98/09/25 第80回人口問題審議会総会議事録 第80回人口問題審議会総会議事録                      平成10年 9月25日(金)                       15時00分〜17時30分                       共 用 第 9 会 議 室 宮澤会長 本日はご多用のところをご出席いただきまして、ありがとうございま     す。定刻になりましたので、ただいまから第80回人口問題審議会総会を     開催いたします。まず出席状況のご報告でございますが、大國、岡沢、     木村、坂元、清家、坪井、水越、南、宮武、八代各委員、それから網野     岡崎、落合、河野専門委員、それぞれご都合によりご欠席であります。      その他の委員はご出席で、若干遅れて来られる方もございます。それ     では、これから本日の議題に入らせていただきます。      本日はお手元にございますように、出生率の地域格差に関連いたしま     して、5名の方からご説明をいただくことになっております。そこで時     間の配分でございますが、見当として5人の方にだいたいそれぞれ15分     ぐらいお話しいただきまして、5分ぐらいの質疑を行う。最後に15分程     度とりまして全体を通じての議論をする。そういうかたちを予定してお     りますので、よろしくお願いいたします。      最初に日本青年館結婚相談所の板本洋子所長にお願いいたします。板     本さんは結婚問題等についての研究活動をされておりまして、農村にお     ける結婚問題についてもお詳しいということでございます。また、7月     に発足いたしました『少子化への対応を考える有識者会議』の委員でも     ございます。よろしくお願いいたします。 板本所長 ご紹介いただきました板本と申します。研究をしているというよりも     結婚相談所の事業を展開しているという現場からの報告ということでお     聞きいただければと思います。      お手元の資料の1番に「現状と問題」ということで取り上げましたけ     れども、私のほうで約20年間にわたって結婚相談の活動をしてきた体験     の中から感じたことを中心にお話をしたいと思います。      1番目の農村男性の未婚の現状というのがありますけれども、いゆわ     る数十年間、農村の嫁不足という言葉に代表されるように、農村の未婚     率が上がっていて大変なのだという話があるわけですけれども、1ペ−     ジ目はそれに関する数字を簡単に述べたものです。農村、都市を問わず     に男女の未婚率というのは増加しているわけですけれども、その中で他     産業に比べて農業に就農している未婚者、とりわけ30歳以上の方の増加     が見られるというのが、最初の男性の未婚者比率の推移の数です。平成     2年と平成7年が載っていますけれども、2年よりも7年、しかも20代     よりも30代になると、かなり増加しているというのが、この表です。そ     してさらにその下は、全産業と農業という比べ方をしてありますけれど     も、その下、さらに細かく製造関係とか卸売り・小売・飲食・サービス     業などというところで比較してみましても、農村の30代以上の未婚者比     率が大変高いということが示されているものです。      それから一番下ですけれども、農村地域の中でも人口の密集している     ところとしていないところという割合があるわけですけれども、未婚者     数の性比という側面から見ましても、だいたい過疎地というか、農村地     域になりますと、平均女性1人に対し男性3人、そのぐらいの割合で未     婚者の割合が多いということになっています。農家の跡継ぎとして親と     同居している30歳代の人は約56万人いると。そのうちの未婚者は20万人      また、跡継ぎといっても農業に就農している人の未婚者は約4万人と     いうことで、いずれもこれは国勢調査の中から引っ張り出した数字で、     未婚者が非常に多いという現状です。      2ページ目にまいります。こうした農村の嫁不足だということで、農     村の未婚者数が多いということで、地方自治体、行政はかなりこれを問     題視しているわけですけれども、現状と課題ということを書いてありま     すが、いわゆる何が問題点だというところだけを4つぐらいにまとめて     みました。      1つはやはり未婚男性が増加するということは、農村において非常に     過疎化が進行すると。高齢少子化と書いてありますが、少子化のうえに     高齢者が大変高齢化していると。住民の高齢化が目立つということ。そ     れから当然、農業後継者が不足していく。それから地域を活性化する担     い手、労働力とか、そういったものが非常に不足しているという点にお     いて非常にじり貧な感じを持っておりまして、重大な社会問題であり、     住民にとっては社会不安であるということが強調されております。      そういう前提で全国農村地域で未婚者に対する結婚支援事業、いわゆ     る配偶者対策ということが展開されていますけれども、非常に変化する     結婚観、あるいは夫婦や家族観の変化、そういうことに戸惑いながら、     未婚者男性そのものも戸惑っているわけですけれども、それを支援して     いる行政や結婚相談員にもこの戸惑いというのが増大しているという現     状です。      それから、農村であるということで、従来からの親子同居型家族経営     である農業をベースとした農村の生活様式、それから家族意識、習慣、     慣習といった従来のものと、それからある意味では新たな夫婦関係とか     あるいは個人尊重型の生き方、考え方、そういうものを持つ都市型生活     様式が農村にも入ってきておりますから、そういった従来型の慣習と新     しい生き方がせめぎ合い、ぶつかり合っている。そういうことで、なか     なかいろいろな出会いの場を設けても、新しい考え方と従来の考え方が     ぶつかりあって、結婚への決断を鈍らせているという側面があるのでは     ないかと思っております。      最後ですが、農村の持つ自然環境、子育て環境も含めて女性たちが農     村を支持するということは多いのですが、しかし農業従事者としての位     置づけとか評価、労働条件、さらには地域や家庭における女性の役割、     あるいは就労の場の限界、多様な生き方を望む女性にとっては非常にこ     うしたものが、素晴らしい環境だと言いつつも、そこに結婚して定住し     ていくということに対しての躊躇が見られているということです。      こういう問題は農村側でも認識をしつつあるわけですけれども、その     認識の上にたって実は全国でかなりいろいろなかたちの配偶者対策が行     われているわけです。これは極端にいうと毎日のように男女の交流会が     行われたり、結婚相談員が活躍しているのですが、それをどうして皆様     に資料で説明したらいいかなと思いまして、その添付されている資料1     −1というのがございます。これは新潟県農業会議が平成9年度でまと     めたものなんですが。中を開いていただきますと、各町村ごとにどうい     う事業をやっているか、どのぐらいの予算かというのがずっと書いてあ     ります。安田町とか。結婚ほのぼのふれあい運動推進事業とか、それに     対してはいくらかかっているとか、これがずっと64町村書いてあります     ので、あとでご覧になっていただきたいと思いますが、最後にはその町     村に加えまして、14ページがあるのですが、農協関係もいろいろなかた     ちをやっていますので、市町村行政に加えて農業団体である農協さんな     んかの結婚に関するさまざまなイベントや事業、これをプラスしていき     ますと、総額で平成9年度、配偶者対策費用というのは1億2,000万にな     っております。私、これを毎年見ていますと、若干不景気もあって下が     っていまして、1億6,000万ぐらいのこともありましたけれども、1町村     平均180万ぐらいの結婚対策費を使っている。      この対策でどういうことをやっているかというと、だいたい4つ、5     つにまとめられるということが、最初の資料に戻ったところに書いてあ     ります。いわゆる結婚相談員の手による配偶者探し。これは主に農業委     員会、社会福祉協議会、農協が委嘱した50歳代以上の男女が結婚相談員     になって活躍していると。マンツーマンで相手を探すということをやっ     ております。それから2つ目に中心にやっているのが、いろいろ、ふれ     あい事業といっていますが、まさに若い男女の交流事業。パーティーと     か、いわゆる農業体験ツアーとか、野外のスポーツやレクリエーション     あるいはみんなで旅に出る。こういうかたちでイベントを中心として男     女の出会いをつくっているということが2つ目です。それから最近、こ     こ5年ぐらいに出てきたのは、結婚に関する講座。つまり、いくらイベ     ントをやってもまとまらないということの中で、未婚男性のためのが中     心になっているのですが、もちろん結婚観の問題やいまの女性が何を考     えているかというようなことの他に、コミュニケーション術とか、それ     からファッションアドバイスとか、そういった具体的なことも含めて、     どうしたら女性の気持ちをこちらに向けることができるかという、いわ     ゆるテクニック的なことも含めていろいろな研修会が行われるようにな     っています。      それから、ご承知のように4つ目として国際結婚。1985年以来、フィ     リピン、韓国、中国を中心に増加しているわけですけれども、こういう     こともやっています。それからその他、結婚相談員の研修会、あるいは     先進地視察。先進地視察というのは何かというと、結婚がよくまとまっ     ている地域を視察したいというのですが、これは皆同じようなラインに     あるわけで、どれが先進地だか、訪ねられたほうが驚いているという状     況の中で右往左往しているという感じがあります。それから、もう若者     たちだけではダメだと。親世代も考え方を変えようということで、親世     代の学習会。そういったようなことが特徴的なこととして予算消化の‥     ‥予算消化というか、予算のうえに立ってこういう活動がされていると      いずれの配偶者対策も成功につながる成果にはなっていないと、各市     町村は感じています。それを一口で言うと、消極的で生真面目な男性と     積極的で行動的な女性の結婚観というか、いろいろな人生観、生き方の     ズレということに集約されて、やっても無駄だろうという悲観的な結論     を持っている市町村もありますが、一方で悲観的になりながらも他方、     成婚者数という直接的な成果というのは究極の目的としながらも、女性     に好まれるような農村、農業づくり、あるいは後継者が自信の持てる農     業や地域づくりにまで視野を広げた対応の必要性があるのだということ     がかなり強調されていますが、直接的な配偶者対策としては、話とか講     演会ということには出てますけれども、事業にはなっていないというか     たちです。      それからもう一つは、行政、結婚相談員は、最終的には本人の意思や     行動力でしか結婚は導くことができないという、これはもう無理だから     という撤退論と、それから最初に2番のところで申し上げました4つの     過疎化への問題とか、いろいろな結婚観の変化とか、そういうことの解     決に向けたいという積極的な対応論もありまして、この撤退論と積極論     がせめぎ合っている。つまり、何年間は結婚対策をその一つの町でやっ     てみたけれども、決まらないからやめたと。やめていくと、やはり住民     のニーズとして議会ではもう一回検討してやらなくてはいけないのでは     ないかということで、一つの町で結婚相談員制度をつくって10年間ぐら     いやったけどダメだからやめて、しばらく空白だったけど、またやろう     ということで、出たり入ったりというかたちで、何らかのかたちで結婚     対策というのが、いつも重石になっているということを感じております      最後のページになります。これは直接関係ないのですが、結婚相談所     私どものところでは別に農村だけをやっているわけではないのですけれ     ども、こうした状況をどこで把握してきたかというと、結婚相談所の主     な事業というのは1、2に書いてありますが、その下の農村への対応と     いうところで、1981年より北海道、秋田、東北を中心として市町村行政     との提携事業として、いわゆる男女の交流会、お見合パーティーのよう     なものをずっとやってきまして、18年間に約100人を越える女性が都会か     ら農村へ嫁いではいっています。嫁いだからいいということではなくて     この人たちが第二の嫁不足をつくるというか、自分の娘はやはり都会へ     出そうという心境になっているのは、これは何なのかというのが、こち     らはまだ充分把握できないのですが、そういう状況にもなっているとい     うことです。      それから、1986年より結婚問題に関する全国集会を開いてきておりま     す。要するに、他の町村では何をやっているのか、いいアイディアはな     いのか、こうした結婚なり少子化をどう考えていったらいいのか、いま     の若者は何を考えているのかという右往左往したものを一挙に集めまし     て、いろいろな考え方を知ったり交流したりということで、相談や行政     が再び元気を出すというようなことにしかならないんですが、一泊二日     でこういった研修会もしています。あるいは、農村版花婿学校、これは     東京ですでに男性学講座というのを10年間以上開いているんですが、人     間関係とか性の関係とか家族とか男女の関係、企業社会での男の生き方     こういったものがベースになった農村版をつくって、東京でも短期集中     講座、農村から青年に来てもらってやっていますけれども、岩手とか長     野で出前講座というかたちでも開いてきております。それから調査活動     としては充分な調査ではないのですが、国際結婚、アジアの花嫁たちの     ヒアリング調査、それから福島県、山形県における30代未婚男性のヒア     リング調査、こういったことをやってきております。      