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第65回人口問題審議会総会議事録

平成9年4月15日(火)

16時30分〜18時30分

共用第9会議室

宮澤会長
本日はご多用のところをご出席いただきまして、ありがとうございます。ただいまから、第65回になりますが、人口問題審議会の総会を開会したいと思います。
まず最初に出席状況をご報告申し上げますが、ご都合の悪い方としまして井上、大石、大渕、河野、小林、坂元、袖井、坪井、南各委員、網野、清家、高山、伏見各専門委員、ご都合によりご欠席でございます。その他の委員はご出席でございます。
それでは、これから本日の議題に入らせていただきます。各界からのヒアリングをずっと続けておりますが、今回はまず慶應義塾大学の島田晴雄教授から『人口減少社会と経済・労働』というテーマにつきまして、ご説明をお願いいたします。島田教授は私がご紹介するまでもございませんけれども、慶應義塾大学経済学部をご卒業後、同大学大学院経済学研究科の博士課程等を経まして、現在は慶應義塾大学経済学部教授として幅広くご活躍をされております。それでは、ひとつよろしくお願いいたします。

島田教授

島田でございます。よろしくお願いいたします。
先日、事務局の方から、人口減少社会に入るという展望がいよいよ明らかになったので、いくつかのポイントについてヒアリングをしたいと。そういうご要望がありまして、少子化が進むとどんな社会になるのか。あるいは、そういう社会の中で個人、家族、地域社会、企業、プラスマイナスどうなるのか。グローバルな視点も加えて、今日において最適人口規模というのをどう考えるのか。あるいは是非論も含めてですね。出生率向上対策が必要だとしたら、どんな対策を取るべきか。少子化に対応した社会経済構造のあり方として、どんな改革が必要か。 その他というような論点で話をするようにということでございますので、今日は皆様のお手元に1枚紙の簡単なレジュメを用意いたしましたが、こんな論点に沿って私が日頃考えております要点を申し上げて、また後ほどいろいろご叱正をいただければと、こんなふうに思います。
人口減少社会をどう考えるのかという、その将来像でございますが、これは先生方ご専門でいらっしゃるので、私が言うことはないと思いますけれども。このたび明らかになった人口推計で、いまから10年後までは日本の人口は少し増えるけれども、10年先に1億2,780万人になってからは減る一方であると。中位推計ですら21世紀の末には7,000万人になるという大変な推計が発表されたわけでございます。
100年先は本当に先ですから、もうちょっと近いところで考えてもよろしいかと思いますが、例えばいまから20年ぐらいのことを考えますと、その間、65歳以上人口は1,000万人以上増えるわけでございまして。また、それを支えるべき生産年齢人口が1,000万人以上減るということでございますから。しかも、その減る中で労働力がどうなるのかということですけども。これは今日ご出席の八代先生がご専門で、私はあまり具体的なことは計算していないので、具体的な数字は八代先生が日本の権威でございますから、また補っていただければと思いますけれども。
傾向としては、人口構造を反映して労働力は若いほうから減っていくわけなんで、労働力の総減少数の中で、とりわけ技術革新を担う若年層、あるいは30代、40代というところが著しく減るわけですから、このままでいくと非常に大変な社会だということはいえると思います。
少し長期的、巨視的に見ると、日本の経済社会というのはこれまで、いまでもそうですけど、基本的には人口増加のメガトレンドの上に乗ってきた社会でございます。明治初年の日本の人口規模は3,400万人と推計されているようですけども、それからズーッと人口は増え続けているわけで、約150年かけて21世紀の初頭までに4倍ぐらい増えるわけでございます。4倍弱増えるわけですね。
この間が近代の、あるいは現代の日本の経済社会の発展、産業発展、経済成長、あらゆるものが人口の増加とともに進んできたということでございます。それが、いまから10年先をターニングポイントにして、今度は長期減少に入るわけですから、これはまったく私どもとしては前人未踏の、未曾有の経験でございますし、日本の歴史では、おそらく記録が残っているところでは、これだけの長期のはっきりした減少を経験してないんだろうと思うんですね。
江戸時代というのは、吉宗将軍のころにもうすでに3,000万人近い人口があって、それからいわゆる3,000万人3,000万石という経済が明治まで続いていたわけですから。それ以前のところは統計がはっきりしていないわけですけども、人口は増えていたわけですが。まったく初めての経験ですね。
おそらく、これだけ明確に大規模に趨勢的に人口が減っていくというのは、世界でも珍しいケースなのではないかと思います。したがって、さまざまな人口成長経済のもとでつくられてきていた経済のメカニズム、循環の仕方、あるいは私どもの生活のあり方、ものの考え方、企業行動、いろいろなものが変わらざるをえないんだろうと思いますね。1つの大きな基本的な問題ですけども、戦後日本は土地の価格がどんどん上がっていくということがあって。それがある意味で資産価値を増やして企業の投資の原資にもなったということがあるわけですけども。 これは人口が増えていく、特に一極集中というようなことで増えていく。そうすると、長期的に必ず土地の値段は上がるはずだということで期待が期待を生んで、土地が先取り的に値段が上がっていくというメカニズムがあるわけですけども。人口が明らかに減っていくということが明確になったときに、そういう期待感はどうなるかといえば、完全に逆転はしないかもしれませんけれども、これまでのような期待感はまったくなくなっているわけですね。ですから、土地はむしろこれから下がっていくとなると、今度はそれを担保にして金融が行われていたメカニズムというのは、基本的に変わってこざるをえないということで、企業行動もいろいろな意味で変わってくる。あるいは、家計行動も変わるんだろうと思いますね。土地の値段が上がっていくのは大変なことですけども、しかし例えば私ども以前の世代の皆さんは、とにかく会社に入って多額のローンを組んで、会社に一生勤め上げれば自分の買った土地が自分のものになると。あるいはマイホームが自分のものになるという前提で、真面目に働いてマイホームを手に入れたと。これは私は、20世紀の世界では日本とアメリカというのが、そういう意味では最もサクセスストーリーだったと思うんですね。自分の家を手に入れる。最大の資産を真面目に働いているだけで手に入れることができるというのは、大変な社会ですよね。
これができるのかどうかですね。私は大学にいるものですから、学生さんなんかといろいろな話をしてまして。学生さんのお父さんたちというのは、過去会社に30年なり40年なり勤めている間に給料が20倍ぐらい上がっているわけですからね。多額のローンだと思ったものが、返済は比較的容易だったわけですけど、いまの学生さんがお父さんと同じようなことをしたらどういうことになるかというと、おそらく数倍にしか上がらないでしょうから。もちろん金利は多少低いでしょうけども、大変な問題が起きるのではないか。同じようなことはできないだろうと思うんですね。
それから、日本は一所懸命生産立国で輸出をして頑張ってきたわけですけども、いまは大変な資本ストックを持っているわけですけどね。これをまだいろいろなかたちで使わなきゃならない。いかに上手に使うか。できることならば、むしろ世界各国からどうやって資本を導入して、人口が減っていく中で生活水準を維持していくかということを考える必要が出てくるわけで。この企業、家計、経済の運営のあり方、おそらくまったく考え方が逆転するんだろうと思うんですね。
人口増加経済というのは、一口で言えば一所懸命働いて技術革新していく生産革新の時代だったと思うんですけど、私は人口が減少していくということになると、いままでに我々が蓄積した資産とか、いま持っている限られた資源というものをいかにうまく使ってみんなで分け合っていくかという分配革新の時代に入るんだろうと、そんなふうに思っております。
その分配革新が適切にできれば、私は日本の経済社会というのは十分に軟着陸は可能だろうと思うんです。その各論については、これから少しお話ししたいと思いますが。所得と富の、あるいは土地なんかも含めた資産の分配の適切な革新が行われないと、そうとうハードランディングというか、矛盾の累積というか、いろいろなことが起きると思います。私のあとで藤島審議官がお話をなさると思いますけども、藤島審議官の計算は、このままいけばハードランディングであると。維持不能であるという、あるいは破綻するというか、そうとうひどい姿が描かれるわけですけども、うまく舵を切り直せばやれない経済ではない。
むしろ、現在の日本の経済社会は、国際的に見れば基礎的な力は最も恵まれているものを持っているとすら私はいえると思うんですね。日本には約1,200兆円といわれる個人金融資産があるといわれていますけども、この個人金融資産は世界中の個人金融資産の4分の1ほども日本に集中しているんだといわれるくらいあるわけですね。残念ながら今日、大きな金利差がありますから、そのうちのかなりの部分がアメリカへ流れて、単にアメリカの株高を支えるという妙な格好になってますけども。資産があるということは、日本の方々が一所懸命働いて貯蓄をしたわけですから、それがあるということですね。
それから、6,600万人の労働力というのは、世界で最も教育水準が高くて、最も訓練されていて、多分最もおとなしい、どんなに矛盾があっても、踏んだり蹴ったりされても、年金の内部収益率がえらい低くなっても黙って納め続けるという羊みたいな民族ですから、これも素晴らしいものですね。それから、生産技術というものも大変高いものがあります。
土地が狭いというけど、まったくそれは誤解であってですね。38万平方キロのうち14%が平地ですけども、そのうち例えば農地が6万平方キロ。このうちの2割が休耕地で減反手当が払われていて財政問題を悪化させているというバカなことをやっているわけですね。それから、都会地は1.5万平方キロでございますが、いわゆる例の市街化調整区域というのがあって、十分活用されていない。そして日本は世界中から農産物を輸入しておりますから、穀物自給率は3割しかないわけで、京都の千枚漬けなんていったって京都でつくっているはずはないんで、あっちこっちから買っている。ということは、世界中から土地を輸入しているのと同じ効果ですから、土地は実は非常に余っているわけですね。
ですから、基本的な資源を十分に持っていて、物価も安定して、貿易黒字もある程度持って、失業率も低いという現状の実態は素晴らしい国なんです。ですから、いま我々の持っているこういう資源を適切にソフトランディングに向けて組み直していくと。そういうことが実行できれば、日本は21世紀にそうとういい成熟国としての繁栄を手にできると思いますけど、ただこれは私は発想の転換が必要で、そうとうこれまでの常識を超えた分配革新をやらないといけないのではないか。こんなふうに思っております。
それから、次のテーマですが、望ましい人口規模というのをどう考えるかということですけども。これは実は皆様のお手元に資料1というのがあって。30ページぐらいあって恐縮なんですけど、『世界と日本の人口問題』というのがございまして。これは例のカイロ人口会議に間に合うように、日本経済調査協議会で勉強会をいたしまして。委員長は日本生命の伊藤助成社長、当時の社長でございますが。私が主査をして、この審議会の委員である清家篤さんが副主査で一緒にやったものなんですが。
この中で我々、ずいぶん一所懸命考えたんです。このことが望ましい人口規模をどう考えるかの1つの考え方になりえるかと思いますが。それは、ちょっと判じ物みたいですけど、世界と日本の人口問題をどう統一的に考えるかという、そういうテーマで始めたんですね。人口と経済発展と環境というのが、これからの人類の将来を規定する3つの大きなトライアングルというか、三角形だろうということを念頭に置きながら考えたんですが。
世界ということで見ると、御承知のように世界の人口はいま57億ぐらいのところにあろうかと思いますが、2050年ぐらいになると100億という説もあり、もうちょっと大きい、あるいはもうちょっと少ない、いろいろな説がありますが、だいたい100億前後のところへいくと。地球がこれだけの人口を抱えられるのかという問題提起がありますけれども、一種の人口爆発ですね。
