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平成10年12月9日

厚生大臣   宮 下 創 平 殿
医療保険福祉審議会
老人保健福祉部会長   井形 昭弘

答  申  書

平成10年11月26日厚生省発老第108号をもって諮問のあった介護保険法施行令及び介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令(仮称)の制定については、概ねこれを了承する。
なお、主な個別の事項に関する本部会の考え方、及び審議過程で出された主な意見は次の通りである。

1 特定疾病について

特定疾病の種類については、医学の進歩等を踏まえ必要に応じ見直しを行うべきである。
なお、第2号被保険者に対する介護保険の給付については、今後、特定疾病に起因する要介護状態等に限定しないことを検討するべきであるとの意見があった。

2 介護認定審査会について

介護認定審査会の合議体委員については、介護に理解のある保健・医療・福祉の学識経験者が任命されるよう留意すべきである。


3 第1号保険料の算定に関する基準等について

(1)市町村民税の課税状況等を勘案して所得段階別の保険料を設定することは、課税状況に代わる適切な方法がないことや市町村における事務的負担等を考慮すればやむを得ないものと考えられるが、被保険者の負担能力をさらに公平に測るための方法について検討を進めることが必要である。
なお、これに関連して、被保険者の負担能力について資産を評価するべきとの意見、資産を活用して納付する仕組みを検討すべきとの意見があった。
(2)第2段階の区分として市町村民税世帯非課税の類型を設けることは、低所得者の負担能力に配慮する必要があること、当面他に適切な指標がないこと等を考慮すればやむを得ないものと考えられるが、制度実施後の世帯分離の状況や住民基本台帳の運用状況をみながら、今後引き続き検討を進めるべきである。
なお、生活保護被保護者等を第1段階の区分に位置付けることについて、生活保護被保護世帯とフローの所得がこれより厳しい世帯の生活実態に鑑みれば、適切ではないのではないかとの意見があった。
(3)低所得者等の負担能力に配慮して、市町村が必要と考える場合に保険料の設定方法を弾力化できる取扱いとすることは適当であると考えられるが、その運用に当たっては、できる限り老人保健福祉圏域など近隣の市町村で取扱いが異なることのないよう配慮するべきである。
(4)保険料基準額の算定に際して予定収納率で割り戻す取扱いは、保険料の未納分を他の被保険者に転嫁する不公平な取扱いではないかとの意見があったが、収納の不足を補填する財政安定化基金の財源が、国と都道府県、市町村の第1号保険料により運営されるため他の市町村にも影響する結果となること等を考慮すればやむを得ないものと考えられる。ただし、予定収納率の設定等に当たっては、安易な滞納を助長することのないよう運用に留意すべきである。
(5)保険料滞納者に対する保険給付の減額措置については、安易な滞納を防止する観点から20年間にわたり徴収権消滅期間を管理すべきとの意見があった。当該期間を管理する事務的な負担を考慮すれば、10年間の管理とする方式はやむを得ないものと考えられるが、今後、その運用状況をみながら、期間の延長について検討すべきである。なお、第2号被保険者の保険料滞納についても、第1号被保険者となった後に保険給付の減額措置を講じることを検討すべきである。
(6)各市町村に交付される調整交付金は、国の負担25%のうち5%を調整財源として交付される制度であるが、その財源を25%の外枠として必要額を確保すべきとの意見があった。
(7)施設の偏在により保険料が著しく高額となる場合があるため、在宅サービスとの均衡、施設整備のあり方等を含めて必要な対応を検討するべきである。

4 第1号保険料の特別徴収について

(1)第1号保険料の特別徴収を行わない年金額を18万円未満の額と設定することについては、徴収事務の効率化を図る観点からさらにこの額を下げるべきであるという意見と、老後の所得保障としての年金の趣旨等に鑑み慎重な対応を求める意見とがあり、当面18万円未満の額とすることはやむを得ないものと考えられる。この額の設定については、制度実施後の保険料の収納状況や高齢者の生活実態等を踏まえ、今後さらに検討を加える必要がある。
なお、18万円未満の年金を受けている者であっても、本人の承諾があれば特別徴収の対象とできる制度を検討すべきとの意見、特別徴収の対象となる年金の種類の範囲について、公平性を確保する観点から全ての年金を対象とすることを検討するよう求める意見があった。
(2)これに関連して、生活保護の被保護者からの第1号保険料の徴収についても、徴収事務の効率化を図る観点から、保護の実施機関から実質的に直接市町村に交付されるよう運用上、必要な措置を講ずる必要がある。

5 介護保険審査会について

介護保険審査会の公益代表委員については、公正な審査が行われるよう適正な委員構成に留意するべきである。

6 財政安定化基金について

都道府県に設置される財政安定化基金から資金を交付・貸付する場合に勘案する最低責任保険料収納率の設定については、保険者の実情に即した無理のない基準を設定するよう配慮することが必要である。なお、財政安定化基金の財源については、貸付分が第1号保険料に上乗せされることに鑑み、国及び都道府県の負担とするべきであるとの意見があった。


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