皆さんのお手元に『W』という本があるんですが、これは年4回で7     回目ですから去年から出し始まっている情報誌で、主に結婚相談所に関     わっている男女と、地方の嫁不足に悩む行政の方や結婚相談員が読んで     いるんですが、今回これをお持ちしたのは、たまたま特集でアジアの花     嫁というものをやりましたので、資料にまとめるよりもこれをサッとご     覧になっていただいたほうがいいのではないか。      つまり、村に国際結婚が入って10年になります。この人たちの話を聞     いていきますと、やはり農村であることで職業の選択肢が狭かったり、     いつも女であるということで押さえつけられたり、従来農村の女性が抱     えてきた非常に抑圧的な、あるいはなかなか自己実現できない世界をア     ジアの女性たちがかなり背負っているということで、アジアの女性とい     う特殊性はありますけれども、日本の農村に嫁いだ女性たちが抱えてい     るある一面を彼女たちが見せてくれているというか、示してくれている     という部分がありますので。もちろん基本的には愛し合って結婚したと     いうよりも、日本へ来たいという憧れと、それから嫁がほしいという動     機が結びついて、お金や仲介金が介在して結婚した国際結婚に限っての     話としてこれはまとめてあるのですが、いろいろな問題を抱えている。     その中で、6ページに書いてありますように、これは厚生省の白書にも     まとめられておりますけれども、公益的に農村では外国人花嫁との共生     をどうするかということで、それを土台にして新たな農村づくり。農村     の活性化とか女性たちの位置づけとか、外国人とともに暮らすことのメ     リットをどう捉えていくかというような新しい動きもありますので、一     方的に悲観するものではなくて、一方ではこのように行政が、10年やっ     てきて彼女たちはなぜ日本にやってきたのかという問いにやっと10年目     自立をしたいと。ジャンプを求めてやってきた。それがまた日本の農村     という力でジャンプ力が押さえつけられているというところに問題の発     見があった。それから子どもたちがもう中学生になってきますので、ど     うしてお父さん、お母さんは結婚したのかという問いに彼女たちがどう     答えていくかというところまできているということで、参考のために付     けました。      最後になりますけれども、今後の対応に向けての提言というよりも、     感じていることを3つぐらいにまとめたことで終了させていただきます     結婚とか出産は当然、強要するものではないと私たちも思って事業を続     けてきています。しかし、結婚を望む男女もおりますし、農村で生きる     ことに憧れを持つ女性もいます。結婚後の男女双方の夢とか自己実現を     支援するためには、これは農村であるということで、都市生活者とは異     なる視点での対応が必要なのではないかと思っております。1つは、結     婚相談員を含む親世代がかなり不安を持っていることで結婚を強要しよ     うとしています。この不安というのが何なのか。介護の問題、相続の問     題、生き甲斐の問題、いわゆる農村地域にある経済、産業、農業などの     安定の問題、これを捉えながら、一つずつ安心して暮らせる農村地域と     いうのは何なのかということをやっていかないと、非常にこの人たちが     結婚を脅迫するようなかたちになっていると。それから、結婚相談員が     どういう役割でいっていいのかわからないということで、いわゆる仲人     役はやっているけど、従来のような本当の相談を受けるという関わりに     なっていませんので、相談員というか、親世代の結婚観とか、そういう     学習とか、いわゆるサポーターの人材養成というのは充分必要なのでは     ないかと思っています。      それから2つ目は、これは農村の男性なんですが、跡取り娘というの     もおりますので、農村に生まれ育った未婚の男女ということで捉えてい     くべきだと思うのですが、青年男女の働き方の問題。つまり跡取りとい     うことで、これがかなり結婚のブレーキになっているわけです。親とか     家とか墓をどうするかということが大きなテーマになって、親は「自由     にしていいよ」と一方で言いながら、地域がそうさせないという。「あ     なたは跡取りなんだ」ということで非常にブレーキがかけられていると     いうことをどういうふうに発展的に考えていけばいいのか。そういうこ     とと未婚者向けの講座のプログラムを開発し、やはり農村社会であって     も、その農村を守り育てるという価値観の中で、多様なかたち、夫婦の     かたちや家族の関係や結婚のかたちがあるのだという、啓蒙という言葉     を使っていいのかわかりませんが、そういうことをあらゆるところで指     導していく必要があるのではないか。      それから、20代はともかく30代という大人の出会いの場がなくて、      『ねるとん』に代表されるように非常に20代の若者向けの交流があって     都会の30代の女性、あるいは農村の30代、40代の男性のための出会いと     か情報ですね。こういうことをやっているという都市社会へ向けての情     報公開の手段が検討されるべきではないかと思っています。      それから3番目は、都市から農村へ嫁いだ、先ほど100名以上嫁いでい     ると言いましたけれども、私どももなかなか調査研究活動が充分ではな     いのですが、都市から農村へ嫁いだ女性の自己実現調査、これは外国人     花嫁も含めて、どうだったのか。夫とか家族との関わりとか仕事、子育     て環境、地域の習慣というのが、いったいどうだったのかということを     把握する必要がある。そしてそのうえで農村で生きたい、結婚したい、     働きたいという女性たちが実はじわりと増えているわけですが、その人     たちの相談を受けたり支援するような。農村もいま変化しつつあるわけ     ですけれども、そういった支援グループがつくられていきまして、やは     り都市社会にも農村にある家族経営協定の告知とか改善とか、女性の農     業における位置づけの明確化とか、悩み相談への対応とか、それから多     様な生き方の選択の可能性を紹介するようなシステムというものも十分     つくっていかなければ難しいのではないかと感じております。      ちょっと時間が延びましたけれども。雑駁なお話で申し訳ありません     が、これで終わらせていただきます。 宮澤会長 どうも短時間のうちに、ありがとうございました。何かご質問、ご意     見ございましたら、お願いいたします。 阿藤委員 これは人から聞いた話ですが、20年ぐらい前に農業新聞の記者と話し     ているときに、今日の話とだぶるかもしれませんけれども、要するに農     家の息子の中で長男、跡取りという、昔であれば結婚条件のいい人は結     婚できない。逆に次、三男、あるいはそれほど品行方正でない人のほう     が、むしろ遊んでいろいろコミュニケーション術が巧みだから、女性と     知り合う機会も多くて結婚しやすい。そういう、20年以前とそれ以後と     いいますか、非常に結婚条件というか、男性の魅力というものが変わっ     てきているというのを聞いたんですが。そのへんは、おそらくいまもそ     れほど変わらないのかどうかということが1つと、それから、これもよ     く言われていると思うんですが、農家の親から見ると、嫁はほしいけど     自分の娘は農家に嫁がせたくないということをよく聞くんですが、その     へんの実状といいますか、そのへんを伺えたらと思います。 板本所長 最初の魅力の問題ですが、次・三男はすでに農村にはいない。長男、     長女時代であるということで、長男であることはもう避けられないとい     うか。どういう意味かというと、親を抱えるという意味での跡取りとい     うのだけが農村に残っているという現状です。もちろん、その中で結婚     している人もいるんですが、30代、40代はいま2つのことを言われたわ     けですけれども、真面目な男には嫁が来なくて不真面目な男にだけどう     して嫁が来るかというのは、はっきり言って沖縄から北海道まで定番の     言い方になっておりまして。魅力がないということは、非常に画一的で     思いこみが激しくて、1つのパターンでしか結婚というものを考えない     ということで、多様な選択をしていないというその堅さを真面目さとい     うふうに別な意味で表現していると私は解釈しておりますので。そうい     う意味では、一所懸命働くだけ。男性からすると、働く男のどこが悪い     のかと思われるかもしれませんが、要するにどれだけ物事を許容して膨     らませて考えられるかというものがない男性を魅力がない男性と、どう     も捉えているようだと思います。とりわけ結婚に関しては、とにかく結     論を急ぐというのは農村の男性の中にありまして。もっとプロセスの中     で、女性たちがそこで男性の魅力を発見していくというよりも、無口な     だけに速くどう獲得するかという戦術に凝りすぎているのではないかと     感じます。      それから、自分の息子には嫁がほしいけれども、娘にはという、まさ     にこの2つの言葉のもう一つなんですが、これも未だに全国的に言われ     ておりまして。農業委員会の会長さんが、お盆やお正月に帰郷する女性     たちをつかまえて、いわゆる集団見合いのようなことをやろうと決めた     その農業委員会の会長さんが、家に帰ってすぐ東京の娘に「今度の夏休     みには家に帰ってくるな」と電話をしたという話が、とても顕著なケー     スなんですけれども。やはりどこかで農村の経済的な不安定さと、いわ     ゆる男尊女卑的な習慣慣習を親は持っていますので、それで娘は嫁がせ     たくないという思いを持っている一方、やはり財産相続ということを踏     まえて、息子にはほしいということは、いまも‥‥変わってきています     よと言うけれども、根っこのところでは私は常にそれがあると感じてお     ります。 宮澤会長 どうぞ。 木村専門委員 和歌山県の田舎の村で、その村は梅干しで成功した村なんですけ     れど、村長さんにお聞きすると「ここでは嫁不足は全然ない」と伺った     んですね。同じ農村でありながら、嫁不足に直面していない農村の特徴     というのがもしありましたら、教えていただきたいんですが。 板本所長 その捉え方の違いがありまして、村長さんとか後継者自身がそういう     ふうに位置づけることで農村が活性化しなくなると。農村が被害者的に     なるから、どこにでも多少はいるんだから、嫁不足という押さえ方はし     ないという考え方で「嫁不足はない」と言い切っているところもありま     す。ただ、データ的に、どこの町村にどれだけ充実して男女がいるのか     というのはよくわからないんですけれども、例えば新潟県川西村には、     ずいぶん女性も男性も少ないとはいえ、いるんですね。Uターン、Iタ     ーン、Jターンが増えてきているんですけれども、でもどうして結婚し     ないかという特徴は、やはり人間関係をつくるという都市社会と同じよ     うな傾向が農村の中にも起きていまして、やはり人間関係を濃密に緊密     に関わるという、青年団とか地域の活動もなくなってきているので、そ     ういったコミュニケーション手段がなくなってきているということが1     つは言えると思います。 木村専門委員 そうしましたら、農業経営に成功してかなりの所得があるという     農家でも嫁不足ということは変わりがないんですか。 板本所長 いえ、個人差の問題で、そういう方で結婚している方。個人差で、あ     まり地域差としてはないと思うんですけれども、ただデータ的にわから     ないんですが、配偶者対策をどのぐらいやっているかということでは圧     倒的に東北、北陸が多いので、九州のほうはさほどでもないということ     はありますね。 宮澤会長 よろしゅうございましょうか。どうぞ。 山田専門委員 農村の話なんですけど。私は結婚問題を女性問題としてではなく     男性問題として考えてみると、いろいろなことが見えてくるんだと思い     ます。昔は例えば仕事をしながら結婚をするなんていうのは贅沢だとい     うふうに女性に言われていたのが、例えばいまの農村の男性は、家を守     ったり仕事を守るのだったら、それを守りながら結婚と両方実現できる     という意識をまだ持っているんでしょうか。つまり逆に言えば、仕事や     家を捨ててまで結婚したいという意欲は、つまりは持っていないという     ことでしょうか。つまり、東北、北陸と西南地方の最大の違いは、割と     西南地方は家にこだわらずに、もう農業がダメだとわかったら、すぐ都     会に出ていくので、それほど農村の嫁不足が起きないという話も聞いた     ことがありますので、もしこの点で補足があればお願いいたします。 板本所長 20代はあまりそういう感触というのはないのですけれども、やはり30     代、30代後半になってくると、家と仕事と親と、あるいは女とどっちを     取るかというと、ほとんど9割方、家と仕事という手の挙げ方をする場     面に私は遭遇していまして。いろいろ言葉では言うけれど、やはりそれ     は捨てきれないという。それを彼たちは「刷込み教育のすごさだ」と自     分たちで言っていますけれど、かなりそれは持っていると感じています 宮澤会長 ありがとうございます。どうぞ。 水野専門委員 法学部に勤めておりますので、同僚の会社法の教授から聞いた話     なんですが、近郊の元気な農村のお嫁さんから相談を受けることがある     そうです。それは、従来の農業経営のあり方だと、一緒に農業をやって     いるわけですけれども、自分の労働がいわゆるアンペイドワークでシャ     ドーワークになってしまって、収益の名義は全部舅なり夫なりのほうへ     いってしまう。これはやはり実際に合わないので、共同経営のかたちに     したい。共同経営のかたちにして農業経営という営業を名義的にも共有     化するようなシステムを何とか構築できないかという内容で、会社法の     教授に質問がきたそうです。      