97/09/26 第74回人口問題審議会総会議事録 第74回人口問題審議会総会議事録 平成9年9月26日(金)                        15時00分〜17時15分   中央合同庁舎5号館講堂 宮澤会長 本日は、ご多用のところをご出席いただきまして、ありがとうござい     ます。ただ今から、第74回の人口問題審議会総会を開催いたしたいと思     います。     まず出席状況の報告でございますが、ご欠席は、阿藤、木村治美、河     野栄子、河野洋太郎、小林、清家、千葉、坪井、南、宮武、八代、岡崎、     河野稠果、各委員並びに専門委員、ご都合により、ご欠席でございます。      坂元委員と網野委員も、先ほど、ご欠席という連絡がございました。      そのほか、遅れて来られる委員があると思います。     議題に入ります前に、事務局からアナウンスがございます。お願いい     たします。 椋野室長 実は本日、NHKから、福島瑞穂さん、後ほどいらっしゃいますが、     のヒアリングを予定しておりますが、その取材をしたいということで申     し入れがございまして、福島瑞穂さんのお話のときに一時、テレビカメ     ラが入ります。今まで人口問題審議会そのものの取材で冒頭のカメラと     いうのはあったのですが、こういう形で特定の委員等の取材を行う目的     でというのは初めてでございましたので、一応留意事項を取り決めさせ     ていただきましたので、読ませていただきます。      人口問題審議会に出席する特定の委員等の取材を行う目的で人口問題     審議会を傍聴する場合には、次に留意すること。     1.当該取材が社会的に意義のあるものと認められること。     2.当該取材を行うことにより、人口問題審議会の審議が妨げられない     こと。     3.「人口問題審議会の運営について(平成7年11月24日 人口問題審     議会)」の「4.傍聴者の遵守事項」を遵守すること。     傍聴者の遵守事項、本日、傍聴者のお手元にお配りしておりますが、     もう一度読ませていただきます。     1.会長が特に認めた場合を除き、カメラ等による撮影を行わないこと。     2.録音をしないこと。     3.静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと。     4.会長及び会長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと。    以上でございます。     それから、議事に入る前に資料の確認をさせていただきたいと思いま     す。     お手元に第74回人口問題審議会総会議事進行予定、1枚ございます。      資料1として、少子化を考える市民会議の福岡県で行われたもののパ     ンフレットのコピーがございます。      資料2−1として、後ほどお話しをいただくライフデザイン研究所・     前田正子さんの資料が、ホッチキスでとめた2枚のものと、少し大きい     新聞の記事のコピーとがございます。      それから本日お話しをいただく方がたのプロフィールを、参考資料1     としてお手元に配布しております。      参考資料2として、11月4日に予定をされております少子社会を考え     る国民会議の開催についてのご案内を入れております。      参考資料3として、本日、網野専門委員、どうしてもご都合がつかな     いということでご欠席になったのですが、乳児期からの保育に関する見     解についてぜひご意見を述べたいということでメモにして出してくださ     いましたので、配布をさせていただいております。      以上、事務局からのご連絡でございました。 宮澤会長 これから、本日の議題に入らせていただきます。議題は、お手元の議     事進行予定にございますように、まず初めに、これまで何回かご意見が     出ておりました不妊治療につきまして、厚生省の母子保健課長よりご説     明をいただきます。      続いて、8ヵ所ほどで少子化を考える市民会議を開いておりますが、     今回は、さる7月20日に福岡県の宗像市で開かれました少子化を考える     市民会議、これにつきまして、コーディネーターとしてご参加された岩     淵委員よりご報告をいただきます。     続いて、これが本日のメインテーマでございますが、本日お越しいた     だきました5名の女性の方がたから、少子化の原因あるいは対応、方策     等に関しまして、河野さん、前田さん、黒田さん、福島さん、麻生さん     の順番でご発言をいただき、最後に質疑の時間を設けるという形で進め     させていただきたいと思います。     まず初めに、小田母子保健課長よりお願いいたします。 小田課長 母子保健課の小田でございます。本日は、不妊治療につきまして、そ     の状況あるいは方法等についてご説明させていただきます。      不妊治療とひと口にいいましても、いくつかの方法がございまして、     大きく三つに分けられます。特に資料はございません。      一つ目は薬物治療。これはよく耳にします排卵誘発剤、これが主な薬     でありまして、これによって排卵を誘発して不妊治療をするという方法     でございます。     二つ目が手術によるもの。これは不妊の原因が、卵管が閉塞していた     りあるいは子宮に奇形があるとか、そういった外科的な手術が必要な場     合に、たとえば卵管が通過障害があると、その卵管の形成手術、そうい     った手術によって障害を取り除く、そういったことがあるわけでござい     ます。     3番目がいわゆる人工受精でございます。この人工受精にも2種類ご     ざいまして、一つは、人間の精子を採取いたしまして、それを子宮内に     戻すという形の一般の人工受精でございます。      もう一つは、体外受精と申しまして、精子と卵子を体外で受精させて     それを体に中に戻す。      この四つの方法がございます。      このうち、通常の薬物あるいは手術による方法は、これは原疾患、い     わゆる不妊の原因となっている病気そのものを治す治療でありますので、     これについては、通常、保険の対象となる。これは保険局医療課の見解     でございます。3番目の人工受精の2種類、人工受精と体外受精、これ     につきましては不妊そのものの治療でございますので、これは保険の適     用にならないという形でございます。      これらの実施の状況でございますが、薬物療法、手術療法につきまし     ては、これは保険で不妊治療をしているか、あるいは原疾患の治療なの     かという区別ができません。それから、保険のデータそのものも1月の     データのみしかありませんので、実際の正確な数字は把握されておりま     せん。      3番目の人工受精につきましては、これは保険外、いわゆる自費診療、     自由診療という範囲でございますので、これにつきましても、一般の人     工受精につきましては把握しておりません。      体外受精についてでございますが、これは日本産婦人科学会で平成7     年の実績について調査したものがございますので、それをご披露させて     いただきます。体外受精を行っている施設は、実施登録施設として現在      348カ所こざいます。そのうち、この調査に回答した施設が 305カ所で     ございまして、その回答施設のうちの 257施設において体外受精が平成     7年に実施されております。実施件数は3万8150件であります。それに     よって得られた出生児数は5687人であります。実態等はそういったこと     でございます。     体外受精の詳細につきましては、現在、厚生省研究班で、その実施状     況等について本年度、調査を行っているところでございます。      さらに現在、厚生科学審議会におきまして、生殖医療等につきまして     生命倫理といった観点からご審議をお願いしている状況でございます。     以上でございます。 宮澤会長 ありがとうございました。ただ今のご説明につきまして、ご質疑はご     ざいますでしょうか……。よろしゅうございましょうか。     では引き続きまして、福岡県の宗像市で開催されました少子化を考え     る市民会議につきまして、岩淵委員にご報告をお願いいたします。 岩淵委員 お手元に資料がございますので、ごく簡単に申しあげます。      福岡県の少子社会を考える市民会議は、20日の土曜日、博多と北九州     のあいだにある宗像市で開かれました。参加者は、保育所、福祉施設関     係者、民生委員など 356人、きっちりした数字が出ています。     まず最初に阿藤先生が基調講演をなさいまして、「少子社会の現状と     課題と」題しまして、この中で男女共同参画への静かな社会革命が起こ     りつつある、という鋭い歴史認識を示されました。これはまた今後の論     議に一石を投じたものとして、注目していきたいと思います。     シンポジウムの中では、一、二ご紹介申しあげますと、フリーの女性     アナウンサーで元気な福岡の女性を代表する林田さんという団塊の世代     の方なのですが、仕事もしたい、子育てもしたいと悩んだ自分の体験を     話されまして、男性の意識改革はもちろん必要だが、働きたいという女     性にも本音と建前があって、意識改革が進んでいるとは限らない、とい     う女性にも厳しい意見を述べられました。      それから連合福岡の横溝事務局長なのですが、この方の意見は、保育     所、幼稚園の縦割り行政をなくすには、地方分権を進めるべきだという     こと、それから女子保護規定が撤廃されると、ますます家庭生活にしわ     寄せが出てくるのではないかという懸念、それから、働き続けて自己実     現してきた女性はほとんどが独身で、これでは年金財政が破綻する、と     いうご心配をいただきました。というようなことで、これら少子化を防     ぐ育児支援に、連合として組織として取り組まれるようにお願い申しあ     げました。      それから袖井先生から、介護に対するサポートは進んでいるけれども、     育児に対する社会的なサポートにこれから本腰を入れる必要があるとい     うご指摘。それから、企業の意識改革も必要で、女性が働きやすいよう     に家庭にやさしい企業に転換すべきだ、ということを中心にお話しいた     だきました。      会場からは、汚職などがあって国は信用できないとか、国民は自然に     変わっていくのでよけいな政策を出さないでほしい、という意見もあり     ました。別の方からは、厚生省、文部省、労働省がばらばらなので総合     的な育児支援政策を推進してほしい、という意見がありました。また、     もうひと方からは、子どもを育てている母親の意識調査をして専門的に     分析してほしい、というような要望がありました。      これに対して厚生省の山崎広報室長が、少子化問題はきわめて重要で     あるにもかかわらず、厚生省内でも意見が割れてしまう、いったいどう     すればいいのか、それを国民の皆さん方からお聞きしようということで     市民会議を開いている次第でありますから、いい知恵を出していただき     たい、と正直な態度で好感を与えながら、しっかりとボールを打ち返し     た、そのような状況でございます。      以上です。 宮澤会長 ありがとうございました。ただ今の岩淵委員からのご報告につきまし     て、何かございましょうか……。これで何カ所やったことになるのです     か。6ヵ所ぐらいですかな。あと2、3ヵ所残っておるようでございま     す。どうもありがとうございました。      それでは本日のメインテーマに入りまして、まず株式会社キャリアネ     ットワーク代表取締役常務の河野真理子さんよりご発言をお願いしたい     と思います。河野さんは、お子さんをお二人育てながら、仕事と育児の     両立について、企業の女性向けのセミナーなどもやっておられます。そ     れではよろしくお願いいたします。 河野真理子氏 はじめまして、河野と申します。よろしくお願いいたします。15     分いただいた中で、どのくらいお話しできるかとは思いますが、まず、     たぶん私に声をかけてくださった理由は、職場や企業、そして個人の生     の声、生の現場の意見ですとか改善策ですとか、その辺のところを話せ     ということだと思います。     今、私は13〜14年になるのですが、企業それから企業に雇われる個人     をみてきて、いろいろな政策を練らせていただくのが仕事なのですが、     きょうは少子化ということがテーマなのですが、いろいろな政策、制度     をみる中で、どうしても日本の人口構造と照らし合わせて、ほんとうに     抜本的に人事が変えていかなければいけない時代がきたということを、     非常に感じているところです。ほんとうは高齢化だとか核家族化だとか、     諸々併せて話さなければいけないと思うのですが、その中で少子化とい     う切り口で、女性の現状などを含めながらお話しをしたいと思います。     こちらの今までお話しされていた論点整理メモも拝見したのですが、     働く女性の育児と仕事の両立が難しいということも、少子化の一つの要     因だということは、私はほんとうにその通りだと思っております。個人     で思っているわけではなくて、いろいろな現状からなのですが、その女     性について少し触れたいのです。      15年ほど前から、辞める理由というのが三転しています。女性が辞め     ていく理由、15年ぐらい前は、まず上司と合わないとか、会社の雰囲気     がよくないとかという目先の理由ですとか、どちらかというと感情的な     問題でした。     10年ぐらい前から、業務上のことに変わりました。仕事がマンネリ化     してつまらない、この会社にいても先がみえない、これ以上自分はキャ     リアアップできないではないかということで辞めていく。仕事上、キャ     リア上、業務上の理由で辞め始めたのが10年ぐらい前。      実は数年前から確実に変わってきたのが、辞めたくないのだけど辞め     るということなのです。ここが大切なのですが、では、どうして辞めた     くないのに辞めざるを得ないのかというと、一つが、結婚まではなんと     かなったけど、子どもを産んで育てるのには無理があるということで辞     める。または、子どもを産んで育てるには今の仕事を続けるのは難しい。      ちょっと逆になりますね。仕事のほうが責任をもってできなくなるの     で、しかたなく辞めるとか、それ以外には旦那様の転勤などもあって辞     める、そんなこともございますが、まとめますと、プライベートベース     の理由でしかたなく仕事を辞めていくという方が非常に増えたというこ     となのです。      この中で特に子どもももちたい仕事もしたいという方は、4択になり     ます。簡単なことですが、子どもをあきらめる。2番目が会社を辞める。     3番目が、ちょっと語弊があるかもしれませんが、現状の日本企業でお     荷物になりながら社会復帰してくる、つまり時短で勤めるとか、日本の     今の中では責任をもつ仕事ができないようにみえるとか、お荷物になり     ながらする。