97/10/27 第76回人口問題審議会総会議事録 第76回人口問題審議会総会議事録 平成9年10月27日(月) 15時00分〜17時00分 共 用 第 9 会 議 室 宮澤会長 本日は、ご多用のところをご出席いただきまして、ありがとうござい     ます。ただ今より、第76回人口問題審議会総会を開会いたしたいと思い     ます。     まず、出席状況のご報告でございますが、井上、大石、大淵、岡沢、     木村治美、熊崎、河野洋太郎、坂元、坪井、南の各委員、網野、岡崎、     木村陽子、河野稠実専門委員、ご都合により欠席でございます。なお、     会長代理は財政審と重なっておりますため、若干遅れるてみえられる、     清家委員からも遅刻するというご連絡がございました。     では、本日の議題に入ります。前回の総会におきまして、少子化に関     する基本的考え方について、起草委員の案にいろいろご議論いただきま     した。委員の皆さまから出されました意見その他を踏まえまして、私と     会長代理で修正しました報告書 (案) を用意いたしました。この報告書     の案についてご議論をいただきまして、できれば本日の総会におきまし     て報告書を決定したいと考えております。よろしくお願いいたします。      それでは、修正内容につきまして事務局から説明をお願いいたします。 椋野室長 事務局からご説明をさせていただきます。      少子化に関する基本的考え方について (報告書案) でございますが、      今回は、前回ご審議いただいた委員の方がたの意見を追加したことは     もちろんでございますが、それ以外につきましては、編集上、文章上の     整理をいたしました。文章整理としましては、読みやすいように小見出     しをつけるというのが一つ大きなものでございます。あとは、繰り返し     が多うございましたので、繰り返しを避けて削ったり、よりわかりやす     い適当な場所へ移動させたり、表現ぶりを少しわかりやすく変えるとい     う整理をさせていただきました。基本的には、追加したものはものはご     ざいますが落としたものはないという形になっております。     では、ご説明に入らせていただきます。     まず、目次をごらんいただきたいと思います。念のため、全体構成を、     前回と変わっておりませんが、もう一度確認をさせていただきます。     「はじめに」で「少子化はわが国社会への警鐘である」ということを     問題意識としてとらえて審議を始めたというようなことを確認をいたし     まして、IIで「少子化の現状と将来の見通し」、人口減少社会の到来は     目前であるということ。持続的に出生数が減少し、人口減少社会が避け     られない、これをまず確認をいたしまして、IIIで「少子化の影響」を述     べております。IVで「少子化の要因とその背景」、こういう構成になっ     ております。      「少子化の影響」としましては、「経済面の影響」と「社会面の影     響」とに大きく二つに分けております。「社会面の影響」の中で、「家     族の変容」についてはあとで中身についてもう一度確認をさせていただ     きますが、これについては意見は分かれるものの、それ以外については     少子化の影響は概ねマイナス面の影響が多いという全体の評価をしてお     ります。      「少子化の要因とその背景」につきましては、まず、少子化の要因と     していちばん大きい「未婚率の上昇」、晩婚化の進行と生涯未婚率の上     昇ですが、これについて分析をしております。現状を述べ、未婚率上昇     の要因を「育児の負担感、仕事との両立の負担感」、二つ目「個人の結     婚観、価値観の変化」、三つ目「親から自立して結婚生活を営むことへ     のためらい」、四つ目「その他」と分析をし、次に「夫婦の平均出生児     数と理想子ども数との開き」について述べております。育児の負担感、     仕事との両立の負担感のほか、「夫婦の平均出生児数と平均理想子ども     数との開きの要因」を「直接的費用、機会費用の増加」「子どものより     よい生活への願望」「その他」の三つに分けて分析をしております。      さらに要因の背景まで入りまして「背景」として、「社会の成熟化に     伴う個人の多様な生き方のあらわれ」「女性の社会進出とそれを阻む固     定的な男女の役割分業意識と雇用慣行、それを支える企業風土の存在」     「快適な生活のもとでの自立に対するためらい」「現在そして将来の社     会に対する不安感」、背景をこの四つに・分けて分析をしております。      そしてVで「少子化がもたらす人口減少社会への対応のあり方」に入     っております。人口減少社会の対応のあり方は、「少子化の影響への対     応」と「少子化の要因への対応」に大きく二つに分かれております。     「少子化の影響への対応」としましては、「経済面の影響への対応」と     「社会面の影響への対応」にここでも二つに分けております。「経済面     の影響への対応」としては、「就労意欲をもつあらゆる方が就業できる     雇用環境の整備」、2番目「企業の活力・競争力、個人の活力の維持」、     3番目「公平かつ安定的な社会保障制度の確立」、この三つを挙げてお     ります。さらに「社会面の影響への対応」へ入って、「地方行政体制の     整備、地域の活性化」「子どもの独創性と社会性を養う教育と健全育     成」と述べてきております。      それから「少子化の要因への対応」と大きく入りまして、まず初めに     「少子化の要因への対応の是非」を整理しております。「少子化の要因     への対応はすべきでないとする考え方」を述べ、その考え方についての     意見を書いて、結論的には「個人の望む結婚や出産を阻む要因を取り除     く対応をはかるべき」ということが審議会の考え方ということで整理を     されております。これは後ほど、本文でもう一度ご確認をいただきます。      申し訳ありませんが、そこの(3)「子どもを育てるについての社会的責     任」となっておりますが、「子どもを育てることについての社会的責     任」でございます。      それから「要因への対応をはかるべき」という整理をしたうえで「少     子化の要因への対応のあり方」、具体的内容に入っております。      まず「固定的な男女の役割分業や仕事優先の固定的な雇用慣行の是     正」、二つ目として「子育てを支援するための諸施策の総合的、かつ効     果的な推進」、三つ目として「今後さらに議論が深められるべき課題」。      最後に「おわりに」として、人口減少社会への展望を「ゆとりと潤い     のある社会」に、ということで示しております。      本文で、もう一度詳しくご説明をさせていただきます。全体構成は、     今述べたような形になっております。前回と変わっておりません。      1ページ、「はじめに」から、もう一度、簡単に確認をさせていただ     きます。      「人口減少社会の到来」こういう小見出しを、今回つけさせていただ     きました。ここは前回と変わっておりませんが、もう一度確認をさせて     いただきますと、「低い出生率のもとで子どもの数が減るという少子化     が進行する中で」、少子化が進行するということは、低い出生率のもと     で子どもの数が減るというような説明をしております。それから、この     少子化によって「生産年齢人口が減少し、次いで総人口までが減少し続     ける社会」として「人口減少社会」をとらえております。      この「少子化の進行と平均寿命の伸長とが相まって急速に人口の高齢     化が進んでおり、わが国は未だ人類が経験したことのない少子・高齢社     会」、「少子・高齢社会」という言葉は、「若年者と高齢者の人口構成     割合が従来とは極端に異なった社会」という説明をしております。定義     めいたところを、もう一度確認をさせていただきました。      こういう人口減少社会が到来することを前提に「将来展望を明らかに     することは、未来の世代へのわれわれの責務」であるととらえ、こうい     う問題意識から、これまでの審議の経過ですが、本年2月以降、有識者     ヒアリングですとか、少子社会を考える市民・道府県民会議への参加等     を行い、それらを踏まえつつ、ここで基本的考え方をとりまとめた、説     明にはそういう流れになっております。      2ページ、「少子化の現状と将来の見通し」、ひと言でいいますと      「人口減少社会の到来は目前である」ということをここで確認をしてお     ります。      「持続的な出生数の減少」の部分については、二つ目の段落の「同時     に」というところで少し詳しく数字を書き込んだのが、前回と異なって     いるところでございます。高齢化の進行についてもやや詳しく、「諸外     国に比較して類をみない速度で高齢化が進行している」というデータ的     なものを若干書き込んでおります。      こういう出生数の減少のもとで人口減少社会が避けられないというこ     とが、2で推計をいろいろ引いております。ここでも、いちばん下の行     で「2025年には27%、2050年には32%に達する」というデータ的なもの     を若干補足をしております。     3ページに入りまして、人口減少社会は避けられないということを議     論の前提として「少子化の影響、少子化の要因とその背景、少子化がも     たらす人口減少社会への対応のあり方等について考え方を整理した」と     いう確認をしております。      それから 3の「少子化の影響」に入っております。そして「経済面の     影響」は、大きく分けますと「労働力人口の減少と経済成長への影響」、     二つ目として「国民の生活水準への影響」でございます。      「国民の生活水準への影響」の(1)のいちばん下の「また」のところで、     財政赤字の記述が、意味をわかりやすくという点で若干変わっておりま     す。      5ページで2.「社会面の影響」で「家族の変容」については、前回、     最後の「子どものいない世帯の増加は、家系の断絶などを招き、先祖に     対する意識も薄れていくという可能性もある」というところで、だいぶ     ご議論がございました。