まさに会社法の知識などを利用しますと、農業経営をそういうふうに     改革していくことができるわけですね。こういうふうに、いわば下部構     造を変えてしまって、自分の働いた成果が営業の名義的にも自分の収入     になるというかたちのモデルを例えば行政のほうで提供するということ     があれば、これは「こういうふうに考えなさい」という啓蒙活動をする     よりもはるかに効率的に農家に嫁ぐ女性にとって魅力的なモデルを提供     することになるのではないかと思うのですが。そういう試みはやってお     られないのでしょうか。 板本所長 これはすでに農水省のほうで、1つはこれから新農業基本法という中     で株式会社制にしていくと。これは私は専門ではないのでわかりません     が、小さな農家はどうするんだ、中山間地の農家はどうするんだという     問題を抱えながらも、やはり株式会社制にして、女性もそこに従事する     人が経営者として対等な評価をしていけるという方向が1つ考えが始ま     ったということと、それからすでに女性も農業年金をもらうという。年     金で誰が支えていくかという問題の中で、高齢化しているし若い男性の     後継者がいないということの中で、農業に従事している女性が、実は全     体の労働力の6割であるということで、これは女性の労働報酬とか位置     づけをこのままにはしておけないということで、農業年金を彼女たちに     も支払うという。支払うということは払ってもらうということですが、     そのことをベースにして家族経営協定というのがいま確立されていまし     て、すでに。      これも法的拘束がないので、個人の家族の考え方によるんですが、農     業委員会の中でかなり指導していまして、これは女性も経営者であると     いうこと。それから農業委員会や農協さんの理事というか、決定権を持     つところにも女性を育てて、そこに入れていくということで、まさに働     く女性という位置づけがすでに始まっていますし、家族経営協定を結ん     だ家族の中には、結婚というとその家に入っていく個人の結婚ですけれ     ども、どうしてもお嫁さんというのは財産をもらえないで終わってしま     うので、養子縁組をして、ただの結婚ではなくて女性が嫁いだ先のお父     さんと‥‥義理のお父さんですね。お父さん、お母さんと養子縁組をし     て夫と平等に財産を分配してもらうというシステムをつくったりという     ことで、かなり最先端は法制度上、動きが始まっていますし、そこから     変えていかないと根本的な嫁不足は解決しないだろうという動きは始ま     っていることは始まっているということで。それがただ、都会の若い女     性たちにも知られていないということはあると思います。 宮澤会長 ありがとうございました。先を急ぐようで恐縮でございますが、続き     まして経済企画庁国民生活局の国民生活調査課の太田課長さんから、女     性の働きやすさ指標、それと合計特殊出生率との関係についてご説明を     お願いいたします。よろしくお願いいたします。 太田課長 経済企画庁の国民生活局国民生活調査課というところにおります太田     と申します。私どもは国民生活に関するいろいろな指標を作成しており     まして。資料2でございますが、国民生活指標というものをつくってお     ります。これはGDPや国民所得というものが貨幣的な指標で経済の規模で     すとか、あるいは1人当たりの所得水準というものを表しているわけで     ございますが、非貨幣的な指標も含めまして生活の暮らしやすさという     ものを測ろうというものでございます。      5ページでございますが、8つの分野がございまして。いうなれば住     みやすさ、あるいは働きやすさ、子どもの育てやすさ、あるいは学びや     すさと、そういった合計8つの分野について、全国の時系列指標と都道     府県別の指標を作成しているということでございます。今年5月に公表     いたしましたが、その際に働きやすさのうち特に女性の働きやすさにつ     いて指標を作成いたしました。この点についてご説明申し上げます。      この指標でございますが、都道府県別の指標につきましては、同じ5     ページの注2のところに原統計を書いております。12の指標を用いまし     て、それを合成して1つの指標、女性の働きやすさ指標というものにま     とめております。ご覧いただきますように、12のうち賃金に関する部分     が2つございまして、その他10の指標がそれ以外の部分であるというこ     とでございます。ここでこの女性の働きやすさというものと出生率の関     係はどういうものであるかということをチェックいたしました。これは     どういうことからこのようなことを行ったのかということでございます     が、私どもは国民生活全般を見るという観点からいたしましても、女性     の就業の問題と昨今非常に大きくなってきております少子化の問題に大     変関心を持っておりまして。7ページでございますが、昨年、国民生活     白書というものを私どもで出しておりますが、その白書で女性の就業の     問題を取り上げたということでございます。その際に、8ページでござ     いますが、女性の就業と子育ての関係について取り上げております。      ここでは特に(3)のところをご覧いただきますと、女性の経済的な     地位が高まりつつある一方で、出産や育児との両立が難しいということ     がいろいろ言われていて、これがひいては少子化を促進している面があ     るのではないかという認識でございまして。特に(5)ですが。現象的     に言いますと、少子化というのは長期的には人口の高齢化になって現れ     るということですが、高齢社会になりますと労働力という点では少なく     なるということで、女性の労働力がどれほど出てくるかということが社     会全体にとっても問題になってくるということでございますが、現状に     おいては女性の就業が進むと少子化も進んでしまうという傾向にあるの     ではないか。そうしますと、女性の就業ということと少子化というもの     が、あるいは高齢化というものが長期的には悪循環のようなことに陥る     危険性があると、こういった認識がございまして。この悪循環を招かな     いためには就業と子育てが両立できるような環境をつくっていかなけれ     ばならないのではないかと、こういう問題意識でございます。      そこで2ページでございますが。女性の働きやすさ指標と出生率との     関係を見てみたわけでございます。先ほど申し上げましたように女性の     働きやすさ指標の中には賃金に関わる部分と賃金以外の部分がございま     す。賃金に関わる部分につきましては、現状においては賃金が高いほど     女性の収入が多いわけですから、もし出産・子育てをするときに就業を     中断しなければならないと、そういった状況が強ければ強いほど賃金が     もし大きければ、そのような状況になっていくということでございます     それに対しまして賃金以外の部分につきましては保育サービスですとか     女性が就業と出産・子育てを両立しやすい、そういったものを表すと考     えられるわけでございます。      そこで2ページの一番下、ややテクニカルで恐縮でございますが、推     計式を出しております。これは女性の出産・子育てと就業に関わる指標     を被説明変数といたしまして、これがどのような影響を女性の働きやす     さから受けているかということを出しております。Yというものが既婚     女性の出生率でございます。これがX1、X2、X3という3つの変数     からどのように影響を受けているかということを求めております。      X1というのが3世代世帯の割合ということで、親と同居しているか     どうかということでございます。X2が女性の働きやすさ指標のうち、     賃金を除く部分でございます。3番目が女性の実質賃金ということで、     この3つの変数を付けてYというものに対する影響というところを見ま     したところ、一番上の枠の中に入っておりますが、女性の働きやすさ指     標が10%ポイント高くなりますと、既婚有業女性の出生率が0.18人多く     なると。合計特殊出生率の関係で求めておりますが、そういう関係が出     てきております。この10%ポイントというのはどういう大きさかといい     ますと、下の図をご覧いただきますと、47都道府県の数値でございます     が、だいたい40代前半から60ぐらいのところに47都道府県が入っている     と、そういったレンジでございます。それから一方、女性の実質賃金で     ありますが、これはYのところの式でご覧いただきますようにマイナス     の符号になっている。つまり、女性の実質賃金が上がれば上がるほど、     出生率は落ちるという関係が見られるわけでございます。      3ページでございますが、これは統計的な制約がございますので、女     性の就業と出産・子育てのトレードオフの関係というものをもう一つの     指標で見てみまして、6歳未満の乳幼児を持つ、小さなお子さんを持つ     女性の有業率というものを被説明変数、これがどのように影響を受ける     のかということを見ております。これでご覧いただきましても、X2と     いうところの係数がプラスになっているということで、一番上の枠のと     ころにございますように、女性の働きやすさ指標が10%高いと、小さな     乳幼児のお子さんを持つ女性の有業率は12%ほど高いという関係が出て     きております。これはあくまでも推計式でございますので、この関係と     いうのは幅を持ってご覧いただきたいと思いますが、統計的にはこのよ     うなかたちになっております。      以上が都道府県別のデータでチェックしたものでございますが、私ど     もはもう一つ国際的なデータで国ごとの比較をしております。これは4     ページでございます。OECD諸国でこれを求めておりますが、これは若干     資料上の制約がございまして、6ページにその原データを書いてござい     ます。ご覧いただきますように、日本国内の都道府県別の比較のデータ     と比べますと、保育に関するものと男性の数に関するものが入っており     ませんで、そのへんがデータの制約上、基本的には労働市場に関するも     のに限定されております。      出生率の関係を同様の手法でチェックしておりますが、ここでは国際     データを使いますと、女性の働きやすさ指標が高いほど出生率が高いと     いう関係が出てまいります。ちなみに申し上げますと、日本はここにあ     ります23カ国のうち19番目でございます。出生率も低いほうにあるとい     うことでございます。      以上でございますが、国際比較のほうは女性の働きやすさ指標の中に     実質賃金が入っておりまして、したがいまして実質賃金はどちらかとい     うと出生率にプラスに効いている、あるいは少なくともマイナスには効     いていないということが出ています。これは国内の都道府県で行いまし     たクロスセクションの関係とは違うことが出ております。この違いが何     かというのは、これは推測でございますが、2つぐらい考えられるとい     うことで。国際的に見ますと、女性の実質賃金が高くて、非常に女性の     力が強いところというのは、むしろ自分で子育てをできるということか     ら出生率が高いということが1つでございます。それからもう一つは、     これはあくまでも統計上の制約がございますので、この統計上含まれて     いない女性の働きやすさといいますか、就業と子育てのトレードオフの     弱さといいますか、両立のしやすさ。例えば保育サービスですとか、あ     るいは育児休業の問題ですとか、そういった、ここには含まれていない     ものが、実は女性の実質賃金などとプラスの相関にありうるということ     で、その隠れた変数の関係でこのような賃金と出生率の間にプラスであ     りうる相関が見られると。それが国内のものとは少し違うということで     はないかと解釈しております。      以上でございますが、いずれにいたしましてもこういったクロスセク     ションデータで見て保育サービスですとか、あるいは育児休業ですとか     あるいは男性の数、そういったものがどうも女性の出生率とはプラスに     相関しているということが出てきたということでございます。      以上でございます。 宮澤会長 ありがとうございました。それではご質問、ご意見ございましたら。     どうぞ。 大淵委員 技術的なご質問を1点いたしたいと思うのですが。2ページ目の回帰     分析の結果のところの被説明変数になっております就業している既婚女     性の出生率というデータは、具体的にどういうものであるのか。また、     そのデータ総数も教えていただきたいと思います。これはTFRのようなん     ですが。      それから2点目は、3ページ目の下の回帰式で、3番目のX3の符号     なんですけれども。これは女性の実質賃金が高いと子どもを持った女性     の有業率が下がるという逆の関係になっていますね。だから符号条件は     むしろ賃金が上がれば有業率は上がるということで、符号条件としては     逆ではないかと思うんですが。その2点を。 太田課長 それでは、後者の点からご説明申し上げます。これは私どもの解釈で     すが、この場合の女性の賃金というのは2通り影響しうるということで     ありまして。1つは当然ながら、賃金が高いほど働きに出るということ     でプラスに働く。それからもう一つは、あくまでもこれは小さなお子さ     んを持つ女性ですので、もともと賃金が高い仕事に就いておられる人が     お子さんを持っていなくてこのサンプルから外れているということがマ     イナスに効いてきうるということではないかと解釈しております。      それから1点目ですが、私ども、いま直ちにあれですが。これはおそ     らく90年に出ております人口動態職業産業別統計というものをもとにし     て出しているということでございます。 宮澤会長 どうぞ。 