4番目は、今までと同じように続けるのですが、非常に多     くの個人負担がかかっています。経済的、精神的、それから身内を含め     たいろいろな方がたの時間的拘束も含めた負担というのを抱えながら、     社会復帰を通常通りする。大体この4択になってきます。      実は私の会社は研修セミナー会社ですので、この数年前からちょうど     女性たちの研修の内容を変えました。いくら中堅女子を管理職にキャリ     アップのためのセミナーをやっても、しかたなく辞めるのであれば、ラ     イフアップのためのセミナーをしなければと思いまして、土・日の夜、     それから休日を使って、ライフスタイル別に4コースつくってライフプ     ランセミナーをしました。独身向けのものもあればディンクス向けのも     あるというようなライフスタイル別の。      この四つのコースの中でいちばん続いていて定着して継続しているの     が、働きながら子どもを産むプレワーキングマザーセミナーというディ     ンクスを対象にしたセミナーなのです。これは大変反響が大きくて、い     かにディンクスの女性が、子どもをもちたいけれどもディンクスのまま     突っ走っていって30代半ばになっていくかというのが、非常によくあら     われています。ほんとうは参加者名簿をお見せしたいぐらい、いろいろ     な有名な企業、優秀な方がた、初めて管理職になった女性、初めて総合     職の1号として頑張ってきた女性、よく雑誌に出るような方ばかりが、     個人で内緒で電話をしてきます。そして、セミナーに参加してくださる。     実はそれを最近、組合の皆さんが見てくださって、3 年前から組合主     催で各企業の組合でやるようになりました。毎回満杯なのです。よく考     えると、それだけ両立に悩んでいた人が多いということなのです。      どうして両立ができないのかというのがポイントだと思うのですが、     まずその理由をピックアップしてみたのですが、両立が難しい理由とし     て、復帰したあと、今までと同じように働けない、ひと言でいうとそう     いうことです。今までと同じようにというのはどういうことなのかと分     析しますと、残業ができない、休日出勤ができない、出張ができない、     転勤は難しい、駐在命令は受けられない、諸々、場所とか時間に制約が     出てくる働き方になりますから、そういうなかでは復帰しても同じよう     には働けないということなのです。      実はここへ跳んでいいかどうか、現職復帰というものを非常にありが     たい話ではありながら、私は現職復帰がベストかどうかというのは、ち     ょっと今、問題意識をもっているのです。これはあとで触れたいと思う     のですが。まず時間や場所というのは会社のいうなりの日本企業である。     日本企業の風土は、会社の都合で自分を動かしていきますから、どうも     それがうまく適合しなくて、それができない人はもうレールから外れて     いるお荷物になりがちなのが日本企業。いい・悪いは別として、そうい     う現状です。      もう一つ、両立できないということの理由として、まず休むこと自体、     休職すること自体が難しいのだ。これも日本企業の特色なのですが、仕     事が属人化しているというか、人にまつわってきている。何々の仕事が     あるということではなくて、この人が何々をやっているか。だから代行     要員が効かない。それから、仕事もマニュアル化されていない。ですか     ら人がやると、うまくできない。こういう事情があるからあの人でなけ     ればだめ、というような。そんなことがありまして、仕事が契約で成り     立っていないということ。いいか悪いかは別として、そんなことが休む     ということを阻むのです。      これは、実は女性だけではなくて男性にも同じことがいえ、しかも介     護休職にも同じことがいえると思います。どうしてもこうしてみていく     と、日本企業の風土ですとか制度ですとか労使関係ですとか諸々に触れ     ざるを得ないのですが、特にその中で先ほど申しあげた契約で成り立っ     ていない、マニュアル化されていない、これはいい点もあるのですが、     あといろいろとキャリアコースというのがバラエティに富んでいない、     諸々のことから、実は男性も駐在できずに辞めていく人、駐在したくな     くて辞表を出している人、そういう方も非常に増えております。やはり     これは全体で、女性だけではなくて男性も含めて、日本企業というのが     人事をもう一回考え直す必要があるのではないかと思います。      少し今の企業のことなのですが、日本の企業でもう少しキャリアコー     スの選択肢があってもいいのではないかなと私は日ごろから思っており     ます。このキャリアコースの多様化というのは、ライフスタイルの多様     化だってこれだけいわれているのだから、あるべきだと思うのですが、     どういうことかというと、今、一般職とか総合職とかそれは耳慣れてい     ると思うのですが、それ以外に企業オリジナルのものがあってもいいと     思います。たとえば専門職、専任職ですとか、私は専任職とあえて言っ     ているのですが、何々の技術があるというだけではなくて、何々のプロ     フェッショナルであるという、たとえばそれが何かものを売る、その店     頭で売るということでもいいと思いますが、専任の職、そのようにいろ     いろなキャリアコースがあってもいいのではないか。      もう一つ、企業として考えなければいけないのが、いろいろなワーキ     ングスタイルがあってもいいのではないか。ワーキングスタイルの多様     化と私はいっております。これは、たとえばたくさんある中で簡単にい     うと、在宅勤務という仕事の仕方をもっときちんと見直すとか、あと、     エリア限定社員というのをつくるとか、細かいことをいうとたくさんあ     るのですが、そういうワーキングスタイルの多様化も考えるべきだと。      それから、それぞれ何か人生の一部で介護だとか育児だとか何か諸々     のあったときに、できれば選択してコースを変えられるとか、そのとき     テンポラリーに選べるようにもしなれば、なおさらこれは一個人にとっ     てはありがたい。ただ、日本企業は敗者復活が昔からないのですね。一     回外れてしまうと、もう絶対だめという風土であります。これは制度と     いうよりも、風土とか運用面でということなると思うのですが、その辺     をもう少し考えながら進めていかなければいけないかと思います。      もう一つ、今はどうしても大企業は、まだまだ正社員中心になってい     ます。崩れてはいるのですが、これからは正社員以外の雇用形態をうま     く使えるようになっていかなければ、逆に休む人も休めない、時短で働     く人も働きづらいという状況になってくる。      そうすると最後に残ってくるのは、管理職の運用面の問題なのです。      いくら制度をつくっても、運用する管理職が、男性管理職というと申     し訳ないのですが、比較的多いのが、95%、男性管理職なので、マネジ     メント教育が必要なのではないか。マネジメントをひと言でいってしま     うと、今まで24時間戦える部下を10人もっていた人が、エリア限定、時     間限定というような条件つき部下を20人もつ時代がやってきます。その     ときにほんとうのマネジメントができる人、これからは能力・イコール     ・ポストではないということをわかった管理職を育てていかなければい     けない。能力・イコール・ポストだけではなくて、これからのその人の     生活環境を読む、キャリアビジョンを読む、そういうことも含めた人の     育成、活用ができる管理職を育てる、運用面になってくるのですが、そ     の辺が大変大切ではないかと思います。     あまり時間がないので、育休に簡単に触れさせていただき、最後に保     育関係の取り組みに触れて終わりたいと思うのですが、育休そのものが、     今、非常に私どもをバックアップしてくださっている。実際に私も使っ     ております。私も某メーカーの一社員で出向ですので、使っております     が、もう少し柔軟性があってもいいのではないか。ここでお話しするこ     とではないかもしれないのですが、柔軟性、育休の取り方とか、たとえ     ば週に1回出てくる、週に2回出てくるということで、リハビリ兼給与     の保障みたいなものがもしできれば……非常に難しいのもよくわかって     います。ただ、できれば、もう少し途中で辞める人ですとか、企業から     みてお荷物にならなくてすむ。      あとは教育費、これをもう少し柔軟性をもってフィードしてバックし     ていただければありがたいだろう。      それから代行要員のサポートです。なんらかの形でうまく、派遣、高     齢者でもなんでもいいと思うのですが、産休・育休中は代行要員がサポ     ートしてほしい。      あと、復帰後の働き方を、現職復帰のみではなくて、何か。たとえば     3年間、5年間、違う仕事でもいいという方が増えています。その辺の     働き方、キャリアコースを考えていただきたい。      そんなことでいろいろ育休に関してのお話なのですが、最後に、保育     所、ベビーシッターさんとの関係ということでひと言。      まず保育園、ベビーシッターとなるとかなり各論で、時間とか料金だ     とかありますが、私はちょっと違う角度で、今、現状で復帰している女     性たちをみると、もし保育所の整備はまだ時間がかかるとすれば、個人     でかなり出費をしている方が多い。そうすると、今、保育園というのは     もちろんだいぶ援助していただいて子どもを預けているわけなのですが、     入れなかった人、利用できない人のためのバックアップがないのです。      ないというといけないかな。      たとえば具体的に近所の方にみてもらっている、大学生のアルバイト     を使っている、それから両親と住むために家を建て替えたなどという諸     々のことを考えると、何か一定の支援、援助なりをいただいて、それを     勝手に自分で使っていくというのも一つの手ではないかと思います。      それから、保育そのものの多様化。今、どうしてもある保育園、ベビ     ーシッターということのみになってしまいますが、もう少し保育ママを     平たくしたような地域に根づいたものを、たとえば子どもが生まれたと     きに、共働きの人には何かアドバイスをしてくれるような、もっともっ     と共働きを一般化して、アドバイザーが家に来てくれるですとか、保健     婦さんのようなイメージで子どもが生まれたらアドバイスをしてくれる     のと同じように、共働き家庭には「お子さん、どうするの」とか、「二     人目が生まれたらどうするの」というようなことをいろいろ一緒に悩ん     でくれるような人の配置ですとか、それから、ちょっとここまで細かく     は考えていませんが、保育をもっともっと多様化して考えていって、も     っと身近に使えるようにする保育というのを、これから私どもも一緒に     考えさせていただければと思います。      雑ぱくではございますが、時間がすぎておりますので、以上でおしま     いにさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。 宮澤会長 どうもありがとうございました。      引き続きまして、ライフデザイン研究所副主任研究員の前田正子さん     からご発言をお願いいたします。前田さんはお子さんがお一人、アメリ     カでの子育ても経験しておられまして、現在、保育問題などを研究して     おります。なにとぞよろしくお願いいたします。 前田正子氏 ただ今、ご紹介にあずかりました前田でございます。このような場     所で発表させていただいて大変光栄でございます。私が呼んでいただき     ましたのは、普通の働く母親は今、保育園に子どもを預けて働いている     わけですが、どのような問題に直面しているかということを皆さんに知     っていただければということだと思います。      今、先生からご紹介いただきましたように、私はたった一人の子ども     を、今まで、4ヵ所の保育所に預けております。日本の公立、私立の認     可保育園、それからいわゆる無認可保育園でも、ビジネス型といわれる     あまりよくない保育園、それからアメリカの保育園、4ヵ所の保育園を     経験いたしまして、今、保育問題の研究をしているわけです。      ちょっと申しあげたいのは、少子化対策のためには、河野さんも職場     のことを相当いわれましたが、まず一つには保育園の制度は欠かせませ     ん。しかし一方では、私は保育園の研究をすればするほど気がつきまし     たことは、保育園だけでは子育ての問題は解決できないということなの     です。保育園だけで子育ての問題を解決しようとすれば、中国やソビエ     トでかつてあったような24時間型の保育園をつくって、そこに子どもを     預けて男も女も深夜労働をするという形にならないと、子育ての問題は     解決しないわけです。それはやはりおかしいわけで、保育園の整備と同     時に、男性、女性を含めて働き方を見直していく。車の両輪のように両     方からやっていかないと、保育園問題も解決しないし、子育ての問題も、     働く女性の問題も解決しないということをまず強調させていただきたい     と思います。      それから、私はいろいろな保育園を経験いたしましたが、はっきり申     しあげまして日本の保育園制度はレベルが非常に高いです。スウェーデ     ンの保育園などを見にいきましたが、保母さんというプロフェッショナ     ルな職業である人たちが、高い教育を受けて子どもの保育にあたる日本     の認可保育園というのが、世界的にみても非常にレベルが高い。そんな     なかで、私は日本の認可保育園制度を拡大するという方向でまずは保育     園の問題を解決していくべきだと思います。      ここに書きましたのですが、保育所制度は緊急課題という他に、いろ     いろな少子化対策では、たとえば出産・育児手当金などを出すというア     イデアがありますが、先生たちもおわかりの通り、子どもひとり育てあ     げるには2000万円かかるわけです。少々10万、20万の出産費用をもらっ     ても、そのおかげで子どもを一人産むという人がいると私はとても思え     ません。むしろ出産手当金などのお金をばらまくよりも、一人でも保育     園に入れる子どもを多くしていただいて、子どもを産んでも必ず仕事を     続けられるという安心感のある保育制度にしていただきたいと思います。     たとえば実際に私は年齢も37ですし、子供も1人で、次の子を産みた     いと思っているわけですが、なかなかそこに踏み切れない。どうしてか     というと、まず、産んだあと、保育園に入れる保証がないのです。