人口爆発の中身を見ますと、アジアは実は急速に人口増加率は減っているんですけどもベースが大きいものですから、毎年ものすごい人口の増加があるわけですね。しかし、人口が確実に増えているのは、増加率も減ってないのはアフリカとか、あるいは南米がどうなるか興味があるところですが。先進諸国はみんな人口が減っているということでございまして。中国は増加率はどんどん減っているわけですけども、ベースがものすごく大きいので、アジアの増大になるということで、人口爆発の中での、特に途上国の人口爆発の中での先進国の人口減少という、大変シャープな対照的現象が起きているわけですね。これをどう考えるかということで考えたわけですが。
人口の動態というのは、私はまったく素人ですけども、まずダイナミックな人口増加の、そして減少に至るプロセスを見ると、第1期は出生率が非常に高くて死亡率も高い。ですからそれほど増えないんですが。やがていろいろな理由で死亡率が下がってくる。出生率はあまり下がらないということで、人口が急激に増えていくわけですね。この段階を過ぎると先進国型の成熟になって、出生率もうんと下がってくるというところで、多くの世界の国々はこの人口爆発の第2期と、それから3期の減少期にあるんだと思います。だから、もっと時間がたてば自然に人口が落ち着くのかもしれませんが。
しかし、そういう人口が適切なのかどうなのかということを考えるときに、私は最適人口というものがもしあるとすれば、それは先ほどご覧いただいた『世界と日本の人口問題』の12ページをちょっと開いていただけるとありがたいんですが。12ページにこういうふうに書いたんですね。つまり、「第1に注力すべき点は」というところなんですが、「人々が本当に自由に子供づくりを選択できるような環境条件を整備すること」だと。そのためには、いろいろな条件があるわけですが、選択するということを可能にするためには、「主体的な判断によって選択できるような技術」ですね。それから知識などを普及させる必要があるというようなことを補足的に書きましたんですが。エッセンスは、自分が自分のつくりたい子供を自由に選択してつくるということができるのかどうか。もし最適人口の条件があるとしたら、それなんだろうと思うんですね。
これは人口爆発をしている途上国について見ますと、例えばバングラデシュの未開のところへ行きますと、朝から晩まで女性たちが水を汲むために何キロも歩いて、1日費やしてしまうと。夜は家に帰ってきて、電気が暗いんでセックスして子供をつくっちゃうと。そしてたくさん子供ができて、子供のうちに何人も死んで、残った子供が親の面倒をみると。こういう仕掛けで子供の数が多いわけですね。これは本当にほしい子供を自由に選択しているのかというと、そういう生活条件の中でしょうがなくてつくっているのではないかと思うんですね。そういうふうに考えること自体が、我々の価値観を押しつけているかなという気もしないではありませんが、もう少しこの人たちが例えば知識を得たり、テレビを観たりということもありますが、情報を得てやっていくうちに、こういう選択はしないのではないか。とすれば、もうちょっと低い人口増加率になるんだろうと思うんですね。
今度は逆に先進国で、例えば日本の状態なんかを見ますと、大変豊かなんですね。皆さん仕事の口があると。しかし、例えば今度の人口推計を見ますと、東京で大学を出た女性の初婚年齢が29.8歳というんですか。世界で一番高い晩婚都市ですけども。この人たちはどういう選択をしているかというと、キャジャログザベーションで恐縮なんですけど、みんないい会社に入って、いい給料をもらって、忙しくて忙しくて男なんかに出会ってられないという生活をしているわけですね。 キャリアを追求して仕事をすると、できることなら奥さんがほしいと。家に帰ってきて「ビール」って言ったら出してくれる奥さんがいないかなって。同じ立場ですよね。男はそれができるんだけど、女性がそれをできるかっていったら、できない。ということで、家庭を持つと大変足手まといになってしまうということで、ある人が「豊かな奴隷」と言ってましたけど、そういう状況で。
所得はえらい高いんですね。だから海外旅行もスキーも好き放題やってますけども。結局、家庭がじゃまになっちゃうということで、それは本当に幸せなのかということですよね。もし、そこそこの所得があるけれども、豊かな所得があるけれども、自由時間がそうとうたっぷりあって子供とともに過ごせる時間、家族が生活を楽しめる時間というような環境があったら、やっぱりもっと早く結婚して子供をつくって仕事もするということになるのではないか。そう考えると、私は先進諸国の出生率というのは、本来のあるべき出生率より低い。
ですから、最適人口があるとしたら、そういうことじゃないか。それ以上のことを考えてはならないのではないかというのが、私の個人的な見方でですね。人口が減っていくから生めよ増やせよ、どうかしろと。これは全然意味がないんで。 本当に自分が好きで、顔が気恥ずかしくなるような言葉ですけど、本当の愛情で結婚して愛情で子供をつくるということがまったく阻害条件なしにできるという社会をつくることができれば、そのとき実現する人口が最適人口だと私は思いたいと思います。
そのために一番重要な条件は何かというと、実は家庭と両立する仕事と企業のあり方が一番大きいと思うんですね。これは、じゃあ女性が働きやすいように何かしてやろうといういろいろな話がありますが、私は最大のポイントは男性の労働時間だと思います。やはり、女性が仕事もして子供も持って家庭も営めるというふうにするためには、男の労働時間が最大の制約条件だと。男の労働時間をめぐる会社のものの考え方ですね。
だから、今日はうちのお母ちゃんは仕事して残業なんだと。俺は先に帰って子供の面倒をみてやるんだといったら、みんなが「よかったね」、パチパチパチといってくれるような、そういう会社ができればですね。どっちが得なのか。それができないために女性がスーパーウーマンでやろうと思って、結局ポキッと折れるようにリタイアするということがいいのか。そして、あまり優れてない男性がずっと会社に居続けることがいいのかですね。あるいは、女性が能力を活かしてずっと続けるけれども、優れた男性がやや時間をフレキシブルにして、家事も一緒にやるということがいいのか。共同生産ということを考えると、私は後者がいいに決まっているのではないかと思いますけども。
日本だけじゃない。世界中の国はみんなそうですが、やはり基本的には男性社会なんで、なかなかそういう事態は実現しにくい。むしろ逆説的ですけども、日本の家族営業の零細企業ですね。一昔前はみんな零細企業で家族営業だった。おかみさんという人がいたわけですが、おかみさんというのは、実は企業の最大の経営者でですね。海外旅行に行けば、山ほどお土産を買って帰ってくる。なぜかというと、従業員にみんな配るわけですね。しゃもじの権利を持っていて、労務管理から経理から生産から、何もかもやっていた。親父さんというのは何をやっていたかというと、酒くらって組合に出ているだけなんですね。これは営業と、総務もやってないわけで。それでいいんです。そのおかみさんの時代はちゃんと子供をつくっていた。企業を支配してましたからね。
ですけど、そのおかみさんたちが自分の娘には何を言ったかというと、「私は苦労したんだから、あなたはそんなのと結婚しちゃダメよ」と。「○○銀行のサラリーマンと結婚してマンションに住みなさい。従業員なんかと一緒に住むんじゃないのよ」と言ってるうちに、「私も就職したいの」といって会社へ入ったら、全部これは男のカルチャーでなかなか大変だということになっているんで。
私は、いま女性が進出しているというのは実は嘘で、本当は明治、江戸時代のほうがはるかに女性は社会を仕切っていたと思うんですね。そこへ戻れとは言いませんけれども、しかし別の技術で別の発展段階のうえで、女性がもっとのびのびと男と一緒に仕事ができる、そういうのがいいのではないか。それが最適人口を実現する条件じゃないか。そのために、私はやっぱり一番改革が重要なのは、日本の企業社会だろうと、こう思うんですね。これだけ女性の労働参加率が高くなってますと、やっぱり決定要因は日本の企業だと思います。
女性が子供を生んで育てて、そのあとでキャリアとして復帰する。これを私はキャリア再起型といっているんですけど、企業は、そういうキャリアパスをつくる、あるいは社会がそれを認めることが必要だろうと思うんですね。これまでは女性はキャリアを追求するということになると、肩張って結婚しないで子供を育てないで頑張ってやってきたということですが。その時代は終わったんですけどね。いまはまたそういう時代じゃなくて反動で、いい夫がいて楽するのがいいと。 130万円以下稼いで年金の保険料を払わないのがいいと。そういうのが女子高 生なんかにはファッションだそうですけども。しかし、本当に働いている人たちは、もうちょっと子供も育ててキャリアもやりたいということだと思うんですね。 そういうことを社会的にバックアップする必要があるんだろうと思います。そのためには、私は保育所とか託児所というのは、もっともっとフレキシブルに、もっとこれは充実させなきゃいけないと思うんですね。
それから、日本の家計の考え方も妙ですけども、デイケアセンターというか、ベビーシッターを多くの国々ではお互いどうし隣組でみんな助け合ってやってるんですけど、日本ほど高校生が働かない国ってありませんね。日本の高校生は変なソックス履いて、プリクラの前でウロウロしている。私、大学で「プリクラ撮りに行こうよ」って言ったら、大学生に非常に抵抗されましたね。私はプリクラでゼミの写真を全部撮って揃えたいと思ったら、「先生、まったくわかってない。プリクラってそういうことじゃないんだ」と。「あれは怖い女子高生たちの巣窟なんで、近寄ったら大変なことになる」という話だけど。そういう妙なことをやっている。
アメリカなんかへ行きますと、女子高生たちはベビーシッターで一所懸命働いてますよ、お互いにですね。日本はベビーシッターを頼むというと、民間ですとどこかのホテルで、ものすごい高い値段を取られる。公的な保育所は、今時いろいろ規制がうるさくて、なかなか役に立たない。これはよくないですね。公ばっかりじゃない、私は日本のものの考え方、これは非常に問題ですね。そういうことで、主婦が家庭と社会、企業が両立できるような仕掛けをつくる必要がある。
それから、やっぱり労働力からリタイアしている間に情報が遅れますから、教育訓練、情報提供、それからどういう仕事が自分に合うのかということをきめ細かく提供してくれる職業情報提供紹介制度ですね。これまでずっと職業紹介システムというのは国家の独占でございましてですね。失業者を主として面倒みるんであって、そうでない人たちの面倒はみないという仕掛けになっておりましたけども、ついに労働省も外堀、内堀を埋められて、そういうことも民間の参入を認めようということに動き出しておりますので、いい方向にいくんだろうと思いますが。そうして職業情報が潤沢にあって、女性と男性が自由に仕事を選び取ってキャリアを形成できるという社会をつくる。それが私は最適人口の条件だと、こう思います。
さて、もう少しお話ししてやめたいと思いますけど。先ほど、分配システムを変えなきゃいけないんじゃないかということを申し上げましたが。社会保障、年金、医療、福祉−介護、それから次は労働改革と書いてあります。雇用システム、労働市場政策。これはいま申し上げてしまったんで繰り返しませんが、その次に経済構造改革。税制とか市場構造とか、これらをすべて含めてソフトランディングのために抜本的な改革をしていかないと、ソフトランディングはうまくいかないと思います。
年金ということでいうと、つい最近も小泉厚生大臣が、年金は2013年に65歳にするのをおそらく67歳ぐらいにしてはどうかと思われているのではないかと思いますが、そういう発言を財政構造改革企画会議でおっしゃられたようですけど。 65歳から平均余命を見ると20年ぐらいあるわけで、それを67歳にすれば年金給付額を1割ぐらい節約できるわけですから。雇用というものがついてきてさえくれれば大変いい改革だと思いますね。おそらくもう一つのオプションは、いまネット所得スライド制になっておりますが、あれを物価スライド制にでもすればですね。そうすれば、もし経済が2%の実質成長を維持してくれるのであれば、2%ずつ毎年実質の年金給付額が下がっていくわけで。2%はあまり目立たないですから。しかし、20年たつと半額になるので、大変よろしいということだと思うんですね。そのぐらいの改革を少なくともやらないと。