阿藤委員 ちょっと大淵先生の質問の。これは2ページの縦軸の。いまのお答え     は多分‥‥。 太田課長 3ページですが。 阿藤委員 就業している既婚女性の出生率ですか。2ページの縦軸ではないの? 大淵委員 それは2ページの縦軸ですね。だから人口動態統計の特殊‥‥。 阿藤委員 それでお伺いしたかったんですが。要するに就業している未婚女性の     出生率というのは1.1 〜1.8という非常に大きな幅があるというか。統計     そのものを批判するのは何かもしれませんけれども、要するにこの動態     統計で得られた就業、非就業別の合計特殊出生率というのは、かなり解     釈に難しい面があると思っているんですね。要するに、出生時点で就業     をやめた人が就業していない人の出生になっているという。要するにカ     テゴリー間の移動が出生時点で大きく起きているという問題があって、     それをそのまま出生率の格差と見るのは、大変大きな問題があるわけで     すね。ですから、それを従属変数に使って分析をするというのは、かな     り危ない感じがするんですけど、いかがなんでしょうか。 太田課長 その点は私どももその面を感じておりまして。実際に就業を継続して     子どもを生んだかどうかだけの違いであると。一時的に辞めたかどうか     という問題が実際はあるということでございますので、これだけで出産     と就業とのトレードオフの関係を見るのは完全ではないということはご     ざいまして、この(2)のほうの小さな子どもを持つ女性の有業率とい     う、この2つで考えているということでございます。あくまでも統計で     取れるものがこれしかないので、これを取っているということでござい     ます。 阿藤委員 ついでと言っては何ですけれども。むしろそうであれば、いま女性の     就業がむしろシングル化といいますか、結婚の問題にむしろ強く跳ね返     っているわけですね。ですから、都道府県格差をやるにしても、そうい     う女性の就業と働きやすさ、賃金も含めてですけども、そういうものと     有配偶率とか未婚率とかですね。そういうものでもしやってみられたら     どういう結果になるのかという、あるいはやられているのかどうかです     ね。そのへんはいかがなんでしょうか。 太田課長 昨年私どもで国民生活白書を出しましたときに、また都道府県別デー     タでございますが、女性の賃金と女性の初婚年齢の相関というのを見ま     して、賃金が高いところのほうが初婚年齢が遅いという関係は、緩やか     にそのような関係があるということなどを述べております.このへんにつ     きましては、確かにおっしゃるように結婚と出生というのは何らかの意     思決定上連動している部分もあるだろうということでございますので、     間接的に出生との関係が見られるのだろうと解釈しております。 宮澤会長 どうぞ。 高山専門委員 2つございまして。まず3ページですけれども、3ページの図表     を見ますと一番右上に1つだけ離れている県があるんですね。これはど     ちらかというとアウトライアー的なんですね。データとしては。これを     外すと、はたしてここに描き込んであるような線が引けるのかどうか。     おそらく一番右上に描いてある一つ離れた県が統計上はレバレッジポイ     ントなんですね。ここがあるからみんな引っ張られて、結果的にこの線     が引けたという可能性が極めて高いわけです。この県を外すと、もしか     したら違うかなという推察ができますので、この結論を出すにあたって     は若干そこのところを精査していただきたいというのが1点ですね。      2点目は5ページですけれども、インデックスがいろいろ苦心をなさ     って選択されて12あるんですけれども、全体としてこれを一つにまとめ     上げたものを使っているわけですね。個別の指標を一つにまとめる作業     というのはアグレゲションの問題で、大変難しいんですね。企画庁はそ     れぞれのインデックスにどういうウエイトをつけたか、よくわからない     んですが、多分、同じウエイトをつけてやったのではないかと推察する     わけです。そうすると、それぞれの個別のインデックスが互いに独立か     どうかということがチェックされなければならないはずなんですが、そ     こがどうも並んでいるのを見ると、必ずしも独立でないようなものが並     んでいる。あるいは就業関係のデータが例えば4つであり、保育関係が     3つで家事労働関係が2つとか、この数の問題ですね。要するに等分に     ウエイトをかけるというときに、どういう数で選んでくるかというのは     当然問題になるわけです。互いに独立かということも問題で、これはと     りあえず整理をなさったということだと思うんですが、こういう指標が     仮に意味があるものだと考えるとすれば、これからかなり精査を続けて     いただいて精度を高める作業をなさっていただきたいというお願いです     ね。その2点です。以上です。 太田課長 第1点目につきましては、若干私どももやや強引であるというのも認     めざるをえないと考えております。ただ、これはもともと2つの変数を     並べているのではなくて、3つ変数をつけたものを加工してやった結果     がこうなっておりまして、そこのところの解釈をどうするのかというの     をもうちょっと考えてみなければという感じはございます。      それから、これは第2点目とも絡むんですが、例えば昨年やった分析     でいきますと保育サービスで考えますと、このX2を。もう少しきれい     な相関が出るということはございます。      それから2点目の件でございますが、ここにある12個というのは、     基本的には私どもの国民生活指標本体の中に入っているものから拾い上     げたということでありまして。そういう意味では精査はされていないと     いう点は認めざるをえないわけでございますが、このへんはまた改良を     図ってまいりたいと考えております。 宮澤会長 はい、どうぞ。 井上委員 いろいろ技術的な質問が出ましたので、そういうことは省略いたしま     して。この4ページにあります国際比較、これは大変面白いと思ったん     ですけれども。この事実関係なんですけれども、日本よりも女性指標が     低い国が3つございます。この3つの国がどこの国か教えていただきた     いということ。それから一番上のほうに、アメリカのちょっと左上に飛     び出したのがありますね。これももしわかりましたら国名を知らせてい     ただきたいと思います.以上です。 太田課長 日本より低い3カ国はイタリア、ギリシャ、スペインでございます。     ラテン系といいますか、みな地中海系で、特にイタリア、スペインはこ     の十数年間に大幅に出生率のほうも下がっているということでございま     す。それからアメリカの上に出生率がある国はニュージーランドでござ     います。 井上委員 3つのうち一番低いのは。 太田課長 スペインになります。 井上委員 ドイツは右のほうのやつですか。 太田課長 はい。出生率が低くて女性指標が50ぐらいのところにあるのがドイツ     でございます。 宮澤会長 こういうのを見ていると、面白いようでなかなか難しいですけども。    よろしゅうございましょうか。      それでは次に移らせていただきまして、国土庁企画調整局の計画課の     道上計画官から「地域の視点から少子化を考える」というテーマについ     てご報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。 道上計画官 国土庁計画・調整局の計画官をやっております道上でございます。     よろしくお願いいたします。      お手元の資料3、横長の紙に沿ってご説明申し上げます。ここに付け     てございますのは、平成8年度に私ども外部に委託いたしまして作業し     てもらった成果の中のエッセンスといいますか、かなり意味があるので     はないかというのをまとめたものでございます。まずページをめくって     いただきまして、ページ番号2ページ、調査の目的などを書いておると     ころでございますが。私どもがこういう調査をやりました意図でござい     ますけれども、国土庁でございますので国土政策・国土計画というのに     関心があるということでございまして、そのときに将来の都道府県ごと     の人口がどうなるのであろうかというのが国土計画の重要な関心事の一     つでございまして。それを考えるときに、かつての高度成長期に比べれ     ば社会移動というのが沈静化しているという状況のもとで、これから自     然増減が地域の人口動向の増加率などの、あるいは減少率の格差に与え     る影響が大きくなっているという状況のもとで、今後の人口動向、ある     いは地域政策、国土政策を考えるうえで、地域ごとの少子化とか出生率     の違いなどを見極めることが重要だという問題意識のもとでこの調査を     行ったということでございます。国土政策の主たる関心事といいますの     は、将来のことに関心があるわけでございますが、この調査は過去の分     析を行ったものということでございます。      調査結果の概要でございますが、それは3ページ以下でそのエッセン     スをご説明申し上げますと、まず3ページ目ですけれども、日本全国47     都道府県を婚姻・出生動向に関する指標を用いましてクラスター分析と     いう手法によりまして類型化したということでございます。婚姻・出生     動向に関する指標と申しますのは、それぞれ2種類ずつ、合計4種類取     っております。婚姻に関しますものといたしましては、1つは平均初婚     年齢。2つ目が生涯未婚率、これは50歳の女子の未婚率で生涯未婚率と     しておりますけれども、それを取っている。それから出生動向に関する     指標といたしましては、1つには30歳代前半、30〜34歳の女性の有配偶     出生率というもの、2つ目は合計特殊出生率を取っているということで     ございます。この4つの指標のそれぞれ現状値、現状といいましてもも     のによりましてデータの関係上、1990年を現状と呼んでいたり、あるい     は95年を現状と呼んでいたり、指標ごとに若干違うわけですけれども、     そういう現状の数値と、それから1975年から現状時点までの傾向を取っ     て、合計2×4の8種類のデータでクラスター分析の手法によりまして     4つの地域に分類してみたということでございます。      そして、その地域分類の第1番目が大都市地域型ということでござい     まして、色刷りで申し上げますと北海道と埼玉、千葉、東京、神奈川、     京都、大阪、兵庫、福岡の各都道府県がこれに該当するわけでございま     すが、平均初婚年齢が高く、すなわち晩婚であり、30歳代前半層の出生     率が高い、これを晩産といっているわけですが、晩婚晩産で合計特殊出     生率が現状では低いということでございます。ところが、過去の傾向値     というのはそれぞれ平均初婚年齢が高まっているという傾向が、過去15     年、あるいは20年間の傾向を見ますと、それほど他地域に比べて進んで     いない。晩産化もそれほど進んでいないということからいたしまして、     その傾向が続くならば、いま現在低い出生率というのは、今後低下する     ことはないのではないかということでございます。      2番目の地域が東北地方と九州に多いわけですけれども、それで東北     ・九州地域ととりあえず呼んでおるわけですが、これは過去の傾向で見     ますと晩婚化、晩産化が急速に進んでいると。急速にというのは、他地     域に比べて晩婚化、晩産化の進み具合が速いということでございますけ     れども、そういうことで現時点では他地域に比べて出生力は高いけれど     も、この過去の晩婚化、晩産化の傾向が続くならば、今後出生率の低下     が見込まれるのではないかという地域でございます。      3番目の地域は、図の上では黄色の地域でございますけれども、どち     らかというと大都市圏の周辺が多いということで、大都市地域周辺地域     型と呼んでおりますが、これは繰り返しですけれども、現状というのは     1990年、あるいは1995年のデータで現状と呼んでいるわけですが、現状     では晩婚晩産の程度は他地域に比べて低いわけですが、過去の傾向とい     たしましては出生力、合計特殊出生率の低下度合いが速いという状況で     ございます。こうした地域は、過去において若年人口の大都市圏への流     出が生じた地域であるということも併せて考えますと、今後とも出生率     が低下していくことが予想されるのではないかということでございます      4番目の地域は沖縄県だけでございますが、ここは現状で晩婚晩産で     非婚率も高い。しかしながら、出生力が高くて他と異なるということで     ございます。出生力は現在高いわけですが、過去の傾向といたしまして     低下傾向にあって、今後とも低下する可能性がある。      そういうことで、婚姻動向、出生動向、こういう分析をやってみます     と、地域差がかなりあるということで、こういう地域差がいかなる状況     のもとで生じているのかというのを若干見てみたのが4ページ目、ある     いは5ページ目でございます。      まず4ページ目でございますけれども、3ページ目は各県別に見てみ     たわけですが、4ページにおきましては平均初婚年齢を各県別、かつ都     市・農村別に95年の数字を整理してみたということでございます。不特     定、青い線が都市部。ここでは国勢調査によりますDID地区の数字を取っ     ておりますけれども、その都市部の平均初婚年齢であり、細くて赤い数     字が農村部、非DID地域の初婚年齢ということでございますけれども、こ     れをご覧いただきますと、おおむね都市部の平均初婚年齢が高い。特に     その傾向は東北、北海道と北陸地域で大きく現れているかと思うんです     けれども、おおむね都市部において平均初婚年齢が高いということとと     もに都道府県別にかなりデコボコがある。なおかつ都道府県別のデコボ     コの程度は都市、農村共通である。