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第2章 ものづくり基盤技術の研究開発に関する事項


 第1節 ものづくり基盤技術に関する研究開発の推進等

  1 ものづくり基盤技術に関する研究開発の実施及びその成果の普及

  (1)国の研究開発制度の利用

     製造技術を核とした企業が、その技術水準を維持し、更に向上させるため
    には、ものづくり基盤技術を活用し、新たな製品、製造方法等の開発に取り
    組むことが重要である。
     このため、ものづくり事業者の研究開発を支援することにより、ものづく
    り事業者の技術革新を支えるものづくり基盤技術の維持・発展に向けた取組
    を促進するとともに、国立試験研究機関等によりものづくり事業者の技術の
    高度化に資するものづくり基盤技術に関する研究開発を実施し、その成果を
    広く提供していく。
     また、ものづくり事業者がものづくり基盤技術に関しリスクの高い研究開
    発を推進するためには、国による補助金等を積極的に活用していくとともに、
    国からの受託研究等を通じて国の研究開発に参加していくことが効果的であ
    る。
     このため、研究開発に係る産学官の連携の促進、ものづくり基盤産業を支
    える中小企業者等に対する研究開発のための補助金等の支出の機会の増大に
    努めるとともに、各種研究開発の評価を適切に行うよう努める。
     さらに、大学、国立試験研究機関等の研究成果の特許化や、かかる研究成
    果に基づく新技術の育成、事業化開発、民間へのあっせん、国の委託によっ
    て開発された技術の特許権等を受託者が保有できるようにすることにより、
    研究開発成果の事業化等を促進する。

  (2)研究開発成果の普及

     ものづくり基盤技術の高度化や、新たな創造については、特許取得後の積
    極的な技術の普及、技術利用の拡大及びそれらの技術を利用した更なる技術
    革新の促進が必要である。
     このため、大学、国立試験研究機関等の研究開発活動に関する情報のデー
    タベース化、各種技術展示会等の実施、技術交流等の促進等により研究開発
    成果の普及を推進する。


  2 ものづくり基盤技術に関する研修及び相談・助言

  (1)ものづくり基盤技術に関する研修

     ものづくり事業者が、ものづくり基盤技術を維持・発展させていくために
    は、基礎的な技術に関する知識を習得するとともに、ものづくり事業者の直
    面する環境問題や情報化等の新たな課題に対する知識を習得することが重要
    である。
     このため、これら知識の習得に資する中小企業者向け研修の充実等の施策
    を講じる。

  (2)ものづくり基盤技術に関する相談・助言

     ものづくり事業者が多様なニーズと技術力の向上に対応するためには、公
    設試験研究機関等が実施しているものづくり基盤技術に関する相談・助言を
    継続的に充実強化させることが重要である。特に、地域の中小企業から技術
    に関する相談相手として期待されている公設試験研究機関が国立試験研究機
    関、大学等と密接な連携を図りつつ、ものづくり事業者に適切な助言等を行
    うことは、ものづくり事業者の技術力の向上等に効果的である。
     このため、公設試験研究機関の職員がものづくり事業者に対し、的確な研
    修及び相談・助言を行うことができるよう、当該職員に対し必要な研修を行
    う。
     また、産学官のネットワーク等を活用して、公設試験研究機関等が行うも
    のづくり基盤技術に関する相談・助言において蓄積される技術情報の提供を
    図る。

  (3)ものづくりに係る技能・ノウハウの客観化・マニュアル化

     公設試験研究機関などがものづくり事業者に研修や助言などを行う場合に、
    ものづくりに係る技能・ノウハウが客観化・マニュアル化されていると効率
    的である。
     また、ものづくり事業者にとっては、これまでに蓄積された技能・ノウハ
    ウを情報技術の活用などにより科学的に分析し、再現性のある技術として機
    械等に代替していくことを通じて、効率的な設計・生産やこれらの技能・ノ
    ウハウの維持・発展を図ることが重要である。
     このため、これらの技能・ノウハウを客観化し、データベースやマニュア
    ルとして体系化、保管し、ものづくり事業者が広く活用できるようにするこ
    とを推進する。