少なくともそういう改革で、もうちょっと本当にやると、私は実は財政構造改革会議に申し上げたんですね。三塚大蔵大臣に申し上げたら、三塚大臣がそれをすぐ記者会見でしゃべってしまわれたんで、ちょっと物議を呼びましたけど。どういうのかというと、いろいろな方々からその議論は出ているわけですけども、基礎年金部分と2階建て年金部分の2階建て部分を民営化したらどうかと。ということは、基礎年金のほうはむしろ目的税法式でやってしまう。仮にそういうことをやりますと、いわゆる不公平問題、あるいは国民年金の不払い問題、ああいう問題は目的税でみんな払ってしまえば、いっぺんになくなっちゃうわけですね。 3号年金者の問題というのも、基礎年金だということにすればなくなってしまう。私は大変望ましいんじゃないかと思うんですね。そして、国民のナショナルミニマムのところは、もう憲法25条を基盤にして税金で100%賄ってしまう。3分の1とか2分の1とかいわずにですね。ただ、2階建ての部分は全部民間に移行してしまう。だから、豊かな老後を暮らしたいと思ったら自分でやりなさいと。国は知りませんということなんですけど。
ただ、これはすぐにはできないんですね。なぜかというと、いまの公的年金制度にすでに関わって払い込んだ人、権利が生じている人、たくさんいらっしゃいますから。全部含めると3年前のデータでGDPの約200%のシステムの国民に対する借金というのが残るわけなんですね。ですから、旧国鉄の借金が30兆円だとすれば、これはその30倍でございましてね。約1,000兆円の借金を払う覚悟があれば、おそらく百年ぐらい年金問題はまったく気にしないでいいと。私はこれは論議としてはあってもいいと思うんですね。年金学者は「とんでもない」とおっしゃいますけど、あってもいいだろうと。ですから、三塚大臣は実はその1,000兆円の清算のところをなしでご発言なさったものですから、みんなたまげているわけですけど、そういうことでございます。
それから医療問題ですけど、いま医療は大変な財政危機になっていて、これを患者負担ということで四の五のということのようですが。これは私はやっぱり長続きしないと思っています。医療のサービスの供給側のメカニズムをしっかり変えないといけない。それは何だというと、高齢化が進めば医療費が増えていくのは当然なんで、厚生省はいま27兆円のものが2025年には140兆円になると言ってますけど、140兆円になったらたまらないんで、100兆円とか80兆円ぐらいに抑えてもらわないと、これはとんでもない。
じゃあ、どうしてそんなドラスティックなことができるんだといえば、私はできると思うんですね。なぜかというと、いまの医療を見てますと、非常に、こう言っちゃ何ですけど本当に必要なのかなという費用がものすごくかかっている。 例えば日本の方の平均入院日数は36日ぐらいあるんですが、これは欧米諸国の約2倍から3倍になっている。なぜかといえば、供給が需要をつくっちゃうんでですね。患者さんに情報がないから「今日からあなたは入院だ」と言われたら 「違います」と言えないわけですね。そして入院する。これは報酬制度が出来高払いになっているから、そういうことになるんだろうと思いますけども。
これはやっぱり一番重要なのは健康保険組合が。患者さんというのは知識がないわけですが、健康保険組合はやる気になれば専門家を雇えるわけですから、この専門家が全国の医療機関をよく評価して、優れた医療機関にだけうちの健康保険は払うんですよと。そうでないところは払いませんよとやればいいんですよね。 評価は大変ですけども。そして、それをやらせるためには、今度は患者が、被保険者が自由に健康保険組合の加入を選べるようにすればいいわけですね。私はたまたま慶應義塾からもらってますけど、慶應義塾がたるんでたら早稲田大学の健康保険組合に属してもいいと。ドイツで一部やられているようですが、そういうふうにすると健康保険組合は尻に火がついて頑張ると。そうすると、患者は情報はなくても市場全体は適切な受給バランスになるということで、無駄が排除されていくということだと思いますね。
同時にその関連で、薬価基準制度は廃止しなくてはならないと思いますが。この薬価差というのはお医者さんの収入になっているわけですけども、お医者さんはしかし当然であると。これは技術料だとおっしゃっているわけで。実は一理あるんですね。日本は知識に払わない国ですから。ですから粉薬ぶち込んで保険収入にするわけで。知識をもっと正当に評価しなきゃいけない。その代わりお医者さんには定額医療制でコストミニマムをやっていただくようにする。患者さんにも償還払い制というようなことで、自分でコスト意識を持っていただくというようなことをやると。これは大変なことでですね。全部供給側を敵にするわけですから。しかし、政治の力でもしこれができれば、私は日本は十分ソフトランディングすると。
介護もそうでございますが。介護は全国各地にインフラをつくっておられるわけですけど、このインフラは善意でやればやるほど高いものになっていくんで、やはり競争というのを入れる必要がある。民間の原理というのは、節約すればポッポに入れられるから頑張る。役人の原理は、節約してポッポに入れたらとんでもないことになるんで。これは別にお役人がいいの悪いのという話じゃなくて、原理が違うんですね。ですから、これは協業できるところは協業する。本当に分業しなきゃならないところは分業するということでやるというようなことをすればできるだろうと思います。
それから、労働改革はさっき申し上げましたけれども。経済構造については、税制は大きな問題ですね。所得税の限界税率をもっと大きく引き下げなくてはならないだろうと思いますし、国民が広く税負担を負担するためには、間接税を広く、もう少し幅を厚くしていかなきゃいけないだろうと思います。法人税については、赤字法人がたくさんあるわけで、中身はさまざまですけども、税率を引き下げて、努力する企業はやっぱり得をするという仕掛けにしてですね。そして資本の取引については、もっと海外から資本がどんどん日本に流れ込みやすいような仕掛けに税制をつくっていく。
税制を変えたから国が変わるということはないんですけども、世界が変わりつつあるときに税制がじゃまをしてはならないということですね。これらのことを全部できれば、私は日本はソフトランディングを十分にすると、そう思っております。
最後に、外国人労働者問題というのがありますね。少子化の社会では外国人労働者問題というのはどうしても考えざるをえないと思いますが。外国人労働者問題については、導入すべきという議論があるわけですね。労働力が足りなくなっていくのに古今東西、ローマの時代から先進国で栄えた国で外国人労働者を入れなかった例があるか。確かにないわけですよね。ですから当然だと。それから、この国際化の時代に当然門戸を開放し、資本、物だけじゃない人間にも門戸を開放してやるべきだと、こういう議論が導入べき論にあるわけですね。
他方、鎖国論もありましてですね。犯罪が起きているのはどうだとか、文化がどうかするとかですね。もうちょっと切実な問題は、社会保障のコスト負担がそうとう増えるわけですね。私も厚生省で一緒にお仕事させていただいて、医療費負担。お医者さんは外人であろうが不法就労者であろうが、それは関係ありませんから。目の前で怪我をされている、病気をしているといったら、まず助ける。 これはお医者さんの責務ですね。しかし、その後勘定はどうなるかといえば、これは問題でございまして。膨大な不払いの負債が貯まっているというわけで。 日本のように医療制度が進んでいて所得の高いところは、もし開放したらターゲットになるのは目に見えてますから大変なことだということを考えても、導入論、鎖国論とあります。
私の考え方はどうかというと、皆様のお手元に資料3というのがあって、『外国人労働者問題の解決策』という大仰なテーマの割と分厚い本を書きまして、そのうちの第1章に内容がサマリーで書いてありますのでコピーをしていただいたんですが。
ついでにもう一つ申し上げますと、さっき飛ばしちゃったんですけど、資料2というのがあって『仕事と暮らしの経済学』というのがございまして。これは最適人口の話に関わるんですが。人はなぜ子供を持つんだろうかというのを経済的合理性を前提にして考えるとどう説明がつくか。出生率が下がってきた時代というのは、実は教育費が上がっていたり、住宅コストが上がっていたり、さまざまな面で。あるいは女性の就労率が上がっている。就労率が上がると、実は機会費用というのが増えていくわけでですね。そう考えると、極めて日本の人たちは経済合理的な反応をしたのではないかと思われます。そういう意味で出生率は下がってきたのではないかと、あるいは結婚年齢が遅くなってきたのではないかと思われますけど。
もし、政策的にそれを逆転しようと思えば、できるわけですよね。人々が合理的に結婚して合理的に子供を生んでいるんであれば、その合理性で早く結婚して 早く子供をつくったほうが得だというふうにまわりの仕組みを変えてやれば、そういう反応をするんだろうと思います。これは岡沢先生のご専門ですけど、スウェーデンがそういう努力をして、あれほど出生率が低かった国が出生率を上げてきた。しかし、先ほど岡沢先生から聞いて感心してたんですけど、ごく最近の数年間のスウェーデンの出生率の低下というのは、スウェーデンが経済的に難しくて、いろいろなことができなくてやったんじゃないかというのが、ご専門の見方だというので、そうだとすると人々は非常に経済合理的に選択をしているなということですから、社会工学的に人口について設計することはできるんだと思いますね。
しかし、私はそれはあまり正しくないと思っているんです。そういうことよりも、最初に申し上げた、本当に自由に、キザったらしいですけど、愛のために結婚して子供を生むということが最適人口なんだと。それ以上の強制をしてはならないし、政策的に妙なことをしてはいけないと思っております。ちょっとフットノートですけど。
そして最後のポイントですけども。したがって、外国人労働者について私はどう考えるかというと、導入したほうがいい条件というのはずいぶんあるんですよね。ですから、導入できるならしたほうがいいと思っているんです。しかし、するなら条件があって、次の7つの権利を日本の社会が十分に外国人に対して認めるなら、していいだろうと思います。
それは何だというと、1つは労災ですね。働いて怪我したら、労災保険がちゃんと下りる。それから医療ですね。外国人労働者に対する医療保険制度というのは、いまの日本ではなかなか下りにくいかたちになってますが、これが整備できれば。国際労働研修機構というのがお茶の水にありまして研修生を受け入れてますが、ここは民間の保険会社に入っていただいて医療保険が下りるようにしております。それから失業保険ですね。それから子供たちが教育を受けられる権利。住宅で差別をされない権利。年金を払っても国を出たときは返してもらえる権利。これは国際間協定になろうかと思いますが。そして最後に地方選挙権ですね。 この7つはないといかんと思います。
仮に私どもが知らない国に行って仕事をしたときに、この7つの権利の1つでもなかったら、極めて不十分ですよね。日本の社会というのはこの7つの権利を提供する用意があるのかといえば、正直言えばほとんどない。ですから、そういう権利を提供する用意がなくて外人を入れてはいけない。なぜなら、入れれば必ず差別になります。差別になって大変な社会問題になります。しかし、入れる用意があるなら、もう徹底的に入れなさいと私は思います。
ですから、私は開国論でもないし鎖国論でもないんですね。強いていうなら責任論。人間性責任論だと思います。自分たちと同じ自由な生活を享受させる覚悟があるなら、私はたくさん入れて一向にかまわないと思いますね。しかし、そうじゃなかったら1人も入れないほうがいい。差別の国になりますから。そこの問題でございます。ですから、人口問題は実は大変な問題なんで、外国人問題ということに関しますと、本当に社会の自己改革をする覚悟があればやればいい。おそらくその覚悟がないでしょうから、そうだとしたら入れないで自分の力で生きていくのがいいのではないか。そんなふうに思います。