つまりDID地区の平均初婚年齢が高い     都道府県においては、非DID地域の平均初婚年齢も高い。その逆は、また     逆という傾向にあるのではないかということでございます。すなわち、     都道府県別の婚姻動向の格差というのは、一つには都市化の度合いにも     よるということが現れておりますけれども、それだけではない。都市化     の度合い以外の要因もあるがゆえに、このDID、非DID別で見ても都道府     県別のデコボコの度合いは似たようなかたちになっているということで     あろうということでございます。      5ページ目でございますけれども、今度は女性の就業と平均初婚年齢     の関係を分析してみたということでございます。このグラフでございま     すけれども、赤い折れ線グラフは平均初婚年齢の全国平均との差を都道     府県別にプロットしてみたものでございます。その差を要因分解してみ     たというのが棒グラフでございまして、青く塗りつぶしているところが     各県の労働力率の差によるもの、それから斜線で塗っておりますところ     が非就業者の未婚率の差による部分、白いところが就業者の未婚率の差     による部分ということでございまして、一見いたしましてすぐおわかり     のとおり、この折れ線グラフのデコボコは白塗り部分に引っ張られてい     るということが読みとれようかと思います。すなわち、就業している女     性の未婚率の違いというものが、都道府県別の差の主な要因であろうと     いうことでございます。さらに加えまして、青く塗りつぶしているとこ     ろでございますが、これが上に出ているところほど赤い折れ線グラフが     下に出ている傾向があるということがいえようかと思います。すなわち     女性の労働力率が全国平均に比べて高い地域ほど、女性の未婚率が低い     ということがいえるのではないかということでございます。      それから、ここにグラフは載せておりませんが、女性の就業、非就業     の状況と4ページのようなDID、非DID別合計、2×2の4区分になるわ     けですが、その分析も都道府県別にやっておりまして、それを見ますと     まずおおむねどの都道府県におきましても就業女性のほうが非就業女性     よりも平均初婚年齢は高いということでございますが、就業女性だけを     取り出してDID、非DID別に見てみますと、就業女性に関しましてはDID地     域の平均初婚年齢のほうが非DIDの平均初婚年齢よりも高いという状況に     ありまして、かつ都道府県間の格差、横に並べたときのデコボコが大き     い。それから、非就業女性だけを取り出してDID、非DID別に見ますと、     非就業女性に関しましてはDIDと非DIDの差はほとんどないということ。     それから、都道府県間の格差もほとんどない。つまり、ここにあります     ように横軸に都道府県を並べたときに非就業女性の平均初婚年齢のグラ     フを取ってみますと、ほとんど横一直線のグラフになる。しかもそれは     DID、非DID別に描いてみましたら、その横一直線がほとんど重なってい     るという状況にございます。      そういうようなことでございまして、ここのグラフの上の3行目に書     いてございますように、先ほどの経済企画庁のお話とも同様の結果であ     ろうと思われますけれども、女性にとって働き続けやすい地域というも     のは女性が結婚しやすい地域とおおむね一致しているのではないかとい     うことでございます。この分析はあくまでも因果関係を分析したという     ことではございませんので、これがどういう因果関係にあるのかという     ところまでは、この調査では分析にいたっていないわけですけれども、     おそらく推測でございますが、第3の要因といいますか、何か別の要因     があって、それが女性にとって働きやすいとともに、女性が結婚しやす     いという状況にあるのではないかということでございます。      6ページ目でございますが、いま申し上げましたもの以外でも、さま     ざまなデータ、一部アンケート調査なども用いてやっているわけですが     回帰分析を行いまして、女性の婚姻動向、それから出生力の地域格差の     分析を行っております。最初の「・」に書いてございます、女性の婚姻     動向の地域格差に影響を与える要因といいますのは、これは被説明変数     といたしましては年齢5歳階級別の初婚率というのを被説明変数といた     しまして、一部アンケート調査を用いたり、あるいは住宅の家賃とか都     市化の度合いとか女性の実質賃金とか、そういうものを説明変数としま     して回帰分析を行った結果、定性的な記述だけしてございますが、1つ     には結婚を当然とする規範、すなわち結婚を当然と考える風潮が弱い地     域では予想できるように結婚年齢は高くなっているわけですが、結婚す     る人が多くなっているということが分析の結果現れてきたということで     ございます。      それから3番目のところにございますように、男女間の賃金格差が小     さい地域では、これもまた予想できるかと思うんですが、結婚年齢は高     くなっているけれども、しかし最後には結婚する人‥‥という言い方を     していいのかどうかわかりませんが、結婚する人は多いという状況にあ     るということでございます。      それから、この「・」の下から2番目。女性の実質賃金が高い地域で     は結婚しない人が多いというのも出ております。一見いたしますと、上     から3番目の男女賃金格差が小さい地域では結婚する人が多いというこ     とと、女性の実質賃金が高い地域では結婚しない人が多い。何か矛盾す     るように思えますが、ただ上から3番目のは、あくまで男女間の賃金格     差が大きい小さいということでございますし、下から2番目は女性の実     質賃金、すなわち地域間の物価格差を是正したあとの女性の賃金。男の     賃金が高かろうか低かろうが、それに関わりなく女性の実質賃金が高い     地域だけを見たということでございまして、たとえ女性の実質賃金が高     くても男性の賃金がそれ以上に高ければ、賃金格差が大きいということ     でございますので、一見矛盾するように見えるのが矛盾しないというこ     とでございます。      それから2番目の「・」でございますが、これも説明変数としては同     じようなものを用いまして、被説明変数といたしましては年齢別の有配     偶出生率というものを用いまして、同じように回帰分析を行ったという     ことでございます。その結果といたしまして、家族に対する考え方、つ     まり家族の団欒を重視する風潮が強い地域では出生力が高いとか、以下     ここに書いてありますような結果が得られたということでございます。      この結果を国土庁的な見方で解釈いたしますと、多様な価値観を認め     るとか、あるいは男女共同参画がしやすいという地域、すなわちこれは     国土政策の観点からもその地域が魅力あるといっていいかと思うんです     けれども、それを進めるということ。それが進んでいる地域は出生力が     高いという傾向にあるのではないかということでございます。これはク     ロスセクションの分析によるものでございますが、このクロスセクショ     ンの分析、空間軸方向の分析が時間軸方向の議論にそのまま適用できる     ということならば、魅力ある地域づくりを進めていけば出生力も高まる     ということがいえるのではないかということでございます。    簡単でございますが、以上でございます。 宮澤会長 ありがとうございました。それでは質問。どうぞ。 山田専門委員 どうもありがとうございました。移動についてお聞きしたいんで     すけれども。特に女性は結婚などによって移動しますよね。特に働きや     すいところとか結婚しやすいところに未婚女性が移動していくという側     面というのは、考慮されているんでしょうか。例えば板本さんのご発表     であったとおり、例えば農村女性の人は都会に出ていって未婚化するか     もしれないわけでございますから、たまたま出生率が農村地区で高いと     しても、もしかしたら30歳、40歳まで未婚ではいられないから親元にい     られないので都会に出ていって未婚化して、たまたま未婚率が高まって     農村の出生率が高まるという点は、どの程度考慮されているんでしょう     か。 道上計画官 実はその点、端的に申し上げまして考慮しておりません。例えば4     ページ目のグラフでもそうなんですが、これは確かにおっしゃるように     DID地域、都市部において平均初婚年齢が高いのか、それとも都市部は     こういう要因があってそうなっているのか、何らかの別の要因で遅く結     婚する人が都会に出てくるのかという、その解釈でございますけれども      ここでは前者のほうの解釈を取っているということでございます。      どうしてそういう解釈をしたかということでございますが、1つには     ちょっと乱暴でございますけれども、クロスセクションのデータでござ     いましても、95年ごろはかつての高度成長期に比べれば人口の社会移動     というものが相対的に減っているということからいたしまして、その人     口移動による影響というものがそんなに大きくないのではないか。かつ     てに比べればですね。そういうこともございまして、地域の要因である     と。そういう人がそういう地域に行くのではなくて、地域固有の要因が     あるという解釈をしたということでございます。 井上委員 6ページ目の表について質問をさせていただきたいんですけれども。     ここで結婚を当然と考える風潮が強いか弱いか、あるいは家族の団欒を     重視する風潮が強いか弱いかということが重要な要因として取り上げら     れておりますけれども、具体的にこの風潮というのは、どういう指標で     測られたものなのでございましょうか。 道上計画官 これが実は先ほども少し申し上げましたアンケート調査でございま     す。具体的な問は手元にございませんけれども、結婚を当然と考えるか     どうかというような問で、当然と考えないと答えた割合が多いか少ない     かということで、そのアンケート調査の回答率を回帰分析の説明変数に     入れたということでございます。 大淵委員 同じく6ページなんですが。ここに今回の調査結果の要約といいます     か、解釈がまとめられていると思うんですけれども。これがどのような     回帰分析の結果から出てきたものなのか。その具体的なデータをもしち     ょうだいできればありがたいと思うんですが。結果として大変面白いと     思いますので。例えば、上は有配偶率、下は有配偶出生率が被説明変数     になっていると思うんですが、年齢階級別に分析されているのかどうか     等々、それを見ればわかると思うんですけれども。もう少し分析の結果     そのものが知りたいんですけれども、いかがでしょうか。 熊崎委員 関連で質問したいんですが。一つは賃金の関係でここに書き込んであ     りますが、その賃金の高いという表現では、私も年齢的なものを知りた     いんですね。年齢的に賃金がどのようになっているのかということをも     しわかれば教えていただきたいということと、賃金の関係では地域によ     っては産業の特徴といいましょうか、そういうのがわかるかどうか。そ     の2点のことをお聞きしたいんですが。以上です。 道上計画官 まず最初の先生のご質問でございますけれども、6ページ目の最初     の「・」のほう、これは被説明変数、年齢5歳階級別の初婚率を取った     ものということでございます。下のほうの「・」は、年齢5歳階級別の     有配偶出生率というものを被説明変数に取ったということでありまして     あと、説明変数がどういうものであるかというものは一つ一つ申し上げ     ると時間があれでございますので、実はこれはこういうレポートになっ     てございまして。申し訳ございません、いま私どもの持っております余     部というのがなくなってしまいまして。宣伝するようで申し訳ないんで     すが、政府刊行物センターに売ってございますので。      それからもう一つ。女性の賃金ということでございますが、ここで取     っておりますのが、女性の賃金も確か年齢階級別に取っておりまして、     それを先ほど申し上げましたように全国の物価水準の地域差で指数化し     たというものでございます。ただ、ここでの分析では産業別というもの     ではやっておりませんで、全産業でトータルでやっているということで     ございます。 阿藤委員 私のは小さな質問ですが。3ページの地域区分の中の3番目の説明な     んですが。大都市地域型ですか。その中で若年人口の流出が生じた地域     であり、今後も出生力が低下すると予想されるとあるんですが、これは     扱っている出生力の指標が、例えば普通出生率とかでありますと人口構     造の影響を受けますが、TFRとか、あるいは有配偶出生率のある年齢別の     ものであるとかということであれば、こういう説明は成り立たないよう     に思うんですが、いかがなんでしょうか。 道上計画官 ここで用いた統計的分析では、確かにおっしゃるとおり若年人口の     流出が生じた地域とは無関係でございますが、それとは別に過去数十年     の歴を眺めてみましたら、この3番目の分類の地域は、若年人口がそも     そも少ない地域であるということと、それからここでの分析を合わせて     考えて、ちょっと乱暴ですが将来を展望してみたらこういうことがいえ     るのではないかという意味でございます。ここは、そういう意味では誤     解を招く表現からもしれませんけど、意味はそういうことでございます 阿藤委員 これは、その因果関係を書いた文章ではないんですね。つまり残って     いる女性がどれだけ生むかということと、若年人口が多いか少ないかと     いう話は、通常人口学では別ですから。いまのご説明は、2つのことが     つながりがないと考えてよろしいんでしょうか。 道上計画官 はい。ちょっと省略しすぎということであろうと思います。 宮澤会長 やはり5人の方の説明を聞くというのは、なかなか。もったいないで     すね。      