96/10/22 第6回人口問題と社会サービス特別委員会議事録 第6回人口問題と社会サービスに関する特別委員会議事録                   日  時  平成8年10月22日(火)                         14:00〜16:00                   場  所  厚生省特別第1会議室 宮澤委員長  本日は、ご多用のところご出席だきまして、ありがとうございます。  只今より、第6回人口問題と社会サ−ビスに関する特別委員会を開催いたしたいと思 います。  まず最初に出席状況ですが、井上委員、大淵委員、岡澤委員、南委員、八代委員、清 家専門委員につきましては、本日は都合により欠席でございます。なお、木村委員、 河野洋太郎委員、袖井委員につきましては、ご出席とういうことですが、少し遅れてい らっしゃるとのことでございます。  なお、今回の特別委員会は、外国の出生動向などについて、直接お話を伺えるいい機 会でございますので、審議会のすべての委員、専門委員の方々にご案内し、ご都合のつ く限り、ご出席いただいております。  それでは、本日の議題に入らせていただきます。  本日は第6回目の特別委員会ということですが、過去4回の特別委員会では関係する 14の省庁から人口問題と各省施策の関わりについてヒアリングを行いました。しかし ながら、今後我が国における人口問題について、総合的な施策の方向性を示すためには 諸外国の動向やその政策的対応の事例を整理する事が必要であると思います。  本日はスウェ−デン統計局企画部長のDr.Britta Hoemに来ていただき ました。まずHoem部長の紹介を、阿藤委員からお願いしたいと思います。 阿藤委員  まず来日の目的でございますが、スウェ−デンの出生動向と家族政策について講演し ていただくということで、10月20日から26日までいらしていただいております。  略歴を紹介させていただきますと、ストックホルム大学を卒業後、デンマ−ク統計局 に勤務された後、現在のスウェ−デン統計局企画部長ということでございます。  現在就かれている企画部長というのは、分析部門のディレクタ−ということで、結 婚、出生、家族、女子労働の相互関連のデ−タ収集・分析を行っていらっしゃいます。  ちなみに夫君は、ストックホルム大学人口学科の教授でいらっしゃいます。今回の講 演を依頼するにあたり、私が手紙を出したわけですが、その時は御夫婦のどちらかにお 願いしたいということで、どちらが来て下さるかは御夫婦で相談して下さいとお願いし たところ、家族政策にもお詳しい、Ms.Hoemが来て下さることになった訳です。 宮澤委員長  どうもありがとうございました。 時間の関係もありますので、通訳を入れて1時間程度ご講議頂いて、その後引き続き通 訳を入れて50分程度質疑を行いたいと思います。  それでは、「スウェ−デンの出生動向と家族政策」についてHoem部長から講演を お願いいたします。 Hoem部長  まず大雑把にスウェーデンの福祉制度につきまして,スウェーデンの公共政策とそれ に関連して家族の政策について概略を述べたいと思います。  スウェーデンの場合には多くの他の国々と違って、すべての人がふつうの生活をみん なができるようにということを目指しています。他国のように幅があって、そこで選択 をするというよりもみんなが平均的な通常の生活をすることを保証することを目指して います。  そのための達成する手段が福祉国家ということでして、なおそれを達成する一つの方 策が家族政策です。その中で我々の場合には原則としてガイドポストとなってきた人が 女性が男性とともに労働市場に参加をする。小さな子どもをもった両親も労働市場に参 加する。またその成人も同等に参加させるということがこれまでの我々のガイドライン でした。そしてまた職場における両性の平等、また家庭における平等ということが共通 の礎となったのです。  今世紀の初めからスウェーデンの合計特殊出生率の状況を見てみたいと思います。今 世紀の初めは女性一人の子どもの出生が平均4人という状況であって、他国の場合と同 じようにそれがかなり急速に下がって、1935年ぐらいまでに下降線をたどっており ます。その後約10年間ほど出生率は高まり、1969年代の半ばぐらいになって、人 口置換水準をちょっと上回るていどになりました。また60年代の半ばになって、他の 国々の事情もそうでしたが、出生率はまた急速に下がりました。  1980年代の半ばになって、この状況が反対になりました。また出生率が上がり、 ヨーロッパの中ではスウェーデンがもっとも高い出生率を示すという状況があり ました。このパターンから出生率に影響を及ぼすものは何であるかという理論がいろい ろと導かれたのです。  スウェーデンは非常に近代国家でありまして、とくに女性の労働市場参加率が極めて 高い国です。それから同棲をしている人が多い。離婚率も相当高い国です。これがわが 国の家族政策の原因になっているのだろうと質問する方が多くいらっしゃいます。19 90年をすぎますと数年はまた急激に出生率を下げまして、1996年現在ではわが国 で最低記録という低い率になると思われます。  それでは現在の家族政策、社会政策、これを理解するためには、60年ほど逆上って 考えてみる必要があります。1930年代の経済大不況の時代には出生率は非常に低く また失業率は高いという状態がありました。スウェーデンは他国の多くの場合と同じよ うに既婚女性の労働市場参加を容認しようという動きがあり、また事実それの法律化も されています。