たま     たま保育園に入れればいいですが、私が住んでおります川崎市というの     はとても若い夫婦が多くて、保育園の待機児が非常に多いところですの     で、フルタイムで働いていても入れる保証は全然ありません。     保育園に入れなかった場合、私はどういう選択肢があるかといいます     と、まずいい無認可保育園というのがあります。しかしいい無認可保育     園というのは、保育状況が逼迫している都心部の認可保育園と同じよう     に、4月で満杯になります。だからいい無認可保育園に預けようと思っ     ても預けられないのです。      次の選択肢がありますのは、河野さんもおっしゃいましたが、ベビー     シッターという手がありますが、フルタイムのベビーシッターさんを雇     えば月に25万円から30万円ぐらいかかりますので、そこまでやるか、と     いう感じですよね。     それか、私の子どももいきましたが、ビジネス型の無認可保育園です     といつでも入れるわけなのです。しかし、どういうことがなされている     かといいますと、はっきり申しあげて、81年にベビーホテルでたくさん     の子どもが死んで、そのとき、いろいろ大騒ぎされましたが、ベビーホ     テルの状況は基本的には変わっていません。非常に悪い状況の中で、大     多数の子どもに無資格の少人数の保母さんという状態で保育が行われて     います。     これは、そうしないと経営的に成り立たないということもあるのです     が、私も実は認可保育園に入れるかどうかわからないとき、こういう無     認可保育園に子どもを預けました。でも子どもは一日中外にも出られま     せんので、非常に悪い保育を受けていますし、夕方、迎えにいっても、     不幸せそうな顔をしているのです。     私はそういう状況を今ここで申しあげますが、そのときは、だれにも     言いませんでした。「私の子どもは認可保育園に入れずに悪い無認可保     育園に行っているのよ」と言えば、皆さん、おっしゃることはわかりき     っています。「おまえが働くから悪い。仕事を辞めなさい」といわれる     にきまっているからです。ですから、夫にも実家の親にも「今いってい     る無認可保育園はすごくいい保育園なのよ」と言い続けて、うそをつき     続けていたのです。      私は運よく認可保育園に入れましたが、今でも私の子どもがいった悪     い無認可保育園は満杯状態なのです。支店も三つぐらいできています。      何人もの親がそこに子供を預けているのです。皆さんは、親が選んで     いるから悪いといわれるのですが、そこへやらざるを得ない。みんな、     非常に悪い保育園で子どものためによくないとわかりつつも、その保育     園に入れなければ働けないわけです。みんなそういう苦しみを抱えなが     ら働いているのです。ですからぜひ、ほんとうに胸を張って「いい保育     園に預けてるのよ」といえるような認可保育園に一人でも入れる子を増     やしていただきたいと思います。     それから、私は保育園探しをしましたときに、市役所の福祉事務所や     保育課にいきましたが、全然入れないのです。そのときに「前田さん、     好きで勝手に働いているのに、保育園に入れないといわれても困ります。      今、財政難ですから、保育園は整備できません」と言われたのですが、     あとで私の書きました日経の記事を見ていただくとおわかりになると思     うのですが、そのときに非常に不思議に思いましたのは、私は働いてい     るので、住民税も所得税も社会保険もちゃんと払っているわけです。確     かに保育園という公的費用が使われているところを使って働かせていた     だいておりますが、仕事を通して社会的に付加価値をもたらしますし、     納税者としても一人前の働きをしているわけです。     私が計算しましたところ、確かに保育園には公的費用が投下されてい     ますが、母親が大体年収 300万ぐらいとってフルタイムで働けば、税金     や社会保険料で立派に保育園にかかるコストは返還しているわけです。      さらに保育園に子どもを預けて母親が仕事を続けられるということは、     その保育園に預けている5年間だけではなくて、母親の一生涯の職業生     活を左右するわけです。そういう生涯賃金などを考えますと、保育園に     思いきって投資をしても、母親が働き続けることができれば、社会にか     なりのメリットが返ると私は考えております。保育園の投資を惜しめば     一層少子化も進展しますし、女性の就労率も上がらないということで、     社会はますます沈滞するのではないかと思っています。     それが資料の2番の「保育所整備に思い切った投資を」ということに     つながるわけですが、今、特に保育園は、確かに4〜5歳の年齢の多い     ところでは定員割れしているのですが、0、1、2、つまり育児休業・     産休をとったあと、復帰できるか、もとの職場に戻れるかといういちば     ん肝心なところの整備が足りないのですね。そこを倍にして 201万人ぐ     らい定員をいたしましても、私の試算では、全国平均の運営コストをか     けまして年に2兆6000億円ぐらいで運営できます。それを親と自治体と     国が三者で負担いたしますと、親は大体月に3万円ぐらいの保育料、だ     から年間36万円ぐらい負担する。それから自治体で8000億円ぐらい、私     の試算では自治体はかなり持ち出し負担をしておりますので、保育関係     ですでにこれぐらいの費用を負担していると思います。また国は8000億     円ぐらい出すということなのですが、現在、国の保育予算、措置費とい     うのは、3357億円、平成10年度には予算要求されているわけですが、こ     れに新たに4600億円ぐらい上乗せをすればできるのではないかなと思い     ます。     ですけど私は、子どもというのはいろいろな意味がありますが、今い     ちばん危機的にいわれていますのは年金制度ですので、30兆円の年金予     算から、年金予算の 1.5%ぐらいですので、年金を支えるための将来の     投資ということで保育園に思い切った予算を割り振れないかと思ってい     ます。      それから少子化対策ということで、今、緊急五カ年計画という計画が     出されているわけなのですが、この五カ年事業も、5年で終わるのでは     なくてぜひ継続していただきたいと思っています。      皆さんは、財政難で財政改革、行政改革といわれますと、ニュージー     ランドが非常に有名で、運輸省の役人が数人になったとか、非常にそう     いう事例をお聞きになると思うのですが、あれだけ財政カット、行政改     革をしたニュージーランドで唯一予算が倍に増えたところがあるのです。      それは保育課です。つまり、就学前の児童の保育環境というのはその     まま人生の将来学習とか人間の能力の発達を左右する。守るべきものは     必ず守らなければいけないということで、不必要な部分の行政改革、規     制緩和は徹底的に行いましたが、保育と子どもの命を守る、子どもの発     達を守るという部分が手厚く守られております。そのように守るべきも     のは守る、やめるものはカットして、重点的に必要なものに対しては配     慮をするということをしていただきたいと思います。      今、エンゼルプランと同時に、駅型保育とか民間保育ビジネスの振興     ということが非常にいわれているわけなのですが、私は、民間保育ビジ     ネスの振興には非常に懐疑的です。それは、私はアメリカの保育園に実     際に子どもを2年間預けたからです。アメリカの保育というのは、公的     な費用は殆ど入っておりませんで、マーケットがすべて解決する、ニー     ズあれば供給ありということで、保育制度の殆どすべてが私企業ベース     で運営されいるわけなのですが、非常に保育のレベルは劣悪です。      皆さん、よく勘違いなさっているのは、アメリカの保育状況というこ     とで、専業主婦の方が映画を見にいったりダンスパーティに行くときに     ちょっと学生のベビーシッターを雇う、そういうときの臨時のものと、     フルタイムで働く親が毎日12時間ぐらいの恒常的な保育に必要とする、     それから12時間ぐらいの恒常的な保育に求められるレベルはおのずと違     うというわけです。     アメリカの場合は公的な費用が入っておりませんので、日本の認可保     育園並みの保育を受けようとしますと、保育料が月に12万から15万円ぐ     らいです。ですからニューヨークとかワシントンなどのエリート層のい     るところには、保育料15万円とか18万円のわりと至れり尽くせりの保育     をする保育園がありますが、そういう保育園にいっている子はひと握り     です。それから日本のレベルの高い認可保育園に比べてどうかというと、     そんなに大してよくないのではないかなという気がいたします。     私の子どもがいきましたのはチェーン型のビジネス保育ということで、     保育料が8万円ぐらい、中産階級の普通の子どもたちが行く保育所なの     ですが、そういうところは、園長以外保母さんの多くは教育訓練がほと     んどなされていない。パート、アルバイトです。だから非常に職員の入     れ替わりが激しいし、きのうまでマクドナルドで働いていた人が、きょ     うマニュアルで教育を受けて来週はからは保母ということで働きます。      どういう人が保母になるかというと、大体新しくきた移民の人で、英     語をうまくしゃべれないので、まず保育園で働いて子どもを通して英語     を習って、そして再就職していっていくということで、皆さん、英語は     あまりしゃべれない。それから失業者で、再就職がみつかるまでのつな     ぎとして働いている。     そういうことでビジネスに任せますと、おのずと親が払えるお金は限     りがあるわけですから、最初に親が払える保育料が決まり、その保育料     でできる保育のレベルが決まりますので、実は保育というのはアメリカ     の社会で最も恥ずべき部分といわれますが、非常に改革が遅れておりま     す。皆さん覚えていらっしゃると思うのですが、クリントン大統領が女     性の司法長官を任命されましたときに、その女性がメキシコからの移民     を社会保険料などを支払わずに違法労働者のベビーシッターとして家で     雇っていたということで司法長官の指名を辞退したわけです。エリート     の皆さんは、そういう形で移民労働者とかなどを雇いながら個人的に解     決しているということで、ビジネスに任せると非常にまずい事態になる     ということで、私はビジネス型の保育の振興には反対しております。     ですから、ぜひ日本も認可保育園制度の充実をしていただきたいと思     います。     それから、もう時間がないのですが、私はもうひと言申しあげたいの     は、後に黒田さんが言われると思うのですが、子どもが産まれて辞める     お母さんも多いのですが、実は子どもが小学校へあがった時点で仕事を     辞めるというお母さんが結構いるのです。     まず小学校は、お母さんが専業主婦で家にいることが前提に運営され     ていますので、PTAなども全部平日に行われますし、学童保育のお粗     末さには目もあてられない状況です。ほんとうに数少なく生まれる子ど     もが大事にされているかといいますと、先ほど申しあげましたように、     かつて問題を起こしたベビーホテルのような無認可保育園がどんどん増     え続けているということ。それから学童保育に入れなくて、カギっ子で     ひとり待っている子とか、せっかく学童保育にやっと入れても、6畳2     間の狭いところに30人も40人も子どもが押し込まれている劣悪な環境で     子どもは育っているという状況であります。     地方都市などですと学童にも入れるのですが、夏休みなどは学童保育     が3時、4時に終わります。そうしますと子どもは首から鍵を下げて家     に帰るわけですから、親が帰ってくるまではひとりで待っているわけで     すね。当然、学童保育から帰る子どもたちをつければ、どこの家に住ん     でいるかわかるということで、ある都市ではひとりで家で親が帰ってく     るまで留守番する子どもの家を狙って、強盗や押し込みが頻発している     という地域がありますので、非常にまずい状況です。      でも、なかなか今はそういう状況と言えないのです。先ほどの私が無     認可保育園に入ったときと一緒なのですが、子どもたちがそういう状況     にあるから危ないと言いますと「じゃあ、なんでおまえは働くんだ」と     いわれて、結局、母親が辞めざるを得ない状況になります。そこでみん     な黙って、なんとか個人的に解決しながら、心の中に痛みを抱えながら     働いているわけです。そういう状況にいることをわかっていただきたい     と思います。      最後にもう一つ、絶対に申しあげたいのは、資料の8番なのですが、     今回、男女雇用機会均等法が改正されまして、99年の4月から女性の残     業・深夜業規制が撤廃されるということなのですが、私は、これが発効     いたしますと少子化がますます進行すると思っております。     実際に労働省の方は、専門職の女性のあいだでも、この深夜業や残業     規制を撤廃してほしいという意見が多かったとおっしゃられているわけ     なのですが、確かに調査によるとそうなのです。6割の女性が、残業規     制、深夜業規制の女性の保護は必要ないといっている。しかしそのさら     にもう一つ下の項目をみますと、なぜ必要ないかといいますと、男女共     通の残業規制が必要だということをいっているわけです。そうでないと、     男女ともに子どもを育てたり家庭を維持することができないといってい     るからなのです。私は、もうこのまま深夜業規制が撤廃されると、ほと     んど家庭が崩壊するのではないかと思っているのです。      どうしてかといいますと、今、河野さんが言われましたみたいに、産     休や育児休業をとれないお母さんはすごく多いのです。産休はまだしも     育児休業をとると「帰ってくると席がないよ」と言われて、仕事を続け るお母さんが多いのです。そういうこともあるから、育児休業の制度が     あるにもかかわらず0歳児保育の状況はすごく逼迫しているのです。      取らせなければいけない、従業員が権利として育児休業をとりたいと     いえば、必ずとらせなければいけない育児休業でさえ与えないというこ     とが多いのに、深夜業の規制が撤廃になって、就学前児童をもつ親は深     夜業を拒否できることになっていますが、ほんとうに拒否できるのかと     いう問題がすごくあるわけです。      それから、小学生になれば、夜、ほんとうに母親や父親は必要ではな     いのかと考えていただきたいと思います。残念ながら神戸の事件の子も     小学校5年生でしたし、福岡で殺された女の子も小学2年生です。小学     校の子が、夜、親がいない状況でほっておかれていいのかということを     考えてみたいと思います。      残業規制から既に外れている専門職の女性がいるわけです。