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平成12年11月21日(火)

「介護福祉士試験改善検討会報告書」について

 厚生省においては、介護サービスの中核を担う介護福祉士の資質の一層の向上を図る観点から、介護福祉士養成施設における教育課程を見直し、その充実を図ったところであり、平成12年4月から、新しい教育課程を実施したところです。
 これを受けて、国家試験についても、平成12年9月には、「介護福祉士試験改善検討会」を開催し、介護福祉士養成施設の教育課程の見直し・充実に対応した介護福祉士試験筆記試験の内容の改善について検討を行ってきたところですが、今般、その検討結果がとりまとめられ、報告がなされましたので、情報提供いたします。

(報告書の概要)

1 介護福祉士試験筆記試験の内容改善

 (1) 試験科目名

○ 介護福祉士養成施設の教育課程の改正に対応した試験科目名の変更
 (2) 出題数及び科目別出題数
○ 出題数の増加(100問 → 120問)
 (3) 出題形式
○ 事例問題の導入
 (4) 試験時間
○ 総試験時間の増加(170分 → 210分)
 (5) 適 用
○ 平成14年1月の第14回試験から適用
2 今後の検討課題
○ 合否基準の見直し
○ 介護福祉士試験出題基準の作成及び公表
○ 試験問題のプール制の導入

(参考)介護福祉士の資格取得方法は、大別して次の2つの方法がある。

(1) 介護福祉士国家試験に合格する方法(受験資格:介護の実務経験3年以上等)
(2) 介護福祉士養成施設を卒業する方法


(問合わせ先)
厚生省社会・援護局施設人材課
担当者:金子、中村
電 話:内 線 2847、2848
    直 通 03-3595-2617


介護福祉士試験改善検討会報告書

平成12年11月15日
介護福祉士試験改善検討会

1 はじめに

 介護福祉士は、昭和62年5月の社会福祉士及び介護福祉士法の制定により、国家資格として創設され、これまでに約21万人が資格を取得し、今や介護業務の中核的存在となっている。
 介護福祉士の資格取得方法は、大別すれば、養成施設において、必要な知識、技能を修得する場合と、3年以上の実務経験を要件として、国家試験である介護福祉士試験に合格する場合とに分けられる。
 このうち、国家試験については、平成元年以来12回実施され、約12万人が合格しており、また、社会福祉施設の介護職員や訪問介護員の間に資格取得を目標として資質の向上を図ることが定着し、その結果、回を追うごとに受験者が大幅に増加している状況にある。
 他方、平成12年4月には、介護保険制度に基づく介護保険サービスの提供が開始されるとともに、6月には、利用者の立場に立った社会福祉制度の構築を目指し、社会福祉事業法が改正され、社会福祉法として施行されるなど、福祉制度、福祉を取り巻く環境は大きく変化している。
 こうした中で、利用者本位のサービスの提供の観点から、特に福祉サービスの多様化・質の向上が強く求められており、このため、福祉サービスを提供する人材の資質の向上が急務となっている。
 これに対応するため、平成12年4月、介護福祉士養成施設での教育課程が改正され、別紙1のとおり、教育時間数を1500時間から1650時間に増加させるとともに、介護保険制度やケア・マネジメントに関する内容の追加、居宅介護実習の必修化、保健医療分野との連携に必要な医学知識の強化等、教育内容の充実・強化が図られたところである。
 また、介護福祉士試験の内容についても、今の時代に求められている介護福祉士として、ふさわしい能力を問うものに改善する必要性があり、このため本検討会の開催が要請された。
 本検討会は、平成12年9月社会・援護局長が主催する検討会として開催され、平成12年4月に施行された介護福祉士養成施設の教育課程改正に対応した出題形式、問題数等について検討を行い、今般、その検討結果をとりまとめたので報告する。
 なお、介護福祉士試験の二次試験である実技試験については、その評価の在り方等について、別途、見直しが求められているところであるが、これについては、本検討会とは別に、「介護福祉士試験の実施方法に関する検討会」において検討が進められている。本報告は、主として介護福祉士試験の一次試験である筆記試験についての改善に関するものとなっており、今後、上記検討会の検討結果との調整が必要となり得ることを付言しておく。