アルバ婦人とグンダール・ミルダと二人の経済学者のおかげで既婚婦人 が結婚をしてなおかつ労働する権利を求めて戦い勝ち取るという動きが出てきました。 ミルダ夫婦は女性が職場で結婚したことによって理由で職を失うということは問題であ るということを議論したのです。  そういうことですでに1839年代にスウェーデンでは出産休暇、分娩をした女性の 経済的な援助が与えられました。それから母子家庭の母親に対する経済援助も1930 年代にされました。同時に女性を結婚もしくは妊娠の理由で解雇することは不法という 法律ができました。  スウェーデンの出生率は1930年代の半ばからまた上昇しはじめました。そこでま た同時に両性の平等、男女の平等、男女の役割という論議が盛んになったのです。大多 数の母親が職場から退きまして、主婦となりました。スウェーデンの場合にはこの時期 を称して主婦の括弧の時代とこういうふうに呼んでいます。社会民主党政権が平等主義 というイデオロギーに基づいて特殊な人に対する示唆というよりも普遍的な福祉国家と いう政策を取って、これがスウェーデンに浸透してくるようになったのです。  1948年になりまして、税制が改正されて、子どもを持つ両親にはすべての人に同 額の児童手当てが支払われるようになりました。1955年になりまして、3カ月間の 出産休暇が認められるようになりました。それが1963年になりますと期間が有給休 暇ということで6カ月に延長されました。  1969年代の半ばになり、ヨーロッパの一部の国と同様にスウェーデンの場合にも 労働力不足という問題が生じてきました。他国の場合には移民を受け入れることによっ てこの問題を解決しようとしましたが、スウェーデンの場合にはそういう施策は選ばな かったのです。 家族ぐるみの移民、これは他国よりも早くスウェーデンの場合には認めています。ス ウェーデンの場合には移民に対してはスウェーデン語を勉強するための経済援助も与え られました。また社会福祉給付も移民にも他の国民同様に適用されたのです。この結果 スウェーデンの場合には移民の労働力が非常に社会的コストが高いという問題を生みま した。また同時に女性も男性と同様に平等のパートナーとして認められ、働くべきであ るという考えが目覚めてきたのです。  そういうことで政府の施策として、外国の移民を受け入れて足りない労働力を満たす よりも、国内の女性に働くことを促進することが良いとそういう選択をしたのです。女 性も民間企業で雇用を見つけること、またその後は徐々に公共部門においても働くこと が奨励されるようになりました。女性の労働市場参加比というのがかなり高まり ました。これは小さな子どもを持った女性もそうです。  このように母親が多数労働市場に進出し、参加するようになりますとそれに伴って他 の面での問題が起きてきました。まず両性の平等という論議が盛んになってきました。 公共政策も平等とか、共働きの家族、これを奨励するというふうな方向にますますいっ たのです。それまでは夫婦共同で課税するという制度でしたが、それに対して批判が出 てきました。スウェーデンは税率が高いのです。また累進課税制度から既婚の女性が税 引き後の手取り収入が低くなるという傾向が顕著になりました。1971年になりまし て、夫婦別々の課税制度が導入さて、その結果結婚した女性、または同棲中の女性の多 くが労働市場に参加することになりました。そのことによって人口動態的なパターンが 変わって女性が労働市場に入ってくるという波が見られました。子どもも第3子より後 の子どもも生まなくなりました。若い男女は子どもを生むことを遅くするという傾向が でてきました。一般に出生率が下がったのは女性の仕事の負担が多くなったからだとい うことが指摘されたことがあります。また父親は家庭での仕事役割をもっと増やすとい う風潮がスウェーデンでは見られるようになりました。  次にスウェーデンの法制によって、父親が男性としての父親の役割をもっと増すよう にと、それを促すような施策がとられるようになりました。1974年以前は子どもが 生まれますと、そのために休暇をとることができる、その休暇は母親にのみ与えられて いました。職場にもどる権利は保障されました。しかし当時はまだ所得の保障はそれほ ど多くはございませんでした。1974年になりまして、出産のために休暇をとった場 合の所得保障が、以前の収入の90%まで認められるようになりました。また父親もこ の夫婦の間で自分たちの選択で母親の代わりに父親が出産休暇をとる権利が認められる ようになりました。同時にまた給付金に対する課税がなされまして、その税収入が年金 の基金に組み込まれるようになったのです。1974年には両親に対する休暇の期間は 6カ月と定められました。しかしその後急速にこの期間は延長されることになり ました。1980年にはこれが12カ月になりまして1989年になりますと、 15カ月にまで延長されました。さらにまた、両親は有給休暇を全部消化してしまった 後も、子どもが18カ月になるまで、無給ですけれども、その後休暇をとることができ る権利を認められるようになりました。  スウェーデンの場合には両親は子どもが小学校に入るまでには勤務時間の全体の75 %まで減らすという権利が認められています。この両親休暇はフルタイムでとっても パートタイムでとってもいずれも両親のオプションで認められています。またさらに子 どもが8歳になるまで、これを溜めておくこともできるという制度になってます。  