ここは、これをマイナスととらえているような     書きぶりになっていて、後ろのほうの表現と矛盾しているのではないか     というご議論で、削除しては、というご意見もございましたが、そのあ     と木村委員から、ぜひ残してほしいというご意見をいただきまして、こ     れは5ページの下のほう「概ねマイナス面の影響」のところに、「この     ように少子化の影響としては、家族の変容などに関しては意見が分かれ     るものの」と、これは前回からも書いておりましたが、家族は変容は必     ずしもマイナスととらえていないということできちんとここに書いてお     りますので、そういう意味で、最終的には「子どものいない世帯の増加     は」というくだりは、こうした形で案がまとめられております。残って     おりますが、マイナスとしてとらえているわけではないということで、     下のほうでは「意見が分かれるところだ」と確認をしております。      今の「家族の変容」、それ以外の「子どもへの影響」「地域社会の変     容」も含めて、概ねマイナス面の影響と考える指摘が多い。      次にプラス面の指摘も書いて、「いずれにせよ、少子化が社会全体の     さまざまな局面においてはかりしれない大きな影響を与えることは間違     いない」、影響の最終的な評価はこういう形でまとめております。      そして、次に少子化の要因の分析に入っております。ここでは、     (1)未婚率の上昇の「出生率への影響」のところで「女性の妊よう性     (妊娠しやすさ)は、年齢が高くなれば低下がみられる」という部分で     すが、これは前回、「35歳前後を境として低下」という書きぶりにして     おりましたが、35歳前後を境として低下するかどうか、データ等、いろ     いろあるようでございまして、もう少し一般的な表現ぶりに直しており     ます。     7ページ、「未婚率上昇の要因」上のフレーズは、後ろの部分にあっ     たのをここにもってきたものでございます。前からあったところでござ     いますが、結婚に対する見方は肯定的であるにもかかわらず未婚率が上     昇している、それはなぜかという分析に入ったほうがわかりやすいとい     うことで、ここに移動しております。表現ぶりについては、前回と変わ     っているものではございません。場所が移動したものでございます。      1.「育児の負担感、仕事との両立の負担感」のア)「固定的な雇用慣     行と企業風土によるもの」の3行目あたり、「固定的な雇用慣行とそれ     を支える企業・行政機運等の組織の風土」と、企業だけではなく行政機     関も含めて一般的に組織の風土でありますので、ただ組織風土という言     葉がなじみにくいので、(以下「企業風土」という)ということで、以     下、企業風土という言葉を使っておりますが、企業だけをさしているの     ではなく、行政機関も含めた組織の風土であるというこを、ここで定義     づけております。      固定的な育児の負担感、仕事との両立の負担感を、今の固定的な雇用     慣行、企業風土、固定的な男女の役割分業、従来はア)とイ)を書いて     いきまして、考え方としては育児の負担感、仕事との両立の負担感があ     るということでまとめていましたが、具体的なウ)以降の育児の負担感     の細かい分析については、そのあとの夫婦の平均出生児数と平均理想子     ども数との開きのところに述べておりました。けれども、最初に育児の     負担感、仕事との両立の負担感を述べているところに出したほうがわか     りやすいのではないかということで、場所を移動させております。内容     的には変化はございません。      育児の負担感としては、雇用慣行、企業風土、男女の役割分業のほか、     「母親の孤立やそれに伴う孤独感や不安感」「長時間通勤等の勤務形態     によるもの」「利用しやすい育児サービスがないこと」「結婚や子育て     にかかる機会費用の上昇」、ウ)からカ)までは、後ろのほうのものを     前にもってきたものでございます。オ)の「利用しやすい育児サービス     がないこと」、前回の起草委員案ではもう少し細かく個別に、乳児保育     とか学童保育とかサービス名を出しておりましたが、検討課題のほうに     個別サービスを挙げておりますので、ここでは、利用しやすい育児サー     ビスがないことが原因だということで、まとめた書きぶりにしておりま     す。      次に、「個人の結婚観、価値観の変化」によるもの。未婚率の上昇の     原因、個人の結婚観、価値観の変化によるものとして「女性の経済力の     向上によるもの」。前回、熊崎委員から、経済力だけではない、という     ご意見もありましたが、ここには「また、女性が仕事に生きがいを感じ     るようになってきたこと」という意識の面も、これも前回から入ってお     りますので、そのままにしております。      イ)「性の自由化、家事サービスの外部化によるもの」、ウ)「子ど     もをもつ意義の変化によるもの」、エ)「世間のこだわりの減少よるも     の」、結婚しろというような世間のこだわりがなくなったということ、     オ)「独身の自由への欲求によるもの」、価値観、結婚観の変化は、以     上、五つに分析をしております。      三つ目として、「親から自立して結婚生活を営むことへのためらい」。      独身の理由をみると、「適当な相手とめぐり合わない」と男女ともい     っているわけですが、その要素の一つとして、その下にあるような状況     も要因として考えられるのではないかということで、親との同居のもと     での快適な生活、結婚前の生活水準を維持しようとすることが、ためら     いにつながっているのではないかとしております。      最後に4として「女性主導の確実な避妊法が普及していない」と「過     疎農山村部における男性の結婚難」が書いてあります。女性主導の確実     な避妊法が普及していないことについて「自己決定権が保障されていな     い」という書きぶりが一般的にわかりにくいということがございました     ので、わかりやすく表現ぶりを改めております。      次に「夫婦の平均出生児数と平均理想子ども数の現状」ということで     ございます。実態として、平均出生児数と平均理想子ども数が 2.2人と     2.6人の開きがあるということを述べ、その要因分析が挙がっております。      要因分析のところ、先ほども申しあげましたように、育児に対する負     担感、家事・育児と仕事との両立に対する負担感は、従来ここに書いて     いたものは「未婚率上昇」のほうに移動させておりますので、(2)の3行     目くらいから「1)(2)に述べたような〜が挙げられるが、併せて次のよう     なこそにかかる経済的負担などが挙げられる」と、ここでは記述を省略     しております。      そして「子育てに関する直接的費用と機会費用の増加」で、直接的費     用だけを前回は述べておりましたが、機会費用の増加が大きいというこ     とで、機会費用の記述も追加をしております。      2.「子どものよりよい生活への願望」。      3.「その他」で前回、ご意見をいただきまして、「過激な競争による     ストレスの増大や性の自由化に伴いリビドーが低下し、これが要因とな     っているのではないか」というのは、やや疑問視するご意見もありまし     たので、なお書きの形にして残しております。      前回、同棲や婚外子に対する社会的許容度が低いことが婚外出産を少     なくさせているのではないかという分析をここに入れておりましたが、     ここは夫婦の理想の子ども数と実際の子ども数の開きの原因分析のとこ     ろですので、婚外出産の話を要因として挙げるのはその中では必ずしも     適当ではないのではないかということで、ここからは削除しております     が、「少子化要因への対応」のほうでは記述しております。その分析を     落としたということではなく、ここは適当でなかったので、対応のほう     には残しております。      以上、両立のことをかなり詳しく分析をしているのだけれども、現状     では継続就労型の女性は必ずしも多数派ではないことも留意する必要が     ある、ということをここで確認をして、これもまた対応したものが「少     子化要因への対応」のほうにも出てきますが、現状としてはそれを確認     しております。      「要因の背景」でございますが、「わが国社会全体の状況に関連」し     ているということを押さえまして四つに分けております。「社会の成熟     化に伴う個人の多様な生き方のあらわれ」、二つ目として「女性の社会     進出とそれを阻む固定的な男女の役割分業意識、雇用慣行、それを支え     る企業風土の存在」。      この 2の二つ目の段落で「またこのことは」のくだりでございますが、     終身雇用は必ずしも女性には適用されてこなかった、という熊崎委員の     ご意見が前回ございましたので、ここで「これまでの転職、再就職を困     難、不利にし、女性を短期間就労者とみなす男性中心型の終身雇用」と、     女性の社会進出と雇用慣行等の関係のくだりでそういう説明を入れさせ     ていただきました。      3)「快適な生活のもとでの自立に対するためらい」で、「成人しても     親離れできない状況」があるのではないかという指摘の中で、「見合い     結婚が少なくなってきたにもかかわらず、男女が互いに愛し、尊重し合     いながら交際をを深めるという意識や風土が醸成されていないという指     摘もある」。前回の阿藤委員のご指摘を踏まえて、ここに新たに加えま     した。      この状況については「従来の生き方をゆるがすものとする見方」と      「結婚に対する自由度の高まりのあらわれとする見方」と両方ある。こ     れは、前回からこういう整理をておりました。      四つ目「現在、そして将来の社会に対する不安感」も背景にあるので     はないか。これは前回と変わっておりません。      以上、要因及びその背景を分析して「少子化がもたらす人口減少社会     への対応のあり方」ですが、まず「21世紀半ばには相当深刻な状況」で     あるということをここで確認しております。「2025年時点における社会     の見通しは、現在取り組んでいる各般の構造改革を相当思い切って実行     したとしても、予測としては楽観視できるものではない。