(整理番号 1)
終期付き事業評価書
平成17年8月
評価対象事業 | へき地医療拠点病院等運営費 |
当該事業に係る補助金 | 医療施設運営費等補助金 |
担当部局・課 | 医政局指導課 |
関係部局・課 |
1. | 事業の内容 |
(1) | 関連する政策体系の施策目標 |
政策体系 | 番号 | |
基本目標 | 1 | 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること |
施策目標 | 1 | 地域において適切かつ効率的に医療を提供できる体制を整備すること |
I | 日常生活圏の中で必要な医療が提供できる体制を整備すること |
(2)事務事業の概要 | (単位:百万円) |
予算項目 | (項)保健衛生諸費 | |||
(目)医療施設運営費等補助金 | ||||
(目細)へき地保健医療対策費補助金 | ||||
(積算)へき地医療拠点病院等運営費(事業創設 平成13年度) | ||||
当初予算額 | 補正後予算額 | 決算額 | 補正後予算額と決算額に乖離がある場合の理由 | |
H11 | - | - | (平成12年以前は、現在のへき地医療拠点病院等運営費の前身となる補助金が存在) | |
H12 | - | - | ||
H13 | 1,702 | 1,683 | 1,628 | 都道府県からの補助金交付申請が、歳出予算現額を下回ったため。 |
H14 | 1,696 | 1,678 | 1,610 | 都道府県からの補助金交付申請が、歳出予算現額を下回ったため。 |
H15 | 1,626 | 1,608 | 1,463 | 都道府県からの補助金交付申請が、歳出予算現額を下回ったため。 |
H16 | 1,575 | 1,557 | ||
H17 | 1,570 | |||
事業創設年度 | 昭和32年 | |||
継続回数 | 9回 | |||
事業実施主体 | 都道府県、市町村 | |||
事業の主な対象者 | へき地医療拠点病院がへき地診療所に医師を派遣すること等により支援する事業(具体的には無医地区において診療所を整備、運営する事業)であり、最終的には当該診療所を利用する地域住民が事業の対象者となる。 | |||
事業創設の背景 | この事業は、へき地における医療提供体制の整備が他の地域に比較して遅れている実情に鑑み、不採算事業であるへき地医療に対する運営費を補助することによって、へき地の住民が医学技術の進歩発展等に即応して、治療、並びに健康の増進及びリハビリテーション等を一体とした適切な医療を受けることを可能とし、もって、全国民が一定水準の質の高い医療を受けられる体制を確保することを目的として創設された。 | |||
事業内容 | 以下の事業について、事業費の1/2を補助している。 ○へき地診療所 無医地区等に設置されたへき地診療所の運営に対する補助 〔設置基準〕 おおむね半径4kmの区域内に他に医療機関がなく、その区域内の人口が原則として人口1,000人以上であり、最寄り医療機関まで通常の交通機関を利用して30分以上要すること 等 |
|||
得ようとする効果 | 不採算事業であるへき地診療所等へ補助金を交付することにより、へき地における医療提供体制を確保する。 |
(3) | 事業の評価関連指標 |
指標名(単位) | 無医地区の数 | |||||||
H11 | H12 | H13 | H14 | H15 | ||||
914 | − | − | − | − | ||||
(備考)
|
定量指標(2)
指標名(単位) | へき地診療所の数 | |||
H11 | H12 | H13 | H14 | H15 |
862 | − | − | − | − |
(備考) 5年ごとに行っている無医地区等調査による。(平成16年:1,059) |
定性指標(3)
指標名 | へき地医療拠点病院の数 | |||
H11 | H12 | H13 | H14 | H15 |
− | − | − | − | 236 |
(備考) 5年ごとに行っている無医地区等調査による。(平成17年3月:244) |
(4) | 事業の実績 |