両親は子どもが病気になった場合、もしくは子どもの世話をする親のどちらかが病気 になった場合に有給休暇をとる権利が認められてます。たとえば父親の場合に子どもが 生まれた場合にダディデイと呼ばれているパパ休暇が10日間とる権利が認められてま す。両親は子ども1人について1年に2日間コンタクトディと呼ばれている、ディケア や、学校の参観日など、行事に参加するために、年に2日間休みをとることが認められ てます。  いま申しましたこの給付はすべて国の社会福祉制度から支払われていまして、雇用主 が負担するものではありません。これらの財源はすべて税金からの財源が基になってお りまして、両親の雇用している勤め先の雇用主が直接にコストを負担するということは ございません。小さな子どもを育てるということは両親が休暇をとる権利を認めるだけ で済むわけではありません。その後の時期にも様々な政策が必要な側面があります。  1970年代から1080年代にかけてスウェーデンでは子どもの面倒をみるディケ アセンターに対する制度設備の投資が盛んに行われました。託児所等のディケアサービ スは、地方自治体の手によって運営されます。託児所を設置する地方自治体に中央政府 からかなりの経済援助がされます。両親の負担する料金というのは全体の諸経費のごく 一部分です。今、年間子ども一人について7万スウェーデンクローネ(米ドルに換算し まして約1万1千ドル)程度です。1970年代になりまして、出生率がかなり低く なりましたことからスウェーデンの政府当局は公共政策によって何か措置をとる必要が あるのではないかと考えるようになりました。出生奨励策によるものではなくて、国民 が自分の好む数の子どもを生むことができるようにしようというのが政府の基本的考え でした。子どもを二人もしくはそれ以上持っている家庭の経済負担を軽減しようという ことで1980年から児童手当ての給付額があげられました。実情を調べようというこ とでスウェーデンで初めてですが、1981年に家族調査というものが行われました。 これはすべて政府の費用で行いました。家族調査をすることによってなぜスウェーデン で出生率がこれほど下がったのかという問題の解決を見いだすことができるのではない かと期待したのです。  女性が労働市場に参加すれば、それに伴って出生率が下がるという議論がよくありま す。ところがこの議論はスウェーデンでは1980年代にすでに出生率が上がったこと と実は合致しないのです。といいますのはそのときにはいまだかつてなかったほどの多 くの女性が労働市場に進出した時代だからです。それからまたこの議論は女性が日本や オランダ、地中海沿岸諸国のように出生率が低いというところでは女性はそれほど職場 に進出している状況ではありません。女性の社会的役割の増大と出生率の低下の関連で すが、家族調査の結果、勤めを持っている女性もまた専業主婦も同じ出生率を示しまし た。  ということで私どもの結論はこの第3子の出生率が下がったというのはこれは女性が 労働市場への参加率か高まったから下がったのではないという結論に達したのでありま す。むしろ1960年代、1970年代に出生率が下がった原因は国民(男女とも)の 態度が変わったためであるという結論に達しました。 ここで職場に進出をするということと、子育てをするという両方を大事にすべきではな いか。そして両親の責任ということが今だかつてなかったほど社会に強調されるように なりました。この時期には若い人々が子どもを早くから作ろうとか、あるいは確立した 家族が生活が落ちついたから子どもを生もうと、そういうふうに軽々しく考えるような 時期ではありませんでした。  1960年代の半ばになりまして、女性が早くから子育てをしようという風潮が盛ん になりましたけれども、このパターンは1960年代の末になりますと変化しました。 1945年に生まれた女性年齢25歳で子どもがいないという女性の率は40% でした。ところがその15年後に生まれた女性の場合にはこの率が65%になり ました。子どもを生む時期を遅らせるというこの傾向は女性が労働市場に参加をする率 が高まったからであるということは良く言われていることです。またこれは女性が職場 でその地位を確立するまでは当然必要なことで、その後子どもを育てようということは 必要です。  ところが1981年に行われました家族調査によりますと、必ずしもそれがスウェー デンの状況の全貌を物語っているものではないという結果が出ています。1970年代 に子どもをもってない女性の多くは「私たちは子どもを育てるということより他にやり たいことがあるんです」と言いました。前に述べましたようにスウェーデンの出生率は 1980年代の初めに急速に上昇しました。第1子を生むということを延ばそうという ことが1980年あたりまでは普通でしたけれども、その後再び出生率が上昇しはじめ ました。  公の家族保障というものが所得に連動されております。家族は全体の家計あるいは子 どもを育てるということを最適化するということが良く行われます。社会保障給付は所 得に応じて支払われるということになりますので、どうしても両親は適切な時期になっ てから、子どもをつくります。そういうふうに所得との兼ね合いを考えように なります。このような制度のもとでは第1子、第2子、第3子と子どもを生む場合の インターバルを考えて、できるだけ社会給付が不利にならないようにします。  