宮澤会長

どうも大変ありがとうございました。明解な方向性を示しながら、たくさんの論点を整理していただいて。どうぞ、ご質問をお願いいたします。
口火を切る意味で1つ。テーマは『人口減少社会と経済・労働』とあって、政治というものを排除しておられるんですね。タイトルが。したがって、先ほどの4のところで分配システムの改善、社会保障改善の方向につきまして、1つの青写真というか方向が出たんですが、それはかなり政治がついてこないと、まったくダメであるということですね。
そうすると、その条件のきつさは、やはりそうとうきついものとして位置づけなきゃいけないのか、それが前提条件なのか。そのへんはいまの政治体制を見ながら、しかもなおかつできる範囲と不可能な範囲をどう識別したらいいか。いまの政治状況のままじゃソフトランディングは不可能だという結論になってしまうのかどうか。そのへんは。ちょっと乱暴な質問で恐縮ですけども。

島田教授

いえいえ。私は、いまの政治をやっておられる当局者の皆様も、また各官庁のポリシーを考えていらっしゃる方々も、いま私が言ったことぐらいは、別にナッシングニューといいますかね。みんな知っておられることばっかりだと思うんですね。問題はそれをやるかどうかということですが。
昨年までのところ、いろいろな審議会も含めて、いろいろな日本の広い意味でのシンクタンクが方向性を描いたと思うんですね。そしてそれをいまの政権が受け止めて、行革会議がちょっと遅いんじゃないかという批判がありますが、財政構造改革会議あたりは、やるべきことは踏み出していますね。最後のところで与党調整ということになると、改革会議の企画会議で出ていた議論は消えるんですけどね。だからちょっと情けないなという感じはありますが。皆さん知っているわけですね。一所懸命やってるし。
例えば橋本総理はどうやっているかというと、おそらくこの議論をすると「あなたは私にこれ以上何をしろというのか」というぐらいの反応になるんだろうと思います。そばで見ていると、本当に一所懸命やってますよね。ですから、問題はむしろ国民のほうなんだと思うんですよね。国民がそれを受けるのかどうか。 例えば年金の問題にしてもですね。見ていると、そうとうゆとりのある高齢者の方がたくさんおられて、一方に本当にゆとりのない比較的少数派の高齢者の人がいますよね。ゆとりのある方のほうで、一部の識者は「俺の年金なんかいらない」なんて審議会でおっしゃっている方もたくさんいますけどもですね。99.9%の中産階級は、やっぱり既得権だと思ってますから。
ここのところの人たちが、実は年金をもらうと預金に回しちゃったり孫に小遣いやって。そんなために付加給付でやっているんじゃないわけですから。このへんを世の中そうなったんだと。だから、給付水準を切り下げていくんですよということを自然に認めていただく社会をつくらなきゃいかん。
これは、私はそんなに絶望していません。ネット所得スライド制を入れるという議論も、他の国ならあれは大変だったんだと思いますが、割に日本ではスーッといきましたですね。あれも大変な改革だったと思うんですけど。もう一つ、今後は物価スライド制にいつの間にか移行しちゃったということでいいと思うんですね。で、いつの間にか67歳になっちゃったということでできちゃう。
ですから、そういう日本の人たちは、だんだん外堀を埋めていくとだんだん諦めて対応していくんじゃないか。そして、「やっぱりそういうもんなんだな」と。10年もたつと、「やっぱりそういう社会なんだよな」と思うのではないか。ちょっと甘いですか。

宮澤会長

いやー、どうか。既得権の話。どうぞ。

八代委員

せっかくの機会でございますので、島田先生にいくつかお話を伺いたいと思います。
まず人口が減るということの意味でありますけども、量としての人口が減っても質としての人口が増えればいい。つまり、労働生産性が上がっていけばいいわけというのが1つの考え方です。島田先生がおっしゃったシステム改革というのも、そういう意味の1つではないかと理解しております。
もう一つは、外国人労働者の問題でありますけど、おっしゃったように責任論は、これは当然のことであって、まったくそのとおりだと思いますが、もう一つはどの産業にどう外国人労働者を入れるかということが1つのポイントではないか。つまり、いまの外国人労働者の使い方というのは、もう日本人が働きたくないようないわゆる3Kというか、そういう産業が特に外国人労働者を求めている。 しかし、安易にそういう需要に応えていると結局産業構造の転換というのは、いつまでも進みません。ですから、そう考えたときは、果たして生身の外国人労働者を入れることが本当に日本の経済にとっていいのかどうか。
むしろ先ほど島田先生が、日本は農産物を輸入することは間接的に土地を輸入しているとおっしゃっいましたけど、まさにそれと同じように日本の企業が海外に直接投資をして、そこで労働集約的な財を生産して、それを輸入するというのも1つの外国人労働の活用であって、こちらのほうが、むしろ日本の産業構造の高度化には役に立つのではないか。そういう外国人労働力の活用ということをむしろ考える必要があるんじゃないかという点について、いかがでしょうか。

島田教授

ありがとうございます。2点いただいたわけですが、最初の点はまったく賛成で。労働供給を量的にも高齢者とか女性などについては、もう少し労働供給しやすい制度的、技術的、さまざまな条件を整えることでやるということは1つですけども、その労働力全体の質を高めるというのは、大変重要なことで。経済構造改革をしようというのは、実はそういう意味なんですね。経済全体の効率を高めることで、そこで働く人たちの成果が上がるということで、まったく賛成です。
そして外国人労働者問題は、おっしゃるとおりで、3Kの仕事をさせたいからということで日本の雇い主はいわゆる外国人労働者を入れたいわけですね。しかし、例えば兜町で活躍している練達のサンドマネージャーなんかも外国人労働者であるには違いないんで。その人たちは、いわゆる外国人労働者というふうに扱われていないわけですけども。
これは供給側も実はそうなんですね。供給側も日本へ行って一攫千金と。所得が10倍も50倍も高いところですから、そこでどんなことをしてもいいから、カップラーメンすすって、とにかく稼いで帰りたいということですよね。これはやっぱりノーサンキューですね。
だとすると、どうするのかということですけども。実は留学生たちが日本に来るよりもアメリカやヨーロッパへ行きたいと。そっちのほうが使えるという。これも本当に残念なことなんですね。私は、ぜひなるべく早く移民法をつくってもらいたいと思っているんですね。日本は出入国管理並びに難民認定法しかなくて、日本人になるという条件というのが世界に対して透明じゃないんですよね。これは法務省の、確かあれは民事局がおやりになっていると思いますが、日本人にするということは恩恵なんですね。だからルールがない。極端に言うと。もちろんハレンチ行為とか国家反逆罪があれば入れないとか、そういうことはありますけど。よく朝鮮の方なんかで、いよいよ日本に帰化しようかと考える方が非常に心配するのは、交通事故をしたらダメだと言われるのかどうか。そして交通違反も1回ならいいのか、3回ではダメなのか。このへんは一切ルールがありません。 ですから、係官のまったく恣意的な判断ですね。ですから、これは怖い国なんですよね。
それはやっぱりいけないんで、私はもっとしっかりした移民法をつくって、どういう人は日本人になってもらいたいかということですね。ここは思想を変えなきゃいかんと思いますが。人間に、日本人になってもらいたい人、もらいたくない人がいるということは、多分これまでの日本の思想では語ってはいけなかったんじゃないかと思いますけど、世界中で外国人を迎え入れている国で、それを語らない国はないわけですね。どこの国でも一定以上の資産のある人、どんな技術を持った人、何点以上取った人、これはなってもらいたい。そうじゃない人は入るなと言っているわけです。国は慈善事業をやっているわけじゃありませんからね。日本をよくするために、いい外国人なら入ってもらいたいに決まっているわけで。それはルールを明確にして世界中にアピールして、こういう人は入ってもらいたい、こうでない人は入ってもらいたくない。それでいいんです。いい意味で徹底的に差別するべきなんです。それが移民法なんですね。
そうでなくて、恩恵で法務省の役人の気分任せでやられた日には、これほどひどいんですね。ですから、私はとにかくキッチリした移民法をつくって。そしてどんどん入ってくださいというと、私はミスマッチが起きると思っている。いまのような日本の社会、日本の構造だと、お金は稼げるかもしれないけど、日本が一番入ってもらいたい人は「ノーサンキュー」と言って他の国へ行っちゃう。それは企業が国を選ぶ時代と言われてますが、人が国を選ぶ時代なんですね。ですから、日本が来てもらいたい人に「日本は素晴らしい国だ」と選んでもらえるような国をつくろうじゃないかというのが、将来の外国人労働者問題に対する本当の解決策なんだと私は思います。

河野専門委員

大変明解な島田節を聞かせていただいて、どうも。3つぐらいご質問があるんです。ただちょっと、非常に質問がしにくいんですけど。
先ほど最適人口というのは、人々が自由に子づくりができるような環境のもとでと言われたんですね。それは非常にいいと思うんですが。ということは、ある程度、子供は2人といいますかね。そういうようなものがある程度暗黙のうちにマインドセットにあるからそうなんで、もし1人がジザイドファミリーだと、そういうことになると国はもっと出生率は下がるわけですよね。それが自由に各人思うのが1人だということになると困るんで。そうなってくると、ちょっと難しいんですけど、一種のレッセフェールのような社会になってきて、そうなってくると個人の考えと国であるべき考えと乖離してくると、ちょっと問題になってくるのではないかということですね。
そうなってくると、国は、もし誰も1人しか生まないと、ジザイドファミリーサイズが1人だと、2人ぐらいにしてもらいたいとインデュースしなくちゃならないわけですね。そういうような、国が政策というか制度を立てられなきゃならないんじゃないかと。レッセフェールではすまなくなるような条件もある。いま、たまたま2人ならまあいいかもしれんけど、2人でも足りないわけですよ、本当はね。というような気がします。
それから2番目は、こういう考え方なんですけど。例えばオールデメインなんていう人は、先進国ではいわゆる親孝行年金のようなものをやったらどうか。つまり、たくさん子供を生んだものは、それに応じて年金をたくさんもらうと。子供を生まなきゃもらえないのかどうか知りませんが、そういうようなのでしかないんじゃないかというようなことがあるんで、そういうことについて島田先生のお考えを。
それからもう一つ最後に、問題は結局日本の一種のあれは男性社会というんですか、男尊社会でしょね。そうすると、国連なんかでウーメンズエンパワーメントとか言うわけですけども、実際日本ではなかなか難しいんですけど、どういうブレークスルーのあれがあるか。どういうそれを破る点があるかという、そういうことなんですけど。

宮澤会長

ちょっと関連して。最初の2つに特に関連しますですけども。結局子供が私的財というか、ここに書いてございますね。それの判断と、先ほどの選択、あるいは適度にどう変わるかということになるかと。そのへんのことを。