2 介護福祉士試験改善の基本的考え方

 介護福祉士試験は、社会福祉士及び介護福祉士法第40条に基づき、介護福祉士として必要な知識及び技能について一定の水準に達しているかを問う資格試験である。
 介護福祉士の資格取得については、介護福祉士養成施設等で必要な知識及び技能を修得する方法と3年以上の実務経験を要件として介護福祉士試験に合格する方法とがあるが、資格取得の方法は異なっても、介護福祉士となる者には同等の知識及び技能を持つことが必要である。
 したがって、平成12年4月に施行された介護福祉士養成施設における教育課程の改正による教育内容の充実・強化に合わせ、介護福祉士試験の内容について見直し、出題形式、問題数等について改善する必要がある。
 なお、これらの改善事項は、受験者の大半を占める介護福祉士養成施設2年課程の卒業生が平成14年3月以降に誕生することから、平成14年1月の第14回試験から適用すべきである。

3 介護福祉士試験改善の具体的内容

 介護福祉士試験一次試験の具体的な改善点は次のとおりとすべきである。

(1)試験科目名

 試験の科目名については、平成12年4月施行の介護福祉士養成施設における教育課程の改正に対応させ、別紙2のとおりに変更する。

(2)出題数及び科目別出題数

(1) 出題数
 出題数については、介護福祉士として備えておくべき基本的な知識量が増加したことを受け、養成施設の教育課程の改正においても教育時間数を増加させているところであり、出題数は、これまでの100問から20問増やし、120問とする。
(2) 科目ごとの出題数
 科目ごとの出題数については、介護福祉士養成施設の指定規則に定める時間数のうち30時間につき4問というこれまでの科目別出題数の基本的な考え方を踏襲する。
(3) その他
 介護技術と形態別介護技術のように、相互に関連している科目については、関連科目の出題数の合計の範囲内で調整できるものとする。
 出題数及び科目別出題数の詳細は、別紙3のとおりとする。

(3)出題形式

(1) 客観式・5肢択一方式
 これまでどおり、客観式・5肢択一方式を踏襲する。
(2) 事例問題の導入
 介護保険制度の導入等に伴い、ますます介護に関する総合的判断、応用的判断に基づく実践能力、問題解決能力が求められている。
 介護福祉士養成施設の教育課程改正においても、「介護過程の展開」として、利用者に関する状況把握、事前評価、介護計画の作 成、実施、実施後の評価を学習することとされたことから、ある介護場面、状況、条件等を提示して問う「事例問題」の形式による出題が必要である。
 この場合、事例の読解に時間を要する等の問題や、事例問題の定着までに若干の時間を要すること等を配慮して、受験者の過度の負担とならないようにすることが必要であり、他職種の例を参考としつつ、当面は、専門領域の演習科目(「社会福祉援助技術演習(演習)」「レクリエーション活動援助法(演習)」「介護技術(演習)」「形態別介護技術(演習)」)において、「事例問題」の形式による出題を行う。
 また、各科目ごとの事例問題については、演習科目の時間数の半分程度の時間数に対応した出題数とし、一事例につき3問の出題(8事例24問)を基本とする。
 なお、事例問題については、上述のとおり経過措置を含め一定の配慮が必要であることから、具体的な出題数等については、各回の介護福祉士試験委員会において、一定の調整を行うことができるものとする。
 その詳細は別紙3のとおりとする。

(4)試験時間

 試験時間については、妥当な試験時間を確保する観点から、出題数の増加による総試験時間の延長やそれに伴う受験者の負担等も踏まえ、一問当たりの回答時間を短縮することも検討されたが、従来の試験との継続性・公平性に配慮し、これまでどおりの時間を確保することとする。
 この結果、総試験時間は、これまでの170分から40分増やし、210分とする。

 その詳細は、別紙4のとおりとする。

4 今後の改善の方向

(1)合否基準の見直し

 合否基準については、下記に示す3つの考え方の導入について検討すべきである。

(1) 絶対基準
 介護福祉士試験受験資格は「3年以上介護等の業務に従事した者」とされており、さまざまな業務経験を有する者が受験する現状がある。
 他職種のように養成施設等を修了した後に国家試験を受験するのとは異なり、既に介護業務に従事した者を対象とすることから、「介護福祉士として必要な知識及び技能」が一定のレベルに達しているか否かの判定は、絶対基準が望ましいと思われる。
 適切で妥当な範囲及びレベルの出題を前提として、絶対基準の設定について検討が必要である。
(2) 利用者の安全及び人権尊重、倫理的配慮等の観点の強化
 利用者の安全及び人権尊重、倫理的配慮等の観点から、誤った知識及び技能を持った者は、介護福祉士として適性を欠くと思われる。このため、例えば、介護福祉士として、当然に理解していなければならない問題(禁忌肢等)を設定し、たとえ全体として合格基準に達していても不合格とすることも検討すべきである。
 また、この点については、筆記試験とともに実技試験についても適用を検討すべきである。
(3) 試験科目ごとの正解バランスの考慮
 介護福祉士として必要な知識及び技能を評価する場合、試験科目別に見て、極端に苦手な科目等があることは、介護福祉士としての適性を欠くことにつながることから、試験科目ごとの正解率に配意した合否基準について検討すべきである。