スウェーデンの社会保障制度は他国の場合と違いまして、最初の子どもが生まれたか ら、その次にもなるべく時期を置かないで、国民が子どもを生むようにする制度になっ ています。例えばスウェーデンでは、第2子が生まれた場合、第1子との間が短ければ 第1子の場合と同額の給付が出るという制度になっております。1980年にはこの出 産の間隔が24カ月と認められておりました。それが1986年になりまして、30カ 月とされました。この30カ月の期間というのは達成に可能な目標です。そのため多く の両親はここで子どもを生むの期間を短縮するようになりました。1980年代後半に なって出生率が高まったというのは、一つの理由がここにあります。  もう一つの理由は当時の経済状況が良かったという点をあげることができます。19 80年代の末になりまして、民間また個人所得のレベルが高い水準に保たれました。1 970年代の末になされました家族・育児に対する諸制度を整備するという目的の投資 が実を結んできた時代でもありました。同時に一般国民の間に経済の状況が今後とも長 いこと好況が続くだろうと、これは子どものある家族にとっては好都合な状況であると こういう強い自信感がありました。1988年の国会議員の選挙が行われまして、その ときの選挙キャンペーンでも家族政策に注目が集まりました。社会民主党もその他の非 社会主義政党も将来の家族政策ということについて公約をしたのです。私はこれは大切 なことであると考えます。というのは政府当局が子どもの将来ということについて配慮 をした施策をとるという責任を表明していたからです。 そういう楽観論があったのです。  ところが1990年代になりまして、スウェーデンの景気が悪化してまいました。ほ とんどないにも等しかった失業率が他のヨーロッパ並の約10%ぐらいというふうに、 失業が深刻な社会問題になったのです。女性の雇用にとりまして極めて重要な公共部門 が、不況の打撃を被るようになりました。そこでスウェーデンの近代歴史の中で初めて 公共政策・家族政策というものが今までのように大きなものでなくなってしまい ました。これはスウェーデン人が長い間大きな給付にというものになれておりましたけ れども、そうでなくなりました。そこで子どものケアとか、学校、育児所、託児所の コストが増えるという状況になってしまいました。1995年には両親が休暇をとる場 合に所得の9割から8割まで両親休暇給付金というもので保障されておりましたけれど も、75%に削減されました。1948年以来導入されました児童手当(これは現金給 付でありますが)も削減されることになりました。第3子にも追加的に児童手当が支払 われておりましたけれども、減らされることになりました。そしてついに1996年に は第3子には児童手当は適用されなくなってしまいました。しばらくの間認められてお りました両親がディケアとか、学校での参観日に、あるいは行事に参加するということ で年に何日か認められておりましたコンタクトディ、これも1996年には無くなって しまいました。同じ時期には出生率も下がってまいりました。第3子、第4子を生む率 も以前の3分の1に減ってしまいました。同時に第1子を生む時期をずらすという傾向 もまた再び増えてきました。  1990年代になりまして、出生率がこのように下がると、そのことの背景による説 明というのは1980年代の出生率が上がったときのような説明になりますけれども、 今回は逆の方向にそれが出ます。多くの家族にとりまして経済問題というものが大きな 問題となっております。また失業問題が国民に打撃を与えております。とくに若い人に 深刻な打撃を与えております。スウェーデンの社会保障・福祉給付、これは所得と直接 に連結しておりますので、今後このリセッションによって公共部門が縮小されるという ことは国民の所得に直接に影響をしてきます。このように所得が伸び悩んでいると一般 的に経済的悲観論が出てきますので、第1子をもうける時期を遅らせようと、また第2 子、第3子もなるべく作らないようにしようと、こういう考えが多くなります。また家 族政策において今まで保障給付高が大きく寛大だったものが、小さく厳格になったこと も大きな影響を与えています。このようにいろいろな削減がなされてそれなりの効果が 出てきておりますけれども、しかし国際的な尺度でみた場合にはスウェーデンの社会福 祉・家族関連の保障給付率というのはいまだに高い水準にあります。  最近のあまりに急激なこういう削減措置ということによって国民の反応はショックを 受けているという状況であります。これに適応するにはある程度時間がかかるのではな いかと思います。1992年に行われました家族調査の結果を見ますと、スウェーデン の男女の間では子どもは作らないという考えを多くの人が持つようになるという兆しは ありません。また第1子以下第2子、第3子を作ることをはばかるというきざしはとく にみえてません。1920年から1950年代に生まれたこの年代の女性の出生率を見 ますとスウェーデンの女性の場合は平均して子どもが2人というのが従来の平均のレベ ルです。そういうことでこれからいえることは、子どもを何人持つかということよりは 子どもを生むテンポということがスウェーデンの女性の場合には顕著にみられます。こ の年代のグループの女性にみた場合には子どもを何人産んで育てるかという価値観とい うのは今後とも安定して変わらない考えだと思います。  しかしスウェーデンの社会全般的に見た場合には、家族とか、育児とかいう考えの中 の価値観に、大きな変化がみられるのです。