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平成10年3月24日

生活環境審議会水道部会の開催について

生活環境審議会水道部会(部会長 藤田 賢二 埼玉大学大学院教授)が、平成10年3月24日、開催され、以下の事項について審議等が行われた。

1 水道の水質検査及び簡易専用水道の検査に関する規制緩和について(審議)

今回の水道部会では、規制緩和推進計画(平成9年3月閣議決定)に基づき、以下の2つの規制緩和事項について審議が行われた(別添−1)。

(1)水道の水質検査
水道事業者が水道の水質検査を委託して行う場合の委託検査機関の指定基準は、水質検査を適正に行うことのできる諸条件を備えた公益法人に限定されているが、民間の検査機関も指定を受けることができるようにすべきとの規制緩和の意見がある。

(2)簡易専用水道の検査
簡易専用水道は、設置者が管理を行い、年1回以上、管理の状態について検査を受けなければならないとされているが、管理の検査を簡素化すべきとの規制緩和の意見がある。

厚生省では、生活環境審議会の審議に先立ち、これらの規制緩和事項に関して、「水質検査及び簡易専用水道の検査のあり方に関する懇談会」を設置し、関係者(経済界、検査機関、行政、水道事業者、消費者、学識経験者)の意見を聴いてきたところである。同懇談会では、水道の水質検査については規制緩和、簡易専用水道の検査については規制維持の結論がとりまとめられている。この結論について審議が行われ、了承を得た。なお、懇談会報告の概要を別添−2に示す。

2 水質管理専門委員会及び施設基準等専門委員会の審議経過について(報告)

平成9年12月に水道部会の下に水質管理専門委員会及び施設基準等専門委員会が設置されている。

水質管理専門委員会では、WHO(世界保健機構)における飲料水水質ガイドラインの改訂等に応じた水道水質に関する基準の見直しを進めてきたところであるが、一部の項目について監視項目の設定等を行うこと、その他の項目について引き続き検討することについて報告し、了承を得た。なお、見直しの概要を別添−3に示す。

また、施設基準等専門委員会では、水道施設の技術上の基準の策定に関して検討が行われているが、今回の部会では、審議経過について報告を行った。

3 クリプトスポリジウム等暫定対策指針の改正について(報告)

平成8年10月に策定した「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」については、厚生省において専門家からなる検討会を設置し、新たな知見、研究開発等を踏まえ試験方法その他の見直しを進めてきたところであるが、検討会の結論について、今回の部会で報告し、了承を得た。
なお、検討会の結論の概要を別添−4に示す。

4 その他平成9年度に講じた施策等について(報告)

水道事業の認可に関する事務の都道府県への権限委譲拡大を行った水道法施行令改正(平成9年12月)、その他の施策の実施状況について報告を行った。

生活環境審議会水道部会委員名簿


今井 裕隆 (社)日本水道協会 専務理事
漆  博雄 上智大学経済学部 教授
太田 元 (社)経済団体連合会 参与
甲斐 麗子 主婦連合会 参与
柿本 善也 全国知事会 社会文教調査委員会委員(奈良県知事)
狩野 伸彌 (社)全国ビルメンテナンス協会 副会長
黒川 雄二 国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター長
黒木 武弘 社会福祉・医療事業団 理事長
齋藤 行生 国立医薬品食品衛生研究所 副所長
佐藤 晴男 全日本自治団体労働組合 副中央執行委員長
住友 恒 京都大学大学院工学研究科 教授
高木 光 学習院大学法学部 教授
竹井 照芳 日本経済新聞社 論説委員
永田 勝也 早稲田大学理工学部 教授
西尾 迢富 全国市長会鳥取県市長会 会長(鳥取市長)
乳井 昌史 読売新聞社 論説委員
福澤 武 (社)日本ビルヂング協会連合会 副会長
藤田 賢二 埼玉大学大学院理工学研究科 教授
藤原 房子 商品科学研究所 理事・所長
古市 圭治 国立公衆衛生院 院長
眞柄 泰基 北海道大学大学院工学研究科 教授
正木 英子 生活科学評論家
森下 忠幸 (社)日本環境衛生工業会 副会長
山本 文男 全国町村会 理事(福岡県添田町長)
吉澤 晋 東京理科大学工学部 教授

◎は部会長、○は部会長代理

問い合わせ先

生活衛生局水道環境部水道整備課

水道整備課長  岡澤 和好(内線4021)

