーソライズされたものを出すのはなかなか困難ですが。

(司会)
 では、時間も押しておりますので、111号条約についてお願いします。

(労働側)
 111号条約は人権擁護法(法案)とも関連しますが、批准していくという体制が必要ではないでしょうか。

(使用者側)
 今回、111号条約が基本条約であることに鑑み、取り上げてもらうことを提案しました。批准(の可否)を議論するに際して、もう少し臨場感のある情報提供をお願いします。

(政府側)
 今いただいたご指摘がありましたこと、関係省庁にもフィードバックしていきたいと考えています。

(司会)
 労働側からご要望のありました173号条約についてはいかがでしょうか。

(労働側)
 173号条約に関しては、公務員も対象となると言うが、そのような公務員の退職金や未払賃金はどう整理されるのか、また、農林水産業従事者などの扱いもあると聞いておりますが、それだけが批准できない理由でしょうか。国内法でどういう所を整理しなければならないのでしょうか。民法を改正して労働債権を一番上に持ってくることが必要なのでしょうか。次回までに具体的な論点をご教示下さい。

(政府側)
 次回までに、ご指摘の内容について対応します。

(司会)
 では、使用者側から要望のありました105号条約についてはいかがでしょうか。

(使用者側)
 これも基本的な条約として取り上げていただいたものです。

(労働側)
 G8加盟国のうち、日本だけが未批准というのはいかがなものでしょうか。国公法、地公法の「(ストを)あおり、そそのか」した者に対して懲役刑を課し得る条項が条約第1条(d)に抵触して批准できないわけですが、何とか見通しを立てていただきたい。ガス、水道等個別事業法でスト権に制約をかけている場合でも、懲役刑を課しているならば、条約に抵触するのではないでしょうか。

(政府側)
 条約の批准に際して国内法令で担保できているかどうかは、当該条文が適用対象となる者がいるかというよりも、制度論としてどうか、という点を中心に考える必要があると考えています。

(司会)
 最後に、「その他」として、資料3−1についてご説明します。

(政府側)
 国際労働機関憲章第19条5(b)及び6(b)の規定に基づき、ILO総会で採択された条約及び勧告は、総会の会期終了後1年以内、又は例外的事情のためにそれが不可能な場合でも遅くても18ヶ月以内に、権限ある機関に提出しなければならないとされているところです。そして当該規定に基づき、政府は、和文のテキストを付した上で、条約及び勧告の内容並びに条約及び勧告に関して執るべき措置についての提案を権限ある機関に提出しているところです。
 また、条約及び勧告の権限ある機関への提出は、ILO第144号条約第5条1(b)に基づき、代表的な労使団体への協議事項とされています。
 ところで、昨年の第92回ILO総会で採択されたILO第195号勧告についても、今回の懇談会の開催の前に十分な余裕をもって、事務局から代表的労使団体に送付し、今回の懇談会の場で協議するよう準備してきたところですが、諸般の事情から、今回の懇談会の場に提出することが困難であるため、作業が終了次第、事務局より速やかに労使団体に送付し、書面の交換等を通じて持ちまわりで三者間の意見を調整した上で権限ある機関へ提出することとしたいと考えております。
 事務局としましても、今回の取扱いが特例であることに留意し、次回以降、ILO総会で採択された条約及び勧告の権限ある機関への提出に係る事務作業について、遺漏無きよう努めたいと考えております。

(使用者側)
 本件については、能力開発が団体交渉の対象となっている点を問題として、使用者側はグループ全体として反対票を投じました。ただ、他国の使用者側の中には賛成票や棄権票を投じたところもありました。

(労働側)
 1年以内に報告、といってもいつもギリギリになってから報告がなされていますが。総会で採択されてからしばらく経っています。

(政府側)
 11月後半になってようやくILO事務局からオーセンティックテキスト(認証謄本)が送られてきており、それから和訳作成等の作業を始めているためであることをご理解願えないでしょうか。

(司会)
 他に御発言が無いようでしたら、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

−了−


照会先:
 厚生労働省大臣官房国際課
 国際労働機関第2係
 03-5253-1111(7310)
 03-3595-2402

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