(2)介護福祉士試験出題基準の作成及び公表

 介護福祉士試験の出題範囲については、下記のような観点から、今後「介護福祉士試験出題基準」を作成し、公表することが望ましい。

(1) 介護福祉士試験の適切な出題範囲について定め、一定の水準とすること。
(2) 介護福祉士養成施設等と異なり、実務経験を積みながら、自力で学習する介護福祉士試験受験者の利便に資すること。
(3) 介護福祉士試験委員が試験問題を作成する上での継続性及び効率化が図られること。

 この出題基準の作成により、介護の学問としての確立にも寄与することが期待されるなど、出題基準の作成は重要である。この場合、用語の整理・統一、養成施設のシラバスとの整合性等に十分配慮する必要がある。
 また、試験内容については、学問の発展や福祉政策の動向等を踏まえ、定期的な見直し、改善が求められるものであることから、出題基準についてもその点を考慮し、定期的に適切な見直しを行うべきである。

(3)試験問題のプール制の導入

 試験問題の作成にあたっては、信頼性・妥当性のある問題とすべきであり、良質な試験問題を確保する観点から、試験問題のプール制(試験問題をあらかじめ蓄えておくこと)の導入を検討すべきである。
 この場合、プールされる問題の管理・更新については十分留意する必要がある。

(4)多肢選択試験の回答コードについて

 介護福祉士試験筆記試験の出題形式において多肢選択試験(Multi-ple Choice Questions)が採用されているが、受験者の知識量をより正確 に得点に反映させる観点から、今後、見直しについて検討すべきである。

5 結びに

 社会福祉基礎構造改革とは、利用者の立場に立った福祉サービス提供システムの構築を目指すものであり、質の高いサービスを提供する介護福祉士の養成及び確保がその成否を左右すると言っても過言ではない。
 資質の高い介護福祉士の養成は、今回提示した介護福祉士試験の改善のみならず、養成施設の教育内容の改善、介護福祉士養成施設の教員の資質の向上、介護福祉士の生涯教育の充実等とあいまって、可能となるものであり、これにより、国民の期待に応えられるのである。
 福祉サービスの向上を支える資質の高い介護福祉士の養成及び確保のために関係各位の一層の努力を期待して結びとしたい。


別紙1

介護福祉士養成施設におけるカリキュラム改正の概要

1 改正の経緯

(1) 平成10年9月より、福祉専門職の質の向上に関する検討を行うため、「福祉専門職の教育課程等に関する検討会」が開催。

(2) 平成11年3月10日「福祉専門職の教育課程等に関する検討会報告書」がまとめられる。

(3) これを受け、介護福祉士養成施設における教育課程(カリキュラム)を改正し、平成12年度入学生より新カリキュラムによる教育内容を実施。

2 主な変更点

(1)教育時間数の増加

 総時間数1,500時間 → 1,650時間(150時間増)

(2)教育内容の充実

・介護保険制度及びケアマネジメントに関する内容の追加
・保健医療分野の専門職との連携に必要な医学知識の強化
・人権尊重、自立支援等の社会福祉の理念、コミュニケーションに関する内容の強化
・居宅介護実習の必修化
・介護過程の展開方法を追加


○介護福祉士養成課程の変更点

介護福祉士養成課程の変更点

介護福祉士養成課程の変更点

介護福祉士養成課程の変更点


別紙2

介護福祉士試験科目名の改正

  旧試験科目 新試験科目








社会福祉概論 社会福祉概論
老人福祉論 老人福祉論
障害者福祉論 障害者福祉論
リハビリテーション論 リハビリテーション論
社会福祉援助技術 社会福祉援助技術
社会福祉援助技術演習
レクリエーション指導法 レクリエーション活動援助法
老人・障害者の心理 老人・障害者の心理
家政学概論 家政学概論
栄養・調理
  保
及健
び衛
介生

医学一般 医学一般
精神衛生(精神保健) 精神保健
介護概論 介護概論
介護技術 介護技術
障害形態別介護技術 形態別介護技術


別紙3

介護福祉士試験(筆記試験)の科目別出題数(標準)