ましてや、そ     の後、さらに少子化と高齢化が進行すると見込まれている21世紀半ばに     は、相当深刻な状況となることが予想される」、こういう深刻な状況と     なることを確認し、人口減少社会への対応が急がれるということで、影     響への対応に入っていっております。      ここについては、影響への対応は前回と変わっておりませんが、「経     済面の影響への対応」として、まず「就労意欲をもつあらゆる者が就労     できる雇用環境の整備」、そして「高齢者、障害者、女性の就業環境の     整備」をする。そういった詰めとてし、特に「年齢や性別による垣根を     取り払う雇用環境の整備」が重要であること。それから、これも前回か     らありましたが、「女性の就業環境の整備に際しては、女性の就業が一     層の出生率の低下につながることのないよう、仕事と育児の両立を可能     とする支援策の充実をはかることが特に重要である」。少子化の影響対     応で女性の就業を促進することがさらに出生率低下につながらないよう     にすることが重要、というくだりをここに入れております。      三つ目「終身雇用・年功序列賃金体系のもとでの固定的な雇用慣行の     見直し」、四つ目「労働力需給の不適合の解消」、この四つで、就労意     欲をもつあらゆる方が就業できる雇用環境の整備。      (2)として「企業の活力、競争力、個人の活力の維持」。      その中身で、「高付加価値型の新規産業分野の創出」、二つ目「国際     的に魅力のある事業環境を創出」、三つ目で「一定範囲内での公的負担、     少子・高齢社会にふさわしい財政構造」、ここで「公的負担を一定の範     囲内にとどめ」というところを「私的負担とのバランスをはかる必要が     ある」という説も若干加えております。      (3)の「公平かつ安定的な社会保障制度の確立」ですが、「現役世代と     将来世代の給付と負担の公平と将来への不安の解消」、2 番目として高     齢期の負担が重くならないような「疾病や要介護状態の防止と、高齢期     における社会参加」、このいちばん下の行の「地域におけるボランティ     ア活動など、高齢期においても多様な社会参加を推進することも重要で     ある」、この部分がつけ加わっております。      2)「社会面の影響への対応」の(1)の1「地方行政体制の整備」ですが、     地方が責任をもって円滑に住民サービスを提供するという観点から「地     方が責任をもって」というくだりが追加になっております。      (2)も、教育の問題で変わっておりません。      15ページの下のほう、「関係審議会等における検討」というのは、こ     れは場所がここに移動しただけで、前回のものにも入っていたくだりで     ございます。内容も、頭にあったものを最後にもってきております。      16ページ、2「少子化の要因への対応」ですが、1)「少子化の要因へ     の対応の是非」というのは、全体的に書きぶりを整理してわかりやすく     いたしました。      まず「少子化の要因への対応はすべきでない」とする具体的考え方を     三つ、ア)、イ)、ウ)と整理をしまして、ア)の個人の問題とする考     え方についての意見を整理して、これは「大部分の者が結婚を望み、結     婚すれば理想子ども数を平均 2.6人としている現状のもとにおいて、基     本的には『個人が結婚し、子どもをもつことを望んでいるにもかかわら     ず、これを妨げている要因を除去すること』の必要性までを否定するも     のではないと考える」ということで、ア) の考えは、妨げている要因を     除去することの必要性まで否定するものではないという整理をしており     ます。      それから、地球人口との関係からのイ) についての考え方、それから     対応の効果との関係からの考え方についてのウ) の考え方についての意     見を整理しております。      3の「地球人口との関係からの考え方についての意見」を若干わかり     やすく書きぶりを改めておりますが、内容的には変化をしておりません。      17ページに、少子化の要因への対応をすべきとの考え方を確認してお     ります。「このような観点から、少子化の影響への対応とともに、少子     化の要因への対応についても行っていくべきである、というのが当審議     会の基本的な考え方である」として、ここで審議会の少子化の要因への     対応についての基本的な考え方を確認しております。その理由としては     「21世紀半ばまでを視野に入れると、人口減少社会の姿は相当な深刻な     状況になることが予想される」ことが一つ。それから「個人が望む結婚     や出産を妨げる要因を取り除くことができれば、それは個人にとっては     当然望ましいし、その結果、著しい人口減少社会になることを避けるこ     とが期待されるということで、社会にとっても望ましい」、この二つの     観点から、少子化の要因の対応についても行っていくべき、というのが     当審議会の基本的な考え方であることを確認をする。      ただしその下に「この場合、戦前・戦中の人口増加政策を意図するも     のでは毛頭なく、個人の自己決定を制約したり、生き方の多様性を損ね     るような対応はとられるべきではない」、これも基本的な前提としてお     ります。      この点が審議会の基本的な考え方であり、基本的な前提として確認を     しているくだりですので、前回と変わっておりませんが、念のため、確     認をさせていただきました。      (3)「子どもを育てることについての社会的責任」ですが、これについ     ても前回、だいぶご議論がありまして、「この考え方については、子育     ては親の責任であるという基本をゆるがせにすることにつながるという     意見もある」という木村委員の意見をここに追加をして、こういう書き     ぶりにさせていただきました。      (4)「少子化の要因への対応にあたっての留意事項」は、特に変わって     おりません。      (5)「外国人の受け入れとの関係」についても、特に変わっておりませ     ん。      以上で是非論を終えて、「少子化の要因への対応のあり方」でござい     ます。少子化の要因への対応のあり方としては、結婚や出産の妨げとな     っている要因へ対応するということで、(1)は、タイトルが前回の案では     「ゆとりと潤いのある心豊かな社会の構築」でしたが、それを「固定的     な男女の役割分業や仕事優先の固定的な雇用慣行の是正」と、内容がよ     りわかるようにいたしました。      「ゆとりと潤いのある心豊かな社会への構築」について触れた部分は     非常に大きな話ですので、これは落としたわけではなく「おわりに」の     ほうに移行をいたしまして、従来(1)に書かれていたもう少し具体的な      「固定的な男女の役割分業や仕事優先の固定的雇用慣行の是正につい     て」を残して、タイトルもそういう形に変更しております。こういう是     正をするうえで「意識・慣行・制度の是正」。これについては前回と変     わっておりませんが、ずいぶんご議論があった「生き方の選択自体は個     人の自由であって、直接管理すべきではなく、その選択によって、租税     負担や社会保険料負担に不平等が生ずることのないよう、,中立的な制     度に改めることにとどめるべき」との意見がある。「制度の是正にとど     めるべき」との意見がある。しかしそういう個人の生き方の選択は自由     だけれども、そういう生き方が慣行となって「それとは違う生き方を選     択しようとする方の妨げになっている以上、それはもはや単に個人の言     い方だけの問題として片づけるわけにはいかない。また、これらの実態     や慣行は〜制度の是正のみですみやかにその変革をはかることは現実的     には困難である」ということで、意識や慣行にまで踏み込むという整理     になっております。      したがって「制度はもちろんであるが、それを支えている国民の意識     や企業風土そのものを問い直し、個人の生活と仕事の両立をだれもが尊     重し合い、仕事の仕方も工夫するという方向での取り組みを行うことも     必要と考える」。意識、企業風土そのものを問い直す、というところま     で踏み込むという整理になっておりますが、ここは前回と変わっている     わけではございません。      「今後検討すべき課題」として、ここは少し強めております。前回は     「今後検討が必要なものとして指摘されている」という書きぶりでした     が、「以下のものが挙げられる」といって、審議会として以下のものを     検討課題として考えているということで、少し強めた表現になっており     ます。内容的には、トーンは強まっておりますが、挙げていることは変     わっておりません。      2「子育てを支援するための諸施策の総合的かつ効果的な推進」、子     育て支援の部分でございますが、エンゼルプランにつきまして、前回の     案では重点施策の項目を七つ並べておりましたが、重点施策というより、     まず基本的方向を確認するほうが重要ではないかということで「基本的     方向」を入れました。項目だけではなくて、その中身についてもア)か     らオ)まで、エンゼルプランの基本的方向をここに述べております。こ     れはエンゼルプランからもってきたものでございます。      そして、少子化の要因への対応という観点から子育て支援を推進する     場合の留意事項として、20ページの2に整理をしております。「子育て     にかかる機会費用の上昇への対応」、つまり仕事と育児の両立のために、     雇用環境を改善するすると同時に、多様な保育サービスを確保すること     が特に重要。ア) でそれを確認をいたしまして、イ) で、要因分析のと     ころで「現在、継続就業は必ずしも多数派ではないという現状に留意す     る必要がある」というくだりがあったわけですが、それに対応したもの     として「したがって、両立の支援方策を講じても、その効果は一部にお     ける限定的なものとなるのでなはいか、との指摘がある」。これについ     ては、それを望ましいと考える女性の割合は着実に増加しており、仮に     条件が整っていれば、またさらに増加するといった結果がみられる。