(これまでの事業の実績) 5か年を計画期間とするへき地保健医療計画を策定し、へき地診療所等に対する施設、設備及び運営費に対する国庫補助や無医地区の医療を確保するための巡回診療など諸般の施策を実施しているところである。これらの効果として、平成11年に862カ所であったへき地診療所が平成16年には1059カ所に、また、へき地診療所を支援するへき地医療拠点病院についても、平成13年に制度を創設後、平成17年には設置数が244カ所となり、5年ごとの無医地区調査においても無医地区の数は着実に減少しているところである。 (参考 無医地区数の推移) (平成元年)1088か所→(平成6年)997か所→(平成11年)914か所→(平成16年)787カ所 (問題点)
|
2. | 評価((1)〜(6)は事業所管部局、(7)は政策評価官室において作成) |
(1) | 必要性 |
公益性の有無(官民の役割分担、国と地方の役割分担等) |
|
||||||
(理由) 不採算事業であるへき地における住民の医療の確保を目的としている。また、過疎地域自立促進特別措置法、離島振興法、山村振興法等の特例法においても医療の確保については国、地方公共団体の責務とされているところであるが、これは、全国どの地域においても一定水準の医療を国民すべてが享受できる必要があるからである。 また、へき地における医療の確保は、地方における重要な課題ではあるが、そのような地域は医師の確保、診療所の維持運営等が困難な状況にあることが多く、医師の確保を財政基盤の弱い市町村等にのみ負担させるには限度があり、国としても支援していく必要がある。 |
|||||||
緊要性の有無 |
|
||||||
(理由) 平成16年の無医地区調査においても787か所の無医地区存在する現状において、無医地区を解消し、当該地区に居住する住民が他の地域に居住する住民と同様の医療を享受できるようにするための基盤を一刻も早く整えることが喫緊の課題となっている。 |
|||||||
事業の必要性(当該事業が無くなると困る理由等を中心に記述) | |||||||
全国どの地域においても国民すべてが一定水準の医療を享受できる必要があると考えているところ、不採算事業であるへき地診療所等については、補助金を交付することにより、無医地区を解消し、当該地区の住民が他の地域の住民と同様、一定水準の医療を享受できるようにするための基盤を整備することが必要である。 |
(2) | 有効性 |
得ようとする効果の把握の仕方(検証の手順) |
5年ごとに行っている無医地区等調査により無医地区の数を把握している。 |
これまで達成された効果(当該事業の実施前と実施後における具体的な変化を含む)、今後見込まれる効果 |
5か年を計画期間とするへき地保健医療計画を策定し、諸般の施策を実施しているところであり、5年ごとの無医地区調査においても無医地区の数は着実に減少しているところである。 (参考 無医地区の居住者の推移) (平成元年)285,034人→(平成6年)236,193人→(平成11年)204,536人 |
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項 |
医師臨床研修及び医師不足問題 平成16年度から始まった新たな医師臨床研修制度は、将来的には、新たな研修制度の中で地域医療の研修を必ず行うこととされたこと等により、へき地を含む地域における医師不足解消の有効な手段と考えられている一方で、研修体制の整備に伴う当面の地域医療への影響について、関係者等から様々な指摘がなされているが、制度が定着するまではこのような状況が少なからず続くことが予想される。 しかしながら、新制度が実施されてまだ2年目(1クールの途中)であり、ようやく地域医療の研修が始まったところであり、医師が不足しているという現状は続くものと考えられるが、各臨床研修病院においても多くの学生に受け入れられるよう魅力ある研修プログラムの作成に努力しており、今般の新たな臨床研修制度を機に今後は一定の数の割合で地域に定着する医師が将来的には増えることを期待している。 また、医師不足問題に関しては、医師の偏在による特定の地域や小児科、産科等の特定の診療科における医師不足が問題となっている。 これを受け、、平成17年1月より、へき地保健医療対策検討会において検討していた第10次へき地保健医療計画においては、平成17年7月27日付で、公的な医療機関におけるへき地・離島の診療支援の強化などを盛り込んだ「へき地保健医療対策検討会報告書」を取りまとめたところであり、今後は、関係省庁とも連携しつつ、当該計画に基づきへき地医療対策を推進していく。 また、「医師の需給に関する検討会報告書」(平成17年7月27日)や、厚生労働省、総務省及び文部科学省による「地域における関係省庁連絡会議」において取りまとめた「医師確保総合対策」(平成17年8月11日)においても、地域における医師確保等に必要な施策を打ち出したところである。 |