この変化は社会では経済・社会的な状況に よってそれがつくり出されています。また今後一般的な論にこれをますます盛んにして いくのではないかと思います。  最後になりましたけれども、私はたまたま最近のスウェーデンの人口予測について言 う、責任ある立場になかったことをうれしく思っています。今またスウェーデンの出生 率は来年はどうなるかとか、またそれから年々どうなるかということを予測できる人は はっきりいっていないと思います。 宮澤委員長  どうもありがとうございました。それではただいまのお話につきましてご意見、ご質 問をお願いしたいと思います。わが国もご存じのように深刻な少子化問題を抱えている わけですが、諸外国の中で出生率が回復したスウェーデンのケースが良くあげられます けれども、しかしそんな簡単な話ではなくて、かなり変動があるというお話を今日は聞 くことができました。そういうことで先生に直接お話をうかがえる良い機会でございま すので、積極的に質疑、ご意見お願いいたします。どうぞ。 宮武委員  少しおふれになりましたけれども、スウェーデンの880万人の人口の中で約1割が 外国から来た移住者の方ですね。この移住者の方たちはもちろん今スウェーデン人同様 に権利を得ているわけですけれども、その方たちの出生率はどのくらい なのでしょうか。かなり高いと私は聞いておりますけれども。 Hoem部長  だいたい他の人と同じぐらいに移民の場合も出生率は同レベルであります。移民とい ってもスウェーデンの場合には他のスカンジナビアの国からの移民できておりまして、 遠くの地域から来ている人の率はどのぐらいかは良く分かりませんけれども、しかし全 体出生率ということになると多少高めかも知れません。 宮武委員  私は日本の研究者の資料をみますと旧ユーゴスラビアの方たちとか、ポーランドの方 たち、あるいはトルコの方たち、こういう方たちがかなり平均よりも高い出生率である と聞いたものですからそれが事実かどうか確認したかったのです。 Hoem部長  とくに移民について彼らの出生率がどのぐらいかという良い情報というものはござい ません。ただし移民が国に入るときに子どもが何人いるかということはこれは大事な統 計ですけれども、だいたい私の記憶では多少わずかスウェーデンの出生率比べて 高いと。それがだいたい10%ぐらい高いというていどだったかと思います。 河野委員  麗澤大学の河野といいます。さきほどHoemさんがスウェーデン人にとって最近出 生率が低下したのはショックだと言われましたが、日本人にとってもショックだったわ けです。というのは非常に日本人はスウェーデンの福祉政策を美化しておりまして、ス ウェーデンのような社会保障をすれば出生率が上がるのではないかという期待をしてい たんですけれども、なにかそれが虚しくなったというか。それで聞きたいのは、そうな ってくると、さきほど価値観のことを言われました。バリューシステム。スウェーデン はちょっと違うというように今まで考えられてきたと思うんですけれども、それはヨー ロッパと同じように非常にたとえばドイツとか、あるいはそのへんのところの価値観、 世俗的になるというんですかね。そのところどう変わったかというところをもうちょっ と聞きたいと思います。それからもう一つはスウェーデンで冒頭に1970年でしたか つまり女性の就業と出生率が必ずしも相関しない。スウェーデンは就業率は高いけれど も、出生率も高いということを言われましたが、それはパートタイムというのがあるか らではないでしょうか。 Hoem部長  2番目の方が最初のご質問より簡単ですから2番目の方からお答えします。1970 年代はスウェーデンの出生率は相対的に低い状況でありました。それが再び上昇しはじ めたのは1980年代の半ばになってからであります。それがパートタイムで就業する からかどうかというのは、これは難しいことであります。  というのは女性がパートタイムで勤務するというのはふつうのことですから。198 1年に行われました家族調査によりますとパートタイムで就業している女性もフルタイ ムで就業している女性も出生率は同等であるということが示されています。したがいま して女性の活動率といいますか、どれぐらい活発に職場に出ているかということは出生 率にあまり影響がないようです。しかしながら子どもの数とか、子どもの年齢というの は女性が勤めて働くことの重要な要素になっております。  価値観をいろんな異なる国々の間で比較をするということは非常に難しいことだと思 います。したがいまして私がスウェーデンの価値観とドイツのそれとを比較して何かを お話をするにはあまりにも私はドイツのことを知らなすぎると思います。しかし男女の 平等ということについてはスウェーデンは非常に進んでいると思います。スウェーデン でも家庭での男女の役割分担というのはかなりまだ保守的に保たれています。私の考え ではスウェーデンの若い男女は労働市場に参加するということと、育児をするというこ とのどちらかを選ばなければならないという考えはないようです。またここで大事なこ とは、スウェーデンでは子どもが小さいときは、祖母が働きに出ているというケースが 普通だということです。スウェーデンの制度は、女性が子どもを育てながら労働市場で 就業するということを容易にしておりますので、いまでもスウェーデンの場合には子ど もが2人というのが通常であります。この点ではヨーロッパの、例えばイタリアとかド イツと比べますと対照的であります。