そ     れから少子化の影響への対応として、女性の就労の拡大が時代の要請と     なることを考え併せると、両立のための支援方策は着実に推進していか     なければならない、ということで、現状では両立は必ずしも多数派では     ないけれども「両立のための支援方策は着実に推進していかなければな     らない」ということを確認しております。      ウ) として、核家族化、都市化で不安が高まって、子育ての精神的負     担、肉体的負担が強まっていることから、その軽減。      エ) としまして「子育てのための経済的負担軽減措置」。ここについ     て書きぶりをわかりやすく解説していただきました。「子育てに伴う養     育費や教育費などの経済的負担の大きさが、理想の子ども数をもたない     理由の一つとなっていることから、子育てを社会全体として支援するこ     とともに、子どもをもつ世帯ともたない世帯とのあいだの公平性をはか     るという観点から、児童手当の充実や租税負担の軽減など、子育て世代     の経済的負担軽減措置について検討する必要がある、という意見がある。      一方、出生率回復への効果という面では、経済的負担軽減措置よりも、     仕事と育児を両立させるための支援方策のほうがはるかに有効であると     いう意見もある。      これらの意見については、それぞれの方策のもつ意義、現実的な可能     性や効果を総合的、多面的に考慮し、検討する必要性があろう」と、書     きぶりが変わりましたので、読み上げさせていただきました。      オ) として「子育てのもつ楽しみや喜びの再確認」でございますが、     前回、麻生委員から、生涯学習について人口教育的なことをする機会に     やっては、という内容を入れてはというご意見をいただきましたので、     オ) の下のくだり「そのためには、男女ともに生涯学習など、さまざま     な機会を通じて、子どもを育て、家庭を営む喜びや意義を理解させ、学     ばせることも有益であろう」というくだりをつけ加えさせていただきま     した。      カ) 「乳幼児教育における女性の就労支援方策」は、前回から変わっ     ておりません。子どもの健全な発達という観点からいかがかということ     について意見の整理をして、子どもの福祉に最低限の配慮が払われるべ     きことは当然だけれども、乳幼児教育における女性の就労支援方策を講     ずることは否定されるべきものではない、という確認をしております。      22ページ、3.「今後検討すべき課題」として、ア) 、イ) と入れてお     ります。ここも、前回は指摘されているという書きぶりでしたが、今回     は「検討が必要な課題として以下のものが挙げられる」ということで、     審議会として挙げているというトーンが強まっております。      内容的にはここでは、ア) の「雇用環境の改善にかかわるもの」の中     に「職場における保育サービス等への支援の充実」、事業所内保育所を     初めとして、職場における保育サービス等への支援の充実というのが加     わっております。      イ) の「子育て支援にかかわるもの」の個別項目の中では、教育関係     で、下から三つ目の・「家庭教育に関する相談・情報提供体制の整備     等」というのが加わっております。それから「年金制度における対応の     あり方」というのも加わっております。      「なお、以上の課題を検討するにあたっては、現行施策も含め、効果     についての分析、見直しを行い、より効果的な推進をはかる必要があ     る」とまとめ、「また、雇用環境の改善に関しては、その結果、企業が     仕事と育児の両立を望む者の採用そのものを手控えることにつながらな     いようにする、という視点が重要である」、これも前回から同じでござ     いますが、確認しております。      さらに23ページ、 3として「今後、さらに議論が深められるべき課     題」として二つ、「不妊が原因で子どもができない男女への対応等」と     「多様な形態の家族のあり方」で、多様な形態の家族のあり方の選択的     夫婦別姓について、これも前回、木村委員の反対の意見がございました     ので、これを4行目「この点に関しては、選択的夫婦別姓はわが国社会     の根幹にかわるものであり、慎重に考えるべき、との意見もある」とい     うことで追加をさせていただきました。      ここで、選択的夫婦別姓だけではなく通称使用の拡大というのも、多     様な形態の家族のあり方として例示に加えております。     少子化の要因への対応は以上で、「おわりに」でございます。      まずもう一度「少子化は現在及び未来のわが国社会全体の状況に深く     関連」しているということを確認をし、したがって「未来に希望を感じ     る社会の展望の必要性」がある。未来に希望を感じることのできる社会     の展望を示さねばならないとして、それから「少子化への対応」としま     しては、「少子化の影響への対応」と「少子化の要因への対応」。特に     「少子化の要因への政策的対応は、労働、福祉、保健、医療、社会保険、     教育、住宅、税制その他多岐にわたるが、中核となるのは固定的男女の     役割分業や雇用慣行の是正と、育児と仕事の両立に向けた子育て支援で     ある。これらを着実に推進しつつ、それを基点としてその他の関連施策     全般に展開していくことが求められている」ということで、前回の案で     は中核の部分に非常に焦点があたっていましたので、もう少し全般にか     かわることを展開しなければいけないというトーンをここで入れており     ます。     少子化の影響への対応、少子化の要因への対応、両面の観点からは、     「性別や年齢による垣根を取り払う新たな雇用環境の創出が重要である。     これは人口減少社会への両面の観点から対応の基本である」ということ     を確認をし、その次の「新しい家族像を基本に据えた新しい地域社会、     企業風土」、これは前からありましたが、真ん中のあたりに書いてあっ     たものを、「おわりに」に移動してきたものでございます。     そのくだりの「男女が互いに尊敬し合って、喜びや愛情がはぐくみあ     えるような社会」、ここは阿藤委員の前回のご意見を入れたものでござ     います。そして「男女がともに育児に責任をもつとともに、その喜びを     わかちあえるような新しい家族像を基本に据えて、家庭における子育て     の孤立感や不安を」、この「新しい家族像を基本に据えて」ということ     で、前回は真ん中のあたりにありましたが、これを移動した。前回、木     村委員から、家族の責任、子育ては家族がやるというところが基本であ     るというトーンが非常に薄いというご意見がございましたので、それを     終わりにもってきて強調した形になっております。     それが基本で、そういう「家庭における子育ての孤立感や不安を受け     とめることができるような新しい地域社会、仕事と家事・育児、さらに     介護等、両立しつつ、その意欲や能力が生かされるような新しい企業風     土を形成しなければならない」と整理しております。「それは、次世代     育成への社会的な連帯をはかるという形で、わが国社会の新たな枠組み     の構築を目指す」。     こうして新たな社会を目指し、その結果できたものは「ゆとりと潤い     の感じられる社会」というくだりにいきます。「人口減少社会に対応し     た新たな効率性が発揮される社会である」。それから「結婚や子育てに     希望がもて、子育てのもつ本来的な楽しみや喜びを夫婦ともに実感でき     るゆとりと潤いの感じられる社会である」、ということで、未来に希望     のもてる安心できる社会であるというふうにつなげております。     ここでも書きぶりは、「未来に希望のもてる安心できる社会」へのい     ちばん下の「また、外国人の受け入れについては」というのは、前のと     ころにありましたが、全体に共通する問題ですので「おわりに」に移動     しましたが、外国人問題については前回と書きぶりとしては変わってお     りません。     最後に、本報告書の性格としまして、「本報告書は、少子化がもたら     す人口減少社会への対応のあり方等について、さまざまな論点や考え方     を整理したものである。     もとより、少子化、そして人口減少社会をどう考え、将来のわが国社     会はどのようにあるべきと考えるかは、『はじめに』においても述べた     ように、最終的には国民の責任であると同時に国民の選択である。      今後、本報告書を少子化、そして人口減少社会に関する国民的な議論     の出発点として、国民のあらゆる階層や関係各方面において大いに議論     がなされ、きたるべき人口減少社会への対応に関する国民的合意が形成     され、今後のわが国が目指すべき社会に向けて、政府、地方自治体を初     め、企業、地域社会、そして家族、個人、それぞれの幅広い国民的な取     り組みが進むことを望むものである」。本報告書の性格としては、若干     書きぶりは変わっておりますが、最後にそういうことで確認をしており     ます。     報告書については以上で終わらせていただきますが、あと、少子化に     関する基本的考え方についての参考資料 (案) という厚いものがお手元     にあるかと思いますが、データ集でございます。これは、今までお示し     したものと基本的に変わっておりませんが、追加した部分だけ、ごく簡     単に説明をさせていただきます。      7ページに先進諸国の65歳以上人口割合別の到達年次。本文でこの記     述が入った関係で、7%から14%に達するまでに各国はどれぐらいの年     数がかかったか。日本が24年、スウェーデンが82年、フランスが 114年     というようなデータを入れております。      52ページで、女性の継続就業ですとか非就業との関連で、夫の所得階     級別妻の就業状況のデータを加えました。これは実は昭和62年のデータ     で、10年ほど前の古いデータなのですが、この観点でのデータがこれ以     降、とられていないということですので、古いデータですが、参考にな     ると思いましたので入れさせていただきました。      太い線が妻が就業で、細い線が妻が非就業、つまり専業主婦という場     合で、 300万円代と 400万円代のあいだで交差して、 400万円を超える     と妻の非就業が増える。