(3) | 効率性 |
手段の適正性 | |||||
無医地区をはじめ医療の確保が困難な地域に所在するへき地診療所の殆どは公立及び公的の診療所として運営されているが、このような地域に所在する診療所は(1)財政基盤が弱いため、国が財政支援を行う必要がある。また、(2)全国民が一定水準以上の医療を受けられる体制を確保する必要があることから、国において10次にわたる「へき地保健医療計画」を策定しているところである。この計画等に基づき、へき地診療所の整備・運営に対し国が財政支援を行うことは、上記理由からも手段として適正であり、また、効率的である。 | |||||
費用と効果との関係に関する評価 | |||||
へき地における住民の医療を確保することを目的としたへき地診療所に対し、運営費補助を行うとともに、当該診療所からの代診医師派遣要請等に迅速に対応できるよう、へき地医療支援機構、へき地医療拠点病院群等を整備し広域的なへき地医療支援対策が組織的に可能となるような体制を構築するための支援を行った結果、平成13から平成16年までの間に予算額が減少傾向にある中で、平成11年には全国の無医地区の数が914であったものが、平成16年には787まで減少していることから、費用と効果の関係においても、効率的である。 | |||||
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無 |
|
(4) | 公平性、優先性(政策の特性に応じて、必要な場合に記入) |
全国民が一定水準以上の質の高い医療を受けられる体制を確保する上で、へき地医療の確保(無医地区の削減)は重要な課題であり、へき地診療所の整備、運営は優先的に実施されるべき施策である。 |
(5) | 今後の具体的改善点、講ずべき措置等 |
平成13年度からスタートした第9次へき地保健医療計画は平成17年度が最終年度であり、第10次へき地保健医療計画の策定に向けて、へき地保健医療対策検討会を設置し、検討を行ってきたが、この度、平成17年7月27日付で、公的な医療機関におけるへき地・離島の診療支援の強化などを盛り込んだ「へき地保健医療対策検討会報告書」を取りまとめ、公表したところであり、今後は当該計画に基づいてへき地医療対策を推進していくものである。 |
(6) | その他 |
(7) | 所見 |
(総括的評価) へき地における保健医療サービスの実施のための対策については、既に半世紀近くにわたり、各へき地保健医療計画(以下「計画」という。)に基づき、へき地診療所の運営費補助をはじめとする補助事業が行われてきているところであり、へき地における医療提供体制の基盤を整備することにより、無医地区を解消し、すべての国民が一定水準の医療を受けることができるようにするための施策が実施されてきたところである。 現に、当該事業の推進により、無医地区の数は着実に減少してきているところであり、各計画に基づき総合的に進められている一連の施策が、効果を上げていると考えられる。 また、へき地医療拠点病院等運営に係る予算については、年々減少してきているところであるが、これは医療提供体制の整備が行われた結果、無医地区の数が減少したことに伴い、事業の対象となる地域が徐々に縮減する方向にあることも一因と考えられ、医療提供体制の基盤を整備するという目的の達成に向け、進展があることを示すものと考えられる。 なお、へき地医療対策については、当該補助事業以外の手段も勘案することにより、効率性の観点から、事業の適正性について議論を進めることが必要である。 (事業継続の適否) 無医地区の数については、着実な減少を続けているものの、評価指標の推移によると、依然として多くの地区において、多くの居住者が容易に医療機関を利用することができない状態が続いているところである。 へき地診療所の運営等が、その事業の性質上、不採算事業であることから、国による補助を通じて当該運営等を適切に行わしめ、へき地における医療提供体制の確保に努めることは今後とも重要であり、事業継続が必要であると考えられるところである。 なお、現在、第10次計画の策定に向けた議論が進められているところであるが、当該計画の策定に当たっては、第9次計画において整備が進められているへき地医療支援機構のさらなる活用や、医師臨床研修制度の活用等を通じ、人的資源及び物的資源をより効果的かつ効率的に利用した対策が可能となるよう、考慮する必要があると考えられる。 |