私はその     女性たちにインタビューを何回もしたのですが、男性並みに皆さん 100     時間残業もします。中には 160時間残業をしている女性もいます。ほと     んど妊娠不可能な生活を送っているわけです。妊娠しても、妊娠そのも     のが維持できない。そういう働き方が一人前で、それから降りる女性は     辞めるしかないということは、当然女性は、結婚しなくて子どを産まな     いで働き続けるしかないわけです。     ですから残業規制、深夜業規制、今、討議が進められていますが、社     会のあり方として、子どもをみんなが豊かに産んで育てられる家庭のあ     り方を支える働き方は男女ともにどうあるべきかということを考えて、     ぜひ働く場の改革を進めていただきたいと思っております。     どうも長くなりましてすみませんでした。 宮澤会長 ありがとうございました。      続きまして、NHKアナウンサーの黒田あゆみさんにご発言をお願い     いたします。黒田さんは、お子さんがお一人いらっしゃいます。キャス     ターとして多面的にご活躍中でございます。お願いいたします。 黒田あゆみ氏 黒田です。よろしくお願いします。この夏、O-157の騒動がある     中で、夏休みをいかにして無事にすごすかというのは、小学校にあがっ     た子どもをもつ母親にとっても、母親も父親も入れるという前提で考え     ますと、働いている両親にとっては結構大変なのですね。学童というの     は、先ほど前田さんがおっしゃったように低学年の1年から3年で、こ     れは厚生省さんの補助をしている定義に従って考えますと、学童の施設、     1年生から3年生が原則で、そして20人以上預かっているところという     ことで、とりあえずは夏休みもお弁当を持たせて学童に行かせますので、     この期間はなんとかなるのです。でも、学童を卒業するころになります     と、もう4年生、5年生になっていまして、うちは5年生なのですが      「この夏、どうしようかなー」というのがあるのです。      O-157などということをいわれているなかで、朝早くにお弁当をつく     っていくわけです。お昼にひとりで食べるお弁当を。これは当たったら     困るよね、と思いながら、当たらないことを祈りながら、当たるという     のはお弁当に当たることですけど、出ていくわけです。      そういう中で、あと数日で夏も終わりというときに連絡網が入りまし     た。これはクラス全部回しているもので、私は横浜市の公立の小学校に     いかせていますが、「子どもをひとり歩きさせてはいけません」という     連絡網なのです。それで私は、またかと思ったのです。子ども一人いて     も、ついて歩くわけにもいかないわけです。親が仕事をしていれば。専     業主婦だってそうでしょうね。もう5年も6年にもなった子どもの行動     にいちいちくっついて歩いているわけにもいかない。ましてやより低学     年の子どものいる家庭では、親が仕事をしていたがゆえに子どもが何か     の事件、事故に巻き込まれたとあっては、やはり世間さま、もちろんわ     が子にもそうですが、申し訳が立たないわけで、ほんとうに治安の悪い     世の中になってしまったということが、ますます子どもを産み育てる環     境としてはほど遠い状況になってきたなと思うのです。      ましてや2人や3人、4人子どもがいたら、仕事をしていて4人産む     というのはなかなか勇気があると思いますが、でも4人もいたら、親が     二人でどうやって追いかけ回そうかという状態で、これは警察庁にお願     いすべきことで、厚生省さんに言うべきことではないかもしれないので     すが、非常に世の中が子どもをもつのには、環境的に考えても治安の面     からみても、あまり安心して育てられない状況になってきています。      さらに9月に入りまして、9月1日、防災の日。朝、迎えに来てくだ     さい。これは学童をやっているうちはいいのです。学童の方がまとめて     全員みてくれますから。でも、朝11時までに子どもを迎えに来いと。こ     れもだれか近所の人でいいのですが、ご近所の人にも「すいません、う     ちの子どもを連れ帰ってください」というふうに今まではお願いしたり、     あるいは父親に頼んだり、いろいろみんな苦心惨たんして、とにかく親     業を代わってもらえる人を探すわけです。そういう意味で私は、地域の     サポート、近隣のサポートは非常に欠かせないなと思うのです。     もちろん近隣のサポートという中には、遠くの親戚より近くの他人と     いうことが第一で、近くに親戚、親、あるいは義父母でもいいですが、     いてくれたら、代役を果たしてくれるわけですが、9月1日はそれでな     んとかしのぎました。      次にきたのは、これは厚生省さんではなくて、今度は気象庁にいうこ     となのでしょうか、大雨警報が、台風のときに子どもは外に出してはい     けない、登校させないでください、というチラシがくるのです。これも     また子どもの命を守るうえであたりまえのことかもしれませんが、たと     えば朝、子どもが出かけるのは、公立小学校の場合は大体8時前後にな     ります。たまたま私が早朝に出かけるという仕事をしているのがいけな     いのかもしれないのですが、両親ともに不在の状態で、鍵を自分でかけ     て出かけることになるのです。そうすると子どもはテレビを見ていて      「よし、大雨警報が出た、休もう」と、なかなか子どもの力で判断する     のは難しいのです。      私は、リハーサルに入る前だったのですが家に電話をして、神奈川県     の東部というのがうちの地域ですから、東部に大雨警報が出たら行く必     要ないから、と。行く必要ないということは、今度はお昼をどうやって     食べさせようかというまた次の難問が起こるのですが、それで、外をほ     かの子どもたちが登校するようであれば行きなさいとか、なかなか子ど     もが高学年になっても、ひとりで判断して行動するというのは難しいで     すよね。      学童のときは、そういうことを学童がかなりカバーしてくれますので     いいのですが、中高学年になると、自立心のある子どもを育てているつ     もりではありますが、世の中の治安が悪い、はたまた台風がくる、エル     ニーニョ現象がある、これはだれのせいにもできないのですが、なんで     こう子育てしにくい世の中になったかなと思います。      早く帰ることができれば、子どもの夕食づくりには間に合うのですが、     現在、学童も夕方の5時とか6時までなのです。保育園は7時、8時ま     でやってくれているところ、あるいは深夜型の保育園、それから父親が     ひとりで子育てをしている場合のトワイライト型というのでしょうか、     さまざまな施策をしていただいておりまして、なんとか子どもとともに     夕食を食べられるようにという方向へは動いているようです。また、労     働組合などでも時短を求めておりますので、男女ともになるべく早く帰     れるようにという、就業的にはそういう方向にいっているかのように思     いますが、でも実際には、帰って夕食づくりをして何か食べて、おふろ     に入って寝るという戦争のような状況の中で、あ、きょうも1日、みん     ななんとか御飯が食べられたからよかったね、というのが子どもを育て     ている親の実感ではないでしょうか。      ここで私は思うのですが、外食サービス、宅配サービスというのが今、     非常に充実してきております。だから、無農薬野菜だの有機農法の野菜     を宅配してくれるとか、なかなか自分で買い物に日常的に行かれない高     齢者、あるいは仕事をもっている父母のためには、そういう外部パワー     が充実してきていることは評価に値すると思います。でも今、私の番組     などでは、どういう人が健康でご長寿、医療保険のお世話にならずにす     んでいるかという番組を日々やっておりますが、それを見ますと、私な     どの世代もそうですが、かなりいろいろな添加物に染まって育った世代     は、きっと長生きできないだろうな。いや、長生きするかもしれないけ     れども、医療費は十分使わせていただくだろうな、ということを思うわ     けです。      そうしますと、食事の面で不十分な子育てをされた、そういうふうに     いうと母親を家に閉じ込めるという方向で墓穴を掘っているような気も     いたしますが、ここが働く親のジレンマなのですね。なんとかその日暮     らしですんだというような状況で子どもを育てておりますと、はたして     健康で年金を支え、医療費を使わず、こういういい子が育つかどうか、     厚生省さんは、10年後、20年後、30年後の労働者を育てていると考えて     いかないと、こういう意味でも、時短とかあるいはいろいろな意味で、     なんとか世間並みの平均的な食生活を保障された、自分が親で食生活を     保障しなければならないのですが、そういう意味で介護パワーというも     のももうちょっと柔軟に導入できればと思っております。     それから時短ということになりますと、女性も仕事をしておりますと、     あるいは晩婚化、それから高齢出産が増えますと、残業、出張もしない     わけにはいかない。男性に代わってもらうというわけにもいかない。こ     ういう点でも、子どもを2人、3人育てているなかで男性と同じレベル     で仕事をしていくと、改正雇用均等法がどうなるかわかりませんが、そ     ういう中で非常に厳しい状況がくるだろうなと思います。      たとえばこういうときに、社会的な近隣の人の援助を得られないで、     なんとか自分の親だとか義父母によって子育てをしている方の場合は、     そこへ今度は後の介護がふりかかってくるわけです。そうすると、育児     の意味から考えても介護の意味から考えても、べつに親の手を借りずに     子育てをした、私もそうですが、そういう者にとっても介護というのは     平等にふりかかってくる、あるいは男性にとってもふりかかってくるこ     とですから、介護のほうも育児のほうも同じ意味で施策を練っていただ     くしかないかなと思うのです。少しでも夕方早く家に帰る、介護の手当、     あるいは外部パワー、公的介護保険の問題もそうでしょうけれども、根     っこのところでは同じ問題があるのではないかと思っております。      さて、高学年になってきますと、今、担任の先生から、なるべく社会     的な関心を抱かせてください、社会的な体験を豊富にさせてください、     と言われるのです。国語だとか算数だとか理科だとかいうのはいいので     すが、社会の授業は今、多岐にわたっていまして、ほんとうにいろいろ     なことに興味をもつという、自分からおのずとそういう性格の子どもは     いいのですが、ひとりっ子だったりしてなかなか外に出歩かないという     ようになってくると、社会的体験の関心が少ないと担任から指摘を受け     まして、それって、親も一緒に何かそっちの方向を示唆するような行動     をとらないとまずいんだろうなと思いながら、やはり親は親で自分の仕     事に追われているという状況のなかで、子どもへの学校からの要求が非     常に高まっているのです。こういうのは非常に大変だなと思っています。      それから、中高等6年制一貫教育を、文部省さんにいうことなのでし     ょうか、というのが実施されようかとしておりますが、こういう中でも     はたしてスムースにうまくいくだろうか。そうすると、ますます現時点     での中高学年からの受験競争は加熱をしておりまして、私は、学童がな     くなってしまったのでしかたなく塾へ子どもを預けて、夜9時近くまで     預かってくれるのです、塾って。ほんとうにありがたいですよね。その     後の受験はともあれ、こんなに長いこと子どもを預かってくれるところ     っていうのは、世の中にはないんですよ。そして、保育費よりも塾のほ     うが安かったりするものですから。      これはすごい皮肉を言っているわけですが、預ける先を探さざるを得     ないというのは、非常に情けない。わが子を自分が苦しんできた受験戦     争に駆り立てているようなこともありまして、2人、3人、そういう状     況になって、兄弟がいれば、兄弟でうちで留守番しているからいいじゃ     ない、と言われますが、兄弟をまた育てるのも結構大変で、育ったら育     ったで教育費がかかって、ほんとうに産みにくい時代が来ましたよね。      1人目は、私、恥ずかしなから勢いで産みました。勢いで産んでよか     ったと思いました。ところが2人目は、産みそびれているうちにとうと     う子どもは11歳になってしまいまして、このままどうしようか。みんな     がなぐさめてくれます。私の番組の出演者は、44歳、45歳で出産だった     という芸能人の方がいらっしゃいますから「大丈夫よ、あなた、あと3     人産めるわ」といってくれます。産むのは簡単ですが、育てるのが大変     なのですね。ですから結局2人目不妊といいますか、あえて2人目を産     まないというような選択をしている人が、ディンクスではないのでしょ     うけれども、ウイズ・ワン・キッドということで、1人産むのがやっと     いうことなのではないでしょうか。     子育ての大変さを味わったからよけいに二の足を踏んでいるという状     況が、私も10年続いて、ではなぜひとりっ子でもいいのかという、いい     とは思っていないですけれども、ふり返って自分の内部の反省として考     えてみますと、結局、仕事をもってなにもかもいろいろな欲望を満たし     たいというふうなのは欲張りだと。あえてそういう批判を受けるならば、     ではそのすべての欲求を少しずつ叶えていく、中途半端に中庸に叶えて     いくしかないというのが、子どもをもち、外部の仕事をもち、あるいは     家の中でフルタイムに近い仕事をしながら子どもをなかなか保育できな     いという状況にある夫婦の、あるいはひとり親家庭の悩みだと思います。     すべての欲求を少しずつ叶える、仕事もなんとか人並みというか、ア     ップアップしながらやっているわけです。それから、生きがいというの     も、長い老後も見据えて視野に入れて考えていくと、自己実現とかある     いは社会的責任を全うするとかそういうことを考えると、必要だろう。      それもちょっといいところをもらっていく。いいところではないです     が、なんとかそのことで欲求も満たす。     そして育児という点で、親業というのも、人として産まれたからには、     子どもにもし恵まれるチャンスがあるのであればやってみたいなという     ことであれば、では、2人、3人は大変だけども、1人でも産むことに     よって親という体験を得られるのではないかと考えると、これまた中途     半端でありながら、ひとりっ子を育てることで喜びというのでしょうか、     欲求を叶えるというのでしょうか、みんな中途半端にしか人生を味わっ     ていかないのですね。      