雇用者である夫の所得階級が 400万円をすぎた     あたりから、妻の非就業と就業が逆転して、妻の非就業、専業主婦のほ     うが多いというデータでございます。ご参考までに。      53ページに関連で、女性がおしゃもじ権をもっていることが専業主婦     の志向につながっているのではないかというご議論がありましたので、     その関係のデータでございます。家計管理のタイプで、片働き、つまり     妻が非就業の場合は、74.3%の家庭で妻が家計を管理している。共働き     の場合も、52.2%が一体で妻が家計を管理している、というデータでご     ざいます。      60ページは、前回、河野委員からご指摘のあった女子の労働力率と出     生率の国際比較のグラフを加えました。一般に、女子の労働力率の高い     国では合計特殊出生率も比較的高くなっているというグラフでございま     す。      64ページに、年齢によって就業形態が変わってくるという関連で追加     のデータを入れております。年齢階級別週間就業時間の状況で、真ん中     のグラフは、左が男性、右が女性です。60歳代以降、男性の場合、週当     たり35時間以上就業する者の割合が低下して、短時間就労者の割合が増     加している。女性の場合は右側で、30代後半から40代前半にかけていっ     たん短時間就業者の割合が増加して、また下がって、60代からまた上が     り始める。女性の場合は、真ん中が短時間就業が上がっているM字型雇     用といわれるものの中身をもう少しみたデータでございます。      これは実態ですが、意識としてどうしようと思っているか、希望を聞     いても同じようなデータになっています。下のデータでございますが、     希望する勤務形態を挙げると、特に男子において年齢の上昇とともに普     通勤務を希望する割合が減少し、短時間勤務などを希望する割合が上昇     しております。      データで補足をさせていただきましたのは以上でございますが、これ     も、人口問題審議会の名前で参考資料として出させていただきたいと思     っております。      もう一つ、少子化をめぐる意見集(案)、これは前回、お渡ししたも     のと同じものを今回も出させていただいております。特段のご意見がご     ざいませんでしたので、これも審議のうえで参考にしたいろいろな意見     という意味で、この3点セットに人口問題審議会の名前でまとめさせて     いただければと思って、ご確認させていただきました。      以上でございます。 宮澤会長 ありがとうございました。ただ今お話がごさいましたように、修正を     いたしました。全体的な調整と、追加された案件。また、皆さまの意見     の対立しておるところにつきましては、できるだけ公平性を期して、対     立意見があるので相打ちで落とすということはしない、という方針で進     みました。またご注意がございましたように、できるだけ客観性を保つ     ようにということを心がけたつもりでございます。では、よろしくご議     論をお願い申しあげます。 河野栄子委員 大変ささやかなテニオハなのですが、21ページのオ) の最終行      「子どもを育て家庭を営む意義を理解させ、学ばせることも有益であろ     う」という、全体のトーンからするとここだけがちょっと強要的でして、     できれば「意義を理解したり学ぶことも有益であろう」というほうが、     統一感もあると思いますが、いかがでございましょう。 宮澤会長 ここは、そのように修正いたしてよろしゅうございましょうか……。     ありがとうございました。では、ここはそう修正いたしましょう。        「意義を理解したり学ぶことも有益であろう」。      ほかにございますでしょうか。不備があるところがございましたら、     どうぞ。 金子専門委員 細かいところなのですが、23ページの 3の2.「多様な形態の家族     のあり方」というところですが、夫婦別姓と同棲などで婚姻率を引き上     げるということが書いてありますが、婚姻率と、ここだけ「婚姻」とい     う言葉を使われているのですが、これは短期的には同棲を認めれば結婚     届は出さなくなりますから、婚姻率は低くなる。長期的にみれば、でき     ちゃった婚みたいなのがございまして、子どもができてから婚姻届を出     すということもございますので、長期的にみれば上がるかもしれません     が、これだけではその辺がうまく伝わらないのではないかと思います。 宮澤会長 「婚姻率」という言葉はここだけでしょうかね、ほかには使っていな     いのですかな。 椋野室長 はい。 宮澤会長 何か修正の具体的なご提案はございますでしょうか。 金子専門委員 そこまでまだ考えていませんけど。 岩渕委員 21ページで、エ) 子育てのための経済的負担軽減措置、この真ん中辺     で「一方」という接続詞を使っていますが、もともとこれは上も下もあ     たりまえの話で、両方とも必要なことはいうまでもないので、この「一     方」を「さらに」とか、対立的な概念としてとらえるのは賛成しかねる     気がいたします。 小林委員 国の運命にかかわるような非常に重大な問題をわれわれはディスカッ     ションしてきたのですが、そういうことを勉強する学問の体系がないの     ではないと思うのです。たとえば小児科の先生は小児科の先生なりにい     ろいろなことを考えているし、心理の先生もいろいろなことを考えてお     られますし、社会学の先生も考えていますが、それぞれはそれぞれの場     だけでディスカッションされて、こういう特別な場になりますとお互い     の意見が出て非常に勉強になるし、私も大変勉強させていただきました     が、何か新しい学問の体系とかそういうものを研究する施設とか、そう     いうものをつくらないといけないのではないかなという気がするのです。      答申の中に、これは文部省のことかもしまれんせが、国としてそうい     うことを真剣に取り上げるようなインスティチューションなり、たとえ     ば大学の講座などでもそういうものを増やすとか、そういう考え方があ     ってもいいのではないかと思うのです。そういう時代に今、学際的とい     うよりももっと広い意味でのお互いのディシプリンが、話し合いの場を     もって学問的にやっていくような体制が必要ではないかなと感じがしま     した。 宮澤会長 ありがとうございました。この審議会は各省に対してものを申す権能     をもっておりますので、今のご注意を、文部省にこれを説明する際、要     望として伝えていくということを考えたいと思います。いずれにいたし     ましても、確かにこういう問題を全般的に考えるフレームが、今までは     人口問題というフレームのみでございました。が、社会そのものが変わ     るのだから、それに対する考え方、つかまえ方の方法も、まさにどこま     で共通の土俵の内であり、どこが土俵の外であるかという議論から進め     なければならない。そういうご指摘であろうと思います。 麻生委員 先ほど21ページのエ) 「一方、出生率回復への効果」というところの     修正のご意見があったのですが、私はあまりそこは違和感を感じなかっ     たので、これでいいのではないかという気がいたします。      それから24ページの「多様な形態の家族のあり方」、ここでも選択的     夫婦別姓からずうっと読んでいたきますと「婚姻率」が入ってもそうお     かしくないと私は思います。     全体として非常にわかりやすくまとめておられると感じました。 宮澤会長 ありがとうございました。      それでは、事務局に調整していただきまして、今まで出ましたご意見     のところを次のように修正をすることにいたします。ページの順序で申     しますと21ページのエ) のところでございますが、前案の、公平性をは     かるという観点から経済的負担軽減措置について検討する。一方では、     むしろ効果の面では経済的な負担軽減措置よりも、もっと育児と両立さ     せる支援のほうがはるかに有効ではないかという見方です。この両者は     対立的であるという見方と、いや、そんなに対立していないのだという     見方と両方ございます。そこで「一方」を「また」に直すというと、両     方入るような入らないような、「また」でよろしゅうございましょうか。 岩渕委員 大変結構です。 宮澤会長 それから21ページのオ) の最後のところでございますが「家庭を営む     喜びや意義を理解したり学ぶことも有益であろう」という具合にさせて     いただきます。      23ページの(3)の2の婚姻率のところでございます。ここは、婚姻率の     前に「長期的に」という言葉を入れて「長期的に婚姻率ひいては出生     率」というように直す。ということでよろしゅうございましょうか。     なお、ご指摘ございました一層の研究ということにつきましては、24     ページのいちばん上に「さらに掘り下げた議論あるいは調査」と書いて     ございますので、この中に含まれるとご理解していただければというこ     とでございます。     今の修正でよろしゅうございましょうか。      ほかにございましょうか。 水越委員 大変よくまとめられたと思います。ただ、私は経済界に身を置いてお     りまして、なおかつ女性の立場にいるわけですが、ここに書かれたこと     をほんとうに企業の中で実行していくとなると、まだまださまざまな構     造的に改革をしていかなければならない問題があるわけで、その辺を、     経済界だけではなくて、行政レベルも、個人のレベルでも、もう一歩突     っ込んだ形で今後、議論を巻き起こして実行レベルにどうもっていくか     ということを考えておかないと、きれいにまとまった形で終わってしま     うのではないかなという懸念が少々いたしております。 宮澤会長 ありがとうござます。その点につきましては、この報告書はあくまで     議論の出発点であるということをいちばん最後にはっきりさせてござい     ます。今後、われわれ審議会として、どうするかということについては、     これを一般に示しまして、どういう反応があるかを見極める必要が出て     きます。いずれにしても、社会の組み立てそのものに個々にかかわると     いうわけです。