労 働 省 発 表
平成9年6月
 

 
労働大臣官房政策調査部
電 話(3593)1211 内線5237,5672
夜間直通電話(3502)6728

高年齢者の就業率は男60歳以上、女65歳以上で低下
60歳以上定年が高まり、定年、定年前退職者も増加

【平成8年高年齢者就業実態調査結果速報】

I. 調査の概要

 この調査は、高年齢者の就業・不就業の実態及び事業所における高年齢者の雇用状況、雇用対策の実態等を把握し、もって今後の高年齢者の就業対策に資することを目的として、平成8年10月に実施した。
 なお、前回は平成4年に調査を行った。

〔個人調査〕
(1)  平成2年国勢調査調査区のうちから、無作為抽出により抽出した約550調査地区(1調査地区は原則として2国勢調査区)に居住する55歳から69歳までの高年齢者約30,000人(有効回答率81.6%)を対象に主として平成8年10月1日現在又は9月中の状況について調査を行った。
(2)  調査の方法は、職業安定機関を通じた統計調査員による実地自計方式(世帯調査)である。
(3)  調査結果は、総務庁統計局による平成7年国勢調査抽出速報集計結果に基づいて復元した数値を割合で表示している。
 なお、平成7年国勢調査結果は総人口12,557万人、本調査の対象の55歳から69歳までの高年齢者2,182万人であり、性・年齢別内訳は参考表のとおりである。

参考表  性、年齢階級別高年齢者数   (万人)
55〜59歳60〜64歳65〜69歳
2,182795748640
1,052391361300
1,131405386340
資料出所:総務庁統計局 平成7年国勢調査結果

〔事業所調査〕
(1)  調査対象事業所は、日本標準産業分類による主要9大産業〔鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業、サ−ビス業(家事サ−ビス業、教育、外国公務を除く)〕に属する常用労働者を5人以上雇用する民営事業所のうちから、無作為抽出により抽出した約12,000事業所(有効回答率72.3%)を対象に平成8年10月1日現在の状況について調査を行った。
(2)  調査の方法は、労働大臣官房政策調査部による郵送調査である。




U. 調査結果の概要

 骨  子 

〔個人調査〕

 高年齢者の就業率は男60歳以上、女65歳以上で低下
 平成8年9月現在の55〜69歳の高年齢者の就業率は男73.8%、女43.5%で、前回(平成4年)調査に比べ男2.8ポイント、女0.2ポイントそれぞれ低下した。
 年齢階級別にみると、男55〜59歳93.0%、60〜64歳70.0%、65〜69歳53.4%、女55〜59歳58.8%、60〜64歳41.1%、65〜69歳28.1%といずれも加齡とともに低下している。前回調査と比べると男60〜64歳、65〜69歳、女65〜69歳で低下している(第1表、第1図)。


 高年齢就業者の雇用者比率は男57.0%、女48.0%、加齢とともに低下
(1)  就業者の従業上の地位をみると、「雇用者」の割合が男57.0%、女48.0%と最も高く、次いで、自営業主が男23.8%、女22.2%となっている。年齢階級別には男女とも加齢とともに雇用者の割合が低下し、自営業主の割合が上昇する(第3表)。
(2)  雇用者を勤務形態別にみると、「普通勤務」の割合は、男87.0%、女61.6%、「短時間勤務」は、男13.0%、女38.4%となっている。年齢階級別には男女とも加齢とともに「普通勤務」が低下し、「短時間勤務」が上昇する(第4表)。
(3)  男の就業者の職種をみると、技能工・生産工程作業及び労務作業関係が31.0%、管理的職業関係の仕事が16.6%、農林漁業関係の仕事が12.0%、販売関係の仕事が9.2%となっており、前回調査と比べると技能工・生産工程作業及び労務作業関係、農林漁業関係の仕事で低下し、管理的職業関係の仕事、販売関係の仕事で上昇している。また、企業規模別にみると、4人以下29.1%、5〜29人22.9%、30〜99人14.6%と中小企業で働く高年齢者が多い(第5表、第6表)。
(4)  就業者の就業理由をみると、「経済上の理由」の割合が男82.9%、女71.1%と最も高くなっているが、これ以外では「生きがい、社会参加のため」(男5.8%、女8.4%)、「健康上の理由」(男5.5%、女8.0%)、「頼まれたから、時間に余裕があるから」(男3.2%、女8.0%)となっている。年齢階級別には「経済上の理由」は加齢とともに低下する。また、65〜69歳では「健康上の理由」(男13.3%、女15.9%)、「生きがい、社会参加のため」(男12.1%、女10.5%)、「頼まれたから、時間に余裕があるから」(男8.2%、女10.5%)と高くなっている(第7表)。


 不就業理由で「適当な仕事がみつからない」の割合が上昇
(1)  不就業者のうち就業を希望する者の割合は、男52.4%、女29.9%となっている。前回調査より男で上昇、女で低下している。男の年齢階級別には55〜59歳68.9%、60〜64歳64.5%、65〜69歳39.7%と55〜64歳で高い割合となっており、かつ、前回調査より大きく上昇している(第2表)。
(2)  不就業就業希望者の仕事に就けない理由をみると、男では「適当な仕事がみつからない」59.3%、「本人の健康上の理由」30.7%、女では「適当な仕事がみつからない」39.4%、「本人の健康上の理由」28.9%、「家庭の事情」17.0%等となっており、前回調査と比べると「適当な仕事がみつからない」が男女ともかなり上昇している(第8表)。
(3)  就業希望者の希望する勤務形態をみると、男女とも「短時間勤務希望」の割合が最も高く、男41.1%、女54.4%となっている(第9表)。