島田教授

わかりました。最初の、いま宮澤先生にもおっしゃっていただきましたが、資料の2ですね。『仕事と暮らしの経済学』の128ページという最後のほうの数枚でございますが、ちょっとお開きいただきますと。子供は私的財なのか公共財なのかという問題にどうしても突き当たるということをここへ書いておりまして、まさに宮澤先生ご指摘のとおりなんですが。
私は前に厚生省でやっていただいていた児童福祉課ですか、児童手当を考えている、荻島さんがやっていたところ。児童手当課ですか。あそこで委員をやれと言われまして、参加するときに条件を付けて。条件を付けられたんです。何を言ってもいいけど、児童福祉手当をなくすとは言うなと言われて。それで入って申し上げたのは、もし公共財と考えるなら、子供を生んだら児童福祉手当に1万円だ2万円だとケチなことじゃなくて、年間500万円か1,000万円渡せと、そういうことを申し上げたんですよね。社会の次の世代を担うアセットだったら、そうだと思うんです。国家の投資ですからね。
私はそこは、ある種の自然律を、素人ですのでよくわかりませんが、考えているように思います。さっきの最適条件というのは、そういうことは考えないほうが、私の考えは私的財でいいということです。それで人間の幸せとか愛ということで予定調和する生物なのではないかと思いたいんですね。これは釈迦に説法ですから、人口問題審議会でひとつ深くこの哲学は論じていただきたい。いや、本当にこれは重要な話だと思うんですね。
昨日の夜、NHKの番組を見てましたら、私は可愛いからペンギンが大好きなんですけど、ペンギンの生態というのをやってましてね。コウテイペンギンというのは、卵を1つしか抱かないんですね。しかも南極に冬になってやっていって、ものすごい苦労して育てる。他のペンギンは卵2つずつなんですね。これはある種の自然律なんだろうと思うんですけど、何千万年もかけて培った自然律。人間という生物は、その自然律を超えたんでしょうね。あるいは最初から自然律がなかったのか。何かよくわからない生物ですね、人間は。
いわゆる近代化というのをして、子供をつくる、つくらないというのが自由にできるんだという驕った考え方を持ったときから、人間は何か超えたんですね。 これは子供づくりばっかりじゃない。食べるものでもそうですね。ヘビは、例えば羊を飲み込むと、消化しきるまで半年ぐらい寝ているわけですよね。人間は腹一杯食べたら、今度は別のことをしたいわけですね。ついに他の人間をぶっ殺すというようなことまで考える。これは呪われた生物ですよね。
しかし、この生物はそういうことをしたために、自分で神の摂理を科学的に構築しなきゃいけないところへきているんだと思うんですね。つまり、本能を超えちゃったもんですから、自ら神の摂理を自分で論理的に構築しなきゃいけないんだろうと思います。それが2人なのか1人なのか。これはぜひ人口問題審議会にやっていただきたいと思います。
それから男性、女性の問題ですけど、したがって私は親孝行年金の類は、実はあまり賛成じゃないんです。男性、女性の話は、日本の社会は天照大神から始まってて、いま毛利元就を見ていても、女性がけっこう自由に戦略をやりますよね。 江戸の話になってくると潰されてるわけです。武家諸法度みたいなのをつくるから、女性の地位をめちゃくちゃに抑えたわけですね。体まで女性は小さくなっちゃったそうですけど。
しかし、下町とか農村では、やっぱり女性が優位なんですよね。長子相続なんていったって、女性相続をずっとやっているわけですからね。武家はやらなかった。その武家の非常に不自然な仕組みを明治以降、官庁とか会社に持ち込んだから変なことになっているんで。ちゃんと零細企業やファミリービジネスは、お母ちゃん中心で回っているわけですよ。あれは基本的に女系制ですよね。それは自然なんですね。
最近私は、そっちのほうにちょっと近づいたと思います。なぜかというと、私どもの世代が戦後教育なんですよね。戦後教育は民主化教育ということですけど、 まだ男性中心の考え方ですが、私どもの子供たちぐらいになってくると、もうちょっと上からそうですけど、いま30歳ぐらいがそうなんですが、小学校をまったく同じ条件で男女がやってますね。そうすると、比較的年が若いときの女性のほうが成熟してますから、「何々君」とか言って頭なんか叩かれて育ってるもんですからね。大学に来るまで、優等生はみんな女性ですからね。これは家庭に入っても力関係が違うんですよね。ですから、徐々に徐々にそうなる。
なった結果がどうなるかというと、会社に入って結婚するときに、一昔前、我々の世代までですと、上の方はそうですけど、男が結婚するというのは生活力ができてからの話ですよね。場合によっちゃ課長ぐらいになってから結婚する。そうすると、結婚相手に比べて、結婚相手がたまたま会社に勤めていても給料は倍ぐらいありますわね。だから、結婚したほうが生活が安定するというのが女性の考え方。いま、結婚というのはだいたい同級生で相手を見つけるか、同級生で見つけられなかった人は10年ぐらい過ごしちゃって30いくつになって、もう相手がいないと焦るわけですね。だから、非常に早く見つけてますよ。付き合い10年とか、そういう人。そうでないと、職場に入って隣にいる人とパッと結婚して。それができないと、知恵がついてからは結婚できないんですね。
いまの結婚している人たちを見ていると、男女の給料が同じなんですね。給料が同じのが結婚するとどういうことになるかというと、家庭を持つと、経済学で収穫低減の法則といいますけど、収穫激減の法則にぶつかるんですね。つまり、どこかで仕事を辞めなきゃならない。夫がまた、家を持ちたいなんてバカなことを言うと、茨城県まで行って家を持たなきゃならない。そうすると、もう昔のような生活はできなくて、気がつくと白いものが出て「新婚旅行、楽しかったわね」という感じ。
そういうことは先輩を見ていると、だいたい想像つきますからね。ですから、皆さんそういう結婚はしないで、自分の給料でどこか小さいアパートに入ってやっていると、不倫したって別に問題ないですしね。いろいろして楽しく暮らして。会社に「辞めろ」なんて言われたら、裁判所に訴えたら絶対に会社は負けますから、やれるわけですね。そういう社会になっている。
これは、おっしゃられた男性、女性の力は対等になってきている過渡期なんだと思うんです。私は、この先に、にも関わらずあなたは愛を求めないんですかということを言いたいんですね。愛に基づいて結婚し、愛に基づいて子供をつくるということに目覚めるゆとり。これを社会が用意する。それが私の自然律なんです。すみません、勝手なことを言いました。
宮澤会長
他にご質問ございましょうか。はい、どうぞ。

熊崎委員

簡単なことなんですが、私たちは職場では、働きながら結婚をして子供を生み育て働き続けるというのが当たり前という社会にしたいという気持ちを持っているわけなんですね。ところが、なかなかそれが実現ができない問題があります。 いま先生が非常に幅広い点で提言されました中に、「家庭と両立する仕事」とレジュメのところに書いてありました。
もちろん企業のあり方、地域でも社会でもそうなんですけども、私は先生がおっしゃっているのは社会という中にいわゆる行政だとか制度だとか、そういうものが包含されているかと思いますが、そういう日本の行政だとか制度のあり方についての視点で、私たちが望んでいるようなことが実現できないならば、どのようなものがあってどうしたらいいのかという点と、それからもう一つは、いま質問がありましたように、人口が非常に減少したと。少子化、高齢化社会だといっているのに、男性の痛みというのはどう感じているのかなと。よくわからないと。というのが。夕べ阿藤先生とお勉強会をしながら、論議が出たんです。
この論議といいますのは、私たちは、やっぱり家庭も仕事も育児も男女共通でやっていこうというものを持っているんですけども、共通というと、もちろん労働時間が入るんですね。この労働時間、日本の男性が最たる長時間労働と言われております。そういう労働時間について、どのような指摘をいろいろなところでしていらっしゃるのかなというような思いもしているわけなんですけど。先生のお答えの範囲でけっこうですが、お願いしたいと思います。

島田教授

ありがとうございます。家庭と仕事と両立する社会の中で、最も重要なのは私は女性がどうするというよりも男のほうなんだろうと思うんですね。男が自分の奥さんがそういうことをするということをオープンに認めて、助けて一緒にやっていくということなら、奥さんはできるわけですよね。男がそうじゃなきゃできないですね。スーパーウーマンならやるかもしれませんが。ですから、私は答えは男のほうにあると。よく「女性が」と言いますけど、まったくそうじゃないんで、決定権を握っているのは、女性が生きるも死ぬも全部男だと。そう私は思うんですね。
それからもう一つは、政府は割合進んでるんですね。同一労働同一賃金。それは、いろいろ問題はあるかもしれませんけど、民間に比べればはるかに進んでますね。私は、最大の問題は民間の企業社会だと思いますね。だから民間の企業社会で男がどう変わるか。これは決定的だと思うんですね。
それからもう一つは、私は比較的テレビにはまるほうで、『ふたりっこ』はずっとはまってて、1日2回観たりしているころもあったんですけど。あの中で将棋さしの夫婦と麗子ちゃんのほうとでありましたけど、なかなかあれは若いシナリオライターなのにいいことを書きましたですよね。あれは、いまおっしゃられた問題に対して2つのモデルを提起してるんですね。つまり、本当に対等に生きようねという実験が可能なのかどうかというのを香子ちゃんのほうはやっていると。麗子ちゃんのほうは、古いタイプの1回回帰したというモデルだと思いますけど。
私は、世の中これから2つに‥‥もちろん2つってはっきりしませんけど、分化していくのかなと思うんですね。例えばいまの若い女性たち、大学生とか、あるいは女子高生とか、いろいろな意見を聞きますけど、読んだりもしますが、みんな別にキャリアやりたいと思っているわけじゃないんですね。むしろそういう人は小数派みたいですね。むしろ若い人のほうが小数派みたいな印象を私は持ちます。じゃあ何をやりたいんだというと、ラクをしたいと。いい生活をしたいと思っているんですね。あんな変なソックス履いて遊んでて、いい生活できるかと思いますけど、そういう希望なんですね。これは、やっぱり世の中ですから、そうなんだろうと。
一方、今度男は、やっぱり俺が帰るまで家に居て飯を食べないで待ってろというタイプの男が大学生にたくさんいるんですよ、実は。いざとなるとそうなる。 ですから、それはそれで一緒になればいいじゃないかと私は思うんですね。世の中全部は変わらない。しかし、かなりの人たちが本当に対等にね。本当に同じ次元で自分で最適な仕事を選んでキャリアをつなげていく。キャリアって肩張って出世するという意味じゃなくて、人生のステージ、ステージで自分に適切な仕事をつかんで自分の人生を、あとから振り返ったらリグレッツは少しやったけれども、バットアヒーウッズセイというやつになるわけですね。そんな世の中をつくるんじゃないか。
だから、私は割とリラックスして見てましてですね。世の中、そういうふうに分化していく。そして、本当の対等で、いまおっしゃられたすべて実現できる夫婦。これは男が本気で奥さんをそうさせようと思えば、できないものはないと思うんですよ。男がへこめばですよ。ですから、男がその気でやれば、そういう夫婦というのも出てくるんじゃないか。奥さんが何物か持っていれば持っているほど、それを尊敬する男がおれば、できるんじゃないか。そういう夫婦も出てくるんじゃないか。ただ、そのモデルが日本中全体には絶対ならないだろうと。むしろ小数派かなという感じ。それでもいいんじゃないかなというのが私の感じでございます。

宮澤会長

はい、どうぞ。

福田委員

今日伺った中で、やはり私が一番面白かったのは、近代化することによって日本の女性はだんだんダメになっていく。その前のほうが、はるかに女性は権力を持っていた。これは、我々がよく使う言葉でいえば、旧中産階級と新中産階級ですね。旧中産階級、さっきお挙げになったような農家にしても、中小の商工業にしても、しゃもじの権を持っている、財布の権を持っている、それで子育てもやっている。たくさんの使用人の管理もして。その点も日本の女性の能力は、やっぱり抜群だったと思うんですね。
新中産階級になって、給与生活者というものができて、だいたい大正時代の中頃から、厳父慈母型から慈父賢母型になる。もう家庭の中に女性はいて、そしてそこで賢母として。父親のほうは外でさんざん苦労しますから、帰ったら「可愛い」と言っていれば、それでいい。しかし、そこへ移っていくうえの一番大きな転機は、日本の家族の基本的なイメージ、旧民法の家族法というのが下級武士の習慣を取り入れた。薩長の田舎侍が出てきたわけですから。武士の社会は、男の子さえ生んでおけばお家取り潰しにはならないけども、跡継ぎの男の子がいなければ、それで取り潰しになる社会ですからね。それが実態と非常なミスマッチをもっていままでやってきたわけですね。
この間、河合隼雄先生からここでご意見を伺ったんですけども。新中産階級というのがそういう武士的なものをどこに残したかというと、それはやっぱり企業が昔の藩なんですよ。日立の城下町等と言うように、大企業が全部藩であって、人間の人格全部を吸収して猛烈社員にしてしまう。河合先生に言わせれば、「男っていうのは本当に我慢のしどおしだ。自分なんかは幸いにして、あまり我慢もしないで所長にもなれましたけど」と冗談を言われたわけですね。
だから、さっき男の側に問題があるというのは、個人的な心だけの問題なのか、日本の企業のあり方。私は官庁も特にそう違うとは思えません。家庭生活では、まず猛烈社員に近い場合いくらでもあります。これがいったい直る見込みがあるのか。つまり、片一方で迫られている1つの難題に対応するためには、直らなければいけない。しかし、それに対して惰性は非常に強い。そのことは逆に言いますと、さっき会長が言われたような、政治はどっちの味方をしているかという問題でも、これで票を集めようとすれば、いままでの日本の構造でいえばサプライヤーの味方をしなければ票が集まらないと。そのことに対して独立にやっていけるかという問題につながると思うんです。
その点で言いまして、いったい個人の男の心がけの問題なのか、それに対する社会的な要因というものはいったどっちの方向を、この難題を目の前にして向いていくかと。このへんをちょっと。