ただし、ご指摘のように、特に実行レベルになるとさま     ざまな論点が出てくるだろう。ということで、その議論の出方をみなが     ら、また必要に応じて皆さんとも相談していきたいという考え方でござ     います。      それから、できるだけマスコミの皆さん、あるいはレポートの報じ方     などについても、事務局にもいろいろ工夫をしてもらいたいと考えてお     ります。 阿藤委員 小さい話ですが、21ページのエ) の3行目「支援するとともに、子ど     もをもつ世帯ともたない世帯とのあいだの公平性をはかるという観点か     ら」と、言葉のあやみたいなものですが、「もつ」と「もたない」とい     うのと、では子どもを「多くもつ」か「少なくもつか」という、つまり     ゼロサムかどうかという、本来は、いっぱい子どもをもっている人と少     なくもっている人とのギャップというか、そういう公平性をはかるとい     う趣旨ではないのかなという感じがしますが、どう表現するかですが。 吉原会長代理 「子どもの数か」とかね。 阿藤委員 だから「もつかもたないか」というのは非常に強いですよね、そうい     う意味では。むしろ、どこの国でも、たとえば3人もったら児童手当が     厚くなるのですね。そういう議論があります。日本でもそうですが。だ     からむしろ子どもの数による手当。 吉原会長代理 「数」というのを入れるかどうかですね。「子どもの数や、もつ     かもたないか」。 阿藤委員 もう1点は、22ページの3のア) の「雇用環境の改善にかかわるも      の」というところで、これはほんとうに例示だと思うのですが、かねが     ね、スウェーデンなどにある子どもの看護休暇というのですかね、子ど     もが熱を出したときに、その看護のために休暇の権利をもつ、そういう     のがあります。これなど、私は前に子ども未来財団の懸賞論文の審査員     をやったことがあるのですが、そのときに出てきたのですが、子どもの     熱出し休暇とか、そういうのが非常におもしろいアイデアだという評価     があったのです。そういう小さな子どもを保育するというときに、面倒     をみるためにだれかが休まざるを得ないという問題が起こるのに対して、     制度的にどうカバーするかというのは結構大きな問題で、日本では、      ちょっと雇用の制度はよく知りませんので、そういうものが一般企業に     あるのかどうかも知らないのですが、そういうようなものも、むしろご     意見を伺いたいのですが。 岩渕委員 現場レベルでは、この悩みは非常に深刻のようで、いろいろな訴えを     聞きます。ですから今、阿藤先生がおっしゃったようなのは、もし入る     余地があれば、ぜひ入れていただきたいと思います。      それと、企業に実際にはどうかというのは、あるところもあるようで     すが、大半はないのではないですか。     それから、子どもが熱を出すと保育園から引き取りに来てくれという     電話が職場へかかってくる、そういう実態がありまして、そういうとこ     ろで大変に困るという。これは市民会議の中でもそういう訴えが出まし     て、そういう話を聞くにつけ、結婚するのがこわくなる、そういう意見     がございました。 吉原会長代理 老人についても介護休暇ということがいわれるような時代になっ     ていますから、今おっしゃったようなことは、当然、将来考えてもいい     問題ではないかと思います。もし書ければ、ここに入れたほうがいいと     思います。 宮澤会長 ほかに何かございましょうか。      それでは、3点、修正案を申しあげます。      21ページの「子どもをもつ世帯ともたない世帯とのあいだの公平性」、     これは「子どもの有無や数」という表現に直す。よろしゅうございまし     ょうか。      22ページのア)・の3番目「職場における保育サービス等への支援充     実」、ここに今のを入れることにして、「職場における保育サービス・     子どもの看護等への支援の充実」。      それから先ほどご指摘がありました学問的な研究、24ページの1行目     「さらに掘り下げた議論や調査・研究」の前に「学際的な」という言葉     を挿入することにいたしたいと思います。      以上3点、追加、修正、よろしゅうございましょうか。 小林委員 調査・研究というと、アンケートを取って調べるとかあるいはという     意味ではなくて、もうちょっと大学の講座になってもいいようなものを     ぼくは申しあげたので、そういうフレーズがちょっと入ったほうがいい     のではないかと思うのですが。きわめて重要な問題だと思うのです。 宮澤会長 「調査」をむしろ取ってしまったほうがいいですね。 小林委員 そうですね、「調査並びに学際的な研究」というのでしょうかね。 宮澤会長 「調査並びに学際的な研究」、これでよろしいですね。 河野栄子委員 先ほどの水越さんのご意見に近いのですが、冊子としては大変き     ちんとまとまっていると思うのですが、たとえば4ページの(1)「高齢化     の進展に伴う現役世代の負担の増大」であるとか(2)「現役世代の手取り     所得の低迷」というのは、これが現実の問題としてありまして、現実に     子どもをもたない人に聞くと、産んでも、その子どもたちの負担が大変     大きいからかわいそうだ、という意見もります。24ページの「少子化へ     の対応」のところで「人口減少社会に対しては現在進められつつある経     済構造改革、社会保障構造改革」とこの3行に書いてありますが、項目     として新しい家族像とか、たとえば育児休暇ということが非常にたくさ     ん挙げられても、本質的にはこの構造改革が実現しないと、あとのこと     をやっても、先ほどの国民負担率が50%を超えるとか、人口の減少とい     うところの何かをクリアすることはできないような気もいたします。     ここには3行入っているのですが、本質的な構造改革が条件であるみ     たいなことをもうひと押しすることでもう一石ぐらい投じたいなという     気分にはなっております。が、文章の加減でいかがなものでございまし     ょうか。これはちゃんと拾って読まないと、読み飛ばしてしまい、少し     本質的なところが消えてしまったような印象になると思いますが。 椋野室長 12ページ「人口減少社会への対応のあり方」というところから今の      「経済成長の低下等に対してどう対応するか」というところまで、ご説     明が前回とあまり変わらなかったのではしょりましたが、ここから書い     ておりまして、その中で「経済面への対応」として「就労意欲をもつあ     らゆる者が就業できる雇用環境の整備」とか「企業の活力・競争力、個     人の活力の維持」とか「公正かつ安定的な社会保障制度の確立」、この     中に「現役世代と将来世代の給付と負担の公平がはかられるよう、年金     制度、老人保健制度を含む医療保険制度を中心に、給付と負担の適正化     をはかることが必要である。特に公的年金制度については、人口構成の     変化により、将来世代の負担が過重にならない安定的なものとする視点     が重要である」というようなくだりで「将来に向けて、介護や年金につ     いての国民の不安を解消することは、次の世代を安心して産み育てられ     るようにするという観点からも重要なことである」、社会保障について     はこのあたりで書いてあります。      諸般の改革の内容を、経済構造改革とか社会保障構造改革とか財政構     造改革の内容も、こういう形で対応として書き直しておりますが、今の     構成はそうなっております。それで、もっと後ろのほうにというご意見     はあるのかもしれませんが。 宮澤会長 いかがでございましょうか。もう一度最後のほうで繰り返すか、何か     つけ加える表現でうまくできるかどうかということですが。 吉原会長代理 もし今のようなご意見を多少入れるとすれば、24ページの最後の、     こういうことでいいのかどうか、ちょっとご意見をお伺いしたいのです     が、「少子化への対応」というフレーズがありますが、その最初の3行     に「財政構造改革などの構造改革を確実に実行し、少子化への影響への     対応をする必要がある。併せて、子どもを産み育てるうえで」というと     ころに、むしろ六つの構造改革以上に、こういった要因への対応がより     重要なのだということを1行、どこかに書き加えて、それへの政策対応     はいろいろあるけれども、というふうに、系列的に書くのではなしに、     そういった六つの構造の改革だけではだめなのだ、もっとそれ以上に要     因への対策が根本なのだというようなことを書いたら、ご趣旨に沿うの     かどうかということをお伺いしたいのですが。具体的にいかがでしょう     か。 河野栄子委員 具体的な文章というよりは、ちょっとその感想を申しあげますと、     今ご説明いただいた12ページのようなところで、皆さんが、ある種の構     造改革はきっちり組み込まれているのだということで24ページの表現で     特に不足を感じないということであれば、べつにこれを直していただか     なくても結構です。話は変わりますが先ほどの介護休暇とか看病休暇と     いうのはいいのですが、聞きようによっては、 140〜 150日の休暇を既     に用意していて、どんどんエスカレートしていくようなイメージならば、     ちょっと最初から受け入れがたいですよね。 150日以内とか 140日以内     というのは各論ですがコスト負担者の議論なしにただ言葉として介護休     暇とか、病院へ通う等の、一般的な言葉をちょっと書き並べただけとい     う印象を受けますが、いかがでしょうか。 福田委員 先ほどの看護休暇の問題などを含めまして、もう一回、企業という言     葉で一括された組織の負担でそれをやるということを要求しているのか、     少数意見も落とさないようにするという方針で、この前もずいぶん私か     らみれば乱暴な議論も、なんらかの形では置いておられるのですが、も     しそういうことであれば、たとえば今、熱を出したから、というので職     場にかかってくるのは困るというのに対する対応は、保育体制のほうで     そういう場合にも対応できるようにする、というやり方が、片一方には     またあり得るわけです。