水道水質管理官 由田 秀人(内線4031)

水質管理専門官 松澤  裕(内線4024)


別添−1

「水道の水質検査及び簡易専用水道の検査のあり方に関する懇談会」における検討について

1 背景

平成9年3月に閣議決定された規制緩和推進計画(参考資料)において、水道の水質検査の委託機関の指定基準及び簡易専用水道の検査のあり方について、生活環境審議会で検討を行い、10年度早期に結論を得るとされた。

2 関係者の懇談会における検討

厚生省では、生活環境審議会における検討に先立ち、規制緩和をすべきという立場の者、規制を維持すべきという立場の者、水道事業者、消費者、学識経験者等の関係者が議論を深め、論点整理を行う場として、平成9年10月、水道環境部長委嘱の標記の懇談会を設置した。

同懇談会においては、水質検査及び簡易専用水道の管理の検査に関して、それぞれの立場から5回に亘り幅広く議論が行われ、その結果、本年3月、報告書がとりまとめられた。

別添−2


水道の水質検査及び簡易専用水道の検査のあり方について
(懇談会報告書の概要)

1 水質検査の委託機関の指定のあり方について

水道事業者が水質検査を委託する場合の、水質検査の委託機関の厚生大臣の指定基準については、公益法人に限定する基準を撤廃するとともに、次の方向で見直すべきである。

  1. 現在の技術水準に照らし合わせ、検査担当者の人的要件、精度管理等の技術的な基準の強化、
  2. 一定期間ごとの財政的な基盤としての継続性・安定性の審査を要件として追加

2 簡易専用水道の管理の検査の簡素化について

ビル管理法の管理体制と同様の管理体制を有している簡易専用水道について管理の検査を簡素化するには、管理体制についてビル管理法と同様の法的な担保を講ずることが必要であるが、簡易専用水道(ビル管理法の適用を受けるものを除く。)の3割程度が不適合という実態があり、むしろ規制の強化を求める意見も強い一方で、簡易専用水道に関する制度全体の議論と切り離して、こうした簡素化の措置のみを講ずることは適当ではない。

現行制度の下で、管理の実態の改善を図るとともに、今後、簡易専用水道全体の問題として管理体制の強化の側面も含め、規制のあり方について検討すべきである。


参考資料

規 制 緩 和 推 進 計 画

(平成9年3月28日閣議決定)
  1. 住宅・土地等関係
  2. 設備・工事等
事 項 名 措 置 内 容実 施 予 定 時 期 備   考 改訂計画
との関係
所管省庁
平成7年度 平成8年度 平成9年度
(2)水道の水質検査 水道事業者が水質検査を委託する機関に係る厚生大臣の指定基準の在り方について検討する。     9年度

(検討)

生活環境審議会の審議を経て、10年度早期に結論 新規 厚生省
(3)簡易専用水道の検査 簡易専用水道の検査の在り方について検討する。     9年度

(検討)

生活環境審議会の審議を経て、10年度早期に結論 新規 厚生省


水道水質に関する基準の見直しの検討状況

物質名 基準値又は指針値 項目の位置づけ 基準値又は指針値算出の根拠  WHO飲料水水質ガイドライン1998年の見直し対象となったものはWHO98、1993年制定のままのものはWHO93と付記
毒性評価 水道水の寄与率
ウラン 0.002mg/l 新たに監視項目として追加。 ラットの毒性試験での腎毒性に基づき

TDI0.6μg/kg/day(WHOの評価を採用)

10% 0.002mg/l(WHO98)

(毒性評価の観点から暫定値)

ミクロキスティン−LR
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 マウスの毒性試験での肝毒性に基づき

TDI0.04μg/kg/day(WHOの評価を採用)

80%(水道が主な暴露経路であるため) 0.001mg/l(WHO98)

(毒性評価の観点から暫定値)

ベンタゾン
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 ラットの毒性試験での血液学的影響に基づきTDI0.1mg/kg/day(WHOの評価を採用) 10% 0.3mg/l(WHO98)
カルボフラン
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 イヌの毒性試験での血液学的影響に基づき

TDI0.002mg/kg/day(WHOの評価を採用)