それでもいろいろやっているからいいじゃないかといわれるかもしれ     ませんが、今、私の悩みは、もしこの子どもが何かの事件、事故に巻き     込まれて、きょうはうちの番組で肺結核というのをやったのですが、26     歳になって肺結核で亡くなったお嬢さんがいると聞いて、二十すぎても     子どもは死んでしまうのかと思ってがく然としたのですが、あたりまえ     のことのようですが、いくつになっても、この子どものスペアを産める     年齢ではもうなくなってくるという自分の出産限界期というのでしょう     か、臨界点に達しているのかなというのが、年々拍車をかけて不安感が     募ってきます。      では、2人目を産めばいいじゃないかというのですが、今、私が子ど     もを産むということはなかなか、産んでもいいのですが、やはり勇気が     要るなと思うのです。そうなりますと、なにもかも中途半端で、あちこ     ちに頭を下げながら生きているという状況が、ひとりっ子を生む。さん     ざん審議会で議論されたでしょうけれども、一つの欲求をやっと細々と     叶えながら生きている現実を感じております。      では、なぜ男性は、時短、時短という中で仕事に追い込まれていって     いるのだろうか、非常にかわいそうな状況ですね。諸先輩たちをみてい     ますと、若い者を帰らせるために、自分が逆にカバーしているという管     理職の悲しいさがをみるのですね。まだ子供もうちと対して違わないだ     ろうと思うと、この人の家庭はどうなっているのだろうか。専業主婦と     生活役割分業をきっちりなされている家庭においても、では管理職がそ     の分の泥をかぶっている、大丈夫なのだからいいじゃないか、経営なん     だから、ということはあるかもしれないけれど、その人の人間的な生活     が全うできているか、あるいは家庭的責任がみられているかということ     を考えますと、これは非常に大変です。      だから、男性もすき好んで仕事をしているとは思いません。あるいは、     女性もディンクス、あるいは独身を通すということも、好んでそうして     いるのではないという状況はありながらも、でもあえて逆説的な、ある     いはちょっと挑戦的な言い方をさせていただくならば、私は思うに、仕     事は結果がみえるのです。失敗があって死にたいほどいやになるという     状況はあっても、とにかく仕事は結果が早くみえるのです。だからそこ     に集中していくと限りなく、おもしろいとはいえないかもしれませんが、     とにかく手応えはプラスなりマイナスなりでもあるのです。      ところが育児というのは、あたりまえですが、結果はなかなかみえな     い。あるいはそこに尽力したとしても、なにしろ相手は自分が産んだ者     でありながらままならぬ他人格でありでしょう。それで、仕事の仲間で、     こんな将来に渡って責任を負わなければいけない相手はいませんね。気     に入らないチームメートがいたとしても、その人の老後まで私は面倒を     みなくていいわけです。ですから、その仕事さえうまくいけばハッピー     で打ち上げができるわけです。ところが、子どもはそういうわけにいか     ないのです。将来にわたって責任を負っていかなければならないという     のが親業なわけです。      非常に難しい時代を迎えて、結果がすぐに得られないと、マニュアル     世代といわれる私の世代などはいらいらしてしまうのです、はっきり言     って。私にやらせてもらえば早いのにと思うことはずいぶんあるのです     が、それではいけないものですから、かんしゃくもちの親をアダルトチ     ルドレンというのでしょうかね、自分もおとなになりきっていないのが     急に親になってしまったという、そして偏差値とかマニュアルの中で振     り回されて生きてきた者が、こういう場で言うのはほんとうに自分で恥     ずかしいですけど、そういうのが親になっている。なかなか一人の子ど     もを末永く見守ってなんてとてもできないのですね。これが2人も3人     も倍増されるという状況を考えると、私は「いやだな」とわがままに思     ってしまうのです。      それでも楽しい、見返りといわないまでも、子どもから与えられるも     のは非常に大きいです。きれいごとを言うようですけど。だからよかっ     たなというふうにはしみじみ思っていますが、そんな個人的な事情と、     それから外部の福祉的なサービスの面と、もう一つは、世の中の治安そ     のほかを含めた、簡単にいえば世の中は悪くなってしまっているという     ことで、なかなか第2子、第3子は産めない状況にあります。      非常にまとまらないことを申しあげましたが、ご清聴ありがとうござ     いました。 宮澤会長 どうもありがとうございました。      続きまして、弁護士の福島瑞穂さんよりご発言をお願いいたします。      福島さんは、届け出をしていない共同生活者とお子さんを育てながら      弁護士活動を行っています。よろしくお願いいたします。 福島瑞穂氏 どうも皆さん、こんにちは。ご紹介にあずかりました弁護士の福島     瑞穂です。私は、個人の体験をちっとだけ話して、どういうことが変わ     ればもう少し子育ても楽しくなるのだろうかということをお話ししたい     と思います。      私自身はいい加減な不良ママなので、子育て自身は大変楽しかった。      子どもが18歳になったら、家族解散式をやろうと思っているので、今、     娘は11で、もうじき12ですから、あと6年ワクワク楽しくすごせればい     いなと。ただ、悲しいかな、今、小学校6年生で、今まで牧歌的に育っ     ていたのが、受験競争や成績のことが初めて視野に入ってきて、これが     なければ楽しくいけるのにな、という状況です。      私自身は実は前田さんと同じ川崎市にいるのですが、産まれて産休明     けからベビーホームに預けました。これは、保育ママさんが自宅を開放     してベビーホームをつくっている。つまり厚生省の援助は何も受けない     で子育てをしてしまったという感じなのですが、そこにイヌがいたりウ     サギがいたり、そこのうちの子だくさんのお母さんが子どもをみている     という感じの雰囲気だったのですが、私にはそこがとても楽しくて、7     時までに迎えにきてほしいといわれていたのですが、その方の自宅です     から、時間を結構動かすことができた。病気や熱があるときに日曜日に     預かってくれたり、夜、年に何回かですが、調子が悪いときに彼女をそ     のまま連れて帰らないで泊まらせたりということもしました。      今も娘たちは、夏休みはそのベビーホームに遊びに行ったりしていま     すので、家庭的なわがままのできるところで育つことができたと思いま     す。      家政婦さんやベビーシッターさんやお手伝いさん、両方の両親は全く     いなかったので、基本的に彼と私とその預かってもらうところでやって     きたという感じです。      小学校も1年から3年までは学童クラブにお世話になりました。学童     クラブに入るために引っ越したという感じなのですが、そこでお世話に     なったということがあります。クラブさんのほうからも非常にありまし     たが、あと地域、近隣のサポートというものあったかなと思います。      私自身は、こういうところへ来て言うと不謹慎かもしれませんが、子     育て自身は非常に楽しかったというか、おもしろかったと過去形にして     はいけないですが、おもしろい。最近、娘と話をしていて「だれだれち     ゃん、かわいそう」というので「どうして?」と聞いたら「だって、家     に帰るとママがいる」とか言っているのです。私は、家にいて子どもに     八つ当たりするよりは働いていたほうがいいし、むしろ親がいないあい     だは子どもたちは勝手にパソコンとかで遊んでいますので、私たちは負     い目ももたずにということはあります。      ただ、私自身が実はノーテンキにやってきた要素というのはいくつか     あると思います。それは、私もパートナーも自営業なので、組織の中で     上司、同僚に対して気兼ねをするということがなかったということがポ     イントなのですね。      二つ目は、パートナーというか、彼も同業なのですが、私以上に育児     にかかわってくれたということがあります。ですから、週の半分はどち     らかが子どもと御飯を食べるというのが獲得目標なのです。それはずれ     ることもありますが、どちらかが基本的に子どもと御飯を食べる。です     から三人同時に存在するということは少ないのですが、ただ、働く立場     からいいますと、週の半分は家で御飯を食べる、週の半分はとても夜遅     い、出張にも行く、場合によっては海外出張も、年間の中でお互いに半     分ずつになるように、私が1ヵ月アメリカに行くのだったら、あなたも     1ヵ月ぐらいことしは行ってもいいみたいな形でやる。     そうすると、全部お母さんが育児を背負っているということがすごく     よくない。趣味の子育てといったらおこられますが、そういう状況だっ     たら、たぶん子育てが楽しめる。もっというと、 365日、24時間、ファ     ミリーマート営業で子育てしている専業主婦の人は、それは子どもの首     でも絞めたくなるわな、という感じでは思っているのです。つまり全部     だれか一人が背負うとか、女だけが背負うというのはやめたほうがいい     と思う。     三つ目は、学童クラブもそうなのですが、地域で、団地みたいなとこ     ろに住んでいるので、月曜日はだれちゃんち、火曜日はだれちゃんち、     水、木、金はだれちゃんちとか、学童クラブの共働き家庭のうちに子ど     もたちが集まって、そこに迎えにいく。そこで御飯を食べさせてもらう     こともありましたから、お中元、お歳暮をもらったのを少しもっていく     とか、いい加減な中で、むしろ家族を超えて一緒に遊んだり、たとえば     遊園地に行くとなると、近所の子どもたちを適当に連れて出かけてしま     うとか、西洋長屋みたいな形で暮らせたのが、たぶん非常にほっとした     ということがいえます。     逆にいうと、子育てが楽しめる要素というのは、今の企業とかにはと     ても少ないと思います。ここから急に弁護士的な話をしますと、妊娠・     出産による退職強要の裁判というのはやったことがあって、あるいは妊     娠・出産したことで辞めてくれといわれたケースを、交渉で解決したこ     ともあります。     それから、均等法施行以降にむしろこういうケースがあるのです。妊     娠・出産した。産休中に上司が自宅の近くにやってきて、「君は育児・     家事と仕事をどう両立させるのかね」というふうに彼女は詰められたの     で、思わず退職届を書いてしまった。まずいと思って組合に駆け込んで     裁判で争ったのですが、それは最終的には和解金を払ってもらって、彼     女自身は辞めるという形で解決になったのですが、均等法が施行された     以降に、むしろこういう事件が実は末端ではたくさんあるということで     す。     妊娠・出産などで解雇してはいけないとか、もちろん均等法では規定     があります。でも、解雇とはならなくても、辞めてほしいというふうな     ことを言われる。大手町などでは、ほんとうに妊婦服の人や妊娠姿の人     はあまり見ないですから、実際はそういう問題がある。     前田さんが育児休業をとって復職のことを話されましたが、育児休業     法はもちろん解雇の禁止という規定があります。しかし労働相談をやっ     ていますと、組合の方がいらっしゃいますが、もとに復職できない。で     もこれが不利益で取り扱えるかどうかという形で裁判で争うのは、ちょ     っと難しかったのです。あと、ワーキングマザーになると、忙しいとこ     ろにたとえば配転させられると、実際は解雇されなくても辞めざるを得     ないということが大変あります。     ですから保育問題もさることながら、これは労働省で言ったほうがい     いのかもしれませんが、働く場所での問題点というのがとてもあります。     私自身は育児をやっていて、母性とか父性とかいう言い方があるけれ     ど全く関係ないと思っていて、その人の個性で子育てにかかわればいい。      男性でも女性でもいいのですが、自分と育児をシェアしてくれる人間     がいるということは、ものすごくらくちんなのです。病気になっても自     分が、とか、自分が病気になったらどうしようなどと思わなくてすむわ     けだし、出張とかもできるわけです。     ですから、これはある政党などのジェンダー政策などを見ますと「働     く女性への支援策」と書いてあるのです。「働く男女の」と「男」を入     れてくれと。男が入ることで 180度、政策が変わると思います。ご存じ、     育児休業法は男性もとれますが、民間企業で育児休業をとった男性は 0.02%なのです。コアラ・パンダ並み珍獣扱いという感じで、これは早     くゴキブリ並みとは申しませんが、一家に一件、イヌ・ネコ並みぐらい     になるといいなと。男性が育児にかかわることをどう支援していくか。     というのは、女性が育児休業をとると「だっから女はだめなのだ」と     いわれる。女はやっぱりだめだ、使いにくい。でも男性がとりますと      「だから男はだめだ」とはいえませんから、男社会の掟破りをするよう     な男をつくっていく。     私は、これもまた労働省の管轄かもしれませんが、育児休業の男性の     取得率が低い企業は罰則の規定ぐらいはやって、あるいはこれからポジ     ティブアクションの条項が入りましたので、女性のではなくて、男性は     どういう働き方で、男性はどれぐら育児にかかわっていって、どれぐら     いとれるかというデータも各企業ごとに出してもらうというのが、とて     も必要だと思っています。     ILO 156号条約を日本は批准をしておりますので、男が主たる体系、     妻が従たる体系、妻が家計補助的に潤滑油的に働く社会から、女性も男     性も家庭責任をもって働く。でもこれは責任となっていますが、これは     権利なわけです。私は、男性は権利をとても奪われていると思います。     ヨーロッパ人権裁判所で、ヨーロッパのある国の女性と結婚したあるイ     スラムの男性が、離婚したことで配偶者ビザがなくなるということにな     った。彼はヨーロッパ人権裁判所に訴えて、自分は具体的に1週間のう     ち何時間子育てをやってきたから、自分はその育児の権利に基づいて滞     在を認めてほしいという裁判を起こして、彼は勝訴をしました。彼が生     物学的法律上の父親なのかどうかということではなくて、具体的に育児     をやっているということで権利が認められたわけです。      この基準でいうと、日本の男の人は、はたして滞在の根拠が認められ     るのだろうかと。子育てについては男が地主で妻が小作人だといった知     り合いがいて、会社員の長男だれだれ、PTAにいくと保護者だれだれ     となっているけれど、小作人が集まってきていて、出来が悪いの不作だ     のといわれている。しかも夫は不在地主である。