厚生省は、8月13日、クリプトスポリジウム等の病原性微生物について我が国の存在状況やWHOにおける議論の動向等を踏まえて、専門的見地から病原性微生物対策の充実を図るとともに、水道施設の現場における緊急的対応のための現地派遣や浄水の確実な検査体制の確保等、厚生省の初動対応の強化に資するため、病原性微生物、水道及び公衆衛生の専門家で構成される「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」を水道環境部に設置する。 |
1.趣旨
昨年6月、埼玉県越生町において、我が国でははじめて、水道水を介してのクリプトスリジウムによる集団感染症が発生した。これを踏まえ、厚生省では、昨年10月、「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を策定し、都道府県を通じ、水道事業者等へ予防対策等について周知するとともに、本年4月、「飲料水健康危機管理実施要領」を策定し、厚生省における緊急時の責任体制、権限行使等について定めた。
また、厚生省では、クリプトスポリジウム及びジアルジアの水道水源における存在状況を把握するため、全国94水源水域(1水域につき3地点、全数282地点)を対象として、調査・研究を実施している。さる7月、中間的な調査結果を公表しており、42水源水域、121地点中、クリプトスポリジウムは2水源水域2地点で、ジアルジアは8水源水域13地点で、それぞれ検出が確認されている。
なお、この間にも、浄水からクリプトスポリジウムが検出されたとして水道水の送水停止が行われたが、検査が誤りであった等の混乱も生じており、水道施設の現場におけるより適切な判断や、浄水におけるクリプトスポリジウムの確実な検査が求められている。
一方、WHO(世界保健機構)では、1993年(平成5年)に改訂した飲料水水質ガイドラインについて、10年後の2003年(平成15年)に全面的な見直しを行うこととしているが、それまでの間も部分的な改訂を逐次行うこととしており、1995年(平成7年)12月から、クリプトスリジウム等の原虫類、ウィルス等の病原性微生物について、専門家の間での議論が開始されている。
このような、我が国の水源水域等におけるクリプトスポリジウム等の病原性微生物の存在状況や、WHOにおける議論の動向を踏まえて、病原性微生物対策の充実を図るとともに、飲料水健康危機管理実施要領に基づく病原性微生物による水系感染症の発生予防等に対し、専門家の協力を得て、水道施設の現場が混乱した場合の専門家の現地派遣や浄水の確実な検査体制を確保する等、厚生省の初動対応の強化に資するため、13日、水道環境部に「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」を設置することとする。
2.検討会の構成
検討会は、クリプトスポリジウム等の病原性微生物、水道及び公衆衛生の専門家でもって構成し、委員名等は次のとおり。
荒木 國興 | 国立公衆衛生院衛生微生物学部長 |
遠藤 卓郎 | 国立感染症研究所寄生動物部原生動物室長 |
大垣 眞一郎 | 東京大学工学部教授 |
梶野 勝司 | 大阪市水道局副理事 |
金子 光美 | 摂南大学工学部教授 |
国包 章一 | 国立公衆衛生院水道工学部長 |
黒木 俊郎 | 神奈川県衛生研究所細菌病理部臨床血清科主任研究員 |
田代 眞一 | 国立感染症研究所ウィルス製剤部長 |
平田 強 | 麻布大学環境保健学部長 |
眞柄 泰基 | 北海道大学工学研究科教授 |
松澤 昭夫 | 東京都水道局浄水部長 |
三瀬 勝利 | 国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部長 |
村田 以和夫 | 東京都立衛生研究所微生物部副参事研究員 |
3.検討会の検討事項等
検討会では、クリプトスポリジウム等の病原性微生物の水源水域における存在状況、挙動等について、新たな知見が集積された場合、水道における病原性微生物の対策について専門的見地から検討を行う。
例: | ジアルジア対策を「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」に盛り込む 新たな検査方法の開発等があった場合に同暫定対策指針に盛り込む |
例: | クリプトスポリジウム等の検出情報により、水道施設の現場が混乱した場合の専門家の現地への派遣 クリプトスポリジウムの浄水からの検出の可能性が生じた場合の迅速かつ正確な検査体制の確保 |
4.今後のスケジュール
平成9年8月13日(水)(午前10時から12時、厚生省別館5F第2会議室−2)第1回検討会を開催し、本年度末を目途に検討結果をとりまとめる。
問い合わせ先 厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課 担 当 由田(内4031)、田野(内4034) 電 話 (代)[現在ご利用いただけません]