10% 0.007mg/l(WHO98)
シアナジン
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 WHOの毒性評価以外の情報も含めて検討中 10% 0.0006mg/l(WHO98)
2,4-ジクロロフェノキシ酢酸
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 ラット及びイヌの毒性試験での腎毒性に基づきTDI0.01mg/kg/day(WHOの評価を採用) 10% 0.03mg/l(WHO98)
ジクワット
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 ラットの毒性試験での白内障発生に基づき

TDI0.0019mg/kg/day(WHOの評価を採用)

10% 0.01mg/l(WHO98)(定量下限をガイドライン値とすることから暫定値)
グリホサート
引き続き我が国の水道原水等の水質の測定結果を収集をした上で検討。 ウサギの毒性試験での無毒性量に基づき

TDI75mg/kg/day(同じ試験結果に基づくWHOの評価175mg/kg/dayを修正)

10% 水道における検出レベルは極めて低いことからガイドライン値を設定せず(WHO98)
亜硝酸性窒素 硝酸性窒素との合計量としての現行基準値10mg/lに加え、単独での指針値0.05mg/lを設定。 現行では硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素として基準項目とされており、これに加えて亜硝酸性窒素単独で監視項目に追加。 ラットの毒性試験での副腎、心臓及び肺への影響に基づきADI0.06mg-NO2/kg/day(WHOの評価を採用。なお、亜硝酸性窒素としては、0.02mg/kg/dayに相当) 10% 亜硝酸塩0.2mg/l(WHO98)(毒性評価の観点から暫定値、亜硝酸性窒素としては0.06mg/lに相当)
ニッケル (現行指針値0.01mg/l) 暫定的に現行どおり監視項目とするが、引き続き毒性情報を整理した上で基準項目とすることを検討。 ラットの毒性試験での胎児への影響に基づき

TDI0.0065mg/kg/day(WHOの評価による)今後この他の情報も含めて検討を継続。

10% 0.02mg/l(WHO98)(毒性評価の観点から暫定値)
ホウ素 1mg/l現行どおり監視項目とする。ただし海水淡水化施設に限定して基準項目として運用することを検討。 ラットの毒性試験での胎児への影響に基づき

TDI0.096mg/kg/day(同じ試験結果に基づくWHOの評価0.16mg/kg/dayを修正)

40%(海水淡水化施設からの給水地域における寄与率をもとに設定) 0.5mg/l(WHO98)(自然由来のホウ素濃度が高い地域では実用可能な処理技術で達成が困難であるため暫定値)
アンチモン (現行指針値0.002mg/l) 引き続き毒性情報を整理した上で基準項目とすることを検討。 現行の毒性評価は1993年時点でのWHOの評価を基礎としているので、新たな毒性情報の有無を整理した上で、再評価。 10% 0.005mg/l(WHO93)(定量下限をガイドライン値とすることから暫定値。ただし、WHOは1993年以来見直しを実施していない)
ジクロロ酢酸 (現行指針値0.04mg/l) 引き続き毒性情報を整理した上で基準項目とすることを検討。 現行の毒性評価は1993年時点でのWHOの評価を基礎としているので、新たな毒性情報の有無を整理した上で、再評価。 20%(消毒副生成物であるため) 0.05mg/l(WHO93)(処理技術で達成できることが未確認であるため暫定値。ただし、WHOは1993年以来見直しを実施していない)
抱水クロラール (現行指針値0.03mg/l) 引き続き毒性情報を整理した上で基準項目とすることを検討。 現行の毒性評価は1993年時点でのWHOの評価を基礎としているので、新たな毒性情報の有無を整理した上で、再評価。 20%(消毒副生成物であるため) 0.01mg/l(WHO93)(毒性評価の観点から暫定値。ただし、WHOは1993年以来見直しを実施していない)
ホルムアルデヒド (現行指針値0.08mg/l) 引き続き毒性情報を整理した上で基準項目とすることを検討。 現行の毒性評価は1993年時点でのWHOの評価を基礎としているので、新たな毒性情報の有無を整理した上で、再評価。 20%(消毒副生成物であるため) 0.9mg/l(WHO93)(WHOは1993年以来見直しを実施していない)


別添−4

水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針改正案の概要

I.改正の背景

平成8年6月、埼玉県越生町において、我が国ではじめて水道を介してクリプトスポリジウムによる感染症が発生したため、同年10月、水道事業者等における予防対策、及び万一感染症が発生した場合には、適切な応急措置が講じられるよう所要の対策を定めた「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を策定し、都道府県を通じて水道事業者等へ周知した。