その問題と、公的なセクターの負担と私的なセ     クターの負担という問題で、現状のままで組織の責任がこういうときに     は、おそらくこれは私的なセクターになると思うのですが、また、保育     所の運営もそういうのを一つの産業にすることについては、片一方では     ご批判がありますが、選択の余地を広げれば、必ずしも公的なセクター     とだけ言い切れない問題がある。そこのところを詰めないで先ほどの修     正のままでいいのか、それとも、少数意見をも入れるという意味で、そ     こには選択の余地がまだあるのだという表現をなさったほうがいいのか、     周到なものにするために、ちょっとご考慮をいただきたい。 椋野室長 事務局から、今のご意見に関連しては、22ページのイ) の「子育て支     援にかかわるもの」の中に、延長保育、休日保育と並んで「病児保育等、     多様な保育サービスの提供」ということで入っております。 福田委員 その点で看護休暇というものが新しく加えられるのにどのくらいの切     実な必要があるのか、保育のほうの体制の多様化で応じられるものか。      先ほど、日数があまり長くなれば、ということがございますし、現在     の組織の現状からいえば、有給休暇をそれに充てることで対応をしてい     るというのが普通の形態だろうと思います。     先ほど申しましたように、どこまでが私的な負担になり、どこまでが     公的な負担になるのかということで、公的な負担の頭打ちを初めから予     定している中で、全部こういう問題が企業にかかっていくということが     いったい望ましいのか、それとも企業戦士というような風土を直してい     くことが望ましいのかということについては、もう一段考える必要があ     るのと、たとえば、絶望的な身体障害者を子どもにもったという場合に     は、これは保育なり養護なりの体制で解決しない限り、親にちょっと休     暇を増やしてやるというような形で対応できる問題ではないと私は思い     ますので、その点をお考えいただきたいのですが。 袖井委員 介護休業というのは、老親介護だけではなくて、あれは父母及び配偶     者の父母及び子どもも入っているのです。だから、ここに書くかどうか     わかりませんが、育児及び介護休業ということになっていて、子どもの     ために取る方も結構たくさんいらっしゃいます。しかしこれは長期の場     合だけで、子どもが手術をしたとか大きな病気の場合ですね。ですから、     新たにつけ加えることは難しいもしれませんが、育児休業というのと育     児・介護休業の中の介護の部分は子どもにも使えるので、その辺のとこ     ろはどういう形で入れるかわかりませんが、今の制度でも対応できると     いうことです。 麻生委員 この報告書の性格になるのですが、これは中間報告ではなくて、この     時点での最終報告に出す前のものということです。それで大きな基本的     な問題と、その解決点の基本的な方向が出ればいいのであって、構造改     革とか何かのアクションプランに関するものは、また別のときに、この     議論を踏まえてきちっとしたものをお出しになるしかないのではないか     と思います。この時点で全部アクションプランを出せというのは無理か     もしれないですが、その方向性がはっきりみえればいいという気がいた     します。みえるようにはどうするかというのは、いろいろな含みがある     と思うのです。それは会長に一任いたしたいと思います。 宮澤会長 報告書の性格、今ご議論がありましたように、中間報告だったものが     少し最終に近づいた感じがするかもしれない。しかしながらこれが出発     点だという点は明記されております。したがって今後いろいろな議論が     あって、それに応じて、きちっと詰めるべき議論は詰めるべきだろう。      問題は大きいわけですから、そう簡単に詰めきれない面もある。個別     具体的な制度とか、これを入れるとかあれを入れるとかということのほ     かに、全体としてこの問題を「どのレベルで受けとめる」か、企業レベ     ルか、あるいはマーケットのレベルか、そこでどの程度受けとめて、公     的なレベルではどの程度に受けとめるか。これは基本的な問題でありま     して、そう簡単に結論は出ない。      介護保険の場合ですと、わりあいに共通的な合意のもとに、ともかく     制度化しようということが既にスタートしておりますが、子育て問題に     ついては、先ほど来、いろいろ対立意見がございますように、価値観が     非常に多様化しておりまして、また介護保険制度のように制度化に乗る     までにはもっと議論がほしい。今のような公的、私的な問題もあるとい     うことでございますので、これは議論をみながらまた適宜取り上げてい     く必要があるという性格のものかと思います。     ただこの文章上では、たとえば14ページの3で「いわゆる国民負担率     の上昇は避けられない云々」と書いてある項ですが、「個人や企業の活     力や意欲が損なわれることのないよう、公的負担をある範囲におさえ、     それと同時に私的負担とのバランスをはかる必要がある」とあります。      まさにご指摘のような受け皿をどこまで、私的なレベル、社会的なレ     ベルでという、バランスということになる。ほんとうに答えにならない     答え方になっていますが、「受け皿」は一応、ここに書かれているとい     えるように思います。      それから基本的な立場といたしまして、17ページに二つ目のパラグラ     フに審議会の基本的な考え方ということで、今日はこの線のところで合     意ができれば、各委員のいろいろなご主張はあちこちに書き込んである、     というスタイルになっていると思います。これを基本的な立場というこ     とでご確認をいただいて、少子化への影響、要因、両方に対応していく     ことが必要である。ただし、限定的な要件がある。ここでいう個人の自     己決定権など、それを具体化する場合にさらによく議論する、その認識     のうえでこの議論をスタートとする、ということで対応させていただき     たいと思います。よろしゅうございましょうか。 福田委員 もしそういうことでございましたら、先ほど、袖井委員からもご指摘     がございましたように、現在の介護の観念の中に子どもの病気がカバー     されているというときに、わざわざ今までなかった看護休暇というもの     までお入れになるよりは、抽象的に現状のままでおやりになって十分で     はないか。そこまで細かく立てる必要はないのではないか。そしてバラ     ンスという回答にならない回答が、これからの実態に応じて考える課題     を示すということで、私は十分のような気がします。 宮澤会長 岩渕さん、いかがでございましょうか。 岩渕委員 各論であまり細かいことを入れないほうがいいということでしたら、     それはそれで。 宮澤会長 では、22ページのところは前に戻すということにいたしましょう。      これに加えてご意見ございましょうか。もうあまり指摘していただく     ところもないでしょうか。しかしぜひ言いたいことがあれば。 清家委員 もう宮沢先生と吉原会長代理に……。 宮澤会長 そういうことばを引き出そうと思って言ったわけではないのですが。 清家委員 先日、私はメモにしてコメントを提出しましたので、もう一度、念の     ためにポイントだけ申しますと、基本的には3点、ぜひその趣旨を盛り     込んでいただければ結構ということです。      一つは、あたりまえのことですが、子どもを産むとか産まないとか、     何人つくるとか、こういうことは基本的には個人の選択にゆだねられる     べきものですから、こういうものに対する政策的な介入はできるだけ抑     制的なものであるべきだと。ですから、子どもを産みたくても、あるい     はもっと数を増やしたくても増やせないという人の選択肢を増やしてあ     げる、基本的な姿勢はそこに出ておりますが、そういうことをぜひ押さ     えていただきたいということ。      もう一つは、これはいつか宮島先生が強調されたところでありますが、     もちろん少子化自体も問題かもしれませんが、もっと問題なのは、少子     化になると困るような制度をできるだけ長期的な視点で直していく。た     とえば年金制度でいえば、できるだけ積立的な色彩を強めていって、要     するに子どもの数が少なくなっていってもそれ自体は問題にならないよ     うな仕組みしていくということも併せてやらないと、制度だけそのまま     温存しておいて、子どもを増やさないと困るとか子どもが減ると大変な     ことになるというようなことを騒ぎたてるというのはいかがなものか。      その点も押さえていただきたいと思います。     三つ目は、確かに子どもの数が減る、あるいは人口が減ると、経済成     長にマイナスになり得ることもありますが、必ずしもそうではない場合     もあるし、それからわれわれにとって大切なのは、なによりもトータル     のGNPとかGDPではなくて、1人当たりのウエルフェアが少子化に     よって低下することは困るわけですから、そのところもぜひ押さえてお     いて。つまり国力が減退するとかそういうこと自体は個人にとっては、     もちろん問題にする人もいるかもしれませんが、大切なのは少子化によ     って1人当たりの生活水準が低下する場合に問題なので、そのほかの可     能性もいろいろあり得るということは押さえておく必要があるのではな     いかと。      そういうことを考慮したうえで、ぜひ子どもをもちたい、あるいはも     っと数を増やしたいという人の選択肢が増えるような政策が望まれると     いうトーンを出していただければということをメモにしましたので、基     本的には全く問題ないと思います。 宮澤会長 今の3点、それぞれ入っておりますが、ただ、ほかの対立する議論も     書き込んでありますので、クリアな形にはならないかと思います。読み     方によっては、あ、書いてあるなとということが最大公約的なものにな     っている。しかしながら、それより重要な、ここを忘れてはいかんよ、     といった議論がますますこれから起こってくることが重要で、そのため     の素材、論点はかなり十分に盛り込まれておると考えています。         どうも、ご指摘ありがとうございました。      八代さん、何かございますか。 八代委員 私は、別の機会に言いましたので。