 年金受給額が高くなるほど就業率は低下
(1)  1か月当たりの平均年金受給額は、男16.8万円、女8.1万円となっている。前回調査より男1.9万円、女1.1万円それぞれ増加している(第14表)。
(2)  年金受給者の就業率は男56.4%、女32.9%となっている。就業率と年金受給額との関係では年金額が高くなるほど就業率は低くなっており、男で受給額21万円以上で就業率は40%台に低下している(第15表)。
(3)  年金を受給している者の就業理由をみると、「年金だけでは生活できないから」が男61.1%、女54.7%、「年金の額には関係なく働きたいから」が男23.6%、女26.5%となっている。年齢階級別には加齢とともに「年金だけでは生活できないから」が低下し、「年金額に関係なく、働きたいから」が上昇している(第17表)。


 男の定年退職者の47.6%は「別会社等に勤務した」、「仕事を探し続けていた」は16.7%、前回調査より「別会社等に勤務した」が低下し、「仕事を探し続けていた」が上昇
(1)  55歳当時雇用者であった者のうち、「定年経験者」は男39.1%、女21.8%で、平均定年年齢は男58.8歳、女58.6歳となっており、前回調査より男女とも約1歳高くなっている。
 定年経験者の定年後の再雇用・勤務延長の有無別状況をみると、「現在、再雇用・勤務延長中」が男11.2%、女10.0%、「過去に再雇用・勤務延長を経験」が男24.7%、女23.3%、「再雇用・勤務延長の経験なし」が男64.1%、女66.6%となっている。なお、再雇用・勤務延長期間は男3.3年、女3.1年となっている(第19表、第22表)。
(2)  定年経験なしの者のうち「定年前に退職」は男15.8%、女29.9%となっている。平均退職年齢は男58.1歳、女57.8歳となっている(第19表)。
(3)  男について、55歳当時勤務していた会社を退職した後の状況をみると、定年退職者は「別会社等に勤務した」が47.6%、別会社等に勤務せず「仕事を探し続けていた」が16.7%、「仕事から引退した」が15.5%、「内職等」が9.8%、「自分で事業をした」が2.1%となっている。定年前退職者の場合は、「別会社等に勤務した」が42.2%、「仕事から引退した」15.6%、「仕事を探し続けていた」13.4%、「内職等」11.0%、「自分で事業をした」7.3%となっている。前回調査と比べると、いずれも「別会社等に勤務した」が低下し、「仕事を探し続けていた」が上昇している(第20表)。

〔事業所調査〕

 55歳以上の常用労働者の割合は14.5%
 55歳以上の常用労働者の割合は14.5%で、7人に1人は高年齢者となっている。このうち55〜59歳で8.0%、60〜64歳で4.1%、65〜69歳で1.6%となっている。これを企業規模別にみると、5〜29人で19.1%、30〜99人17.5%、100〜299人14.8%となっており、中小規模ほど高年齢労働者の割合は高い(第28表)。


 定年制度適用状況で「定年制あり」は85.8%、60歳以上定年は73.1%(60歳定年62.6%、61歳以上定年10.5%)に上昇
(1)  55歳以上の常用労働者の定年制度適用状況の割合をみると、「定年制あり」が85.8%。このうち「一律定年制」77.5%で定年年齢60歳以上が73.1%、うち60歳定年年齢は62.6%、61〜64歳定年年齢は2.7%、65歳定年年齢は7.6%で前回調査より上昇している。また、「定年制なし」14.1%となっている(第29表)。
(2)  55歳以上の常用労働者に占める勤務延長者、再雇用者の割合は18.0%となっている。各年齢階級ごとの割合は55〜59歳3.3%、60〜64歳39.0%、65〜69歳45.0%となっており、前回調査より55〜59歳で低下、60〜69歳で上昇している(第30表)。


 高年齢中途採用率は7.2%、年齢構成は55〜59歳で約5割
 55歳以上の常用労働者のうち過去1年間に中途採用した55歳以上の労働者の割合は7.2%となっている。中途採用者の年齢構成は55〜59歳49.4%、60〜64歳37.5%となっている。前回調査と比べると採用率は低下し、55〜59歳の割合が高まっている(第37表)。


 高年齢退職者の割合は上昇して11.3%、定年退職者、定年前退職者が増加
(1)  50歳以上の常用労働者のうち過去1年間に退職した者の割合は11.3%となっており、前回調査と比べ退職率は4.4ポイントと大幅に上昇した(第39表)。
(2)  退職形態別には、定年制のある事業所で退職した者の割合は89.7%で、うち「定年前退職者」の割合は33.5%、「定年退職者」は29.4%、「定年後退職者」は17.6%となつている。前回調査と比べると「定年退職者」「定年前退職者」が増加している(第39表)。
(3)  再就職斡旋の状況をみると、定年退職者の13.4%、定年前退職者8.3%となっている。定年退職者の斡旋先では「その他」49.1%、「子会社」20.0%、「関連会社」15.4%、「取引先」14.1%で、前回調査と比べて、関連のない「その他」の会社が大幅に増えている(第41表、第42表)。


 55歳以上の常用労働者を「増やす予定」の事業所割合低下
 今後2年くらいの間に55歳以上の常用労働者を「増やす予定」の事業所の割合は10.7%、「増やさない予定」の事業所は39.4%となっており、前回調査と比べ「増やす予定」が低下し、「増やさない予定」が大幅に上昇している。増やさない理由として「高年齢労働者に限らず、採用の予定がないから」が前回調査より増加している(第44表、第46表)。


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