島田教授

ありがとうございます。大変本質的な問題で。私の考えでは、いまおっしゃられた下級武士が構成した一種の官僚機構ですね。これは特に江戸時代に発達したと思うんです。前からありましたけど、非常に発達をした。これは脱藩ができないわけですね。ですから、我慢の連続だと。滅私奉公なんですね。これを企業社会へエートスをそのままトランスファントしたわけですね。移植をしてやってきた。それはもちろん一定の歴史的役割を果たしたから、私は歴史的には評価しているんです。してるんですが、比喩的にいうと官僚機構がある中で士農工商で士ですよね。かなりこれは人工的につくった仕掛けで、農工商はもっと自然な生活をしていた。こっちのほうは、だいたい女系ですよ。この農工商の、これはずっとそれこそ縄文のときから続いている日本の家族の伝統ですね。この農工商を不自然な士のと取って代わらせたほうがいいだろうということですね。
そういう意味でいくと、私は昔の女性がよかったともちょっと言えなくて、昔の女性も大変苦労しているんですよね。おかみさんというのは大変過重労働ですからね。苦労しているわけですけど、そうではなくて、いまの現代化した社会の中の特に民間企業。官庁もある程度そうなんですが。ただ、官庁ではキャリア女性はちゃんと能力を認められてますからね。民間は認めないんですから。キャリア女性の能力を基本的には認めないんですからね。ですから、官庁のほうがはるかにそこは進んでいると私は思いますけども。しかし、母子家庭があることは事実ですね。これはやっぱり農工商のもっと自然な家族形態を人工的につくった近代組織の中へ埋め込んでいく作業を、これから力のある女性がやらなきゃいけない。私は女性たちにも、もうちょっとしっかりしろと言いたいんですよ。たくさん女性を見てますんですけど、若い女性は3年まで仕事をするんですね。しかし、3年目に嫌気がさすんですよ。これは本当にわからない。ほとんど法則ですね。大学出て組織に入りますでしょう。そうすると、女性はやたらに張り切るんですよ。「私がこの部を担ってるの」なんて、冗談言うなというんですけど、本気でそうなってるんですね。部長さんが可愛がってくれるから、そうだと思ってるんですけど。同じ年に入った男の子に聞くと「ええ、まあ」なんて言っているんですね。男の子は5年目に留学するんですけど、女性は何するというと辞めるというんです。つまらなくなったと。つまらなくなったって、組織ってものは最初からそんな面白いもんじゃないですよ。40年先を見晴らすから、いまは我慢、我慢、我慢でいくわけですわ。それを部長が甘やかすものだから、課長が甘やかすものだから、1〜2年で得意になるんですね。そしてルーチンばっかりだということに気が付くと、つまらなくなって「辞めようか」。冗談じゃない。こんなことで人工社会をもっと自然な家族に変えられるわけがない。
私は本当のことを言うと、私は勝手に自分のことをノーマライゼーションと言っているんですけど、社会というのは老若男女で成り立っているわけですね。どうして企業社会だけ白無垢の男を雇ってですね。そいつらが銘柄大学の卒業生ですよ。こいつらにとって日本の企業社会というのは、とっても暮らしやすいんですね。周囲が全部サポートします。しかし、仮に銘柄でなかった、あるいは学歴が低かった、あるいは年をとっていた、あるいは女性だった。気持ちいいかって、気持ちいいはずがないんですよね。これは完全に侍社会ですから。選ばれた裃着た侍だけが所有して気持ちよく暮らしてるんですからね。こんなもの根こそぎひっくり返してやれと私は思うんですよ。ただ、3年で飽きちゃうような女性だったら、ひっくり返せませんよ。だから、もっと女性が本当のパワーをね。おかみさんがしゃもじの権を握ったように、厚生省の中をおかみさんが全部ひっくり返して、しゃもじの権で仕切り直すと。再構築だと。こうするといいんじゃないかと。それは、昔の農工商の過重労働の社会じゃありませんよ。現代でそれをやるわけですから。それはできませんですかね。これは戦いですよね。

宮武委員

この種のシステムの問題は、常に政府のほうは国民負担率で50%以内という、こういう制約がつきますですね。島田先生は、それはやっぱり必要であるとお考えですか。

島田教授

負担率50%ですか。

宮武委員

50%以内というのはですね。国民負担率を1つの重石にして、そういう縛りの中で改革をしようとしますね。それを先生は必要であるとお思いになりますか。

島田教授

私は今日申し上げたような改革が可能ならば、これはあとで藤島さんがおっしゃってくださると思いますけど、50%ぐらいいくんだろうと思うんです。このぐらいのことをしないと、いかないですね。本当に7割とか、そういう世界になっちゃうと思いますですね。そうすると、やっぱりこれは衰退すると思います。
厚生省の方は、7割っていったって年配の方が消費されているんだから同じじゃないかという議論をなさる人もいますけど、やっぱり経済審議会が出した数字で73%という数字があるんですけど、あれは会社へ行って500万円の給料をもらって帰ってきたとき、給料袋を開けるととんでもないことになるんですよね。私が500万円稼いでワイフに「俺、500万プレーヤーだぞ」って言ったら、ワイフは袋開けて、「あんた何を言ってるの、どこかに女つくったの」と言うに決まってますよ。だって136万円しか入ってないんですからね。それじゃ、やる気がなくなりますよ。いや、つくってるんならやる気あるでしょうけど、つくってなくて136万円じゃ、ちっとも面白くないでしょう。だから、それはやっぱりインセンティブというものがなくなりますよね。
それから、企業も負担しますから投資インセンティブがうんと落ちちゃうと思うんです。これはやっぱり自滅社会ですね。だから、私はやっぱり5割ぐらいにはどうしても抑えなきゃいけない。そうすると、医療制度から社会保障から介護から税金から全部変えなきゃいけない。これはもう抜本改革ですね。

宮澤会長

ということで、ここから議論が始まりそうなんですけど。どうも残念でございますが、また後ほど議論がございましたらお聞きすることにいたしまして。
通産省の藤島安之審議官から『我が国の経済活力を維持していくための課題と対応策』、これについてご報告をお願いしたいと思います。どうもお待たせして恐縮です。よろしくお願いします。