ただ、今、清家さんが言われた第     2の点、少子化になると困るような制度にしてはいけないという点は、     14ページの「公平かつ安定的な社会保障制度の確立」というところで、     はっきりと「現役世代と将来世代の給付の負担の公平がはかれらるよ     う」という、これは基本的には積立方式の考え方、あるは賦課方式のも     とでも世代内の収支の均衡がはかられるものというふうには私は理解し     ております。     それから「特に、公的年金制度については、人口構成の変化により、     将来世代の負担が過重にならない安定的なものとする視点が重要であ     る」ということで二重に念を押しておりますので、ぜひ年金審議会のほ     うでも、次回の年金改革のところではこの点について配慮していただけ     ればありがたいと思います。 宮澤会長 ありがとうございました。この審議会の中には年金審議会の委員もお     られるようでございますので。またいろいろな形で、関係の局にもこの     案を示すということにしたいと思います。     よろしゅうございましょうか……。それでは、今の点を含めまして全     体として皆さまのご了承を得られたということで、念のため、事務局か     ら本日の修正箇所をご説明いただいて、確認を……。 袖井委員 先生、サブタイトルはいいですか。 宮澤会長 そうそう、サブタイトル、どうもありがとうございました。サブタイ     トル、三つ案が書いてございますが、いかがでございましょうか。 福田委員 私は、三つに全部出ております「我々は」というのは、意味がよくわ     からないのです。この審議会はということなのか、国民はということな     のか、そういう無意味な言葉を使うことはおやめになったほうがいいだ     ろうと思います。     個人的には、3番目の「人口減少社会、対応の検討と選択の責任」と     いう表現でどうかと思います。その責任がもちちろん、結びにあります     ように国民全体にという前提で。それを出すために、もしあれでしたら     「責任」を「選択の要請」という表現に変えてもいいと思います。 宮澤会長 幸いなことに、日本語は主語がなくても通じますので、「我々」は落     としたほうがいい。3番目がよろしいですか。 宮武委員 福田先生のおっしゃったのは大変難しい言葉ですから、3番目がいい     のならば「人口減少社会」として「未来への責任と選択」という形にし     たほうがいいのではないですか。 宮澤会長 シンプルでいいですね。ほかにございましょうか……。それでは、      「人口減少社会、未来への責任と選択」ということでよろしゅうござい     ましょうか。こういうときは発言順位が優先いたしますので。他に強力     なご意見がございましたら、どうぞ……。なければ「人口減少社会、未     来への責任と選択」ということにしたいと思います。      では、事務局のほうで、今のサブタイトルも含めまして確認をお願い     をします。 椋野室長 では、事務局から確認をさせていただきます。      サブタイトルは、「人口減少社会、未来への責任と選択」にさせてい     ただきます。      本文中の修正は、21ページのエ) の3行目「子育てを社会全体として     支援するともに」の次に「子どもの有無や数に応じた公平性をはかると     いう観点から」。      その4行ほど下の「一方」を「また」に変えます。「意見がある。ま     た、出生率回復への効果」と続きます。      次に、オ)のいちばん下のくだりでございますが、「子どもを育て家     庭を営む喜びや意義を理解したり、学ぶことも有益であろう」。      今のページは3点でございます。      次の22ページは、ご議論はありましたが、結論としては修正はしない     という形で、「子どもの看護休暇」というのは特に加えない。22ページ     は修正なしという形です。     23ページの 3の2.「多様な形態の家族のあり方」の2行目「社会的な     寛容度を高めることが長期的に婚姻率、ひいては出生率の回復につなが     る可能性についても議論を深める必要がある」。     24ページのいちばん上、「未来に希望を感じる社会の展望の必要性」     の次の行でございます、「今後さらに掘り下げた議論や調査並びに学際     的な研究を行い、その過程で」と続きます。     以上、本文は5点修正をさせていただいて、サブタイトルを「人口減     少社会、未来への責任と選択」ということにさせていただきます。 吉原会長代理 24ページの「少子化への対応」のいちばん最初のところに、今、     清家先生の言われた趣旨をもうちょっと明確にするために、このような     趣旨のことを入れたらどうでしょうか。まだ大ざっぱなのですが「人口     減少社会に対しては、人口増加時代につくられた構造や社会制度をその     まま温存してはならない。現在、進められつつある構造改革〜などのあ     れを確実に実行する必要がある」ということで、昔の制度を温存しては     いけないのだよということをここのところに書き入れるということで、     よろしければ。 清家委員 べつにそうしないといけないといっているわけではありませんが、そ     のようにしていただければ大変あれですが。 宮澤会長 やはり重要な文言でございますから。今まで 170年続いてきた人口増     加が、減少社会に移るのですから、それをぜひここに入れておいたほう     がいいですね。 吉原会長代理 増加時代の構造や制度は変えなくてはいけない、そういう趣旨で     入れておいて。 宮澤会長 では、今の1点をもう一度確認いたしまして、それを除きまして、報     告書としたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。 (「異議なし」の声あり)      どうもありがとうございます。      それでは事務局から、報告書の扱い、今後の審議の進め方についてご     報告をお願いいたします。 椋野室長 今回、精力的におまとめいただいた報告書でございますが、事務局と     しては、これをわかりやすいパンフレットにいたしまして、各種関係団     体などを通じて幅広く配布して、さまざまな場で議論がなされるよう、     お願いしたいと思っております。また、この報告書に関係資料やこれま     でのヒアリング、ご意見等を加えてまとめた本の出版なども考えている     ところでございます。      それから、関係省庁に対しましては、議論を進めるにあたっていろい     ろご協力をいただきましたが、すみやかに21省庁の課長の幹事会を開催     いたしまして関係省庁にご説明をし、また、各省所管の関係審議会に対     しても、関係省庁を通じて報告などをお願いできればと考えております。     また、審議会の皆さま方、あるいはきょうの傍聴していただいている     皆さま方にも、ぜひご議論をいただきたいと思っております。そのため     にも、わかりやすいパンフレットや本をできるだけ早急にまとめて、議     論の素材としたいと思っております。     審議会のこれからの予定でございますが、今回のとりまとめはこれで     ひと区切りでございますが、実はことし12月中旬に、フランスの国立人     口研究所部長のジャン・クロード・シェネさんと、イギリスのロンドン     経済大学の講師のキャサリン・キーナンさんが来日されて、セミナーに     参加されるということでございますので、本審議会においてもこの方が     たをお招きしてお話を伺ってはと考えております。これは、日程等も含     めまして会長とご相談して、改めてご連絡をしたいと思っております。 宮澤会長 ありがとうございました。最後に閉会の言葉でございますが、本年の     2月から少子化に関する議論を進めてまいりました。先ほども説明がご     ざいましたようなことで、今回の総会で一応の区切りということであり     ます。この間、委員、専門委員の皆さま方には精力的にご議論いただき     まして、ほんとうにありがとうございました。また、ヒアリング等にご     出席いただきました関係者の皆さま、聴講の皆さまにもお礼を申しあげ     たいと思います。      本日、とりまとめました報告書は、事務局を通じまして、当審議会の     幹事省庁である、このいちばん下の資料の「人口問題審議会に関する行     政機関」という一覧表にございますように、労働大臣、厚生大臣を初め、     関係21省庁の各大臣に報告したいと考えます。また、少子化は社会全般     にわたる大変重要な問題でございますので、総理大臣にも報告したいと     考えております。今後は、政府、あるいは労使の双方から、また広く国     民全体でこの問題を幅広く議論することの呼びかけをしたいと思います。     最後に、委員の皆さまにおかれましても、今申しました幅広い議論の     呼びかけについて、いろいろご協力をさらにお願いしたいということを     付け加えまして、本日の総会を閉じさせていただきます。     先ほどの案はできましたか。 辻課長  とりあえず事務局で、今のお話を聞いてつくりました案を申しますと、     24ページの「少子化への対応」という冒頭、「人口減少社会に対しては、     まず」というさわりになっておりますが、「人口減少社会においては、     人口が増加し続けてきたこれまでの時代に形成された制度や慣行は見直     されなければならない。このため、まず、現在進められつつある」とつ     ながっていくということです。 吉原会長代理 先生がおっしゃったのは「温存されてはならない」ということで。 辻課長  「制度や慣行が温存されるべきではない」。 吉原会長代理 「されてはならない」。 清家委員 そこまできつくなくても。 宮澤会長 いや、最後の締めだから、きついほうがいいのではないか。 辻課長   それはお決めいただければ。 清家委員 今の事務局案で結構です。 宮澤会長 それでは、修正文を24ページの「少子化への対応」の最初のところへ     つけ加えまして、全体の報告案として完結、ということにしたいと思い     ます。     どうも大変ありがとうございました。  問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課  担当 山内(内2250)、齋藤(内2931)  電話 (代)03−3503−1711     (直)03−3595−2159