続きまして国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部の高橋部長     より「地域特性別にみた結婚と出生」についてご説明をお願いいたしま     す。 高橋部長 国立社会保障・人口問題研究所の高橋です。資料4に基づきまして、     地域特性別にみた結婚と出生ということで報告させていただきます。      今日報告いたします内容は、私どもの研究所が昨年6月に実施しまし     た出生動向基本調査というのがございますけれど、その結果に基づいて     特に今回は地域特性を考慮して、特に夫婦の子どもの生み方というもの     がどのように違いがあるのかという点に絞って報告させていただきたい     と思います。      出生動向基本調査自体は標本数が1万を切るサイズでありますので、     地域を詳細に見ることはできません。したがいまして、今回報告する中     では、地域を人口集中地区という概念で3つに区分しまして比較をさせ     ていただきました。1つは非人口集中地区であります。ご案内のように     非人口集中地区と申しますのは、調査地区の人口密度が1平方キロメー     トル当たり4,000人未満の地域でありまして、一般的には農村地域と解釈     できる地域であります。もう一つ今回用いている区分は、人口集中地区     200万未満というところであります。人口密度がそうとう高くて都市部で     はありますけれども、大都市部とは異なる規模を持っている地域が2番     目の区分です。3番目は人口集中地区で、人口規模が200万以上の地域。     例えていえば東京都の特別区部、さらに横浜市、あるいは名古屋市等と     いった大都市圏に当たる地域がそれらに相当します。      さっそく出生率の違いについて、1ページ目の表1から見てみたいと     思います。表1をご覧いただきますと、一般的に見ましても非人口集中     地区、農村地域がいずれの結婚経過年数別に見ても高い出生率を示して     います。そして大都市部が低い出生率を示しています。この図で見ます     と、きれいに3つが平行移動のようなかたちで出生率の規模が違うとい     うことが理解できるかと思います。      では、なぜこのような違いがあるのかということに関して簡単に見て     いきたいと思いますけれども、次の2ページをご覧いただきたいと思い     ます。表2のほうでは、先ほどの出生率に関しましては若干コントロー     ルを加えてあります。表2のほうでは子どもを持っていないという夫婦     を除いて、すなわち1人以上の子どもを持っている夫婦について限定し     て出生率を計算したものであります。これを見ますと、先ほど見られた     農村地域、都市部、さらに大都市部の3つの格差がそうとう縮まってい     るということがわかります。特に人口集中地区の200万未満のところと     200万以上の差というものが、ほとんど消えてしまいます。      そのことはいったい何を意味しているかといいますと、大都市部と都     市部では、つまり大都市部では子どもを持たない、あるいは子どもを持     てないということが結果的に一般の都市部と大都市部での出生率の差を     もたらしているということを示唆しているわけであります。      次に3ページ目の表3をご覧いただきたいと思います。では子どもの     いない夫婦の割合というのは、いったいこの3つの地域区分で見た場合     どうなっているのかというのを見てみますと、この表3、あるいはその     下の図のように表せます。この図で見ますと、結婚0〜4年目のところ     を見ていただきますと、人口集中地区の子どものいない夫婦の割合が5     割を超えています。53.9%。人口集中地区200万未満の都市部では、その     値が44.4%。非人口集中地区、農村部では32.6%というように、明らか     に都市部へ向かうにしたがって、結婚5年未満の、結婚生活をスタート     してからしばらくの部分に子どものいないという選択をした夫婦のパー     センテージが、大都市部で極めて高くなっているということがわかりま     す。5〜9年についても、その傾向は続いておりまして、5〜9年では     人口集中地区200万以上で17.6%。それに対して農村部では7.7%という     ように格差がございます。ところが、15〜19年、20〜24年、25年以上に     なってしまいますと、非人口集中地区、あるいは人口集中地区間の差と     いうものが、ほとんどない状態になっております。      このことに関連して、以前の人口問題審議会で私どもの夫婦の出生動     向調査について報告させていただいたことがありますけれども、その中     での特徴の一つは、1980年代生まれ以降の人々の出生行動が大きく変化     をしてきているということにその特徴がありました。この表3からもう     かがえるんですけれども、農村部と都市部、大都市部の子どものいない     夫婦の割合の差というのが、ちょうどここで見ますと結婚10〜14年、5     〜9年、0〜4年というように、ちょうど1980年代以降に結婚した夫婦     で子どものいない夫婦の割合の差が大きく見られるという特徴が現れて     います。そのことは、いわば1980年代以降の夫婦の子どもの生み方の変     化というものが、ここに反映されているのではないかと考えられるわけ     です。      次に4ページに進んでいきたいと思います。4ページでは、今度は一     人っ子を持つ夫婦の割合というのが何%いるのかというものを見たもの     です。これで見てみますと、図のほうがわかりやすいかと思うんですが     一人っ子を持つ夫婦の割合というのは、結婚0〜4年目では大都市部が     低くて、都市部と農村部がほぼ同じ水準にきています。これは先ほどの     逆の関係が現れていて、0〜4年では子どもを持たないという夫婦が大     都市部では多くありましたから、その結果がここに反映されているとい     うことであります。      結婚5〜9年については、この差というものがそうとう小さくなって     いって、10〜14年では農村部のほうで一人っ子というのが少なくなって     いて、大都市部と都市部で15%を若干下回るぐらいの水準になっている     それから15〜19年、20〜24年、25年以上になると、ややこの差が現れて     いるという状態になっています。これは農村部のほうが子どもを多く持     つという傾向の現れでありまして、その結果、非人口集中地区、すなわ     ち農村部の一人っ子のパーセンテージが低いという結果になっておりま     す。      次に5ページに入らせていただきたいと思います。5ページでは、地     域別で見た妻の結婚年齢別平均出生率を見ております。何歳で結婚した     人が平均的に何人の子どもを持っているかという表であります。これで     比較してみますと、どういう傾向があるかといいますと、妻の結婚年齢     例えば21〜22歳に結婚した人について見ますと、非人口集中地区、すな     わち農村部では2.41人。人口集中地区200万未満では2.29人、人口集中地     区200万以上では2.25人というように、20歳前半で結婚した人々について     いうと、やはり格差がある。農村部で多く子どもを生んで、大都市部で     子どもの数がやや少ないという傾向があります。では、結婚年齢の高い     ところで見るとどうか。例えば27〜28歳で結婚した人について見てみま     すと、農村部では2.23人、人口集中地区200万人未満では2.13人、200万     以上では2人というように、ここでも格差があります。      つまり、この結果というのはいったい何を意味しているかといいます     と、結婚年齢が上昇するにしたがって、子どもを生む数というのは小さ     くなっていくんですけれども、そうしたことを前提としながらも、地域     間格差というのは初婚の年齢に関係なく存在しているということです。     結婚の年齢に関係なく農村部で暮らしているということが、そもそも高     い出生率を持っている。結婚年齢が上がるにも関わらず持っているとい     うことを意味しています。すなわち都市部では、いわば出生に関する規     模の規範ですね。規模の規範自体が農村部と比べて小さいのであるとい     うことがいえるかと思います。それを考えてみますと、大都市部では初     婚年齢の上昇ということで出生率が下がる一方、なおかつ出生規模の規     範が小さいというダブルパンチの状態がここでは効いているのではない     かと考えられるわけであります。      次に6ページに入らせていただきます。6ページ以降のところでは、     実際に生んだ子どもの数ではなくて、これからあと何人子どもを生むか     ということを含めた予定子ども数、つまり出生意欲について比較したも     のであります。出生意欲についてもこの図でわかりますように、農村部     それから都市部、大都市部で一貫した傾向が見られます。すなわち大都     市部では出生意欲というものは相対的に低く、都市部がその間にあって     農村部の出生意欲が高いという傾向であります。すなわち、こういう地     域性と出生の意欲の違いが存在していることをうかがわせるデータにな     っております。      次に7ページをご覧いただきたいと思います。ここでは予定子ども数     のうち、一人っ子を持つ予定の夫婦というのは、いったいどれぐらいい     るのかというのをパーセンテージで見たものであります。生涯を一人っ     子でよいという夫婦は、やはりこのデータから見る限り、大都市部が高     くて、非人口集中地区、農村部で低いという結果になっています。特に     結婚0〜4年、5〜9年のところでは、人口集中地区、200万以上の大都     市部では12%を超える水準にあるのに対して、農村部では7%、9%と     いったところであります。その意味で、大都市部の出生意欲が低いとい    うことがここにも現れております。      次に8ページをご覧いただきたいと思います。8ページは理想子ども     数。あらゆる条件が許した場合、理想的な子どもの数はどれぐらいです     かということを設問で聞いていますけれども、それで聞いてみましても     この指標で見た出生意欲は非人口集中地区が相変わらず高い。一方、人     口集中地区のうち大都市部が低いということになっております。ただ、     先ほど1980年代以降に結婚した夫婦の変化の点について指摘しましたけ     れども、ここで見ていただくとわかりますように、結婚0〜4年、5〜     9年、10〜14年と、結婚経過年数、結婚の継続年数の短い夫婦ほど理想     も低くなっているということがうかがえます。ですから、夫婦の生もう     とする理想的な子どもの数自体も、近年縮小傾向にあるということがこ     こではうかがえます。      次に9ページですけれども。これはしつこいようですけれども、一人     っ子を理想とする夫婦の割合について見たものです。結婚0〜4年目に     ついては非人口集中地区が奇異な感じの数値を示していますが、全体的     に見て一人っ子を理想とするのは大都市部で多くて、都市部がその次、     そして農村部が最も低いという傾向が現れております。      次に10ページに入らせていただきます。10ページでは理想的な子ども     を持とうとしない理由について、特に20代の女性、30代の女性について     調べたものが、この2枚の図であります。20代の女性について理想の子     どもを持とうとしない理由を比較してみますと、特に顕著なのは、一般     的に子どもを育てるのにお金がかかるというのが高いんですけれども、     ここで大都市と農村部で大きな格差が生じている。「一般的に子どもを     育てるのにお金がかかるから」というのは、人口集中地区の大都市部で     90%の人々がそれを理由として掲げているのに対して、都市部、農村部     では6割台であるということです。次いで高いのが「子どもの教育にお     金がかかるから」というのでありまして、これも都市の大きさに応じて     理由として挙げられているパーセンテージが違っております。大都市部     では62%、都市部では51%、農村部では43%というように、いわば子ど     もを持とうとしないという理由として「教育にお金がかかる」というの     も地域間格差が生じています。さらにもう一つ大きな格差としては、      「家が狭いから」というのが挙げられておりまして、特に人口集中地区     の200万以上、大都市部では33%、都市部でも28%。一方、非人口集中地     区では12%と、それが低くなっているという現状が見られます。      30代についても同様の傾向が見られるんですけれども、子どもを持と     うとしない理由というのは、20代と比べて全体的にパーセンテージの水     準は低くなっております。子どもを育てるのにお金がかかるからという     のは、相変わらず地域間格差は見られるんですけれども、水準は20代と     比べてそうとう低いということになります。ただ、相変わらず「家が狭     いから」というのは、大きな地域間格差を伴っているということがいえ     ます。      次に11ページの表10をご覧いただきたいと思います。子どもを持たな     いという選択、あるいは結果的に子どもを持てないという、どちらかは     明白ではありませんけれども、大都市部ではそのような傾向が強く見ら     れました。これを女性の就業に関わるライフコース別に出生率を見てみ     ますと、そのことがよく現れております。      すなわち、人口集中地区の一貫就業コースでは結婚0〜4年目の出生     率が0.25と、他のライフコースの人々と比べて、結婚5年未満のところ     でそうとうの違いが出ている。非一貫就業コースでは0.84。その内訳と     して専業主婦で0.82、再就職コースで1.30なんですけれども、それらと     比較して一貫就業コースでは0.25と極めて低い。さらに結婚5〜9年目     にいたっても、一貫就業コースでは1.20であるのに対して、非一貫就業     コースでは1.82と、夫婦の生む子どもの数について見れば格差があると     いうことであります。      