労 働 省 発 表
平成9年4月
 

 
労働大臣官房政策調査部
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最近3年間に仕事の内容が変化した労働者は8割弱
うち「仕事の内容が広範になった」が68%、「仕事の責任が増えた」が57%
平成8年産業労働事情調査結果
(流通業の経営課題と労働面への影響に関する調査)

I. 調査の概要

 この調査は、我が国の流通業において消費者の価格志向の強まり、規制緩和の進展等を背景に流通業(卸売・小売業)が対応した施策の把握と労働面への影響を明らかにしたものである。
 調査対象は、日本標準産業分類の卸売・小売業に属する常用労働者10人以上を雇用する民営事業所約4,000事業所、及び同事業所に雇用される労働者約10,000人であり、平成8年9月1日の状況について調査したものである。
(有効回答数3,240事業所、有効回答率 81.0%)




U. 調査結果の概要

<骨  子>

 産業の状況
 営業利益の「減少」事業所が5割弱
   営業利益を3年前と比べると、「減少」(46.3%)、「横ばい」(29.3%)、「増加」(24.1%)の順となっており、減少した事業所割合が増加した事業所を上回っている。「減少」 の割合が相対的に高いものを卸売業(中分類)・小売業(業態)別にみると、卸売業では繊維・衣服等卸売業、飲食料品卸売業などで、小売業では食料品専門スーパー、その他の専門スーパーなどで高くなっている。


 労働者数の変動状況等
(1) 労働者数は「減少」した事業所が3割、「増加」が2割
 3年前と比べた事業所全体の労働者数は、「ほぼ同じ」(44.8%)、「減少」(32.9%)、「増加」(22.2%)となっており、「減少」 した事業所割合が「増加」した事業所を上回っている。卸売業(中分類)・小売業(業態)別にみると、小売業の無店舗販売を除くすべての中分類及び業態で「減少」した事業所割合が「増加」 した事業所を上回っている。

(2) 卸売業では正社員が8割強、小売業では正社員が5割弱
 事業所全体の就業形態別の労働者数割合は、「正社員」(65.8%)、「正社員以外」(34.2%)となっており、「正社員以外」 の内訳は事業所と直接雇用関係のあるパートタイマー、アルバイト等の労働者数割合が27.0%、他企業から受け入れた労働者(派遣・応援・出向等)が7.2%となっている。卸売・小売業別には、卸売業で「正社員」の割合が84.4%と高いのに対して、小売業では「正社員以外」の方が53.0%と高くなっている。

(3) 労働者の過不足状況は「適正」が8割
 事業所全体の労働者の過不足状況は、「適正」とする事業所割合が80.8%と高く、次いで「不足」の 15.3%となっており、「過剰」とする事業所割合は3.8%と少なくなっている。卸売業(中分類)・小売業(業態)別にみても「適正」とする事業所が7割以上となっており、大部分で「不足」が「過剰」を上回っている。


 環境変化に対応するために実施した施策
(1) 最近実施した施策は商品関連、販売関連及び仕入関連の施策が多く、今後の施策としては情報ネットワ ーク関連も多くなっている
 流通業を取り巻く環境変化に対応するため、最近3年間に何らかの施策を実施した事業所割合は79.1%となっており、今後3年間に何らかの施策を予定している事業所は62.4%となっている。
 実施した施策内容は「取扱商品の拡大」(40.8%)、「販売先の多様化、拡大」(33.6%)、「取扱商品の絞込み」(24.6%)の順となっており、今後予定している施策については1位、2位は実施した施策と同じとなっているが、3位は「企業内情報ネットワークの導入、拡充」となっている。

(2) 施策を実施した理由は「競争激化」、「市場ニーズの変化」が高い割合
 施策を実施した又は今後3年以内に実施予定の理由としては、「競争激化」(72.3%)、「市場ニーズの変化」(50.3%)、「市場の成熟化、需要不振」(35.8%)の順となっている。

(3) 施策実施の影響は業務量及び労働者数の「増加」に寄与、正社員は「減少」し、正社員以外が「増加」
 施策実施の影響による業務量の変動状況は、「増加した」 は31.2%、「減少した」は8.1%となっており、業務量が「増加した」事業所割合が「減少した」事業所を上回っている。
 また、施策実施の影響による労働者数の増減変動状況をみると、労働者数が「増加」した事業所割合(22.1%)が「減少」した事業所(18.2%)を上回っている。
 これを就業形態別にみると、正社員では 「減少」 した事業所割合が 「増加」 した事業所をやや上回っているが、正社員以外の就業形態では 「増加」 した事業所割合が 「減少」 した事業所を上回っている。