フルタイムワーカー、     パートタイムワーカーの夫の家事・育児時間はほとんど変わらない。フ     ルタイムワーカーの夫の家事・育児時間は19分で、アンペイドワークを     最も世界的にしない代表が日本の男性であるというところを変えよう。     しかし個人の男性は、気持ちはたぶんあるのかもしれないと思うので     す。ですから、企業に対してそういうことを変えるようなことを、ちょ     っとこれは厚生省ではないかもしれませんが、ですから前田さんのおっ     しゃった男女共通規制のところで、私自身も女性に悪い深夜労働は男に     も悪い。男の人がぼろ雑巾みたいに帰ってきていたら、楽しいことなん     か全然起きない。でも、これからは女もぼろ雑巾みたいに帰ってくる。      ますます少子化は進むだろうとは思っています。     労働時間の規制と、それから育児休業よりは、むしろ育児時間、会社     の中で育児という面からもっと規制をしてほしい、もちろん学童クラブ     なども充実。小学校に入ってから学童クラブに入れたというのは、とて     も助かりました。少子化高齢社会の中で、これからは女性を活用するし     か方策は全くないと思います。ですから、ILO 156号条約に向けて厚     生省として何ができるのかというのを、ぜひやっていただきたいと思い     ます。     地方都市などで首長さん方と話すと、「やっぱり女が働くから少子化     になった」とか「子どもが3歳までは母親がみなくちゃ」、どっちから     みてもびっくりするのですが、そういうふうに母親の生きがいを奪い、     つまり男の人たちも子どもの寝顔しか見られないような働き方、それか     ら女の人は40歳を超えると職がない、子どもは塾で忙しい、という日本     の社会は、非常に問題があると思っています。     ただ極端にいえば、今の日本の社会だと少子化はある意味でしかたが     ない。しかしこの少子化高齢社会の中でどこまでサポートができるのか     というぐらいのスタンスで、でもやれることはたくさんある。子育てが     つらい状況を変えることしか、その前に結婚を楽しくしたほうがいいの     かもしれませんが、ないのかなというふうには思っております。     企業に対する要請もありますが、男性の働き方の意識をもっと変える     ようなことも、ぜひ厚生省としても取り組んでいただきたいと思います。     以上です。どうもありがとうございました。 宮澤会長 ありがとうございました。      それでは最後に、エッセイストの麻生圭子さんからご発言をお願いい     たします。麻生さんは、お子さんはいらっしゃいませんが、多方面でご     発言なさっています。どうぞお願いいたします。 麻生圭子氏 麻生圭子でございます。よろしくお願いいたします。      今、出生率が1.42ということで、この数字を引っぱっているのは、き     ょうここに参加しているこの席に座っている側の女性の中では私ひとり     で、要するに私のような者が「産もうかな、やっぱり産みたい」という     ふうに思い、それが実現すれば、この数字は上がるわけで、きょうは、     私は子育ての経験も出産の経験もないものですから、そんな観点からお     話しさせていただきたいと思います。     非婚主義とかあるいはノーキッズを主義として唱えている人たちがい     るといわれているわけですが、確かに20代のころ、会社に入って、ある     いは職業をもって、その仕事がおもしろくてたまらないというときは、     ほんとうに心から「私は絶対結婚しないわ」とか、あるいは20代で自分     がまだ子どもだろうと思っているようなときは「私は子どもなんかほし     くないのよ」と心から思っている人はほんとうにいると思います。けれ     ども、それが30代になり、あるいは35を超えて、出産するときはマル高     というふうになり、それから40間近になってくるとそろそろ危ないかな     と、子どもを産むということだと女の人は限りがありますから、そうい     う年齢になったときまで、はたして「私は結婚しなくていいのよ」「私     は子どもは要らないの」というふうにほんとうに思っている人たちがど     のぐらいいるだろうかなというのは、自分自身の経験も兼ね併せて、い     つも疑問に思っています。     特に、晩婚化の原因とか、あるいは子どもが要らないといっている人     たちがなぜ要らないと言っているかというようなことで出てくる数字、     あるいはそれが活字になっていった場合に、そういうものを資料の中に     もありますが、読ませていただくと「これって本音だろうか」と、どう     しても思ってしまいます。     90年代の初めのころに、『結婚しないかもしれない症候群』という本     がベストセラーになりました。そのころはまだバブルが崩壊する直前の     頃だったと思いますが、そのころでも当事者の私たちは、そのタイトル     を見て「これって違うよね。ほんとは『結婚できないかもしれない症候     群』だよね」と思って笑っていたものでした。     公に言うときは「私は仕事ももっていますし、べつに結婚なんかしな     くても、男に出会わなくてもいいんですよ」というふうに、一応建前で     すから言います。けれども、女たちだけで本音で話し合うときに、ほん     とうにそれを心から思っていた人たちがいただろうかというと、そうで     はないのです。「いや、しなくてもいいけれども、でも、できるんだっ     たらしてみたいわ」と。今より不幸にはなりたくない。だから、今より     もすごく幸せに、玉の與とかそういうこと考えているわけではなくて、     今よりも不幸にならない結婚だったら積極的にしたいわと思っている人     が、私の周りなどだと報道関係者、たとえばディレクターとか宣伝をや     っている人とか女性編集者ですから、一般のOLさんとはちょっと違う     特殊な世界でしょうけれども、積極的に非婚とかノーキッズを唱えてい     る人はいませんでした。      年とともに変わると申しあげましたが、まず29歳ぐらいの女の人は、     やっぱり私も結婚しようかな、とまず思うのではないかと思います。      ところがそのときに相手がいればしますけれども、29歳ぐらいだと、     学生時代あるいは会社に入ってすぐつき合い始めた人と、もう結婚をし     ていればしてしまっているわけで、そのくらいだと、そろそろ結婚しよ     うとプロポーズされたとき「私は今、仕事がしたいから」といえば、男     の人も、違う女の人と結婚したりしますね。だからちょうど20代後半と     いうのは、今までつき合っていた彼とも別れ、仕事も、最初の壁か2番     目の壁かわかりませんが壁にぶつかり、結婚でもしたくなるみたいです。     エッセイのタイトルにも、29歳というのはよく出てきますし、トレンデ     ィドラマといわれるものにも「29歳のクリスマス」というのが大ヒット     しましたし、「たかが29歳、されど29歳」とか、エッセイのタイトルに     29という言葉がいっぱい出てきます。     次に、では29をすぎて30になると開き直ると世の中ではいわれている     のですが、べつに開き直って、もう結婚しなくていいわ、と思っている     わけではないのです。      男の人は、40すぎてから結婚しても、子どもをつくろうと思えば大丈     夫でしょうけれども、そうやってずるずるきてしまうと女の人は限界が     ありますし、それと、これは私の経験ですが、私はずっと子どもはほし     くなかったのです。どちらかというと嫌いでした。育児をしているお友     だちを見ていて、あ、私はこんなことやりたくないわ、と思っていまし     た。ところがそんな私でも、35ぐらいになると考えが変わるのです。一     つは、まず老後を考え始めます。35になって、人生半ばだな。そうする     と、老女になったときにひとりは淋しいぞ。それから40間近るなると、     カウントダウンというか母性が目覚めるのでしょうか、今まで子どもが     嫌いだったのに、子どもがかわいいなと思い始めたり、何か理性を超え     て……、理性というほどの理性はないですが、もともともっていた女性     としての本能が目覚めてくる。子どもを産んでもいいや、というふうに、     35ぐらいから私は考えが変わりました。     けれども、もちろんその当時、独身です。産むといっても相手がいな     ければいけないし、どうしようかなと。そのころ、人工受精とか体外受     精とかしてみようかしらというようなことを友だちと、半分冗談ですが、     そんな話も出たりしたこともありました。     そのなかで、ちょうどそのころ、知っている人達が相次いで結婚せず     に子どもを産みました。非常に私もうらやましく思いました。やはり確     固たる職業をもっていれば収入的には心配ないし、みんな大体35歳前後     でしたがそのくらいの年代で子どもを産んだ人たちをみて、ああ、私も     ああいうふうに、どうしても結婚ができなかったから、子どもだけでも     産みたいなと思いました。     思いましたけれども、私などが働いているところでも、やはり婚外子     を産むということは「あー、すごいわね」というのもあり、私が「私は     結婚できないかもしれないけど、子どもを産もうかと思うんだけど」と     いうふうに、もう専業主婦になっている友人に、半分本音、半分冗談で     はないけれども、そんな感じで話したら、真向から反対されました。      「子どもはどうするの、差別されるでしょう。そんなことで子どもを産     むくらいだったら、産まないほうがいいわ」とほんとうに頭から反対さ     れて、ああ、これが世の中の真っ当な考えなのだなと思って、思わずひ     るんだりしたことがありました。     そういうふうに、35歳を超えると、子どもを要らないと思っていた人     たちのあいだにも、産んでもいいかなという気持ちは目覚めてくるのだ     と思うのです。     そして今回、ここでお話しをすることになったので、女性編集者5人     ほどに話を聞いてみました。そうしましたら、子どもは要らないと言っ     た人は1人もいませんでした。ただ、まだ1人は20代なので、まだ要ら     ない。編集者ですから、もう少し仕事が慣れてある程度時間のやりくり     ができるようになったら産みたい。しかし、絶対産みたいと思っている、     というふうに20代の人は話していました。     それから35歳ぐらいの人は、今、籍は入っていないのですが結婚式も     挙げて、夫婦別姓ということで事実婚なのですが、その人は、産みたい、     子どもはほしいと思っているのですけれども、自分が人の面倒をみたり     する立場に編集部でなっているわけですが、そうすると、子どもを産ん     で子育てに入っている人たちが、たとえば4時半とか5時とかに、保育     園に迎えに行く時間であるからといって定刻にぴったり帰る。それはし     かたがないことなのだとわかってはいるけれど、会議の最中でも何か途     中でも、これで失礼します、というふうに当然の権利として帰る姿をみ     ると、同性としても、もうちょっと待っててくれればいいのに、どうし     てあそこで帰るんだろう、と腹が立つ。それで、自分は腹が立っている     から、その立場にはなりたくない。      そうすると、そのとき考えるのは、自分で辞めなければいけないので     はないかということを考えるらしいのです。けど、まだ辞めたくないと     いう心理がある。      そして35歳だと、最近は43歳とか44歳とかで初めての子どもを産んだ     とか、ワイドショーの芸能人のニュースなどで流れていますが、それを     考えるとまだ先があるなということで、ずるずると最近はきているとい     うようなことをその人は言いました。そのときに言った言葉は、そうな     んだけれども、43歳あるいは44歳で初産ということでワイドショーで流     れてくるけれども、ほんとうにそれが普通に子どもを授かることができ     たのかどうかというのは、とても疑問であるということでした。     私が通っているクリニックの先生の話だと、35歳をすぎると女性ホル     モンはどんどん低下してくる。確かに42〜43歳まではオーケーだけれど     も、確率というのは非常に下がるので、働いていればストレスもたまり     ますし、夫婦の生活のずれもあります。たとえば37〜38でやっと結婚し     ました。仕事も落ち着いて、さあ、ほしいわ、といっても、すぐに子ど     もはできない。ただマスコミに出ているのが、40過ぎても最近は医学が     進歩したのでできます、できますというのを鵜呑みにして、なにもしな     くてできるのかなというと、そういうことでは絶対なく、ある程度病院     に通ったり医学の力を借りて努力した結果、子どもができているのだと     いうようなことを、人の話だったり、有名人で知っている人が通ったと     いう話を聞いたりもします。     そこでその話をしたら、とたんにその編集者は青くなって、「それ、     ほんとですか。最近はもう外見なども小じわがなくても40ぐらいだし、     全然44〜45になるまで産めると思ってました」とあっけらかんと言うの     で、ほんとうに今、子どもがほしいと思っているのだったら、私みたい     に可能性が少なくなってからより、35ぐらいの今、そのときを逃さない     ほうがいいよ。仕事はまたなんとかなるけれども、子どもというのはそ     のときを逃すと、たとえば50になってどうしてもほしいといっても、自     分では子どもを産むということはできないですから、そういう話をした     ところでした。     ただ最近、婚外子を産むということについて、わりと世間の中では注     目されているような傾向があるのではないかと思います。10月からフジ     テレビの連続ドラマで「シングルズ」というのが始まるのですが、天海     祐希さんが主演で、あと女の人が二人出てきますが、30歳のOLが全員、     結婚をせずに婚外子を産み、それがコミカルに、妊娠するところから結     婚せずに子どもを産み子育てをする1歳ぐらいまでのところを描くドラ     マなのだそうです。もう収録は全部終わっていて、かなりいい出来で、     局側としてはたぶん高視聴率はとれるのではないかという話をしていま     した。      テレビドラマというのは、今の女の人たちが何を考えているかという     のをすごく敏感にかぎとり、分析もマーケティングもし、それから企画     書をつくり制作に入っていきますからね。今、不倫がはやっていますが、     こういうドラマが企画が通り、実際にオンエアされるということは、不     倫の次は、婚外子がブームなんてことを思ってしまうわけです。このド     ラマの場合は1人が人工受精、1人が妹の彼の子どもを身ごもって結婚     せずに、もう1人が、今はやりの不倫相手の子どもを産むという設定だ     そうです。このドラマがほんとうに当たれば、結婚せずに子どもをOL     が産むということに、少し世間の目が違ってくるのではないかと思って     おります。      