  3 特許権その他の工業所有権に関する情報の提供等

    ものづくり基盤技術を振興するためには、特許権その他工業所有権の適切な
   保護及び利用の促進が重要である。
    このため、これらの知的所有権に関する国際調和、迅速な権利化、特許裁判
   の迅速化等を図るほか、知的所有権に関する情報の提供、知的所有権の取引市
   場の発展に資する施策を講じることにより、その利用を促す環境づくりに努め
   る。


 第2節 ものづくり事業者と大学等の連携

  1 大学等との連携の必要性

    ものづくり事業者が、新たな付加価値を生み出し、高めていくに当たっては、
   自己の経営資源のみならず、外部に存在する経営資源を有効に活用することが
   極めて重要である。特に、ものづくり事業者が既存製品の改良、新製品の開発
   に必要となる研究開発を行うためには、大学、高等専門学校及び大学共同利用
   機関(以下「大学等」という。)における研究成果や研究者の持つ技術・知識
   等を活用することが重要である。
    また、次代を担うものづくり基盤産業を背負って立つ人材を育成する観点か
   らも、大学等は重要な役割を果たすことが期待される。
    このため、ものづくり事業者と大学等の連携を促進する必要がある。


  2 大学等との連携の円滑化

    ものづくり事業者と大学等との円滑な連携を進めるには、大学等による積極
   的な情報の発信及び大学等の情報に対するアクセス環境を整備することが必要
   である。このため、大学等の研究者とものづくり事業者との間で、産学官交流
   の場を設け、大学等の研究者による研究内容の紹介、個別相談等を実施するこ
   とや、ものづくり事業者のニーズに合わせ、大学等の研究者を紹介・引き合わ
   せる仲立ち役の活動を円滑化する環境整備を推進する。


  3 大学等の能力を活用した研究開発の促進

    ものづくり事業者と大学等の研究者との共同研究等による研究開発を行うこ
   とは、大学等の持っている研究能力とものづくり事業者の持つ技術力等を結集
   することにより、優れた研究成果が期待されるとともに、大学等との交流を通
   じて、ものづくり事業者の研究能力を高めることが期待される。
    このため、現在、国立大学に連携・協力の窓口として整備されている共同研
   究センターにおける共同研究や受託研究、研究情報の提供、研究者等に対する
   技術研修、技術相談を促進する。また、高等専門学校に整備されている地域共
   同テクノセンターにおける技術相談を促進する。さらに、大学等との共同研究
   制度や産学官連携型の研究開発制度の利用を促進するほか産学官連携型の共同
   研究施設の整備を促進する。


  4 大学等の研究成果の利用の促進

    大学等には、我が国の研究資源の多くが集中しており、多くの研究成果が生
   み出されている。それらの研究成果の中には、ものづくり基盤技術の高度化、
   新技術の開発につながるものとして有望なものも存在すると考えられることか
   ら、大学等における研究成果がものづくり事業者へ円滑に移転されるようにす
   るための措置を講じることが必要である。
    このため、研究成果を民間企業へ移転する技術移転機関(TLO)の整備の
   促進等に努めるとともに、移転された研究成果を活用する民間企業に対する支
   援措置の積極的な活用を促進する。また、大学教官等の民間企業等への兼業を
   通じたものづくり基盤技術の移転の促進が期待される。


  5 研究開発に係る人材の育成

    ものづくり基盤技術を担う研究開発に係る人材の育成には、大学等をはじめ
   とした教育機関と連携したインターンシップ(学生が在学中に自らの専攻、将
   来のキャリアに関連した就業体験を行うこと)の活用を図ることが有効である。
   また、高度なものづくり基盤技術を支える大学等における技術者教育の充実向
   上を目指すことが必要である。
    このため、インターンシップの導入を促進する支援措置の実施を図るととも
   に、産業界における人材ニーズを反映した、大学等における技術者教育の外部
   認定制度(アクレディテーションシステム)の導入を推進する。

 


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