(4) 今後の労働面の課題は「優秀な人材等の確保」、「就業意欲の維持・向上」など
 今後解決をせまられている労働面の課題があるとした事業所 (92.4%) における課題をみると、 「優秀な人材等の確保」(72.2%)、「就業意欲の維持・向上」(44.2%)、「人事制度の見直し(個人の業績に応じた処遇等)」(35.6%) の順となっている。
 また、最も重要な課題を就業形態別にみると、「優秀な人材等の確保」 がすべての就業形態で最も高くなっているが、他の課題としては正社員で 「労働時間対策(時短・週休2日制等)」 が、パートタイマー・アルバイト等で 「就業意欲の維持・向上」 が、派遣労働者,応援社員,出向者等で 「中高年齢者対策」 と 「就業意欲の維持・向上」がそれぞれ高くなっている。


 労働者の状況
(1) 最近3年間に業務の内容が変化した労働者は8割弱、変化の内容としては「仕事の内容が広範になった」、「仕事の責任が増えた」 などが高い割合
 在職年数3年以上の労働者(63.6%) について、最近3年間に業務内容に変化があったとする労働者は78.7%となっており、変化のあった内容別には 「仕事の内容が広範になった」(68.0%)、「仕事の責任が増えた」(56.8%)、「仕事の内容が難しくなった」(31.6%)、「他の部門との仕事が増えた」(20.9%)の順となっている。
 就業形態別にみると、卸売業のパート・アルバイト・臨時では、「仕事の内容が広範になった」が高い割合となっている他は、いずれも正社員に比べて低くなっている。これに対して小売業のパート・アルバイト・臨時では、正社員と同様の傾向を示している。

(2) 業務密度は「きつくなった」が5割弱、労働時間は「長くなった」が「短くなった」を上回る
 労働者(在職年数3年以上)の業務密度に対する意識は 「きつくなった」 が46.6%と高く、「楽になった」は6.3%と低くなっている。
 また、労働時間についてみると、「長くなった」 が24.8%、「短くなった」が15.5%となっており、労働時間が「長くなった」 労働者割合が「短くなった」 労働者を上回っている。

(3) 作業環境、人間関係は「良くなった」が「悪くなった」を上回る
 作業環境についてみると、「良くなった」 が17.8%、「悪くなった」が11.4%となっており、作業環境が 「良くなった」 割合が 「悪くなった」 割合を上回っている。
 また、「上司・同僚との人間関係」及び「正社員とその他の社員との人間関係」についてみると、それぞれ「良くなった」労働者割合(11.2%、11.7%)が「悪くなった」労働者(5.4%、2.2%)を上回っている。
 就業形態別に業務の密度、労働時間、作業環境についてみると、卸売業のパート・アルバイト・臨時では、 「変化なし」 あるいは 「わからない」 が相対的に高い割合となっており、業務密度が 「きつくなった」 割合は、かなり低くなっている。また、小売業のパート、アルバイト、臨時では、労働時間が 「短くなった」 及び作業環境が 「良くなった」 とする割合がやや高くなっている。

(4) 職場での満足度を3年前と比べると、仕事の内容、賃金、休日・労働時間、作業環境では「高まった」割合が、福利厚生、教育訓練、職場の人間関係では「低下した」割合が高い
 勤続年数が3年以上の労働者 (74.4%) の職場生活に対する満足度を3年前と比べてみると、職場生活全体の評価は 「変わらない」 とする労働者割合が75.6%、「低下した」とする者が14.1%、「高まった」とする者が10.4%となっており、「低下した」労働者割合が「高まった」者を上回っている。
 また、項目別にみると、仕事の内容、賃金、休日・労働時間、作業環境では「高まった」 労働者割合が「低下した」者を上回っているが、福利厚生、教育訓練、職場の人間関係では「低下した」 労働者割合の方が高くなっている。

(5)  今後、行ってほしい施策は、「時短、週休2日制等労働時間の改善」(正社員)、「個人の成果、業績応じた 処遇(昇進、昇格等)」(正社員以外)など
 勤務先に対して施策を行って欲しいと望んでいる労働者割合は81.2%となっており、内容としては正社員では 「時短、週休2日制等労働時間の改善」(36.3%)、 正社員以外では 「個人の成果、業績に応じた処遇 (昇進・昇給等)」(24.1%)、がそれぞれ最も高い割合となっている。


(注) 本調査結果速報では、産業の詳細な表章として、卸売業は日本標準産業分類の中分類別、小売業は業態別を使用している。


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