そのことが、下の表11をご覧いただきたいと思うんですけれども、こ     の低い出生率と子どものいない夫婦の割合というのが密接に関連してい     るということであります。すなわち、人口集中地区の一貫就業コースで     は、結婚0〜4年目の子どものいない夫婦の割合が78.8%となっていま     して、結婚0〜4年目で人口集中地区の一貫就業コースの低い出生率の     原因というのが、子どもを持たない夫婦が結婚0〜4年目で多いという     ことと密接に関連しているということが明らかであります。      このように、特に人口集中地区では、結婚後一貫就業の部分で、なか     なか出産に結びつかない状況というのがある。そのことが結果的に大都     市部と農村部、あるいは都市部との出生率格差に何らかのかたちで影響     を与えているのではないかということが、これからの調査結果から示唆     されるわけであります。      以上、報告を終わります。 宮澤会長 どうもありがとうございました。では、質問、ご意見等、お願いいた     します。 大淵委員 1点だけ教えていただきたいと思います。全体として地区を3つに分     けているわけですけれども、これは現在居住している地域だろうと思う     んですが。結婚持続期間によっては、それぞれの地区の間を移動してき     たという経験を持っている夫婦も多数いると思うんですけれども、そう     いう居住してきた地域の違いというものをフォローできるようなかたち     で調査が設計されているのかどうか。その点を教えていただきたいと思     います。 高橋部長 残念ながら、これはフォローアップ調査ではありませんので、地域間     移動歴がどの程度あるのかということに関しては、この調査からは残念     ながらわかりません。 袖井委員 理想子ども数のことですけれども、いままでのこういう調査では、理     想が3人で現実は2人で、だから厚生省のいろいろな白書などでも、生     みたくても生めない人のために生ませるようにどうするかというような     ことが書いてあったんですが、これで見ると、ほとんどあまり差がなく     なってしまっているわけですね。これは結婚経過年数別で聞いているん     ですが、いま一人っ子の人が何人持ちたいと思っているかとか、2人の     人が何人持ちたいと思っているかという統計はありますか。現在の子ど     も数別理想という。 高橋部長 いまのご質問ですけれども、いま持っている子どもの数にあと何人追     加したいか、あるいは理想子ども数は何人であるというクロス表はござ     います。いま手元にその資料を持っていないんですけれども。ただいま     詳細な手持ち表がございませんので、また後ほど提供させていただきた     いと思います。 宮澤会長 他に。 井上委員 従来、少子化の原因として働いている女性が子どもを持つと、いろい     ろ不便が生じて子どもが持ちにくいんだ、そのために、いろいろな施策     が必要だという議論があるわけなんですけれども、この結果を拝見しま     すと、確かに一番最後の表10などでは、一貫就業コースの人が出生率が     軒並み低いと。大都市、中都市、農村を問わず、そういう傾向があるよ     うであります。しかし、その1ページ前の図1を見ますと、理想の子ど     もを持とうとしない理由の中で、「自分の仕事に差し支えるから」とい     うのが非常に低いんですね。しかも大都市になりますと、これが20〜29     歳で0になってしまっている。このへんが矛盾があるように感じるんで     すが、どういうふうに考えたらいいんでしょうか。 高橋部長 確かに図1の例えば30〜34歳のところで見ると、「自分の仕事に差し     支えるから」というのは、大都市部が最も低くて農村部で高いという結     果になっています。1つは、いわば大都市部における一貫就業コースの     人々というのは、予定子ども数の規模自体も小さいわけですね。ですか     ら、いわば出生規模の規範自体がそうとう縮小している可能性があるの     ではないかと考えられるわけです。      それともう一つは、一貫就業コースの部分の値の見方の問題なんです     けれども。確かに11ページで見ますと0〜4年目というのは0.25と極め     て低いんですね。そして一貫就業コースのパーセンテージが78.8%と高     い。ここに何が関与しているのかということを考慮してみますと、かつ     ては結婚退職慣行というのが根強くあった。ところが現在は、いわば出     産退職というのが非常に多くなっているということがうかがえます。そ     れはどこからわかるかといいますと、このデータから直接ないんですけ     れども、一貫就業コースというのは、結婚0〜4年目のときに女性の37     %が一貫就業コースのところにいるんですけれども、5〜9年になって     しまいますと、24%。結婚10〜14年になると19%に落ちる。つまり結婚     してからしばらく働いて、そして生むタイミングを先にずらして退職し     て子どもを生むというライフサイクル上のあり方があって、それが過去     とそうとう変わってきているという特徴があるのではないかとデータ的     には見ておりますけれども。 宮澤会長 他にご質問はございましょうか。それでは最後になりますけれども、     厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課の中田課長より、「都道府県     別合計特殊出生率」についてご説明をお願いいたします。 中田課長 厚生省の人口動態統計課長の中田です。資料5の「都道府県別合計特     殊出生率について」報告させていただきます。      報告に入ります前に2点ほどお断りさせていただきます。1つは、こ     の報告では合計特殊出生率の都道府県別の動きを中心に追っているわけ     ですけれども、先ほどから何回かお話が出ておりますが、地域というこ     とになりますと人口移動という問題がございまして、地域における合計     特殊出生率がどういう意味を持つかというのは、必ずしも明確ではない     という点です。先ほどの国土庁の報告ですと、最近では移動率がかなり     落ちているということでしたけれども、統計を見てみますと、それでも     県間移動でみれば1年間で、2〜3%ぐらい動くようであり、市町村間     の県内移動も加えれば、1年間に5%ぐらい動くということです。そう     しますと、合計特殊出生率は15〜49歳の女性を対象に計算をしているわ     けですが、この間、同じ地域にいるという人は、ある程度希な人になっ     てしまうという問題があります。あるいは、20代後半から30代前半の10     年間ぐらいを考えてみましても、かなりの人が移動している可能性があ     るということで、ある県の合計特殊出生率がどういう意味を持つかとい     うのは、その解釈が難しいという問題があろうかと考えているわけです      しかしながら、実際には他にデータがないということもございまして     この報告では一応、そうした問題点があるということを念頭に置いては     おりますが、合計特殊出生率そのものの動きを追っているということで     す。それからもう一点お断りしたいと思うのは、合計特殊出生率につき     ましては、有配偶の率と有配偶の人の出生率というかたちに分解してい     ろいろ分析されているのが多いわけですけれども、ここでは有配偶の関     係まで分けてやるところまでは手が回っていないということです。        この2点を最初にお断りしておきたいと思います。      資料5は、大きく2つに分かれておりまして、1つが都道府県別の合     計特殊出生率の動きを追ったもの、もう一つが合計特殊出生率と社会経     済指標との関係をみたものということです。      1ページをご覧いただきたいと思います。1ページは1975年、85年、     95年、この3年間につきまして都道府県別の合計特殊出生率についてそ     れぞれ75年と85年、85年と95年、それから参考といたしまして75年と95     年、この3つの相関を取ったものです。現在問題となっております合計     特殊出生率の低下は1970年代の半ば以降起きているということがありま     すので、75年以降を取ればよいのではないかということで、この3つを     追ってみたというものです。      上の2つの図をご覧いただきますと、沖縄と東京が明らかに他の県か     らずっと離れているのが一つの特徴だろうと思います。他の県につきま     しては、75と85年でみて、ピッタリ線上には乗っておりませんが、かな     りの相関を示しておりまして、75〜85年の10年間、それれから85〜95年     の10年間、この間で県の間の相対的な順位、こういったものは少なくと     も全般的に見れば大きな変動はなかったのではないかと考えることがで     きようかと思います。ということは、逆に申せば、例えば95年について     県間の格差を調べることが、かなりの意味を持ってくるということだろ     うと思います。例えば75年、85年、95年と動きがかなり変わっておれば     それぞれの時期で県間の差の意味が変わってくるわけですが、そういう     ことはこの結果から見る限りあまり考えられないということです。      2ページをご覧いただきたいと思います。2ページは1975〜85年の10     年間について都道府県別の変化を有配偶率と有配偶出生率による変化に     分解したものを上に、それから85〜95年のものを下にということで載せ     ています。折れ線グラフが、結果としての、動きの差ですが、75〜85年     にかけてはすべての県におきまして合計特殊出生率は低下したというこ     とです。      それから下の黒い棒グラフがありますが、これが有配偶率によってど     れだけの影響を受けたかというものです。白い棒グラフが有配偶の出生     率の差によってどれだけの影響を受けたかという部分です。例えば一番     左の北海道をご覧いただきますと、有配偶率の差(黒い棒)が1975〜85     年にかけまして−0.4ですので、0.4ほど下がったということです。これ     に対して、有配偶出生率(白い棒)のほうは0.2ほど上がったということ     です。−0.4と+0.2ということで、結果として折れ線グラフの−0.2が合     計特殊出生率の差ということです。      図をご覧いただきますと、沖縄を除きましてすべての県におきまして     75 〜85年にかけては有配偶の出生率は少しずつ増加しています。それに     対しまして、有配偶率そのものはすべての県におきまして大きく減少し     ているということです。その結果として、75〜85年にかけては、すべて     の県で出生率が減少したということです。      85〜95年にかけましては、この傾向がさらに強く出ておりまして、有     配偶率(黒い棒)の差というものがさらに大きくなっています。それに     比べて有配偶出生率は小さくなっているというのがおわかりいただけよ     うかと思います。つまり、デコボコはありますが、こうした傾向は、す     べての県で同じように起きているということがいえようかと思います。      3ページをご覧いただきたいと思います。3ページは、1985年と1995     年につきまして全国とそれぞれの県との差を同じように有配偶出生率と     有配偶率に分けたものです。下の1995年をご覧いただきたいと思います      これをご覧いただきますと、例えば東京につきましては有配偶率(黒     い棒)が下に大きく出ているということで、有配偶率というものが全国     に比べて非常に低い、その結果、出生率も低くなっているというのがお     わかりいただけようかと思います。他の県につきましては、全般的には     どちらかというと有配偶率の差によって大きくは決まっているのではな     いかということがいえようかと思います。ただし、九州につきましては     有配偶率の差自体はあまり大きくない、全国より若干高い程度ですが、     その代わりに有配偶出生率が高いということがいえようかと思います。      4ページをご覧いただきたいと思います。4ページ以降は合計特殊出     生率と社会経済指標の関係をみたものです。先に、7ページをご覧いた     だきたいと思うんですが、7ページに都道府県別の合計特殊出生率に関     する過去の分析事例という例をいくつか載せてあります。今日、先程、     報告のありました2つは載せてありませんが、1990年からあたってみま     しても、いろいろな分析がされているということです。      こうした分析の中で社会経済指標として合計特殊出生率に影響がある     とよく出てきますのが、高学歴者の比率でありますとか、あるいは女性     の賃金の関係、あるいは家賃、そういったものです。4ページは、合計     特殊出生率と、そうしたよく出てくる社会経済指標との相関をいろいろ     取ったみたものです。ともに1995年のデータで行っております。例えば     一人当たりの県民所得を見ますと、東京などは右の下にありまして、非     常に県民所得は高いけども合計特殊生率は低いということがわかるわけ     です。全般的に右肩下がりになっていまして、所得の高いところは合計     特殊出生率が低い、所得の低いところは合計特殊出生率が高いという結     果が出てきているわけです。      次の第一次産業比率ですと、今度は逆に第一次の産業比率の高いとこ     ろは合計特殊出生率が高いという右肩上がりの図になっています。        同様にずっとご覧いただきますと、部屋面積でも右肩上がり、女性の     大学・短大の進学率では右肩下がりというふうになっているわけです。      次に、保育所の在所児の人口に対する割合については相関がよくわか     らないという結果になっています。おそらく、保育所の関係では人口に     対する割合というだけではデータの感度があまりよくないのではないか     と考えることができるわけです。この他、家賃、女子の給与、あるいは     パートタイムの時給、こういったものはすべて相関ありということで出     てまいります。