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平成10年5月29日
I 歯科医師需給の検討経緯
○ 歯科医師の需給については、昭和61年の「将来の歯科医師需給に関する検討委員会」の最終意見に基づき、新規参入歯科医師の20%削減を行ってきたところであり、その結果、歯科大学の入学定員の19.7%の削減が達成された。
○ しかし、平成8年11月以降、国民医療総合政策会議中間報告はじめ、医療保険制度に関係する審議会等から、歯科医師の需給見直し等について提言があったことから、厚生省としては平成9年7月に「歯科医師の需給に関する検討会」を設置し、改めて歯科医師の需給問題について検討を行うこととした。
II 将来の歯科医師需給バランス
○ 歯科医師の供給は少なめに、また、需要は多めに見積もって推計しても、供給が需要を
上回る結果となった。具体的には、70歳以上の歯科医師が活動しないと想定した場合であっても歯科医師供給の下位推計と需要の推計をみると、平成17年以降、供給が需要を上回り、平成37年には9千〜1万8千人程度の過剰が見込まれる。
○ 現在の歯科医師数は30歳代半ばから40歳代後半にかけてピークがあることから、将来的には著しい高齢歯科医師の増加が見込まれる。70歳以上の稼働歯科医師は当面7千人程度で推移するが、平成29年から急激に増加し平成42年には2万人を超えることが推計される。
III 歯科医師数の過剰により懸念される問題点
○ 歯科医師は一般の病院のポストが極めて少ないことから、供給が過剰となると、勤務歯科医として十分な修練を積むことなしに早期に開業せざるを得なくなる。技術的に未熟な開業歯科医が多く輩出されると、診療内容に根ざす適切な競争による質的向上を望むことは不可能な状況に至るおそれがある。
○ 患者数の減少に伴い、良質な歯科医療提供に関わらない面でのサービス競争を引き起こすおそれがある。極端に患者数が減少した歯科診療所においては一定の診療収入を確保するため、過剰診療を惹起する危険性も否定できない。また、歯科医療費及び国民負担の増加に影響することが懸念される。
○ 将来的に生じ得る歯科診療所の経営不安定化は、勤労意欲の低下や職業としての魅力低下に繋がるおそれがあり、歯科医療への従事に希望と意欲を持つ歯科大学学生の減少が懸念される。
IV 今後取り組むべき課題
(1)歯科医師の資質向上について
(2)歯科医師数の適正化のための施策について
(3)併せて進められるべき施策について
○ 効率的な歯科保健医療を提供する観点から、人口構成や疾病構造の変化に対応した歯科医師の養成や研修の充実、地域医療支援病院等と連携することによる、かかりつけ歯科医機能の普及・定着を促進する必要がある。
○ 基礎歯学分野の充実を図る観点から、歯科医師の資格を有する者が基礎歯学の教育・研究に積極的に参入できる環境を整備する必要がある。
○ 歯科保健医療分野の海外協力を推進するため、環境整備を図るとともに海外協力を行う歯科医師の養成が望まれる。
○ 歯科医師とともに歯科医療を支えている歯科衛生士や歯科技工士についても、適正に確保していくための方策を検討することが望まれる。
V まとめ
○ 本検討会としては、歯科医師の臨床研修の必修化及び歯科医師国家試験の見直しを行うこ と、これに併せ、入学定員の削減等の方策を講じることを通じて、歯科医師の新規参入の抑 制を行うことを提言したい。この提言内容の実施に向け、歯学教育関係者や歯科医療関係者 はじめ関係各位の十分な理解と積極的な対応を望みたい。
○ 将来的には、高齢歯科医師が急増していくことから、高齢歯科医師の稼働停止が今後の歯 科医師の需給対策において、極めて重要であることを強調したい。
○ 歯科医師の需給は、現状で想定できる条件で推計したものであり、歯科医療を取り巻く社 会情勢の変化等に応じ、将来的に見直す必要があることを付言する。
照会先:厚生省健康政策局歯科保健課 日高、大内 電 話:[現在ご利用いただけません] 内線2582,2584 03(3595)2205(直通)
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