それらの国々では子どもは1人だけというのが普 通です。それからスウェーデン国民は多少今までの制度で甘やかされておりますので、 最近のような縮小とか削減ということには強く反応を示すのだと思います。 熊崎委員  熊崎と申します。私は労働組合におります。  聞きたいことは、日本でも、女性がこれから長く働き続けたいというような気持ちが 高まってきております。その場合に男女平等という観点が非常に必要だと思います。  男女平等といいますと、かなりいろんなところの平等があると考えられます。もちろ ん賃金や社会保障など、様々な政策的な問題だとか、男女平等というのは私たちに必要 だと思いまして、今でもそういう法律、政策を作るように努力中でございます。  スウェーデンでは1974年から80年代で、社会保障や、育児、保育、という点で 高いものを勝ち取っていらっゃるようです。その場合に子育てや、家事などをしていく 場合、男女ともに労働時間がどのような仕組みになっているのか、全体的に労働時間が 短縮されていて、なおかつ家事、育児において両性がきちんと平等にできるようなシス テムになっているのか、実際にやられているのかという点をお聞きしたいということと そういう平等論の政策的なものを作っていく場合の女性の参画という点で、スウェーデ ンは高いというふうに私は聞いておりますけれども、それは一挙に高まっていったので しょうか。かなり何かやりながら高まっていったのかということをお聞きしたいと思い ます。 Hoem部長  女性が1970年代にご質問の面で獲得したものが多くあるということはいえると思 うんですが、しかしまだ実際的な行動という点においてはまだまだ残っている道はある と思います。とくに法制面において。  これは1992年に行われました家族調査に基づいたグラフであります。17歳以上 の男女1959年以降生まれた男女の状況をあらわしています。  まず、女性の方から先に見てみますと17歳以降の就業状況の分布を表して おります。左側が女性、右側が男性。女性の場合みますとご覧のように非常にカラフル になっております。家事、短期のパートタイム、長期のパートタイム、フルタイムと多 岐に渡っています。一番下に家事とありますけれども、これは両親休暇も含んでおりま す。スウェーデンの場合、専業主婦というのは非常に少ないのです。  それに対して男性の場合にはこの類別をみますと3種類になります。まず教育期間、 それから軍役に服します。あとはフルタイムで働くと。  子どものいない男女の場合、子どもがいなければだいたい同じような生活パターンが みられます。ところが男女の違いが認められるのは子どもが生まれてからです。 1970年以降男性も両親休暇というのを女性とシエアすることができるということに なっていますけれども、これをどの程度とっているかをこのようにグラフで表すことは 不可能です。父親にもこの両親休暇をとることを奨励するように、12カ月間の休暇の うちの1カ月は父親用に予備としてとっておくという制度が1995年1月1日から施 行されています。  なお父親が経済的にもとりやすくするために特別にとっておく1カ月の経済的保障は 通常の75%に比べてその1カ月だけは85%の経済的保障をするということになって います。もちろん制度は女性にも同等でありますから、この1カ月の休暇の分の保障は 女性がとった場合も85%の保障を受けます。そういうことで休暇のうちの1カ月分と いうのは給付率が85%という特別月間になっております。  スウェーデンの場合には我々は進歩をとげたのではないかと思っております。現在ス ウェーデン議会の議員の半分は女性です。それから閣僚の半分も女性です。また時間の 使い方の調査によりますと現在男性が子どもの世話をする時間というのは以前に比べて 増えております。しかしそれでも依然として家事をするというのはほとんど女性です。 パートタイムの仕事をするのもほとんど女性です。 木村委員  スウェーデンでは、老後に子どもの経済的サポートを受けるとか、労力的というか、 子どもの介護的な世話を受けるということはどの程度あるのか無いのかうかがってみた いと思います。 Hoem部長  子どもが両親の老後をヘルプするというのはインフォーマルな形でやっていることに ついてはあまり多く知られていません。1960年代ないし70年代に行われた調査に よりますと、スウェーデンの大多数の子どもは親の老後の世話をしている。また同時に 社会がそれをしている面が非常に明確です。経済的なサポートというのはあまりされて いないようです。私はそれについてはあまり詳しく知りません。 福田委員  福田でございます。さきほど両親休暇と言われました日本でいうおそらく育児休暇に あたるものだと思いますが、それが15カ月にまで認められ、しかもその休暇中の給料 の90%、それは最近では減らされて75%というお話だったのですが、こういう休暇 中の給料の支払いというものはパートタイムの場合でもまったく同じであるかというの が一つ。  それから、戦後のある時期には専業主婦が非常に増えた時期があったというお話ござ いましたが、これも90%の給料を払って有給休暇を与えるということに対して専業主 婦からは批判は出なかったか。逆にいいますと、それはほとんどのスウェーデンの主婦 が働いているということによって出なかったのか、とくにこういうハウスワイスが非常 に増えている時期でも出なかったのかどうか。