この中でちょっと特徴的な点として、沖縄が他の都道府     県と違う動きをしているようだということがいえようかと思います。東     京も違うんですが、東京のほうはどちらかというと他の都道府県の延長     上のところで少し離れているというのに対しまして、沖縄は他の都道府     県とは全般的に違う動きをしているのではないかということがいえよう     かと思います。      こうしたいろいろな社会的な指標があるわけですが、こうした社会経     済指標がすべて合計特殊出生率と相関が出てくるので主成分分析という     統計の方法を用いまして、こうした社会経済指標を少ない変数で説明で     きないかということを試みてみました。その結果、第1主成分で0.619、     61.9%となっています。つまりここに出ています8つの変数というもの     は、第1主成分でその全体的な動き、散らばり方の6割強が説明される     ということです。この6割というのは、かなり大きな説明力だと思いま     したので、その第1主成分に沿いまして47都道府県を並べてみたものが     その下の図です。      そうしますと、上位に出てきますのが東京、神奈川、大阪、千葉、埼     玉、兵庫というところであり、下位に出てきますのが青森、宮崎、岩手     秋田、鹿児島ということで、これはおそらく都市化の進んだ県が上にプ     ラスで強く出てき、都市化の進んでいない県が下に出てくるという都市     化傾向を表した軸ではないかと考えられるわけです。したがいまして、     8つの所得、第一次産業者の比率、こういった指標は都市化傾向のある     一つの側面を表している指標ではないかと考えられるわけです。      次の6ページですが、こうした都市化を表す第1主成分と合計特殊出     生率そのものとの相関を取ってみたものです。かなり強い相関を示して     いるということではないかと思います。ただし、ここでも沖縄は都市化     の傾向からではうまく説明できないということがいえようかと思います      それから、東京につきましては都市化傾向の中でかなり説明されると     思いますが、他の県に比べて、その延長上ということで、ちょっと離れ     たところに出てきているということではないかと思います。      最後に9ページから10ページ、11ページに市区町村別の合計特殊出生     率の図などを示しています。5年ごとに国勢調査が行われました年を中     心にして前後2年間のデータ、全部で5年間のデータを用いまして、市     区町村別のいろいろな人口動態の指標を計算しているんですが、現在入     手しうるデータとしては一番新しいものというものの地図です。青がだ     いたい平均的なところということで、各市町村の値の平均値からプラス     マイナス標準偏差を取っているというところです。赤がそれよりも大き     いところ、黄色が出生率が低いところということです。黄色のところを     ご覧いただきますと東京の近辺、あるいは大阪の近辺などが黄色くなっ     ているということだろうと思います。それから赤のほうを見ますと沖縄     とか、中国山脈の山の中とかも赤くなっているということです。      市区町村別になりますと出生数がかなり少ない地域ということがあり    まして、データ自体が安定度が落ちるという面があります。      10ページに具体的な市区町村の数値を掲げています。合計特殊出生率     の高い市区町村をみますと、沖縄の伊是名村が4.39ということで一番高     いということです。上位の市区町村というのは沖縄が非常に多いという     ことがおわかりいただけようかと思います。      それから合計特殊出生率が下位の市区町村ですが、東京の渋谷区であ     るとか目黒区とか、1990年ごろにもうすでに1を割っていたという状況     です。      それから11ページは、10万以上の市部で合計特殊出生率の上位のとこ     ろを見たものです。沖縄市が2.06ということで一番高いということです      10万人以上の市部で2を超えているのは、1990年時点で沖縄の沖縄市     だけだったということです。      以上で報告を終わらせていただきます。 宮澤会長 どうもありがとうございました。それでは、どうぞご質問、ご意見を     お願いいたします。どうぞお願いします。 山田専門委員 短く質問したいと思うんですけれども。ここでいつも気になって     いるのは、合計特殊出生率がいわゆる女性の出生率だということで、先     ほどの過疎地の農村の例にもあるように、もしくは男性一人当たりの出     生率というのを計算しますと、もうちょっと違った分布になるのではな     いかと思うのですが、そのデータはあるのでしょうかということなんで     す。 中田課長 通常はおそらく男を基礎とした出生率は計算されていないと思います      婚外子の問題がありますので、男性がわからない人が実際は出てくる     という問題が一つあろうかと思いますが、結婚して相手がはっきりして     いる場合には計算の可能性はないことはないんでしょうけれどもいまま     で見たことがありません。 宮澤会長 他にございましょうか。どうぞ。 大淵委員 データのことなんですが。4ページにあります社会経済指標の左の上     から3番目にあります、保育所在所児の人口に対する割合という。これ     は相関がよくないんですけれども、人口に対する割合ではなくて、例え     ば女子の有業者とか、さらに年齢を限定して、保育所に預けるぐらいで     すから20代から30代前半ぐらいまでに限定するということで取れば、か     なりまた違った数字になるでしょうし、あるいは意味のある結果が出る     かもしれない。これはまったく計算してみないとわからないことですが     以上です。 宮澤会長 どうぞ。 小林委員 いろいろな要因と特殊合計出生率を絡めて調べられているんですが、     生活環境みたいなものを調べたデータというのはあるんでしょうか。大     変古い研究ですけど、動物実験では雑音が多いと子どもをつくらないと     いうんですね。だから、案外そういう静かな生活環境も重要かも知れま     せん。これを見ると、だいたい出生率の高いところは、みんな静かな町     ではないですか。ですから、やはり人間の営みもそういう感性の情報が     豊かになるような環境というのは、案外重要なのではないかという気が     します。そういうデータがあるんだろうかということと、なければこの     際、調べてみてはどうかと。 中田課長 静かかどうかというのは、おそらく気温とか天候と同じように、場所     によって違うと思います。そういうデータが取れると非常にいいと思う     んですが、ポイントのデータになるというので、都道府県別などの地域     分析にそのまま使うのは難しいかもしれません。 小林委員 気温はこのごろ冷暖房が完備していますから、割合人工的にコントロ     ールができると思うんですよね。だけど音というのは、意外にコントロ     ールが難しいように私は理解しているんですね。バカげた話のように聞     こえるけど、案外重要なことがあるかもしません。 宮澤会長 どうぞ。 井上委員 すみません、1つだけ。5ページなんですけれども、主成分分析結果     が載っておりまして、大変面白く拝見しておりますけれども、この結果     を読みとるのがなかなか容易なことでは‥‥解釈ですね。まず質問なん     ですけれども、この第2主成分というものはどういうふうに解釈したら     いいのかという問題。      それから2番目に、この主成分分析というのは、合計特殊出生率につ     いてやっておられますよね。しかし、この前段のほうで、この合計特殊     出生率の都道府県別の格差というものが有配偶率と、それから有配偶出     生率によって違うんだということがございますから、これを有配偶率と     有配偶率出生率に分けてこういう分析をされたら、この解釈がもう少し     やさしくなるのではないかという感じがいたしますが。例えば第1主成     分というのは都市化ということでございますけれども、もしこの都市化     をさっき出てまいりましたDIDの割合ということで置き換えてみますと     こんなきれにな結果が出てこない。都市化といっても、内容が実に多岐     ではないかと思うんですね。そうしますと、この結果を使おうという立     場からしますと、この解釈の仕方が難しくて、もう少し工夫がないかと     いう気がするんですが、いかがでしょうか。 中田課長 2点目のほうから申し上げたいと思うんですが。これは資料の4ペー     ジに出ております一人当たりの県民所得とか、あるいは第一次産業者の     比率などについて合計特殊出生率を被説明変数と思えば、説明変数側の     情報について、その情報の集約をしているというものです。したがって     その中にDIDの比率とか何かを入れるというのはもちろんできると思うん     ですが、ここではそういった説明変数側についてどの変数でもすべてあ     る程度みんな合計特殊出生率が説明されてしまうので、そうすると、説     明変数側にお互いの関係があるのではないかという推測が成り立ちます     ので、そこで主成分分析という手法にかけて、説明変数間の大きな軸と     いいますか、そのバックグランドは何だろうかというのを探してみたと     いうことです。      結果の解釈自体は、特定の解釈ができるかというよりは、自分で解釈     するということになりますので、この場合は並べてみた数字を見れば、     東京とか神奈川、そういった大都市地域がどうも大きな値になっている     し、青森とか宮崎、岩手、秋田が小さな値になっているということで、     おそらく第1主成分については都市化ということで1つの軸が出てくる     だろうと解釈されるのではないかと思っております。      第2主成分については、先ほど経済企画庁の方が国民生活指標(PLI)     を説明されたんですが、たまたまこれとかなり相関が高いという結果に     なっています。PLI自体はウエイトづけはもともとはされていなく1つ     の数値を表しておりませんが、新聞などで、順番を付けているというの     がありますので、その新聞の順番と相関を取ってみますと、単純な相関     ですと相関係数が0.7ぐらいいきますので、かなり高いということがいえ     るわけですが、どうしてそうなるかについては私どもとしては、現在の     ところわかりません。      それから前の問題に戻りますが、本来、有配偶率と有配偶出生率に分     けてやるべきだというのは、先生のおっしゃるとおりだと思います。一     番先にもお断りしましたが、時間の関係、その他でそこまでは手が回っ     ていないというところです。 宮澤会長 高山先生。 高山専門委員 2つ申し上げたいんですが。今日10ページのデータ、東京では     1.0を切っている区がけっこうがあるんだというのを拝見しましてショッ     クを受けたんですけれども。こういうところは、いろいろなことで子ど     もを生みにくいということだと思うんですが、先程来ずっと地域の問題     で問題になっている人口移動というか、地域間移動の問題というのがあ     るはずでして。各地域の当事者にとっては、行政単位で整理するという     のは大変重要だと思うんですが、分析レベルでいえば生活圏レベルでど     ういうふうになっているかというのは、やはりデータとしてもう一つ示     してほしいなという気がするんですね。例えば東京圏というようなかた     ちでの生活圏で出生率がどうなったかというようなかたちの。単に行政     単位のデータではなくて、生活圏レベルのデータを1個出していただき     たいと。それが1点ですね。      2点目は地域間移動の話で、地域で子どもも生まずにそこにいること     がいろいろな意味で難しい人たちが都会に出てくるのではないかという     お話が先ほどあったんですが、こういう出生動向の調査をするときに、     ある意味ではリトロスペクティブに過去の履歴を若干聞く質問項目を調     査項目の中に加えていただければいいと思うんですね。過去どこに住ん     でいましたかと。移動があったかないかというようなことについての調     査項目を追加していただければ、あとで追跡できるわけです。そういう     調査設計について、今後少し詰めていただきたいと思います。      以上です。 中田課長 最初の点につきましは、先ほどもちょっと申し上げましたが、5年ご     とに市区町村別のデータをつくっていますが、実は市区町村だけではな     くて、保健所ベースのもの、あるいは二次医療圏ベースのものというの     を同じようにつくっています。ただ、それ以上の生活圏ということにな     りますと、生活圏が何かという話が出てきますので、厚生省として通常     よく使われている保健所と二次医療圏について現在は集計しているとい     うことです。      それからもう1点の調査の関係ですが、人口動態調査というのは出生     届け等に基づいて調査しておりますので、出生届けを出すときに親の移     動のところまで調査するのは、実際上は難しいということがあります。      したがって、そういう必要があれば、特別に調査をする必要がありま     す。 宮澤会長 他にございましょうか。全体を通じて、もう少し何かを議論するとい     う予定をしておったんですが、もう時間がなくなりましたが、何か全体     を通じての印象とか、特にご発言いただくことはございましょうか。そ     れでは、もう今日は疲れたので、この次に考えようということになると     思います。事務局のほうで論点の整理をしていただいて、今日の議論が     我々の審議にどういうかたちで意味があるか。そのへんの整理をしてい     ただけると非常にありがたいと思います。      それでは長時間、どうもありがとうございました。次回につきまして     は事務局と相談のうえ、追ってご連絡いたします。本日の総会をこれで     終わらせていただきます。どうもご苦労さまでございました。    問い合わせ先    厚生省大臣官房政策課    担当 山内(内2250)、齋藤(内2931)    電話 (代)03−3503−1711       (直)03−3595−2159