平成21年3月10日

中央労働委員会事務局

第一部会担当審査総括室

室長  西野  幸雄

Tel 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250

明泉学園不当労働行為再審査事件
(平成19年(不再)第58号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成21年3月9日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

−命令のポイント−

1 学園が9年度春闘要求に関する団体交渉に誠実に対応しなかったこと、組合員をクラス担任及び部活動顧問等から外したこと、通常であれば懲戒理由とならない行為で組合員を厳重注意したこと、組合員を非組合員と差別する意図をもって管理職制度を運用したことは、いずれも不当労働行為に該当する。

2 一般教諭である組合員については、各賞与において、管理職等を含めた非組合員と比較して低査定又は低額支給とされたと推認され、これらは組合員であること等を理由とした不利益取扱いに当たるが、常勤講師である組合員については、低査定を受けた事実を認めることができない。

3 賞与差別の救済として、初審命令が、一般教諭である組合員の各賞与について、管理職等も含めた非組合員の勤務評価の平均を下回らない範囲内での再査定ないしは管理職等への支給額との差額支払いを命じたことは基本的に相当である。

I 当事者

再審査申立人:

学校法人明泉学園(以下「学園」)【東京都町田市】教職員190名

再審査被申立人:

鶴川高等学校教職員組合(以下「組合」)【東京都町田市】組合員11名

II 事案の概要

1 本件は、学園が、9年度春闘要求に関する団体交渉(以下「団交」)に誠実に対応しなかったこと、組合員4名をクラス担任から外したこと、組合員2名を卓球部顧問等から外したこと、組合員1名の過去の昇給格差を是正しなかったこと、組合員らに対し厳重注意の懲戒処分をしたこと、組合員らを管理職に登用しなかったこと、組合員らの賞与について低査定又は低額支給としたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。

2 初審東京都労委は、申立事実の一部を除いて不当労働行為の成立を認め、学園に対し、[1]賃金、賞与に関する団交申入れに対する誠実団交応諾、[2]組合員をクラス担任、卓球部顧問等から外すことによる支配介入の禁止、[3]組合員に対する懲戒処分がなかったものとしての取扱い、[4]組合員を管理職に登用しないことによる支配介入の禁止、[5]組合員らの賞与の再査定及び既支給額との差額及び年5分の差額支払、[6]文書手交等を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文の要旨

初審命令主文(上記[5])を次のとおり変更し、その余の再審査申立てを棄却する。

本件申立てに係る組合の組合員(常勤講師である組合員1名を除く。)に関する平成8年度3月賞与から平成9年度3月賞与までの4回の賞与及び平成10年度3月賞与から平成9年度3月賞与までの4回の賞与の計8回の各賞与について、以下の措置をとらなければならない。

(1) 平成8年度3月賞与から平成9年度3月賞与まで及び平成10年度3月賞与の5回の賞与ごとに、2等級格付者の部長ら、養護教諭及び司書に一般教諭(組合及び別組合の組合員を除く。)を加えた勤務評価の平均を算出した上、これを下回らない範囲で上記各組合員らの勤務評価を再査定し、再査定後の勤務評価に基づき、平成10年度3月賞与については管理職等の支給区分を用いて、各賞与額を再計算し、既支給額との差額を支払うこと。

(2) 平成11年度夏期賞与及び年末賞与について管理職等の成果比例配分率を用いて算出した額と既支給額との差額及び同年度3月賞与について管理職等の配当額と既支給額との差額を支払うこと。

(3) 上記各差額について各賞与支給日から支払済みまで年5分に相当する金員を付加して支払うこと。

2 判断の要旨

(1)【不誠実団交】学園の9年度春闘要求に関する団交への対応は、形式的には団交に応じているものの、組合と実質的協議、交渉する姿勢があるとは到底認められず、不誠実団交に当たる。

(2)【クラス担任外し】学園が組合員4名をクラス担任から外したことは、同人らが組合員であること等を理由として行われたもので、他の教職員に対する見せしめ的効果があったと認められ、クラス担任を希望する者に対して組合活動に参加することを萎縮させるものであるから、組合に対する支配介入に当たる。

(3)【卓球部顧問等外し】学園が組合員2名を卓球部顧問等から外したことは、同人らが組合員であること等を理由として行われたもので、クラス担任同様、組合に対する支配介入に当たる。

(4)【厳重注意】本件各厳重注意については、組合員らに不利益を与える意図を持って、通常であれば懲戒理由とされないような行為を取り上げて行われたもので、組合員に対する不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たる。

(5)【管理職登用差別】学園は、労働組合の組合員を非組合員と差別し、処遇上不利益に扱う意図をもって管理職制度を運用していたものと推認され、組合員であれば管理職に登用されず、処遇上不利益に扱われることを示すことによって、組合及び組合活動への参加を萎縮させることを企図したものといえるから、組合員を管理職に登用しないことは、組合に対する支配介入に当たる。

(6)【賞与差別】本件申立てに係る各組合員の勤務評価については、いずれも管理職等を含めた非組合員の平均と比較して低査定を受けていたと判断される。ただし、常勤講師である組合員1名については、これまで常勤講師が管理職に登用されていなかったことから、常勤講師の勤務評価を基準として低査定の有無を判断すると、低査定を受けた事実を認めることができない。

学園の主張する組合員の低査定の理由は、その大半について合理性が認められず、一部の組合員について一応低査定の理由となりうる事実が認められるものの、学園が真実それらの事実を適正に考慮して勤務評価を行ったと判断することはできないから、組合員らに経済的不利益を与える意図で低査定としたものと判断される。

また、各職階毎に一律の基準によって支給された11年度賞与については、一般教諭である組合員に対し管理職等よりも低額な支給をすること自体が、組合員であること等を理由とする不利益取扱いに当たる。

(7)【救済方法】学園の管理職制度が組合員の処遇を不利益に扱う意図で運用されていたことなどに照らすと、本件賞与差別について実効性のある救済を図るためには、管理職等を含めた非組合員の勤務評価の平均を下回らない範囲内での再査定ないしは管理職等への支給額との差額支払を命じることが相当である。

【参考】

初審救済申立日

平成10年3月7日(東京都労委平成10年(不)第14号)
平成10年6月26日(同平成10年(不)第49号)
平成11年3月19日(同平成11年(不)第16号)
平成12年3月27日(同平成12年(不)第31号)

初審命令交付日

平成19年10月11日

再審査申立日

平成19年10月23日(使)


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