これは全部パブリック・セクターから、 究極的には税金からこの給料が出されたということがございますので、全部は税金から 出ていながら、たまたま雇用先があるので、育児中は働かなくてもこれだけの所得があ るということは専業主婦の多い国では非常に大きな不平等だと考えられるわけでござい ますね。そういうせいもございましてか、日本では出すとすればそれは雇用主であると いう政策でパブリック・セクターは大いに責任を免れているわけですけれどもそのへん のことをご説明いただきたいと思います。 Hoem部長  所得の保障についてパートタイムで働いている人の場合にも、彼らの所得、パートの 賃金の75%まで保障されています。所得のない主婦の場合には一律に1日60クロー ネ(約10ドル)ていどの保証金が出ます。もちろん労働市場に参加している人に比べ るとこれは非常に少ないですね。そういうことで勤めている人と勤めていない人の間で は不平等ではないかという議論はありました。そこで1980年代の半ば非社会主義政 党が児童手当を出すべきであるという議論をしました。  この児童手当てというのはすべての両親に同額支払うというもので、これをどのよう に使うかは両親次第です。ディケアとして使おうと所得の保障として使おうと受け取っ た人の自由です。この考え方は1994年に次の選挙の6カ月前に導入された考え方の 児童手当てだったのですが、次に政権をとった社会民主党はそういう考えをしませんで 無くなってしまいました。  しかしスウェーデンの場合にはこれは大きな問題となっていません。スウェーデン国 民は一般に税金を支払うことにはなれています。またいろいろな給付を受けるのは税収 からのトランスファであると考えています。また専業主婦というのはあまり数がありま せん。  もう一つ先程ふれましたように主婦の場合と、働いている女性の場合とで、出生率に 違いがないというのもこの制度の説明になると思います。子どもがまだ小さいうちは主 婦であると。しかし子どもが大きくなったらすぐに労働市場で勤めに出たいという女性 が沢山いますからそれが普通です。 網野委員  東京経済大の網野と申します。時間が迫ってまいりましたので一つだけご質問いたし ます。ご承知のように日本では、子どもが生まれる数が減っているという少子化社会で 結局その背景から起こってくることとして活力が低下するのではないかとか、スウェー デンとはやや違った側面があるでしょうが、老後の保障というのを税制だけではなくて 社会保険といいますかインシァランスですので、そこに援助しあう。そうすると若者の インシァランスの負担が高くなって老後果たしてそれがうまくいくか。そういったいろ んなことでややナーバスに生まれる数がどんどん減っていくということに対していろん な議論があるわけですが、スウェーデンでの状況では税制が基本になってくるという、 そこに一番ウェートがあるという違いがあるかも知れませんが、静止人口どんどん下回 るような1.6とか1.5とか、このような状況が続いていくようなことに対して将来 の人口規模なりそういうことに対する危機感的な議論がどの程度お持ちなんでしょう か。人口規模があまりにも違いますが。そこらあたりをお聞かせいただければと思いま す。 Hoem部長  私は2週間ほど前にヨーロッパ会議に出たのですけれども、それは人口動態とか、年 齢構成、こういうことがテーマでこの問題が提起されました。高齢者に比べて若い人の 数が少なくなったらどうなるかという問題が取り上げられました。そこで私は自分の国 のスウェーデンの状況についても多くのことを学んだ次第です。  というのはスウェーデンではあまりその話題は論じられていないからです。この問題 を我々が自分たちの目の前の問題としてこれまで感じていませんでした。しかしスウ ェーデンはすでに高齢化社会になっています。今から約10年ぐらい前の小さなグルー プ、コーホートが労働市場に入ってきたというときに一時期そのような議論がされたこ とがありました。しかし現在スウェーデンは失業率が高いという状況にあるので労働力 不足ということはあまり問題になりません。1940年代以降に生まれた人が引退して 年金生活に入るという時代になった場合には若い世代、今労働市場にいる人の負担が非 常に大きくなるだろうということは自覚しています。  今度、老齢年金制度が改正になりまして、直接その年の財源から老齢年金基金を支払 うという制度から、もっと個人ベースでどれだけ何年働いたかとか、労働時間かどれだ けあったかということと連動させることになっております。ですから今までよりももっ と労働時間を長くして働かければ、老齢年金が十分もらえないという制度に変わってお ります。まだ最終的な決定にはなっていないという状態ですので、私がここで細かなこ とをいうことはできないのです。また私自身細かいことを存じませんので、いろんなこ とが懸案として考えられているという状況であります。 宮澤委員長  他にございませんでしょか。一つだけお聞きしてよろしいでしょうか。今までお話を 聞いておりまして、出生率にはいろいろなファクターがあるということですが、大きく 分ければ経済的なファクターと社会的なファクターに分けられると、経済的なファク ターにはお話の中にございましたように、所得保障であるとか、育児のコストなどがご ざいます。社会的要因としては国民の態度とか、価値観とかありますが、私経済学者で ありますので、ちょっとお聞きしたいんですが、一つには社会的な要因と経済的な要因 とで、少子化に対する影響の強さ、ウェート、どちらがどのくらいの強さをもっている かということです。