以上です。ありがとうございます。 宮澤会長 どうもありがとうございました。限られた時間の中で貴重なご発言、     それから体験に基づいたご意見をいただきまして、どうもありがとうご     ざいました。それでは委員の皆さん、何かご質問がございましたら、よ     ろしくお願いいたします。 熊崎委員 私は、ほんとうに今の5名の方のお話を聞いていて、実感をもちまし     た。というのは、私は、卒業して企業で働いて、労働組合の中でずっと     専従でおりましたので、4名の方の話が日常ほんとうにそのままありま     して、とても実感を得た話だと聞いておりました。ありがとうございま     した。      質問をしたいのですが、河野さんと前田さんと黒田さんにお聞きした     いのですが、子育てが大変だということのお話をされました。その場合     に、たとえば相手の方の協力の度合いがどのあたりにあったのか、そし     てすごく助かったのかということ。      それから、周りの男性がどういうふうにみていたのか。周りといって     も、企業の中や上司ということでもかまいませんが、具体的に生の声を     お聞かせ願いたいと思っています。      もう一つは、子育てにかかるたとえば保育所の費用が、前田さんでし     たか、実際に数字が挙がっておりますが、その額がご自分のお給料の中     でどのような、低いとか高いとか、もう少しそこら辺の補助があったほ     うがいいとかというような考えがあろうかと思いますが、それをお聞か     せ願いたいと思います。      福島さんは、大変楽しい子育てということで日ごろ私も話を聞いてお     りますので、思わずニヤリとしてしまいましたが、ほんとうに子育てと     いうのは大変ですけれども、やはり勇気を与えてくださった話だと思い     ました。      福島さんと麻生さんに対しては、私は、麻生さんは婚外子とか事実婚     ということが周りにあって、そしてご自身も日ごろからそういう話を聞     いていらっしゃいますので、今、法務省から出ております選択制別氏の     問題、そのことをどのようにお考えになっているのか。たとえばもっと     積極的にやっていくべきだとかいうお考えがもしありましたら、お願い     したいと思っています。以上です。 宮澤会長 それでは、お願いいたします。 河野真理子氏 質問をいただきまして、まず具体的にパパの協力ですよね。実は     私は福島先生と同じように、子育てがとても好きで、この年ですけど産     んでしまいました。まだ3ヵ月の子どもがいる状態です。あまりこうい     うことは仕事中でお話しすることはないのですが、まず子育ては楽しい     というか、非常に自分で勉強になることが多いもので、仕事上にも、こ     れは直接的ではなくてもマネジメントの中で非常に勉強になることが多     いので、夫婦ともにそういう気持ちでして、とりあえず2人まで産ませ     ていただいています。      何を言いたかったかというと、パートナーと精神的協力面というのは     非常に大きいと思います。もちろん具体的に、先ほど黒田さんからも日     々戦争のような、ほんとうに戦争です。毎朝お弁当をつくって、日々あ     るわけです。仕事と同じだけといったほうがわかりやすいので申しあげ     ると、主婦業がございます。シュフのフという字は両方使ってもいいと     思いますけど。      それをシェアしてくれる、たとえば私も夜の講演等も多いですし、地     方や海外にもございます。そのときはというか、どちらかできるほうが     先に手を出す、なんとなくそういう規定になっているのです。ちょっと     経歴の中にも書きましたが、私も8年間ディンクスを送っていまして、     ある程度年をとってからの子どもですので、そういう年事情からくると、     お互いがかわいかったのではないかと。      もう一つ、私はキャリア形成がある程度されて、30代で出産していま     すから、もう自分の仕事ぶりを家族がわかっているといううえでの出産     でしたので、そういう意味ではある程度やりやすかったのだろうと思い     ます。     あと、日々での協力だけでなく、もう一つ、先ほど精神面で、子ども     の教育上、いろいろ相談できる相手であるということで、非常に私はパ     ートナーに相談に乗ってもらっているというか、お互いに相談に乗りあ     って、2人とも男の子ですのでいろいろありまして、非常に力強く思っ     ておりますので、2人目も産みました。      あと、企業のほうのサポートです。私は組織人ですので、全く組織の     中で動く、半分ぐらいですかね、ある意味ではこうしてフリーに活動し     ているのですが、ちょっと実験しまして、1回目は育休を管理部門第1     号であえてフルにとってみたのです。フルにといっても1年ではないで     す、ほんの何カ月ですが会社に出社しないという形でとってみました。      そのあいだは情報が必要ですので、毎週メールを送ってもらうとか資     料を送ってもらうというサポートが非常に役に立ちました。      それから今回やってみましたのが、ずうっと連絡を取り合う。パソコ     ン通信もありますから、取り合うというやり方で職場から情報をもらい、     こちらからフィードバックする、お互いに若干手間はかかるのですが、     それによってほとんどキャリアの継続が可能になってくる。そんなこと     で、休んでいるあいだ、いろいろな情報をもらえるというのが非常にあ     りがたかったし、ありがたいところです。      それから保育所の件のご質問です。私は横浜に長く住んでいたのです     が、どうしても私が産んだ時点では保育事情が入れなかったですとか、     周りにいいところがなかったということで、保育園のお世話になりませ     んでした。その理由があって引っ越しましたのが神奈川県の田舎で大磯     なのですが、私立の幼稚園でいいところで、小さい子からみてくれると     ころがありまして、園バスもありまして、第2子もそちらになる予定で、     申し訳ないのですが、ちょっと保育園の数字のほうは、個人的には出せ     ませんので、ほかの方にお願いできればと思います。 前田正子氏 それでは、次に私から答えさせていただきます。      相手の手助けということですが、私は、経歴書に書かせていただきま     したが、子どもが生後半年になりましたときに、夫婦でビジネススクー     ルに留学いたしましたので、アメリカにいるあいだは主人も私も学生で     すので、完全にフィフティフィフティにしてまいりました。      もちろんアメリカに行くまでは彼はサラリーマンでしたので、当然、     育児は母親の仕事と考えていました。そのときも実は彼は子どもはかわ     いいとはいっていたのですが、アメリカにいってほんとうに子育てをし     て父親がかかわればかかわるほど、子どもが父親を必要としていること     がわかるほどに、子どもがかわいくなったというわけです。それは彼だ     けではなくて、アメリカに駐在している日本の企業人の方はどなたもお     っしゃっています。アメリカに駐在するまでは皆さんはものすごく働い     ていらっしゃいますので、子どもはかわいいけれども、子育てが楽しい     とか家族がいることがすばらしいことだと思うチャンスがなかったとい     うのです。アメリカへ来て初めて家族とすごす時間をもって、実際に子     育てをすることによって、ほんとうに子どものかわいらしさや家族のあ     りがたさに目覚めたというのです。      ですから主人だけではなくて、アメリカの駐在を経験なさった企業人     の方は、日本の大多数の男性は子育てのおもしろさ、子どものかわいさ     に目覚める機会を失っているというのです。思春期になって、父親が必     要だからといって登場しても遅すぎる。最も子どもが親を必要とする時     期は子どもが小さいとき。ただ残念ながら男性は子ども小さい間の30代     がいちばん働き盛りですので、最も家庭に帰れない時期という悲劇があ     ると思います。     今は夫はまた日本に帰ってきましたので、すごい長時間労働で、きの     うといいますか、けさも朝5時に帰ってきて、また朝8時に出勤したと     いう生活をしています。私が出張するときもありますが、ベビーシッタ     ーさんはどんなに遅くても10時ぐらいまでですので、彼はなんとか調整     して9時、10時に帰ってくるわけですが、それがあまりに頻繁になりま     すと、上司から「おまえ、子どもの顔は週末に見れば十分だろう」と言     われました。それは上司が意地悪なわけではなくて、今の日本人の50代     の人は、男が平日は子どもの顔は見ないものだ。思いっきり働いて、目     いっぱい働いて、週末だけ子どもの顔を見るのが父親の役割と信じてい     らっしゃいますので、なぜ平日、子どもの顔を見るために帰るのか、な     ぜ妻がいるのに帰らなきゃいけないのかと、よくおわかりにならないわ     けです。     こういう意味で私の場合は、彼の奥さんはどうも変な人らしいという     ことになってます、はっきり言って今の企業社会では、共働きの場合、     女だけではなくて働く妻をもつ男性も非常に立場が苦しいと思います。      家庭の事情を持ち込むことは会社ではものすごく嫌われていますので、     共働きの男性もハンディを背負っていると思います。これは若い男女だ     けではなくて、今の40代、50代の人で介護の問題を抱えている人も多い     のですが、皆さん、自分の弱みは企業では出さないという苦労をなさっ     ているというのは、子育ての比ではないと思います。     保育料に関しては、日本は認可保育でも地方によっていろいろ保育料     は違いますが、3歳未満と3歳以上で料金は違うわけですが、認可保育     園でしたら、収入によって違いますが、5万、0歳児で8万というとこ     ろもありますが、なんとか払える額だと思います。      ただ、認可保育園の一つの問題は、延長保育のない保育園などの場合     は、それプラス二重保育になります。たとえば東京都の公立の保育園は     保育料は安いのですが、結局二重保育をせざるを得ないから、保育料全     体でみると15万かかるとかですね。そして無認可保育園になりますと8     万、9万になりますので、そういう意味ではかなり大変だと思っていま     す。ですから河野さんが言われました通り、認可保育園に入れなかった     人の保育料をどうするかとかそういうのはすごく問題ですし、認可保育     園の中でかなり保育時間を拡大が必要です。それからデパートのような     サービス業のお母さんたちは土・日勤務になりますので、認可保育園は     全然使えないのです。      そういう人たちが入れるような保育サービスの拡大はかなり必要では     ないかなと。今は残念ながら親が長時間勤務で、ですから長時間保育が     必要で、最も良質の保育が必要な子ほど、認可保育園に入れないで無認     可保育園にいっていることになると思います。      そんなところでしょうか。 黒田あゆみ氏 パートナーの援助という点では、子どももよく育ちましたけど、     夫もよく育ちました。やはり女は子どもを身ごもった時点から母親にな     りますが、男の人は、特に自分と大体同じぐらいの年齢で結婚すること     が多いわけですから、会社における責任というのは男性も同じように、     いや、それ以上とでもいうのでしょうか、担うことになりますね。です     から、うちもかなり大変だったと思います。また私が非常に不規則な勤     務をしておりますのでなかなか……、あちらはいわば堅気のサラリーマ     ンですから、早朝のときは8時とか8時半までに出勤。そのかわり夜は     遅くまで限りなく仕事をするというような仕事の仕方でした。ただ、現     実的にいろいろな面で手伝ってくれました。      よく考えてみますと、夫というものはすべての外部保育パワー、それ     からもう少しディスカウントできて親だとか義父母という援助がありま     すが、こういうものの中で唯一無償、ただでこき使える労働力でござい     ますので、非常に役に立ちました。ほんとうに私の夫の場合には、これ     はあらゆる能力の面で、人格的に考えても、欠ける点のない人です。こ     れだけはいえます。私以上に子どもの面倒をよくみる人ですから、そう     いう点ではまさに属人的なもの、どういう人が父親になるかということ、     これが宝くじと同じぐらいの大変さなのではないでしょうか。      ただ、それが永遠に私とうまくいくかどうか、これはまた別ですが、     しかし父親として、あるいはパートナーとしては、属人的なものに頼っ     ている部分が多いです。      もう一つ、非常に助かったことは、近年、夫の会社もフレックスが導     入されましたので、これでかなり対応してくれるようになりました。そ     のときも結構大変で、最後まで部長は「絶対導入しない、うちの部は」     と頑張った、なかなか保守的なすばらしい人なのですが、こういう人も     いますが、しかし世の中の趨勢には勝てず、フレックスはみごとに導入     されて、これは適度に利用していく。ただし彼は、土曜とか日曜にも仕     事にいっています。ひとりで会社の鍵を開けて入って、クーラーのない     部屋で仕事をするみたいなことで補ったりしていますから、そういう自     己責任というのでしょうか、夫のほうが多いような気がします。ですか     ら援助は不可欠です。      周囲の男性という面では、私は直接いろいろ世話になった上司が理解     がありまして、この時点でNHKにはフレックスがかなり、私は自主的     フレックスといっていましたが、導入されつつあったと。完全にではな     いのですが、そういうのをかなり認めてくれまして、柔軟に対応するこ     とができました。      ただし、直接、事情をわかってくれる上司はいいのですが、7時のニ     ュースのとき人といろいろありました。それ以外は、中にはひどいこと     をいって、怪文書を回して、あの女は働かないとか、それはそれは私は     陰で泣きました。これは働かないとか言われても、それは比べられるわ     けです。すごく頑張って働いている人に対して、私は働きは半分以下で     すから、何を言われようとしかたがないのですが、そのころに子どもに     不規則な生活につき合わせたために精神的にちょっと危うい状態になっ     たので、子どもをとったということもありまして、あのときはあの働き     方しかなかったのだと、自分で今は割り切っています。      だから、女性の働き方には緩急があって、いい上司をみつけて、この     人を逃がさないという感じで、この人だけは本音で話すけれども、あと     はとにかく自分である程度まで持ち出しはしょうがない。しかし自分の     働き方をみて、ああ、子供は産めるのだという状況で後輩が続いて子ど     もを産んできてくれているということは、これは数は力ですから、私の     先輩の女性たちの頑張りもありますし、代々子どもをなんとか産んでい     くという、企業の中で、NHKは福利厚生の面で非常に整っています、     だけどやはり周囲の理解とかが得られるかどうかというのは別で、その     辺が今でもちょっと葛藤はあります。      