藤島審議官

ただいまご紹介いただきました、通産省の藤島でございます。島田先生のお話が面白いので続けていただきたかったんですけれども、せっかくお呼びいただきましたので、一言ご報告をさせていただきたいと思います。
産業構造審議会というのがございますが、この審議会と同じように、通産省の政策を提言すると、こういうことで。70年代には、知識集約型産業の育成というような提言もございましたし、一昨年では日本経済の再建のシナリオの提言ということを橋本総理‥‥当時の通産大臣でございますが、ご指導のもとにいただいているわけです。
今日ご報告いたしますのは、昨年の11月にこの産構審の基本問題小委員会で取りまとめたものをご報告させていただきたいと思います。本格的な高齢化社会を迎えまして、我が国の経済を活力あるものとするための施策の方向ということでございます。資料に基づきまして1ページからご説明させいていただきたいと思います。
実はこちらにいらっしゃる島田先生も、この審議会の委員でございますし、先ほどお帰りになりましたけども、八代先生も委員でございまして。したがいまして、いま島田先生がお話になった面白くない真面目なところの部分はほとんど入っていると、こういうことかと思います。なるべく重複を避けまして、それ以外にもいろいろいいご提言をいただいておりますので、ご紹介をさせていただきたいと思います。
問題点は私ども、21世紀の高齢化社会を迎えまして2つだと考えております。1つは、産業の空洞化の問題。第2が先程来話がございました、本格的な高齢化社会の到来でございます。空洞化の問題については、もうすでにご案内のとおりだと思いますけれども、海外生産比率というのを取ってみますと、日本の企業が国内と海外の比率がどのくらいになるかと。現在10%でございます。ドイツは20%、アメリカは25%ということでございますから、だんだん海外での生産が増えていくというのが当然の流れかと思います。問題は、その場合におけるいろいろな問題をどう克服してくかと、こういうことかと思います。
昨年来、私ども約200社の企業を調査いたしました。大企業を中心に調査いたしました。200社で、だいたい海外進出の80%をカバーしておりますので、海外進出を知るには、だいたいこの結果でよろしいかと思います。個別に説明すると時間がかかりますので、エッセンスだけ申し上げますと、3つのタイプに分けて考えております。
1ページ目にありますのは、海外進出をしている企業のうちの最適地生産型。家電、電子部品、機械産業など。こうした産業は輸送コストも少ないし、関税障壁もございませんので、どんどん海外進出をしております。特に汎用品につきましては、もうほとんど海外で生産するという状況になっております。
最近、円のレートとの関係でどういうことが言えるかと。円安になっているじゃないか。それはどうだろうかと、こういうお話がございますが。この表はちょっと見にくいんでございますけれども、下の表の下を見ていただきますと、下から2番目に、いまだいたい真ん中が想定レート104円。それが20円円安になるとどういうことになるかというのが下から2番目。これで一番左が、円安になったら国内に戻ってくるというのが9.1%。国内のそのままでいくのが72.7%と。やっぱり海外に出ていくというのが18.2%と。9.1%と18.2%と、こういうのを見てみますと、120円台ではまだまだ海外に行く流れは変わらないと。その下を見ていただきますと、130円台になりますと、どうも国内のほうに戻ってきそうだということで、130円ぐらいがボーダーラインかなという感じがしております。
2ページ目にまいりまして、高付加価値製品、デジタル・ビデオ、デジタル・ビデオ・ディスク等は、これはまだ国際競争力がございまして、国内生産が主流でございます。こうした産業、家電とかそういう産業について政策的課題を聞いてみますと、国内から出ていく理由としては、国内の高コスト構造を直してくれと。こういうのが多いわけでございます。
例えば、内航海運で、ヨーロッパから日本に運ぶ運賃と、横浜から兵庫に運ぶ運賃と同じでは、国内の工場立地をする気持ちにはならないと。海外に立地して、その海外からよそのアメリカなら、ヨーロッパに立地してアメリカに持っていく、日本に持ってくる、そのほうが安いんじゃないかと。そういったようなことを言っております。高コスト構造を言っております。
次に3ページになりまして、装置型の産業の例をご紹介申し上げます。素材産業でいきますと、化学とか鉄鋼、こういうのがございます。こういう産業はすでに巨大な生産設備をつくりあげております。したがって大事なことは、国際競争の中で既存設備を活用してどこまで踏みとどめていかれるかと。こういうのが課題になっているわけでございます。だいたい生産工場、工場のところではリストラは終わっておりまして、いまやホワイトカラーを中心とした間接部門のコストの低減が課題になっているわけでございます。
こうした企業に政策課題を聞きますと、高コスト構造の是正、そういったことはもちろんでございましたが、先ほど島田先生からお話がございましたが、柔軟な雇用制度、特にホワイトカラーのリストラ、移動を自由にしてくれ。そういったようなこととか、あるいは会社の経営をいろいろなかたちで柔軟化したい。持ち株会社を認めてほしいとか、会社の分割の規定をいろいろ直してほしいとか、そういった会社制度の根幹に関わるような、いろいろな規制を直してほしいと、こういったような要望が多いわけでございます。
それから、第3類型として消費地生産型の産業でございますが。これは自動車、自動車部品。だいたいこれは消費地でその消費に見合った生産を行うと、こういうことでございます。自動車なんか海外生産が行われておりますけれども、国内の産業はそれなりにとどまると、こういうことかと思います。こうした産業につきましては、まだまだ頑張るために研究開発基盤の維持とか、そういったもの、そういうものを要望しておりますし、それから将来の医療年金保険料、そういった間接人件費の増加がこれからは負担になってくる。これが大変だから何とかしてくれと、こういった要望が多く寄せられているわけでございます。
以上、3類型で見ましたけど、全体で見ますと、雇用につきましては4ページの四角の中にございますが、今後5年間で124万人ぐらい製造業は雇用を減らす予定だと答えております。貿易収支は出入りで3.7兆円ほど黒字の縮小、ということは逆輸入が増えると、こういう答えが出ております。
この雇用の124万人という数字の意味を考えてみたいと思いますけれども。円レートとの関係でございましたが、先ほど104円という話がございましたが、これは皆さん5年後のレートを100円でアンケートの結果をお答えいただいたわけですが、120円になったとしても117万人減ということで、ほとんど変わらないと。言い換えますと、海外進出はもうすでに計画に折り込み済みで、これはもう変えないと、こういうことだと思います。新規の海外進出はいまちょっと止まっておりますけれども、これまで決めたことはそれを実行していくと。そういった数字がこれに現れているのではなかろうかと思うわけであります。
それから120万人。これはどの程度の規模なのかと、こういうことでございますけれども。私ども、2年前にそういう予測をしたときには、64万人という数字でございました。当時103円のレート。そういったことで、それが倍のスピードになっているということで、海外進出が加速化されているなと、こう思われるわけでございます。
それからアメリカとの比較でございますが、アメリカも1980年代の前半に製造業の空洞化ということで大変悩んだわけでございますが、そのときの製造業の雇用の減が106万人と、こういうことでございました。アメリカの経済は私どもの日本の経済の倍でございますから、日本はこの倍のスピードでこの良質な雇用である製造業の雇用が失われるおそれがあると、こういうふうな結果になっております。
5ページにまいりまして、雇用の質の問題を申し上げますと、120万人ほど減るわけでございますが、91年から95年にすでに製造業では50万人の減がございました。この間、非製造業のうち建設業は100万人増えていると、こういうことで。これは公共事業を積みました結果でございます。そうしますと、製造業で減った分を建設業でカバーしている。だから雇用問題は深刻になっていないけれども、質の問題でいかがなものかと、こういう議論があるわけでございます。
それから、アメリカの雇用の中身と比較しまして、アメリカでは情報産業の雇用者が伸びているのに関わらず、日本は情報関係の産業構造の転換が遅れて減っていると、こういうことがわかるわけでございます。したがいまして、今後このまま構造改革が行われない場合には、質の高い雇用が失われるおそれが強いと、こういうことでございます。
次に6ページにまいりまして。以上が空洞化の問題です。これは今後5年ぐらいを頭に置いた話かと思いますが、もう少し10年、15年、20年先を展望した問題としましては、本格的な高齢化社会の到来に対する対応ということになるわけでございます。
少子高齢化社会がまいりますと、これはご案内のように労働供給量が減る。それから、高齢者人口が減りますと貯蓄率が減少すると、こういうようなことで経済成長への制約がいろいろ出てくると、こういうことでございます。 それから、先程来議論がありますように社会保障費が増えますと、さらに貯蓄率も減ります。企業の投資も減っていくと、こういうことで、その経済活力の阻害要因が拡大していくと、こう心配されるわけでございます。
具体的に人口の面で見てみますと、生産年齢人口、これは15歳から64歳の人口をいうわけでございますが、これがどの程度になるかということでございますが、厚生省の低位推計、今日見ますと改訂版が出ているようでございますが。これは中位推計にあたるわけですが、2025年、現在より1,560万人減ると。このうち労働力人口、労働に参加している人々の人口でございますが、これが現在より550万人減ると、こう見通されるわけでございます。数字が間違っていたら直していただきたいんですが、2025年に全体が6,180万人、マイナスが550万人と、こういうことでございます。これは少し高齢者・女性の労働力率の引き上げを見込んだ数字でございます。
これだけで550万人、労働力人口が減りますと、だいたい経済成長率に直しまして0.5%ぐらいマイナス要因となると、こういうことであります。貯蓄率の低下は13.2%から8.3%ぐらいに推計されると、こういうふうなことでございます。
それから、公的負担の上昇がどの程度になるかと、こういうことでございますが。7ページを見ていただきたいんですが。横長のほうのページを見ていただきたいんですが。現在の企業が生み出している付加価値額は、左側を見ていただきますと379兆円。1994年度でございますが。そのうち、企業が払っております保険料、労使合計で43兆円という数字になっております。これを左の上の経済成長率を前提としまして、95年までは2.3%、2000年までは2.6%、2010年までは1.8%、2025年は0.8%と、こうなりますと、それを単純に伸ばして、ただし保険料率につきましてはすでに厚生省で決められております負担を増やすという前提で26%から63%増やすというふうにしますと、真ん中の2025年の数字になるわけでございます。
付加価値額は全体として587兆円になるわけでございますが、保険料も増えて152兆円と、こういう数字になります。しかし、現在と同じように保険料を伸ばしていくと、付加価値の中にぴったり企業の全体の負担に、付加価値に入るように伸ばしていきますと92兆円と、こういうことになるわけです。そうしますと60兆円が高齢化のために超過してくると。この超過分をどうしたらいいかと。こういう問題になってくるわけでございます。
右の下のほうに保険料増大の対応の方法として3つあるわけですけども、人件費を圧縮すればいいと。すると従業員の手取り賃金の伸びが大幅に減少すると。 こういう話で、島田先生がおっしゃいましたように、労働意欲の問題につながるわけでございます。営業利益の圧縮をすればどうなるかというと、企業の期待収益率が低下して、投資資金が海外にいくと。空洞化の促進と、こうなるわけでございます。保険料の圧縮ということは、給付水準の大幅な引き下げが必要だと、こういうふうに論理的になるんではなかろうかと思うわけであります。それぞれ単独では困難で、これをどうするかという問題でございます。
それから日本経済の2025年の姿をいまのままの経済の状況が続いたとしてみたのが、9ページの表でございます。先ほど島田先生からハードランディングのシナリオと、こう言われたわけですが、これが明確に表れているわけでございます。 こうした2025年についての予測はいくつか、経済審議会でも出されておりますし、大和総研でも出されておりますが、だいたい同じような傾向を示しております。経済成長率は大幅に鈍化をしていくということで、2.3%、2.6%、1.8%、0.8%と、こうなっております。国民負担率が36.7%から60%に上がると。これは財政の赤字分を考慮しますと括弧の中で、2025年は92.4%だと。大変ミズラブルな数字になるわけであります。
経常収支も2000年あたりから赤字に入ると。こういうことであります。それから勤労者の1人の手取り所得も2010年あたりからだんだん減っていくと、こういうシナリオになるわけであります。実際はこのシナリオが実現することはなくて、おそらく円安とかそういうことで強制的な調整が行われるだろうと、こういうふうに。強制的な日本人の生活水準の引き下げというのが行われるんだろうと思われます。
それでは10ページにまいりまして、この産構審の答申でそういう姿を避けるために何をなすべきかという提言をご紹介いたしますと、3つございまして、1つは新規産業の創出、それからあとにも出てまいりますが高コスト構造の是正、それから第3番目に財政構造改革、社会保障制度改革、こういう3つの分野の提言がなされておるわけでございます。
最初に新規産業の育成ということでございますが。アメリカの例を見てみますと、80年代からベンチャー企業を中心にして新しい産業が起きております。特に中小企業で1,900万人の新しい雇用が出ておるわけでございます。そういう例を見ながら、今後我が国で成長が期待される分野14を選び出しまして、その問題点の摘出をいたしております。情報・通信、あるいはバイオ、新製造技術、環境関連、そうしたものについての現状、将来予測、問題点、そうしたものを分析をして、ここには書いておりませんけども試算の数字がございます。14分野全部合わせますと、現在180兆円の売上。それを350兆円増やして530兆円にしようと。雇用では現在890万人。それを1,550万人、650万人ほど増やそうと、こういう。これは2010年まででございます。今後13年かけてやろうと。非常に大胆な提言をいただいております。
こういったことを実現するためには、大変難しい課題がいっぱいあるわけでございますが。かつて通産省がやりましたように、特定の分野に補助金を投入するとか、そういったことは取りませんで、横割り的な政策を用意すると。こういった新しい分野はまさに民が力を発揮して、官はその環境整備に徹すると。こういう考え方を取るべきだといって、いくつかの提言をいただいております。
1つは、技術の芽を育てるということで、産学官の連携。そういったことをやるべきだと、こういう提言でございます。これは科学技術基本法ができまして、今後5年間、17兆円の技術関係の投資をすることになっておりますけれども、それはお金の面だけじゃなくて、国立大学の先生方が民間企業と研究を一緒にできる、民間企業の役員になってもいいとか、そういった諸々のソフト面での規制緩和をして、国立大学、私立大学が今後のこういう技術の芽の場になると。こういうふうなことを期待しているわけでございます。
それから、人材の育成、人材移動の円滑化面でいろいろなことも考えていくべきだと。先ほど有料職業紹介事業の自由化と。この4月1日から行われておりますけれども、そういう面とか、いろいろな提言をいただいております。
それからお金の面で、単にお金を貸すということじゃなくてリスクマネーということでございますが、そういったリスクマネーの供給の円滑化。ベンチャーキャピタル、ストックオブション、エンゼル税制等々、アメリカのベンチャー企業の育成の施策の導入が提言されているわけであります。
それから、第2の柱。11ページにまいりまして第2の柱として、競争力のある事業環境の整備。産業立地競争力を高めるということだと思いますが。優良な企業が海外に出ていかない。あるいは、先ほど外国人労働者の話がございましたが、外国の優良な企業が日本に来てもらうと。これも大変大切なことだと思います。 そういった意味で、魅力のある事業環境をつくり出していくという考え方が大切だと。そのためには、第一に高コスト構造の是正を図ると、こういうことであります。特に経済インフラといわれています物流、情報通信、金融、エネルギー、そういったものについての規制緩和、あるいは社会資本の整備、そういったものが提言されているわけでございます。
それから制度的制約の除去として、諸々の制度を変えるべきだという提言をいただいております。雇用労働環境の話は先ほどのとおりでございますが、税のお話、それから金融市場のお話、あるいは企業組織制度の話、持ち株会社の解禁といったようなことでございます。これはいまの国会に提案されているところでございます。その他、地域産業の集積の活性化というような提言もいただいておるわけでございます。
最後に第3番目の柱として、公的な負担のあり方と、こういうことで。まず財政面のあり方。これは財政構造改革が進んでおりますけれども、全体の規模の圧縮は当然でございますが、(1)の3番目に書いてありますように、財政構造改革と経済構造改革との進捗の整合的なタイミング、スピードでの推進と。こういうことが大切だと私どもは申し上げて。全体がただ縮めばいいんじゃなくて、メリハリのきいた政策をお願いするべきだと、こういう提言をいただいております。
特に公共投資につきましては、そういうふうな全体の圧縮と同時に、21世紀の公共投資というのは国と地方の役割分担を決め、国は全体の波及効果があるもの、国際空港、重要港湾、そういったものに限定し、その他の公共投資は各地域自らが選択する、そういったふうに早くもっていくべきだという提言をいただいておるわけであります。
それから13ページにまいりまして、社会保障制度の見直しでございます。これも先ほど島田先生からいろいろお話がございました。2番目と4番目の話はあったかと思います。2番目の話が基礎年金を中心として2階建ては民間の私的年金へのシフトを図るべきだとか。あるいは4番目は65歳の支給を67歳に上げるとか、そういったものも提言いただいておりますが、その他に制度の運営改善の効率化、徴収・給付等の事務のコストの低減化。税務署で取ったらどうかとか、そういったことを言っておるわけであります。それから老人医療費の自己負担の引き上げ等も提言されているわけであります。
そういった諸々の経済構造改革を実施すると、これは大変痛みを伴うものではございますが、こういった前提で先ほどハードランディングのシナリオをソフトランディングに変えられるかどうかと。やってみたらどうかということで試算をしてみますと、14ページでございます。
結果を申し上げます前に、どの程度のことを試算の前提として盛り込んだかということでございますが。経済構造改革で新規事業の創出等いろいろなことをやって、良質な雇用環境を整えて生産性を上げるということが1つ。それから2番目に、社会保障制度の改革ということで、年金給付費を約4割削減をすると、こういったこと。医療については、医療費を20%削減する、薬剤費を節減する、患者の自己負担比率を引き上げると、こういったようなことをやるわけであります。 それから財政改革も歳出を効率化していくと。こういった諸々の改革を前提にして弾きますと、経済成長率は下がりますけれども、2025年に何とか2%台にもっていけるのではないかと。国民負担率も45%、50%を切った状況になるのではないかと。ただ、勤労者所得も少しずつではありますけども、2010年を超えても伸びていく。そういった姿が描けると、こういうことでございます。
こうした報告を昨年の11月にいただいたわけでございますけれども、それを途中経過として10月の末に橋本総理のところに我が省の幹部が報告に参りました。それが総理の頭に入っていたのか、橋本第2次内閣が政権が発足すると同時に佐藤通産大臣を橋本総理はお呼びになりまして、従来こうしたことは経済企画庁が中心になって政府の経済構造改革プログラムを取りまとめるのだけれども、もう時間がないと。この報告は1つの方向として正しいと。とにかく急げということで、総理大臣からの指示ということで、経済構造改革プログラムを橋本内閣の5大改革の1つとして取りまとめるように指示がございました。
5大改革というのは、財政構造改革、それから行政改革、社会保障改革、金融制度改革、それに経済構造改革でございます。そのあと教育改革が入りまして、現在は6大改革ということになっておるわけでございますが、当時は5大改革でございました。
それで、私ども各省にいろいろな規制緩和、公共事業の重点化、いろいろなことをこの答申に盛り込まれたことをご説明して、緊急に取り上げるべく政策を経済構造改革プログラムということで12月17日にまとめて閣議決定をさせていただいております。
したがいまして、社会保障制度改革とか、そういうところは全部盛り込めませんでしたけれども、その前のものの規制緩和だとか、高コスト構造の是正とか、そういったものは7〜8割方、私どもは盛り込めたと思っております。法律の数にしますと20数本がこの国会に提案されておりますし、改善項目500項目を超える項目がございます。従来、政府の改革の取り組みは遅いと言われておりますが、私どもとしてはそうとうのものを盛り込めたと考えておりまして、この5月の半ばにはアクションプログラムをもう一度つくりたいと、こう考えております。
物流、これは物流施策大綱というのをつくりまして、建設省、通産省、運輸省が中心になって、先ほど申し上げたことを実行していくということでございますし、エネルギーについても今後のコスト削減をやる方向を大胆な提言をすべく、いま検討中でございます。情報通信についても盛り込みたいと考えておりますし、金融についても大蔵省のほうで検討中と、こういう状況でござます。
いろいろ大きな問題があるわけでございますし、困難な問題もございます。痛みの伴う問題もございまいして、内航海運のカルテルを3〜5年後に廃止すると、こういうのを運輸省が決意しておりますけども、大変痛みを伴うもので、こういうようなものもそういうのに配慮しながら、なるべく早く変更していきたいと、こう考えておる次第でございます。
どうもありがとうございました。