  現 行 改正後
試験科目 出題数 試験科目 出題数
  うち事例問題 *








社会福祉概論 8 社会福祉概論 8  
老人福祉論 8 老人福祉論 8  
障害者福祉論 4 障害者福祉論 4  
リハビリテーション論 4 リハビリテーション論 4  
社会福祉援助技術 8 社会福祉援助技術 4  
社会福祉援助技術演習 4 1(3)
レクリエーション指導法 4 レクリエーション活動援助法 8 1(3)
老人・障害者の心理 8 老人・障害者の心理 8  
家政学概論 4 家政学概論 8  
栄養・調理 4      
小 計 52 小 計 56 2(6)
  保
及健
び衛
介生

医学一般 8 医学一般 12  
精神衛生(精神保健) 4 精神保健 4  
介護概論 8 介護概論 8  
介護技術 14 介護技術 20 3(9)
障害形態別介護技術 14
(28)
形態別介護技術 20 3(9)
小 計 48 小 計 64 6(18)
合 計 100 合 計 120 8(24)

* 事例問題は1事例につき3問の出題


別紙4
介護福祉士試験(筆記試験)の試験時間

  現 行 改 正
出題数 回答時間 出題数 回答時間
社会福祉及び家政等 52 90分間 56 100分間
保健衛生及び介護等 48 80分間 64 110分間
合 計 100 170分間 120 210分間



介護福祉士試験改善検討会委員名簿

氏 名 職 名
◎岡田 喜篤 川崎医療福祉大学副学長
 澤田 信子 埼玉県立大学保健医療福祉学部助教授
 高垣 節子 日本福祉大学中央福祉専門学校介護福祉士科教員
 高崎 絹子 東京医科歯科大学医学部教授
 本名 靖 東海大学健康科学部助教授
 渡辺 裕美 日本社会事業大学社会福祉学部助教授
◎は座長


参考資料
介護福祉士の資格取得方法

介護福祉士の資格取得方法

介護福祉士登録者数の推移


介護福祉士国家試験の概要(第13回試験まで)

1 試験の概要

(1)形 態

 年1回試験(第1次試験(筆記試験)、第2次試験(実技試験))

*実技試験は、筆記合格者が受験の対象。
 なお、過去2年間の筆記試験合格者は、筆記試験が免除される。

(2)実施機関

 社会福祉士及び介護福祉士法第10条第1項の規定により厚生大臣が指定した(財)社会福祉振興・試験センター

(3)試 験

 試験日、試験地等については、毎回官報に公告する。

 (参考) 第13回試験(予定) 試験地 全国12か所
試験日 (筆記) 平成13年1月28日(日)
(実技) 平成13年3月 4日(日)

(4)筆記試験の科目(14科目)

(1)社会福祉概論 (2)老人福祉論 (3)障害者福祉論 (4)リハビリテーション論
(5)社会福祉援助技術 (6)レクリエーション指導法 (7)老人・障害者の心理
(8)家政学概論 (9)栄養・調理 (10)医学一般 (11)精神衛生(精神保健)(12)介護概論
(13)介護技術 (14)障害形態別介護技術

(5)実技試験の内容

 課題を掲示して、5分間の実技を行わせ、チェックポイントにより採点する。

2 試験の結果

  試 験 日 発 表 受 験 者 合 格 者 合格率
第 1 回 筆記 元.1.29        
実技 元.3. 5 元.4.26 11,973人 2,782人 23.2%
第 2 回 筆記 元.12.3        
実技 2.2.18 2.4,10 9,868人 3,664人 37.1%
第 3 回 筆記 3.2.24        
実技 3.5.19 3.6.27 9,516人 4,498人 47.3%
第 4 回 筆記 4.3. 1        
実技 4.5.17 4.6.26 9,987人 5,379人 53.9%
第 5 回 筆記 5.3. 7        
実技 5.5.16 5.6.23 11,628人 6,402人 55.1%
第 6 回 筆記 6.2.27        
実技 6.4.24 6.5.31 13,402人 7,041人 52.5%
第 7 回 筆記 7.1.22        
実技 7.3.12 7.4.20 14,982人 7,845人 52.4%
第 8 回 筆記 8.1.21        
実技 8.3.10 8.4.10 18,544人 9,450人 51.0%
第 9 回 筆記 9.1.26        
実技 9.3. 9 9.3.31 23,977人 12,163人 50.7%
第 10 回 筆記10.1.25        
実技10.3. 8 10.3.31 31,567人 15,819人 50.1%
第 11 回 筆記11.1.24        
実技11.3. 7 11.3.31 41,325人 20,758人 50.2%
第 12 回 筆記12.1.27        
実技12.3. 5 12.3.31 55,853人 26,973人 48.3%
    252,622人 122,774人 48.6%
(注1) 第7回については、阪神淡路大震災の影響により平成7年7月23日に実施した再試験の結果を含む。


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