保育に関しては、先ほど前田さんが言われたように二重保育というも     のでかなり出ていくものは多いです。そこを乗り越えないと進みません     ので、個人的に二重保育面まで援助してほしいということになりますと、     そういう人にだけなんで手厚くて、独身女性は税金を払ってこんなに大     変なめにあわなければいけないのという、女性間で不平等が生じますの     で、ここをどうやっていったらいいか、時短しかないかなと思います。      以上です。 福島瑞穂氏 民法改正について聞いていただいて、ほんとうにありがとうござい     ます。私自身は夫婦別姓にしたり、あるいは奥さん扱いをされたことが     ないということもあって、結婚届を出さないで子どもがいますので、子     どもは婚外子なのです。ですから夫婦別姓選択制導入と婚外子差別撤廃     が趣味と生きがいと実益を兼ねてやっているということです。      それで、岡沢先生はスウェーデンなどの専門家でいらっしゃいますが、     一つは、外国で労働時間は短いけれど出生率が低い国は、これは有名な     話ですが、イタリア、ドイツ、日本。男が育児をしない国というのがあ     ります。それから、外国で出生率が若干上がったときに、たとえばスウ     ェーデンなどでは、などというのは恥ずかしいですが、先生がいらっし     ゃるのに、非嫡出子、婚外子の差別を撤廃すると出生率が上がっていま     す。実はこれが、健全な家族というふうなものが私はなくなるといいと。      「お父さんとお母さんと子どもが2人いて、ちょうどカローラに乗れ     る人数、これを健全という」みたいなことが変われば、もう少し結婚の     規制緩和をすれば、結婚自身も楽しくなるのではないかと思っています。      実はいろいろな統計があるのですが、婚外子の中絶率はものすごく高     いのです。いろいろなデータがありますし、正確な中絶率のデータは難     しいと思いますが、嫡出子と非嫡出子と 100倍ぐらい違っていました。      つまり妊娠初期に結婚届を出していないと、女の人は中絶をする。厚     生省は「えーっ、そんなの」というかもしれませんが、スウェーデンは     婚外子の婚内子の出生率はほぼ半々です。日本は 1.2%、やっと1%を     超えて 1.2になったのですが、私は、婚外子差別を撤廃してもっといろ     いろな形で子どもをもてるというふうになれば、子供をもつ人もかなり     出るのではないか。 1.2%というのは、逆にいうと女の人が結婚届を出     さないと子どもがもてない環境だというふうに思います。     ですから、こういう子どもしか出生してはいけないというのをやめて、     いろんな子どもがいて、いろんな家族がいて、いろんな家庭のあり方が     ある、いろいろな男性との関係もあるのだということになれば、もっと     女の人は肩から力が抜けて、ああ、私もそういうやり方で子どもをもと     うかな、ああ、これなら産めるというふうに思っている。ですから厚生     省は、法務省に対して「もっと本腰を入れて民法改正をやれ」とぜひい     っていただきたいと思います。     どうもありがとうございます。 麻生圭子氏 私も福島さんと同じで、ああ、そんなことを聞いてくださったんだ     と、とてもうれしく思いましたが、なぜこれが反対されているかよくわ     からないのです、夫婦別姓。たとえば子どもが産まれたときにどうする     んだ、とかいう話が出ていますよね。私は、おじさま方が……、私もも     うおばさんですが、おじさま方が考えていらっしゃるよりは、私たちよ     りもっと若い女性のほうがよほど保守的だと思うのです。      ですから、この法案が通って可決したからといって、さあ、みんなで     夫婦別姓になるかというと、私はほんとうにわずかな人たちしか夫婦別     姓というのは選ばないのではないかと思うのです。     私も今、再婚しまして戸籍名は麻生ではなく、しかしほとんどのとこ     ろで麻生圭子を名乗っているものですから、うちのポストも麻生なまま     ですが、今、本名になっている戸籍名のほうでくるとそれが届かなかっ     たりして、郵便局から、ポストにちゃんと本名を載せるようにと言われ     たりして、ああ、いろいろ困ることがあるものだなと思っているところ     です。戸籍だけで、あとは全部麻生圭子でやろうと思っていたのですが、     実際には保険証やらなにやらうまくいかないところもあり、不便なこと     が多いです。     では、そんな困るのなら夫の名前に替えてしまえばいいではないかと     いうふうに、一般的な考え方をなさる人は思うのですが、いいじゃない     ですかと、そういう非常識な生き方、そういう選択もさせてくれてもい     いじゃないかとと思うのです。     女性の10人が10人、夫婦別姓になるとは全く思わないし、そうする世     の中がいいとも全く思っていません。ただ、いろいろな選択ができるよ     うにしてほしいのです。婚外子ということもそうです。結婚しなくても     子どもを産む、そういう生き方があってもいいではないですか。そうす     れば、絶対出生率は増えると思っています。 宮澤会長 ありがとうございました。もう予定時間をすぎましたが、何かぜひひ     と言聞いておきたいということがございましたら、どうぞ。 福田委員 前田さん、わざわざ資料の2−1をお出しになって、保育所問題につ     いてのご見解をお述べくださったのですが、きょう私は4人の方のご経     験なりお話なり伺って非常に得るところの多かったのは、日本の場合に、     普通の保育所というのはむしろキャリアの女性というよりはパートタイ     ムで家計の補充をしているような人に合っているような保育所がわりに     多い、標準的なものはそういうものであって、キャリア、特にプロフェ     ッショナルというような場合に、それに対応するというのは、これから     の大きな課題だろうと思っていたことが一つございます。      農村とか小さいところでございますと、保育所といっても大体公立の     もので、そしてまたニーズもわりに平均的で限られているということは     ござますが、大都会、それからこれだけ通勤時間の長いというようなと     ころでは、ニーズも非常に多様化する。特にキャリアの方がたにとって     は、今までの考え方で応じきれないいろいろなニーズがあるたろうと。      その中で、特に保育のビジネス化、市場任せの保育はよくないという     こと、これは特にアメリカのご経験を踏まえておっしゃっていらっしゃ     るのだろうと思うのですが、認可保育所もかなり多様になっていくよう     なことが実現した場合に、必要としておられるお母さんたちに選択をす     る余地をどういうふうにして確保していけばいいか。今までいわれてい     ることの一つにはたとえばクーポン制のようなものもあるわけですが、     その選択ができるということとビジネス化ということとどこで区別して、     ビジネス化でなくて選択の余地をつくり出すか、何か積極的なご提案が     あったら、ひと言伺っておきたいと思います。 前田正子氏 非常に難しい質問で、これは保育の専門家の方がよってたかってた     ぶん考えていらっゃると思うのですが、私は、もう一度申しあげますが、     ビジネス化は反対です。先進国をみましても非常に小さな子どもを持つ     女性が働き出したのは80年代後半ですので、公的な保育制度がきっちり     確立しておりますのは、岡沢先生のご専門、スウェーデンとかデンマー     クとか、一部の北欧の国に限られまして、どこの先進国も今後、保育園     をどのように整備するかという政策の過渡期にあるわけなのですが、そ     の中で、ビジネスで保育を充実させるという方法を選んできたのはアメ     リカだけなのです。カナダ、ニュージーランド、いろいろな国でも、就     学前の子どもたちの育児環境を守る、就学前の子どもの保育環境という     のはその後の学習能力を非常に左右するので、良質の保育環境を整備す     るということで公的に力を入れています。この点では非常にアメリカの     保育のビジネス化は失敗していると思います。     それから先ほど申しあげましたように、私は、こんなことを申しあげ     てあれなのですが、厚生省がビジネス化のモデル事業として始められま     した駅型保育園にも、なんとか子どもを入れられないかと思いまして何     回も見にいきましたし、いろいろな企業がやっている保育園も見にいき     ました。もちろん補助金がありませんので、親が払える保育料で保育を     やると質の高い保育は当然できないわけですから、なかなか難しい。そ     れから補助金がかなり入っている駅型保育も、大変ほんとうに申し訳な     いのですが、保育内容がよくないのです。ほんとうによくない。認可保     育園と駅型保育があるなら、私は認可保育園プラス二重保育でやりたい     と思います。それにつれていろいろな問題がありますが。      ですからバウチャー制、クーポン制ですが、いろいろなやり方がある     と思うのですが、今、日本の認可保育園制度は、硬直的でいろいろ問題     はありますが、非常に今の中でのやる気のある保育園は、夜10時まで夜     間保育をしますとか休日保育をする、それから非定形的な勤務のお母さ     んの一時保育をするとか、多彩な活動を展開しているわけです。確かに     それができない遅れている公立保育園、いろいろな保育園があるわけな     のですが、一挙にクーポン化、バウチャー化をドーンとしますと、認可     保育園の経営ベースを不安定化して非常にまずい事態になるのではない     かと思うのです。     ですから、ある程度公的な補助金を入れて、そのうえで親が選択する     ことは、もちろん私は今度の児童福祉法の改革を積極的に評価している     わけですが、バウチャーの導入にあたってはかなり慎重さが必要だと思     うのです。      それは保育園の一つの性格にもありまして、学校は4月1日に全員入     るわけです。しかし保育園はお母さんの復職に合わせて入園日が決まり     ますので、4月、5月の年度初めは必ず定員に空きがある、そして年度     の終わりには満杯になるというのが理想的です。そこで入った入所人数     でしか保育料がこない、今も実は私立の認可保育園はそうなのですが、     とすると、10月、11月の満杯の状態をみきわめて、4月、5月のあいだ     の保母さんの人件費をどうなさるか、いろいろ難しい問題はあるのです。     厚生省の方がお詳しいですが。      ですから私は、親が選択することはすばらしいことですが、いろいろ     なところでいわれているバウチャーの導入はかなり工夫が必要ではない     かなと思っています。もう一度申しあげますが、認可保育園の私立保育     園には、入所した子どもの数しか措置費がきませんので、かなりバウチ     ャー制度に近くなってます。だからこそ、私立保育園では延長保育など     もされてきているということがあるわけです。      さらに、アメリカ以外の国が保育に公的補助を入れているということ     を申しあげましたのは、若夫婦が払えるお金では、ちゃんとした一人前     のプロフェッショナルな教育を受けたプロの保母さんを雇って良質な保     育はできないのですね、経営的に。ここで考えて頂きたいのは、なぜ義     務教育は無償かということです。でも義務教育と保育とどちらもなのか     もしれませんけれども、ほんとうに子どもの多感な発達時期を預かる保     育が、どうしてコストとか親の負担とかが一方的にかかるのか。人材を     育てる非常に大切な場ですから、そこの質を確保することを最優先に考     えていただきたいと思っております。 山田専門委員 もう時間もありませんので、ちょうど私とほぼ同世代の方がたが     来ていただいたので、それも含めて半分、意見の形で述べさせていただ     きたいと思うのは、今までの意見もそうなのですが、子どもの数の決定     の要因を握っているのは女性みたいなことが共通認識みたいになってい     るので、その点、私は家族や結婚に関する調査などをやっている専門委     員なのですが、たとえば夫の「手伝うからもう一人産もうよ」とかそう     いう発想にはなかなかならなくて、いろいろ意見をみてみると「手伝う     くらいだったら一人でいいや」とか「手伝うくらいだったらゼロでも構     わない」とか、そういう意見が結構出てくるわけです。      たとえばもう少し妻のキャリアのために、妻をサポートするために仕     事を辞める夫とか、育休をとる夫はなかなか出てこないというのは、も     しそういう組み合わせが増えればキャリアの女性には……、実は結婚し     ないで余っているのが、キャリアの女性とフリーターとか過疎地の農村     の男性などが余っています。そういうところが結婚をして、女性のキャ     リアをサポートする男性が増えるような形で平等が進むのがいいのか、     それとも、キャリアについての考え方を変えて、2人で同じぐらいの負     担をしましょう、というのがいいのか、ほんとうはそこの点を詳しく聞     いてみたいのですが、もしひと言でもふた言でもあれば、よろしくお願     いします。時間がないところですみません。 宮澤会長 こういう話は、ひと言やふた言ではとても答えられない内容があるか     と存じます。残念でございますが、時間がまいりました。      5人の方のお話をいろいろ聞きまして、委員の中にも男性の委員もあ     り、女性の委員もおられますし、傍聴の方も、女性の傍聴の方、男性の     方もおりますが、5人のご発言を聞いて、その受け取り方が男性と女性     とでどのくらい共感度あるいは同感度が同じであるのか違うのか、その     辺のずれがどの程度である、これはアンケートか何かしないとわかりま     せんが、それが一つつかまえるべき問題だと思うのです。ずれ方がずれ     っぱなしで、あるいは広がるのか、そうではなくてなにか収斂する可能     性があるのか。われわれは収斂の方向を探らなければならないわけです     が、おそらくそのずれはそんなに大きくないのかもしれない。あるいは、     この点だけは決定的にずれておるという点もあるのかもしれない。      そういうことを踏まえまして、私ども審議会では、本日のご意見をこ     れからの審議の中にいろいろな形で生かしていきたいと思います。どう     も予定時間をすぎましてご熱心にありがとうございました。      なお次回の総会につきましては、10月21日15時から開催いたしますの     で、皆さま、よろしくお願いいたします。                                       問い合わせ先  厚生省大臣官房政策課  担当 山内(内2250)、齋藤(内2931)  電話 (代)03−3503−1711     (直)03−3595−2159