当時、この指針は緊急的に収集した知見に基づき暫定的に定めたものであったことから、新たな知見が得られれば、これを見直しすることとしていた。

その後、新たな知見として、全国の水道水源におけるクリプトスポリジウムの存在状況の調査結果が得られたこと、試験方法に関する知見が集積されたこと等から、専門家で構成する「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」(座長:金子光美摂南大学教授)において指針の見直しについて検討していただいているところであり、近々、暫定対策指針改正案をとりまとめる予定である。

II.改正案の概要

1.水道原水のクリプトスポリジウムによる汚染のおそれの判断
○ これまでのクリプトスポリジウム検出事例の中には、取水施設の近傍上流域に、人間又は哺乳動物の糞便を処理する施設等の排出源がない場合も見られたことから、クリプトスポリジウムによる汚染のおそれは、これらの排出源の存在について、現行より広範囲に確認した上で、判断することとする。
○ 糞便による水道原水の汚染の指標として、新たに、水環境において生残性が高く、クリプトスポリジウムとの相関も示唆される知見が得られた嫌気性芽胞菌を追加することとする。

2.予防対策
(1)浄水場での対応
○ クリプトスポリジウムによる汚染のおそれのある浄水場では、急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過のいずれかの方法により浄水処理を行うこととしている。
○ このため、いずれの処理も実施できない浄水場については、原水の濁度が通常より高くなった場合において、取水を停止するよう定めている。ただし、「浄水の濁度が常時0.1度以下に維持されている場合、又はクリプトスポリジウムによる汚染が無いと確認できるときは、この限りではない。」としている。
○ しかし、この記述は、浄水の濁度0.1度以下であれば上記の処理は不要と誤解されるおそれがあること、また、現段階のクリプトスポリジウムの試験方法は、その検出限界値が大きいため、安全を確認できるレベルにないことから、この部分を削除することとする。
○ 一方、このような浄水場においても、河川工事等の人工的な要因による濁度上昇の場合には、必ずしもクリプトスポリジウムによる汚染が生じない場合もあることから、河川工事等の内容を勘案して取水停止を判断するよう、新たに記述することとする。

(2)浄水処理の徹底
○ ろ過池は、通常その機能を維持するため定期的に洗浄が行われている。また、指針では、洗浄後に適正なろ過機能が発現するまで捨て水を行うよう定めている。
○ 一方、水資源の有効利用を図るため、ろ過池の洗浄排水や捨て水をリサイクルする浄水場が増えている。このため、これらの排水の返送に関する留意事項を新たに記述することとする。

3.クリプトスポリジウム検出のための暫定試験方法
○ 現行の暫定的な試験方法は、手順が複雑で検出の確定に熟練を要すると言われていることから、簡便で迅速かつ確実な試験方法を確立するため、新たな知見を収集するとともに、試験方法の改良・開発についての研究を推進してきた。
○ 今般、新たな知見がある程度集積されたことや、研究成果の一部が得られたことから、試験方法の簡素化と確実性・迅速性の向上を図るため、以下の新たな方法を併用できることとする。

(1)検水濃縮過程

  • ろ過効率の低下をまねく夾雑物に対応可能な加圧ろ過法
  • 大量の検水を自動的に濃縮可能なカートリッジフィルター法
  • 繰り返し濃縮操作が不要な遠心沈澱法
  • フィルターとオーシストの分離が効率的な特殊フィルターに対応した超音波処理法

(2)精製処理過程
  • 夾雑物とオーシストの区分の向上を可能にする免疫磁気ビーズ法
(3)蛍光染色過程
  • 1回の抗体反応でオーシストを蛍光染色できる直接抗体法
  • 顕微鏡観察の鮮明性を向上させるためのスライドグラス上での染色法
  • オーシスト内部の核を染めて見やすくするためのDAPI染色法

4.参考資料としてジアルジアの生物学的性状等の知見の追加
○ ジアルジアは、クリプトスポリジウムと同様に下痢などの健康影響を人に及ぼす原虫であり、クリプトスポリジウムより弱いものの塩素耐性がある。
○ これまで、この原虫により水道水を介して感染症が発生した事例はないが、生物学的性状等がクリプトスポリジウムに類似することから、参考としてジアルジアの生物学的性状等の知見を新たに記述することとする。


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