宮澤会長

どうもありがとうございました。それでは、どうぞ。

宮武委員

社会保障のところに限ってご質問しますが。1つはこの基礎年金の問題ですが、報酬部分をやめちゃうというわけですが、これはもちろん公務員の、要するに共済年金も含めてやられているという、そういう計算の方法ですか。
それからもう一つは、削るほうは非常に見事に具体例が出てますけども、スクラップばっかりして、ビルドのほうで、それじゃ高齢者や女性の就労を円滑化するということも具体的に何があるのかですね。育児そのものも出産そのものに対する援助についてもですね。例えば保育園をこういうかたちにしたいとか、高齢者の雇用の拡大はどうしたいのか、まったくないわけでしょう。こういうのを見ても元気が出ませんね。その点をお教えください。

藤島審議官

共済年金のほうは計算上公務員のほうも移ると、こういうふうな計算になっ ております。
それから、女性の労働力の問題、あるいは高齢者の問題、これも議論いただいて、いろいろな提案をさせていただいております。しかし、先程来、島田先生のところでお話がありましたように、これはなかなか難しい問題で、通産省のほうであまり得意としていないところなものですから、はっきり言って外にここまでやってくれというところまでは、いまいっておりませんが、おっしゃいましたように高齢者の問題、女性の問題、これは今後一所懸命取り組まなきゃいかん、そういう問題だと思っています。

阿藤委員

経済企画庁の経済見通し、あるいは、産業構造審議会の見通しにしても、だいたい2025年というターゲットの年次があって、そのへんが高齢化のピークを迎えると書いてあります。しかしながら例えば今回の人口推計ですと、そこはピークというよりも一息ついて、さらにそのあと、いわゆる2040年代、第2次ベビーブーマーが70代になる時代に、3人に1人が高齢者というような社会がくるということになりますね。
つまり、人口高齢化を考える限りは、2025年で別に止まるわけではなくて、もうちょっと先にもっと大変な時代がくるということです。そこまでこのような経済見通しを延長していった場合にどうなるのか、そういうことをそもそも経済あるいは産業構造の面で考えることができるのかどうか。考えるとすると、例えばここでは国民負担率が48%で止まってますけども、その場合に単純に延長してももっと上がってしまうんじゃないかと当然想定されるんですけど、その点はいかがですか。

藤島審議官

最初に2025年がどうしてターゲットになるんだろうかと。これは経済審議会も他のところも、だいたい高齢者のピークの時代が来る、そこを射程に入れてこれまでやったことのない予測を試みてみようということで、だいたい同じようなコンセンサスでやったんだと思います。2020年のものもあったかと思いますけども。2025年を超えてといいますと、不確定要因がものすごく多いわけですよね。 そのときの日本がどうなっているかというのを。まずとりあえず2025年までやってみて、それからもう少しご議論いただいてから考えたほうがいいんじゃないかなという気がいたします。エネルギーのところは2030年を射程においてやっているのもあるんですけども、これもどの程度確度の高いものかといわれると、政策の方向を議論するにはいいんですけれども、数字そのものがそこまで意味があるかどうかは、ちょっとまだそこまで熟していないかと思いますけれども。

宮澤会長

他にございましょうか。
これはご検討いただきたい点という意味で申し上げるんですが。例えば、この10ページ以下の取り組みの項目についての相互なコンシテンシがどうなっているのか。例えば高付加価値型産業の創出14分野について、これで例えばサービス分野がかなり多いわけですね。そうすると、物的産業とサービス産業の構成はどうなるか。もしサービス産業が多くなるとすると、付加価値率が高い産業ですから、労働の賃金、その次の高コスト構造のほうへ響いてくる。そうすると、高コスト構造で特に人件費については、どういう考え方を持っておるのか。労働コストになりますと、いまお話がございました、これから高齢者社会で高齢者雇用、女子労働力の位置づけが重要になってまいりますが、それがどういうかたちで、先ほどの一番最後の論点と関連しているのか。
1つ1つを見るともっともと思うんですが、全体の横のつながり、整合性という点では、どこまで検討されて、これから検討する点であるか。そのへんの整理が、もしできておったら簡単に。

藤島審議官

産業構造の変化自身については、先ほど申し上げた数字はありますけども、具体的に整合性のあるところまでは、まだやっておりません。これは今後の課題になろうかと思います。
賃金とかそういうのは、だいたいマクロモデルでやっておりますので、経済成長と合わせてやってまして、それを。

宮澤会長

マクロモデルと産業構造モデルは、どっちを。

藤島審議官

だから、それを各産業にどう分解しているかというのは、そこまではまだやっていないと、こういう。もしよろしければ、またあとで資料でもお届けさせていただきます。

宮澤会長

資料追加で、こういう点はぜひほしいという点がございましたら。ございましょうか。では、いまの点、お願いしたいと思います。
島田先生、何かコメントございますか。

島田教授

まさに藤島審議官がおっしゃられたように、このままの構造と経済政策のシステムで推移すると、やっぱりこれはほとんどマンガじゃないかなというような印象なんですけど、マンガじゃないんですね、これ。やっぱりこうなる危険は十分にあるんですね。これはやっぱり破滅なんですね。
さっきも藤島審議官がおっしゃられたように、破滅する前に多分、内生変数と我々は呼んでますが、市場で決まる変数が勝手に動いていくと思いますね。ですから、例えばこんなに赤字が出たら、極端な円安になるでしょうし。そして、こんな赤字が出るということはサプライサイドが弱っているわけですから、生産性も伸びないわけですから、そうすると物価が非常に上がってくる。円安になれば、もっと物価が上がってくるということですから、急速に実質所得が減っていっちゃうんですね。だから、こんなに赤字にはならないでしょうし。そういう世界になりますと、財政赤字もですね。実はいま財政赤字は人体に例えるとガンみたいなんですけど、ものすごいインフレになった社会というのは体中水膨れになりますから、ガンが目立たなくなるんですね。それで破滅的ですけど、まあいいやという感じの。
そうなると三等国ですね、戦前の言い方でいえば。三等国になると、実は輸出競争力が出てくるんですよ。ですから、イギリスがそうでございましたね。イギリスは19世紀、あんなに立派な国だったのがあそこまで落っこちて、北海に助けられましたが、けっこう立ち直る。
アメリカは日本に比べると為替レートが3分の1になったわけですよね。実質賃金も落ちてますから、明らかに衰退していますよ。いまアメリカがいいというけど、一部マクロ的にいいんであって、中産階級以下の人たちは、もう第三世界かと言われるほど悲惨な生活ですからね。しかも健康保険がないんですから、三千何百万人。あれは失敗ですよ、あのケースは。ですから、あまり過大評価しちゃいけないと思いますね。
そうなれば、日本もバウンドするんですよ。リバウンドするんですね。だけど、私は、そんなことになったら戦後これだけ我々頑張ってきた、あるいは明治維新以来頑張ってきた我々の努力は何だったのかと。それはぜひ全国民に国民投票したいと思うんですね。そして、その国民が「いいじゃない、それで」っていうんだったら、もう勝手にしろと。政策も何もありません。勝手にやってくれ。それはもう人間性というものの尊厳を失った人の反応ですよね。やっぱり「やろう!」ということでなきゃいかん。
となると、さっき申し上げたように、全部社会保障の根底から変えなきゃいけない。そうすればちゃんとやっていけると。そういうギリギリのところへきたと思います。どうも勝手なことを言いまして。

宮澤会長

岡崎先生、どうぞ。

岡崎専門委員

もう時間がないですけど、いまのこの予測でいきますと、ここで問題にしている少子化というのはどっちへいくのか。僕の感じでは少子化のほうも破滅、子供を生まなくなるということを考えていいんですか。おそらく島田先生のほうのお答えになると思うんですけど。出生率はどうなるかという。そういう状態に。社会保障もどんどん切り詰めていくといったのは、少子化の対策も切り詰めるということを意味するのでしょうか。

藤島審議官

私は事務的にご答弁させていただきますと、厚生省の推計を使って我々はやっておりますので、その推計がどうなるかというところまでは議論しておりません。

島田教授

これは推計の範囲内なんですよね。

藤島審議官

そうです。厚生省の推計も、けっこうきつい推計なんですよね、あれ。

岡崎専門委員

きついけど、まだもっときつくなるという恐れがありますね。もしこういう経済状況‥‥。

島田教授

これがフィードバックしてきて、もっと悪くなるという可能性はありますね。

岡崎専門委員

私はそういう感じがするから、これは大変なことですね。

宮澤会長

いつも、この会議は楽しくない話のほうがどうしても。何とか元気をつけようとしておりますけれども。今日のお話をテコとして、なるべく我々も元気よい議論をしたいと思います。どうもありがとうございました。
次回でございますが、4月24日に開催いたしまして、2つの報告。1つは国土開発の観点から西藤冲先生に。それからもう一つは、高齢者の社会参加の観点から喜多村治雄先生にお話を伺う予定になっております。皆様、よろしくお願いいたします。
本日はこれで終わりといたします。どうもありがとうございました。

問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
   担 当 真鍋(内2250)、齋藤(内2931)
   電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
       (直)03−3595−2159

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