失業率が高いときや、景気が悪いときなど経済状況によって違いま すので、一般的なお答えをいただくことは非常に難しいと存じておりますが、全体的な 印象として、社会的な要因と経済的な要因とで、先生の見方、あるいは一般の見方があ るのか、そのことが一つ。  もう一つは政策立案の場合など、具体的な政策をとるときに、そういう影響の区別な どをどの程度考えられるのか教えていただけたらと思います。 Hoem部長  大変な難問ですね。最近のスウェーデンの出生率の動向を見ますと、これには経済的 なファクターが非常に関係があるということはもちろん同意せざるを得ません。またス ウェーデンの場合には戦後はじめてという経済不況という体験をしました。1980年 代の初めのころにわずか2年ほどでしたけれども、若い人の間の失業率が高くなったと いう時期がありましたけれども、しかしそれはすぐに1980年代の終わりころに雇用 率はまた高まりました。  それから価値観がどのような影響をもつかということについてはスウェーデンの場合 に、これは他国の場合もそうだと思いますけれども、まったくその面での研究というの は少ないものしかありません。私の考えでは価値観というのはこれは時代をみてかなり 長期間にわたって安定したものではないかと思うのですね。それに対して国民のムード とか、メディアが代表する仕事とか、育児とか、というムードというのはかなり国民の 考えに影響を及ぼすものだと思います。1980年代に行われた調査によりますとスウ ェーデン人は一般に1970年代に比べて家族志向であるという結果が出ております。 その一つの理由は1980年代になると70年代に比べて多くの問題が解決されたから だということが考えられます。  1970年代はマスコミが問題に集中して、子どもを持った家族の問題だとか、責任 だとかということを盛んに論議した時代でありました。今日ではスウェーデンの新聞ま たテレビで読んだり見たりするのは、いかに景気が悪いかとか、不況であるとか、将来 どうなるかとか、将来の若い人はどうなるかとか、そういうことで悲観ムードが国民の 間に広まっているのではないかと思います。私が言いたいことは価値観というものは そんなに変わらない。子どもを二人育てるとか、そういう価値観についてはあまり変わ りはないと思います。1992年のころに若い人たとえば23歳ぐらいの人に聞いても 自分は子どもがいりませんと答える人は全体のわずか1〜2%でした。だいたいの人は 子どもは必要ですよ。少なくとも2人はほしいと。そういう考えですから、価値観とい うのは私はそんなに変わりはないと思います。ただ可能性としては経済的なファクター が影響を持つ。経済についていろんな聞いたり読んだりすることが影響を持つというこ との方が大きいと思います。 宮澤委員長  ありがとうございました。他によろしゅうございましょうか。どうぞ。 阿藤委員  厚生省の人口問題研究所の阿藤と申します。スウェーデンの話からから離れて申し訳 ないんですが、日本ではスウェーデン以外のノルディック・カントリー、北欧諸国の家 族政策についての情報があまり手に入らないという状況ですが、Hoem先生の目から 見られて、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドというのは類似の政 策、とくにファミリーポリシーのジェネロスということをおっしゃっていましたけれど も、そういう点ではかなり他のヨーロッパ諸国に比べて手厚いと考えてよろしいのか、 その点について教えていただきたいと思います。 Hoem部長  他のスカンジナビア諸国で給付が削減されたということは私聞いておりません。たと えばノルウェーは失業率はございません。石油がありまして豊かな国です。フィンラン ドの場合はスウェーデンと同じような状況にありまして、スウェーデンの場合で先ほど 申し上げました児童手当、これが給付されておりまして、フィンランドの女性は子ども が生まれたら1歳になるまでは所得保障を受けて家にとどまるということを選択するこ とができます。ただ保障の率はスウェーデンよりは相対的に低いですけれども、同じよ うな制度があります。それでもスウェーデンの場合は最近手厚さが減りましたが、そ れでもまだ他のスカンジナビア諸国からかけ離れた状態にはなっていないと思います。 かなり柔軟性がありまして子どもの病気のときに両親休暇をとることができるとか、両 親休暇もパートでとることもできるしフルタイムでとることもできると、そういう柔軟 性をもたせてありまして、ノルウェーと比べてもまだ遜色はないと思います。デンマー クの場合も期間はスウェーデンに比べて短いですけれども、同じような制度が あります。だから、その精神においてはスカンジナビア諸国は全部同じですね。ただ実 際面、運用面において多少の違いが見られるという程度です。ご希望でしたらもっと詳 しい資料を用意してのちほど提供したいと思います。 宮澤委員長  他にぜひこの際お聞きしたいことや、まだまだご質問したい人が多いかと思いますけ れども、約束の時間を超過してしまいました。たいへん私どもの理解が深まりましたが 非常に複雑な問題であるということも感じられました。今日の話を受け止め、私どもの 今日の審議会を終わりたいと思います。  本日は、どうもありがとうございました。  問い合わせ先  厚生省大臣官房政策課  電話 代表 03−3503−1711 内線2931     直通 03−3595−2159